説明

ウェブページ表示装置およびフォーカス制御方法

【課題】携帯端末等におけるウェブブラウザの操作方法を改善する。
【解決手段】ウェブページ表示装置100は、ウェブページを構成する文書ファイルに基づきウェブページをレンダリングする。ハイパーリンク抽出部104は、文書ファイルからハイパーリンクを含むオブジェクトを抽出する。イベントハンドラ抽出部106は、文書ファイルから所定のイベントハンドラを含むオブジェクトを抽出する。オブジェクト格納部116は、抽出されたオブジェクトのウェブページ上での配置に関する情報を少なくとも含むオブジェクト情報を格納する。フォーカス制御部114は、ユーザによる方向操作入力に応じて、ウェブページ上でフォーカス表示すべきオブジェクトを選択する。スクリプト実行部108は、フォーカス制御部によって選択されたオブジェクトがイベントハンドラを含むオブジェクトである場合、イベントハンドラに関連づけられたスクリプトを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブページの操作性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブページを閲覧するためのブラウザは、パーソナルコンピュータ(PC)のみならず、携帯電話、ゲーム機、デジタルテレビなどの様々な電子機器に搭載されている。ウェブページの多くは、マウス等の、ポインタを任意の位置に移動できる入力デバイスが接続されたPCを用いて閲覧されることが前提となっている。そのため、携帯電話やデジタルテレビなどのPC以外の電子機器でウェブページを閲覧する場合、電子機器やそのリモートコントローラに設けられたボタンだけではウェブページに対する操作がうまくいかないことがある。そのため、従来のブラウザには、カーソルキーやTabキーなどの特定のキー操作に応じて、ハイパーリンクが設定されたオブジェクトに順次フォーカスを移動させる機能が備えられている。
【0003】
また、特許文献1には、HTMLファイルからアンカータグを検出し、アンカータグの検出順に例えば1〜10までの操作用の数字を付与してアンカーの近傍にその数字を表示するWebブラウザの操作方法が開示されている。これによると、ユーザは、操作を所望するアンカーの近傍の数字に該当するリモートコントローラの数字キーを押すことで、当該アンカーを操作することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−169883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近のウェブページでは、CSS(Cascading Style Sheet)とJavaScript(登録商標)を用いて、クライアント側でウェブページの表示内容を動的に変更するダイナミックHTML(DHTML)を使用したものが多い。一例として、あるオブジェクトにマウスポインタを重ねたときにイベント(「onMouseoevr」)を発生させるイベントハンドラを設定し、このイベントハンドラに関連づけられたJavaScriptをクライアント側で実行させることができる。これにより、例えばあるオブジェクトにマウスポインタを重ねることで当初は非表示であったオブジェクトをブラウザ上に表示させたり、フォントの色やオブジェクトのサイズを変更したりすることが可能になる。
【0006】
しかしながら、イベントハンドラが設定されたオブジェクトにハイパーリンクが設定されていないと、上述したハイパーリンク付きのオブジェクトを順次フォーカスしていく方式では、このようなオブジェクトにフォーカスを移動させることができず、したがってイベントも発生させることができないという問題があった。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、順次フォーカス機能を備えるブラウザにおいて、ハイパーリンクの設定されていないオブジェクトのうち、イベントハンドラが設定されているオブジェクトについてもフォーカスを移動させることができるようにする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ウェブページをレンダリングしてディスプレイに出力するウェブページ表示装置である。この装置は、前記ウェブページを構成する文書ファイルからハイパーリンクを含むオブジェクトを抽出するハイパーリンク抽出部と、前記文書ファイルから所定のイベントハンドラを含むオブジェクトを抽出するイベントハンドラ抽出部と、前記ハイパーリンク抽出部および前記イベントハンドラ抽出部によって抽出されたオブジェクトの前記ウェブページ上での配置に関する情報を少なくとも含むオブジェクト情報を格納するオブジェクト格納部と、ユーザによる方向操作入力に応じて、前記ウェブページ上でフォーカス表示すべきオブジェクトを選択するフォーカス制御部と、前記フォーカス制御部によって選択されたオブジェクトがイベントハンドラを含むオブジェクトである場合、該イベントハンドラに関連づけられたスクリプトを実行するスクリプト実行部と、を備える。
