ウエットブラスト装置
【課題】本発明は、良好なウエットブラスト処理を可能とするウエットブラスト装置を提供することを目的とする。
【解決手段】砥粒1と液体2とが混合されたスラリ3が導入されて貯溜されるスラリ貯溜室4の近傍にエア噴射部5が設けられ、このエア噴射部5から加圧されたエアが噴射されることにより前記スラリ貯溜室4から前記スラリ3が導出されて該スラリ3と前記エアが混合室6に送られて混合され、このエアとスラリ3とが混合された噴射材10をスリット状の噴射部7から噴射するノズル体8を具備したものである。
【解決手段】砥粒1と液体2とが混合されたスラリ3が導入されて貯溜されるスラリ貯溜室4の近傍にエア噴射部5が設けられ、このエア噴射部5から加圧されたエアが噴射されることにより前記スラリ貯溜室4から前記スラリ3が導出されて該スラリ3と前記エアが混合室6に送られて混合され、このエアとスラリ3とが混合された噴射材10をスリット状の噴射部7から噴射するノズル体8を具備したものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエットブラスト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、砥粒と液体とが混合されたスラリを加圧エアにより加圧した所謂ウエットブラストを噴射口からワークに噴射し、該ウエットブラストによってワークにバリ処理等の加工や摩耗試験等の検査を施すウエットブラスト技術について種々の提案がなされており、このウエットブラストを良好に噴射する為のノズル体も種々提案されている。
【0003】
ところで、例えば、巾600mm等の大きなワークの表面をウエットブラスト技術によって均一に加工する為には、ノズル体の噴射口を巾600mm以上のスリット状としたウエットブラスト用のノズル体を用意し、該ノズル体に対してワークを移動させることで該ワークの表面全面を可及的に同時に加工する手段が採用される。
【0004】
しかし、このようなスリット状の噴射口からウエットブラストを均一な混合状態で噴射することは極めて厄介である。なぜなら、噴射口が巾広であればある程、スラリ中の砥粒濃度が場所によって異なり易いからである。
【0005】
従って、巾200mm以上のようなスリット状の噴射口を有するノズル体では、該噴射口から噴射されるスラリ(砥粒と液体)とエアとを均一な混合状態とすることができず、ワークに加工ムラが発生してしまうことになり、精密な加工や検査が行えないという問題点があった。
【0006】
そこで、本出願人は、前述した問題点を解消すべく、特許第3540713号に開示されるノズル体(以下、従来例)を提案しており、この従来例は、スラリ貯留室に貯留されるスラリが導出する導出通路を、小孔が並設される多孔構造に設け、また、このスラリをスラリ貯留室から導出するエアが通過するエア噴射通路を、小孔が並設される多孔構造に設けたものであり、この構成から、長尺スリット状の噴射口から噴射されるスラリ(砥粒と液体)とエアとを均一な混合状態(噴射材)とすることができ、非常に実用性に秀れて画期的である。
【0007】
【特許文献1】特許第3540713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前述した従来例であっても未だ加工ムラが生じる場合がある。
【0009】
これは、従来例における噴射材の噴射は、前述したように加圧エアによりスラリを引き込んで混合した後、この噴射材を噴射口から噴射する構造であるが、加圧エアの性質上、連続した供給であっても流れが安定せずに脈動が生じる場合があるからであり、よって、このエアの脈動によってスラリー量が一定せず、その結果、部分的にスラリとエアとの混合状態が異なることで加工ムラが生じてしまう。
【0010】
そこで、従来においても、この加工ムラが生じるのを防止すべく、エアの圧力やスラリの導入量を適宜設定するなど、各種設定により対応が試みられているが、これら設定は極めて困難であり、実際には要求される程度まで成果が上がっていないのが現状である。
【0011】
本発明者は、このエアとスラリとが混合された噴射材をスリット状の噴射部から噴射するノズル体を具備したウエットブラスト装置について更なる研究・開発を進め、その結果、従来に無い作用効果を発揮する画期的なウエットブラスト装置を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0013】
砥粒1と液体2とが混合されたスラリ3が導入されて貯溜されるスラリ貯溜室4の近傍にエア噴射部5が設けられ、このエア噴射部5から加圧されたエアが噴射されることにより前記スラリ貯溜室4から前記スラリ3が導出されて該スラリ3と前記エアが混合室6に送られて混合され、このエアとスラリ3とが混合された噴射材10をスリット状の噴射部7から噴射するノズル体8を具備したウエットブラスト装置であって、前記エア噴射部5からのエア噴射の制御は、噴射と停止とが交互に行なわれるように構成されていることを特徴とするウエットブラスト装置に係るものである。
【0014】
また、請求項1記載のウエットブラスト装置において、前記エア噴射部5は、前記混合室6に開口するエア噴射孔9を複数並設した多孔構造であり、前記エア噴射の制御は、複数並設される前記エア噴射孔9のうち一のエア噴射孔9が噴射状態のとき他のエア噴射孔9が停止状態となり、その後、逆の状態となる動作が繰り返し行なわれ、前記各エア噴射孔9から前記混合室6に対するエアの噴射と停止とが交互に行なわれるように制御するように構成されていることを特徴とするウエットブラスト装置に係るものである。
【0015】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のウエットブラスト装置において、前記エア噴射の制御は、前記エア噴射孔9が形成される孔形成部14に前記一のエア噴射孔9と連通する連通孔11a及び前記他のエア噴射孔9を閉塞する閉塞部11bを具備した可動弁体11を設けて構成されていることを特徴とするウエットブラスト装置に係るものである。
