説明

インレットキャップ修復方法

【課題】 飛行機に使用されるタービンエンジンの空気取入ファンに取り付けられたインレットキャップの、飛行中やメンテナンス中に受けた磨耗や損傷を修復する。
【解決手段】 インレットキャップ12の構造繊維層40の損傷部分が取り除かれて境界面50を形成する。この面に接着フィルムが適用され、複数の代替構成層56を備えてなる代替構造層54が境界面50に適用されて接着フィルムと接合し、構造繊維層40の除去部分と置き換えられる。代替構造層54の適用後、代替耐食層42´および代替中間層44´がインレットキャップに適用されてインレットキャップ12の露出面を被覆する。多くのインレットキャップは損傷を受けた際に交換が必要であったが、本発明により修復が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ねタービンエンジンのメンテナンス分野に関する。さらに詳しくは、本発明はタービンエンジンのインレットキャップの修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に飛行機に使用されるタービンエンジンは、通常、空気取入ファンの上流に設置されたインレットキャップ(インレットコーン・フロントセグメントとも呼ばれる)を含む。インレットキャップはタービンエンジンに回転するように取り付けられて空気取入ファンへの空気の流れを整流する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インレットキャップが受けた磨耗や損傷に対処するように、インレットキャップは定期的なメンテナンスを必要とする。こうした磨耗や損傷は、例えばインレットキャップへの鳥の衝突、もしくはインレットキャップの外表面に摩損をもたらす粒状物質が原因となりうる。さらに、エンジンメンテナンスやサービス方法がインレットキャップに損傷や磨耗をもたらす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はタービンエンジンのインレットキャップの修復方法を含んでなる。第1の耐食層、およびこの第1の耐食層の下に位置する構造繊維層の一部が、インレットキャップから除去される。構造繊維層の除去された部分を補修するように代替構造層がインレットキャップに適用(apply)され、第2の耐食層が構造繊維層の上に位置されるようにインレットキャップに適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明はタービンエンジンのインレットキャップの修復方法を含んでなる。図1はタービンエンジン10を示し、コーン部14およびファンブレード16の近傍でタービンエンジン10に回転するように取り付けられたインレットキャップ12を含んでなる。
【0006】
図2に示すように、インレットキャップ12は前面20、後面22、および複数のラグ(留め具)溝24を含む。ラグ溝24はタービンエンジン10に対してインレットキャップ12を固定する留め具を受けるように設計されている。さらに前面20は任意選択的にマーカ26を含み、これはタービンエンジン10に対するインレットコーン12の回転運動を示すように含まれることもある。
【0007】
図3は図2のインレットキャップ12の断面図を示し、インレットキャップ12の構造を示す。図3に示すように、インレットキャップ12は構造繊維層40、耐食層42、中間層44、およびバッキング層46を含んでなる。前面20は耐食層42によって形成され、後面22はバッキング層46によって形成される。構造繊維層40はバッキング層46の上部かつ耐食層42および中間層44の下部に配置されている。中間層44およびバッキング層46は構造繊維層40を水の浸入から保護しており、これらは通常ガラス繊維から形成される。
【0008】
構造繊維層40は複数の構成繊維層48を含み、これらは一般的に、例えばアラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維とも呼ばれる)のような高強度繊維を含む。ある実施例では、繊維層48はアラミド繊維から形成しエポキシ樹脂を含浸した織地の層よりなる。一実施例(これに限定するものではない)では、インレットキャップ12は11層の繊維層48を含んでなる。
【0009】