【0009】
この態様によると、ハイパーリンクが設定されたオブジェクトを抽出するだけでなく、イベントハンドラが設定されたオブジェクトをも抽出し、これら両方のオブジェクトをフォーカス移動の対象とすることができる。また、フォーカス時にそのオブジェクトに設定されたイベントハンドラに関連するスクリプトを実行するようにしたので、マウスポインタの操作時と同様の操作が可能になる。
なお、「文書ファイル」とは、マークアップ言語で記述されたHTMLファイルやXMLファイルなどを含む。
【0010】
本発明の別の態様は、ウェブページをレンダリングしてディスプレイに出力するウェブページ表示装置におけるフォーカス制御方法である。この方法は、前記ウェブページ表示装置が、前記ウェブページを構成する文書ファイルからハイパーリンクを含むオブジェクトを抽出し、前記ウェブページ表示装置が前記文書ファイルから所定のイベントハンドラを含むオブジェクトを抽出し、前記ウェブページ表示装置が、前記抽出ステップによって抽出されたオブジェクトの前記ウェブページ上での配置に関する情報を少なくとも含むオブジェクト情報をメモリに格納し、前記ウェブページ表示装置が、ユーザによる方向操作入力に応じて、前記ウェブページ上でフォーカス表示すべきオブジェクトを選択し、選択されたオブジェクトがイベントハンドラを含むオブジェクトである場合、前記ウェブページ表示装置が前記イベントハンドラに関連づけられたスクリプトを実行することを含む。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、順次フォーカス機能を備えるブラウザにおいて、ハイパーリンクの設定されていないオブジェクトのうち、イベントハンドラが設定されているオブジェクトについてもフォーカスを移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るウェブページ表示装置を利用してウェブページを表示する様子を示す図である。
【図2】ウェブページ表示装置により解釈されディスプレイにレンダリングされるウェブページのHTMLファイルの一例を示す図である。
【図3】(a)、(b)は、図2のHTMLファイルに基づき、従来のブラウザによってレンダリングされるウェブページの例を示す図である。
【図4】ウェブページ表示装置の構成を示す図である。
【図5】イベントハンドラ抽出部による抽出の対象となるイベントハンドラの一例を示す表である。
【図6】ハイパーリンク抽出部によるオブジェクトの抽出を説明するフローチャートである。
【図7】イベントハンドラ抽出部によるオブジェクトの抽出を説明するフローチャートである。
【図8】オブジェクト格納部に格納されているオブジェクト情報を示す表である。
【図9】(a)〜(f)は、ウェブページ表示装置によってフォーカス移動される様子を説明する図である。
【図10】イベントハンドラが実行された後にオブジェクト格納部内に格納されているオブジェクト情報を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るウェブページ表示装置100を利用してウェブページを表示する様子を示す図である。図1では、ゲーム機などのウェブページ表示装置100にデジタルテレビなどのディスプレイ120を接続する例を示している。ユーザは、テレビ用のリモートコントローラ22上の方向指示ボタンなどを使用して、ディスプレイ上に表示されるウェブページを操作する。
【0015】
ウェブページ表示装置100は、ユーザの操作に応答してインターネット等のネットワーク24を介してURL(Uniform Resource Locator)で特定されるサーバ20にアクセスし、ウェブページを構成する文書ファイルを取得する。
【0016】
