インプラント窩形成用ドリル
【課題】顎骨に形成するインプラント用の埋入窩の深さを必要以上に深く形成することのないインプラント窩形成用ドリルを提供すること。
【解決手段】ドリル刃3aを有するドリル軸部3が先端側に設けられ且つ回転操作工具に取り付けるためのドリル取付軸部4が基部側に設けられたドリル軸本体1と、ドリル軸本体1の軸線方向の中間部に設けられたストッパ取付部5と、ストッパ取付部5に軸線回りに回転自在に取り付けられたス筒状ストッパ2を備え、ストッパ取付部5は筒状ストッパ2をフィクスチャー必要深さを形成する位置に保持している。
【解決手段】ドリル刃3aを有するドリル軸部3が先端側に設けられ且つ回転操作工具に取り付けるためのドリル取付軸部4が基部側に設けられたドリル軸本体1と、ドリル軸本体1の軸線方向の中間部に設けられたストッパ取付部5と、ストッパ取付部5に軸線回りに回転自在に取り付けられたス筒状ストッパ2を備え、ストッパ取付部5は筒状ストッパ2をフィクスチャー必要深さを形成する位置に保持している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歯科医療においてインプラントを埋設させるインプラント窩(埋設穴)を形成するためのインプラント窩形成用ドリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯を失ったときに、インプラントである人工歯根を顎骨に埋め込み、この人工歯根に義歯を装着して、咀嚼や審美性の回復を図るインプラント治療がある。この人工歯根としては、フィクスチャーと呼ばれるチタン製のスクリュータイプやコーンタイプのものが用いられている。このフィクスチャーを埋設するためのインプラント窩(埋設穴)の形成は、一般にドリルやオステオトームを使用して行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−313285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このドリルを用いる方法では、フィクスチャーを埋設するためのインプラント窩(フィクスチャー埋設穴)の深さを一定にすることが難しく、場合によっては必要以上に深く形成してしまう虞があった。
【0005】
そこで、この発明は、顎骨に形成するインプラント用の埋設穴の深さを必要以上に深く形成することのないインプラント窩形成用ドリルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、この発明のインプラント窩形成用ドリルは、ドリル刃を有するドリル軸部が先端側に設けられ且つ回転駆動工具に取り付けるための工具取付軸部が基部側に設けられたドリル軸本体と、前記ドリル軸本体の軸線方向の中間部に設けられたストッパ取付部と、前記ストッパ取付部に軸線回りに回転自在に取り付けられたストッパ部材を備え、前記ストッパ取付部は前記ストッパ部材をフィクスチャー必要深さを形成する位置に保持していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この構成によれば、ドリル軸本体を回転させて顎骨にインプラント埋設用の埋設穴を形成する際に、ストッパ部材が顎骨に当接してドリルの進みを止めるので、ドリル軸部のストッパ部材までの寸法を設定しておくことで、必要以上に埋設穴を深く形成することなく、顎骨に形成するインプラント用の埋設穴の深さを所望の深さにできる。また、顎骨に埋設穴を形成する際に、ストッパ部材が顎骨に当接した状態でドリル軸本体を回転させても、ストッパ部材が顎骨に対して回転しないので、ストッパ部材が顎骨を傷つけることがなく、苦痛を与えることもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明に係るインプラント窩形成用ドリルの側面図である。
【図2】図1のインプラント窩形成用ドリルの分解側面図である。
【図3】図1のA1−A1線に沿う断面図である。
【図4】図3のA2−A2線に沿う断面図である。
【図5】図2のストッパ取付部の拡大説明図である。
【図6】図5の右側面図である。
【図7】図2の筒状ストッパの拡大説明図である。
【図8】図7の右側面図である。
【図9】(a)〜(c)は長さを異ならせた筒状ストッパと識別部の説明図である。
【図10】(a)〜(c)は長さを異ならせた筒状ストッパと識別部の他の例を示す説明図である。
【図11】(a)〜(c)は長さを異ならせた筒状ストッパと識別部の更に他の例を示す説明図である。
【図12】筒状ストッパの抜け止めの他の構成を示す説明図である。
【図13】筒状ストッパの抜け止めの更に他の構成を示す説明図である。
【図14】筒状ストッパの他の形状を示す説明図である。
【図15】筒状ストッパの他の形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[構成]
図1は本発明に係るインプラント窩形成用ドリルを示し、図2は図1のインプラント窩形成用ドリルの分解側面図、図3は図1の要部断面図である。このインプラント窩形成用ドリルはドリル軸本体1と円形の筒状ストッパ(ストッパ部材)2を備えている。
<ドリル軸本体1>
ドリル軸本体1は、先端側に設けられたドリル刃3aを有するドリル軸部3と、基部側に設けられ、図示しない回転駆動工具に取り付けられる工具取付軸部4を有する。このドリル取付軸部4の端部には、エア式又は電動式の回転駆動工具(図示せず)に装着固定されるチャック部4aが形成されている。
【0010】
また、図2に示したように、ドリル軸本体1の軸線方向の中間部にはストッパ取付部5が設けられている。このストッパ取付部5は、図2〜図6に示した、ドリル軸部3とドリル取付軸部4との間に位置する小径軸部1aと、この小径軸部1aの軸方向中間部に一体に形成された支持フランジ6を有する。
【0011】
この支持フランジ6は、図4,図5に示したように、ドリル軸部3側の端面6aと、ドリル取付軸部4側の端面6bと、外周面6cと、端面6aの外周縁部6dと、端面6bの外周縁6eを有する。この支持フランジ6は、外周縁部6dが通常の面取より大きなR面取をした円盤状を呈している。また、支持フランジ6には、図2,図5,図6に示したように周方向に等間隔隔をおいて複数の切欠6fが形成されている。
