説明

ウイングルーフコンテナ

【課題】鉄道貨車及び道路走行用車両の双方に搭載可能であり、ルーフパネルの開閉操作が容易なウイングルーフコンテナを提供する。
【解決手段】両側面に配置された観音扉18と共に、鉄道貨車及び道路走行用車両の双方に搭載可能、かつ、鉄道輸送時の積載限界を越えることなく、要求される室内高を確保するために設けられた、傾斜パネル16を開くことで、側面の開口面積を拡大し、ウイングルーフコンテナの幅方向からの荷役作業を、円滑に行うことが可能となる。傾斜パネル16の開閉操作は、開方向に関しては、傾斜パネル16を常時開方向へと付勢するダンパ22により行うことができる。又、傾斜パネル16の閉方向の操作に関しては、床構造内部の長手方向中央部に設けられたウインチによって、ダンパ22の付勢力に抗して傾斜パネル16に接続されたワイヤを巻き取ることにより、行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道貨車及び道路走行用車両の双方に搭載可能なウイングルーフコンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策や、高速道路の速度規制の強化に鑑み、モーダルシフト(トラックによる幹線貨物輸送を、海運又は鉄道輸送に転換すること。)が、より盛んに行われるようになっている。このモーダルシフトへの移行に、コンテナを用いた貨物輸送は最適である。又、コンテナは、積荷の形態や荷役方法に適合するように、扉の配置も様々であり、屋根の開閉を可能としたものも存在する(例えば、特許文献1参照。)。ところで、かかるコンテナを、例えば、一つのコンテナを鉄道貨車及び道路走行用車両の双方に搭載可能とするためには、鉄道車両の第三積載限界と、道路搬送車両に適用される道路法若しくは保安基準の規格との、双方の規定に合致する必要がある。
【0003】
【特許文献1】特許第3409084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、鉄道車両の第三積載限界には、円弧状断面(R1850)で規定される高さ限界が規定されている。一方、道交法若しくは保安基準にも、一定の高さ制限が規定されている。。その結果、コンテナの幅方向中央部では、道路搬送車両に適用される道路法若しくは保安基準に比して、鉄道車両の第三積載限界Lの方がより高い値が許容されるが、コンテナの幅方向両端部ではその逆の状態となっている。このような条件に適合しつつコンテナの荷室容積を最大限に確保するためには、ルーフパネルが、幅方向中央部に配置された水平パネルと、幅方向両端部に配置された傾斜パネルとで構成される必要がある。
【0005】
更に、ルーフパネルの幅方向両端部が傾斜パネルで構成されたコンテナにおいて、幅方向からの荷役作業を円滑に行うために、側面の開口面積を可能な限り大きくすることが望まれている。しかも、複雑な開閉機構を用いることなく、側面の開口部の開閉操作が、簡単かつ確実に行えるものであることが望ましい。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鉄道貨車及び道路走行用車両の双方に搭載可能であり、ルーフパネルの開閉操作が容易なウイングルーフコンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための、本発明に係るウイングルーフコンテナは、鉄道貨車及び道路走行用車両の双方に搭載可能、かつ、鉄道輸送時の積載限界を越えることなく、要求される室内高を確保するために、幅方向中央部に配置された水平パネルと、幅方向両端部に配置された傾斜パネルとでルーフパネルが構成され、前記傾斜パネルの部分が、幅方向中央部寄りに設けられた回動軸を中心として開閉可能に軸支されたウイングルーフと、前記傾斜パネルを、常時開方向へと付勢するダンパと、両側面に配置され上端部が前記傾斜パネルに接触する観音扉と、床構造内部の長手方向中央部に、ドラムの回転軸が車幅方向と平行となるように配置されたウインチと、前記ドラムの、中心軸を挟んだ対称位置でかつ軸方向にずれた位置に、各一端部が接続され、床構造内部に敷設されたパイプの内部を通り前方又は後方へと案内され、更に壁構造内部に敷設されたパイプの内部を通り、各他端部が前記傾斜パネルの前方端部又は後方端部に接続された複数のワイヤと、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、両側面に配置された観音扉と共に、ウイングルーフを開くことで、側面の開口面積を拡大し、幅方向からの荷役作業を円滑に行うことが可能となる。そして、ウイングルーフの開閉操作は、開方向に関しては、傾斜パネルの前方端部又は後方端部に接続された各ワイヤの張力を緩め、傾斜パネルを常時開方向へと付勢するダンパの付勢力を解放することにより行うことができる。又、閉方向の操作に関しては、床構造内部の長手方向中央部に設けられたウインチによって、ダンパの付勢力に抗して各ワイヤを巻き取ることにより、行うことができる。