図1のタービンエンジン10の運転中、インレットキャップ12は前面20やラグ溝24に損傷や磨耗が頻繁にもたらされる状況に置かれやすい。こうした損傷はタービンエンジン10の運転環境あるいはタービンエンジン10に実施されるサービスもしくはメンテナンス活動に存在する状況が原因となる可能性がある。従来のメンテナンス方法は耐食層42が磨耗の徴候を示したときの耐食層42の交換に限定される。従来のメンテナンス方法のもとでは、一度でも損傷が構造繊維層40に発生してしまうと(すなわち、いずれかの構成繊維層48への損傷)、インレットキャップ12を新しいインレットキャップ12に交換しなければならない。
【0010】
本発明の方法は構造繊維層40が損傷を受けたときでさえインレットキャップ12を修復できる方法を提供し、これにより多くのインレットキャップに交換を要するのではなく、これらの修復を可能にする。図4は構造繊維層40の損傷部分を交換する本発明の方法の実施例を示す。図4はインレットキャップ12の損傷領域の修復後の側面図を示す。
【0011】
図4に示す方法は、耐食層42および中間層44(図3に示す)の全て、もしくは少なくとも構造繊維層40の損傷部分の上に位置する耐食層42および中間層44の一部の最初の除去を含む。その後構造繊維層40の損傷部分が取り除かれて境界面50を形成する。インレットキャップ12の構造繊維層40にいかなる損傷も残さないように構成繊維層48の損傷部分が除去される。接着フィルム52が境界面50に適用され、代替構造層54が境界面50に適用されて接着フィルム52と接合し、構造繊維層40の除去部分と置き換えられる。構造繊維層40への損傷が著しく深い場合、複数の代替構成層56がインレットキャップ12に適用されて代替構造層54を形成する。ある実施例では、インレットキャップ12に適用される代替層56の数は除去された繊維層48の数と一致する。
【0012】
代替構造層54の適用後、代替耐食層42´および代替中間層44´がインレットキャップ12に適用されてこれら両者の層が構造繊維層40および代替構造層54の上部に配置される。一実施例では、耐食層42´および中間層44´はインレットキャップ12に適用される前に互いに接合されて二重層を形成する。
【0013】
構造繊維層40への損傷が著しく深く、構成繊維層48のいずれの部分も除去しなければならない場合、バッキング層46の一部もしくは全てが除去され、代替バッキング層46´がインレットキャップ12に適用されて代替構造層54の露出した裏面を被覆する。またある実施例では構造繊維層40の裏面の全てを被覆する。
【0014】
図4の実施例では、境界面50は傾斜状すなわち先細り状になって構造繊維層40と代替構造層54との結合強度を高めている。境界面50は連続した傾斜もしくは階段状の傾斜を示すことができる。ある実施例では、境界面50の傾斜は水平方向(すなわち、繊維層48に平行な方向)に各繊維層48あたり約0.25インチ〜約0.50インチの幅である。
【0015】
構造繊維層40の損傷の激しさに応じて、境界面50は、構造繊維層40の全てを通してバッキング層46まで、もしくは一番上あるいは一番下の損傷を受けていない構成繊維層48まで延びる。境界面50は、例えば構造繊維層40の研磨もしくはカッティングといった、公知の方法を用いて形成される。ある実施例では、カッティングが各々の構造繊維層48の損傷を受けた部位の周辺で行われ、損傷を受けた部位は構造繊維層40が残らないように剥離される。
【0016】
代替構造層54の強度を高めるべく、各々の代替層56は隣接する代替層56に対して回転方向に互い違いに交差するようにインレットキャップ12に適用される。この回転方向の互い違いの配列は、例えば代替層56のスティッチングすなわち繊維パターンに関連した方向つまり配向を含む、代替層56のあらゆる特徴を基準としてもよい。ある実施例では、各々の代替層56は隣接する層56に対して約33°の角度で回転方向に互い違いに交差するように適用される。またある実施例では、各々の層56は、その配向が除去された繊維層48の配向と一致するようにインレットキャップ12に適用される。
【0017】
任意の適切な公知の材料が代替構造層54の形成に用いられる。適切な材料の例は、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、これらの繊維のいずれかを含む織地、その他の公知の高強度繊維もしくは織地、およびこれらの組み合わせを含んでなる。市販のアラミド繊維や織地の例は、KEVLAR、NOMEX、TWARONなどのアラミド繊維製品を含む。本発明のある実施例では、構造層54はエポキシ樹脂を含む。
【0018】