<筒状ストッパ2>
筒状ストッパ2は、図1,図2,図4,図5,図7に示したように、小径筒部2aと、この小径筒部2aに同軸で一体に形成された大径筒部2bを有する。この小径筒部2aは図1,図4に示したようにドリル軸部3のドリル取付軸部4側の端部に軸線回りに回転自在に嵌合され、大径筒部2bは図3,図4に示したように支持フランジ6に回転自在に嵌合されている。
【0012】
尚、筒状ストッパ2内には、図1,図2,図4,図7に示したように、挿通孔7が形成されている。この挿通孔7は、小径筒部2a内に形成された小径孔部7aと、大径筒部2b内に形成された大径孔部7bと、小径孔部7aと大径孔部7bとの間に形成された軸方向移動規制段部(第1当接部)7cを有する。この軸方向移動規制段部7cは、ドリル軸部3側から支持フランジ6の端面6aに当接している。
【0013】
また、図1,図2,図3〜図8に示したように、大径筒部2bには、支持フランジ6の工具取付軸部4側の外周縁6eに係合して軸方向移動規制ストッパ(第2当接部)となるストッパ爪9が、工具取付軸部4側に突出して一体に設けられている。このストッパ爪9は、支持フランジ6の複数の切欠6fにそれぞれ対応するように、周方向に間隔をおいて複数設けられている。しかも、ストッパ爪9は、軸方向平面視形状が尖頭を大径筒部2bの中心側に向けた三角形状に形成されている。そして、図4に示したように、ストッパ爪9の内側には、支持フランジ6の係合位置に案内する当接する傾斜当接面9aが設けられている。尚、対向する一対のストッパ爪9,9の先端間の間隔Aは、互いに反対側に位置する一対の切欠6f,6fの間の間隔Bよりも僅かに狭く形成されている。
【0014】
この支持フランジ6,軸方向移動規制段部7c,ストッパ爪9等は、筒状ストッパ2をドリル軸本体1の軸線方向に移動不能にする移動規制部(移動規制機構)を構成している。
[作用]
次に、このような構成のインプラント窩形成用ドリルの組付およびその作用を説明する。
【0015】
インプラント窩形成用ドリルのドリル軸本体1と筒状ストッパ2を組み付けるには、ドリル軸本体1のドリル軸部3をドリル刃3a側から筒状ストッパ2の挿通孔7に大径筒部2b側から挿入して、筒状ストッパ2を支持フランジ6側に移動させる。
【0016】
この移動操作に伴い、大径筒部2bの複数(図では4つ)のストッパ爪9の先端部を支持フランジ6の複数(図では4つ)の切欠6fにそれぞれ臨ませ、ストッパ爪9の先端部を支持フランジ6の端面6aの周縁部に当接させる。この状態で、筒状ストッパ2をドリル取付軸部4側に押圧させると、対向する一対のストッパ爪9,9の先端が拡開するようにストッパ爪9の基部(大径筒部2b側の基部)が撓んで、ストッパ爪9の先端が切欠9内に入り込んで筒状ストッパ2と共にドリル取付軸部4側に移動させられる。
【0017】
尚、ストッパ爪9の先端部を支持フランジ6の切欠6fに臨ませない状態では、ストッパ爪9をドリル取付軸部4側に移動させる際に、対向する一対のストッパ爪9,9の先端が拡開するようにストッパ爪9の基部(大径筒部2b側の基部)が撓みながら、ストッパ爪9の先端部が支持フランジ6のR面取をした外周縁部6dに案内されてドリル取付軸部4側に移動させられる。
【0018】
このような移動に伴い、支持フランジ6の大半が大径筒部2b内に嵌合されると共に、ストッパ爪9の先端部が支持フランジ6の外周面6cからドリル取付軸部4側に外れると、対向するストッパ爪9,9の先端の間隔がストッパ爪9の自己のバネ力で拡開する前の現状に復帰して、ストッパ爪9が筒状ストッパ2のドリル軸部3側への移動を規制する。この位置では、筒状ストッパ2の小径筒部2aがドリル軸部3のドリル刃3aとは反対側の端部に軸線回りに回転可能に嵌合する。
【0019】
この状態では、挿通孔7の小径孔部7aと大径孔部7bとの間の軸方向移動規制段部7cが支持フランジ6の端面に当接可能となると共に、図4のようにストッパ爪9の傾斜当接面9aが支持フランジ6の外周縁6eに当接可能となる。これにより、軸方向移動規制段部7cとストッパ爪9とにより支持フランジ6を軸方向から挟むように僅かな隙間(図示せず)を持って保持させている。このように保持させることで筒状ストッパ2は、ドリル軸本体1の軸線回りには回転可能に且つドリル軸本体1に軸方向に移動不能に保持される。
【0020】
また、筒状ストッパ2を取り外すには、ストッパ爪9の先端を支持フランジ6の切欠6fに位置合わせし、筒状ストッパ2をドリル刃3a側に強制的に移動させることにより、ストッパ爪9の先端が切欠6f内に入り込んだ後に、切欠6fを通過させることにより行う。
【0021】
このようにして組み立てられたインプラント窩形成用ドリルは、ドリル取付軸部4を図示しない回転駆動工具に取り付けて用いる。そして、ドリル軸部3のドリル刃3aを図示しない顎骨に当てて、ドリル軸本体1を回転駆動工具(図示せず)により回転駆動させることで、顎骨にインプラント窩(埋設穴)を形成する。この際、筒状ストッパ2の小径筒部2aが顎骨に当接した後は、ドリル軸本体1が回転させられた状態で顎骨側に押されても、ドリル軸部3は顎骨側に移動することなく筒状ストッパ2に対して回転するのみであるので、顎骨にはドリル刃3aから小径筒部2aまでの長さC以上の深い穴が開けられることはない。
【0022】
尚、筒状ストッパ2は、ドリル軸部3のドリル刃3aから小径筒部2aの端面までの長さ(寸法)がフィクスチャー必要深さ(フィクスチャーを埋設するのに必要な深さ)となるように、小径筒部2aの長さ(寸法)を設定しておく。この小径筒部2aの長さ(寸法)は顎骨のフィクスチャーを埋設する場所や顎骨の大きさ等に応じて変わるので、小径筒部2aのさ(寸法)が異なる筒状ストッパ2を複数用意しておいて、この長さの異なる筒状ストッパ2をドリル軸本体1に対して付け替えることで、インプラント窩(埋設穴)の深さを所望の深さに形成できる。即ち、具体的には、ドリル軸部3で顎骨に必要深さのインプラント窩(埋設穴)を開けるためのドリル軸部3の長さをC、支持フランジ6からドリル刃(刃先)3aまでの長さ(寸法)をL、軸方向移動規制段部7cから筒状ストッパ2の小径筒部2aの先端までの長さ(寸法)をBとしたとき、必要深さのインプラント窩(埋設穴)に対応する長さCは、
C=(L−B)