【0016】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載のウエットブラスト装置において、前記混合室6は、スリット状の前記噴射部7のスリット巾方向に長さを有するものであることを特徴とするウエットブラスト装置に係るものである。
【0017】
また、請求項2〜4いずれか1項に記載のウエットブラスト装置において、前記スラリ3は、前記エア噴射部5からエアが噴射された際、前記スラリ貯留室4から所定長さを有するスラリ導出部12を介して導出される構成であり、前記スラリ導出部12は前記混合室6に開口するスラリ導出孔13を複数並設した多孔構造であることを特徴とするウエットブラスト装置に係るものである。
【0018】
また、請求項5記載のウエットブラスト装置において、前記各エア噴射孔9と前記各スラリ導出孔13とは対応する位置関係に設けられていることを特徴とするウエットブラスト装置に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のように構成したから、スリット状の噴射部の全域からエアとスラリとが混合された噴射材を一定圧で噴射することができ、加工ムラの発生を可及的に防止することができるなど従来にない作用効果を発揮する画期的なウエットブラスト装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて簡単に説明する。
【0021】
エア噴射部5から加圧されたエアが噴射されると、スラリ貯溜室4からスラリ3が導出されて該スラリ3とエアが混合室6に送られて混合され、このエアとスラリ3とが混合された噴射材10はスリット状の噴射部7から噴射される。
【0022】
ところで、エア噴射部5からのエア噴射の制御は、噴射と停止とが交互に行なわれるように構成されており、この構成から加工ムラが生じるのを可及的に防止し得ることになる。
【0023】
即ち、前述したエア噴射の制御により、エア噴射孔9から混合室6に対するエア噴射が停止すると、混合室6にはスラリ3が充満した状態となり(図8参照)、続いて、エア噴射孔9から混合室6に対するエア噴射が行なわれると、エア噴射の停止の間に混合室6に充満したスラリ3が押出されるようにして噴射することになる(図9参照)。
【0024】
よって、従来のように脈動する不安定な状態で供給される加圧されたエアが噴射される場合と異なり、常に混合室6に溜まった一定量以上のスラリ3を所定圧に加圧されたエアで押出すようにして噴射するから、スリット状の噴射部7の全域からエアとスラリ3とが混合された噴射材10を一定の混合状態で噴射することができ、加工ムラの発生を可及的に防止することができることになる。これは出願人が行なった実験により確認済みである。
【0025】
また、請求項2記載の発明のように、エア噴射部5は、混合室6に開口するエア噴射孔9を複数並設した多孔構造であり、エア噴射の制御は、複数並設される前記エア噴射孔9のうち一のエア噴射孔9が噴射状態のとき他のエア噴射孔9が停止状態となり、その後、逆の状態となる動作が繰り返し行なわれるよう、各エア噴射孔9から混合室6に対するエア噴射と停止とが交互に行なわれることで、より一層加工ムラの発生を可及的に防止することができる。
【0026】
具体的には、エア噴射部5に設けた各エア噴射孔9がオリフィスの役割を果たし、更に、エア噴射部5から噴射されるエアは整流状態で噴射されることになり、乱流状態で噴射する場合と比較すると、該エアの圧力はそれほど高くはないにもかかわらず、該エアの流速が速く且つ一定になり、従って、この構造のノズル体8は、エアのエネルギー損失が極めて少なく(エアの圧力と噴射材10の流速とを比較した場合、噴射材の流速が著しく低くなったりしない)、よって、この点においてもエアとスラリ3とが混合されて噴射される噴射材10は良好にワークに噴射され、良好な加工が行われることになる。
【実施例】
【0027】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0028】
本実施例は、砥粒1と液体2とが混合されたスラリ3が導入されて一時貯溜されるスラリ貯溜室4の近傍にエア噴射部5が設けられ、このエア噴射部5から加圧されたエアが噴射されることにより前記スラリ貯溜室4から前記スラリ3が導出されて該スラリ3と前記エアが混合室6に送られ混合し、前記エアと前記スラリ3とが混合された噴射材10をスリット状の噴射部7から噴射するノズル体8を具備したウエットブラスト装置である。
【0029】
具体的には、本実施例は、図1に図示したようにワークを収納する処理本体31の下方位置に配設されるスラリ貯溜部32と、このスラリ貯溜部32からポンプ装置33を介して処理本体31内へスラリを搬送するスラリ搬送部34と、処理本体31内に配設され、スラリ搬送部34で搬送されたスラリ3(噴射材10)を噴射するスラリ噴射部としてのノズル体8とで構成されており、このノズル体8から噴射されたスラリ3が処理本体31の下方のスラリ貯溜部32へ貯留されて再利用される構成である。
【0030】
ノズル体8は、図1〜3に図示したように巾方向に長く前後方向に短い長尺部材14(孔形成部)と、この長尺部材14の下部に垂設状態で連設され巾方向に長く肉薄の長尺の板状部材15と、長尺部材14の上部に被嵌状態に連設されるブロック状の被嵌部材16(前体16A及び後体16B)とから構成されている。尚、長尺部材14,板状部材15及び被嵌部材16は、可及的に寸法変形しない素材、例えば、金属材により形成されている。
【0031】
図2に図示したように長尺部材14の下部と板状部材15の上部との間には混合室6が設けられ、この長尺部材14にはこの混合室6に開口するエア噴射孔9(丸孔部)を並設して成るエア噴射部5が設けられている。
【0032】
このエア噴射孔9は、図2に図示したように長尺部材14(孔形成部)に形成されており、この長尺部材14は被嵌部材16(後体16B)に設けた貫通孔16aと連結されている。
【0033】
エア噴射孔9は、長尺部材14の長さ方向に複数並設されており、一端が前述した貫通孔16aと連結し、他端が長尺部材14の一側面に開口するように設けられている。
【0034】
