説明

インプリント用硬化性組成物、硬化物およびパターン形成方法

【課題】繰り返しパターン転写を行ってもモールド汚れ、パターン欠陥が発生せず、かつドライエッチング後のラインエッジラフネスに優れるナノインプリント用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)重合性単量体、(B)光重合開始剤および(C)界面活性剤を含有し、前記(C)界面活性剤の含有量が溶剤を除く全成分中の2〜20質量%である、インプリント用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント用硬化性組成物、硬化物およびパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント法、特に、微細パターンを形成することを目的とする、ナノインプリント法は、光ディスク製作ではよく知られているエンボス技術を発展させ、凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートと呼ばれる)を、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノ構造等の微細構造が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0003】
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる熱インプリント法(例えば、非特許文献1参照)と、硬化性組成物を用いる光インプリント法(例えば、非特許文献2参照)の2通りの技術が提案されている。熱ナノインプリント法の場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。この方法は多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、特許文献1および2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリントの方法が開示されている。
【0004】
一方、透明モールドや透明基材を通して光を照射し、光ナノインプリント用硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント法では、モールドのプレス時に転写される材料を加熱する必要がなく室温でのインプリントが可能になる。最近では、この両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント法などの新しい展開も報告されている。
【0005】
このようなナノインプリント法においては、以下のような応用技術が提案されている。
第一の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合である。例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。第二の技術は、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、これをμ−TAS(Micro-Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものである。第3の技術としては、形成されたパターンをマスクとし、エッチング等の方法により基板を加工する用途に利用されるものである。かかる技術では高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィ技術に代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製、パターンドメディアと呼ばれる次世代ハードディスクの磁性体加工等に応用できる。前記の技術を始め、これらの応用に関するナノインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
【0006】
ナノインプリント法の適用例として、まず、高密度半導体集積回路作製への応用例を説明する。近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。しかし、さらなる微細化要求に対して、微細パターン解像性、装置コスト、スループットの3つを満たすのが困難となってきている。これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術としてナノインプリントリソグラフィ(光ナノインプリント法)が提案された。例えば、下記特許文献1および特許文献3にはシリコンウエハをスタンパとして用い、25nm以下の微細構造を転写により形成するナノインプリント技術が開示されている。本用途においては数十nmレベルのパターン形成性と基板加工時にマスクとして機能するための高いエッチング耐性とが要求される。
【0007】
ナノインプリント法の次世代ハードディスクドライブ(HDD)作製への応用例を説明する。HDDは、ヘッドの高性能化とメディアの高性能化とを両輪とし、大容量化と小型化との歴史を歩んできた。HDDは、メディア高性能化という観点においては、面記録密度を高めることで大容量化を達成してきている。しかしながら記録密度を高める際には、磁気ヘッド側面からの、いわゆる磁界広がりが問題となる。磁界広がりはヘッドを小さくしてもある値以下には小さくならないため、結果としてサイドライトと呼ばれる現象が発生してしまう。サイドライトが発生すると、記録時に隣接トラックへの書き込みが生じ、既に記録したデータを消してしまう。また、磁界広がりによって、再生時には隣接トラックからの余分な信号を読みこんでしまうなどの現象が発生する。このような問題に対し、トラック間を非磁性材料で充填し、物理的、磁気的に分離することで解決するディスクリートトラックメディアやビットパターンドメディアといった技術が提案されている。これらメディア作製において磁性体あるいは非磁性体パターンを形成する方法としてナノインプリントの応用が提案されている。本用途においても数十nmレベルのパターン形成性と基板加工時にマスクとして機能するための高いエッチング耐性とが要求される。
【0008】
次に、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットディスプレイへのナノインプリント法の応用例について説明する。
LCD基板やPDP基板の大型化や高精細化の動向に伴い、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとして光ナノインプリントリ法が、近年注目されている。そのため、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる光硬化性レジストの開発が必要になってきている。
さらにLCDなどの構造部材としては、特許文献4および特許文献5に記載される透明保護膜材料や、特許文献5に記載されるスペーサなどに対する光ナノインプリント法の応用も検討され始めている。このような構造部材用のレジストは、前記エッチングレジストとは異なり、最終的にディスプレイ内に残るため、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。
