説明

ウマ結合型エストロゲン天然混合物を得るための方法

本発明は、ウマ結合型エストロゲンの天然混合物を含むエクトラクトを得るための方法に関し、その際、結合型エストロゲン混合物は、妊馬尿から固相抽出によって得られ、フェノール性尿成分および非結合型親油性化合物を除去したものであって、この場合、非結合型親油性化合物は、非結合型フラボノイド、非結合型イソフラボノイド、非結合型ノルイソプレノイド、非結合型ステロイド、特にアンドロスタンおよぶプレグナンステロイドおよびこれに匹敵する非結合型化合物から成る群からのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウマ結合型エストロゲンの天然混合物を得るための方法に関し、その際、当該混合物は、フェノール性尿成分および非結合型親油性化合物、この場合、これらは、非結合型フラボノイド、非結合型イソフラボノイド、非結合型ノルイソプレノイド、非結合型ステロイド、特にアンドロスタン−およびプレグナン−ステロイドおよびこれらに匹敵する非結合型化合物の群からなる、を除去したものである。
【0002】
エストロゲンは、ホルモン代替療法のための医薬において使用される。特に、エストロゲン混合物は、女性において、自然なまたは人為的な閉経後に生じる更年期障害の治療および予防のために使用されている。これに関連して、結合型エストロゲン天然混合物、たとえば、妊娠した雌馬の尿中に存在するもの(以下、ウマ結合型エストロゲン天然混合物と称する)は、特に有効かつ良好な適合性で作用する。
【0003】
妊娠した雌馬の尿(=妊馬尿、以下PMUと略す)中に溶解している固体含量は、通常は広範囲で可変であり、一般には40〜90g乾燥物質/lである。尿素およびいわゆる通常の尿成分の他に、PMUの固体含量中にはフェノール性成分が、乾燥物質に対して約2〜5体積%の量で含まれる。これらのフェノール性成分としては、クレゾールおよびHPMFとして公知のジヒドロ−3,4−ビス[(3−ヒドロキシフェニル)メチル]−2(3H)−フラノンが存在する。これらは、遊離または結合した形で存在していてもよい。PMU中にエストロゲンの天然混合物が包含される場合には、これらは主に結合した形であり、たとえば、硫酸半エステル−ナトリウム塩(以下、硫酸塩と略す)として存在する。この結合型エストロゲンの含量(エストロゲン硫酸塩として換算)は、乾燥物質に対して0.1〜0.5体積%であってもよい。さらに、PMUの固体含分中において他の親油性化合物が存在していてもよいが、この場合、その量は可変であり、かつ予測できないものである。これらの親油性化合物は、妊馬に飼料として与えられる植物から過剰量で得られるものであって、かつ特に種々のフラボノイド−、イソフラボノイド−、ノル−イソプレノイド−誘導体およびこれに匹敵する化合物、たとえばホルモノネチン、ゲニステイン、ダイドゼイン、ビオカニンA、イクオールおよびクメストロールを含有している。本来植物に由来するこれらの親油性化合物は、尿中で、結合または遊離の形(非結合型)で存在する。これに関連して、PMUの固体含分中に存在していてもよい他の親油性成分としては非結合型ステロイド誘導体が挙げられ、ここでは特にアンドスタン−およびプレグナン−ステロイドが挙げられるが、しかしながらさらに非結合型エストロゲン誘導体が挙げられてもよい。
【0004】
結合型エストロゲン天然混合物を含有するエクストラクトは、通常は、固相−抽出法を用いてか、あるいは、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤を用いての種々の液−液抽出工程をベースとする方法によって得られる。一般に、得られた結合型エストロゲンの天然混合物は、医薬のための作用成分としての使用のために、特定の製薬学的規格を充足するものでなければならず、たとえば、UPS(US薬局方)またはヨーロッパ薬局方で定められた規格に相当することが重要である。したがって、乾燥物質に対する結合型エストロゲンの含量に関しては、定められた極限値を遵守しなければならない。
【0005】
US2552205およびUS2429398に記載されている、PMUから水溶性エストロゲン製剤を製造するための方法は、最初に活性炭または他の適した吸着材料を用いて吸着させることによって、水と混和可能な有機溶剤、たとえばピリジンを用いて溶離させ、その後に溶剤を除去することによって、本来のPMUsの水溶性エストロゲン成分の大部分を含有する水性濃縮物を得ている。US2429398では、濃縮物はベンゼンおよび/またはエーテルでの抽出によってさらに精製されるのに対し、US2552205では、濃縮物をpH値2〜6、好ましくは4〜5に酸性化し、その後に脂肪族、芳香族または脂環式炭化水素(たとえばヘキサン、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン)または塩化炭化水素(たとえばクロロホルム、エチレンジクロリド、トリクロロエチレン、四塩化炭化水素、クロロベンゼン)から成る群からの、水とわずかにのみ混和可能な有機溶剤を用いてすばやく抽出し、望ましくない物質、たとえば脂肪、油、遊離フェノール性成分および非結合型ステロイドを、有機溶剤相中に移行させることによって取り除く。引き続いて水相を中和することにより安定化させる。このUS特許2551205では、得られたエクストラクトを後続の抽出工程および沈殿によってさらに精製することが示されている。最終的に、US2552205に記載された方法を実施することによっては、使用された濃縮物のエストロゲン成分の約80%の収率が達成されるに過ぎない。
【0006】
US2565115では、アセトンを用いての、PMUからの結合エストロゲンの抽出が記載されている。得られたエストロゲン画分の純度に関しては言及されていない。
【0007】
US2696265では、最初にエストロゲンを、脂肪族アルコールまたはケトン、たとえばヘキサノール、シクロヘキサノールまたはシクロヘキサノンを用いて抽出する方法が記載されている。このエストロゲンを有機相中に移行させ、その後、さらに精製し、特に、エストロゲン含有水相を、塩酸を用いてpH値4に調整し、かつエチレンジクロリドで抽出する。
【0008】
US特許2834712では、顕著な純度および低い毒性を有するエストロゲン混合物を製造するための方法が開示されているが、この場合、この方法は、種々の溶剤を用いて、かつ異なるpH値への調整を含む、多数の独立した抽出工程をベースとする。その際、多量の溶剤、たとえばヘキサンおよびベンゼンの使用が必要とされる。したがって、たとえば一つの工程で、予め精製された濃縮物を水中で溶解し、塩酸を用いてpH値を約5に調整し、かつベンゼンを用いて、その後にエーテルを用いて調整することによって、フェノール性成分を除去する。