被嵌部材16の貫通孔16aは、前述した長尺部材14の一側面に開口する各エア噴射孔9に一端が連設するように設けられており、この貫通孔16aには後述するエア制御機構に係る可動弁体11が配設されている。
【0035】
また、貫通孔16aの他端は被嵌部材16の上面に開口するエア導入空間16bに連設されている。
【0036】
このエア導入空間16bには、エア供給源19から延設されるエア供給路19aが連設されている。
【0037】
また、エア噴射部5は、エア噴射孔9から混合室6に対するエア供給とエア供給停止とが交互に行なわれるように制御するエア制御機構を具備する。
【0038】
具体的には、図2〜4に図示したようにエア制御機構は、エア噴射孔9が形成された孔形成部としての長尺部材14に前記一のエア噴射孔9と連通する連通孔11a及び前記他のエア噴射孔9を閉塞する閉塞部11bを具備した可動弁体11を設けて構成されている。
【0039】
可動弁体11は、図4に図示したように適宜な金属製の部材で形成した長尺板状体であり、長尺部材14の上面にして被嵌部材16の貫通孔16a内に配設されている。
【0040】
また、可動弁体11は、所定間隔に複数の連通孔11aが形成されており、この連通孔11a同士の間隔は、長尺部材14の上面に配設した際、長尺部材14に並設したエア噴射孔9に対して一つおきに合致する位置となるように設定されている。
【0041】
つまり、可動弁体11における連通孔11aの側方部位は、一部のエア噴射孔9を閉塞する閉塞する閉塞部11bとして機能する。
【0042】
従って、エア制御機構は、複数並設される前記エア噴射孔9のうち、連通孔11aにより開口される一のエア噴射孔9がエア噴射の状態のとき、閉塞部11bにより閉塞される他のエア噴射孔9がエア噴射の停止状態となり、その後、後述する駆動源20により可動弁体11が往復移動した際、前述した一のエア噴射孔9と他のエア噴射孔9とにおけるエア噴射の状態と停止状態とが逆の状態となり、可動弁体11が往復移動することで前述した動作が繰り返し行なわれ、各エア噴射孔9から混合室6に対するエア噴射と停止とが交互に行なわれる(瞬間的に切り替わる)ように制御されている。
【0043】
また、可動弁体11を配設する長尺部材14の上面にはパッキン22が配設されており、このパッキン22には全てのエア噴射孔9に合致する位置に孔22aが形成されている。
【0044】
従って、可動弁体11はパッキン22を介して長尺部材14の上面に配設される。
【0045】
また、可動弁体11の端部には長窓状の孔11cが形成されており、この孔11cは後述する駆動源20との連結部として機能する。
【0046】
駆動源20は、図3,4に図示したように被嵌部材16の側部に設けた設置部21にモーターを設置して構成されており、この駆動源20の下部には偏心軸体20aが垂設されている。
【0047】
この偏心軸体20aは、可動弁体11の端部に設けた孔11cに貫挿し得るように構成されており、駆動源20を作動して偏心軸体20aが偏心回動した際、可動弁体11は長尺部材14上を所定方向(図4中X方向)に往復移動することになる。
【0048】
この可動弁体11の移動量は、長尺部材14に設けたエア噴射孔9同士の間隔、即ち、偏心軸体20aの偏心回動に際して、図5,6,7に図示したように可動弁体11に設けた連通孔11aが一のエア噴射孔9に対して合致する状態から隣接する他のエア噴射孔9に対して合致する状態となるまで移動するように設定されている。
【0049】
また、可動弁体11としては、図10,11に図示したように回動軸状に形成された可動弁体11に連通孔11aを形成したタイプのものでも良い。
【0050】
尚、エア制御機構としては、前述した可動弁体11(弁構造)を用いた制御に限らず、エア噴射孔9夫々に独立したエア供給源を設けて、任意の数のエア噴射孔9からエア供給をしたりエア供給停止をしたりする電子制御式のものでも良い。
【0051】
また、長尺部材14には混合室6に開口するスラリ導出孔13を並設して成るスラリ導出部12が設けられている。
【0052】
具体的には、このスラリ導出部12は、図2に図示したように長尺部材14に貫通状態に設けたスラリ導出孔13で構成されている。
【0053】
このスラリ導出孔13は、該長尺部材14の長さ方向に複数(エア噴射孔9と同数)並設されており、一端が長尺部材14に設けた混合室6に開口し他端が長尺部材14の他側面に開口する状態で並設されている。
【0054】
従って、スラリ導出部12は、後述するスリット状の噴射部7のスリット巾方向に長さを有しており、このスラリ導出部12の長さ方向にスラリ導出孔13が並設された構造となる。
【0055】
また、この各スラリ導出孔13は前記各エア噴射孔9と一対一に対応する位置関係に設定されている。即ち、平面視においてエア噴射孔9とスラリ導出孔13は同一垂直平面上に設けられている。
【0056】
また、このスラリ導出孔13における長尺部材14の他側面に開口する開口部は、スラリ貯留室4に連設される。
【0057】
このスラリ貯留室4は、図2に図示したように被嵌部材16(前体16A)の内部に設けられており、このスラリ貯留室4の上部には前述したスラリ搬送部34が接続されスラリ3を導入するスラリ導入部17が被嵌部材16の上面に開口状態に設けられ、また、スラリ貯留室4の側部には該スラリ貯留室4からスラリを導出するスリット状のスラリ導出通路18が被嵌部材16の内壁面に開口状態に設けられている。
【0058】
このスラリ導出通路18は、図2に図示したように長尺部材14に被嵌部材16を被嵌した際、長尺部材14に設けた各スラリ導出孔13に連通状態となるように構成されている。
【0059】
本実施例では、前述したエア噴射部5における各エア噴射孔9の混合室6側開口部は、前述したスラリ導出部12における各スラリ導出孔13の混合室6側開口部の近傍位置にして上方に位置するように設定されている。
【0060】
この構成によりエア噴射孔9から混合室6へエアが供給されると、該エアの下方への通過移動により、エア噴射部5の混合室6側開口部とスラリ導出部12の混合室6側開口部の間が負圧となり、よって、該スラリ導出部12の混合室6側開口部からスラリ3が吸引されて混合室6内に導出され、該混合室6内にて該スラリ3と前記エアとが混合されることになる。