となる。従って、この長さBの異なる筒状ストッパ2を複数個用意しておいて、この長さBの異なる複数個の筒状ストッパ2から顎骨のフィクスチャーを埋設する場所や顎骨の大きさ等に応じた深さのインプラント窩(埋設穴)を形成可能な、ものを選択して、ドリル軸本体1に装着して使用する。また、長さBの異なる複数の筒状ストッパ2は、図9(a)〜(c)に示したように、異なる色に着色した着色部(外周面)M1を長さ識別部としておくことで、直感的に判断できる。また、長さ識別部としては、図10(a)〜(c)に示したような周方向に延びる識別線Laや、図11(a)〜(c)に示したような識別形状Sa等のマークMcであっても良い。この場合、例えば識別線Laが増える毎に長さBが所定ピッチで大きくなるような設定であっても良し、識別形状Saの数が増える毎に長さBが所定ピッチで大きくなるような設定であっても良い。尚、識別形状Saとしては星印としたが三角形や四角形或いは○等であっても良い。
【0023】
また、ドリル軸部3は筒状ストッパ2内に遊び無く回転可能に嵌合させる必要がある。しかし、ドリル軸本体1はドリル軸部3の径Dが異なるものが複数用意されているので、異なる径Dのドリル軸部3を筒状ストッパ2に遊び無く回転可能に嵌合させるには、異なる径Dのドリル軸部3に対応した筒状ストッパ2をそれぞれ用意しておく必要がある。この場合も、ドリル軸部3の径と筒状ストッパ2の内径の対応関係が一目で分かる径識別部を設けておくのが望ましい。この場合、径識別部に上述した長さ識別部と同じような着色やマークを用いることができる。
【0024】
径識別部を色違いとする場合、例えば径Dのドリル軸部3を有するドリル軸本体1と、径Dのドリル軸部3に対応する内径(径Dのドリル軸部3に遊び無く回転可能に嵌合する内径)の筒状ストッパ2は同じ色例えば白色に設定しておく。この場合、ドリル軸本体1側の形式別部は支持フランジ6または工具取付軸部4の外面とすることができる。
【0025】
この色違いとする場合、例えば径Dが2φのドリル軸部3を有するドリル軸本体1と、この2φの径Dのドリル軸部3に対応する内径(2φの径Dのドリル軸部3に遊び無く回転可能に嵌合する内径)の筒状ストッパ2は同じ色例えば白色に設定することができる。また、この径Dを3φとした場合には径識別部の色を赤色等にできる。同様に径を変える毎にドリル軸部3及び筒状ストッパ2の色を同じにすることで、ドリル軸部3と筒状ストッパ2を遊び無く回転可能に嵌合させる対応関係が容易に分かるようにすることができる。尚、このような径の具体的例と色との関係は一例を示したものであって、径識別部の色は説明した色に限定されるものではない。また、径識別部にマークを用いた場合にも、ドリル軸部3と筒状ストッパ2とはマークの数が同じもの同士が対応関係があるように設定できる。
【0026】
しかし、径識別部と長さ識別部を同時に用いる場合には、図12に示したように混同を避けるために、長さ識別部に色を用いて径識別部にマークMcを用いるか、これとは逆に長さ識別部にマークMcを用いて径識別部M2に色を用いると良い。
【0027】
このように径識別部や長さ識別部に、数値ではなく色やマークを用いることで、径や長さの異なる複数種類のドリル軸本体1や筒状ストッパ2が工具保持部に保持されていても、インプラント窩(埋設穴)形成するのに必要な径Dのドリル軸本部を有するドリル軸本体1や必要深さのインプラント窩(埋設穴)を形成するのに必要な長さを有する筒状ストッパ2等を、直感的に迅速且つ容易に識別判断ができる。
【0028】
尚、上述した実施例では、大径筒部2bにストッパ爪9を設けて、支持フランジ6が大径筒部2bから抜けないようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図13に示したようにドリル取付軸部4に嵌合した抜止用筒体20に支持フランジ6の端面に当接する抜止部20aを設けると共に、この抜止用筒体を大径筒部2bの外周に螺着又は軽圧入した構成としてもよい。
【0029】
また、図14に示したように、ドリル取付軸部4に嵌合した抜止用筒体21を大径筒部2bの外周に螺着して、抜止用筒体21と軸方向移動規制段部7cとの間で筒状ストッパ2が軸方向に移動しないようにしても良い。
【0030】
更に、筒状ストッパ2は、大径筒部2aと小径筒部2bを設けた構成としたが、必ずしも大径筒部2aは必要ではなく、図15に示したように長さ方向で全体が同じ外径であっても良い。
【0031】
以上説明したように、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルは、ドリル刃3aを有するドリル軸部3が先端側に設けられ且つ回転操作工具に取り付けるためのドリル取付軸部4が基部側に設けられたドリル軸本体1と、前記ドリル軸本体1の軸線方向の中間部に設けられたストッパ取付部5と、前記ストッパ取付部5に軸線回りに回転自在に取り付けられたストッパ部材(筒状ストッパ2)を備え、前記ストッパ取付部5は前記ストッパ部材(筒状ストッパ2)をフィクスチャー必要深さを形成する位置に保持している。
【0032】
この構成によれば、ドリル軸本体1を回転させて顎骨にインプラント埋設用の埋設穴を形成する際に、ストッパ部材(筒状ストッパ2)が顎骨に当接してドリル(ドリル軸部3)の進みを止めるので、ドリル軸部3のストッパ部材(筒状ストッパ2)までの寸法を設定しておくことで、必要以上に埋設穴を深く形成することなく、顎骨に形成するインプラント用の埋設穴の深さを所望の深さにできる。また、顎骨に埋設穴を形成する際に、ストッパ部材(筒状ストッパ2)が顎骨に当接した状態で、ドリル軸本体1を回転させてもストッパ部材(筒状ストッパ2)が顎骨に対して回転しないので、ストッパ部材(筒状ストッパ2)が顎骨を傷つけることがなく、苦痛を与えることもない。
【0033】
また、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記ストッパ部材は前記ストッパ取付部に回転自在に嵌合保持された筒状ストッパ2である。この構成によれば、簡単な構成でドリル軸本体1を回転させて顎骨にインプラント埋設用の埋設穴を形成する際に、ストッパ部材(筒状ストッパ2)が顎骨に当接してドリル(ドリル軸部3)の進みを止めることができる。
【0034】