【0009】
国際特許出願WO01/27134では、PMUから結合型エストロゲンを抽出するための、比較可能な単一工程による方法が記載されており、この場合、この方法は、塩、たとえば塩化ナトリウムの添加後に、少なくとも同量の有機溶剤、たとえば酢酸エチルを用いて抽出し、その際、結合型エストロゲンを有機相中に移行させる。有機相を取り出し、乾燥させ、エクストラクトを得る。WO01/27134では、結合型エストロゲンの得られたエクストラクトの純度については言及されていない。
【0010】
しかしながら、前記に記載され、かつ技術水準から公知の液−液−抽出方法の場合には多くの問題、たとえば、強い気泡形成、沈殿物形成、エマルション形成および劣悪な相分離生じうる。一般的な多段階の抽出工程では、エストロゲン含量の損失および一部の獲得のみであることは避けられない。さらに、これらの抽出方法は、部分的に健康上害のある溶剤を多量に必要とする。さらに、前記特許文献においては、非結合型親油性成分、たとえば非結合型フラボノイド、イソフラボノイド、ノルイソプレノイド−誘導体および比較可能な非結合型化合物、あるいはさらには非結合型ステロイド、特にアンドロスタン−およびプレグナン−ステロイドの得られた生成物中での含量についての記載もなければ、これらの成分の分離についての記載もないものである。これら技術水準から公知の方法は、乾燥物質に対して得られた全ホルモン含量を測定し、得られたエクストラクトの収率または純度に関して十分な結果を提供しないものであるか、あるいは、多数の異なる工程および有機性溶剤を使用し、かつ、いわゆる毒性の点において望ましくない溶剤を多量に使用することに基づく方法である。
【0011】
さらに技術水準から、種々の固相−抽出方法により、フェノール性尿成分に対して十分な、精製された、結合型ウマエストロゲンの天然の混合物を得ることが知られている。
【0012】
したがって、国際特許出願WO98/08526には、半極性の、特に非イオン性の半極性のポリマー吸着樹脂による固相−抽出で、フェノール性尿含有材料が除去された、ほぼクレゾール−およびHPMF不含のPMUを、実際に完全に含有する混合物の天然エストロゲン含分を獲得する方法が記載されている。国際特許出願WO98/08526でも同様の方法が記載されており、この場合、この方法は、固相抽出の際にシリカゲルを吸着剤として使用するものである。さらに中国特許出願CN1308083でも、比較可能な方法が記載されており、この場合、この方法は、シアノ基含有極性吸着樹脂を使用するものである。さらに、US特許出願US2002/0156303では、ポリスチレン吸着樹脂による精製前に、PMUを先ずアルカリ性溶剤で処理し、かつ、濾過することによって前精製する。このようにして得られたエクストラクトは、PMUから、結合型エストロゲン天然混合物を作用成分として含有する医薬を製造するための出発材料として適している。
【0013】
要求される製薬学的規格上の条件、たとえば乾燥物質に対する結合型エストロゲンの含量に関して維持されるべき極限値は、通常は、WO98/08526の方法またはWO98/08525の方法によってPMUから得られた結合型エストロゲン混合物により充足される。特に、ここで開示された方法を用いた場合には、フェノール性尿成分は除去され、ほぼクレゾールおよびHPMF不含の生成物を得ることができる。しかしながら、これは、結合型エストロゲンの望ましい含分の他に、さらに非結合型親油性化合物を、得られた乾燥物質中に含有していることに注意すべきである。非結合型親油性化合物としては、たとえば種々の非結合型フラボノイド−、イソフラボノイド−、ノルイソプレノイド−誘導体およびこれに匹敵する非結合型化合物、たとえばホルモノチン(Formononetin)、ゲニステイン(Genistein)、ダイドゼイン(Daidzein)、ビオカニンA(Biocganin A)、エキオール(Equol)およびクメストロール(Coumestrol)のみならず、さらに非結合型ステロイド、特にアンドロスタン−およびプレグナン−ステロイドおよび非結合型エストロゲンであるが、これらの列挙以外を排除するものではない。これらの非結合型親油性化合物の存在は、PMUから得られた結合型エストロゲン混合物を規格化するものではなくて、遊離および結合型親油性化合物のその含量および組成は、たとえば妊馬の摂取した飼料に依存して可変である。
【0014】
確かに付加的な非結合型親油性化合物の存在によって結合ウマエストロゲンの天然の混合物の組成が変化するものではないが、しかし乾燥物質に対する結合ウマエストロゲンの含量を減少しうるものである。非結合型親油性構成部分の徹底した除去によって、作用物質、たとえば結合型ウマエストロゲンの高い濃度を、得られるエクストラクト中で達成することができる。さらに、非結合型親油性化合物の除去は、個々のエクストラクト装入」物の一定の組成を保証するものであって、それというのも、PMU中における非結合型親油性成分の含量および組成は、妊馬の摂取する飼料の季節的変化に依存して変動しうるためであり、これによって得られたエクストラクトは、それぞれ乾燥物質に対して比較可能な量の結合ウマエストロゲンを有する。さらに、非結合型親油性化合物の除去は、一定の生理学的作用スペクトルを達成するのに有利である。たとえば、場合によって存在する非結型親油性化合物の、固有の生理学的作用を有しうるもの自体を、結合型ウマエストロゲンの天然混合物から除去することは有利であってもよい。
【0015】
望ましくない非結合型親油性化合物を除去するために、前記公知の固相−抽出法を用いて得られた結合ウマエストロゲンの天然混合物を、別個の液−液抽出に、適した有機溶剤を用いて混合し、望ましくない非結合型親油性化合物を、結合ウマエストロゲンの損失を生じることなく抽出することが可能である。このような方法は、一般には、係属中の国際特許出願PCT/EP03/50703に記載されている。
【0016】
