説明

ウイック用水保有容器

【課題】 簡単な構造で低コストで製造でき、水位検出器の細かな位置調整が不要で、均圧が確保され水位変動幅の低減と補給水の温度の影響を軽減できるウイック用水保有容器を提供する。
【解決手段】 ウイックパンアーム1は、境界面13の上下に狭い幅B1 の溝状部14と広い幅B2 の広幅溝状部15とを形成し、これをそのまま水位検出器2に接続される構造のものである。
【効果】 水保有量を少なくし、それに対応して補給水量を少なくし、水が広幅溝状部に入ると水面が広くなって水位変動が少なくなり、ウイックパンアームが傾斜しても均圧用の空間及びウイック用の水位を確保でき、湿度検出の精度を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、長さ方向の根元側が水位制御を可能にする水位検出器と接続され先端の側が貯められている水をウイックで吸い上げられるように設けられたウイック用水保有容器に関し、特に環境試験装置に好都合に適用される。
【0002】
【従来の技術】従来のウイックパンアームは、一般に円筒形になっていて、その根元側が固定されると共に水位検出器に接続されている。そして、全体の高さが低いために、アームが前上がり又は前下がりに傾斜すると、ウイックが浸漬される先端部分で水が切れたり溢れたりするおそれがあるため、ウイックパンアームの装着されている環境試験装置等の使用時の状態に対応して水位センサの位置を細かく調整していた。又、水が溢れるようなときには、ウイックパンの先端から水位検出器までの空間の先端側部分が水で塞がれて、ウイックパンと水位検出器との導通が遮断され均圧化が図れなくなるため、水位検出器に均圧管を設けてこれをウイックパンの先端のある試験室内まで導設するようにしていた。
【0003】しかしながら、このような装置では、水位調整が余分な作業になると共に、均圧管が余分な構成部品になって装置コストがそれだけ高くなるという問題があった。特にウイックパンアームが長い場合には、このような問題の発生が避けられなかった。
【0004】一方、このような問題を解決するべく、ウイック給水槽を縦長で底の傾斜した形状にし、これと水位検知タンクとの間で水及び空気をそれぞれ分離して通過させるように上下の連結パイプで結合した構造の湿球温度検出装置を備えた恒温恒湿器が提案されている(特開平8−108079号公報参照)。
【0005】しかしながら、このような装置では、ウイックパンアームの構造が複雑であること、環境試験装置の断熱壁等のウイックパンアームの貫通部分が二箇所に分離されるためシールが難しくなり、試験室内部の気密性を低下させる原因になること、水平面断面積が上下方向に一定であるため、水面変動幅を縮小したり水補給時の補給水温度の影響を緩和できる効果がないこと、等の問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術における上記問題を解決し、簡単な構造で低コストで製造でき、水位検出器の細かな位置調整が不要で、均圧が確保され水位変動幅の緩和と補給水の温度の影響の軽減の可能なウイック用水保有容器を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決するために、請求項1の発明は、長さ方向の根元側が水位制御を可能にする水位検出器と接続され先端の側が貯められている水をウイックで吸い上げられるように設けられたウイック用水保有容器において、前記長さ方向に存在し前記水面制御の基準になる境界面と、該境界面の下に狭い幅を持つ形状に形成され該形状を含む状態で前記水位検出器に接続された溝状部と、前記境界面の上に前記先端の側の前記ウイックの入れられる部分を除いて閉鎖された空間を形成可能で前記狭い幅より広い幅を持つ形状に形成され該形状を含む状態で前記水位検出器に接続された広幅溝状部と、を有し、前記長さ方向が所定角度傾斜したときに前記先端に水面が残るように形成されていることを特徴とする。