図5〜図8は損傷を受けたラグ溝24の修復に用いられる前述の修復方法の一実施例(これに限定しない)を示す。図5はラグ溝24の上面図を示し、これが図8のラグ溝24´に交換される。ラグ溝24は、穴60、フラット面62、遷移区間64、垂直壁66、および遷移区間68を含んでなる。フラット面62はインレットキャップ12の前面20にくぼみ状につくられ(図2に示す)、タービンエンジン10に対してインレットキャップ12を取り付ける留め具を受ける穴60を含む。遷移区間64は前面20のフラット面62と垂直壁66との間に位置し、遷移区間68は垂直壁66と前面20の主要面70との間に位置する。ラグ溝24は図4に示す構造と同様の構造をもち、構造繊維層40、耐食層42、中間層44、およびバッキング層46をもつとともにラグ溝24内に延びてこれを形成し、各々の層がラグ溝24の全体形状と同様の輪郭を示す。
【0019】
損傷を受けたラグ溝24を修復するためには、耐食層42および中間層44が、例えばハンド・サンディングによりインレットキャップ12から取り除かれる。損傷がラグ溝24の構造繊維層40内に著しく深く延びている場合は、ラグ溝24がインレットキャップ12から完全に取り除かれる。例えばある実施例では、構造繊維層40が11層の繊維層48を含み、かつラグ溝24への損傷が構造繊維層40の6つ以上の層の深さにまで延びている場合、ラグ溝24はインレットキャップ12から完全に取り除かれる(バッキング層46のすべて、もしくは少なくとも構造繊維層40の損傷を受けた部位の下方に位置するバッキング層の一部を含む)。ラグ溝24は周知のあらゆる方法を用いて取り除くことが可能で、これは例えばラグ溝24がインレットキャップ12から外れるまでのインレットキャップ12を通した前面20から後面22へのカッティングや、遷移区間68の外側エッジ72に沿ったカッティングを含む。図6はラグ溝24が外側エッジ72に沿ったカッティングにより除去された後のインレットキャップ12を示す。ある実施例では、外側エッジ72は垂直壁66から少なくとも約0.5インチの間隔が取られている。
【0020】
その後、境界面50が、図7に示すように前面20から徐々に先細り(すなわち、傾斜)するように切削される。ある実施例では、ラグ溝24が切除されると同時に境界面50が形成される。均一な粗面を得るように、境界面50は、例えば非金属のグリットでコーティングされた布やすりもしくは紙やすり(例えば、180グリットもしくはよりきめの細かいもの)で研磨されうる。研磨工程で発生したあらゆる粉塵が境界面50から除去され、インレットキャップ12は約170°F〜約190°Fの温度で少なくとも約24時間乾燥される。
【0021】
乾燥後、接着剤52(例えば、カリフォルニア州ベイ・ポイントのロックタイト・エアロスペース社から市販されている製品HYSOL EA 9689のような接着フィルム)が境界面50に適用される。その後、図8に示すように代替層56が境界面50に適用されて代替構造層54の部位54Aおよび54Bを形成する。大部分の実施例では、境界面50に適用された代替層56の数はインレットキャップ12から除去された構成繊維層48の数と一致する。前述のように、代替繊維層56は代替層54の強度を高めるように互いに対して回転方向に互い違いに配置される。その後バッキング層46´(図4に示す)が代替繊維層56の下方に適用されて除去されたバッキング層46のあらゆる部位と置き換えられる。ある実施例では、バッキング層46´は、例えばヘクセル社から市販されているガラス繊維製品F161−262−120、もしくはサイテック・エンジニアド・マテリアルズ社から市販されているガラス繊維製品CYCON 293といったガラス繊維から形成される。
【0022】
その後インレットキャップ12が減圧バッグ内にシールされて、前面20と符合する形状をなす前部型部品と後面22と符合する形状をなす後部型部品とをもつ型内に配置される。ある実施例では、前部型部品は、例えばアルミニウムのような硬質の型からなり、後部型部品は、例えばシリコーン(例えば、デラウェア州ベアのアルロン社−シリコーン・テクノロジー部門より市販されている、精密カレンダで加工された硬化されていないシリコーン製品ARLON)のような軟質の型からなる。
【0023】
成形/減圧バッグアセンブリがオートクレーブ内に置かれて1平方インチあたり約15ポンド〜約20ポンド(psi)の圧力がインレットキャップ12に適用されるまでインレットキャップ12は減圧に保たれる。その後減圧が大気中に解放されて1平方インチあたり少なくとも約40ポンドの圧力がインレットキャップ12に適用される。インレットキャップ12の温度は1分あたり約2°F〜約8°Fの割合で室温から約355°F±約15°Fへと増加する。インレットキャップ12の温度は約120分間、約355°F±約15°Fに保たれる。その後インレットキャップ12に適用された圧力が徐々に解放され、圧力が1平方インチあたり約20ポンドに達したとき減圧が再適用される。インレットキャップ12は温度が約150°Fに達するまで冷却され、その後減圧バッグおよび型から取り出される。