また、液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサも永久膜の一種であり、従来のフォトリソグラフィにおいては、樹脂、光重合性モノマーおよび開始剤からなる光硬化性組成物が一般的に広く用いられてきた(例えば、特許文献6参照)。スペーサは、一般には、カラーフィルタ基板上に、カラーフィルタ形成後、もしくは、前記カラーフィルタ用保護膜形成後、光硬化性組成物を塗布し、フォオトリソグラフィにより10μm〜20μm程度の大きさのパターンを形成し、さらにポストベイクにより加熱硬化して形成される。
【0009】
さらに、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶などの永久膜形成用途においてもナノインプリントリソグラフィは有用である。
これら永久膜用途においては、形成されたパターンが最終的に製品に残るため、耐熱性、耐光性、耐溶剤性、耐擦傷性、外部圧力に対する高い機械的特性、硬度など主に膜の耐久性や強度に関する性能が要求される。
このように従来フォトリソグラフィ法で形成されていたパターンのほとんどがナノインプリントで形成可能であり、安価に微細パターンが形成できる技術として注目されている。
【0010】
ナノインプリントを産業に利用する上では、良好なパターン形成性に加えて上述のように用途に応じた特性が要求される。例えば基板加工用途においては高いエッチング耐性やエッチング後のパターン精度が要求される。
特許文献7および特許文献8において、含フッ素モノマーを含有する光硬化性組成物をナノインプリントに用いた際に、良好なパターン形成性を示すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【特許文献3】米国特許第5,259,926号公報
【特許文献4】特開2005−197699号公報
【特許文献5】特開2005−301289号公報
【特許文献6】特開2004−240241号公報
【特許文献7】特開2006−114882号公報
【特許文献8】特開2008−95037号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】S.Chou et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al,:Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献7および8を検討したところ、これらの組成物を用いて繰り返しパターン転写を行うとパターン形成性が劣化したりモールドに組成物が付着する問題があることが分かった。さらにこのような組成物を基板加工用途に用いるとエッチング後にパターン側壁に凹凸が生じるいわゆるラインエッジラフネスが悪化してしまう問題があることが分かった。
本発明の目的は、上記課題従来技術が有していた課題を解決することを目的とするものであって、繰り返しパターン転写を行ってもモールド汚れおよびパターン欠陥が発生せず、かつドライエッチング後のラインエッジラフネスに優れるインプリント用硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題について、本願発明者が鋭意検討を行った結果、パターン形成する際、パターン形成層の表面を界面活性剤がある程度被覆することが必要であるが、パターンを形成する膜が薄い場合など、ハジキが発生したりして、パターン形成層の表面を界面活性剤で被覆することが十分に行われていないことが原因であることを見出した。そして、パターン形成層の表面を界面活性剤で被覆するための手段として、界面活性剤の添加量を増やすことを見出し、本発明を完成するに至った。従来、界面活性剤の適量は、1%未満であるとするのが周知となっており、界面活性剤の添加量を増やすことは、得られるパターンの強度等の観点から、問題が多いと考えられていた。すなわち、本発明の技術は、これまでの当業者の常識を根底から覆すものである。
具体的には、下記手段により、上記課題を解決しうることを見出した。
(1)(A)重合性単量体、(B)光重合開始剤および(C)界面活性剤を含有し、前記(C)界面活性剤の含有量が溶剤を除く全成分中の2〜20質量%である、インプリント用硬化性組成物。
(2)(A)重合性単量体が、芳香族基を有する重合性単量体である、(1)に記載のインプリント用硬化性組成物。
(3)(A)重合性単量体が、(メタ)アクリレート基を有する、(1)または(2)に記載のインプリント用硬化性組成物。
(4)(A)重合性単量体が、1官能および/または2官能である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
(5)(A)重合性単量体が、1官能(メタ)アクリレートおよび2官能(メタ)アクリレートであり、前記1官能(メタ)アクリレートおよび2官能(メタ)アクリレートの少なくとも一方は、芳香族基を有する、(1)に記載のインプリント用硬化性組成物。
(6)(C)界面活性剤がフロロアルキル基及び/またはフロロアルキルエーテル基を有する、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
(7)(C)界面活性剤がフロロアルキル基及び/またはフロロアルキルエーテル基を有する繰り返し単位を含有するポリマーである、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
(8)(C)界面活性剤が下記式(I)および/または(II)で表される繰り返し単位を含有するポリマーである、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【化1】

(下記式(I)および(II)において、R1はアルキル基であり、X1〜X3は、それぞれ、アルキレン基であり、Rf1は含フッ素基であり、R4は水素原子またはアルキル基であり、Rf2は含フッ素基である。それぞれの繰り返し単位は、同じであってもよいし、異なっていても良い。)
(9)(C)界面活性剤が下記式(I)で表される繰り返し単位を含有するポリマーである、(8)に記載のインプリント用硬化性組成物。
(10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
(11)(1)〜(9)のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を基板上に設置してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
(12)インプリント用硬化性組成物を基材上に設置してパターン形成層を形成する方法がスピンコート法またはインクジェット法である(11)に記載のパターン形成方法。
(13)厚さが500nm以下のパターンを形成することを特徴とする、(11)または(12)に記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、繰り返しパターン転写を行ってもモールド汚れ、パターン欠陥が発生せず、かつドライエッチング後のラインエッジラフネスに優れるナノインプリント用硬化性組成物を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0017】
なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、“官能基”は重合反応に関与する基をいう。
なお、本発明でいう“インプリント”は、好ましくは、1nm〜10mmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm〜100μmのサイズ(ナノインプリント)のパターン転写をいう。
尚、本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0018】
[本発明のインプリント用硬化性組成物]
本発明のインプリント用硬化性組成物(以下、単に「本発明の組成物」と称する場合もある)は、(A)重合性単量体、(B)光重合開始剤および(C)界面活性剤とを含有し、該界面活性剤の含量が、溶剤を除く全成分中2〜20質量%であることを特徴とする。
【0019】
(重合性単量体)
(A)重合性単量体
重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);オキセタン化合物;ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体が好ましい。
【0020】
前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては、特開2009−73078号公報の段落番号0046に記載のものを好ましく採用することができる。
エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体として、芳香族基あるいは脂環炭化水素基を有する(メタ)アクリレートがドライエッチング耐性の観点で好ましく、芳香族基を有する(メタ)アクリレートが、ドライエッチング耐性、ドライエッチング後のラインエッジラフネス)の観点からより好ましい。芳香族基あるいは脂環炭化水素基を有する(メタ)アクリレートの好ましい例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。
本発明で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体としては、特開2009−73078号公報の段落番号0047に記載のものを好ましく採用することができる。
【0022】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジアクリレート、カテコールジアクリレート、キシリレンジアクリレートなどの芳香族ジアクリレートが本発明に好適に用いられ、ドライエッチング耐性、ドライエッチング後のラインエッジラフネスの観点から芳香族ジアクリレートが好ましい。
【0023】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体としては、特開2009−73078号公報の段落番号0049に記載のものを好ましく採用することができる。
【0024】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0025】
前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0026】
本発明に好ましく使用することのできる前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、特開2009−73078号公報の段落番号0053に記載のものを好ましく採用することができる。
【0027】
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0028】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
【0030】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。
ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、特開2009−73078号公報の段落番号0057に記載のものを好ましく採用することができる。
【0031】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
また、本発明で用いる他の重合性単量体としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0033】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0034】
本発明で用いる他の重合性単量体としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いることもできる。前記プロペニルエーテルまたはブテニルエーテルとしては、例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0035】
本発明の組成物では、前記重合性官能基が(メタ)アクリレート基であることが、感度、パターン強度の観点から好ましく、アクリレート基であることがより好ましい。
【0036】
上述の重合性単量体は、例えば、本発明の溶剤を除く全組成物中に65〜97.99質量%、好ましくは80〜97.9質量%、さらに好ましくは90〜96質量%の範囲で含むことがより好ましい。
【0037】
1官能の重合性不飽和単量体は、通常、反応性希釈剤として用いられ、本発明の組成物の粘度を低下させる効果を有し、重合性単量体の総量に対して、15質量%以上添加されることが好ましく、20〜80質量%がさらにこのましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
【0038】
不飽和結合含有基を2個有する単量体(2官能重合性不飽和単量体)は、全重合性不飽和単量体の好ましくは20〜100質量%、より好ましくは30〜100質量%、特に好ましくは40〜100質量%の範囲で添加される。1官能および2官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは30〜100質量%、特に好ましくは50〜100質量%の範囲で添加される。不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは、40質量%以下の範囲で添加される。重合性不飽和結合含有基を3個以上有する重合性不飽和単量体の割合を80質量%以下とすることにより、組成物の粘度を下げられるため好ましい。
本発明において、重合性単量体は1官能及び/又は2官能重合性単量体が好ましく、1官能及び/又は2官能(メタ)アクリレート重合性単量体がより好ましい。
【0039】
本発明における重合性単量体は、芳香族基を有する重合性単量体を含有していることがドライエッチング耐性の観点から好ましく、芳香族基を有する重合性単量体が(メタ)アクリレート基を1つ有する重合性単量体および/または(メタ)アクリレート基を2つ有する重合性単量体であることがより好ましく、芳香族基を有する重合性単量体が、(メタ)アクリレート基を1つ有する重合性単量体および(メタ)アクリレート基を2つ有する重合性単量体であることが特に好ましい。さらに、(メタ)アクリレート基は、アクリレート基であることが好ましい。
