説明

インレイド床材のメンテナンス方法

【課題】本発明は、インレイド床材において、特定の初期メンテナンスを行うことで、表面への樹脂ワックスメンテナンスを不要として、通常の簡単な清掃のみで初期の床表面の艶を維持するインレイド床材のメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のインレイド床材のメンテナンス方法は、インレイド床材を施工後、または施工前に床面洗浄機により床表面を磨き上げ、光沢度を15〜50とすることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗や病院などの公共施設に利用されるインレイド床材において、ワックス掛けメンテナンスを必要としないインレイド床材のメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂ワックスを床材に塗布することは、床材の製造時、施工後におけるメンテナンスとして従来より行われていた。樹脂ワックスを床材に塗布するのは、床材表面の保護や光沢の付与等のためである。
歩行量の多い床などに好適に使用されるポリ塩化ビニル系樹脂やオレフィン系樹脂からなるインレイド床材においても例外なく、樹脂ワックスを塗布するメンテナンスが行われていた。
【0003】
しかし、施工され樹脂ワックスを塗布された床面は、その上を人が歩いたり、荷物を引きずったり、物品を落としたり、台車等のキャスターを移動させたりして、厳しい摩擦や傷つきに曝されると共に、屋外から土や泥が持ち込まれたり、飲食物等をこぼしたりする等の厳しい汚染にも曝される。さらに、日常のモップ、掃除機、自動床面洗浄機等の清掃が行われるため、それらによるダメージを被ることになる。
【0004】
そのため、床面の美観を及び衛生性を保持するために、定期的に塗布された樹脂ワックスを剥離し、表面を洗浄後に、新たに樹脂ワックスを塗布するメンテナンスが行われていた。
【0005】
樹脂ワックスを定期的に塗布するメンテナンスは、ワックスの剥離、剥離面の清掃、ワックスの塗布、塗布ワックスの乾燥等の作業を必要とするため、メンテナンス作業中は、その作業場所を閉鎖して、作業者以外が立ち入らないようにすることが必要である。
しかし、近年においては、24時間営業のコンビニエンスストアーや、病院等においてはこのような作業を行うことが難しくなっている。
【0006】
そのために、樹脂ワックスの耐久性を向上させたり、作業時間を短くする方法等が特開2004−218213号公報等で提案されている。しかし、樹脂ワックスの塗布メンテナンス期間を長くしたり、作業時間を短くすることができたとしても、ワックスメンテナンスを行う必要があるという問題を有している。
また、ワックスメンテナンスを不要にするために、床材表面に特殊な塗膜を設けて、床材の耐久性を向上させる方法も特開2004−225456号公報等で提案されている。しかし、表面に特殊な塗膜を有することで、一定期間はワックスメンテナンスを不要とする事ができるが、完全に不要とすることが難しい問題を有したり、塗膜自体の組成によっては、耐傷性等に問題が有する等がある。
【特許文献1】特開2004−218213号公報
【特許文献2】特開2004−225456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インレイド床材において、特定の初期メンテナンスを行うことで、表面への樹脂ワックスメンテナンスを不要として、通常の簡単な清掃のみで初期の床表面の艶を維持するインレイド床材のメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインレイド床材のメンテナンス方法は、インレイド床材を施工後、または施工前に床面洗浄機により床表面を磨き上げ、光沢度を15〜50とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のインレイド床材のメンテナンス方法は、樹脂ワックスの塗布を必要とすることなく、一般的なインレイド床材を使用して、樹脂ワックスを塗布したものと同等の艶や耐久性を維持することが可能となり、樹脂ワックスの剥離、塗布、乾燥等の作業を必要としないために、メンテナンス作業中であっても、その作業場所を閉鎖して、作業者以外が立ち入らないようにする必要がなく、24時間営業のコンビニエンスストアーや病院等で好適に使用することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に使用されるインレイド床材とは、ポリ塩化ビニル系樹脂やオレフィン系樹脂等からなり、色・柄を形成する厚い樹脂層が、表から裏まである単層構造の床材か、色・柄を形成する厚い樹脂層が、表から裏まである単層構造に織布、不織布や合成樹脂クッション層等の裏打ち層を設けた床材等である。
この厚い樹脂層の厚みとしては、1mm以上のものが好ましく、1mm未満であると、初期メンテナンスにおいて表面の均一性がだしにくく、耐久性に問題が生じる可能性がある。