【0061】
板状部材15は、内部に前記混合室6と連通するスリット状の通過経路15aが設けられ、この通過経路15aの下部は開口され、この開口が前記スリット状の噴射部7に設定されている。
【0062】
また、本実施例は、上記各構成の内、スラリ3の通過する経路には図示省略のウレタン樹脂製の保護層が被覆されている。この保護層は、スラリ3(特に砥粒)により該スラリ3の通過する経路が研磨されてしまうことを防止するものであり、この保護層の存在により、ノズル体8の寿命が数倍に延びることが確認されている。
【0063】
また、このウレタン樹脂は、前記長尺部材14,板状部材15及び被嵌部材16の各部材同士が当接する部位にもシール部材として設けられている。
【0064】
また、エアのみが通過する経路には、可及的にウレタン樹脂を設けない構成が採用されている。これは、ウレタン樹脂は表面摩擦抵抗が大きい為、ウレタン樹脂が存在すると、このウレタン樹脂と加圧エアとの接触により該加圧エアの圧力を損じてしまうからである。
【0065】
本実施例は上述のように構成したから、スリット状の噴射部7の全域からエアとスラリ3とが混合された噴射材10を一定圧で噴射することができ、加工ムラの発生を可及的に防止することができる。
【0066】
また、本実施例は、エア噴射部5は、混合室6に開口するエア噴射孔9を複数並設した多孔構造であるから、エア噴射部5に設けた各エア噴射孔9がオリフィスの役割を果たし、更に、エア噴射部5から噴射されるエアは整流状態で噴射されることになり、乱流状態で噴射する場合と比較すると、該エアの圧力はそれほど高くはないにもかかわらず、該エアの流速が速く且つ一定になり、従って、この構造のノズル体8は、エアのエネルギー損失が極めて少なく(エアの圧力と噴射材の流速とを比較した場合、噴射材10の流速が著しく低くなったりしない)、よって、この点においてもエアとスラリ3とが混合されて噴射される噴射材10は良好にワークに噴射され、良好な加工が行われることになる。
【0067】
また、本実施例は、エア噴射部5はスリット状の噴射部7のスリット長さ方向に長さを有するものであり、エア噴射部5の長さ方向にエア噴射孔9が複数並設されているから、特許第3540713号に開示されるように、噴射部5からスラリ3(砥粒1及び液体2)とエアとを均一な混合状態で噴射することができることになる。
【0068】
また、本実施例は、エア噴射部5からエアが噴射された際、スラリ貯留室4から所定長さを有するスラリ導出部12を介してスラリが導出する構成であり、スラリ導出部12は混合室6に開口するスラリ導出孔13を複数並設した多孔構造であるから、特許第3540713号に開示されるように、噴射部5からスラリ(砥粒及び液体)とエアとを均一な混合状態で噴射することができることになる。
【0069】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施例の使用状態を示す概略説明図である。
【図2】本実施例に係る要部の説明断面図である。
【図3】本実施例に係る要部の動作説明断面図である。
【図4】本実施例に係る要部の説明斜視図である。
【図5】本実施例に係る要部の動作説明図である。
【図6】本実施例に係る要部の動作説明図である。
【図7】本実施例に係る要部の動作説明図である。
【図8】本実施例に係る要部の動作説明断面図である。
【図9】本実施例に係る要部の動作説明断面図である。
【図10】別実施例に係る要部の説明斜視図である。
【図11】別実施例に係る要部の動作説明断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 砥粒
2 液体
3 スラリ
4 スラリ貯溜室
5 エア噴射部
6 混合室
7 噴射部
8 ノズル体
9 エア噴射孔
10 噴射材
11 可動弁体
11a 連通孔
11b 閉塞部
12 スラリ導出部
13 スラリ導出孔
14 孔形成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエットブラスト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、砥粒と液体とが混合されたスラリを加圧エアにより加圧した所謂ウエットブラストを噴射口からワークに噴射し、該ウエットブラストによってワークにバリ処理等の加工や摩耗試験等の検査を施すウエットブラスト技術について種々の提案がなされており、このウエットブラストを良好に噴射する為のノズル体も種々提案されている。
【0003】
ところで、例えば、巾600mm等の大きなワークの表面をウエットブラスト技術によって均一に加工する為には、ノズル体の噴射口を巾600mm以上のスリット状としたウエットブラスト用のノズル体を用意し、該ノズル体に対してワークを移動させることで該ワークの表面全面を可及的に同時に加工する手段が採用される。
【0004】
しかし、このようなスリット状の噴射口からウエットブラストを均一な混合状態で噴射することは極めて厄介である。なぜなら、噴射口が巾広であればある程、スラリ中の砥粒濃度が場所によって異なり易いからである。
【0005】
従って、巾200mm以上のようなスリット状の噴射口を有するノズル体では、該噴射口から噴射されるスラリ(砥粒と液体)とエアとを均一な混合状態とすることができず、ワークに加工ムラが発生してしまうことになり、精密な加工や検査が行えないという問題点があった。
【0006】
そこで、本出願人は、前述した問題点を解消すべく、特許第3540713号に開示されるノズル体(以下、従来例)を提案しており、この従来例は、スラリ貯留室に貯留されるスラリが導出する導出通路を、小孔が並設される多孔構造に設け、また、このスラリをスラリ貯留室から導出するエアが通過するエア噴射通路を、小孔が並設される多孔構造に設けたものであり、この構成から、長尺スリット状の噴射口から噴射されるスラリ(砥粒と液体)とエアとを均一な混合状態(噴射材)とすることができ、非常に実用性に秀れて画期的である。
【0007】
【特許文献1】特許第3540713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前述した従来例であっても未だ加工ムラが生じる場合がある。