【0008】請求項2の発明は、長さ方向の根元側が水位制御を可能にする水位検出器と接続され先端の側が貯められている水をウイックで吸い上げられるように設けられた環境試験装置のウイック用水保有容器において、前記長さ方向に存在し前記水面制御の基準になる境界面と、該境界面の下に狭い幅を持つ形状に形成され該形状を含む状態で前記水位検出器に接続された溝状部と、前記境界面の上に前記先端の側の前記ウイックの入れられる部分を除いて閉鎖された空間を形成可能で前記狭い幅より広い幅を持つ形状に形成され該形状を含む状態で前記水位検出器に接続された広幅溝状部と、を有し、前記長さ方向が所定角度傾斜したときに前記先端に水面が残るように形成され、前記環境試験装置の試験室の底の部分に壁面から離れた位置まで延設されていることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】図1及び図2は本発明を適用したウイック用水保有容器であるウイックパンアーム及びこれを水位検出器に装着した状態を示す。ウイックパンアーム1は、その長さ方向であるL方向の根元側である取付用リング11が水位制御を可能にする水位検出器2と接続され先端12の側が貯められている水をウイック3で吸い上げられるように設けられていて、境界面13、図において斜線で示した溝状部14、その上の広幅溝状部15、等を有する。なお本例では、取付用リング11と水位検出器2とは、取付用リング11に嵌め込まれる中間リング4で結合されている。符号5はウイックパンアーム1及び水位検出器2の装着板である。
【0010】水位検出器2は、ウイックパンアーム1の溝状部14及び広幅溝状部15がそのまま導通するように形成されていて、容器21、蓋22、これに固定されたキャップ23、これに支持されたガイドロッド24、これに挿入されている水位検出用のフロート25、水注入口26、等で構成されている。ウイック3は、保護筒の内部に熱電対が挿入され測定位置まで導設される湿球温度センサ31に被せられている。
【0011】境界面13は、ウイックパンアーム1の長さY方向に存在し、水面制御の基準になる。即ち、後述するように、水位検出器2のフロート25が、この位置を1つの水位基準にして、これから下又は上に水位が昇降したときに、その昇降位置を検出する。
【0012】溝状部14は、境界面13の下に水を保有可能な狭い幅B1 に形成されている。即ち、仮に長さ方向Lが、Y軸とX軸とで形成するXY平面が図1(c)及び(d)のように水平面になるときのY方向である場合には、境界面13が水平面になり、最大水位時には溝状部14が満水になり、そのように水を保有可能な構造になっている。
【0013】この溝状部14は、狭い幅B1 を持つ形状を含む状態で水位検出器2に接続されている。即ち、本例では、図2(a)乃至(c)に示す如く、溝状部14を持つウイックパンアーム1の後端16が、これより断面積が広がっていて溝状部14部分の形状を含みこれより大きい形状で円形断面の取付用リング11及び中間リング4を介して水位検出器2に接続されている。なお、本例では実際の装置の配置の関係で中間リング4を45°エルボ状にしているが、同図(d)及び(e)に示す如く、通常の配置では直管状継手が用いられる。又、取付用リング11及び中間リング4を省略して、ウイックパンアーム1をその形状自体で直接水位検出器2に取り付けることも可能である。
【0014】広幅溝状部15は、境界面13の上に先端12の側のウイック3の入れられる部分である切欠部15aを除いて閉鎖された空間を形成可能で且つ前記狭い幅B1 より広い幅である広幅B2 に形成されている。即ち、後述するようにウイックパンアーム1の傾斜や水面制御の方法等により、広幅溝状部15の一部分に水が入ることもあるが、それより上方には空間が形成され、溝状部14と同様に、広幅B2 を含む状態で取付用リング11及び中間リング4を介して水位検出器2に接続されている。即ち、上記と同様に、少なくとも広幅溝状部15の断面形状を含み本例ではこれより広い断面となって水位検出器2に導通するように形成されている。
【0015】図3は、本発明を適用したウイックパンアームを用いた湿度センサを装備した環境試験装置の概略構成の一例を示す。本例の環境試験装置6では、ウイックパンアーム1が試験室61の底62の部分である溝状堀り込み部62aに壁面63から離れた位置まで延設されている。皿状の容器を備えた加湿器64もウイックパンアーム1と同レベルに配置されている。又、本例ではポンプ圧送式になっている水回路を構成する貯水容器65、ワンタッチ着脱の可能な継手66、補給水用の水位センサ容器67、この水を吸入・吐出するポンプ68、これから水位検出器2の水注入口26に接続された管系69、等が設けられている。本例では管系69は加湿器64にも接続されていて、水位検出器2によって加湿皿64にもウイックパンアーム1と同レベルまで同時に水が補給されるようになっている。