本発明は、ウマ結合型エストロゲン天然混合物を得るための技術的および経済的に最適化された方法の開発を目的とするものであり、この場合、この混合物は、フェノール性尿成分と同様に非結合型親油性化合物、特に非結合型フラボノイド−、イソフラボノイド−およびノルイソプレノイド−誘導体をほぼ排除したものである。特に本発明の目的は、すでに公知の方法と比較して結合ウマエストロゲンの天然混合物を、付加的な処理工程を必要とすることなく製造することである。本発明の目的は、フェノール性尿成分ならびに非結合型親油性化合物を、固相−抽出の実施下で除去する方法によって達成される。さらに方法は、専ら少ない工程に基づいて、結合型ウマエストロゲンのエクストラクトを提供することが可能であって、この場合、これらのエクストラクトは、乾燥物質に対して結合型エストロゲンのかなり高い含量を有する。さらに、本発明による方法を用いた場合には、尿が変化する、場合によっては多量の非結合型親油性化合物を含有する場合であっても、単一工程で、妊馬尿から結合型エストロゲン天然混合物を得ることが可能である。本発明の目的は、固相抽出のための最適化された方法を提供することであり、この方法によって得られたウマ結合型エストロゲン天然混合物は、良好な作用物質含量を有し、かつ定められた製薬学的規格を充足するものであって、特に、乾燥物質に対する結合型エストロゲンの含量に関して必須の極限値を遵守するものである。
【0017】
驚くべきことに、単一工程でフェノール性尿成分を除去し、ほぼクレゾール−およびHPMF−不含のウマ結合型エストロゲン混合物をPMUから獲得可能であることが見いだされ、この場合、この方法は同時に、PMUが変化する、場合によっては多量の非結合型親油性化合物を有する場合であっても、非結合型親油性化合物、特に非結合型フラボノイド−、イソフラボノイド−およびノルイソプレノイド−誘導体をほぼ除去するものである。
【0018】
本発明による方法は、WO98/08526に記載された方法の本質的な工程を基礎とするものであって、この場合、この方法は、PMUから、フェノール性尿成分を除去した結合型エストロゲン天然混合物を得るためのものである。さらに本発明による方法は、国際特許出願WO03/048183に記載された方法を基礎とするものであって、この場合、この方法は、場合により多量の遊離エストロゲンを含有する変性したPMUを使用する際であっても、定められた製薬学的規格を充足する結合型エストロゲンの天然混合物を得ることが可能であるものである。
【0019】
したがって、本発明による方法は、結合型エストロゲンの天然混合物を、妊馬尿から得るための方法に関し、この場合、この方法は、
a)尿液、この場合、これは、場合により粘液−および固体物質を排除した尿の液体であって、この尿液の濃縮物またはこれらの尿液の膜濾過によって得られた濃縮された尿残留液(retentate)を示すものを、尿液中に含まれる結合型エストロゲン混合物の吸着に十分な量のポリマー吸着樹脂と接触させ、かつ結合型エストロゲン混合物を負荷したポリマー吸着樹脂を、残りの尿液から分離し、かつ、
b)結合型エストロゲン混合物を負荷したポリマー吸着樹脂を、少なくとも12.0、特に12.5〜14.0のpH値に調整した洗浄水で洗浄し、かつ
c)場合によっては中間洗浄(Zwischenwaesche)をおこない、その際、結合型エストロゲンの混合物を負荷したポリマー吸着樹脂を、水で洗浄し、かつ
d)洗浄した吸着樹脂を、これに吸着した結合型エストロゲン混合物を脱着させるのに十分な量の溶離液と接触させ、かつ
e)結合型エストロゲンの天然混合物を含有する溶離液を、吸着樹脂から分離し、かつ場合によっては濃縮する工程を含み、その際、本発明による方法は、
得られたウマ結合型エストロゲン天然混合物が、フェノール性尿成分および非結合型親油性化合物をほぼ排除したものであり、この場合、この非結合型親油性化合物は、非結合型フラボノイド、非結合型イソフラボノイド、非結合型ノルイソプレノイド、非結合型ステロイド、特にアンドロスタン−およびプレグナン−ステロイドおよびこれに匹敵する非結合型化合物から成る群からのものであり、
工程(d)中の溶離液として、
(i)水、この場合、場合によってはアルカリの範囲にpH値を調整されたもの、および、
(ii)前記の群からの非結合型親油性化合物の溶離に適した、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤少なくとも1種、
および場合によっては、
(iii)水と混和可能なエーテル、低分子量アルカノールおよび低分子量脂肪族ケトン、ならびに前記溶剤の混合物から成る群から選択された水と混和可能な有機溶剤少なくとも1種
とを含む単相または二相の混合物を使用すること、ならびに、
工程e)中で得られた、場合によっては濃縮された溶離液が二相混合物を示す場合には、得られた二相から成る溶離液から水相を分離し、結合型エストロゲン天然混合物を含有する水相を得て、かつ場合によってはこれらを濃縮すること、
により、技術水準の方法とは明らかに区別される。
【0020】
公知方法の工程a)、b)、d)およびe)の導入方法ならびに工程e)中で得られた溶離物の使用、この場合、溶離物は天然の結合型エストロゲン混合物を含有する、については、一般にはすでに国際特許出願WO98/08526で工程a)、b)およびc)として記載されており、したがってこの公開された特許出願により当業者には周知である。本発明の公知方法の工程c)は、一般には国際特許出願WO03/048183で「中間洗浄」として記載されており、したがってこの公開された特許出願により当業者には周知である。これらWO98/08526およびWO03/048183の内容は、さらに本願の対象を開示する目的に適している。さらに一般的な方法および使用された材料の詳細については、本願実施例において示す。
【0021】
たとえば、WO98/08526によれば、半極性の、特に非イオン性の半極性吸着樹脂を使用することができる。さらに、本発明の方法によれば、驚くべきことに、さらに他の吸着樹脂と、本発明の方法とを一緒に、生成物の質および保持されるべき製薬学的規格に影響を与えることなく使用することが可能である。したがって、本発明の範囲内において、ポリマー吸着体樹脂とは、本発明による方法のための吸着体として使用するのに適したものである。本発明の範囲内で使用可能なポリマー吸着体樹脂は、明細書中の実施例においてさらに説明される。
【0022】
本発明によれば、本発明による方法を用いて天然のウマ結合型エストロゲン混合物が得られ、この場合、これらの混合物は、フェノール性尿成分、たとえばクレゾールおよびHPMF、さらには非結合型フラボノイド、非結合型イソフラボノイド、非結合型ノルイソプレノイド、非結合型ステロイド、特にアンドロスタン−およびプレグナン−ステロイドならびに匹敵する非結合型化合物から成る群からの非結合型親油性化合物を除去したものである。