【0040】
また、本発明の重合性単量体においてウレタン基、水酸基、アミド基を有する重合性単量体の総含有量が全重合性単量体の20質量%以下であることが好ましい。ウレタン基、水酸基、アミド基を有する重合性単量体を20質量%以下とすることでパターン形成性、エッチング後のラインエッジラフネスが良好となる。
【0041】
本発明における重合性単量体としては、フッ素原子を有さない重合性単量体を全重合性単量体に対し、90〜100質量%含有することが好ましい。フッ素原子を有さない重合性単量体を多くすることで、ドライエッチング耐性が向上し、また、ドライエッチング後のパターンのラインエッジラフネスが改良される。
【0042】
(光重合開始剤)
本発明の組成物には、光重合開始剤が含まれる。本発明に用いられる光重合開始剤は、光照射により上述の重合性単量体を重合する活性種を発生する化合物であればいずれのものでも用いることができる。光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。また、本発明において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
【0043】
本発明に用いられる光重合開始剤の含有量は、溶剤を除く全組成物中、例えば、0.01〜15質量%であり、好ましくは0.1〜12質量%であり、さらに好ましくは0.2〜7質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量%以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0044】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。
形成したパターンの可視光への透明性の観点から重合開始剤としては400nm以上の波長に対する吸収が小さいものが好ましく、より好ましくは400〜800nmの光に対するモル吸光係数が2000以下の重合開始剤である。
【0045】
なお、本発明において「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0046】
−界面活性剤−
本発明の組成物は、界面活性剤を含有する。本発明における界面活性剤は、その種類を特に定めることなく用いることができるが、非イオン性界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤は、フロロアルキル基及び/またはフロロアルキルエーテル基を有することが好ましい。フロロアルキル基は、好ましくは炭素数6以下のフロロアルキル基であり、具体的には、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、ヘプタフロロプロピル基、ノナフロロブチル基、トリデカフロロヘキシル基、ヘキサフロロイソプロピル基が挙げられる。フロロアルキルエーテル基としては、アルキル鎖の炭素数が6以下であることが好ましい。本発明では特に、パーフロロポリエチレングリコールユニットおよび/またはパーフロロポリプロピレングリコールユニットを有するフッ素系界面活性剤が好ましい。さらに、フッ素系界面活性剤は、フロロアルキル基および/またはフロロアルキルエーテル基を有する繰り返し単位を含有するポリマーであることが好ましい。
ポリマーである場合、重量平均分子量は1000〜100000が好ましく、下記式(I)の界面活性剤の場合1000〜50000、式(II)の界面活性剤の場合3000〜80000がそれぞれ好ましい。
【0047】
好ましいフッ素系界面活性剤としては下式(I)または(II)で表される繰り返し単位を有する界面活性剤であり、より好ましくは一般式(I)で表される界面活性剤である。
【化2】

(下記式(I)および(II)において、R1はアルキル基であり、X1〜X3は、それぞれ、アルキレン基であり、Rf1は含フッ素基であり、R4は水素原子またはアルキル基であり、Rf2は含フッ素基である。それぞれの繰り返し単位は、同じであってもよいし、異なっていても良い。)
【0048】
1は、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
1〜X3は、それぞれ、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
Rf1は、好ましくは炭素数1〜8のフロロアルキル基であり、より好ましくは炭素数1または2のフロロアルキル基であり、パーフロロアルキル基であることがさらに好ましい。
4のアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、メチル基がより好ましい。
Rf2は、好ましくはフッ素原子に置換された炭素数が1〜8のフロロアルキル基であり、より好ましくはフッ素原子に置換された炭素数が4〜6のフロロアルキル基であり、さらに好ましくは、−(CH2m1(CF2m2CF3で表されるフロロアルキル基である。ここで、m1は0〜3、m2は3〜5を表す。
式(I)で表される繰り返し単位の平均数は、3〜30であることが好ましく、5〜25であることがより好ましい。
【0049】
本発明における界面活性剤は重合性基を含有していることが好ましい。ポリマーであって、かつ、重合性基を有するものが、界面活性剤を多く添加しても、モールド汚染が悪化せず好ましい。重合性基は重合性基を有する繰り返し単位を含有していても良いし、ポリマー末端に結合していても良い。本発明における界面活性剤として、重合性基を有する繰り返し単位を主成分とするポリマーを用いる場合、該ポリマー中における重合性基の含有量は、全繰り返し単位に対し、1〜50mol%が好ましく、5〜40mol%がより好ましく、10〜40mol%が更に好ましい。重合性基がポリマー末端に結合している場合、重合性基の数は、1〜3であることが好ましく、2であることがより好ましい。
界面活性剤が有する重合性基としては、ラジカル重合性基(例えば(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基、スチリル基など)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキセタニル基など)が挙げられ、ラジカル重合性基が好ましく、(メタ)アクリレート基がより好ましい。
本発明における界面活性剤としては、上記式(I)で表される繰り返し単位を有する界面活性剤であって、重合性基を有する界面活性剤が好ましい。この場合、式(I)で表される繰り返し単位からなるポリマーの両端に、直接にまたは連結基を介してアクリレート基が結合している界面活性剤が好ましい。
【0050】
本発明では、フッ素系界面活性剤以外であってもよく、例えば、シリコーン系界面活性剤やフッ素・シリコーン系界面活性剤が挙げられる。シリコーン系界面活性剤としては(変性)シリコーンオイルが好ましく、変性シリコーンオイルがより好ましい。変性シリコーンオイルとしてはアルキル、アラルキル、ポリエーテル、アルコール、エポキシ、エステルまたはこれらの複数を有する変性シリコーンオイルが好ましい。