【0009】
これは、従来例における噴射材の噴射は、前述したように加圧エアによりスラリを引き込んで混合した後、この噴射材を噴射口から噴射する構造であるが、加圧エアの性質上、連続した供給であっても流れが安定せずに脈動が生じる場合があるからであり、よって、このエアの脈動によってスラリー量が一定せず、その結果、部分的にスラリとエアとの混合状態が異なることで加工ムラが生じてしまう。
【0010】
そこで、従来においても、この加工ムラが生じるのを防止すべく、エアの圧力やスラリの導入量を適宜設定するなど、各種設定により対応が試みられているが、これら設定は極めて困難であり、実際には要求される程度まで成果が上がっていないのが現状である。
【0011】
本発明者は、このエアとスラリとが混合された噴射材をスリット状の噴射部から噴射するノズル体を具備したウエットブラスト装置について更なる研究・開発を進め、その結果、従来に無い作用効果を発揮する画期的なウエットブラスト装置を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0013】
砥粒1と液体2とが混合されたスラリ3が導入されて貯溜されるスラリ貯溜室4の近傍にエア噴射部5が設けられ、このエア噴射部5から加圧されたエアが噴射されることにより前記スラリ貯溜室4から前記スラリ3が導出されて該スラリ3と前記エアが混合室6に送られて混合され、このエアとスラリ3とが混合された噴射材10をスリット状の噴射部7から噴射するノズル体8を具備したウエットブラスト装置であって、前記エア噴射部5からのエア噴射の制御は、噴射と停止とが交互に行なわれるように構成されていることを特徴とするウエットブラスト装置に係るものである。
【0014】
また、請求項1記載のウエットブラスト装置において、前記エア噴射部5は、前記混合室6に開口するエア噴射孔9を複数並設した多孔構造であり、前記エア噴射の制御は、複数並設される前記エア噴射孔9のうち一のエア噴射孔9が噴射状態のとき他のエア噴射孔9が停止状態となり、その後、逆の状態となる動作が繰り返し行なわれ、前記各エア噴射孔9から前記混合室6に対するエアの噴射と停止とが交互に行なわれるように制御するように構成されていることを特徴とするウエットブラスト装置に係るものである。
【0015】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のウエットブラスト装置において、前記エア噴射の制御は、前記エア噴射孔9が形成される孔形成部14に前記一のエア噴射孔9と連通する連通孔11a及び前記他のエア噴射孔9を閉塞する閉塞部11bを具備した可動弁体11を設けて構成されていることを特徴とするウエットブラスト装置に係るものである。
【0016】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載のウエットブラスト装置において、前記混合室6は、スリット状の前記噴射部7のスリット巾方向に長さを有するものであることを特徴とするウエットブラスト装置に係るものである。
【0017】
また、請求項2〜4いずれか1項に記載のウエットブラスト装置において、前記スラリ3は、前記エア噴射部5からエアが噴射された際、前記スラリ貯留室4から所定長さを有するスラリ導出部12を介して導出される構成であり、前記スラリ導出部12は前記混合室6に開口するスラリ導出孔13を複数並設した多孔構造であることを特徴とするウエットブラスト装置に係るものである。
【0018】
また、請求項5記載のウエットブラスト装置において、前記各エア噴射孔9と前記各スラリ導出孔13とは対応する位置関係に設けられていることを特徴とするウエットブラスト装置に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のように構成したから、スリット状の噴射部の全域からエアとスラリとが混合された噴射材を一定圧で噴射することができ、加工ムラの発生を可及的に防止することができるなど従来にない作用効果を発揮する画期的なウエットブラスト装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて簡単に説明する。
【0021】
エア噴射部5から加圧されたエアが噴射されると、スラリ貯溜室4からスラリ3が導出されて該スラリ3とエアが混合室6に送られて混合され、このエアとスラリ3とが混合された噴射材10はスリット状の噴射部7から噴射される。
【0022】
ところで、エア噴射部5からのエア噴射の制御は、噴射と停止とが交互に行なわれるように構成されており、この構成から加工ムラが生じるのを可及的に防止し得ることになる。
【0023】
即ち、前述したエア噴射の制御により、エア噴射孔9から混合室6に対するエア噴射が停止すると、混合室6にはスラリ3が充満した状態となり(図8参照)、続いて、エア噴射孔9から混合室6に対するエア噴射が行なわれると、エア噴射の停止の間に混合室6に充満したスラリ3が押出されるようにして噴射することになる(図9参照)。
【0024】
よって、従来のように脈動する不安定な状態で供給される加圧されたエアが噴射される場合と異なり、常に混合室6に溜まった一定量以上のスラリ3を所定圧に加圧されたエアで押出すようにして噴射するから、スリット状の噴射部7の全域からエアとスラリ3とが混合された噴射材10を一定の混合状態で噴射することができ、加工ムラの発生を可及的に防止することができることになる。これは出願人が行なった実験により確認済みである。
【0025】
また、請求項2記載の発明のように、エア噴射部5は、混合室6に開口するエア噴射孔9を複数並設した多孔構造であり、エア噴射の制御は、複数並設される前記エア噴射孔9のうち一のエア噴射孔9が噴射状態のとき他のエア噴射孔9が停止状態となり、その後、逆の状態となる動作が繰り返し行なわれるよう、各エア噴射孔9から混合室6に対するエア噴射と停止とが交互に行なわれることで、より一層加工ムラの発生を可及的に防止することができる。
【0026】