【0023】
公知方法の工程(a)〜(c)を実施した後に、洗浄された、結合型エストロゲンが負荷された吸着樹脂を、結合型エストロゲン混合物の溶離に十分な量の溶離液で処理する。本発明によれば、さらに溶離液として工程(d)中で、単相または二相−混合物を使用すること可能であり、この場合、これらは、
(i)水、この場合、場合によってはアルカリの範囲にpH値を調整したものであり、かつ、
(ii)非結合型親油性化合物の溶離に適した、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤少なくとも1種、この場合、非結合型親油性化合物は、非結合型フラボノイド、非結合型イソフラボノイド、非結合型ノルフラボノイド、非結合型ステロイド、特にアンドスタン−およびプレグナン−ステロイド、ならびに匹敵する非結合型化合物から成る群からのものであり、かつ場合によっては、
(iii)水と混和可能な有機溶剤少なくとも1種、この場合、これらは水と混和可能なエーテル、低分子量アルカノールおよび低分子量脂肪族ケトンならびに前記溶剤の混合物から成る群から選択されたものである、
を含有する。
【0024】
本発明の好ましい実施態様において、溶離液として工程(d)で単相−または二相混合物を使用し、この場合、これらは、
(i)水、この場合、場合によってはアルカリの範囲にpH値を調整したものであり、
(ii)非結合型親油性化合物の溶離に適した水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤少なくとも1種、この場合、この非結合型親油性化合物は、非結合型フラボノイド、非結合型イソフラボノイド、非結合型ノルイソプレノイド、非結合型ステロイド、特にアンドスタン−およびプレグナン−ステロイドおよびこれに匹敵する非結合型化合物から成る群からのものであり、および場合によっては、
(iii)水と混和可能な有機溶剤少なくとも1種、この場合、これらは水と混和可能なエーテル、低分子量アルカノールおよび低分子量脂肪族ケトンならびに前記溶剤の混合物から成る群から選択されたものである、を含有する。
【0025】
溶離液として工程(d)中で使用する単相−または二相混合物は、水(i)を含有し、この場合、この水は場合によってはアルカリの範囲にpH値が調整されたものである。
【0026】
工程(d)で使用される溶離液が単相混合物である場合には、このような水含有溶離液のpH値は、中性からpH13までのアルカリの範囲であってもよく、かつ有利にはpH7〜10の範囲であってもよい。水含有溶離液中の溶剤成分としては、使用されるpH値において安定な有機溶剤が選択される。水を含有する単相の溶離液の好ましいpH値は、水溶性の不活性塩基物質、好ましくは無機塩基、たとえばアルカリ金属−またはアルカリ土類金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムの相当する量を添加することによって調整する。
【0027】
工程(d)で使用される溶離液が二相混合物である場合には、このような溶離液の水相のpH値は、双方の相を十分に混合した後に中性からpH13までのアルカリの範囲であり、かつ有利には、pH7〜10の範囲であってもよい。このような二相の溶離液の水相が有機溶剤成分を含有する場合には、溶剤成分として、使用されたpH値の範囲で安定な有機溶剤を選択する。二相の溶離液の水相の好ましいpH値は、水溶性の不活性塩基物質、好ましくは無機塩基、たとえばアルカリ金属−アルカリ土類金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムの相当する量を添加することによって調整する。
【0028】
場合によってはアルカリに調整された水(i)に加えて、溶離液として工程(d)中で使用された単相または二相の混合物は、非結合型親油性化合物の溶離に適した有機溶剤(ii)を含有し、この場合、これらの非結合型親油性化合物とは、非結合型フラボノイド、非結合型イソフラボノイド、非結合型ノルイソプレノイド、非結合型ステロイド、特にアンドロスタン−およびプレグナン−ステロイドおよび比較可能な非結合型化合物から成る群からのものである。さらに、前記適した有機溶剤(ii)は、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能なものであるが、その際、わずかに混和可能とは、水相中で最大6体積%の溶解した有機溶剤が存在することを意味するものである。本発明による方法の範囲内で、非結合型親油性化合物に適した有機溶剤(ii)は、たとえば1〜10個の炭素原子を有する以下の有機溶剤を示すものであり、この場合、これらは直鎖、分枝または環式であってもよい;C〜C10−アルコール(たとえばブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールおよびペンタノール)、C〜C10−エステル化された酸(たとえば酢酸エチル(=酢酸エチルエステル)、酢酸メチル、酢酸プロピル、イソプロピルアセテート(=酢酸−イソプロピル−エステル)、酢酸ブチル、アミルアセテート、エチルメチルマロネート、ジメチルホスホネート)、C〜C10アルデヒドおよびC〜C10ケトン(たとえばブタノン、ペンタノン、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘキサンジアル、シクロヘキサンカルボアルデヒド、ブタン−1,2,4−トリカルボアルデヒド、メチルフェニルケトン等)または、一般にはC〜C10アルコキシ−化合物、C〜C10エーテル(ジエチルエーテル、メチルtert.−ブチルエーテル)、C〜CニトリルおよびC〜Cハロゲンアルカン(塩化メチレン)ならびに前記溶剤の混合物。特に、酢酸−C〜C−アルキルエステル、ブタノール、シクロヘキサノール、ヘキサノール、ジエチルエーテル、メチレンクロリド、メチル−tert.−ブチルエーテルおよび前記溶剤の混合物を、非結合型親油性化合物の溶離に適した、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)として、本発明の範囲内において使用することができる。これらのうち、好ましくは、酢酸−C〜C−アルキルエステル、および特に酢酸エチルエステル(=酢酸エチル)および/または酢酸−イソプロピル−エステル(=イソプロピルアセテート)を、非結合型親油性化合物の溶離のために適した水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)として、本発明の範囲内で使用する。