【0051】
本発明で用いることのできる、非イオン性のフッ素系界面活性剤の例としては、商品名 フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)トーケムプロダクツ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、F780F(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
また、非イオン性の前記シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、KP−341(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
また、前記フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも、大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0052】
本発明に用いられる界面活性剤の含有量は、2〜20質量%であり、好ましくは2〜10質量%であり、さらに好ましくは3〜8質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤の含有量を適切な範囲に調整することで、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
【0053】
(その他成分)
本発明の組成物は、上述の重合性単量体、光重合開始剤および界面活性剤の他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分、顔料、染料等その他の成分を含んでいてもよい。本発明の組成物としては、界面活性剤、並びに、酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0054】
−酸化防止剤−
さらに、本発明の組成物には、公知の酸化防止剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる酸化防止剤の含有量は、重合性単量体に対し、例えば、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。二種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0055】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名 Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0056】
−重合禁止剤−
さらに、本発明の組成物には、重合禁止剤を含有することが好ましい。重合禁止剤の含有量としては、全重合性単量体に対し、0.001〜1質量%であり、より好ましくは0.005〜0.5質量%、さらに好ましくは0.008〜0.05質量%である、重合禁止剤を適切な量配合することで高い硬化感度を維持しつつ経時による粘度変化が抑制できる。
【0057】
−溶剤−
本発明の組成物には、種々の必要に応じて、溶剤を用いることができる。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には溶剤を含有していることが好ましい。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜200℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
低沸点の重合性化合物も溶剤として用いることが出来る。溶剤として用いることができる重合性化合物として、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルなどの低級アルキルアクリレート、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。溶剤として用いることができる重合性化合物としては常圧における沸点200℃以下の重合性化合物が好ましい。
本発明の組成物中における前記溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性改善の観点から、全組成物中0〜99質量%が好ましく、0〜97質量%がさらに好ましい。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には20〜99質量%が好ましく、40〜99質量%がさらに好ましく、70〜98質量%が特に好ましい。
【0058】
−ポリマー成分−
本発明の組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
本発明の組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点からも、さらにポリマー成分を含有していてもよい。前記ポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性単量体との相溶性の観点から、2000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましい。ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは2質量%以下である。本発明の組成物において溶剤を除く成分中、分子量2000以上の化合物の含有量が30質量%以下であると、パターン形成性が向上することからは、該成分は、少ない方が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0059】
本発明の組成物には前記成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0060】
本発明の組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。また、前記各成分を混合した後、例えば、孔径0.003μm〜5.0μmのフィルターで濾過することが好ましい。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0061】
本発明の組成物は溶剤を除く全成分の混合液の粘度が100mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1〜70mPa・s、さらに好ましくは2〜50mPa・s、最も好ましくは3〜30mPa・sである。
【0062】
[パターン形成方法]
次に、本発明の組成物を用いたパターン(特に、微細凹凸パターン)の形成方法について説明する。本発明のパターン形成方法では、本発明の組成物を基板または支持体(基材)上に設置してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を経て本発明の組成物を硬化することで、微細な凹凸パターンを形成することができる。
