ウォータージェットによる表面処理方法および表面処理装置
【課題】 軟質部と硬質部とが混在している材料の表面加工処理を、高速、簡便かつ効率的に行える、ウォータージェットによる表面処理装置を提供すること。
【解決手段】 表面処理装置1は、被処理材料9に噴射するための扇状ウォータージェットWJを発生させるウォータージェット発生部2と、被処理材料9を支持もしくは載置するための材料支持部3と、ウォータージェットWJに対して被処理材料9を相対的に移動させるための処理方向駆動部4とを備えてなることを、主たる構成とする。噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットWJと被処理材料9間の相対的移動速度等を調節可能なものとすることができる。
【解決手段】 表面処理装置1は、被処理材料9に噴射するための扇状ウォータージェットWJを発生させるウォータージェット発生部2と、被処理材料9を支持もしくは載置するための材料支持部3と、ウォータージェットWJに対して被処理材料9を相対的に移動させるための処理方向駆動部4とを備えてなることを、主たる構成とする。噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットWJと被処理材料9間の相対的移動速度等を調節可能なものとすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウォータージェットによる表面処理方法および表面処理装置に係り、特に、柔らかい夏目と硬い冬目が混在する木材のような軟質部と硬質部とが混在している材料の表面加工処理を、高速、簡便かつ効率的に、また被処理材料の状態に応じて表面の凹凸状態を調整することのできる、ウォータージェットによる表面処理方法および表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家具や建築材として木材を使用する場合、木材が紫外線を吸収し、また木材表面では細胞の微小な凹凸で光が散乱するため反射光が弱められ、"目に優しい"という長所がある。しかし、木材表面に塗装がしてある場合、塗装表面で光が反射するためその長所が失われる。このため、塗装なしで美しい表面を得るための手段の一つとして木目の浮き出し技術が、従来から用いられている。
【0003】
。
木目を浮き出させる技術には様々なものがあるが、いずれも柔らかい夏目を加工し堅い冬目を残して行われる。伝統的な方法としては、夏目を押し付けて浮き立たせるうづくりや、夏目を研磨剤で削り取って浮き立たせる時雨彫り等がある。しかし、これら伝統的な方法で均一な仕上げ状態にするには、熟練の腕前が必要とされる。
【0004】
迅速かつ正確に木目を浮き出させる技術として、ウレタンゴム等の弾性体上に被加工面を密着するように載置し、被加工面の裏面方向から押圧板を介して加圧することにより、冬目と夏目の密度差に起因する硬度に応じた変形を得るという提案もなされている(後掲特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特許公開平10−015915「木材製品の表面加工方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、特許文献1の方法では、被処理表面状態を材料に応じて調整し、効率的な処理を行うことは難しい。また、大きな部材を加工するための自動化も図られてはいるが、部材による構造や強度の違いに対して充分な対応が困難であり、未だ広範囲を素早く均一に処理できる方法は提案されていない。
【0007】
一方、高圧水噴流であるウォータージェットを用いて、伝熱管内壁に生成付着する硬質スケールを除去したり(特開2001−225036)、フライス加工したり(特開平10−028903)、金属材料表面に形成された表面異質層を除去したり(特開平08−267400)する技術が、従来より提案されている。
【0008】
また、木材のみならず、たとえば配線のため発泡スチロールに埋められた銅線先端を突き出すといったように、発泡材料中に埋め込まれた棒状物体の先端を突き出させる必要がある場合など、軟質部と硬質部とが混在している材料の表面加工処理を迅速かつ効率的に行うことのできる技術も、求められる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を踏まえ、柔らかい夏目と硬い冬目が混在する木材のように、軟質部と硬質部とが混在している材料の表面加工処理を、高速、簡便かつ効率的に、また被処理材料の状態に応じて表面の凹凸状態を調整することのできる、ウォータージェットによる表面処理方法および表面処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記課題について検討した結果、高速水噴流であるウォータージェットの一定強度の部材のみを加工できる特性を応用することによって上記課題の解決が可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は次の通りである。
【0011】
(1) 木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料の被処理表面の凹凸状態を調整するための表面処理方法であって、予め軟質部と硬質部との加工強度の閾値に噴出圧力を設定したウォータージェットを、材料の被処理面に対して噴射してその水圧により軟質部を押し込み加工し、凹凸状態の調整された表面を得ることを特徴とする、ウォータージェットによる表面処理方法。
(2) 材料の被処理表面の表面粗さを減少させるための表面処理方法であって、ウォータージェットを、材料の被処理面に対して噴射してその水圧により微小な突起を除去加工し、粗さが減少し平滑化した表面を得ることを特徴とする、ウォータージェットによる表面処理方法。
(3) 前記ウォータージェットは、材料の被処理表面を広範囲に均一に処理するために、扇状ウォータージェットとすることを特徴とする、(1)または(2)に記載のウォータージェットによる表面処理方法。
(4) ウォータージェットに対して被処理材料を相対的に移動させながら行うことを特徴とする、(3)に記載のウォータージェットによる表面処理方法。
(5) 前記ウォータージェットの噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットと被処理材料間の相対的な移動速度もしくは移動回数を調節することによって、所望の凹凸状態の調整された表面を得ることを特徴とする、(3)または(4)に記載のウォータージェットによる表面処理方法。
【0012】
(6) 木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料の被処理表面の凹凸状態を水圧により押し込み加工して調整するための、もしくは材料の被処理表面の表面粗さを減少させるための表面処理装置であって、該装置は、被処理材料に噴射するための扇状ウォータージェットを発生させるウォータージェット発生部と、被処理材料を支持するための材料支持部と、ウォータージェットに対して被処理材料を相対的に移動させるための処理方向駆動部とを備えてなることを特徴とする、表面処理装置。
(7) 所望の凹凸状態の調整された表面を得るために、前記ウォータージェットの噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットと被処理材料間の相対的な移動速度もしくは移動回数が調節可能に構成されていることを特徴とする、(6)に記載の表面処理装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明のウォータージェットによる表面処理方法および表面処理装置は上述のように構成されるため、これによれば、柔らかい夏目と硬い冬目が混在する木材のように、軟質部と硬質部とが混在している材料の表面加工処理を、高速、簡便かつ効率的に、また被処理材料の状態に応じて表面の凹凸状態を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。