【0024】
図8は上記のオートクレーブ工程により生じる部分的に修復されたインレットキャップ12´を示す。インレットキャップ12´は、構造繊維層40(図4に示す)と部分的に重なり合うテーパ状代替構造部54Aと、代替ラグ溝24´を含む代替構造部54Bとを含んでなる。ラグ溝24´は同様に、穴60´、フラット面62´、遷移区間64´、垂直壁66´、および遷移区間68´(外側エッジ72を含む)を含む。
【0025】
インレットキャップ12´の、図5の穴60の位置と一致する場所に穴60´が開けられ、図8に示す部分的に修復されたインレットキャップ12´を形成する。必要であればインレットキャップ12´のエッジの形状が整えられ、穴60´の内面が、例えばカリフォルニア州ベイ・ポイントのロックタイト・エアロスペース社から市販されているシーラント製品EA 9396のようなシーラントを用いてシールされる。その後インレットキャップ12´の厚さや輪郭がチェックされてインレットキャップ12´の規格の準拠を検証する。
【0026】
インレットキャップ12´の修復を完成させるべく、耐食層42´および中間層44´の材料が用意され、インレットキャップ12´に適用される。一実施例では、耐食層42´がフルオロエラストマフィルム(例えば、オハイオ州カイヤホガフォールズのイーグル・エラストマ社から市販されている厚さ0.02インチのフルオロエラストマ製品VITON)の連続層からカットされ、中間層44´がガラス繊維(例えば、サイテック・エンジニアド・マテリアルズ社から市販されているガラス繊維製品CYCON)の連続層からカットされる。
【0027】
ある実施例では、耐食層42´および中間層44´が互いに接合されて二重層アセンブリとしてインレットキャップ12´に適用される。これを達成すべく、耐食層42´および中間層44´の材料が、層42´と係合するための前部型部品と層44´と係合するための後部型部品とを含んでなる接合用の型内に配置される。層42´および層44´の材料を接合用の型に配置する前に、剥離材が前部および後部型部品に適用される。層42´の材料が前部型部品に配置され、続いて層44´の材料が配置される。その後剥離層が層44´の材料の上に配置されて後部型部品がこの剥離層の上に配置される。二重層アセンブリがこの型と減圧バッグ内に密封される。その後、型/減圧バッグアセンブリがオートクレーブ内に置かれて、図8のインレットキャップ12´の形成に関する前述の方法に従いオートクレーブ処理される。但し、1平方インチあたり約30〜約50ポンド(psi)の圧力で約90分〜約120分間、二重層アセンブリの温度が約375°F±約15°Fに保たれる点は異なる(前述の約40psiの圧力で約120分間、約355°F±約15°Fの温度に維持される場合とは対照的に)。
【0028】
耐食層42´および中間層44´を含んでなる二重層アセンブリが冷却されたのち、この二重層アセンブリが型および減圧バッグから取り出され、必要であれば形状が整えられる。中間層44´の露出面(すなわち、インレットキャップ12´に接合される面)に60〜120グリットの酸化アルミニウムグリットのグリットブラストによって粗面が形成され、均一なつやの無い構造がつくられる。中間層44´のグリットブラスト処理された表面がきれいに拭き上げられ、二重層アセンブリが約150°Fの温度で約15〜約30分間、揮発性成分を除去するように加熱される。
【0029】
その後接着剤がインレットキャップ12´の露出面(すなわち、構造繊維層40および代替層54の代替部分54A,54Bの露出面)に適用される。適切な接着剤の一例は、カリフォルニア州ベイ・ポイントのロックタイト・エアロスペース社から市販されているエポキシフィルム接着剤HYSOL EA 9689 .080PSFである。その後硬化された二重層アセンブリがインレットキャップ12´に適用されて中間層44´が接着剤と接合する。結果としてつくられたインレットキャップ12´が減圧バッグに入れられて図8のインレットキャップ12´の形成に使用したのと同じ型に配置される。この型/減圧バッグアセンブリがオートクレーブ内に置かれて、図8のインレットキャップ12´の形成に関する上記の方法に従いインレットキャップ12´がオートクレーブ処理される。但し、1平方インチあたり約30〜約50ポンド(psi)の圧力で約90分〜約120分間、二重層アセンブリの温度が約250°F±約15°Fに保たれる点は異なる。(前述の約40psiの圧力で約120分間、約355°F±約15°Fの温度に維持される場合とは対照的に)。