具体的には、エア噴射部5に設けた各エア噴射孔9がオリフィスの役割を果たし、更に、エア噴射部5から噴射されるエアは整流状態で噴射されることになり、乱流状態で噴射する場合と比較すると、該エアの圧力はそれほど高くはないにもかかわらず、該エアの流速が速く且つ一定になり、従って、この構造のノズル体8は、エアのエネルギー損失が極めて少なく(エアの圧力と噴射材10の流速とを比較した場合、噴射材の流速が著しく低くなったりしない)、よって、この点においてもエアとスラリ3とが混合されて噴射される噴射材10は良好にワークに噴射され、良好な加工が行われることになる。
【実施例】
【0027】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0028】
本実施例は、砥粒1と液体2とが混合されたスラリ3が導入されて一時貯溜されるスラリ貯溜室4の近傍にエア噴射部5が設けられ、このエア噴射部5から加圧されたエアが噴射されることにより前記スラリ貯溜室4から前記スラリ3が導出されて該スラリ3と前記エアが混合室6に送られ混合し、前記エアと前記スラリ3とが混合された噴射材10をスリット状の噴射部7から噴射するノズル体8を具備したウエットブラスト装置である。
【0029】
具体的には、本実施例は、図1に図示したようにワークを収納する処理本体31の下方位置に配設されるスラリ貯溜部32と、このスラリ貯溜部32からポンプ装置33を介して処理本体31内へスラリを搬送するスラリ搬送部34と、処理本体31内に配設され、スラリ搬送部34で搬送されたスラリ3(噴射材10)を噴射するスラリ噴射部としてのノズル体8とで構成されており、このノズル体8から噴射されたスラリ3が処理本体31の下方のスラリ貯溜部32へ貯留されて再利用される構成である。
【0030】
ノズル体8は、図1〜3に図示したように巾方向に長く前後方向に短い長尺部材14(孔形成部)と、この長尺部材14の下部に垂設状態で連設され巾方向に長く肉薄の長尺の板状部材15と、長尺部材14の上部に被嵌状態に連設されるブロック状の被嵌部材16(前体16A及び後体16B)とから構成されている。尚、長尺部材14,板状部材15及び被嵌部材16は、可及的に寸法変形しない素材、例えば、金属材により形成されている。
【0031】
図2に図示したように長尺部材14の下部と板状部材15の上部との間には混合室6が設けられ、この長尺部材14にはこの混合室6に開口するエア噴射孔9(丸孔部)を並設して成るエア噴射部5が設けられている。
【0032】
このエア噴射孔9は、図2に図示したように長尺部材14(孔形成部)に形成されており、この長尺部材14は被嵌部材16(後体16B)に設けた貫通孔16aと連結されている。
【0033】
エア噴射孔9は、長尺部材14の長さ方向に複数並設されており、一端が前述した貫通孔16aと連結し、他端が長尺部材14の一側面に開口するように設けられている。
【0034】
被嵌部材16の貫通孔16aは、前述した長尺部材14の一側面に開口する各エア噴射孔9に一端が連設するように設けられており、この貫通孔16aには後述するエア制御機構に係る可動弁体11が配設されている。
【0035】
また、貫通孔16aの他端は被嵌部材16の上面に開口するエア導入空間16bに連設されている。
【0036】
このエア導入空間16bには、エア供給源19から延設されるエア供給路19aが連設されている。
【0037】
また、エア噴射部5は、エア噴射孔9から混合室6に対するエア供給とエア供給停止とが交互に行なわれるように制御するエア制御機構を具備する。
【0038】
具体的には、図2〜4に図示したようにエア制御機構は、エア噴射孔9が形成された孔形成部としての長尺部材14に前記一のエア噴射孔9と連通する連通孔11a及び前記他のエア噴射孔9を閉塞する閉塞部11bを具備した可動弁体11を設けて構成されている。
【0039】
可動弁体11は、図4に図示したように適宜な金属製の部材で形成した長尺板状体であり、長尺部材14の上面にして被嵌部材16の貫通孔16a内に配設されている。
【0040】
また、可動弁体11は、所定間隔に複数の連通孔11aが形成されており、この連通孔11a同士の間隔は、長尺部材14の上面に配設した際、長尺部材14に並設したエア噴射孔9に対して一つおきに合致する位置となるように設定されている。
【0041】
つまり、可動弁体11における連通孔11aの側方部位は、一部のエア噴射孔9を閉塞する閉塞する閉塞部11bとして機能する。
【0042】
従って、エア制御機構は、複数並設される前記エア噴射孔9のうち、連通孔11aにより開口される一のエア噴射孔9がエア噴射の状態のとき、閉塞部11bにより閉塞される他のエア噴射孔9がエア噴射の停止状態となり、その後、後述する駆動源20により可動弁体11が往復移動した際、前述した一のエア噴射孔9と他のエア噴射孔9とにおけるエア噴射の状態と停止状態とが逆の状態となり、可動弁体11が往復移動することで前述した動作が繰り返し行なわれ、各エア噴射孔9から混合室6に対するエア噴射と停止とが交互に行なわれる(瞬間的に切り替わる)ように制御されている。
【0043】
また、可動弁体11を配設する長尺部材14の上面にはパッキン22が配設されており、このパッキン22には全てのエア噴射孔9に合致する位置に孔22aが形成されている。
【0044】
従って、可動弁体11はパッキン22を介して長尺部材14の上面に配設される。
【0045】
また、可動弁体11の端部には長窓状の孔11cが形成されており、この孔11cは後述する駆動源20との連結部として機能する。
【0046】
駆動源20は、図3,4に図示したように被嵌部材16の側部に設けた設置部21にモーターを設置して構成されており、この駆動源20の下部には偏心軸体20aが垂設されている。
【0047】
この偏心軸体20aは、可動弁体11の端部に設けた孔11cに貫挿し得るように構成されており、駆動源20を作動して偏心軸体20aが偏心回動した際、可動弁体11は長尺部材14上を所定方向(図4中X方向)に往復移動することになる。
【0048】
この可動弁体11の移動量は、長尺部材14に設けたエア噴射孔9同士の間隔、即ち、偏心軸体20aの偏心回動に際して、図5,6,7に図示したように可動弁体11に設けた連通孔11aが一のエア噴射孔9に対して合致する状態から隣接する他のエア噴射孔9に対して合致する状態となるまで移動するように設定されている。