【0016】この環境試験装置6は小形の簡単な構造のものであり、その他の一般的構造部分として、空調室70、これらの間で空調された空気を循環させる送風機71、これを回転駆動するモータ71a、加熱器72、冷凍機の蒸発器からなる冷却器73、冷凍機の圧縮機74、凝縮器75、その冷却ファン76、試験室及び空調室を囲う断熱壁77及び扉78、装置の支持構造体79、等を備えている。本体部分の上は操作表示部80になっている。符号81は温度センサである。
【0017】図4は、図2と共にウイックパン1及び水位検出器2の姿勢及び水面の状態を示す。本例のウイックパンアーム1は、装着位置Pから長さ寸法La=300mm程度の長さの長いものであり、長さ方向Lが水平面を構成するY方向から所定角度θとして例えばθ=1°傾斜したときには、先端12の上がり下がりの高さhu及びhdはほぼπ/0.6=5.2mm上下するので、溝状部14及び広幅溝状部15の高さ寸法hをそれぞれ12mm程度にすれば、先端12の上下の余裕高さhaは約6.8mmになり、水補給時に水面FがΔH=3mm上下に変動したとしても、先端12の上下に水面Fが3.8mm程度残るように形成される。即ち、上又は下方向に水面が変動しても、先端12の上下端から4mm程度の余裕を持って水が残り、水のオーバーフローや空間閉鎖によるウイックパンアーム1と水位検出器2との均圧阻止及びウイックへの水切れを確実に防止することができる。
【0018】なお、環境試験装置6の設置場所、又は可搬式になっているときの使用場所等により、1°以上の傾斜が予想されるときには、それに対応できるように予めh及びLaの何れか又は双方を定めておけばよい。
【0019】以上のようなウイックパンアーム及びこれを装備した環境試験装置は次のように運転されてその作用効果を発揮する。環境試験装置6では、冷凍機用機器、送風機71、加熱器72、加湿器64、等が運転され、温度センサ81及び湿球温度センサ31によって試験室61内の温度及び湿度が検出され、送風機71で循環される空気が目的とする温度及び湿度に制御され、試験室61に入れられた試料Wがそのような環境条件の下で試験される。
【0020】環境試験装置6が運転されると、ウイックパン1及び加湿器64の水が蒸発し、その水蒸気が循環空気に含まれて試験室内の壁面や試料に結露したり換気によって持ち出されて消失し、水の継続した蒸発によってウイックパン1及び加湿器64の水位が一定以下に下がると、水位検出器2が作動してポンプ68が運転され、貯水容器65から水位センサ容器67を介して水がポンプ68で吸い上げられて揚水され、ウイックパン1及び加湿器64に水が補給され、その水位が回復する。なお、本例の水回路では、水位センサ容器67に水保有部分があり、これから継手66で貯水容器65を切り離して水注入ができるようになっている。
【0021】ウイックパンアーム1の水位は前記のように水位検出器2によるポンプ68の発停によって自動的に制御されるが、その制御方法としては、基準水位を定めて、水位がそれから下限又は上限まで一定の範囲に調整されるようにポンプ68を自動発停させたり、ポンプ68を電磁ポンプやその他の容積式ポンプのように、多少の圧力変動があってもほぼ一定の吐出量を持つポンプとし、基準水位でポンプを起動し目的とする水位又は水補給量になるだけの時間運転するように制御する方法、又この場合に、環境試験装置6の運転される湿度条件に対応してポンプの運転時間も制御する方法、等の種々の方法がある。更に、ポンプ圧送式でなく、重力式の水補給方法もある。本発明のウイックパンアーム1は、このような水面制御の何れに対しても有効なものである。
【0022】図5及び図6は、ウイックパンアーム1の水位変動の状態を示す。なお、この図では、水位変動の状態を分かりやすくするために、実際のものよりも、ウイックパンアーム1を大幅に太く且つ短くすると共に、傾斜角や水位変動幅を大きく表している。