【0008】
しかも、上記のごとくウイングルーフの開閉にかかる複数のワイヤは、床構造内部に敷設されたパイプの内部を通り前方又は後方へと案内され、更に壁構造内部に敷設されたパイプの内部を通り、各他端部が前記傾斜パネルの前方端部又は後方端部に接続されていることから、各パイプによってワイヤの経路が常時確定され、ワイヤの取り回しが確実に行われるとともに、ワイヤも各パイプによっても保護されることとなる。又、ワイヤの各一端部は、ウインチのドラムの、中心軸を挟んだ対称位置でかつ軸方向にずれた位置に接続されていることから、ウインチの操作によってドラムを回転させることにより、ドラムの軸方向にずれた位置に各ワイヤを同時かつ均等に巻き取り、傾斜パネルの前後両端部に対し均等にワイヤの張力を付与して、傾斜パネルの開閉操作を円滑に行うことが可能となる。
【0009】
又、本発明において、前記ウインチを駆動する電動モータは、外部電源から電力供給を受けるものであることが望ましい。
この構成によれば、コンテナ毎に電源を搭載する必要が無くなる。又、トラック又はトレーラの荷台に搭載された状態で、トラック又はトラクタの車載電源から電力供給を受けることで、傾斜パネルの開閉操作を自動的に行うことが可能となる。
【0010】
又、本発明において、前記ウインチは電動又は手動の何れによっても駆動可能であることが望ましい。
この構成によれば、傾斜パネルの開閉操作を自動的に行うのみならず、電源を確保できないような場合や、電動モータの故障等の非常時においても、傾斜パネルの開閉操作を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明はこのように構成したので、鉄道貨車及び道路走行用車両の双方に搭載可能であり、ルーフパネルの開閉操作が容易なウイングルーフコンテナを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1、図2に示される、本発明の実施の形態に係るウイングルーフコンテナ10は、ルーフパネル12が、幅方向中央部に配置された水平パネル14と、幅方向両端部に配置された傾斜パネル16とで構成されている。このルーフパネル形状は、鉄道車両の第三積載限界(円弧状断面(R1850)で規定される高さ限界)と、道交法若しくは保安基準に適合するための高さの何れにも収まるものである。更に、傾斜パネル16が、幅方向両端部に配置され水平パネル14との接辺側に設けられた回動軸を中心として開閉可能に軸支された、ウイングルーフを構成している。従って、このウイングルーフコンテナ10は、鉄道貨車及び道路走行用車両の双方に搭載可能、かつ、鉄道輸送時の積載限界を越えることなく、要求される室内高が確保されたものである。
【0013】
又、ウイングルーフコンテナ10の両側面は、全面開放可能な観音扉18によって構成されている。この観音扉18の上端部と、傾斜パネル16の幅方向外側辺との間に梁は存在せず、両者は直接的に接触している。なお、観音扉18は、コンテナの側面全体を構成するものであり、その面積が広いことから、これを開放時に小さく折り畳むことができるように、四枚折り戸ドアとなっている。更に、ウイングルーフコンテナ10の後方妻面(図2(b))にも、観音扉20が設けられている。図3には、ウイングルーフの傾斜パネル16と、両側面の観音扉18と、後方妻面の観音扉20とを全て開放した状態が示されている。前述のごとく、観音扉18の上端部と、傾斜パネル16の幅方向外側辺との間に梁が存在しないことから、側面の開口面積が極めて広いものとなる。なお、図3において、符号22で示される部分は、傾斜パネル16を、開方向へと常時付勢するためのダンパである。
【0014】
ウイングルーフコンテナ10の、床構造内部の長手方向中央部には、図4〜図6に示されるように、ウインチの設置室23が形成され、ここにウインチ24が固定されている。ウインチ24は、ドラム26の回転軸がコンテナの幅方向と平行となるように配置されており、ドラム26によって、ウイングルーフの傾斜パネル16を閉じるためのワイヤ25を巻き取るものである。なお、ウインチ24は電動ウインチであるが、図6(a)に示されるように、電動モータ27の回転軸の延長線上に、床構造を構成するフレーム28を貫通する穴30を形成し、この穴30にクランク32を挿通してクランク32を電動モータ27の回転軸に連結することで、ドラム26を手動により回転させることも可能となっている。又、電動モータ27は、外部電源から電力供給を受けるものであり、ウイングルーフコンテナ10の前方妻面(図2(a))には、電源授受のためのソケットが設けられておりこのソケットは、開閉カバー33によって覆われている。
