説明

ウィンタータイヤのトレッド用混合物

架橋可能な不飽和鎖状ポリマー基剤、80〜130m2/gの表面積を有するシリカを50〜90phr、及び、式(I)SH(CH2)3SiRR22のシラン結合剤を4〜10 phr備えるトレッド用混合物であり、ここで、Rは−OCH2CH3であり、R2は−O(CH2CH2O)5(CH2)12CH3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンタータイヤのトレッド用混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィンタータイヤは、例えば、氷上、雪上等の、冬の条件における路面保持性能に関する安全性のために設計される。
【0003】
ある混合物では、カーボンブラックが徹底してシリカに置き換えられ、特に、転がり抵抗及び湿潤路面のグリップ性の点で有利となる。
【0004】
シリカはシラン結合剤と組み合わせて用いられ、該シラン結合剤は、シリカ粒子間の水素結合の形成を阻害するためシリカのシラノール基と結合すると同時に、シリカを化学的にポリマー基剤に固定する。
【0005】
知られているように、ウィンタータイヤの直面する1つの問題は、湿潤路面グリップ性と許容できる雪上性能との間の繊細なバランスである。それは、湿潤路面グリップ性を改良する1つの解決策は、トレッド用混合物のシリカ含有量の増加を含む。一方、湿潤路面グリップ性が一般的に向上するが、前記混合物中の高いシリカ含有量は、トレッド用混合物を硬くし過ぎることによって、氷上及び雪上でのタイヤ性能をも低下させる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、湿潤路面及び冬の条件の、いずれにおいても優れたグリップ性を実現するよう設計されたトレッド用混合物を提供することにある。
【0007】
本発明によれば、架橋可能な不飽和鎖状ポリマー基剤、50〜90phrのシリカ、及び、4〜10 phrのシラン結合剤を備えるトレッド用混合物が提供され、前記シリカは80〜130m2/gの表面積を有し、前記シラン結合剤は式Iからなる。
SH(CH2)3SiRR22 (I)
ここで、
Rは、−OCH2CH3であり、
R2は、−O(CH2CH2O)5(CH2)12CH3である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましい実施形態では、前記混合物は、ビニル含有量が60〜80%のブタジエンゴム(BR)を10〜40phr含む。
【0009】
下記の事項は、全く限定されない実施例であり、本発明の理解を明確にするものである。
【0010】
5つの対照混合物(A、B、C、D、E)、及び、本発明の教示に従う2つの混合物(F、G)が用意され、それぞれについて、湿潤路面グリップ性及び氷上/雪上性能を決定するための試験が行われた。
【0011】
実施例において述べられた前記混合物は、以下の手順によって用意された。
【0012】
−混合物の用意−
(第1混合工程)
混合に先立って、230〜270リットルの回転ミキサーに、前記架橋可能なポリマー基剤、シリカ、シラン結合剤及びオイルを、66〜72%の充填比で充填した。
【0013】
前記ミキサーは40〜60rpmの速度で運転し、前記混合物が140〜160℃の温度に達したときに取り出した。
【0014】
(第2混合工程)
前記第1工程からの混合物を、40〜60rpmの速度で運転するミキサーに再び入れ、130〜150℃の温度に達したときに取り出した。
【0015】
(第3混合工程)
前記第2工程からの混合物を、加硫装置に、63〜37%の充填比で加えた。
【0016】
前記ミキサーは、20〜40rpmの速度で運転し、前記混合物が100〜110℃の温度に達したときに取り出した。
【0017】
表1は、5つの対照混合物の組成を示したものである。
【0018】
【表1】

【0019】
表2は、本発明に従う2つの混合物の組成を示したものである。
【0020】
【表2】

【0021】
2つの表を比較することでわかるように、本発明に従う混合物は、低表面積(例えば、110m2/g)のZ1115の名称で販売されるシリカ、及び、式Iの特定のシラン結合剤を含む点で、前記対照混合物とは異なる。対照混合物A〜Cで用いられるシリカは、170m2/gの表面積を有する。
【0022】
混合物Gは、高い(例えば70%)ビニル含有量のBR(ブタジエンゴム)を含むことによって、さらに改良されたものを表す。
【0023】
述べられたように、混合物A〜Gは、湿潤路面及び冬の条件におけるグリップ性能を決定するための試験を行った。
【0024】
表3は、試験の結果を示したものである。
【0025】
【表3】

【0026】
専門家が理解しているように、前記0℃におけるTanD、−20℃におけるE´、及び30℃におけるE´の値は、それぞれ、湿潤路面のグリップ性、冬季性能及び乾燥路面の性能についての指標を示す。
【0027】
動的モジュールの弾性成分(E´)、及び、TanDは、ASTMスタンダードD5992に準拠して測定された。
【0028】
前記摩耗指標は、ASTMスタンダード5963に準拠して試験を行うDIN摩耗試験機によって測定された。
【0029】
表3に示されるように、本発明に従う混合物F及びGは、湿潤路面のグリップ性及び冬季性能のいずれについても高い程度で提供できる唯一のものである。より詳細には、高いビニル含有量のBRを用いる場合には、低表面積シリカ及び式(I)の前記シラン結合剤を組み合わせることに加えて、優れた冬季性能をいまなお保持しつつ、湿潤路面のグリップ性に関して、さらに優れた結果が達成される。
【0030】
最終的に、本発明に従う混合物が、どうやって優れた乾燥路面製及び摩耗指標の値を確保するかに着目することが重要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋可能な不飽和鎖状ポリマー基剤、50〜90phrのシリカ、及び、4〜10 phrのシラン結合剤を備えるトレッド用混合物であって、前記シリカは80〜130m2/gの表面積を有し、前記シラン結合剤は式Iからなることを特徴とするトレッド用混合物。
SH(CH2)3SiRR22 (I)
ここで、
Rは、−OCH2CH3であり、
R2は、−O(CH2CH2O)5(CH2)12CH3である。
【請求項2】
ビニル含有量が60%を超えるブタジエンゴム(BR)を10〜40phr含むことを特徴とする請求項1に記載のトレッド用混合物。
【請求項3】
架橋可能な不飽和鎖状ポリマー基剤、ビニル割合が70%を超える10〜30phrのブタジエンゴム(BR)、100〜120m2/gの表面積を有する70〜80phrのシリカ、及び、8.5〜9.5 phrの式Iからなるシラン結合剤を備えることを特徴とする請求項2に記載のトレッド用混合物。
【請求項4】
前記請求項のうちの1項に記載された混合物から製造されるトレッド。
【請求項5】
請求項4に記載されたトレッドを備えるタイヤ。

【公表番号】特表2012−506461(P2012−506461A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532547(P2011−532547)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053764
【国際公開番号】WO2010/046139
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】