なお、ウェブページ表示装置100は、デジタルテレビ、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯移動端末、カーナビゲーションシステム等のように、マウス、トラックボールまたはタッチパネル等のディスプレイ上の任意の位置にポインタを移動させる入力デバイスを持たない電子機器であってもよい。例えばウェブページ表示装置がデジタルテレビまたは携帯電話である場合、ディスプレイ120とウェブページ表示装置100とが単一の筐体内に一体化されていてもよい。また、ウェブページ表示装置が携帯電話またはカーナビゲーションシステムである場合、リモートコントローラ22の代わりに、方向指示ボタンがウェブページ表示装置と一体化されていてもよい。
【0017】
図2は、ウェブページ表示装置100で解釈されディスプレイにレンダリングされるHTMLファイル50の一例を示す図である。図3(a)、(b)は、図2のHTMLファイル50に基づき、従来のブラウザによってレンダリングされるウェブページの例を示す図である。
【0018】
ポインタを画面上の任意の位置に移動させるマウス等のデバイスがウェブページ表示装置に接続されていない場合のために、従来のブラウザは、カーソルキーやTabキーなどの操作に応じて、ハイパーリンクが設定されているオブジェクト間で順次フォーカスを移動させる機能(以下、「順次フォーカス機能」と呼ぶ)を有している。
【0019】
図3(a)では、「テキスト」オブジェクト302と「イメージ」オブジェクト306にそれぞれハイパーリンクが設定されている。したがって、「テキスト」オブジェクト302にフォーカスFが表示されている状態で、ユーザによりTabキーまたは下方向のキーが操作されると、図3(b)に示すように、ハイパーリンクの設定されていない「メニュー」オブジェクト304を飛ばして「イメージ」オブジェクト306にフォーカスが移動してしまうという問題がある。
【0020】
また、図2のHTMLファイル50の26行目から分かるように、「メニュー」オブジェクト304にはonMouseoevrイベントハンドラが設定されている。マウス等を使用できれば、「メニュー」オブジェクト304上にポインタを移動させた時点で、31〜34行目で表されるサブメニューが表示されるように構成されている。しかしながら、カーソルキー等を用いてフォーカスを移動させる場合は、「メニュー」オブジェクト304にフォーカスが移動しないので、このようなサブメニューを画面上に表示することができないという問題もある。
【0021】
そこで、本実施形態では、ハイパーリンクが設定されていないがイベントハンドラが設定されているオブジェクトについても、カーソルキーによるフォーカスの移動時にもフォーカス対象となるようにする技術を提供する。
【0022】
図4は、本発明の一実施形態に係るウェブページ表示装置100の構成を示す図である。この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0023】
本実施形態のウェブページ表示装置は、周知のブラウザプログラムの一部として実装されることが好ましい。したがって、図4に明示されていない機能であっても、一般のブラウザプログラムが備えている機能は当然に有しているものとする。
【0024】
通信制御部118は、URLの入力、検索サイトにおける検索結果の選択、ハイパーリンクの選択などのユーザの操作に応じて、インターネット等のネットワーク24を介して指定されたウェブサーバ20にアクセスし、対応する文書ファイルを取得する。文書ファイルは、SGML(Standard Generalized Markup Language)、HTML(HyperText Markup Language)、XML(eXtensible Markup Language)などのマークアップ言語で記述されている。文書ファイルにJavaスクリプトなどのスクリプト言語が含まれていてもよい。また、文書ファイルとともに関連するCSSが取得されてもよい。取得された文書ファイルは、ファイル解析部102に送られる。なお、以下では、主に文書ファイルがHTMLファイルであるとして説明する。
【0025】
ファイル解析部102は、取得された文書ファイルを解析し、ウェブページの描画に必要な情報をレンダリング部110に送る。ファイル解析部102は、ハイパーリンク抽出部104、イベントハンドラ抽出部106およびスクリプト実行部108を含む。
【0026】
ハイパーリンク抽出部104は、文書ファイルの中からハイパーリンクの設定されたオブジェクトを抽出する。具体的には、ハイパーリンク抽出部104は、アンカータグ<a hrefを検索することで、ハイパーリンクの設定されたオブジェクトを抽出する。