更に、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記ストッパ取付部5は前記ドリル軸部3と前記工具取付軸部4との間に設けられた支持フランジ6を有し、前記筒状ストッパ2の軸挿通孔7内に前記支持フランジ6が回転自在に保持されている。この構成によれば、簡単な構成で筒状ストッパ2を支持フランジ6に回転自在に保持させることができる。
【0035】
また、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記筒状ストッパ2は、前記筒状ストッパ2内の軸挿通孔7に設けられた段部(軸方向移動規制段部7c)と前記筒状ストッパ2の端部に一体に設けられたストッパ爪9との間で回転自在に保持されている。この構成によれば、簡単な構成で筒状ストッパ2をストッパ取付部5に回転自在に且つ軸方向に移動不能にことができる。
【0036】
また、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記支持フランジ6の前記ドリル軸部3側の端面の周縁部(6d)には、前記筒状ストッパ2を前記支持フランジ6に嵌合させる際に前記ストッパ爪9の先端部を半径方向にガイドして前記ストッパ爪9を拡開させる大きな面取施されている。この構成によれば、簡単な構成で筒状ストッパ2を支持フランジ6に組付保持させることができる。
【0037】
また、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記支持フランジ6の周面には周方向に間隔をおいて複数の切欠6fが形成されている。この構成によれば、前記ストッパ爪9の先端を切欠6fに合わせて、筒状ストッパ2を強制的にドリル軸部3側に引っ張ることで、筒状ストッパ2をドリル軸本体1から容易に取り外すことができるので、筒状ストッパ2の交換を容易に行うことができる。
【0038】
更に、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記筒状ストッパ2には前記必要深さを示す識別部を外観から判断可能に設けている。この構成によれば、使用者は識別部を外観から直感的に判断できるので、使用間違いを避けることができる。
【0039】
また、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記識別部は互いに異なる色の着色部又は異なるマーク、若しくはこれらの組み合わせとしている。この構成によれば、識別部の構成が簡単であるので、使用者は識別部を外観から直感的に判断できるので、使用間違いを避けることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ドリル軸本体
2 筒状ストッパ(ストッパ部材)
2a 小径筒部
2b 大径筒部(ストッパ部)
3 ドリル軸部
3a ドリル刃
4 ドリル取付軸部
5 ストッパ取付部
6 支持フランジ
6a 端面
6b 端面
6c 外周面
6d 外周縁部
6e 外周縁
6f 切欠
7 挿通孔
7a 小径孔部
7b 大径孔部
7c 軸方向移動規制段部
9 ストッパ爪
9a 傾斜当接面
【技術分野】
【0001】
この発明は、歯科医療においてインプラントを埋設させるインプラント窩(埋設穴)を形成するためのインプラント窩形成用ドリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯を失ったときに、インプラントである人工歯根を顎骨に埋め込み、この人工歯根に義歯を装着して、咀嚼や審美性の回復を図るインプラント治療がある。この人工歯根としては、フィクスチャーと呼ばれるチタン製のスクリュータイプやコーンタイプのものが用いられている。このフィクスチャーを埋設するためのインプラント窩(埋設穴)の形成は、一般にドリルやオステオトームを使用して行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−313285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このドリルを用いる方法では、フィクスチャーを埋設するためのインプラント窩(フィクスチャー埋設穴)の深さを一定にすることが難しく、場合によっては必要以上に深く形成してしまう虞があった。
【0005】
そこで、この発明は、顎骨に形成するインプラント用の埋設穴の深さを必要以上に深く形成することのないインプラント窩形成用ドリルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、この発明のインプラント窩形成用ドリルは、ドリル刃を有するドリル軸部が先端側に設けられ且つ回転駆動工具に取り付けるための工具取付軸部が基部側に設けられたドリル軸本体と、前記ドリル軸本体の軸線方向の中間部に設けられたストッパ取付部と、前記ストッパ取付部に軸線回りに回転自在に取り付けられたストッパ部材を備え、前記ストッパ取付部は前記ストッパ部材をフィクスチャー必要深さを形成する位置に保持していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この構成によれば、ドリル軸本体を回転させて顎骨にインプラント埋設用の埋設穴を形成する際に、ストッパ部材が顎骨に当接してドリルの進みを止めるので、ドリル軸部のストッパ部材までの寸法を設定しておくことで、必要以上に埋設穴を深く形成することなく、顎骨に形成するインプラント用の埋設穴の深さを所望の深さにできる。また、顎骨に埋設穴を形成する際に、ストッパ部材が顎骨に当接した状態でドリル軸本体を回転させても、ストッパ部材が顎骨に対して回転しないので、ストッパ部材が顎骨を傷つけることがなく、苦痛を与えることもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明に係るインプラント窩形成用ドリルの側面図である。
【図2】図1のインプラント窩形成用ドリルの分解側面図である。
【図3】図1のA1−A1線に沿う断面図である。
【図4】図3のA2−A2線に沿う断面図である。
【図5】図2のストッパ取付部の拡大説明図である。
【図6】図5の右側面図である。
【図7】図2の筒状ストッパの拡大説明図である。
【図8】図7の右側面図である。
【図9】(a)〜(c)は長さを異ならせた筒状ストッパと識別部の説明図である。