【0011】
インレイド床材の形態としては、特定幅を有する長尺のものや、矩形のタイル状のものであってもよい。
【0012】
本発明において、インレイド床材の床表面を磨き上げるのは、床材を施工面に施工した後でも、施工前の床材を磨き上げてから施工しても良い。しかし、施工時の床材表面の汚れ等を考慮すると、施工後に磨き上げた方が作業効率的には好ましい。床施工面への施工方法は、インレイド床材を通常施工されるいかなる方法でも良い。
磨き上げる方法としては、まず床表面の汚れやゴミを清掃した後に、床面洗浄機に樹脂ワックスの艶だし用、焼き付け作業用のパッドを取り付けて、インレイド床材の表面を磨き上げ、初期光沢度が10前後のものを、光沢度が15〜50になるように磨き上げて、樹脂ワックスが塗布されたのとほぼ同等の艶状態とする。磨き上げ時において、床面に水を散布しながら行うことで、比較的短時間で磨き上げることが可能となり好ましい。
このときに、床材表面に磨き上げにより、緻密な樹脂皮膜が形成されるために樹脂ワックスと同等な艶と、樹脂ワックスの塗布より耐久性に優れた床材表面となると考えられる。この緻密な樹脂皮膜は、ゴミやほこりが床面に付着し難くし、耐傷性も向上するが、光沢度15未満であると、表面に凹凸があるポーラスな皮膜であるので、汚れやすくなりワックス無しのメンテナンスに対応できないものである。また、光沢度が50を超えてしまうと、床材としての使用に余り適さない光沢過剰な状態になってしまうために好ましくない。
なお。本願発明における光沢度の測定は、TASCO JAPAN製のグロスチェッカー TMS−724を使用して行ったものである。
したがって、通常のメンテナンスは、樹脂ワックスの塗布を必要とすることなく、日常の簡単な清掃作業、または床材洗浄機に樹脂ワックス表面の軽い洗浄及び磨き作業に使用されるパッドを取り付けて行うことで、樹脂ワックスを塗布したものと同等の艶や耐久性を維持することが可能となる。
【実施例】
【0013】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0014】
まず床施工面に、インレイド床材としてアキレス株式会社製のアートオプティマを施工し、施工面を2等分し、一方の面には本発明のメンテナンス方法を施し、もう一方の面には通常の樹脂ワックスを塗布した作業を行ったものをそれぞれ実施例1、比較例1とし、その施工場所に、病院等のロビーの歩行状態を再現して、人の歩行や荷物の運搬を1週間行った後、床面の評価を行った。
(実施例1)
施工床面を清掃後に、リンレイ株式会社製の自動洗浄機ルーク17Hに、住友3M社製の51ラインスーパーポリッシュパッド(白)を取り付けて、これを使用し、床面の初期光沢度が7であったものを、40まで磨き上げた。毎日、床面を同じ自動洗浄機に、51ラインスーパーポリッシュパッド(赤)をとりつけた洗浄作業を行った。光沢度の測定は、TASCO JAPAN製のグロスチェッカー TMS−724を使用して行った。
(比較例1)
施工床面を清掃後に、リンレイ株式会社製の自動洗浄機ルーク17Hに、住友3M社製の51ラインスーパーポリッシュパッド(白)を取り付けて、これを使用して、リンレイ株式会社製の超耐久プロつやコート1のワックスを塗布を行った。毎日、床面を同じ自動洗浄機に、51ラインスーパーポリッシュパッド(赤)をとりつけた洗浄作業を行った。
(比較例2)
実施例1と同様な方法で、床面の光沢度を12まで磨き上げて、毎日、床面を同じ自動洗浄機に、51ラインスーパーポリッシュパッド(赤)をとりつけた洗浄作業を行った。
【0015】
1週間後の実施例1と比較例1との床面のは、実施例1においては、ほぼ1週間目の状態と同じであった。比較例1においては、樹脂ワックスが部分的に剥離したところがあり、全体の艶も低下した状態であった。ワックスの再塗工が必要な状態であった。また、比較例2においては、実施例1と比較して、汚れの付着等があり、比較例1よりも、汚れが目立つ状態であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インレイド床材を施工後、または施工前に床面洗浄機により床表面を磨き上げ、光沢度を15〜50とすることを特徴とするインレイド床材のメンテナンス方法。
【請求項2】
インレイド床材が1mm以上であることを特徴とする請求項1記載のインレイド床材のメンテナンス方法。
【請求項3】
インレイド床材が単層または、複層のタイル床材であることを特徴とする請求項1または2記載のインレイド床材のメンテナンス方法。

【公開番号】特開2007−46355(P2007−46355A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232691(P2005−232691)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】