ここで、本発明の組成物は、光照射後にさらに加熱して硬化させることが好ましい。具体的には、基材(基板または支持体)上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を設置し、必要に応じて乾燥させて本発明の組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体(基材上にパターン形成層が設けられたもの)を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射により硬化させる。本発明のパターン形成方法による光インプリントリソグラフィは、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
【0063】
本発明の組成物は、インプリント法により微細なパターンを低コスト且つ高い精度で形成すること可能である。このため、従来のフォトリソグラフィ技術を用いて形成されていたものをさらに高い精度かつ低コストで形成することができる。例えば、基板または支持体上に本発明の組成物を塗布し、該組成物からなる層を露光、硬化、必要に応じて乾燥(ベーク)させることによって、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜や、半導体集積回路、記録材料、あるいはフラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することも可能である。特に本発明の組成物を用いて形成されたパターンは、エッチング性にも優れ、フッ化炭素等を用いるドライエッチングのエッチングレジストとしても好ましく用いることができる。
【0064】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)や電子材料の基板加工に用いられるレジストにおいては、製品の動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属あるいは有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることが望ましい。このため、本発明の組成物中における金属または有機物のイオン性不純物の濃度としては、通常、10ppm以下、好ましくは100ppb以下、より好ましくは10ppb以下にする。
【0065】
以下において、本発明の組成物を用いたパターン形成方法(パターン転写方法)について具体的に述べる。
本発明のパターン形成方法においては、まず、本発明の組成物を基材上に適応してパターン形成層を形成する。
本発明の組成物を基材上に設置する方法としては、一般によく知られた設置方法、通常は、塗布を採用できる。
本発明の設置方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法、あるいはインクジェット法などにより基材上に塗膜あるいは液滴を設置することができ、スピンコート法が好ましい。また、本発明の組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.03μm〜30μm程度である。パターン形成層の厚さが500nm以下の時に本発明のインプリント用硬化組成物を用いると、より顕著な効果が得られ好ましく、より好ましくはパターン形成層の厚さが200nm以下であり、更に好ましくはパターン形成層の厚さが100nm以下であり、最も好ましくはパターン形成層の厚さが50nm以下である。本発明の組成物を、多重塗布により塗布してもよい。インクジェット法などにより基材上に液滴を設置する方法において、液滴の量は1pl〜20pl程度が好ましい。さらに、基材と本発明の組成物からなるパターン形成層との間には、例えば平坦化層等の他の有機層などを形成してもよい。これにより、パターン形成層と基板とが直接接しないことから、基板に対するごみの付着や基板の損傷等を防止することができる。尚、本発明の組成物によって形成されるパターンは、基材上に有機層を設けた場合であっても、有機層との密着性に優れる。
【0066】
本発明の組成物を塗布するための基材(基板または支持体)は、種々の用途によって選択可能であり、例えば、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni,Cu,Cr,Feなどの金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、磁性体基材、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基板など特に制約されない。また、基材の形状も特に限定されるものではなく、板状でもよいし、ロール状でもよい。また、後述のように前記基材としては、モールドとの組み合わせ等に応じて、光透過性、または、非光透過性のものを選択することができる。
【0067】
次いで、本発明のパターン形成方法においては、パターン形成層にパターンを転写するために、パターン形成層表面にモールドを押接する。これにより、モールドの押圧表面にあらかじめ形成された微細なパターンをパターン形成層に転写することができる。
また、パターンを有するモールドに本発明の組成物を塗布し、基板を押接してもよい。
本発明で用いることのできるモールド材について説明する。本発明の組成物を用いた光インプリントリソグラフィは、モールド材および/または基材の少なくとも一方に、光透過性の材料を選択する。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基材の上に本発明の組成物を塗布してパターン形成層を形成し、この表面に光透過性のモールドを押接し、モールドの裏面から光を照射し、前記パターン形成層を硬化させる。また、光透過性基材上に本発明の組成物を塗布し、モールドを押し当て、基材の裏面から光を照射し、組成物を硬化させることもできる。
前記光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0068】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。前記モールド上のパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0069】
本発明において光透過性の基材を用いた場合に使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの基板などが例示され、特に制約されない。また、モールドの形状も特に制約されるものではなく、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0070】
本発明のパターン形成方法で用いられるモールドは、本発明の組成物とモールド表面との剥離性を向上させるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドとしては、シリコン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC−1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0071】