【0027】
イベントハンドラ抽出部106は、文書ファイルの中からイベントハンドラの設定されたオブジェクトを抽出する。具体的には、イベントハンドラ抽出部106は、予め指定されたイベントハンドラを検索することで、イベントハンドラの設定されたオブジェクトを抽出する。
【0028】
図5は、イベントハンドラ抽出部106による抽出の対象となるイベントハンドラの一例220を示す表である。図中、行222はイベントハンドラ名を表し、行224は対象となるイベントの発生タイミングの説明である。本実施形態では、オブジェクトに対するマウス操作イベントが対象になる。
【0029】
図4に戻り、ハイパーリンク抽出部104およびイベントハンドラ抽出部106は、それぞれ抽出したオブジェクトについての情報をオブジェクト格納部116に格納する。オブジェクト情報には、抽出されたオブジェクトのID、始点位置およびサイズが少なくとも含まれる。これらのオブジェクト情報は、文書ファイルに含まれていてもよいし、CSSに含まれていてもよい。
【0030】
スクリプト実行部108は、イベントハンドラが設定されたオブジェクトにフォーカスが移動したときに、当該オブジェクトにポインタがあるものとしてイベントを発生させる。さらに、図5に示したイベントハンドラに対応するイベントが発生した場合には、イベントハンドラに関連づけられたJavaScriptを実行する。
【0031】
より具体的に説明すると、オブジェクトにフォーカスが移動した時点で、スクリプト実行部はonmouseoverイベントを発生させる。そのオブジェクトから別のオブジェクトにフォーカスが移動した時点で、スクリプト実行部はonmouseoutイベントを発生させる。オブジェクトにフォーカスが移動しているときにマウスのボタンを押す操作がなされたときに、スクリプト実行部はonmousedownイベントを発止させ、引き続きマウスのボタンを放す操作がなされたときに、スクリプト実行部はonmouseupイベントを発生させる。オブジェクトにフォーカスが移動しているときにマウスクリックに対応するキー操作がなされたときに、スクリプト実行部はonclickイベントを発生させる。オブジェクトにフォーカスが移動しているときにマウスのダブルクリックに対応するキー操作がなされたときに、スクリプト実行部はondblclickイベントを発生させる。
【0032】
操作入力受信部112は、リモートコントローラ上またはウェブページ表示装置上で操作された方向指示ボタンの操作入力を受け取る。操作入力受信部112は、受信した方向ボタンの情報をフォーカス制御部114に送る。
【0033】
フォーカス制御部114は、方向ボタンの操作に対応して、ウェブページ内のオブジェクト間でフォーカスを移動させる。すなわち、フォーカス制御部114は、オブジェクト格納部116に格納されている抽出されたオブジェクト情報を取得し、現在フォーカスが置かれたオブジェクトから方向ボタンに対応する方向で最も距離が近いオブジェクトを、次にフォーカスを移動させるべきオブジェクトとして選択する。フォーカス制御部114は、選択したオブジェクトのオブジェクト情報をファイル解析部102およびレンダリング部110に送る。但し、後述するようにオブジェクト格納部116内でオブジェクトサイズが(0,0)であるオブジェクト、すなわちその時点で画像表示されていないオブジェクトについては、フォーカスの対象としない。
【0034】
このように、本実施形態では、イベントハンドラ抽出部106によって抽出されたオブジェクトについても、フォーカス制御部114によってフォーカスの配置対象とされる。したがって、従来のブラウザとは異なり、ハイパーリンクの設定されたオブジェクト以外にイベントハンドラが設定されたオブジェクトにもフォーカスが移動されるようになる。
【0035】
レンダリング部110は、ファイル解析部102による文書ファイルの解析結果にしたがってウェブページをレンダリングし、ディスプレイ120に出力する。また、レンダリング部110は、フォーカス制御部114から受け取るオブジェクト情報に基づき、オブジェクトがフォーカスされていることを表す強調表示を施した上でレンダリングする。本実施形態では、この強調表示はオブジェクトの周りを囲む黒い正方形として表されている。しかしながら、他の表示態様でフォーカスを表してもよい。例えば、オブジェクトを構成する文字を反転表示したり、文字の背景の色を変えるなどしてフォーカスを表してもよい。
【0036】