【0049】
また、可動弁体11としては、図10,11に図示したように回動軸状に形成された可動弁体11に連通孔11aを形成したタイプのものでも良い。
【0050】
尚、エア制御機構としては、前述した可動弁体11(弁構造)を用いた制御に限らず、エア噴射孔9夫々に独立したエア供給源を設けて、任意の数のエア噴射孔9からエア供給をしたりエア供給停止をしたりする電子制御式のものでも良い。
【0051】
また、長尺部材14には混合室6に開口するスラリ導出孔13を並設して成るスラリ導出部12が設けられている。
【0052】
具体的には、このスラリ導出部12は、図2に図示したように長尺部材14に貫通状態に設けたスラリ導出孔13で構成されている。
【0053】
このスラリ導出孔13は、該長尺部材14の長さ方向に複数(エア噴射孔9と同数)並設されており、一端が長尺部材14に設けた混合室6に開口し他端が長尺部材14の他側面に開口する状態で並設されている。
【0054】
従って、スラリ導出部12は、後述するスリット状の噴射部7のスリット巾方向に長さを有しており、このスラリ導出部12の長さ方向にスラリ導出孔13が並設された構造となる。
【0055】
また、この各スラリ導出孔13は前記各エア噴射孔9と一対一に対応する位置関係に設定されている。即ち、平面視においてエア噴射孔9とスラリ導出孔13は同一垂直平面上に設けられている。
【0056】
また、このスラリ導出孔13における長尺部材14の他側面に開口する開口部は、スラリ貯留室4に連設される。
【0057】
このスラリ貯留室4は、図2に図示したように被嵌部材16(前体16A)の内部に設けられており、このスラリ貯留室4の上部には前述したスラリ搬送部34が接続されスラリ3を導入するスラリ導入部17が被嵌部材16の上面に開口状態に設けられ、また、スラリ貯留室4の側部には該スラリ貯留室4からスラリを導出するスリット状のスラリ導出通路18が被嵌部材16の内壁面に開口状態に設けられている。
【0058】
このスラリ導出通路18は、図2に図示したように長尺部材14に被嵌部材16を被嵌した際、長尺部材14に設けた各スラリ導出孔13に連通状態となるように構成されている。
【0059】
本実施例では、前述したエア噴射部5における各エア噴射孔9の混合室6側開口部は、前述したスラリ導出部12における各スラリ導出孔13の混合室6側開口部の近傍位置にして上方に位置するように設定されている。
【0060】
この構成によりエア噴射孔9から混合室6へエアが供給されると、該エアの下方への通過移動により、エア噴射部5の混合室6側開口部とスラリ導出部12の混合室6側開口部の間が負圧となり、よって、該スラリ導出部12の混合室6側開口部からスラリ3が吸引されて混合室6内に導出され、該混合室6内にて該スラリ3と前記エアとが混合されることになる。
【0061】
板状部材15は、内部に前記混合室6と連通するスリット状の通過経路15aが設けられ、この通過経路15aの下部は開口され、この開口が前記スリット状の噴射部7に設定されている。
【0062】
また、本実施例は、上記各構成の内、スラリ3の通過する経路には図示省略のウレタン樹脂製の保護層が被覆されている。この保護層は、スラリ3(特に砥粒)により該スラリ3の通過する経路が研磨されてしまうことを防止するものであり、この保護層の存在により、ノズル体8の寿命が数倍に延びることが確認されている。
【0063】
また、このウレタン樹脂は、前記長尺部材14,板状部材15及び被嵌部材16の各部材同士が当接する部位にもシール部材として設けられている。
【0064】
また、エアのみが通過する経路には、可及的にウレタン樹脂を設けない構成が採用されている。これは、ウレタン樹脂は表面摩擦抵抗が大きい為、ウレタン樹脂が存在すると、このウレタン樹脂と加圧エアとの接触により該加圧エアの圧力を損じてしまうからである。
【0065】
本実施例は上述のように構成したから、スリット状の噴射部7の全域からエアとスラリ3とが混合された噴射材10を一定圧で噴射することができ、加工ムラの発生を可及的に防止することができる。
【0066】
また、本実施例は、エア噴射部5は、混合室6に開口するエア噴射孔9を複数並設した多孔構造であるから、エア噴射部5に設けた各エア噴射孔9がオリフィスの役割を果たし、更に、エア噴射部5から噴射されるエアは整流状態で噴射されることになり、乱流状態で噴射する場合と比較すると、該エアの圧力はそれほど高くはないにもかかわらず、該エアの流速が速く且つ一定になり、従って、この構造のノズル体8は、エアのエネルギー損失が極めて少なく(エアの圧力と噴射材の流速とを比較した場合、噴射材10の流速が著しく低くなったりしない)、よって、この点においてもエアとスラリ3とが混合されて噴射される噴射材10は良好にワークに噴射され、良好な加工が行われることになる。
【0067】
また、本実施例は、エア噴射部5はスリット状の噴射部7のスリット長さ方向に長さを有するものであり、エア噴射部5の長さ方向にエア噴射孔9が複数並設されているから、特許第3540713号に開示されるように、噴射部5からスラリ3(砥粒1及び液体2)とエアとを均一な混合状態で噴射することができることになる。
【0068】
また、本実施例は、エア噴射部5からエアが噴射された際、スラリ貯留室4から所定長さを有するスラリ導出部12を介してスラリが導出する構成であり、スラリ導出部12は混合室6に開口するスラリ導出孔13を複数並設した多孔構造であるから、特許第3540713号に開示されるように、噴射部5からスラリ(砥粒及び液体)とエアとを均一な混合状態で噴射することができることになる。
【0069】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施例の使用状態を示す概略説明図である。
【図2】本実施例に係る要部の説明断面図である。
【図3】本実施例に係る要部の動作説明断面図である。
【図4】本実施例に係る要部の説明斜視図である。
【図5】本実施例に係る要部の動作説明図である。
【図6】本実施例に係る要部の動作説明図である。