【0030】
その後結果としてつくられたインレットキャップ12´の形状が整えられ、必要であれば穴60´が再び開けられる。前面20および後面22がきれいに拭き上げられて空気中で少なくとも15分間乾燥される。インレットキャップ12´のエッジをシーラント(例えば、ペンシルバニア州ニュータウンのペルシールテクノロジー社から市販されているフルオロエラストマシーラント製品PLV 2000もしくはPLV 2100)でシールし、そして室温で24時間、もしくは室温で1時間置いた後に約175°F±25°Fの温度で1時間、空気中で硬化させる。
【0031】
図5〜図8に関連した前述の方法の修正版がラグ溝24の部分的な交換(すなわち、ラグ溝24に含まれる複数の構成繊維層48のすべてではなく、このうちのいくつかの層の一部の除去)に用いられうる。構造繊維層40への損傷がラグ溝24の部分的な交換のみでよいことを保証する場合、外側エッジ72(図5に示す)に沿って構造繊維層40の所望の深さにカットが行われる。部分的な修復では、カットは通常損傷を受けた一番下の構成繊維層48に達するように行われる。
【0032】
ある実施例では、損傷がバッキング層46近くの構造繊維層40の部位で発生し、耐食層42およびこれに隣接する層44が損傷を受けていない場合、構造繊維層40への修復はインレットキャップ12の前面20に代わって後面22に関して行われる。
【0033】
ある実施例では、複数のラグ溝24が同時に交換される。
【0034】
したがって、前述のように、本発明の方法は外側耐食層の下に位置する構造繊維層に損傷を受けたタービンエンジンのインレットコーンの修復方法を提供する。特に、本発明の方法により、損傷を受けたインレットコーンのラグ溝はその損傷の激しさにより完全に交換されるか、もしくは部分的に交換されるかのいずれかが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】インレットキャップを含む飛行機用タービンエンジンの斜視図。
【図2】図1のインレットキャップ前面の斜視図。
【図3】図1のインレットキャップの断面図。
【図4】図1のインレットキャップにおける損傷部分の修復後の断面図。
【図5】図1のインレットキャップに含まれるラグ溝の上面図。
【図6】図5のインレットキャップのラグ溝が取り除かれた上面図。
【図7】テーパ状境界面を含む図6のインレットキャップの上面図。
【図8】テーパ状境界面に代替構造層が適用された図7のインレットキャップの上面図。
【符号の説明】
【0036】
12…インレットキャップ
40…構造繊維層
42´…耐食層
44´…中間層
48…構成繊維層
50…境界面
52…接着フィルム
54…代替構造層
56…代替構成層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジンのインレットキャップの修復方法であって、
インレットキャップの外表面から第1の耐食層を除去し、
前記第1の耐食層の下に位置する構造繊維層の少なくとも一部を除去し、
前記構造繊維層の除去された一部と置き換えるように前記インレットキャップに代替構造層を適用し、
前記代替構造層の上に位置するように前記インレットキャップに第2の耐食層を適用することを特徴とするインレットキャップ修復方法。
【請求項2】
前記構造繊維層の除去された一部が、前記インレットキャップの損傷を受けたラグ溝を取り囲むことを特徴とする請求項1に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項3】
前記代替構造層に穴を形成することをさらに備えてなる請求項2に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項4】
前記構造繊維層が複数の構成層を備えるとともに前記構造繊維層の除去された部分が一つもしくは複数の構成層を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項5】
前記損傷を受けたラグ溝を画定する前記複数の構成層の各部位が除去されることを特徴とする請求項4に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項6】
中間層を前記代替構造層の上部かつ前記第2の耐食層の下部に位置するように前記インレットキャップに適用することをさらに備えてなる請求項1に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項7】