フォーカス制御部114によってイベントハンドラを含むオブジェクトがフォーカス対象として選択された場合、フォーカス制御部114はこのオブジェクトのオブジェクト情報をファイル解析部102内のスクリプト実行部108にも通知する。この通知に応じて、スクリプト実行部108は、フォーカス対象として選択されたオブジェクトのイベントを発生させる。また、関連するJavaScriptがあれば、それを実行する。この実行に対応するウェブページの変化がファイル解析部102によって再び解析され、レンダリング部110に解析結果が送られる。これに応じて、レンダリング部110はウェブページを更新する。
【0037】
また、JavaScriptの実行によって表示すべきオブジェクトが変更された場合には、ハイパーリンク抽出部104およびイベントハンドラ抽出部106が再度、文書ファイルを検索してそれぞれオブジェクトを抽出する。そして、抽出されたオブジェクトに関するオブジェクト情報をオブジェクト格納部116に格納する。このようにして、ウェブページ上でのイベント発生に応じて表示されるオブジェクトについても、随時抽出することができる。
【0038】
以下、ウェブページ表示装置100の作用について説明する。
【0039】
通信制御部118によって図2のHTMLファイル50が読み込まれると、ファイル解析部102のハイパーリンク抽出部104およびイベントハンドラ抽出部106が、HTMLファイル50からフォーカスすべきオブジェクトをそれぞれ抽出する。
【0040】
図6は、ハイパーリンク抽出部104によるオブジェクトの抽出を説明するフローチャートである。まず、ハイパーリンク抽出部104は、HTMLファイル内で先頭からアンカータグを検索する(S10)。アンカータグが検出されると、ハイパーリンク抽出部104は、そのタグ構文内にハイパーリンクが含まれるか否かを判定する(S12)。ハイパーリンクが含まれれば(S12のY)、そのアンカータグに関連するオブジェクトの情報を取り出し、オブジェクト格納部116に格納する(S14)。ハイパーリンクが含まれていなければ(S12のN)、S14をスキップする。HTMLファイルの最終行に達していなければ(S16のN)、HTMLファイルから次のアンカータグを検索する。
【0041】
図7は、イベントハンドラ抽出部106によるオブジェクトの抽出を表すフローチャートである。まず、イベントハンドラ抽出部106は、HTMLファイル内で先頭からタグを検索する(S20)。タグが検出されると、イベントハンドラ抽出部106は、そのタグ構文内に所定のイベントハンドラが含まれるか否かを判定する(S22)。所定のイベントハンドラが含まれれば(S22のY)、そのタグに関連するオブジェクトの情報を取り出し、オブジェクト格納部116に格納する(S24)。所定のイベントハンドラが含まれていなければ(S22のN)、S24をスキップする。HTMLファイルの最終行に達していなければ(S26のN)、HTMLファイルから次のタグ構文を検索する。
【0042】
図6および図7で説明したフローチャートによってオブジェクトが抽出される例を説明する。図2のHTMLファイル50において、ハイパーリンク抽出部104がアンカータグ<a hrefを検索する。この結果、23行目の「テキスト」オブジェクト、32行目のid="sub1"で示される「サブ1」オブジェクト、33行目のid="sub2"で示される「サブ2」オブジェクト、34行目のid="sub3"で示される「サブ3」オブジェクト、および40行目のイメージオブジェクトが抽出される。各オブジェクトにはそれぞれURLが関連づけられている。
【0043】
イベントハンドラ抽出部106は、HTMLファイル50において、図5で示した所定のイベントハンドラを検出する。この結果、26行目の"onmouseover"イベントハンドラと27行目の"onmouseout"イベントハンドラが検出される。これらのイベントハンドラに対応するのは、25行目のid="topmenu"で指定されるブロック要素のオブジェクトである。
【0044】
図8は、図2のHTMLファイル50が最初に読み込まれ、ハイパーリンク抽出部104およびイベントハンドラ抽出部106によって上述のようにしてオブジェクトが抽出された後に、オブジェクト格納部116に格納されているオブジェクト情報を示す。図中の行202はオブジェクトidを表し、行204はオブジェクトの始点位置を表し、行206はオブジェクトサイズを表している。
【0045】