【図10】(a)〜(c)は長さを異ならせた筒状ストッパと識別部の他の例を示す説明図である。
【図11】(a)〜(c)は長さを異ならせた筒状ストッパと識別部の更に他の例を示す説明図である。
【図12】筒状ストッパの抜け止めの他の構成を示す説明図である。
【図13】筒状ストッパの抜け止めの更に他の構成を示す説明図である。
【図14】筒状ストッパの他の形状を示す説明図である。
【図15】筒状ストッパの他の形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[構成]
図1は本発明に係るインプラント窩形成用ドリルを示し、図2は図1のインプラント窩形成用ドリルの分解側面図、図3は図1の要部断面図である。このインプラント窩形成用ドリルはドリル軸本体1と円形の筒状ストッパ(ストッパ部材)2を備えている。
<ドリル軸本体1>
ドリル軸本体1は、先端側に設けられたドリル刃3aを有するドリル軸部3と、基部側に設けられ、図示しない回転駆動工具に取り付けられる工具取付軸部4を有する。このドリル取付軸部4の端部には、エア式又は電動式の回転駆動工具(図示せず)に装着固定されるチャック部4aが形成されている。
【0010】
また、図2に示したように、ドリル軸本体1の軸線方向の中間部にはストッパ取付部5が設けられている。このストッパ取付部5は、図2〜図6に示した、ドリル軸部3とドリル取付軸部4との間に位置する小径軸部1aと、この小径軸部1aの軸方向中間部に一体に形成された支持フランジ6を有する。
【0011】
この支持フランジ6は、図4,図5に示したように、ドリル軸部3側の端面6aと、ドリル取付軸部4側の端面6bと、外周面6cと、端面6aの外周縁部6dと、端面6bの外周縁6eを有する。この支持フランジ6は、外周縁部6dが通常の面取より大きなR面取をした円盤状を呈している。また、支持フランジ6には、図2,図5,図6に示したように周方向に等間隔隔をおいて複数の切欠6fが形成されている。
<筒状ストッパ2>
筒状ストッパ2は、図1,図2,図4,図5,図7に示したように、小径筒部2aと、この小径筒部2aに同軸で一体に形成された大径筒部2bを有する。この小径筒部2aは図1,図4に示したようにドリル軸部3のドリル取付軸部4側の端部に軸線回りに回転自在に嵌合され、大径筒部2bは図3,図4に示したように支持フランジ6に回転自在に嵌合されている。
【0012】
尚、筒状ストッパ2内には、図1,図2,図4,図7に示したように、挿通孔7が形成されている。この挿通孔7は、小径筒部2a内に形成された小径孔部7aと、大径筒部2b内に形成された大径孔部7bと、小径孔部7aと大径孔部7bとの間に形成された軸方向移動規制段部(第1当接部)7cを有する。この軸方向移動規制段部7cは、ドリル軸部3側から支持フランジ6の端面6aに当接している。
【0013】
また、図1,図2,図3〜図8に示したように、大径筒部2bには、支持フランジ6の工具取付軸部4側の外周縁6eに係合して軸方向移動規制ストッパ(第2当接部)となるストッパ爪9が、工具取付軸部4側に突出して一体に設けられている。このストッパ爪9は、支持フランジ6の複数の切欠6fにそれぞれ対応するように、周方向に間隔をおいて複数設けられている。しかも、ストッパ爪9は、軸方向平面視形状が尖頭を大径筒部2bの中心側に向けた三角形状に形成されている。そして、図4に示したように、ストッパ爪9の内側には、支持フランジ6の係合位置に案内する当接する傾斜当接面9aが設けられている。尚、対向する一対のストッパ爪9,9の先端間の間隔Aは、互いに反対側に位置する一対の切欠6f,6fの間の間隔Bよりも僅かに狭く形成されている。
【0014】
この支持フランジ6,軸方向移動規制段部7c,ストッパ爪9等は、筒状ストッパ2をドリル軸本体1の軸線方向に移動不能にする移動規制部(移動規制機構)を構成している。
[作用]
次に、このような構成のインプラント窩形成用ドリルの組付およびその作用を説明する。
【0015】
インプラント窩形成用ドリルのドリル軸本体1と筒状ストッパ2を組み付けるには、ドリル軸本体1のドリル軸部3をドリル刃3a側から筒状ストッパ2の挿通孔7に大径筒部2b側から挿入して、筒状ストッパ2を支持フランジ6側に移動させる。
【0016】
この移動操作に伴い、大径筒部2bの複数(図では4つ)のストッパ爪9の先端部を支持フランジ6の複数(図では4つ)の切欠6fにそれぞれ臨ませ、ストッパ爪9の先端部を支持フランジ6の端面6aの周縁部に当接させる。この状態で、筒状ストッパ2をドリル取付軸部4側に押圧させると、対向する一対のストッパ爪9,9の先端が拡開するようにストッパ爪9の基部(大径筒部2b側の基部)が撓んで、ストッパ爪9の先端が切欠9内に入り込んで筒状ストッパ2と共にドリル取付軸部4側に移動させられる。
【0017】
尚、ストッパ爪9の先端部を支持フランジ6の切欠6fに臨ませない状態では、ストッパ爪9をドリル取付軸部4側に移動させる際に、対向する一対のストッパ爪9,9の先端が拡開するようにストッパ爪9の基部(大径筒部2b側の基部)が撓みながら、ストッパ爪9の先端部が支持フランジ6のR面取をした外周縁部6dに案内されてドリル取付軸部4側に移動させられる。
【0018】
このような移動に伴い、支持フランジ6の大半が大径筒部2b内に嵌合されると共に、ストッパ爪9の先端部が支持フランジ6の外周面6cからドリル取付軸部4側に外れると、対向するストッパ爪9,9の先端の間隔がストッパ爪9の自己のバネ力で拡開する前の現状に復帰して、ストッパ爪9が筒状ストッパ2のドリル軸部3側への移動を規制する。この位置では、筒状ストッパ2の小径筒部2aがドリル軸部3のドリル刃3aとは反対側の端部に軸線回りに回転可能に嵌合する。
【0019】
この状態では、挿通孔7の小径孔部7aと大径孔部7bとの間の軸方向移動規制段部7cが支持フランジ6の端面に当接可能となると共に、図4のようにストッパ爪9の傾斜当接面9aが支持フランジ6の外周縁6eに当接可能となる。これにより、軸方向移動規制段部7cとストッパ爪9とにより支持フランジ6を軸方向から挟むように僅かな隙間(図示せず)を持って保持させている。このように保持させることで筒状ストッパ2は、ドリル軸本体1の軸線回りには回転可能に且つドリル軸本体1に軸方向に移動不能に保持される。
【0020】