図1は、本発明のウォータージェットによる表面処理方法の基本構成を示す概念図である。また、
図2は、本発明のウォータージェットによる表面処理装置の基本構成を示す概念図である。これらに図示するように本方法は、木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料9の被処理表面の凹凸状態を調整するための方法であって、予め軟質部と硬質部との加工強度の閾値に噴出圧力を設定することを含む条件設定過程P1によりウォータージェットWJを発生させて、材料9の被処理面に対して噴射してその水圧により軟質部を押し込み加工する加工過程P2を経て、凹凸状態の調整された表面処理のなされた処理後材料10を得る構成を基本とする。
【0015】
すなわち条件設定過程P1において、少なくとも、ウォータージェットWJの噴出圧力を、材料9の軟質部と硬質部との加工強度の閾値に設定する設定がなされ、それに基づいてウォータージェット発生部2によりウォータージェットWJが噴出される加工過程P2では、ウォータージェットWJの水圧により材料9の被処理面の軟質部が押し込み加工され、それにより、木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料9の被処理表面の凹凸状態が調整された処理後材料10が得られる。
【0016】
上記目的とは別に本表面処理方法は、材料9の被処理表面の表面粗さを減少させるためのものとして用いることもできる。すなわち、ウォータージェットWJを材料9の被処理面に対して噴射してその水圧により微小な突起を除去加工し、粗さが減少し平滑化した表面を得る、というものである。
【0017】
本発明方法では、材料9の被処理表面を広範囲に均一に処理するために、ウォータージェットWJとしては、被処理表面と線接触する扇状ウォータージェットを用いる。また、ウォータージェットWJに対して被処理材料9を相対的に移動させながら行う構成とする。
【0018】
図2に概念的に示したように前記相対的移動は、適宜構成の処理方向駆動部4を用いて行うことができる。これはたとえば図示するように、被処理材料9もしくはこれが支持される材料支持部3の方をウォータージェットWJに対して直線上正逆方向の移動可能なように駆動する方法(M3)、またはウォータージェット発生部2の方を被処理材料9に対して直線上正逆方向の移動可能なように駆動する方法(M2)とすることができる。
【0019】
後述する実施例はあくまで一実験例であり、駆動方法としては、リニアガイドその他公知の駆動機構を適宜採用し構成することができ、本発明はかかる駆動機構の如何に限定されるものではない。
【0020】
これらの図で、本発明のウォータージェットによる表面処理方法では、前記ウォータージェットWJの噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットWJと被処理材料9間の相対的な移動速度もしくは移動回数を調節する設定を条件設定過程P1において行うものとすることができる。噴出圧力・距離・移動速度・移動回数を予め調節、設定することにより、所望の凹凸状態が調整された表面を得ることができる。
【0021】
図2は、上述の通り本発明表面処理装置1の基本構成を示す概念図であるが、該装置1は、被処理材料9に噴射するための扇状ウォータージェットWJを発生させるウォータージェット発生部2と、被処理材料9を支持もしくは載置するための材料支持部3と、ウォータージェットWJに対して被処理材料9を相対的に移動させるための処理方向駆動部4とを備えてなることを、主たる構成とする。
【0022】
かかる構成により本表面処理装置1では、該材料支持部3に被処理材料9が支持もしくは載置され、該処理方向駆動部4によりウォータージェットWJに対する被処理材料9の相対的移動がなされつつ、これに該ウォータージェット発生部2によって発生させた扇状ウォータージェットWJが噴射される。
【0023】
さらに本表面処理装置1は、ウォータージェットWJの噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットWJと被処理材料9間の相対的な移動速度もしくは移動回数を、それぞれ調節可能に構成することができる。かかる構成はたとえば、該ウォータージェット発生部2、該処理方向駆動部4にそれぞれ個別に設ける制御部としたり、あるいはまた、これらの条件を統合的に設定・制御する装置たる電子計算機としてもよい。
【0024】
かかる構成により本発明表面処理装置1では、木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料9の被処理表面の凹凸状態を、水圧により押し込み加工して、所望の凹凸状態に調整することができる。また、材料9の被処理表面の表面粗さを減少させることもできる。
【0025】
図2の該ウォータージェット発生部2は、後掲図3に実施例の説明のため例示されるように、水源からの水を加圧して後流側に供給するためのポンプ(26)、ポンプ(26)からの加圧水を送水する高圧ホース、加圧水噴出を制御するためのバルブ、アキュムレータ(25)、リリーフ弁(24)、そして扇状ウォータージェットを噴出するためのノズル(21)を備えて構成することができる。
【0026】
図2の該材料支持部3は、後掲図5に実施例の説明のため例示されるように、材料を所定方向への摺動可能に固定するためのガイド(32)等の適宜の固定手段と、それが設けられる背後壁(31)を備えて構成できるが、本発明はこれに限定されるものではない。要するに、ウォータージェットWJが材料9に衝突することによって、材料9や該材料支持部3が移動、振動せず、材料9とウォータージェット発生部2のノズル先端との距離を一定に保つことができる構成、仕様であればよい。
【0027】
図2の該処理方向駆動部4は、上述のように、被処理材料9もしくはこれが支持される材料支持部3の方をウォータージェットWJに対して直線上正逆方向の移動可能なように駆動する手段(M3)、またはウォータージェット発生部2の方を被処理材料9に対して直線上正逆方向の移動可能なように駆動する手段(M2)のいずれかまたは双方をもって、構成することができる。該処理方向駆動部4としては、リニアガイドその他適宜の駆動機構を用いることができる。
【0028】
以上説明した本発明方法および装置は、柔らかい夏目と硬い冬目が混在する木材における木目出しや表面粗さの調整用途に、十二分の効果を発揮することができるが、本発明はこれに限定されず、木材以外でも、軟質部と硬質部とが混在している材料であれば、広く適用することができる。たとえば、配線のため発泡スチロールに埋められた銅線先端を突き出すといったように、発泡材料中に埋め込まれた棒状物体の先端を突き出させる場合にも適用可能である等、軟質部と硬質部との加工強度の閾値にウォータージェット噴出圧力を設定することができる限り、材料の如何、適用分野を選ばない。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を木材に適用した実験例について説明するが、本発明はかかる実験例に限定されるものではない。
<1.実験例の目的・基本方針>
高速水噴流であるウォータージェットの一定強度の部材のみを加工できる特性を応用して、冬目部分を残し夏目部分を押し込み木目を浮き立たせる方法の開発を試みた。噴流は広範囲の木材表面を一度に加工できるように扇状ウォータージェットを使用し、圧力は木材の加工が可能かつポンプが比較的低価格である数MPaに設定した。
【0030】
<2.実験方法>
2.1.実験装置
図3は、本実験例に用いたウォータージェット発生装置全体の概略を示す説明図である。図示するように本装置20では、水は水道から直接プランジャーポンプ26に供給され加圧される。加圧された水道水は高圧ホースを通り、バルブ、アキュムレータ25、リリーフ弁24を介して水槽22内に設けられたノズル21から噴出され、ウォータージェットとなる。