【0023】このうち図5では、同図(a)に示す如く、基準水位Hoを、境界面13がXY水平面であるときの境界面13と同じレベルとし、これから下にΔH1 だけ下がった水位をH1 とし、H1 でポンプ68を起動しHoでポンプを停止させ、水面がHoとH1 の間で維持されるようにしている。このときの水面変動は、矢印で示すように全て溝状部14内で起こるので、広幅溝状部15は直接的には作用しないが、水位検出器2にその内部の水位を安定させるための均圧差圧を良好に伝達する機能を発揮する。
【0024】図5(b)は、ウイックパンアーム1の先端12が下向きに傾斜して使用される状態を示す。このときには、境界面13が傾斜して基準水位Hoの下に形成される。ここで説明を分かりやすくするために、図示の如くΔH1 が境界面13の傾斜分と同じで広幅溝状部15の溝幅B2 が溝状部14の溝幅B1 の2倍であるとすれば、H1 からHoまで水が補給されたときには、(a)のときの補給量をqとすれば、(a)と同様に境界面13の下で幅B1 の溝状部14からなるA部分の補給量がq/2、その上の境界面13の上で幅B2 の広幅溝状部15からなるB部分の補給量がqとなり、合計補給量が1.5qになり、(a)のときよりも多くなる。
【0025】そしてこの場合、環境試験装置6で例えば5℃程度の低温運転がされているとすれば、例えば20℃程度の常温に近い水が補給されると、対流が生じて水が表面に浮き上がり、この水量が多くなると、それだけウイック3の測定温度への影響が大きくなるようにも考えられる。しかしながら、補給水量が1.5倍になっても、水の表面は広幅溝状部15内にあって2倍になっているため、ウイック3が直接吸い上げる水である表面水の温度に対する補給水の影響はむしろ少なくなる。
【0026】従って、ウイックパンアーム1が下に傾斜しているときには、広幅溝状部15の拡大した溝幅が特に有効に作用する。そして、根元側から先端側に片持ち支持状に延設されているウイックパンアーム1では、どちらかと言えばこのように前下がりの傾斜になることが多い。
【0027】図5(c)のように先端12が上傾斜しているときには、H1 からHoまでの水補給は全て溝状部14の中で起こるので、そのときの作用は(a)の場合と同様になる。
【0028】図6は、基準水位Hoを図5における低水位H1 に相当する水位とし、この水位になると、これから上にΔH2 だけ高くなるH2 まで水補給する水位制御の場合を示す。そのうち図6(a)は、図5(a)と同様に境界面13が水平になっていて基準水位Hoと一致した状態を示す。このときには、水補給されるΔH2部分は全て広幅溝状部15になる。
【0029】従って、同じ補給水量qに対して、ΔH2 を図5(a)のΔH1 の1/2にすることができる。従って、基準水位に対する補給水量を同じ比率に維持すれば、従来の装置よりも水面変動を半減させることができる。その結果、同じ高さ方向寸法のウイックパンアーム1を使用したとすれば、傾斜角を大きく許容できて使用に便利になる。又、同じ傾斜角で使用する場合には、ウイックパンアーム1を小形化することができる。
【0030】一方、水位Hoで水が補給されたときには、この水の温度が保有水の温度より高く対流が生じる場合でも、従来の装置よりも表面積が2倍に拡大されているので、表面温度に対する影響が緩和される。
【0031】図6(b)は、図5(b)に対応する図で、ウイックパンアーム1の先端12が下方傾斜した状態を示すが、この図では、基準水位Hoから上方のH2 までは、常に広幅溝状部15の水面が上昇することになる。その結果、上記図6(a)の水平状態のときと同じ作用効果が生ずる。一方、この場合には、水面が上昇するとオーバーフローレベルに近くなるが、水面変動が小さく押さえられるので、水がオーバーフローすることがないと共に、広幅溝状部15内の水面上に空間部が確保され、これと導通している水位検出器2とウイックパンアーム1との均圧が確実に達成される。
【0032】同図(c)はウイックパンアーム1の先端12が上に傾斜した状態を示す。このときには、(a)及び(b)と同じH2 まで水補給するとすれば、この間には、溝状部14の部分A及び広幅溝状部15の部分Bがそれぞれ3/4及び1/4存在するので、水の補給量は5/8qになる。このときには、水の補給回数が多くなるが、実用上問題はなく、必要に応じてH2 を少しだけ高くすることになる。一方、Hoが最低水面になるので、ウイックに供給する水の水位がそれ以上低下しないため、ウイックには確実に水を供給することができる。
【0033】図6について、以上では高水位H2 を定めてポンプ68を発停させる場合について説明したが、これに代えて、基準水位Hoから一定時間ポンプ68を作動させ、それに対応した一定水量を補給するようにしてもよい。その場合には、ウイックパンアーム1の傾斜がどうなっているかに係わらず、補給水量が一定で安定した運転状態を維持できると共に、ウイックへの水供給及び水位検出器2の均圧化を確保することができる。
【0034】以上のようなウイックパンアーム1によれば、上記の如く水位変動が小さくなるため、使用場所によってウイックパンアームが傾斜する場合であっても、水位検出器の位置調整が不要になり、ウイック水及び均圧空間を確保でき、又、ウイックへの水温変化の影響が改善される作用効果が得られると共に、従来の装置のように水部分と空間部分とを別々の管にして断熱壁を通過させて水位検出器に連結させることなく、幅広で均圧管と給水管とが一体されていて長さL方向に一様なそのままの形状で水位検出器2に連結させるので、ゴミが溜まったり水側に気泡が溜まる等により空気や水の導通性が悪くなって均圧性が阻害されたり補給水の流動性が低下するような不具合を確実に防止することができ、更に湿球温度検出装置としての構造が簡単になり、ウイックパンアームを小形化でき、近接した2箇所をシールするという難しいシール構造が不要になり、装置内部の気密性を確保できる等の総合的作用効果を得ることができる。
【0035】又、水位変動を小幅に抑制できるので、ウイックパンアーム1を長くして、試験室61における湿度制御すべき場所に近づけることができる。そしてこの場合、ウイックパンアーム1を試験室61の床位置に装備しているので、これを長くしても、従来のようにウイックパンアーム1の外面に付着した結露水が試料W上に滴下するような不具合が発生しない。即ち、ウイックパンアーム1が溝状部14と広幅溝状部15とを持つ構成と長さを長くする構成と試験室内の床部分への配置との組合せにより、上記結露水の問題を解消して湿度制御の改善を図ることができる。
【0036】なお、以上ではポンプ圧送式の水回路の場合について説明したが、重力供給式の水回路であっても同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
【発明の効果】以上の如く本発明によれば、請求項1の発明においては、長さ方向の根元側が水位制御を可能にする水位検出器と接続され先端の側が貯められている水をウイックで吸い上げられるように設けられたウイック用水保有容器を、長さ方向に存在し水面制御の基準になる境界面の下に水を保有可能な狭い幅の溝状部と、同じ境界面の上に先端の側のウイックの入れられる部分を除いて閉鎖された空間を形成可能で狭い幅より広い幅になっている広幅溝状部とを設けた構造にするので、境界面を基準として水面制御をするときに、水補給時の水面を広幅溝状部の中で昇降させることができ、水面変動幅を小さくすることができる。
【0038】その結果、ウイック用水保有容器が傾斜しても、水位検出器を細かく調整することなく、容器の上部を空間部として確保することができる。
【0039】又、溝状部及び広幅溝状部をその形状を含む状態、即ち、その形状自体で、又はそれより大きい形状の中間的部材を介して、水位検出器に接続するので、幅広部分を含み均圧管と給水管とが一体された状態で、広い空間が確保されてそのまま水位検出器と導通する。その結果、従来の独立均圧管構造の装置やウイックパンアームと水位検出器間の上下パイプ連結式の装置におけるゴミ詰まり等による均圧性や水の流動性低下のような不具合を確実に防止し、確実にウイック用水保有容器と水位検出器との間の均圧化を図ることができる。
【0040】又、先端側の水位をそれ程低下させず、ウイックに供給すべき水を確保することができる。更に、貯められた水よりも補給水の温度が高く、対流によって温度の高くなった水が上昇する場合でも、広幅溝状部では表面積が大きくなっているため、表面に対する温度の影響が緩和され、湿球温度の測定精度を維持することができる。