また、筒状ストッパ2を取り外すには、ストッパ爪9の先端を支持フランジ6の切欠6fに位置合わせし、筒状ストッパ2をドリル刃3a側に強制的に移動させることにより、ストッパ爪9の先端が切欠6f内に入り込んだ後に、切欠6fを通過させることにより行う。
【0021】
このようにして組み立てられたインプラント窩形成用ドリルは、ドリル取付軸部4を図示しない回転駆動工具に取り付けて用いる。そして、ドリル軸部3のドリル刃3aを図示しない顎骨に当てて、ドリル軸本体1を回転駆動工具(図示せず)により回転駆動させることで、顎骨にインプラント窩(埋設穴)を形成する。この際、筒状ストッパ2の小径筒部2aが顎骨に当接した後は、ドリル軸本体1が回転させられた状態で顎骨側に押されても、ドリル軸部3は顎骨側に移動することなく筒状ストッパ2に対して回転するのみであるので、顎骨にはドリル刃3aから小径筒部2aまでの長さC以上の深い穴が開けられることはない。
【0022】
尚、筒状ストッパ2は、ドリル軸部3のドリル刃3aから小径筒部2aの端面までの長さ(寸法)がフィクスチャー必要深さ(フィクスチャーを埋設するのに必要な深さ)となるように、小径筒部2aの長さ(寸法)を設定しておく。この小径筒部2aの長さ(寸法)は顎骨のフィクスチャーを埋設する場所や顎骨の大きさ等に応じて変わるので、小径筒部2aのさ(寸法)が異なる筒状ストッパ2を複数用意しておいて、この長さの異なる筒状ストッパ2をドリル軸本体1に対して付け替えることで、インプラント窩(埋設穴)の深さを所望の深さに形成できる。即ち、具体的には、ドリル軸部3で顎骨に必要深さのインプラント窩(埋設穴)を開けるためのドリル軸部3の長さをC、支持フランジ6からドリル刃(刃先)3aまでの長さ(寸法)をL、軸方向移動規制段部7cから筒状ストッパ2の小径筒部2aの先端までの長さ(寸法)をBとしたとき、必要深さのインプラント窩(埋設穴)に対応する長さCは、
C=(L−B)
となる。従って、この長さBの異なる筒状ストッパ2を複数個用意しておいて、この長さBの異なる複数個の筒状ストッパ2から顎骨のフィクスチャーを埋設する場所や顎骨の大きさ等に応じた深さのインプラント窩(埋設穴)を形成可能な、ものを選択して、ドリル軸本体1に装着して使用する。また、長さBの異なる複数の筒状ストッパ2は、図9(a)〜(c)に示したように、異なる色に着色した着色部(外周面)M1を長さ識別部としておくことで、直感的に判断できる。また、長さ識別部としては、図10(a)〜(c)に示したような周方向に延びる識別線Laや、図11(a)〜(c)に示したような識別形状Sa等のマークMcであっても良い。この場合、例えば識別線Laが増える毎に長さBが所定ピッチで大きくなるような設定であっても良し、識別形状Saの数が増える毎に長さBが所定ピッチで大きくなるような設定であっても良い。尚、識別形状Saとしては星印としたが三角形や四角形或いは○等であっても良い。
【0023】
また、ドリル軸部3は筒状ストッパ2内に遊び無く回転可能に嵌合させる必要がある。しかし、ドリル軸本体1はドリル軸部3の径Dが異なるものが複数用意されているので、異なる径Dのドリル軸部3を筒状ストッパ2に遊び無く回転可能に嵌合させるには、異なる径Dのドリル軸部3に対応した筒状ストッパ2をそれぞれ用意しておく必要がある。この場合も、ドリル軸部3の径と筒状ストッパ2の内径の対応関係が一目で分かる径識別部を設けておくのが望ましい。この場合、径識別部に上述した長さ識別部と同じような着色やマークを用いることができる。
【0024】
径識別部を色違いとする場合、例えば径Dのドリル軸部3を有するドリル軸本体1と、径Dのドリル軸部3に対応する内径(径Dのドリル軸部3に遊び無く回転可能に嵌合する内径)の筒状ストッパ2は同じ色例えば白色に設定しておく。この場合、ドリル軸本体1側の形式別部は支持フランジ6または工具取付軸部4の外面とすることができる。
【0025】
この色違いとする場合、例えば径Dが2φのドリル軸部3を有するドリル軸本体1と、この2φの径Dのドリル軸部3に対応する内径(2φの径Dのドリル軸部3に遊び無く回転可能に嵌合する内径)の筒状ストッパ2は同じ色例えば白色に設定することができる。また、この径Dを3φとした場合には径識別部の色を赤色等にできる。同様に径を変える毎にドリル軸部3及び筒状ストッパ2の色を同じにすることで、ドリル軸部3と筒状ストッパ2を遊び無く回転可能に嵌合させる対応関係が容易に分かるようにすることができる。尚、このような径の具体的例と色との関係は一例を示したものであって、径識別部の色は説明した色に限定されるものではない。また、径識別部にマークを用いた場合にも、ドリル軸部3と筒状ストッパ2とはマークの数が同じもの同士が対応関係があるように設定できる。
【0026】
しかし、径識別部と長さ識別部を同時に用いる場合には、図12に示したように混同を避けるために、長さ識別部に色を用いて径識別部にマークMcを用いるか、これとは逆に長さ識別部にマークMcを用いて径識別部M2に色を用いると良い。
【0027】
このように径識別部や長さ識別部に、数値ではなく色やマークを用いることで、径や長さの異なる複数種類のドリル軸本体1や筒状ストッパ2が工具保持部に保持されていても、インプラント窩(埋設穴)形成するのに必要な径Dのドリル軸本部を有するドリル軸本体1や必要深さのインプラント窩(埋設穴)を形成するのに必要な長さを有する筒状ストッパ2等を、直感的に迅速且つ容易に識別判断ができる。
【0028】
尚、上述した実施例では、大径筒部2bにストッパ爪9を設けて、支持フランジ6が大径筒部2bから抜けないようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図13に示したようにドリル取付軸部4に嵌合した抜止用筒体20に支持フランジ6の端面に当接する抜止部20aを設けると共に、この抜止用筒体を大径筒部2bの外周に螺着又は軽圧入した構成としてもよい。
【0029】
また、図14に示したように、ドリル取付軸部4に嵌合した抜止用筒体21を大径筒部2bの外周に螺着して、抜止用筒体21と軸方向移動規制段部7cとの間で筒状ストッパ2が軸方向に移動しないようにしても良い。
【0030】
更に、筒状ストッパ2は、大径筒部2aと小径筒部2bを設けた構成としたが、必ずしも大径筒部2aは必要ではなく、図15に示したように長さ方向で全体が同じ外径であっても良い。