本発明の組成物を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、本発明のパターン形成方法では、通常、モールド圧力を10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部の組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0072】
本発明のパターン形成方法中、前記パターン形成層に光を照射する工程における光照射の照射量は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、本発明の組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて適宜決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、本発明のパターン形成方法中、光照射時における好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
【0073】
本発明の組成物を硬化させるために用いられる光は特に限定されず、例えば、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でもよい。
【0074】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2未満では、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しやすくなる。一方、1000mJ/cm2を超えると組成物の分解による永久膜の劣化の恐れが生じる。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御してもよい。
【0075】
本発明のパターン形成方法においては、光照射によりパターン形成層を硬化させた後、必要におうじて硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程を含んでいてもよい。光照射後に本発明の組成物を加熱硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
【0076】
[パターン]
上述のように本発明のパターン形成方法によって形成されたパターンは、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)やエッチングレジストとして使用することができる。また、前記永久膜は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいてもよい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、より永久膜の変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御してもよい。勿論、反応が進行しないレベルで遮光することが好ましい。
【0077】
本発明のパターン形成方法によって形成されたパターンは、エッチングレジストとしても有用である。本発明の組成物をエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基材として例えばSiO2等の薄膜が形成されたシリコンウエハ等を用い、基材上に本発明のパターン形成方法によってナノオーダーの微細なパターンを形成する。その後、ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF4等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基材上に所望のパターンを形成することができる。本発明の組成物は、特にドライエッチングに対するエッチング耐性が良好である。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0079】
(硬化性組成物の調製)
表1に示す材料を混合し、これを溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈し3%溶液を作成した。これを0.1μmのテトラフロロエチレン製フィルターでろ過し、硬化性組成物溶液を作成した。
【0080】
【表1】

【0081】
<重合性単量体>
【化3】

R−1:大阪有機社製、IBXA
R−2:大阪有機社製、ビスコート#230
R−3:1−ナフトールとアクリル酸クロリドより合成
R−4:キシリレンジクロリドとアクリル酸より合成
【0082】
<光重合開始剤>
P−1:2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィンオキシド(Lucirin TPO−L:BASF社製)
【0083】
<界面活性剤>
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0084】
W−1:PolyFox(登録商標)PF−636(OMNOVA社製)
W−2:PolyFox(登録商標)PF−656(OMNOVA社製)
W−3:PolyFox(登録商標)PF−6320(OMNOVA社製)
W−4:PolyFox(登録商標)PF−6520(OMNOVA社製)
W−5:PolyFox(登録商標)PF−3320(OMNOVA社製)
W−6:パーフロロヘキシルエチルアクリレート/ポリプロピレンオキシアクリレート共重合体(パーフロロヘキシルエチルアクリレートとポリプロピレンオキシアクリレートをメチルエチルケトン中、重合開始剤としてV−601(和光純薬工業社製)を用いて合成)
W−7:パーフロロヘキシルエチルアクリレート/ポリプロピレングリコールアクリレート/アクリルオキシポリプロピレングリコールアクリレート共重合体(W−6にアクリル酸クロリドを反応させて合成)
W−8:ZONYL(登録商標)FSO−100(DuPont社製)
W−9:アラルキル変性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製KF−410)
W−10:W−2とアクリル酸クロリドを反応させて合成
【0085】
(評価)
得られた各実施例および比較例の硬化性組成物について以下の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0086】
<モールド汚染>
上記で調整した組成物を、モールドを押し付けずに硬化した際の硬化膜の膜厚が30nmとなるようにシリコン基板上にスピンコートした塗布膜を各組成物について20枚用意した。得られた塗布膜に、線幅40nm、溝深さが60nmの矩形ライン/スペースパターン(1/1)を有し、パターン表面がパーフロロポリエーテル構造を有するシランカップリング剤で被覆された石英モールドをのせ、ナノインプリント装置にセットした。装置内を真空とした後窒素パージを行い、装置内を窒素置換した。25℃で1MPaの圧力でモールドを基板に圧着させ、これにモールドの裏面から240mJ/cm2の条件で露光し、露光後、モールドを離し、パターンを得た。モールドに忠実な矩形なパターンが得られた場合のパターン厚さは、60nm、残膜は15nmであった。同一のモールドを用い、20枚の塗布膜に対しパターン転写を繰り返した。パターン形成に使用したモールドに界面活性剤が付着しているか否かを光学顕微鏡およびTOF−SIMS(飛行時間二次イオン質量分析計)にて評価しモールド汚染を評価した。