【0029】
さらに本発明によれば、工程(d)中の溶離液として、場合によっては少なくとも1種の水と混和可能な有機溶剤(iii)であって、この場合、これらは、水と混和可能なエーテル、低分子量アルカノールおよび低分子量脂肪族ケトン、ならびに前記溶剤の混合物から成る群から選択された水と混和可能な有機溶剤の単相または二相−混合物を使用することができる。溶離液のエーテル成分としては、水と混和可能な環式エーテル、たとえばテトラヒドロフランまたはジオキサンのみならず、さらには水と混和可能な開環エーテル、たとえばエチレングリコジメチルエーテル(=モノグリン)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(=ジグリン)またはエチルオキシエチルオキシエタノール(=カルビトール)が適している。低分子量アルカノールとしては1〜4個、好ましくは1〜3個の炭化水素を含有する水と混和可能なアルキルアルコール、特にエタノールまたはイソプロパノールが適している。低分子量脂肪族ケトンとしては、3〜5個の炭化水素を有する水と混和可能なケトンであり、特にアセトンが適している。他の溶離液として特に有利であるのは、水と混和可能な有機溶剤(iii)のうち、アセトン、エタノールまたはアセトンとエタノールとの混合物である。
【0030】
本発明の特に好ましい実施態様において、工程(d)中の溶離液としての使用が見いだされた単相−または二相混合物は、場合によってはアルカリの範囲に調整された水(i)以外に、非結合型親油性化合物の溶離に適した水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)である酢酸−C〜C−アルキルエステル、好ましくは酢酸エチルエステルおよび/または酢酸−イソプロピル−エステルならびに水と混和可能な有機溶剤(iii)であるアセトンおよび/またはエタノールを含有する。
【0031】
本発明の他の好ましい実施態様において、工程(d)中の溶離液としての使用が見いだされた単相−または二相混合物は、場合によってはアルカリの範囲に調整された水(i)以外に、非結合型親油性化合物の溶離に適した水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)である酢酸エチルエステルならびに水と混和可能な有機溶剤(iii)であるアセトンを含有する。
【0032】
本発明による工程(d)中の溶離液としての使用が見いだされた単相−または二相混合物は、水(i)と水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)との体積比5:1〜1:5の範囲で有していてもよく、好ましくは2:1〜1:2の範囲であってもよい。
【0033】
さらに工程(d)中で溶離液としての使用が見いだされた単相−または二相混合物は、水(i)と水と混和可能な有機溶剤(iii)との体積比4:1〜1:5の範囲で有していてもよく、好ましくは2:1〜1:3の範囲であってもよい。
【0034】
特に、工程(d)中で溶離液としての使用が見いだされた単相−または二相混合物は、水(i)および水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)の合計と、水と混和可能な有機溶剤(iii)との体積比5:1〜1:5を有していてもよく、好ましくは2:1〜1:2の範囲であってもよい。
【0035】
本発明の特に好ましい実施態様において、工程(d)中で溶離液として単相−または二相混合物を使用する場合には、これは(i)水、(ii)水と混和しないかまたは水とわずかにのみ混和可能な有機溶剤として酢酸−C〜C−アルキルエステル、好ましくは酢酸エチルエステルおよび/または酢酸−イソプロピル−エステル、および(iii)水と混和可能な有機溶剤としてアセトンおよび/またはエタノールから、1:1:1〜1:1:2の範囲の体積比で構成されている。特に工程(d)中で溶離液としての単相混合物を使用する場合には、これらは、(i)水、(ii)水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤としての酢酸エチルエステル、および(iii)水と混和可能な有機溶剤としてのアセトンから、1:1:1.4の体積比で構成されている。
【0036】
工程(d)中で溶離液として二相混合物を使用する場合には、この2個の相はカラムへ直接的に装填する前に、良好に混合することが好ましい。
【0037】
溶離液の使用される量は、ポリマー吸着樹脂の床体積当たり約3〜10、好ましくは4〜6床体積である。好ましくは、溶離液を、エストロゲン混合物が負荷された吸着樹脂を含む反応器に、その接触時間が結合型エストロゲン混合物を完全に溶離するために十分である程度の通過速度で導いた。水、酢酸エチルエステルおよびアセトンを10:10:14の体積比で含有する単相混合物は、たとえば、3〜10、好ましくは5〜7体積−部(Vol.-Teilen)溶離液/1体積−部吸着樹脂/時間の通過速度が適している。有利には、溶離は約20℃〜約80℃、好ましくは約30℃〜50℃の温度範囲で実施する。好ましい場合には、通過速度は、わずかに圧力を高めることによって、たとえば0.2バールまでの過圧により調整され、かつ溶離液を複数のフラクション中に収容する。
【0038】
結合型エストロゲン、フェノール性尿成分、たとえばクレゾールおよびHPMFおよび非結合型親油性化合物のそれぞれの溶離画分の内容については、公知方法で、高速クロマトグラフィー(=高性能液体クロマトグラフィー、HPLCと略す)またはガスクロマトグラフィー(GCと略す)によって測定することができる。
【0039】
溶離の際に、工程e)において、最初にわずかに着色〜無色の、実質的にエストロゲン不含の前留出物が得られ、その量は、一般には約1床体積量に相当する。結合型エストロゲンの主要量、たとえば、出発材料PMU中に存在する結合型エストロゲンの80〜90%の量は、後続の濃黄色〜褐色に着色された主要溶離画分中に存在し、一般には2〜4床体積に相当する。後留出物においては、一般にはわずかな量の結合型エストロゲンを含有するにすぎない。後留出物が、乾燥物質に対して10体積%を上廻る結合型エストロゲン含量および乾燥物質に対して0.6体積%を下廻るクレゾールおよびHPMFの量を含有する場合には、これらを、エストロゲンを多く含む主要溶離液と一緒に、後処理することで精製することができる。
【0040】