ところで、HTMLファイル50の31行目には、<div id="submenu" class="submenu-off">と記述されているが、これはブロック要素オブジェクトであるid="submenu"に"submenu-off"というスタイルが指定されていることを意味する。"submenu-off"のスタイルは15行目以下に定義されており、プロパティdisplayにnoneが指定されている。これは、非表示の指定を意味している。したがって、id="submenu"に内包されるオブジェクト、すなわち32行目から34行目に記述されているオブジェクトid="sub1"、id="sub2"、id="sub3"は、初期状態ではディスプレイ画面に表示されない。これらのオブジェクトは、id="topmenu"で指定されるブロック要素オブジェクトでonMouseoevrイベントが発生したときに初めて表示される。
【0046】
これに対応して、図8において、これら三つのオブジェクトのサイズはいずれも(0,0)となっている。
【0047】
続いて、フォーカス移動時のウェブページの表示態様の変化について説明する。
【0048】
図9(a)〜(f)は、本発明の一実施形態に係るウェブページ表示装置100によって表示されるウェブページの画面遷移例を示す図である。
【0049】
図9(a)は、図3(a)と同様にHTMLファイル50を読み込んだ直後の表示である。オブジェクト格納部116に格納されているオブジェクトのうち先頭の「テキスト」オブジェクト302にフォーカスFが表示されている。ユーザからフォーカス移動の指示が与えられると、フォーカス制御部114は、オブジェクト格納部116の中から次のオブジェクトであるid="topnemu"を選択し、図10(b)に示すように、レンダリング部110が「メニュー」オブジェクト304にフォーカスFを表示する。
【0050】
フォーカス制御部114は、フォーカスしたオブジェクトの情報をファイル解析部102にも渡す。スクリプト実行部108は、フォーカスの移動したメニューオブジェクト304にポインタが移動したイベントが発生したものとして、関連づけられたイベントハンドラを実行する。
【0051】
図2のHTMLファイルの26行目を参照すると、id="topnemu"で指定されるオブジェクトには、onmouseoverイベントハンドラが記載されている。このイベントハンドラには、id="subnemu"で指定されたオブジェクトのClassnameを、"submenu-on"に変更する処理が記述されている。"submenu-on"のスタイルは、HTMLファイル50の12行目において、プロパティdisplayにblockを指定してブロックレベルで表示することが定義されている。この結果、id="subnemu"の<div>〜</div>で指定されたブロック要素オブジェクトが表示に変更され、内包されるオブジェクト、すなわち、32〜34行目で指定されている各オブジェクトが表示状態に変更される。この結果、図10(c)に示すように、メニューオブジェクト304の下方に「サブ1」「サブ2」「サブ3」のオブジェクトが表示される。このとき、フォーカスはid="topnemu"で指定される「メニュー」オブジェクトにあるので、メニュー全体がフォーカスされた状態で表示される。
【0052】
スクリプト実行部108によってイベントハンドラが実行された場合、ハイパーリンク抽出部104およびイベントハンドラ抽出部106は、再びオブジェクトを抽出してそのオブジェクト情報をオブジェクト格納部116に格納する。
【0053】
図10は、スクリプト実行部108によってイベントハンドラが実行された後にオブジェクト格納部116内に格納されているオブジェクト情報を示す表200’である。上述のように、オブジェクト"sub1"、"sub2"、"sub3"が表示状態に更新されたので、図8に示した表200と比べて、これらのオブジェクトの始点位置およびオブジェクトサイズが変更されていることが分かる。また、id="topnemu"で指定されるオブジェクトについても、内包するオブジェクトが表示状態となったので、オブジェクトサイズが(150,25)から(150,100)に拡大されていることが分かる。
【0054】