【0031】
図4は、図3の実験装置中のノズルの構成例を示す断面図および側方半断面図である。ここではノズル21として、ノズル出口が縦1mm横2mmの楕円形状のものを使用した。かかるノズル21により、広がり角60°の扇状ウォータージェットを形成することができた。
【0032】
図5は、木実験例の表面処理装置構成を示す説明図である。図示するように本例装置は、図3、4に示したノズル21を備えたウォータージェット発生装置(全体は図示せず)と、台座33ならびにその上に固設した背後壁31とからなる材料支持部30と、および、処理方向駆動部40とから構成した。特に材料支持部30は、水による腐食を防ぐためにアルミ製とした。また、高圧のウォータージェットWJの衝突による移動や振動を防ぐため、材料支持部30の台座33および背後壁31は、20mm厚のアルミ板をT字型に組み合わせて構成し、台座30底部には、L字型の押さえを取り付けるようにした。
【0033】
背後壁31には、材料90を背後壁部31に向かって上側から押さえてブレを抑制するとともに、後記処理方向駆動部40の作用によって鉛直方向に摺動可能とするガイド32を設けた。
【0034】
処理方向駆動部40は、次のように構成した。すなわち、材料支持部30の上方に回転棒41を配置し、これには細い針金製の吊り下げワイヤー42を取り付け、その先に被処理材料90を設置するための設置板45を取り付けた。また、回転棒41の一端はモータ43に接続し、モータ43により任意の回転速度で回転棒を回転させて吊り下げワイヤー42を巻き取ることにより、回転棒41の回転運動を設置板45の上下運動に変換するようにした。設置板45は、両側面に取り付けられた前記ガイド32によりその動きのブレを抑制するようにした。
【0035】
ウォータージェットによる衝突試験前後の木板(試験片、被処理材料)の表面粗さの評価については、固定された赤外線レーザによる距離計を用い、試験片上の数点を測定して、その平均値からの絶対値平均を使用した。また、実体顕微鏡により衝突前後の木板表面の詳細を観察した。
【0036】
2.2.実験条件
予備実験により扇状ウォータージェットの衝突圧力はスタンドオフ距離が約20mmで吐出圧力の2割から3割程度まで急激に減少し、その後、ほぼ一定圧力に維持されることが明らかとなった。本ウォータージェットによる木目出しでは、広範囲での加工を目的とすることから、ノズルから遠方での試験片の設置が望まれた。そこで本試験例では、スタンドオフ距離は設置が可能な40mmで一定とした。また圧力は、予備実験から、3MPa以上において木板への良好な影響発揮が確認できたことと、廉価なポンプを使用するという目的のため、3MPaから5MPaの範囲として実験を行った。
【0037】
本実験における送り速度は、7.98X10−3、9.79X10−3、16.7X10−3m/sの3条件とした。衝突実験においては、1回だけでなく繰り返しトラバース(送り)させた場合の影響についても検討した。また、試験片の木材の種類としては、一般的かつ堅さの異なるものとしてヒバ、スギ、ヒノキの3種類を採り上げた。
【0038】
<3.試験結果および考察>
3.1.表面粗さの変化
(1)ヒバ材
図6は、吐出圧力5MPa、送り回数10回のときの表面粗さに対する送り速度の影響を示したグラフである。粗さ約0.4mmにおける点線は噴流の衝突実験前の試験片表面平均粗さであり、その上下の破線はそのばらつきを示している。図から、送り速度の増加に伴い、表面の凹凸は減少することが確認された。
【0039】
図7は、送り回数を変化させたときの表面粗さの変化を示すグラフである。(a)、(b)はそれぞれ、送り速度を7.98X10−3m/s、16.7X10−3m/sとして試験を行った結果である。図示されるように、吐出圧力が5MPaの場合には、送り速度に関わらず送り回数の増加に伴い凹凸は成長していくことが示された。しかし、凹凸が大きくなった場合には木板の木目の違いの影響か、データのばらつきも大きくなった。なお、3MPaにおいては凹凸を成長させるのではなく、表面粗さを小さくする作用が生じることが示された。これは、ウォータージェットの面に対して均等な衝突圧力が、衝突前の試験片に残っている小さな突起をつぶすことにより行われているものと考えられた。
【0040】
(2)スギ材
図8、9、10にスギ材に対してウォータージェットを衝突させて木目出しした結果を、グラフにて示す。各図において、表面粗さが約0.4mmにおける点線と2本の破線は、ヒバ材同様、実験前の試験片の平均表面粗さとそのばらつきである。スギ材はヒバ材と比べ木の材質が柔らかいため、実験後の凹凸は格段に大きくなっていることが示された。
【0041】
図8は、吐出圧力5MPaにおける送り速度の影響を示すグラフである。送り速度が増加すると凹凸は現れにくくなることが示された。また、衝突回数が5回よりも10回の場合の方が全体的にデータのばらつきが小さい結果であった。これは、5回の場合にはまだ加工する余地が残っているのに対し、10回繰り返した場合には、十分な加工が施されたためであると考えられた。以上のことから、一定の品質を得るためにはある程度の繰り返し処理が有効であると考えられた。
【0042】
図9は、送り速度7.98X10−3m/s、送り回数5回で圧力を変化させた場合の結果を示すグラフである。ここでは、圧力の増加に伴い、急激に凹凸が現れていることが示された。
【0043】
図10は、送り速度7.98X10−3m/s、吐出圧力5MPaにおける送り回数の影響を示すグラフである。ヒバ材の場合は、送り回数が増加すると指数関数的に粗さは増加したが、スギ材の場合には柔らかい木質のためか、送り回数が大きくなると表面粗さの伸びは少なくなっているという結果であった。
【0044】
(3)ヒノキ材
図11、12、13にヒノキ材についての試験結果をグラフにて示す。ヒノキはスギ、ヒバに比べ大変堅い木材であり、そのため、全体的に顕著な凹凸は吐出圧力5MPaにおいても現れにくいという結果であった。
【0045】
図11は、吐出圧力5MPaにおける送り速度の影響を示すグラフである。ヒバ材、スギ材と変わらず送り速度が増大すると凹凸は現れにくいという結果であた。また、ヒノキ材の場合には、送り回数が5回においては表面粗さは実験前の範囲内に収まっており、本試験例の条件ではほとんど加工されておらず、したがって、本発明において、本例とは異なる条件を設定することにより表面処理加工できる可能性があることが示された。また、データのばらつきは送り速度が大きい場合には小さいが、遅い場合には加工途中であるせいかばらつきが大きいという結果であった。
【0046】
図12は、送り速度7.98X10−3m/s、送り回数5回で圧力を変化させた場合の結果を示すグラフである。圧力の増加と共に表面粗さの増加が見られるが、図11で示されたのと同様に送り回数5回においてはいずれも実験前の表面粗さの範囲内であり顕著な凹凸は現れていない。また、ヒバ材同様、3MPaにおいてはわずかではあるが表面を平滑化する傾向が確認された。
【0047】
図13は圧力5MPa、送り速度7.98X10−3m/sにおける送り速度の影響を示すグラフである。送り回数が5回まではそれほど凹凸は現れていないが、10回になるとそれまでに比べ、急激に表面粗さが増加することが示された。
【0048】
3.2.表面状態の観察
柔らかくて凹凸が明確に現れるスギ材の結果を例として、表面状態の観察結果を示す。
図14は、スギ材の吐出圧力5MPaのウォータージェットによる衝突実験前後の表面状態を示す写真図である。(a)は衝突前、(b)は送り回数3回、(c)は同5回、(d)は同10回の場合のものである。衝突実験前後の写真を比較すると、送り回数が3回と少なくても凹凸ははっきりと現れ、回数の増加に伴いより深く加工されている様子が確認された。また、加工後の凹凸の先端は、従来行われてきた研磨による方法の加工表面と比較すると丸みを帯びていることも確認された。
【0049】