前記中間層および前記耐食層を、これらを前記インレットキャップに適用する前に互いに接合させることをさらに備えてなる請求項6に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項8】
前記第2の耐食層がフルオロエラストマ層を備えるとともに前記中間層がガラス繊維層を備えることを特徴とする請求項6に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項9】
前記代替構造層が、前記インレットキャップに適用された複数の代替構成層を備えることを特徴とする請求項1に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項10】
前記複数の代替構成層の各々の配向が、隣接する代替構成層に対して回転方向に互い違いに配列されることを特徴とする請求項9に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項11】
前記複数の代替構成層の各々の配向が、前記隣接する代替構成層に対して約33°の角度で回転方向に互い違いに配列されることを特徴とする請求項10に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項12】
前記代替構造層が、アラミド繊維層を備えることを特徴とする請求項1に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項13】
前記構造繊維層の一部が除去されてこの構造繊維層に傾斜した境界面が形成されるとともに前記代替構造層が前記傾斜した境界面と接するように適用されることを特徴とする請求項1に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項14】
タービンエンジンのインレットキャップの修復方法であって、
前記インレットキャップの外表面から第1の耐食層を除去し、
前記第1の耐食層の下に位置し、かつ損傷を受けたラグ溝を取り囲む構造繊維層の少なくとも一部を除去して前記構造繊維層にテーパ状境界面を形成し、
前記構造繊維層の除去された一部と置き換えられ、かつ前記テーパ状境界面と接するように寸法が取られた複数のアラミド繊維層を前記インレットキャップに適用し、
前記アラミド繊維層を前記インレットキャップに適用した後、第2の耐食層を前記アラミド繊維層の上に位置するように前記インレットキャップに適用することを特徴とするインレットキャップ修復方法。
【請求項15】
前記構造繊維層の一部の除去が、前記損傷を受けたラグ溝を取り囲んだ構造繊維層のすべての除去を備えてなることを特徴とする請求項14に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項16】
前記第2の耐食層を前記インレットキャップに適用する前に、ガラス繊維層とフルオロエラストマ層とを接合して前記第2の耐食層を形成することをさらに備えてなる請求項14に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項17】
前記アラミド繊維層の各々が、隣接するアラミド繊維層に対して回転方向に互い違いに交差した配向をとるように前記インレットキャップに適用されることを特徴とする請求項14に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項18】
前記複数のアラミド繊維層の各々の配向が、前記隣接する代替構成層に対して約33°の角度で回転方向に互い違いに配列されることを特徴とする請求項17に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項19】
前記複数のアラミド繊維層を前記インレットキャップに適用する前に、前記テーパ状境界面に接着剤を適用することをさらに備えてなる請求項14に記載のインレットキャップ修復方法。
【請求項20】
前記インレットキャップを前記タービンエンジンに固定する留め具を受けるように前記アラミド繊維層および前記第2の耐食層に穴を開けることをさらに備えてなる請求項14に記載のインレットキャップ修復方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−107520(P2007−107520A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276018(P2006−276018)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION