説明

ウイルス診断方法及びシステム

本発明は、(a)試料を収得して、試料内のウイルスを溶菌させるステップと、(b)前記溶菌された試料を特定プロテアーゼで処理して、試料内のタンパク質をペプチドで切断するステップと、(c)質量測定装置で前記試料内のペプチドの質量を測定するステップと、(d)前記プロテアーゼと同一なプロテアーゼにより切断された公知のウイルスタンパク質来由ペプチドの質量と前記試料内のペプチドの質量とを比較することで、前記試料ペプチドが来由されたタンパク質を確認するステップと、を含むウイルス診断方法及び前記診断方法に利用できるウイルス診断システムに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)試料を収得して、試料内のウイルスを溶菌させるステップと、(b)前記溶菌された試料を特定プロテアーゼで処理して、試料内のタンパク質をペプチドで切断するステップと、(c)質量測定装置で前記試料内のペプチドの質量を測定するステップと、(d)前記プロテアーゼと同一なプロテアーゼにより切断された公知のウイルスタンパク質来由ペプチドの質量と前記試料内のペプチドの質量とを比較することで、前記試料ペプチドが来由されたタンパク質を確認するステップと、を含むウイルス診断方法及び前記診断方法に利用できるウイルス診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスはDNAまたはRNAからなった遺伝物質とタンパク質からなった感染体を意味する。その大きさは種類によって違うが、普通、10〜1000nmの間である。また、自ら新陳代謝を行うことができないから自分のDNAまたはRNAを細菌、動物、植物のような宿主細胞内に浸透させた後、宿主細胞の小器官を利用してこれらを複製して自分のようなウイルスを生産する。これによって、たいてい宿主細胞は破壊される。
【0003】
一部のウイルスは、宿主に感染された場合、ウイルスの種類、宿主の免疫状態などによって疾病を起こさないこともあるが、一部のウイルスは、急速に複製及び伝播されて宿主を死亡に至るようにするか、経済的に大きなダメージを誘発させる。最近、国内外的に人獣共通側面で大きな危険要素になっている鳥類インフルエンザ(AI:Avian Influenza)の高病原性を示すH5N1の場合、2003年以後、中国、タイ、ベトナム、インドネシアなど14ヶ国から330名が感染されて240名が死亡した非常に高い致死率を現わした。これらウイルスによる疾病に対して即刻的な治療と予防対策を樹立するためには非常に迅速かつ正確な診断が要求される。しかし、これら疾病を適切に鑑別及び診断できる満足な診断法がなくて経済的に大きなダメージをもたらしている実情である。
【0004】
現在、ウイルスを診断する方法では、ウイルス自体、ウイルスのタンパク質及び核酸を検出する診断法で、種卵接種法、免疫クロマトグラフィー法などが利用されている。種卵接種法の場合、検出の敏感度は高いがウイルスを確認するためには2〜5日の実験期間が必要であり、免疫クロマトグラフィーを利用した診断法は短時間にウイルスタンパク質を確認することができるが、検出敏感度が低いという短所があって、簡易診断には利用できるが精密診断用では不適合である。また、血清検査方法で血球凝集抑制テスト(Haemagglutination inhibition(HI) test)、ELISAテストなどが利用されているが、これら診断法は病原性を確認するために追加的な実験が必要である。
【0005】
また、広く使用されている診断法である、各々のウイルスの遺伝子に特異的に結合するプライマーを用いて重合反応が起きるか否かによってウイルス遺伝子の存在有無を決定するRT−PCRの場合、被検体の糞便や臓器から抽出した試料内に存在するポリサカライド、塩のような汚染物質及び試料内に低/高病原性ウイルスが共存することによって偽陰性(false negative)結果が現われることがある。また、RT−PCRに用いるプライマーによって病原性/非病原性菌株の鑑別が難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、ウイルスを含んだ試料をそのまま溶菌してプロテアーゼで処理した後、試料内のペプチドの質量を質量分析機で測定した後に、その測定されたペプチドの質量と公知されたウイルスタンパク質から来由されたペプチドの質量とを比較することにより、試料内のウイルスを迅速で正確に同定できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0007】
したがって、本発明の一側面において、(a)試料を収得して、試料内のウイルスを溶菌させるステップと、(b)前記溶菌された試料を特定プロテアーゼで処理して、試料内のタンパク質をペプチドで切断するステップと、(c)質量測定装置で前記試料内のペプチドの質量を測定するステップと、(d)前記プロテアーゼと同一なプロテアーゼで切断された公知のウイルスタンパク質来由ペプチドの質量と前記試料内のペプチドの質量とを比較することにより、前記試料ペプチドが来由されたタンパク質を確認するステップと、を含むウイルス診断方法を提供する。
【0008】
別の観点において、ウイルスタンパク質から来由されたペプチドの質量情報を保存しているデータベースと、試料内のペプチドの質量を測定する質量測定装置と、測定された試料ペプチドの質量情報と前記データベースのペプチド質量情報とを対比して、前記試料ペプチドのウイルスタンパク質情報とマッチングされる情報のフィルタリングを実行して、測定された試料ペプチドの来由情報を確認するウイルスタンパク質マッチングフィルタリング部と、を含むウイルス診断システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点は、(a)試料を収得して、試料内のウイルスを溶菌させるステップと、(b)前記溶菌された試料を特定プロテアーゼで処理して、試料内のタンパク質をペプチドで切断するステップと、(c)質量測定装置で前記試料内のペプチドの質量を測定するステップと、(d)前記プロテアーゼと同一なプロテアーゼで切断された公知のウイルスタンパク質来由ペプチドの質量と前記試料内のペプチドの質量とを比較することにより、前記試料ペプチドが来由されたタンパク質を確認するステップと、を含むウイルス診断方法に関するものである。以下、各ステップ別に具体的に説明する。
【0010】
<ステップ(a)試料の収得と溶菌>
本発明において‘試料’とは、ウイルス感染が頻発する部位の試料(例:血液、組職、喀痰、糞便など)、細胞培養を通じて増殖された試料及び自然界の試料を全て含む用語である。前記試料は当業界に公知された方法を利用して収得することができる。採取した試料は均質化(homogenazition)及び段階希薄(serial dilution)過程を行うことが好ましい。
【0011】
このように収得した試料に診断しようとするウイルス以外の多くの不純物が含まれている場合には、これらを除去するために試料からウイルスを分離するステップを追加に進行してもよい。試料からウイルスを分離するステップは試料からウイルスを分離することができる方法であれば、当業界に公知されたどのような方法でも利用可能である。一様態として、多様な少ないペプチドを吸着できる抗体、レジンまたはビードを利用する方法を採択することができる。その方法の一例では免疫磁気分離法(IMS:Immuno−Magnetic Separation)がある。
【0012】
試料をそのまま、または試料から分離されたウイルスを溶菌緩衝溶液で処理するか、超音波処理、熱処理などを行って溶菌させることができる。本発明では溶菌緩衝溶液で処理することを例と挙げる。このための緩衝溶液はTriton X−100及びDTT(DL−Dithiothreitol)を含むことが好ましい。Triton X−100は非イオン性界面活性剤として細胞メンブレインの透過性を高める役目をするからウイルスを溶菌させるにおいて有用であり、DTTは3次元タンパク質構造でジスルフィド結合を切断する役目をして3次元構造による酵素などの接近の難しさを緩和させることができる。本発明の溶菌緩衝溶液はNaCl、Tris−HClを追加に含んでもよい。このステップを通じて試料内に存在するウイルスが溶菌される。
【0013】
本発明においてステップ(a)の後にすぐステップ(b)を実施することもできるが、この二つのステップの間に試料溶菌液を濾過するステップを追加してもよい。これによって、前記溶菌液から溶菌に利用された緩衝溶液の構成成分などを除去して質量測定装置による分析を容易に行いながら純粋な粉砕されたウイルス粒子のみを収得することができる。
【0014】
<ステップ(b)プロテアーゼ処理>
知られたようにプロテアーゼ(protease)はタンパク質をペプチドで分解する。このステップではマイクロ波の照射を伴うことが好ましい。マイクロ波により発生する波長と高い温度はタンパク質間の分子間衝突を誘発してプロテアーゼによるウイルスタンパク質の切断が容易になり、この過程で発生できるタンパク質の集合、すなわちタンパク質の再結合を抑制することでタンパク質切断に必要となる時間を短縮させることができる。また、マイクロ波により短縮された反応時間はタンパク質の3次元構造を解くことで、タンパク質分解酵素のタンパク質作用部位への接近を容易にするために処理した化合物(例えば、DTT)とそれにより切られたジスルフィド結合の再結合を阻むために実行したアルキル化(alkylation)過程が不必要になって反応時間を短縮させることができる。
【0015】
<ステップ(c)ペプチドの質量測定>
本発明は以上のようにウイルス(すなわち、ウイルスを構成する総タンパク質)をプロテアーゼで分解して収得したペプチドに対する質量を質量測定装置で測定することを特徴とする。前記質量測定装置では質量分析機を使うことが好ましい。
【0016】
本発明では質量分析の方式として、MALDI−TOF MS(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization−Time of flight Mass Spectrometry)方式を利用し、例えば、Voyager De STR MALDI−TOF MSを使用してもよい。また、タンパク質の測定が可能な多様な形態のMass spectrometry(MS)及びMS/MS種類は制限的ではない。ここで、マトリクスでは、例えばシナピン酸(sinapic acid)などを利用することができる。検出効率に影響を及ぼす要因では、(1)遅延時間(DE:delay time):レーザーの照射後に次の照射までの時間差(nano second)、(2)グリッド電圧(grid voltage、%):MALDI−TOF MS真空管内でペプチドイオンが飛行して検出機により検出されるまで必要なエネルギーの大きさ、(3)質量範囲(Mass Range):検出しようとするペプチドの質量範囲、(4)レーザー強度(laser intensity):レーザーの照射量などがある。このような要因は当業者により適切に設定できる。
【0017】
<ステップ(d)測定されたペプチド質量と公知のペプチド質量の比較>
公知されたウイルスタンパク質来由のペプチド質量は、例えば次のように確保することができる。プロテアーゼはアミノ酸序列を認識して特定部位を切断する酵素である。したがって、特定のアミノ酸序列からなったウイルスのタンパク質を指定されたプロテアーゼで処理する場合、収得できるペプチドの序列が推定され、このペプチドの質量はアミノ酸の質量が公知されているのでこれを参照して計算することで確保できる。このように確保した公知されたウイルスタンパク質来由のペプチド質量から測定されたペプチドの質量と一致するとか一番類似な質量を有するペプチドを選別して、その質量を有するペプチドがどのウイルスタンパク質から来由されたかを確認することでウイルスを同定することができる。
【0018】
また、ステップ(d)は、前記プロテアーゼで切断された公知のウイルスに特異的に存在するペプチド質量のセットとマッチングされる、前記試料内のペプチドの質量セットの存在有無を確認することで実行してもよい。
【0019】
本発明によるウイルス診断方法は、下記のように構成されたシステムを利用して実施することができる。
【0020】
本発明の他の観点は、ウイルスタンパク質から来由されたペプチドの質量情報を保存しているデータベースと、試料内のペプチドの質量を測定する質量測定装置と、測定された試料ペプチドの質量情報と前記データベースのペプチド質量情報とを対比して、前記試料ペプチドのウイルスタンパク質情報とマッチングされる情報のフィルタリングを実行して、測定された試料ペプチドの来由情報を確認するウイルスタンパク質マッチングフィルタリング部と、を含むウイルス診断システムに関するものである。
【0021】
本発明において前記質量測定装置はそれに制限されることではないが、質量分析機であることが好ましい。
【0022】
本発明に適用されるデータベースは、遺伝子情報(アミノ酸序列または塩基序列)に基づいて特定のウイルスのタンパク質を指定されたプロテアーゼで分解した場合に収得できるペプチドに対する質量を計算して得た理論的質量で保存するように具現されている。この時、ペプチド質量とそのペプチドが来由されたウイルスのタンパク質名称、利用されたプロテアーゼの名称に対する情報がお互いに連携されるように具現する。本発明のデータベースに含まれるウイルスタンパク質とプロテアーゼの種類は制限的ではない。本発明のデータベースは追後に未知のウイルス、タンパク質及びプロテアーゼに対する情報を含んで拡張することもできる。
【0023】
本発明のウイルス診断システムは、試料収容部及び前記試料収容部でプロテアーゼを投入するためのプロテアーゼ保存部を含む試料処理部を追加に含んでもよい。前記試料処理部は、試料収容部にマイクロ波を照射するためのマイクロ波発生源をさらに含むことができる。
【0024】
また、本発明のウイルス診断システムは、抽出されたウイルスタンパク質情報に基づいて試料に含まれたウイルス情報を出力するウイルス情報出力装置を追加に含むことができる。前記ウイルス情報出力装置は、前記試料に含まれたウイルス情報が二つ以上の場合、各々のウイルス情報を別に出力することができる。
【0025】
また、本発明のウイルス診断システムにおいて、データベース、質量測定装置、ウイルスタンパク質抽出装置、ウイルス情報出力装置はネットワークを通じて連結されることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ウイルスを迅速で正確に診断することができる。特に、本発明では診断しようとするウイルスの全体タンパク質をプロテアーゼで分解するにおいて、マイクロ波を照射してタンパク質のペプチドへの分解に必要となる時間を著しく短縮させることにより、ウイルスの診断に要求される時間も短縮させることができる。また、ウイルスの診断において、ウイルスの溶菌後にウイルス内に存在する非構造的なタンパク質を遊離させることにより、ウイルスの一部タンパク質のみを利用して診断することではなく全体タンパク質を利用して診断するので、ウイルスの血清型分析、病原性分析及びワクチンウイルスなどの多様な分析も可能である。また、人来由、動物来由及び植物来由のウイルスを同一または類似な方式で診断することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明によって質量分析機で測定されたペプチドの質量分析スペクトラムを示す図である。
【図2】図2は、本発明によって質量分析機で測定されたペプチドの質量値をアクセルファイル形態で示す図である。
【図3】図3は、本発明によって質量分析機で測定されたペプチドの質量値を本発明の診断システムに代入する過程を示す図である。
【図4】図4は、本発明の診断システムを通じて診断された結果を示す図で、ニューカッスル病のウイルスが一番高い一致度で診断された。
【図5】図5は、本発明の診断システムを通じて診断された結果を示す図で、ニューカッスル病のウイルスが一番高い一致度で診断された。
【図6】図6は、本発明の診断システムを通じて診断された結果を示す図で、ニューカッスル病のウイルスが一番高い一致度で診断された。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔最も好ましい形態〕
<実施例1:試料の収得>
ニューカッスルウイルスに感染されたと疑心されるニワトリから組職、血液、喀痰、尿、糞便の標本を収集して均質化した後、段階希薄して次の実施例2に適用した。
【0029】
<実施例2:溶菌(Lysis)>
試料からウイルスを分離した後、その分離されたウイルスの部分標本(aliquot)100μLの中で10μL(濃度:4.811μgのウイルス/μL)をe−tubeで移して、ここにウイルス溶菌用緩衝溶液[1%Triton X−100(Amresco)、2mM DTT(DL−Dithiothreitol、Promega)、150mM NaCl(Amresco)、10mM Tris−HCl(Amresco)、pH:7.4]20μLを入れ、室温で15分間放置した後反応させた。後述のMicroconを利用する前に、最大算出濃度のために470μLのレジンウォーターを入れた。
【0030】
<実施例3:溶菌液の濾過>
Micron Centrifugal filter device(YM−3、Nominal molecular weight limit in Dalton:3,000、Amicon)を利用して濾過して、実施例2で収得した粉砕されたウイルス粒子とウイルス粉砕緩衝溶液が混合された反応液から粉砕されたウイルス粒子のみを純粋分離した。
【0031】
<実施例4:マイクロ波の照射によるタンパク質の分解>
実施例3で収得した粉砕されたウイルス粒子溶液10μLに10mM DTTを25μL入れて20分間軽くミキシングした。1μLの20μgトリプシン/50mM NHHCOで20μLを入れた後、e−tubeのキャップにシリンジで3〜4個程度を穿孔した後、マイクロ波(domestic microwave−SAMSUNG RE−442B)で10分間照射した。照射後、4℃で5分間冷やした後にCalibrant(insulin from bovine pancreas、FW=5733、SIGMA)20μLを入れた。
【0032】
<実施例5:本発明の方法によるウイルスの診断>
(A. MALDI−TOFイオン化プレート(ID:100))
マトリクスとしてシナピン酸(sinapic acid、Fluka)を利用し、プレート上でウイルスタンパク質のターゲッティング(targeting)方法ではサンドイッチ方法(sandwich method)を利用した。
【0033】
具体的には、25%のトリフルオロ酢酸(TFA:MERCK)40μLと、レジンウォーター960μLを交ぜて1%TFAを製造した。500μLの1%TFAと500μLのアセトニトリル(ACN:99.93+%HPLC等級、Sigma Aldrich)を混合した溶液に20mgのシナピン酸(sinapic acid、Fluka)を入れた後、30分間ボルテックシングした溶液1μLをイオン化プレートに落とした後に空気乾燥した。継いで、実施例5から得た試料溶液1μLを落とした。そして、アセトン(99+%、HPLC grade、sigma Aldrich)990μLとレジンウォーター10μLを混合した溶液にSA 200μLを入れた後、ボルテックシングした溶液1μLを落とした後に空気乾燥した。
【0034】
(B. MALDI−TOF MSの実行)
Voyager DE STR MALDI−TOF MS reflector modeを利用して、遅延時間(DE)は100ns、グリッド電圧(%)は68%、質量範囲は800〜10000、レーザー強度は2205で設定して、MALDI−TOF MSを実施して質量スペクトラムを得た。
【0035】
〔発明の実施のための形態〕
前記実施例5で測定されたペプチドの質量値を質量分析スペクトラム(図1)とアクセルファイル形態(図2)で得た後、測定された質量値を本発明の診断システムに代入して診断した(図3)。診断結果、ニューカッスルウイルスの融合タンパク質(fusion protein)(図4)、ニューカッスルウイルスのマトリクスタンパク質(matrix protein)(図5)、ニューカッスルウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RNA−dependent RNA polymerase)(図6)と各々診断されて、ニューカッスルウイルスと正確に診断することができた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明では診断しようとするウイルスの全体タンパク質をプロテアーゼで分解するにおいて、マイクロ波を照射してタンパク質のペプチドへの分解に必要となる時間を著しく短縮させることにより、ウイルスの診断に要求される時間も短縮させることができる。また、ウイルスを診断するにおいて、ウイルスの一部タンパク質のみを利用して診断することではなく全体タンパク質を利用して診断することにより、ウイルスの血清型分析、病原性分析及びワクチンウイルスなどの多様な分析も可能である。また、人来由、動物来由及び植物来由のウイルスを同一または類似な方式で診断することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)試料を収得して、試料内のウイルスを溶菌させるステップと、
(b)溶菌された前記試料を特定のプロテアーゼで処理して、試料内のタンパク質をペプチドで切断するステップと、
(c)質量測定装置で前記試料内のペプチドの質量を測定するステップと、
(d)前記プロテアーゼと同一なプロテアーゼで切断された公知のウイルスタンパク質来由のペプチドの質量と前記試料内のペプチドの質量とを比較することで、前記試料のペプチドが来由されたタンパク質を確認するステップと、を含むことを特徴とするウイルス診断方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)で、試料からウイルスを分離して溶菌することを特徴とする請求項1に記載のウイルス診断方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)で、必須成分でDTT及びTriton X−100を含んだ溶菌用緩衝溶液を処理して溶菌させることを特徴とする請求項1に記載のウイルス診断方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)の後、前記溶菌液を濾過させて溶菌用緩衝溶液の構成成分を除去するステップをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のウイルス診断方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)で、マイクロ波を追加に照射することを特徴とする請求項1に記載のウイルス診断方法。
【請求項6】
前記ステップ(c)で、前記質量測定装置は質量分析機であることを特徴とする請求項1に記載のウイルス診断方法。
【請求項7】
前記ステップ(d)は、前記プロテアーゼで切断された、公知のウイルスに特異的に存在するペプチド質量のセットとマッチングされる、前記試料内のペプチドの質量セットの存在有無を確認することにより実行されることを特徴とする請求項1に記載のウイルス診断方法。
【請求項8】
ウイルスタンパク質から来由されたペプチド質量情報を保存しているデータベースと、
試料内のペプチドの質量を測定する質量測定装置と、
測定された試料ペプチドの質量情報と前記データベースのペプチド質量情報とを対比して、前記試料ペプチドのウイルスタンパク質情報とマッチングされる情報のフィルタリングを実行して、測定された試料ペプチドの来由情報を確認するウイルスタンパク質マッチングフィルタリングと、を含むことを特徴とするウイルス診断システム。
【請求項9】
前記質量測定装置は質量分析機であることを特徴とする請求項8に記載のウイルス診断システム。
【請求項10】
試料収容部及び試料収容部にプロテアーゼを投入するためのプロテアーゼ保存部を含んだ試料処理部をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のウイルス診断システム。
【請求項11】
前記試料処理部は、試料収容部にマイクロ波を照射するためのマイクロ波発生源をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載のウイルス診断システム。
【請求項12】
抽出されたウイルスタンパク質情報に基づいて試料に含まれたウイルス情報を出力するウイルス情報出力装置をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のウイルス診断システム。
【請求項13】
前記ウイルス情報出力装置は、前記試料に含まれたウイルス情報が二つ以上の場合、各々のウイルス情報を別に出力することを特徴とする請求項12に記載のウイルス診断システム。
【請求項14】
前記データベース、質量測定装置、ウイルスタンパク質抽出装置、およびウイルス情報出力装置は、ネットワークを通じて連結されることを特徴とする請求項8に記載のウイルス診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−521255(P2011−521255A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510409(P2011−510409)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007568
【国際公開番号】WO2010/011002
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(506415241)インダストリー−アカデミック コーオペレーション ファンデーション キョンサン ナショナル ユニバーシティ (8)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRY−ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION GYEONGSANG NATIONAL UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】900,Gajwa−dong, Jinju−si, Gyeongsangnam−do 660−701, Republic of Korea
【Fターム(参考)】