工程(e)で得られる溶離液は、単相−または二相混合物であってもよい。さらに単相混合物を溶離液として使用する場合には、溶離前に、吸着樹脂上に存在する水をカラムから排除し、これによって得られる溶離液の水相と有機相との体積比の相違は、二相から構成される。好ましい場合には、工程(e)で得られた単相−または二相の溶離液を、公知方法でさらに濃縮することができる。特に、工程(e)中で得られた溶離液が単相である場合には、溶離液を濃縮し、好ましくは濃縮された溶離液が二相を生じるまで、水と混和可能な有機溶剤(iii)を分離除去する。
【0041】
本発明によれば、工程(e)中で得られ、場合によって濃縮された溶離液が二相混合物である場合には、工程(f)において、得られた水相を、二相から成る溶離液から分離し、かつ結合型エストロゲンの天然混合物を含有する水相を得る。さらに得られた二相溶離液を、相分離を達成するために放置する。相分離は、得られた体積に応じて10分〜24時間、好ましくは5〜110時間に亘って相を放置することで達成する。水相と有機相が互いに分離した際に水相を除去し、かつ有機相を排除する一方で、さらなる使用のために取り出す。
【0042】
水相から有機相を分離することによって、工程(f)中で結合型エストロゲンの天然混合物を含有する水相が得られる。これらの水相は、PMU中で生じる結合型エストロゲンの天然混合物に加えて、わずかな量ではあるが本来PMU中に存在するフェノール性尿成分、たとえばクレゾールおよびHPMFの含分ならびにさらにわずかな量ではあるが、本来PMU中に存在する非結合型親油性成分の含分を含有する。好ましい場合には、これらの水相を公知方法でさらに濃縮し、ほぼ有機溶剤を排除し、後処理に適した濃縮物を達成する。したがって、たとえば得られた水相からなおも存在する有機溶剤の残量を留去する。蒸留によってさらに水性エクストラクト相の乾燥物質含量は、具体的な値に、好ましくは5〜15%の範囲、特に好ましくは9%の乾燥物質含量に調整することができる。引き続いて、得られたウマ結合型エストロゲン天然混合物を安定化するために、さらに、エクストラクト水溶液のpH値をアルカリの範囲内に、好ましくは8〜13の範囲内、さらに好ましくは9〜12の範囲内に調整することができる。pH値の調整には、通常は、pH値調整に使用される塩基、たとえば1N NaOHまたはNaCOが適している。
【0043】
本発明による工程(f)で得られ、かつ場合によっては、さらに後処理されるか、あるいは、濃縮された水相を、ウマ結合型エストロゲン天然混合物を含有する医薬を製造するための出発材料として使用することができる。好ましい場合には、適した乾燥工程によって、たとえば噴霧乾燥または流動床乾燥器によって、溶離剤不含の固体材料混合物を製造することができる。固体の医薬を製造するために結合型エストロゲンの天然混合物を使用する場合には、好ましくは、結合エストロゲン含有水相に、固体の担持材料を、予め濃縮または乾燥前に混合してもよく、それによって、これらの方法で結合型エストロゲンおよび担持材料を含有する固体材料混合物を得ることができる。たとえば、結合型エストロゲン含有水相を、流動床中で、固体担持材料、たとえばセルロース上に噴霧することができる。エストロゲン混合物含有水相と同様にこれから製造された濃縮物または乾燥された固体生成物も、公知方法で、固体または液体のガレン製剤、たとえば、錠剤、糖衣丸、カプセル剤またはエマルション剤の形にすることができる。これらのガレン製剤は、公知方法によって常用の固体または液体担持材料、たとえばデンプン、セルロース、乳糖またはタルクまたは流動パラフィンの使用下で、および/または、通常の製薬学的助剤、たとえば錠剤崩壊剤、溶解助剤または保存剤の使用下で製造することができる。したがって、結合型エストロゲン含有生成物と、製薬学的担持材料および助剤を、公知方法で混合し、かつこの混合物を適した剤形に成形することができる。
【0044】
本発明によって記載された固相−抽出方法は、場合によっては粘液−および固体材料不含の尿液から、これらの尿液の濃縮された濃縮物であるか、あるいは、これらの尿液の膜濾過によって得られた濃縮された尿残留液を得て、結合型ウマエストロゲンの天然混合物を獲得するものであって、その際、混合物は、単一工程で、フェノール性尿成分、たとえば特にクレゾールおよびHPMF、ならびに複数種の非結合型親油性化合物をほぼ除去されたものである。除去された非結合型親油性化合物は、特に、非結合型フラボノイド、非結合型イソフラボノイド、非結合型ノルイソプレノイドおよび非結合型ステロイド、特に非結合型アンドロスタン−非結合型プレグナン−誘導体である。
【0045】
公知の固相−抽出方法とは対照的に、本発明による固相−抽出方法は、ウマ結合型エストロゲン天然混合物を提供し、この場合、これらは、フェノール性尿成分ならびに非結合型親油性化合物をほぼ除去するものであって、その際、本発明による方法は付加的な処理工程なく実施され、それというのも、非結合型親油性化合物の除去は、すでに固相抽出において実施されるためである。
【0046】
WO98/08526から公知の方法において、非結合型親油性化合物、たとえばイソフラバンエキオールの一部を、工程b)で取り除き、その一方で非結合型親油性化合物、たとえばホルモノネチンは、溶離液中に負荷され、かつ場合によっては後続の液−液抽出によって排除しなければならない。非結合型、すなわち遊離のステロイドホルモンが同様に挙げられるが、これらも同様に溶離液中で、ある程度の量で検出される。したがって、ポリマー吸着樹脂上に吸着された結合型エストロゲンの定量的溶離のために、水、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤、ならびに場合によっては水と混和可能な有機溶剤、たとえば、低分子量エーテル、アルカノールまたはケトンからの、単相−または二相混合物を使用することが可能であり、かつ、得られ場合によっては濃縮された溶離液を二相に分離させ、その際、−定量的に溶離した−結合型エストロゲンは、ほぼ引き続いて、水相中でさらに見られ、その一方で、好ましくない非結合型親油性化合物は有機相中に存在し、したがって容易に分離することができることは、驚くべきことである。
【0047】
さらに本発明による方法は、ウマ結合型エストロゲンのエクストラクトを提供し、この場合、これらは、乾燥物質に対して相当高い量の結合型エストロゲン含量を有する。したがって、本発明による方法を用いた場合には、尿が可変量、場合によっては多量の非結合型親油性化合物を含有する場合であっても、固相抽出に引き続いての精製工程を実施することなく、単一工程で、妊馬尿から結合型エストロゲン天然混合物を得ることが可能である。