【0015】
ウインチ24のドラム26は、図7に示されるように、中心軸を挟んだ対称位置でかつ軸方向にずれた位置に、二本のワイヤ25の一端部を接続するための、円周方向に延びる長穴34が形成されている。長穴34の先端部には、ワイヤ保護のために傾斜面34aが形成されている。又、長穴34の基端部には、長穴34の幅よりも大径のネジ穴34bが形成され、このネジ穴34bにワイヤストッパを挿通した後、ネジ穴34bを頭なしネジで塞ぐことで、ワイヤの抜け止めが施される。
【0016】
更に、図4、図6に示されるように、ウイングルーフコンテナ10の床構造内部には、ウインチ24のドラム26に巻き取られるワイヤを案内するために、ウインチの設置室23から前方妻面へと延びるパイプ36と、後方妻面へと延びるパイプ38とが敷設されている。ウインチの設置室23に対するパイプ36、38の各接続点は、図6(a)、(b)に示されるように、ドラム26の二箇所の長穴34から延びるワイヤの位置に合せて、ずらされている。そして、パイプ36の前方妻面側の端部は、図8、図9に示されるように、エルボパイプ40やガイドプーリ(図示省略)を介して、壁構造内部に上下に延びるように敷設されたパイプ42と連結されている。なお、パイプ38が延びる後方妻面についても、ほぼ同様の構造となっていることから、図示を省略する。
そして、ウインチ24のドラム26に各一端部が接続された二本のワイヤ25は、これらのパイプ36、38、40、42の内部を通り、各他端部が、図10に示されるように、傾斜パネル16の前方端部又は後方端部に接続されている。なお、上記ウインチ24、二本のワイヤ25、及びワイヤ25を案内するパイプ36、38、40、42は、各々、ウイングルーフコンテナ10の左右両側に設けられており(図4参照)、ウイングルーフの左右両側の傾斜パネル16を、独立して開閉させることができる。
【0017】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。まず、両側面に配置された観音扉18と共に、鉄道貨車及び道路走行用車両の双方に搭載可能、かつ、鉄道輸送時の積載限界を越えることなく、要求される室内高を確保するために設けられた、傾斜パネル16を開くことで、側面の開口面積を拡大し、ウイングルーフコンテナ10の幅方向からの荷役作業を、円滑に行うことが可能となる。
又、傾斜パネル16の開閉操作は、開方向に関しては、ウインチ24のドラム26の回転をフリーにしてワイヤ25の繰り出し方向へと回転させ、傾斜パネル16の前方端部又は後方端部に接続された各ワイヤ25の張力を緩め、傾斜パネル16を常時開方向へと付勢するダンパ22の付勢力を解放することにより、行うことができる。又、閉方向の操作に関しては、床構造内部の長手方向中央部に設けられたウインチ24によって、ダンパ22の付勢力に抗して各ワイヤ25を巻き取ることにより、行うことができる。
【0018】
しかも、上記のごとく傾斜パネル16の開閉にかかる複数のワイヤ25は、床構造内部に敷設されたパイプ36、38の内部を通り前方又は後方へと案内され、更に壁構造内部に敷設されたパイプ40、42の内部を通り、各他端部が傾斜パネル16の前方端部又は後方端部に接続されていることから(図10参照)、各パイプによってワイヤ25の経路が常時確定され、ワイヤ25の取り回しが確実に行われるとともに、ワイヤ25も保護されることとなる。又、ワイヤ25の各一端部は、ウインチ24のドラム26の、中心軸を挟んだ対称位置でかつ軸方向にずれた位置に接続されていることから(図6、図7参照)、ウインチ24の操作によってドラム26を回転させることにより、ドラム26の軸方向にずれた位置に、各ワイヤ25を同時かつ均等に巻き取り、傾斜パネル14の前後両端部に対し均等にワイヤ25の張力を付与して、傾斜パネル14の開閉操作を円滑に行うことが可能となる。
【0019】
又、ウインチ24を駆動する電動モータ27は、外部電源から電力供給を受けるものであることから、各コンテナ毎に電源を搭載することなく、ウイングルーフコンテナ10がトラック又はトレーラの荷台に搭載された状態で、トラック又はトラクタの車載電源から電力供給を受けることで、傾斜パネル14の開閉操作を自動的に行うことが可能となる。
又、クランク32を電動モータ27の回転軸に連結し、ドラム26を手動により回転させることも可能であることから、傾斜パネル14の開閉操作を自動的に行うのみならず、電源を確保できないような場合や、電動モータ27の故障等の非常時においても、傾斜パネル14の開閉操作を行うことが可能となる。