A:モールドに界面活性剤の付着がまったく認められなかった。
B:モールドにわずかな界面活性剤の付着が認められた。
C:モールドに界面活性剤の付着が明らかに認められた。
【0087】
<パターン欠陥>
上記モールド汚染評価で20枚目に得られたパターンを走査型顕微鏡で観察し、パターン欠陥を評価した。
A:モールドに忠実な矩形なパターンが得られた。
B:ごくわずかのパターンにおいて、パターン上部の欠けが見られた。
C:ラインパターンの一部が完全に消失していた。
【0088】
<ラインエッジラフネス>
上記モールド汚染評価で1枚目に得られたパターン付基板を、日立ハイテクノロジー(株)製ドライエッチャー(U−621)を用いてAr/CF4/O2のガスでプラズマドライエッチングを行い、残膜を除去した。得られたパターンのラインパターンの長手方向のエッジが5μmの範囲についてエッジのあるべき基準線からの距離を測長SEM((株)日立製作所S−8840)により50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほどラインエッジラフネスが良好であることを示す。
【0089】
【表2】

【0090】
本発明の組成物を用いた実施例は、繰り返しパターン転写を行ってもモールド汚れおよびパターン欠陥が発生せず、かつドライエッチング後のラインエッジラフネスに優れていた。
さらに、実施例1〜6の比較、実施例12〜16の比較、および実施例19〜23の比較により、界面活性剤の種類に関わらず、3〜8重量%のときに、さらにパターン欠陥およびラインエッジラフネスに優れていることが分かった。また、実施例7〜10、13、17、20の結果から明らかなとおり、界面活性剤の種類に関わらず、界面活性剤の含量が本発明の範囲内であるときに、繰り返しパターン転写を行ってもモールド汚れおよびパターン欠陥が発生せず、かつドライエッチング後のラインエッジラフネスに優れていることが分かった。界面活性剤の含量が発明の効果に顕著に影響することは極めて驚くべきことである。
加えて、実施例24〜32より、重合性単量体として、芳香族アクリレートを用いることにより、さらに顕著に、モールド汚れの抑制、パターン欠陥の抑制およびライフエッジラフネスに優れたものが得られることが分かった。
一方、比較例1〜6から明らかなとおり、界面活性剤の含量が本発明の範囲外の場合、モールド汚れ、パターン欠陥、およびドライエッチング後のラインエッジラフネスの全てを満足するものは無かった。
また、界面活性剤として、フロロアルキル基またはフロロアルキルエーテル基を有する繰り返し単位を含有するポリマーを用いたときに、その効果がより顕著であることが分かった。特に、比較例1〜6から明らかなとおり、界面活性剤の添加量が本発明の範囲外のときは、界面活性剤の種類によって、効果に大差はないが、界面活性剤の添加量が本発明の範囲内のときは、界面活性剤がW−1〜W−5、W−10のいずれかを用いたときに特に顕著な効果を奏することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、種々のインプリント技術に用いることができるが、特に、ナノサイズの微細パターンの形成のための組成物として好ましく用いることができる。具体的には、半導体集積回路、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーディスク等の磁気記録媒体、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製に用いられることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性単量体、(B)光重合開始剤および(C)界面活性剤を含有し、前記(C)界面活性剤の含有量が溶剤を除く全成分中の2〜20質量%である、インプリント用硬化性組成物。
【請求項2】
(A)重合性単量体が、芳香族基を有する重合性単量体である、請求項1に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項3】
(A)重合性単量体が、(メタ)アクリレート基を有する、請求項1または2に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項4】
(A)重合性単量体が、1官能および/または2官能である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
(A)重合性単量体が、1官能(メタ)アクリレートおよび2官能(メタ)アクリレートであり、前記1官能(メタ)アクリレートおよび2官能(メタ)アクリレートの少なくとも一方は、芳香族基を有する、請求項1に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項6】
(C)界面活性剤がフロロアルキル基及び/またはフロロアルキルエーテル基を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項7】
(C)界面活性剤がフロロアルキル基及び/またはフロロアルキルエーテル基を有する繰り返し単位を含有するポリマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項8】
(C)界面活性剤が下記式(I)および/または(II)で表される繰り返し単位を含有するポリマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【化1】

(下記式(I)および(II)において、R1はアルキル基であり、X1〜X3は、それぞれ、アルキレン基であり、Rf1は含フッ素基であり、R4は水素原子またはアルキル基であり、Rf2は含フッ素基である。それぞれの繰り返し単位は、同じであってもよいし、異なっていても良い。)
【請求項9】
(C)界面活性剤が下記式(I)で表される繰り返し単位を含有するポリマーである、請求項8に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を基板上に設置してパターン形成層を形成する工程と、
前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程と、
前記パターン形成層に光を照射する工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
インプリント用硬化性組成物を基材上に設置してパターン形成層を形成する方法がスピンコート法またはインクジェット法である請求項11に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
厚さが500nm以下のパターンを形成することを特徴とする、請求項11または12に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2011−21113(P2011−21113A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167770(P2009−167770)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】