図9(c)の状態で、ユーザからさらに移動指示がなされると、フォーカス制御部114はオブジェクト格納部116から次のフォーカス対象のオブジェクトid="sub1"を選択する。この結果、図9(d)に示すように、「サブ1」にフォーカスFが表示された状態になる。同様にして、ユーザからさらに移動指示がなされると、id="sub2"、id="sub3"に対応する「サブ2」「サブ3」の順でフォーカスFが移動していく(図9(e)、(f))。このように、ユーザは、方向指示ボタンしかないような端末においても、onMouseoevrイベントによって表示されるドロップダウンメニュー310を選択することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係るウェブページ表示装置によれば、携帯端末等におけるウェブブラウザの操作性を改善することができる。具体的には、本実施形態に係るウェブページ表示装置は、ハイパーリンクが設定されたオブジェクトを抽出するだけでなく、イベントハンドラが設定されたオブジェクトをも抽出し、これら両方のオブジェクトをフォーカス移動の対象とすることができる。また、フォーカス時にそのオブジェクトに設定されたイベントハンドラに関連するスクリプトを実行するようにしたので、マウスポインタの操作時と同様に、onMouseoevrイベントなどに対応する表示をブラウザ上で行うことが可能になる。
【0056】
以上、いくつかの実施形態をもとに本発明を説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0057】
50 HTMLファイル、 100 ウェブページ表示装置、 102 ファイル解析部、 104 ハイパーリンク抽出部、 106 イベントハンドラ抽出部、 108 スクリプト実行部、 110 レンダリング部、 112 操作入力受信部、 114 フォーカス制御部、 116 オブジェクト格納部、 118 通信制御部、 120 ディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブページをレンダリングしてディスプレイに出力するウェブページ表示装置において、
前記ウェブページを構成する文書ファイルからハイパーリンクを含むオブジェクトを抽出するハイパーリンク抽出部と、
前記文書ファイルから所定のイベントハンドラを含むオブジェクトを抽出するイベントハンドラ抽出部と、
前記ハイパーリンク抽出部および前記イベントハンドラ抽出部によって抽出されたオブジェクトの前記ウェブページ上での配置に関する情報を少なくとも含むオブジェクト情報を格納するオブジェクト格納部と、
ユーザによる方向操作入力に応じて、前記ウェブページ上でフォーカス表示すべきオブジェクトを選択するフォーカス制御部と、
前記フォーカス制御部によって選択されたオブジェクトがイベントハンドラを含むオブジェクトである場合、該イベントハンドラに関連づけられたスクリプトを実行するスクリプト実行部と、
を備えることを特徴とするウェブページ表示装置。
【請求項2】
前記フォーカス制御部は、前記オブジェクト格納部に格納されているオブジェクト情報を参照し、現在フォーカス表示されているオブジェクトから最も距離の近いオブジェクトを次にフォーカス表示すべきオブジェクトとして選択することを特徴とする請求項1に記載のウェブページ表示装置。
【請求項3】
方向入力キーを有する操作部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のウェブページ表示装置。
【請求項4】
ウェブページをレンダリングしてディスプレイに出力するウェブページ表示装置におけるフォーカス制御方法であって、
前記ウェブページ表示装置が、前記ウェブページを構成する文書ファイルからハイパーリンクを含むオブジェクトを抽出し、
前記ウェブページ表示装置が前記文書ファイルから所定のイベントハンドラを含むオブジェクトを抽出し、
前記ウェブページ表示装置が、前記抽出ステップによって抽出されたオブジェクトの前記ウェブページ上での配置に関する情報を少なくとも含むオブジェクト情報をメモリに格納し、
前記ウェブページ表示装置が、ユーザによる方向操作入力に応じて、前記ウェブページ上でフォーカス表示すべきオブジェクトを選択し、
選択されたオブジェクトがイベントハンドラを含むオブジェクトである場合、前記ウェブページ表示装置が前記イベントハンドラに関連づけられたスクリプトを実行することを含むフォーカス制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−173946(P2012−173946A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34671(P2011−34671)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】