【0020】
尚、本発明の実施の形態では、ウイングルーフは、水平パネル14と両側部の傾斜パネル16とからなる三分割構造であり、傾斜パネル14のみ可動部となっている。かかる構造の利点は、傾斜パネル16は、冬季において平面パネル14に比べ雪が積り難く、仮に積もった雪の除去も、平面パネルより容易であることから、凍結も事前に防ぐことが可能である等、冬季における屋根の開閉に支障を受ける事が少ない点が挙げられる。しかしながら、比較的温暖な地域で使用するのであれば、そのような問題は生じないので、水平パネル14を傾斜パネル16と一体化すると共に水平パネル14を中央部で分割した二分割構造とし、水平パネル14の中央の分割線を回動中心として、ウイングルーフの開閉を行う構造とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る、ウイングルーフコンテナの側面図である。
【図2】(a)は、図1のウイングルーフコンテナの前方妻面であり、(b)は同後方妻面である。
【図3】図1のウイングルーフコンテナの、ウイングルーフと両側面の観音扉とを開放した状態を示す立体図である。
【図4】図1のウイングルーフコンテナの床構造を示すものであり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図5】図1のウイングルーフコンテナの、床構造内部の長手方向中央部に設けられたウインチの設置室と、ウインチとを示す立体図である。
【図6】図1のウイングルーフコンテナの、床構造内部の長手方向中央部に設けられたウインチの設置室を示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図7】図1のウイングルーフコンテナに設けられたウインチのドラム単体図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図8】図1のウイングルーフコンテナの、前方妻面における側端下部の構造を示す断面図である。
【図9】図8のB−B線における拡大断面図である。
【図10】図1のウイングルーフコンテナの、前方妻面における側端上部の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10:ウイングルーフコンテナ、12:ルーフパネル、14:水平パネル、16:傾斜パネル、18:観音扉、22:ダンパ、24:ウインチ、25:ワイヤ、26:ドラム、27:電動モータ、 36、38、42:パイプ、40:エルボパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道貨車及び道路走行用車両の双方に搭載可能、かつ、鉄道輸送時の積載限界を越えることなく、要求される室内高を確保するために、幅方向中央部に配置された水平パネルと、幅方向両端部に配置された傾斜パネルとでルーフパネルが構成され、前記傾斜パネルの部分が、幅方向中央部寄りに設けられた回動軸を中心として開閉可能に軸支されたウイングルーフと、
前記傾斜パネルを、常時開方向へと付勢するダンパと、
両側面に配置され上端部が前記傾斜パネルに接触する観音扉と、
床構造内部の長手方向中央部に、ドラムの回転軸が車幅方向と平行となるように配置されたウインチと、
前記ドラムの、中心軸を挟んだ対称位置でかつ軸方向にずれた位置に、各一端部が接続され、床構造内部に敷設されたパイプの内部を通り前方又は後方へと案内され、更に壁構造内部に敷設されたパイプの内部を通り、各他端部が前記傾斜パネルの前方端部又は後方端部に接続された複数のワイヤと、を備えることを特徴とするウイングルーフコンテナ。
【請求項2】
前記ウインチを駆動する電動モータは、外部電源から電力供給を受けるものであることを特徴とする請求項1記載のウイングルーフコンテナ。
【請求項3】
前記ウインチは電動モータ又は手動の何れによっても駆動可能であることを特徴とする請求項1又は2記載のウイングルーフコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−284073(P2007−284073A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110826(P2006−110826)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(506126750)北見通運株式会社 (1)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】