【0041】更に、以上のような水位変動やウイックへの水温変化の影響を緩和させると共に、広幅溝状部で空間が確保されることにより、ウイック用水保有容器と水位検出器とをそのまま接続させて両者の均圧を図ることができるので、従来の装置のような均圧管が不要になり、又、別々の管が断熱壁を通過するような複雑な構造にする必要がない。その結果、湿球温度検出装置としての構造を小形・簡素化し、複雑なシール構造を不要にし、装置内部の気密性を確保するという総合的な作用効果を得ることができる。
【0042】請求項2の発明においては、以上のような構成及び作用効果を持つウイック用水保有容器を、溝状部と広幅溝状部との組合せによる傾斜時の均圧及び水保有効果の向上の下に横方向に長く形成し、環境試験装置の試験室の底の部分に壁面から離れた位置まで延設されるようにするので、結露水が試料にかかるような不具合を解消すると共に、湿度検出位置を改善して湿度制御の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したウイックパンアームの構造例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)はA−A線断面図、(d)は(b)の図を右側から見た側面図である。
【図2】上記ウイックパンアームを水位検出器に装着した状態を示し、(a)は正面図、(b)乃至(e)は接続部分の導通状態を示す説明図である。
【図3】上記ウイックパンアームを装備した環境試験装置の説明図で、(a)及び(b)はそれぞれ一部断面を含む側面状態及び平面状態を示す。
【図4】(a)及び(b)は上記ウイックパンアームが傾斜した状態を示す側面図である。
【図5】(a)乃至(c)は上記ウイックパンアームの作用の説明図である。
【図6】(a)乃至(c)は上記ウイックパンアームの作用の説明図である。
【符号の説明】
1 ウイックパンアーム(ウイック用水保有容器)
2 水位検出器
3 ウイック
6 環境試験装置
11 取付用リング(根元側)
12 先端
13 境界面
14 溝状部
15 広幅溝状部
61 試験室
62 底
62a 溝状堀り込み部(底の部分)
63 壁面
1 狭い幅
2 広幅(広い幅)
L 長さ方向
θ 所定角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】 長さ方向の根元側が水位制御を可能にする水位検出器と接続され先端の側が貯められている水をウイックで吸い上げられるように設けられたウイック用水保有容器において、前記長さ方向に存在し前記水面制御の基準になる境界面と、該境界面の下に狭い幅を持つ形状に形成され該形状を含む状態で前記水位検出器に接続された溝状部と、前記境界面の上に前記先端の側の前記ウイックの入れられる部分を除いて閉鎖された空間を形成可能で前記狭い幅より広い幅を持つ形状に形成され該形状を含む状態で前記水位検出器に接続された広幅溝状部と、を有し、前記長さ方向が所定角度傾斜したときに前記先端に水面が残るように形成されていることを特徴とするウイック用水保有容器。
【請求項2】 長さ方向の根元側が水位制御を可能にする水位検出器と接続され先端の側が貯められている水をウイックで吸い上げられるように設けられた環境試験装置のウイック用水保有容器において、前記長さ方向に存在し前記水面制御の基準になる境界面と、該境界面の下に狭い幅を持つ形状に形成され該形状を含む状態で前記水位検出器に接続された溝状部と、前記境界面の上に前記先端の側の前記ウイックの入れられる部分を除いて閉鎖された空間を形成可能で前記狭い幅より広い幅を持つ形状に形成され該形状を含む状態で前記水位検出器に接続された広幅溝状部と、を有し、前記長さ方向が所定角度傾斜したときに前記先端に水面が残るように形成され、前記環境試験装置の試験室の底の部分に壁面から離れた位置まで延設されていることを特徴とするウイック用水保有容器。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図5】
image rotate


【図4】
image rotate


【図6】
image rotate