図15は吐出圧力が3MPaの場合の表面状態を示す写真図である。低圧にも関わらず既に凹凸が鮮明に現れていた。前述の表面粗さの測定値を参照すると、この条件におけるスギ材の凹凸は、本実験条件範囲内のヒバ材の凹凸の最高値とほぼ等しい値まで達していることが示された。
【0050】
一般的に木材は単一の木から切り出した一枚板でも部分によって物性値は大きく異なる。しかし、機械的に木目出しをする場合には、そのような特性の違いの影響を受けずに加工する必要がある。
図16は、白身と赤身の混在するスギ材の衝突実験後の表面状態を示す写真図である。ここで、実験は吐出圧力5MPa、送り速度7.98X10−3m/s、送り回数5回として行われた。写真上、上部の色の濃い部分が赤身であり、下部の薄い部分が白身である。図示されるように、物性値の違いのため、予想通りわずかに白身の方の凹凸が小さくなっていることが確認できる。
【0051】
しかしながら、試験片全体としてみた場合には際立った差は認められなかった。これは、小さい凹凸である場合には噴流の衝突圧力を直接受けることになるが、大きな凹凸に成長した場合には、凹凸内で流れが乱れることにより直接作用する力が弱まるために、大きな差異が生じなかったものと考えられた。また、全体的に丸みを帯びた表面になることも、尖った部分には噴流の衝突力が強力に作用するため流れが均一になるように均され、凹んだ部分では凹みの中央でのダイレクトな衝突力だけでなく、噴流の逃げによる流れの乱れが発生するため研磨作用がそこに生じているのだと推測された。
【0052】
<4.まとめ>
本試験例では、ウォータージェットによる木目出しを行い、様々な条件における表面の状態の変化を調べ、従来の木目出し方法との比較評価を行った。その結果、高吐出圧力、低送り速度、多送り回数において凹凸が大きく現れた。また、木材の堅さにより凹凸の生じ方に変化が見られた。柔らかいスギ材においては、比較的低圧においても大きな凹凸が生じるのに対し、堅いヒノキ材においては本実験条件内でははっきりとした凹凸の発生は見られなかった。しかし、堅い木材でも送り回数を増やすことにより凹凸が現れるという傾向が確認できた。これは、表面が水分を含み柔らかくなってから加工されているためだと考えられた。
【0053】
また、低圧力においては表面平滑化の作用があることが示された。これは、圧力が低い場合には表面全体の加工は行われないが、表面の小さな突起部分に対しては局所的に高圧力を受けて押し込まれるためこのような結果になるものと考えられた。
【0054】
また、加工後の表面は、従来の木目出し方法と比較すると全体的に丸みを帯びることが確認された。これは、凹み部分では噴流の逃げによる流れが発生するため流線に沿った研磨が生じているのだと推測された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のウォータージェットによる表面処理方法および表面処理装置によれば、柔らかい夏目と硬い冬目が混在する木材のように、軟質部と硬質部とが混在している材料の表面加工処理を、高速、簡便かつ効率的に、また被処理材料の状態に応じて表面の凹凸状態を調整することができる。したがって、木工分野を始めとする表面処理分野において、産業上利用価値が高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のウォータージェットによる表面処理方法の基本構成を示す概念図である。
【図2】本発明のウォータージェットによる表面処理装置の基本構成を示す概念図である。
【図3】本実験例に用いたウォータージェット発生装置全体の概略を示す説明図である。
【図4】図3の実験装置中のノズルの構成例を示す断面図および側方半断面図である。
【図5】木実験例の表面処理装置構成を示す説明図である。
【図6】ヒバ材の試験について、吐出圧力5MPa、送り回数10回のときの表面粗さに対する送り速度の影響を示したグラフである。
【図7】ヒバ材の試験について、送り回数を変化させたときの表面粗さの変化を示すグラフである。
【図8】ヒバ材の試験について、吐出圧力5MPaにおける送り速度の影響を示すグラフである。
【図9】ヒバ材の試験について、送り速度7.98X10−3m/s、送り回数5回で圧力を変化させた場合の結果を示すグラフである。
【図10】ヒバ材の試験について、送り速度7.98X10−3m/s、吐出圧力5MPaにおける送り回数の影響を示すグラフである。
【図11】ヒノキ材の試験について、吐出圧力5MPaにおける送り速度の影響を示すグラフである。
【図12】ヒノキ材の試験について、送り速度7.98X10−3m/s、送り回数5回で圧力を変化させた場合の結果を示すグラフである。
【図13】ヒノキ材の試験について、圧力5MPa、送り速度7.98X10−3m/sにおける送り速度の影響を示すグラフである。
【図14】スギ材の吐出圧力5MPaのウォータージェットによる衝突実験前後の表面状態を示す写真図である。
【図15】スギ材の吐出圧力が3MPaの場合の表面状態を示す写真図である。
【図16】白身と赤身の混在するスギ材の衝突実験後の表面状態を示す写真図である。
【符号の説明】
【0057】
1…表面処理装置
2…ウォータージェット発生部
3…材料支持部
4…処理方向駆動部
9…被処理材料
10…処理後材料
20…ウォータージェット発生装置装置
21…ノズル
22…水槽
23…圧力ゲージ
24…リリーフ弁
25…アキュムレータ
26…プランジャーポンプ
30…材料支持部
31…背後壁
32…ガイド
33…台座
40…処理方向駆動部
41…回転棒
42…吊り下げワイヤー
43…モータ
45…設置板
90…被処理材料
M2、M3…駆動方法(手段)
P1…条件設定過程
P2…加工過程
WJ…ウォータージェット
【技術分野】
【0001】
本発明はウォータージェットによる表面処理方法および表面処理装置に係り、特に、柔らかい夏目と硬い冬目が混在する木材のような軟質部と硬質部とが混在している材料の表面加工処理を、高速、簡便かつ効率的に、また被処理材料の状態に応じて表面の凹凸状態を調整することのできる、ウォータージェットによる表面処理方法および表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家具や建築材として木材を使用する場合、木材が紫外線を吸収し、また木材表面では細胞の微小な凹凸で光が散乱するため反射光が弱められ、"目に優しい"という長所がある。しかし、木材表面に塗装がしてある場合、塗装表面で光が反射するためその長所が失われる。このため、塗装なしで美しい表面を得るための手段の一つとして木目の浮き出し技術が、従来から用いられている。
【0003】
。
木目を浮き出させる技術には様々なものがあるが、いずれも柔らかい夏目を加工し堅い冬目を残して行われる。伝統的な方法としては、夏目を押し付けて浮き立たせるうづくりや、夏目を研磨剤で削り取って浮き立たせる時雨彫り等がある。しかし、これら伝統的な方法で均一な仕上げ状態にするには、熟練の腕前が必要とされる。
【0004】
迅速かつ正確に木目を浮き出させる技術として、ウレタンゴム等の弾性体上に被加工面を密着するように載置し、被加工面の裏面方向から押圧板を介して加圧することにより、冬目と夏目の密度差に起因する硬度に応じた変形を得るという提案もなされている(後掲特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特許公開平10−015915「木材製品の表面加工方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、特許文献1の方法では、被処理表面状態を材料に応じて調整し、効率的な処理を行うことは難しい。また、大きな部材を加工するための自動化も図られてはいるが、部材による構造や強度の違いに対して充分な対応が困難であり、未だ広範囲を素早く均一に処理できる方法は提案されていない。
【0007】
一方、高圧水噴流であるウォータージェットを用いて、伝熱管内壁に生成付着する硬質スケールを除去したり(特開2001−225036)、フライス加工したり(特開平10−028903)、金属材料表面に形成された表面異質層を除去したり(特開平08−267400)する技術が、従来より提案されている。
【0008】
また、木材のみならず、たとえば配線のため発泡スチロールに埋められた銅線先端を突き出すといったように、発泡材料中に埋め込まれた棒状物体の先端を突き出させる必要がある場合など、軟質部と硬質部とが混在している材料の表面加工処理を迅速かつ効率的に行うことのできる技術も、求められる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を踏まえ、柔らかい夏目と硬い冬目が混在する木材のように、軟質部と硬質部とが混在している材料の表面加工処理を、高速、簡便かつ効率的に、また被処理材料の状態に応じて表面の凹凸状態を調整することのできる、ウォータージェットによる表面処理方法および表面処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記課題について検討した結果、高速水噴流であるウォータージェットの一定強度の部材のみを加工できる特性を応用することによって上記課題の解決が可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は次の通りである。
【0011】
(1) 木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料の被処理表面の凹凸状態を調整するための表面処理方法であって、予め軟質部と硬質部との加工強度の閾値に噴出圧力を設定したウォータージェットを、材料の被処理面に対して噴射してその水圧により軟質部を押し込み加工し、凹凸状態の調整された表面を得ることを特徴とする、ウォータージェットによる表面処理方法。
(2) 材料の被処理表面の表面粗さを減少させるための表面処理方法であって、ウォータージェットを、材料の被処理面に対して噴射してその水圧により微小な突起を除去加工し、粗さが減少し平滑化した表面を得ることを特徴とする、ウォータージェットによる表面処理方法。
(3) 前記ウォータージェットは、材料の被処理表面を広範囲に均一に処理するために、扇状ウォータージェットとすることを特徴とする、(1)または(2)に記載のウォータージェットによる表面処理方法。
(4) ウォータージェットに対して被処理材料を相対的に移動させながら行うことを特徴とする、(3)に記載のウォータージェットによる表面処理方法。
(5) 前記ウォータージェットの噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットと被処理材料間の相対的な移動速度もしくは移動回数を調節することによって、所望の凹凸状態の調整された表面を得ることを特徴とする、(3)または(4)に記載のウォータージェットによる表面処理方法。
【0012】
(6) 木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料の被処理表面の凹凸状態を水圧により押し込み加工して調整するための、もしくは材料の被処理表面の表面粗さを減少させるための表面処理装置であって、該装置は、被処理材料に噴射するための扇状ウォータージェットを発生させるウォータージェット発生部と、被処理材料を支持するための材料支持部と、ウォータージェットに対して被処理材料を相対的に移動させるための処理方向駆動部とを備えてなることを特徴とする、表面処理装置。
(7) 所望の凹凸状態の調整された表面を得るために、前記ウォータージェットの噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットと被処理材料間の相対的な移動速度もしくは移動回数が調節可能に構成されていることを特徴とする、(6)に記載の表面処理装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明のウォータージェットによる表面処理方法および表面処理装置は上述のように構成されるため、これによれば、柔らかい夏目と硬い冬目が混在する木材のように、軟質部と硬質部とが混在している材料の表面加工処理を、高速、簡便かつ効率的に、また被処理材料の状態に応じて表面の凹凸状態を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。
図1は、本発明のウォータージェットによる表面処理方法の基本構成を示す概念図である。また、
図2は、本発明のウォータージェットによる表面処理装置の基本構成を示す概念図である。これらに図示するように本方法は、木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料9の被処理表面の凹凸状態を調整するための方法であって、予め軟質部と硬質部との加工強度の閾値に噴出圧力を設定することを含む条件設定過程P1によりウォータージェットWJを発生させて、材料9の被処理面に対して噴射してその水圧により軟質部を押し込み加工する加工過程P2を経て、凹凸状態の調整された表面処理のなされた処理後材料10を得る構成を基本とする。
【0015】
すなわち条件設定過程P1において、少なくとも、ウォータージェットWJの噴出圧力を、材料9の軟質部と硬質部との加工強度の閾値に設定する設定がなされ、それに基づいてウォータージェット発生部2によりウォータージェットWJが噴出される加工過程P2では、ウォータージェットWJの水圧により材料9の被処理面の軟質部が押し込み加工され、それにより、木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料9の被処理表面の凹凸状態が調整された処理後材料10が得られる。
【0016】
上記目的とは別に本表面処理方法は、材料9の被処理表面の表面粗さを減少させるためのものとして用いることもできる。すなわち、ウォータージェットWJを材料9の被処理面に対して噴射してその水圧により微小な突起を除去加工し、粗さが減少し平滑化した表面を得る、というものである。
【0017】
本発明方法では、材料9の被処理表面を広範囲に均一に処理するために、ウォータージェットWJとしては、被処理表面と線接触する扇状ウォータージェットを用いる。また、ウォータージェットWJに対して被処理材料9を相対的に移動させながら行う構成とする。
【0018】
図2に概念的に示したように前記相対的移動は、適宜構成の処理方向駆動部4を用いて行うことができる。これはたとえば図示するように、被処理材料9もしくはこれが支持される材料支持部3の方をウォータージェットWJに対して直線上正逆方向の移動可能なように駆動する方法(M3)、またはウォータージェット発生部2の方を被処理材料9に対して直線上正逆方向の移動可能なように駆動する方法(M2)とすることができる。
【0019】
後述する実施例はあくまで一実験例であり、駆動方法としては、リニアガイドその他公知の駆動機構を適宜採用し構成することができ、本発明はかかる駆動機構の如何に限定されるものではない。
【0020】
これらの図で、本発明のウォータージェットによる表面処理方法では、前記ウォータージェットWJの噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットWJと被処理材料9間の相対的な移動速度もしくは移動回数を調節する設定を条件設定過程P1において行うものとすることができる。噴出圧力・距離・移動速度・移動回数を予め調節、設定することにより、所望の凹凸状態が調整された表面を得ることができる。
【0021】
図2は、上述の通り本発明表面処理装置1の基本構成を示す概念図であるが、該装置1は、被処理材料9に噴射するための扇状ウォータージェットWJを発生させるウォータージェット発生部2と、被処理材料9を支持もしくは載置するための材料支持部3と、ウォータージェットWJに対して被処理材料9を相対的に移動させるための処理方向駆動部4とを備えてなることを、主たる構成とする。
【0022】
かかる構成により本表面処理装置1では、該材料支持部3に被処理材料9が支持もしくは載置され、該処理方向駆動部4によりウォータージェットWJに対する被処理材料9の相対的移動がなされつつ、これに該ウォータージェット発生部2によって発生させた扇状ウォータージェットWJが噴射される。
【0023】
さらに本表面処理装置1は、ウォータージェットWJの噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットWJと被処理材料9間の相対的な移動速度もしくは移動回数を、それぞれ調節可能に構成することができる。かかる構成はたとえば、該ウォータージェット発生部2、該処理方向駆動部4にそれぞれ個別に設ける制御部としたり、あるいはまた、これらの条件を統合的に設定・制御する装置たる電子計算機としてもよい。
【0024】
かかる構成により本発明表面処理装置1では、木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料9の被処理表面の凹凸状態を、水圧により押し込み加工して、所望の凹凸状態に調整することができる。また、材料9の被処理表面の表面粗さを減少させることもできる。
【0025】
図2の該ウォータージェット発生部2は、後掲図3に実施例の説明のため例示されるように、水源からの水を加圧して後流側に供給するためのポンプ(26)、ポンプ(26)からの加圧水を送水する高圧ホース、加圧水噴出を制御するためのバルブ、アキュムレータ(25)、リリーフ弁(24)、そして扇状ウォータージェットを噴出するためのノズル(21)を備えて構成することができる。
【0026】
図2の該材料支持部3は、後掲図5に実施例の説明のため例示されるように、材料を所定方向への摺動可能に固定するためのガイド(32)等の適宜の固定手段と、それが設けられる背後壁(31)を備えて構成できるが、本発明はこれに限定されるものではない。要するに、ウォータージェットWJが材料9に衝突することによって、材料9や該材料支持部3が移動、振動せず、材料9とウォータージェット発生部2のノズル先端との距離を一定に保つことができる構成、仕様であればよい。
【0027】
図2の該処理方向駆動部4は、上述のように、被処理材料9もしくはこれが支持される材料支持部3の方をウォータージェットWJに対して直線上正逆方向の移動可能なように駆動する手段(M3)、またはウォータージェット発生部2の方を被処理材料9に対して直線上正逆方向の移動可能なように駆動する手段(M2)のいずれかまたは双方をもって、構成することができる。該処理方向駆動部4としては、リニアガイドその他適宜の駆動機構を用いることができる。
【0028】
以上説明した本発明方法および装置は、柔らかい夏目と硬い冬目が混在する木材における木目出しや表面粗さの調整用途に、十二分の効果を発揮することができるが、本発明はこれに限定されず、木材以外でも、軟質部と硬質部とが混在している材料であれば、広く適用することができる。たとえば、配線のため発泡スチロールに埋められた銅線先端を突き出すといったように、発泡材料中に埋め込まれた棒状物体の先端を突き出させる場合にも適用可能である等、軟質部と硬質部との加工強度の閾値にウォータージェット噴出圧力を設定することができる限り、材料の如何、適用分野を選ばない。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を木材に適用した実験例について説明するが、本発明はかかる実験例に限定されるものではない。
<1.実験例の目的・基本方針>
高速水噴流であるウォータージェットの一定強度の部材のみを加工できる特性を応用して、冬目部分を残し夏目部分を押し込み木目を浮き立たせる方法の開発を試みた。噴流は広範囲の木材表面を一度に加工できるように扇状ウォータージェットを使用し、圧力は木材の加工が可能かつポンプが比較的低価格である数MPaに設定した。
【0030】
<2.実験方法>
2.1.実験装置
図3は、本実験例に用いたウォータージェット発生装置全体の概略を示す説明図である。図示するように本装置20では、水は水道から直接プランジャーポンプ26に供給され加圧される。加圧された水道水は高圧ホースを通り、バルブ、アキュムレータ25、リリーフ弁24を介して水槽22内に設けられたノズル21から噴出され、ウォータージェットとなる。
【0031】
図4は、図3の実験装置中のノズルの構成例を示す断面図および側方半断面図である。ここではノズル21として、ノズル出口が縦1mm横2mmの楕円形状のものを使用した。かかるノズル21により、広がり角60°の扇状ウォータージェットを形成することができた。
【0032】
図5は、木実験例の表面処理装置構成を示す説明図である。図示するように本例装置は、図3、4に示したノズル21を備えたウォータージェット発生装置(全体は図示せず)と、台座33ならびにその上に固設した背後壁31とからなる材料支持部30と、および、処理方向駆動部40とから構成した。特に材料支持部30は、水による腐食を防ぐためにアルミ製とした。また、高圧のウォータージェットWJの衝突による移動や振動を防ぐため、材料支持部30の台座33および背後壁31は、20mm厚のアルミ板をT字型に組み合わせて構成し、台座30底部には、L字型の押さえを取り付けるようにした。
【0033】
背後壁31には、材料90を背後壁部31に向かって上側から押さえてブレを抑制するとともに、後記処理方向駆動部40の作用によって鉛直方向に摺動可能とするガイド32を設けた。
【0034】
処理方向駆動部40は、次のように構成した。すなわち、材料支持部30の上方に回転棒41を配置し、これには細い針金製の吊り下げワイヤー42を取り付け、その先に被処理材料90を設置するための設置板45を取り付けた。また、回転棒41の一端はモータ43に接続し、モータ43により任意の回転速度で回転棒を回転させて吊り下げワイヤー42を巻き取ることにより、回転棒41の回転運動を設置板45の上下運動に変換するようにした。設置板45は、両側面に取り付けられた前記ガイド32によりその動きのブレを抑制するようにした。
【0035】
ウォータージェットによる衝突試験前後の木板(試験片、被処理材料)の表面粗さの評価については、固定された赤外線レーザによる距離計を用い、試験片上の数点を測定して、その平均値からの絶対値平均を使用した。また、実体顕微鏡により衝突前後の木板表面の詳細を観察した。
【0036】
2.2.実験条件
予備実験により扇状ウォータージェットの衝突圧力はスタンドオフ距離が約20mmで吐出圧力の2割から3割程度まで急激に減少し、その後、ほぼ一定圧力に維持されることが明らかとなった。本ウォータージェットによる木目出しでは、広範囲での加工を目的とすることから、ノズルから遠方での試験片の設置が望まれた。そこで本試験例では、スタンドオフ距離は設置が可能な40mmで一定とした。また圧力は、予備実験から、3MPa以上において木板への良好な影響発揮が確認できたことと、廉価なポンプを使用するという目的のため、3MPaから5MPaの範囲として実験を行った。
【0037】
本実験における送り速度は、7.98X10−3、9.79X10−3、16.7X10−3m/sの3条件とした。衝突実験においては、1回だけでなく繰り返しトラバース(送り)させた場合の影響についても検討した。また、試験片の木材の種類としては、一般的かつ堅さの異なるものとしてヒバ、スギ、ヒノキの3種類を採り上げた。
【0038】
<3.試験結果および考察>
3.1.表面粗さの変化
(1)ヒバ材
図6は、吐出圧力5MPa、送り回数10回のときの表面粗さに対する送り速度の影響を示したグラフである。粗さ約0.4mmにおける点線は噴流の衝突実験前の試験片表面平均粗さであり、その上下の破線はそのばらつきを示している。図から、送り速度の増加に伴い、表面の凹凸は減少することが確認された。
【0039】