【図7】本実施例に係る要部の動作説明図である。
【図8】本実施例に係る要部の動作説明断面図である。
【図9】本実施例に係る要部の動作説明断面図である。
【図10】別実施例に係る要部の説明斜視図である。
【図11】別実施例に係る要部の動作説明断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 砥粒
2 液体
3 スラリ
4 スラリ貯溜室
5 エア噴射部
6 混合室
7 噴射部
8 ノズル体
9 エア噴射孔
10 噴射材
11 可動弁体
11a 連通孔
11b 閉塞部
12 スラリ導出部
13 スラリ導出孔
14 孔形成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と液体とが混合されたスラリが導入されて貯溜されるスラリ貯溜室の近傍にエア噴射部が設けられ、このエア噴射部から加圧されたエアが噴射されることにより前記スラリ貯溜室から前記スラリが導出されて該スラリと前記エアが混合室に送られて混合され、このエアとスラリとが混合された噴射材をスリット状の噴射部から噴射するノズル体を具備したウエットブラスト装置であって、前記エア噴射部からのエア噴射の制御は、噴射と停止とが交互に行なわれるように構成されていることを特徴とするウエットブラスト装置。
【請求項2】
請求項1記載のウエットブラスト装置において、前記エア噴射部は、前記混合室に開口するエア噴射孔を複数並設した多孔構造であり、前記エア噴射の制御は、複数並設される前記エア噴射孔のうち一のエア噴射孔が噴射状態のとき他のエア噴射孔が停止状態となり、その後、逆の状態となる動作が繰り返し行なわれ、前記各エア噴射孔から前記混合室に対するエアの噴射と停止とが交互に行なわれるように制御するように構成されていることを特徴とするウエットブラスト装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載のウエットブラスト装置において、前記エア噴射の制御は、前記エア噴射孔が形成される孔形成部に前記一のエア噴射孔と連通する連通孔及び前記他のエア噴射孔を閉塞する閉塞部を具備した可動弁体を設けて構成されていることを特徴とするウエットブラスト装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載のウエットブラスト装置において、前記混合室は、スリット状の前記噴射部のスリット巾方向に長さを有するものであることを特徴とするウエットブラスト装置。
【請求項5】
請求項2〜4いずれか1項に記載のウエットブラスト装置において、前記スラリは、前記エア噴射部からエアが噴射された際、前記スラリ貯留室から所定長さを有するスラリ導出部を介して導出される構成であり、前記スラリ導出部は前記混合室に開口するスラリ導出孔を複数並設した多孔構造であることを特徴とするウエットブラスト装置。
【請求項6】
請求項5記載のウエットブラスト装置において、前記各エア噴射孔と前記各スラリ導出孔とは対応する位置関係に設けられていることを特徴とするウエットブラスト装置。
【請求項1】
砥粒と液体とが混合されたスラリが導入されて貯溜されるスラリ貯溜室の近傍にエア噴射部が設けられ、このエア噴射部から加圧されたエアが噴射されることにより前記スラリ貯溜室から前記スラリが導出されて該スラリと前記エアが混合室に送られて混合され、このエアとスラリとが混合された噴射材をスリット状の噴射部から噴射するノズル体を具備したウエットブラスト装置であって、前記エア噴射部からのエア噴射の制御は、噴射と停止とが交互に行なわれるように構成されていることを特徴とするウエットブラスト装置。
【請求項2】
請求項1記載のウエットブラスト装置において、前記エア噴射部は、前記混合室に開口するエア噴射孔を複数並設した多孔構造であり、前記エア噴射の制御は、複数並設される前記エア噴射孔のうち一のエア噴射孔が噴射状態のとき他のエア噴射孔が停止状態となり、その後、逆の状態となる動作が繰り返し行なわれ、前記各エア噴射孔から前記混合室に対するエアの噴射と停止とが交互に行なわれるように制御するように構成されていることを特徴とするウエットブラスト装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載のウエットブラスト装置において、前記エア噴射の制御は、前記エア噴射孔が形成される孔形成部に前記一のエア噴射孔と連通する連通孔及び前記他のエア噴射孔を閉塞する閉塞部を具備した可動弁体を設けて構成されていることを特徴とするウエットブラスト装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載のウエットブラスト装置において、前記混合室は、スリット状の前記噴射部のスリット巾方向に長さを有するものであることを特徴とするウエットブラスト装置。
【請求項5】
請求項2〜4いずれか1項に記載のウエットブラスト装置において、前記スラリは、前記エア噴射部からエアが噴射された際、前記スラリ貯留室から所定長さを有するスラリ導出部を介して導出される構成であり、前記スラリ導出部は前記混合室に開口するスラリ導出孔を複数並設した多孔構造であることを特徴とするウエットブラスト装置。
【請求項6】
請求項5記載のウエットブラスト装置において、前記各エア噴射孔と前記各スラリ導出孔とは対応する位置関係に設けられていることを特徴とするウエットブラスト装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−155305(P2010−155305A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335026(P2008−335026)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(591205732)マコー株式会社 (12)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(591205732)マコー株式会社 (12)
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