【0031】
以上説明したように、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルは、ドリル刃3aを有するドリル軸部3が先端側に設けられ且つ回転操作工具に取り付けるためのドリル取付軸部4が基部側に設けられたドリル軸本体1と、前記ドリル軸本体1の軸線方向の中間部に設けられたストッパ取付部5と、前記ストッパ取付部5に軸線回りに回転自在に取り付けられたストッパ部材(筒状ストッパ2)を備え、前記ストッパ取付部5は前記ストッパ部材(筒状ストッパ2)をフィクスチャー必要深さを形成する位置に保持している。
【0032】
この構成によれば、ドリル軸本体1を回転させて顎骨にインプラント埋設用の埋設穴を形成する際に、ストッパ部材(筒状ストッパ2)が顎骨に当接してドリル(ドリル軸部3)の進みを止めるので、ドリル軸部3のストッパ部材(筒状ストッパ2)までの寸法を設定しておくことで、必要以上に埋設穴を深く形成することなく、顎骨に形成するインプラント用の埋設穴の深さを所望の深さにできる。また、顎骨に埋設穴を形成する際に、ストッパ部材(筒状ストッパ2)が顎骨に当接した状態で、ドリル軸本体1を回転させてもストッパ部材(筒状ストッパ2)が顎骨に対して回転しないので、ストッパ部材(筒状ストッパ2)が顎骨を傷つけることがなく、苦痛を与えることもない。
【0033】
また、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記ストッパ部材は前記ストッパ取付部に回転自在に嵌合保持された筒状ストッパ2である。この構成によれば、簡単な構成でドリル軸本体1を回転させて顎骨にインプラント埋設用の埋設穴を形成する際に、ストッパ部材(筒状ストッパ2)が顎骨に当接してドリル(ドリル軸部3)の進みを止めることができる。
【0034】
更に、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記ストッパ取付部5は前記ドリル軸部3と前記工具取付軸部4との間に設けられた支持フランジ6を有し、前記筒状ストッパ2の軸挿通孔7内に前記支持フランジ6が回転自在に保持されている。この構成によれば、簡単な構成で筒状ストッパ2を支持フランジ6に回転自在に保持させることができる。
【0035】
また、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記筒状ストッパ2は、前記筒状ストッパ2内の軸挿通孔7に設けられた段部(軸方向移動規制段部7c)と前記筒状ストッパ2の端部に一体に設けられたストッパ爪9との間で回転自在に保持されている。この構成によれば、簡単な構成で筒状ストッパ2をストッパ取付部5に回転自在に且つ軸方向に移動不能にことができる。
【0036】
また、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記支持フランジ6の前記ドリル軸部3側の端面の周縁部(6d)には、前記筒状ストッパ2を前記支持フランジ6に嵌合させる際に前記ストッパ爪9の先端部を半径方向にガイドして前記ストッパ爪9を拡開させる大きな面取施されている。この構成によれば、簡単な構成で筒状ストッパ2を支持フランジ6に組付保持させることができる。
【0037】
また、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記支持フランジ6の周面には周方向に間隔をおいて複数の切欠6fが形成されている。この構成によれば、前記ストッパ爪9の先端を切欠6fに合わせて、筒状ストッパ2を強制的にドリル軸部3側に引っ張ることで、筒状ストッパ2をドリル軸本体1から容易に取り外すことができるので、筒状ストッパ2の交換を容易に行うことができる。
【0038】
更に、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記筒状ストッパ2には前記必要深さを示す識別部を外観から判断可能に設けている。この構成によれば、使用者は識別部を外観から直感的に判断できるので、使用間違いを避けることができる。
【0039】
また、この発明の実施の形態のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記識別部は互いに異なる色の着色部又は異なるマーク、若しくはこれらの組み合わせとしている。この構成によれば、識別部の構成が簡単であるので、使用者は識別部を外観から直感的に判断できるので、使用間違いを避けることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ドリル軸本体
2 筒状ストッパ(ストッパ部材)
2a 小径筒部
2b 大径筒部(ストッパ部)
3 ドリル軸部
3a ドリル刃
4 ドリル取付軸部
5 ストッパ取付部
6 支持フランジ
6a 端面
6b 端面
6c 外周面
6d 外周縁部
6e 外周縁
6f 切欠
7 挿通孔
7a 小径孔部
7b 大径孔部
7c 軸方向移動規制段部
9 ストッパ爪
9a 傾斜当接面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリル刃を有するドリル軸部が先端側に設けられ且つ回転駆動工具に取り付けるための工具取付軸部が基部側に設けられたドリル軸本体と、前記ドリル軸本体の軸線方向の中間部に設けられたストッパ取付部と、前記ストッパ取付部に軸線回りに回転自在に取り付けられたストッパ部材を備え、前記ストッパ取付部は前記ストッパ部材をフィクスチャー必要深さを形成する位置に保持していることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項2】
請求項1に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記ストッパ部材は前記ストッパ取付部に回転自在に嵌合保持された筒状ストッパであることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項3】
請求項2に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記ストッパ取付部は前記ドリル軸部と前記工具取付軸部との間に設けられた支持フランジを有し、前記筒状ストッパの軸挿通孔内に前記支持フランジが回転自在に保持されていることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項4】