図7は、送り回数を変化させたときの表面粗さの変化を示すグラフである。(a)、(b)はそれぞれ、送り速度を7.98X10−3m/s、16.7X10−3m/sとして試験を行った結果である。図示されるように、吐出圧力が5MPaの場合には、送り速度に関わらず送り回数の増加に伴い凹凸は成長していくことが示された。しかし、凹凸が大きくなった場合には木板の木目の違いの影響か、データのばらつきも大きくなった。なお、3MPaにおいては凹凸を成長させるのではなく、表面粗さを小さくする作用が生じることが示された。これは、ウォータージェットの面に対して均等な衝突圧力が、衝突前の試験片に残っている小さな突起をつぶすことにより行われているものと考えられた。
【0040】
(2)スギ材
図8、9、10にスギ材に対してウォータージェットを衝突させて木目出しした結果を、グラフにて示す。各図において、表面粗さが約0.4mmにおける点線と2本の破線は、ヒバ材同様、実験前の試験片の平均表面粗さとそのばらつきである。スギ材はヒバ材と比べ木の材質が柔らかいため、実験後の凹凸は格段に大きくなっていることが示された。
【0041】
図8は、吐出圧力5MPaにおける送り速度の影響を示すグラフである。送り速度が増加すると凹凸は現れにくくなることが示された。また、衝突回数が5回よりも10回の場合の方が全体的にデータのばらつきが小さい結果であった。これは、5回の場合にはまだ加工する余地が残っているのに対し、10回繰り返した場合には、十分な加工が施されたためであると考えられた。以上のことから、一定の品質を得るためにはある程度の繰り返し処理が有効であると考えられた。
【0042】
図9は、送り速度7.98X10−3m/s、送り回数5回で圧力を変化させた場合の結果を示すグラフである。ここでは、圧力の増加に伴い、急激に凹凸が現れていることが示された。
【0043】
図10は、送り速度7.98X10−3m/s、吐出圧力5MPaにおける送り回数の影響を示すグラフである。ヒバ材の場合は、送り回数が増加すると指数関数的に粗さは増加したが、スギ材の場合には柔らかい木質のためか、送り回数が大きくなると表面粗さの伸びは少なくなっているという結果であった。
【0044】
(3)ヒノキ材
図11、12、13にヒノキ材についての試験結果をグラフにて示す。ヒノキはスギ、ヒバに比べ大変堅い木材であり、そのため、全体的に顕著な凹凸は吐出圧力5MPaにおいても現れにくいという結果であった。
【0045】
図11は、吐出圧力5MPaにおける送り速度の影響を示すグラフである。ヒバ材、スギ材と変わらず送り速度が増大すると凹凸は現れにくいという結果であた。また、ヒノキ材の場合には、送り回数が5回においては表面粗さは実験前の範囲内に収まっており、本試験例の条件ではほとんど加工されておらず、したがって、本発明において、本例とは異なる条件を設定することにより表面処理加工できる可能性があることが示された。また、データのばらつきは送り速度が大きい場合には小さいが、遅い場合には加工途中であるせいかばらつきが大きいという結果であった。
【0046】
図12は、送り速度7.98X10−3m/s、送り回数5回で圧力を変化させた場合の結果を示すグラフである。圧力の増加と共に表面粗さの増加が見られるが、図11で示されたのと同様に送り回数5回においてはいずれも実験前の表面粗さの範囲内であり顕著な凹凸は現れていない。また、ヒバ材同様、3MPaにおいてはわずかではあるが表面を平滑化する傾向が確認された。
【0047】
図13は圧力5MPa、送り速度7.98X10−3m/sにおける送り速度の影響を示すグラフである。送り回数が5回まではそれほど凹凸は現れていないが、10回になるとそれまでに比べ、急激に表面粗さが増加することが示された。
【0048】
3.2.表面状態の観察
柔らかくて凹凸が明確に現れるスギ材の結果を例として、表面状態の観察結果を示す。
図14は、スギ材の吐出圧力5MPaのウォータージェットによる衝突実験前後の表面状態を示す写真図である。(a)は衝突前、(b)は送り回数3回、(c)は同5回、(d)は同10回の場合のものである。衝突実験前後の写真を比較すると、送り回数が3回と少なくても凹凸ははっきりと現れ、回数の増加に伴いより深く加工されている様子が確認された。また、加工後の凹凸の先端は、従来行われてきた研磨による方法の加工表面と比較すると丸みを帯びていることも確認された。
【0049】
図15は吐出圧力が3MPaの場合の表面状態を示す写真図である。低圧にも関わらず既に凹凸が鮮明に現れていた。前述の表面粗さの測定値を参照すると、この条件におけるスギ材の凹凸は、本実験条件範囲内のヒバ材の凹凸の最高値とほぼ等しい値まで達していることが示された。
【0050】
一般的に木材は単一の木から切り出した一枚板でも部分によって物性値は大きく異なる。しかし、機械的に木目出しをする場合には、そのような特性の違いの影響を受けずに加工する必要がある。
図16は、白身と赤身の混在するスギ材の衝突実験後の表面状態を示す写真図である。ここで、実験は吐出圧力5MPa、送り速度7.98X10−3m/s、送り回数5回として行われた。写真上、上部の色の濃い部分が赤身であり、下部の薄い部分が白身である。図示されるように、物性値の違いのため、予想通りわずかに白身の方の凹凸が小さくなっていることが確認できる。
【0051】
しかしながら、試験片全体としてみた場合には際立った差は認められなかった。これは、小さい凹凸である場合には噴流の衝突圧力を直接受けることになるが、大きな凹凸に成長した場合には、凹凸内で流れが乱れることにより直接作用する力が弱まるために、大きな差異が生じなかったものと考えられた。また、全体的に丸みを帯びた表面になることも、尖った部分には噴流の衝突力が強力に作用するため流れが均一になるように均され、凹んだ部分では凹みの中央でのダイレクトな衝突力だけでなく、噴流の逃げによる流れの乱れが発生するため研磨作用がそこに生じているのだと推測された。
【0052】
<4.まとめ>
本試験例では、ウォータージェットによる木目出しを行い、様々な条件における表面の状態の変化を調べ、従来の木目出し方法との比較評価を行った。その結果、高吐出圧力、低送り速度、多送り回数において凹凸が大きく現れた。また、木材の堅さにより凹凸の生じ方に変化が見られた。柔らかいスギ材においては、比較的低圧においても大きな凹凸が生じるのに対し、堅いヒノキ材においては本実験条件内でははっきりとした凹凸の発生は見られなかった。しかし、堅い木材でも送り回数を増やすことにより凹凸が現れるという傾向が確認できた。これは、表面が水分を含み柔らかくなってから加工されているためだと考えられた。
【0053】
また、低圧力においては表面平滑化の作用があることが示された。これは、圧力が低い場合には表面全体の加工は行われないが、表面の小さな突起部分に対しては局所的に高圧力を受けて押し込まれるためこのような結果になるものと考えられた。
【0054】
また、加工後の表面は、従来の木目出し方法と比較すると全体的に丸みを帯びることが確認された。これは、凹み部分では噴流の逃げによる流れが発生するため流線に沿った研磨が生じているのだと推測された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のウォータージェットによる表面処理方法および表面処理装置によれば、柔らかい夏目と硬い冬目が混在する木材のように、軟質部と硬質部とが混在している材料の表面加工処理を、高速、簡便かつ効率的に、また被処理材料の状態に応じて表面の凹凸状態を調整することができる。したがって、木工分野を始めとする表面処理分野において、産業上利用価値が高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のウォータージェットによる表面処理方法の基本構成を示す概念図である。
【図2】本発明のウォータージェットによる表面処理装置の基本構成を示す概念図である。
【図3】本実験例に用いたウォータージェット発生装置全体の概略を示す説明図である。
【図4】図3の実験装置中のノズルの構成例を示す断面図および側方半断面図である。
【図5】木実験例の表面処理装置構成を示す説明図である。
【図6】ヒバ材の試験について、吐出圧力5MPa、送り回数10回のときの表面粗さに対する送り速度の影響を示したグラフである。
【図7】ヒバ材の試験について、送り回数を変化させたときの表面粗さの変化を示すグラフである。
【図8】ヒバ材の試験について、吐出圧力5MPaにおける送り速度の影響を示すグラフである。
【図9】ヒバ材の試験について、送り速度7.98X10−3m/s、送り回数5回で圧力を変化させた場合の結果を示すグラフである。
【図10】ヒバ材の試験について、送り速度7.98X10−3m/s、吐出圧力5MPaにおける送り回数の影響を示すグラフである。
【図11】ヒノキ材の試験について、吐出圧力5MPaにおける送り速度の影響を示すグラフである。
【図12】ヒノキ材の試験について、送り速度7.98X10−3m/s、送り回数5回で圧力を変化させた場合の結果を示すグラフである。
【図13】ヒノキ材の試験について、圧力5MPa、送り速度7.98X10−3m/sにおける送り速度の影響を示すグラフである。
【図14】スギ材の吐出圧力5MPaのウォータージェットによる衝突実験前後の表面状態を示す写真図である。
【図15】スギ材の吐出圧力が3MPaの場合の表面状態を示す写真図である。
【図16】白身と赤身の混在するスギ材の衝突実験後の表面状態を示す写真図である。
【符号の説明】
【0057】
1…表面処理装置
2…ウォータージェット発生部
3…材料支持部
4…処理方向駆動部
9…被処理材料
10…処理後材料
20…ウォータージェット発生装置装置
21…ノズル
22…水槽
23…圧力ゲージ
24…リリーフ弁
25…アキュムレータ
26…プランジャーポンプ
30…材料支持部
31…背後壁
32…ガイド
33…台座
40…処理方向駆動部
41…回転棒
42…吊り下げワイヤー
43…モータ
45…設置板
90…被処理材料
M2、M3…駆動方法(手段)
P1…条件設定過程
P2…加工過程
WJ…ウォータージェット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料の被処理表面の凹凸状態を調整するための表面処理方法であって、予め軟質部と硬質部との加工強度の閾値に噴出圧力を設定したウォータージェットを、材料の被処理面に対して噴射してその水圧により軟質部を押し込み加工し、凹凸状態の調整された表面を得ることを特徴とする、ウォータージェットによる表面処理方法。
【請求項2】
材料の被処理表面の表面粗さを減少させるための表面処理方法であって、ウォータージェットを、材料の被処理面に対して噴射してその水圧により微小な突起を除去加工し、粗さが減少し平滑化した表面を得ることを特徴とする、ウォータージェットによる表面処理方法。
【請求項3】
前記ウォータージェットは、材料の被処理表面を広範囲に均一に処理するために、扇状ウォータージェットとすることを特徴とする、請求項1または2に記載のウォータージェットによる表面処理方法。
【請求項4】
ウォータージェットに対して被処理材料を相対的に移動させながら行うことを特徴とする、請求項3に記載のウォータージェットによる表面処理方法。
【請求項5】
前記ウォータージェットの噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットと被処理材料間の相対的な移動速度もしくは移動回数を調節することによって、所望の凹凸状態の調整された表面を得ることを特徴とする、請求項3または4に記載のウォータージェットによる表面処理方法。
【請求項6】
木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料の被処理表面の凹凸状態を水圧により押し込み加工して調整するための、もしくは材料の被処理表面の表面粗さを減少させるための表面処理装置であって、該装置は、被処理材料に噴射するための扇状ウォータージェットを発生させるウォータージェット発生部と、被処理材料を支持するための材料支持部と、ウォータージェットに対して被処理材料を相対的に移動させるための処理方向駆動部とを備えてなることを特徴とする、表面処理装置。
【請求項7】
所望の凹凸状態の調整された表面を得るために、前記ウォータージェットの噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットと被処理材料間の相対的な移動速度もしくは移動回数が調節可能に構成されていることを特徴とする、請求項6に記載の表面処理装置。
【請求項1】
木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料の被処理表面の凹凸状態を調整するための表面処理方法であって、予め軟質部と硬質部との加工強度の閾値に噴出圧力を設定したウォータージェットを、材料の被処理面に対して噴射してその水圧により軟質部を押し込み加工し、凹凸状態の調整された表面を得ることを特徴とする、ウォータージェットによる表面処理方法。
【請求項2】
材料の被処理表面の表面粗さを減少させるための表面処理方法であって、ウォータージェットを、材料の被処理面に対して噴射してその水圧により微小な突起を除去加工し、粗さが減少し平滑化した表面を得ることを特徴とする、ウォータージェットによる表面処理方法。
【請求項3】
前記ウォータージェットは、材料の被処理表面を広範囲に均一に処理するために、扇状ウォータージェットとすることを特徴とする、請求項1または2に記載のウォータージェットによる表面処理方法。
【請求項4】
ウォータージェットに対して被処理材料を相対的に移動させながら行うことを特徴とする、請求項3に記載のウォータージェットによる表面処理方法。
【請求項5】
前記ウォータージェットの噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットと被処理材料間の相対的な移動速度もしくは移動回数を調節することによって、所望の凹凸状態の調整された表面を得ることを特徴とする、請求項3または4に記載のウォータージェットによる表面処理方法。
【請求項6】
木材その他軟質部と硬質部とが混在している材料の被処理表面の凹凸状態を水圧により押し込み加工して調整するための、もしくは材料の被処理表面の表面粗さを減少させるための表面処理装置であって、該装置は、被処理材料に噴射するための扇状ウォータージェットを発生させるウォータージェット発生部と、被処理材料を支持するための材料支持部と、ウォータージェットに対して被処理材料を相対的に移動させるための処理方向駆動部とを備えてなることを特徴とする、表面処理装置。
【請求項7】
所望の凹凸状態の調整された表面を得るために、前記ウォータージェットの噴出圧力、ウォータージェット噴出口と被処理表面との距離、ウォータージェットと被処理材料間の相対的な移動速度もしくは移動回数が調節可能に構成されていることを特徴とする、請求項6に記載の表面処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−218564(P2006−218564A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33383(P2005−33383)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年11月29日 日本ウォータージェット学会主催の「2004年度 ウォータージェット技術年次報告会」において文書をもって発表
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年11月29日 日本ウォータージェット学会主催の「2004年度 ウォータージェット技術年次報告会」において文書をもって発表
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】
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