請求項3に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記筒状ストッパは、前記筒状ストッパ内の軸挿通孔に設けられた段部と前記筒状ストッパの端部に一体に設けられたストッパ爪との間で回転自在に保持されていることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項5】
請求項4に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記支持フランジの前記ドリル軸部側の端面の周縁部には、前記筒状ストッパを前記支持フランジに嵌合させる際に前記ストッパ爪の先端部を半径方向にガイドして前記ストッパ爪を拡開させる大きな面取が施されていることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項6】
請求項5に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記支持フランジの周面には周方向に間隔をおいて複数の切欠が形成されていることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項7】
請求項2に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記筒状ストッパには前記必要深さを示す識別部を外観から判断可能に設けたことを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項8】
請求項8に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記識別部は互いに異なる色の着色部又は異なるマーク、若しくはこれらの組み合わせであることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項1】
ドリル刃を有するドリル軸部が先端側に設けられ且つ回転駆動工具に取り付けるための工具取付軸部が基部側に設けられたドリル軸本体と、前記ドリル軸本体の軸線方向の中間部に設けられたストッパ取付部と、前記ストッパ取付部に軸線回りに回転自在に取り付けられたストッパ部材を備え、前記ストッパ取付部は前記ストッパ部材をフィクスチャー必要深さを形成する位置に保持していることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項2】
請求項1に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記ストッパ部材は前記ストッパ取付部に回転自在に嵌合保持された筒状ストッパであることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項3】
請求項2に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記ストッパ取付部は前記ドリル軸部と前記工具取付軸部との間に設けられた支持フランジを有し、前記筒状ストッパの軸挿通孔内に前記支持フランジが回転自在に保持されていることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項4】
請求項3に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記筒状ストッパは、前記筒状ストッパ内の軸挿通孔に設けられた段部と前記筒状ストッパの端部に一体に設けられたストッパ爪との間で回転自在に保持されていることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項5】
請求項4に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記支持フランジの前記ドリル軸部側の端面の周縁部には、前記筒状ストッパを前記支持フランジに嵌合させる際に前記ストッパ爪の先端部を半径方向にガイドして前記ストッパ爪を拡開させる大きな面取が施されていることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項6】
請求項5に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記支持フランジの周面には周方向に間隔をおいて複数の切欠が形成されていることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項7】
請求項2に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記筒状ストッパには前記必要深さを示す識別部を外観から判断可能に設けたことを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【請求項8】
請求項8に記載のインプラント窩形成用ドリルにおいて、前記識別部は互いに異なる色の着色部又は異なるマーク、若しくはこれらの組み合わせであることを特徴とするインプラント窩形成用ドリル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−206195(P2011−206195A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75732(P2010−75732)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(510086578)
【出願人】(503228538)株式会社マテリアライズ デンタル ジャパン (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(510086578)
【出願人】(503228538)株式会社マテリアライズ デンタル ジャパン (2)
【Fターム(参考)】
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