【0048】
本発明による方法によって、作用物質−エクストラクトとして得られ、非結合型親油性成分およびフェノール性尿含有材料を排除した結合型ウマエストロゲン天然混合物は、公知の固相抽出方法によって得られた作用物質エクストラクトと比較して、本発明によって確認されているように、製薬学的規格に顕著に最適化されていることで優れている。
【0049】
驚くべきことに、すでに公知の固相−抽出法の本発明による改変によって、結合型エストロゲン天然混合物を提供する妊馬尿が、種々のかつ可変量の非結合型親油性成分を含有する場合であっても、得られる作用物質エクストラクトのこのような定量的改善がもたらされることが示された。特に驚くべきことに、使用されるPMUに依存して、量的ならびにその組成において顕著に可変である非結合型親油性化合物の量は、本発明の方法による工程f)で水相として結合型ウマエストロゲン天然混合物を含有することができることによって減少させることが可能であり、この場合、これらは、製薬学的規格に関する高い要求、たとえばUSPまたはヨーロッパ薬局方で規定された条件を充足するものである。
【0050】
本発明による方法は、すでに詳細に説明したように、技術水準に対する利点および改善を提供するものである。したがって本発明は、さらに可変量の非結合型親油性成分、たとえば多量の遊離フラボノイド、遊離イソフラボノイド、遊離ノルイソプレノイドまたは遊離ステロイド誘導体、ここでは特に遊離アンドスタン−またはプレグナン−ステロイドを含有するPMUを、遵守すべき製薬学的規格を逸脱することなく使用することを可能にする。その際、本発明による方法は、公知の固相抽出方法を基礎とするものであるが、しかしながら、驚くべきことに、さらなる抽出工程を有することなく実施することができる。したがって、本発明による方法を用いて、単一のエクストラクト導入物の一定の組成を保証することが可能であり、それというのも、非結合型親油性成分、PMU中でのその含量および組成は、妊馬の摂取した飼料の種類に依存して可変であってもよく、常に排除し、それによって得られたエクストラクトは、それぞれ、乾燥物質に対して匹敵する量のウマ結合型エストロゲンを有するためである。さらに本発明による方法を用いて、フェノール性尿成分ばかりでなく、特に非結合型親油性成分の徹底的な分離によって、単一の処理方法で、得られたエクストラクト中での作用物質、すなわちウマ結合型エストロゲンの高い濃度を達成した。本発明による方法は、付加的に経済的な利点を示し、それというのも、リスクのある、有益な作用物質の製薬学的規格の不遵守、たとえば、乾燥物質に対して十分でない結合型エストロゲン含量といった製薬学的規格の不遵守を、明らかに減少させるためである。さらに、本発明による方法を使用することによって、得られたエクストラクトの作用物質含量の本質的に正確かつ再現可能な調製を可能にする。これらの作用成分は、作用物質として、天然の結合型ウマエストロゲン混合物を含有する医薬を製造するのに極めて適している。
【0051】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであるが、これに制限されるものではない。
【0052】
実施例
以下の実施例では、PMUからの作用物質エクストラクトを得るための一般的実施方法を述べ、この場合、これらのエクストラクトは、PMU中に含まれる結合型エストロゲン天然混合物を含有し、かつ、フェノール性尿成分、たとえばクレゾールまたはHPMFならびに非結合型親油性化合物、たとえば非結合型フラボノイド、非結合型イソフラボノイド、非結合型ノルプレノイド、非結合型ステロイド、特にアンドロスタン−およびプレグナン−ステロイドならびにこれに匹敵する非結合型化合物をほぼ排除したものである。さらに本発明によれば、可変量または多量の非結合型親油性化合物を含有しうるPMUからであっても、高い作用物質含量を有する高品質なエクストラクトを得ることを示す。
【0053】
尿液:
本発明による方法のために、尿液ならびにWO98/08526により尿液として、PMU自体、PMUからの濃縮によって得られた濃縮物またはPMUから濾過によってか、あるいは匹敵する方法で予め精製された濃縮物を使用することができる。集められた尿(PMU)は、先ず公知の方法で粘液または固体物質を除去する。有利には、固体物質および粘液物質を沈殿させ、その後にこれを公知の分離方法、たとえば、デカンテーション、セパレーションおよび/または濾過によって分離する。これに関連してPMUを、たとえば、公知の分離装置、たとえばセパレーター、濾過装置または沈降装置に導く。分離装置として、たとえば砂床を使用するか、あるいは市販の分離体、たとえばノズル型分離器、チャンバー型分離器を使用することができる。好ましい場合には、さらに精密濾過装置または限外濾過装置を使用することができ、これを使用する場合には、濾過されたPMUはほぼ病原菌およびウイルス不含にすることが可能である。
【0054】
場合によっては、尿または尿濃縮物に、保存剤、抗かび剤、抗細菌剤および/または抗寄生虫剤を添加することができる。
【0055】
予め精製された尿濃縮物として、さらに濃縮されたPMU残留液を使用することもでき、この場合、これらはPMUから公知の膜濾過によって得ることが可能である。残留液の固体含量およびその組成は、使用されたPMUおよび膜濾過に使用される膜、たとえばその孔径に応じて、ならびに濾過条件によって可変であってもよい。たとえば、ナノフィルターメンブレンを使用する場合には、PMU残留液中のエストロゲン含分のほぼ損失のない濃縮物が、低分子量PMU成分の50質量%までを同時に除去することによって、達成することができる。本発明による方法にPMU残留液を使用することが可能であり、この場合、これらは、約1:10の比、たとえば約1:7の比にまで濃縮し、したがってその体積を本来のPMU体積の約1/10、たとえば1/7に濃縮することができる。
【0056】
吸着樹脂:
工程a)中で使用可能なポリマー樹脂は、WO98/08526による半極性の、特に非イオン性の半極性ポリマー吸着樹脂である。本発明による方法において、吸着体として使用可能なポリマー吸着樹脂は、好ましくは、有孔の有機性非イオン性ポリマーであり、この場合、これらは、無極性疎水性ポリマー吸着樹脂とは対照的に、中間の極性(=たとえば樹脂の活性表面の双極性を有する、1.0〜3.0、特に1,5〜2.0デバイ)およびやや親水性の構造を有するものであって、たとえばポリカルボン酸エステル樹脂である。有利には、マクロ孔を有する半極性樹脂は、好ましくはマクロ孔質構造および50〜150、好ましくは70〜100オングストロームの範囲の平均孔直径および300〜900、好ましくは400〜500m/gの範囲の比表面積を有するものを使用する。特に好ましくは、マクロ孔を有する架橋性脂肪族ポリカルボン酸エステル樹脂、特に架橋性ポリアクリルエステル樹脂、たとえばAmberlite XAD-7(Typ HP)(Rohm and Haas社)が適しており、この場合、これは非イオン性の半極性吸着樹脂を示す。
【0057】
好ましくは挙げられた吸着体に加えて、他の吸着体樹脂を使用することができる。その際、吸着体樹脂としては、無極性、半極性およびさらには極性の吸着体樹脂が適している。尿の量は、この場合、吸着体上にポンプによって導入されるが、これに関しては、それぞれ吸着体容量として予め定めるべきである。使用可能な吸着体樹脂に関する例としては、市販の型の、たとえばポリマー Amberlite吸着体、この場合、これらはスチレンジビニルベンゼン基本骨格を有するもの(たとえば、型XAD−1180、XAD−2、XAD−16)、アクリルエステル基本骨格を有するもの(たとえば、XAD−7)または窒素および酸素を含有する高い極性の基本骨格を有するもの(たとえば、XAD−12)である。他の吸着体樹脂としては、Dowex−樹脂(スチレンおよびジビニルベンゼンからなるコポリマー)、たとえばDowex112、Dowex Optipore、Dowex Optipore V493;Lewatite(架橋性ポリスチレン)、たとえばLewatit OC 1064、Lewatit OC 1066またはLewatit OC 1163、ポリアミンアニオン交換樹脂、たとえばDowex-樹脂である。有利な吸着体樹脂は、特にXAD-7(Typ HP)、XAD-16(Typ HP)、XAD118およびDowex Optiporeであり、好ましくはDowex Optipore V493ならびにLewatite OC 1064、OC1066およびOC1163である。
【0058】
工程a):
ポリマー吸着体樹脂への結合型エストロゲンの吸着は、WO98/08526によれば、さらには本発明による方法において、場合によっては精製されたPMUまたはこれらの残留液と、吸着体樹脂との接触をおこない、その際、吸着体樹脂を含む反応器中に尿液を導入し、かつここで、エストロゲン含分を吸着するために十分な時間に亘って、吸着体樹脂と接触させた。結合型エストロゲンのポリマー吸着体樹脂への有効な吸着の後に、結合型エストロゲン混合物が負荷された吸着体樹脂を、残りの尿液から分離した。有利には、尿液を、吸着体樹脂を含むカラムに、エストロゲン含分吸着のための接触時間を充足する程度の通過速度で導入する。適切である場合には、この通過速度は、たとえば3〜10、好ましくは5〜7体積−部(Vol.-Teilen)PMU/吸着体樹脂体積−部/時間の通過量に相当する。有利には、尿液の通過速度は、反応器をわずかに過圧であるかまたは減圧で運転することによって調整される。使用されるポリマー吸着体樹脂の量は、使用された吸着体樹脂および尿液中の固体含量に応じて可変であってもよい。PMUを使用する場合には、たとえば、1体積−部の吸着体樹脂、たとえば架橋性脂肪族ポリカルボン酸エステル−吸着体樹脂に、80体積−部まで、好ましくは30〜50体積−部の予め処理されたPMUを負荷していてもよく、この場合、これらは、流出した尿液中で著量のエストロゲンを検出することない。PMU濃縮物またはPMU残留液を使用する場合には、吸着体樹脂の負荷容量は当然のことながら、これらが濃縮される範囲で減少する。したがって、たとえば1体積−部の架橋性脂肪族ポリカルボン酸エステル−吸着体樹脂は、20〜80体積−部、好ましくは30〜50体積−部のPMUに相当する量の尿液を負荷する。
【0059】
工程b):
結合型エストロゲン混合物を装填したポリマー吸着体樹脂を、工程b)中で、少なくとも12.0、特に12.5〜14、好ましくは約12,5〜13.5のpH値で調整された洗浄水を用いて洗浄した。洗浄水として、尿液中に溶解された不活性の塩基性物質の水性溶液、この場合、これらは、少なくとも12.5のpH値を達成するのに十分なものを使用することができる。ポリマー吸着体樹脂に対して不活性の、水溶性の塩基性物質としては、好ましくは水溶性無機塩基、たとえばアルカリ金属−またはアルカリ土類金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムが適している。有利には、洗浄水は、ほぼ望ましいpH値、好ましくは約pH13を達成するのに必要とされる量の塩基性物質を含有する。洗浄水の量は、フェノール性尿成分をほぼ除去するために十分であって、これによって重要な量の結合型エストロゲンを洗浄除去することはない程度に選択される。たとえば、吸着体樹脂の床体積当たり2〜10、好ましくは4〜6の床体積の洗浄液が有利とされる。その際、洗浄水は有利には、吸着体樹脂を含む反応器に、3〜10、好ましくは5〜7体積−部の洗浄水/1体積−部の吸着体樹脂/時間の通過速度で導入される。
【0060】
工程c)−中間洗浄:
工程a)において、結合型エストロゲン混合物を負荷するポリマー吸着体樹脂を用いて、工程b)に引き続いての中間洗浄で、水を用いて洗浄した。洗浄水の量は、後続の工程e)中で得られる溶離液が、結合型エストロゲンの混合物を有する程度に選択され、この場合、遊離エストロゲンの高い含量に対する要求を充たすものであって、それにより医薬のための作用成分として使用することが可能である。たとえば、吸着体樹脂の床体積当たり1〜8、好ましくは1〜4床体積の洗浄水を使用することは有利である。これに関して、洗浄水は、有利には吸着体樹脂を含む反応器に、3〜10、好ましくは5〜7体積−部の洗浄水/1体積−部の吸着体樹脂/時間の通過速度で導くことは有利である。
【0061】
本発明の好ましい実施態様において、中間洗浄は室温を下廻る温度で、特に0〜10℃の温度で実施し、それというのも付加的な中間洗浄によって、場合によってはある程度のホルモン−または作用物質の損失を、顕著に減少させることが可能であるためである。室温とは、通常は周囲温度であるとみなされ、たとえば20〜30℃の温度である。特に有利には、方法を、実際に0℃またはほぼ0℃で実施する。原則として、これに関してはほぼ0℃を上廻る温度で実施され、かつ挙げられた温度範囲を維持するよう、相当する処理をおこなう。さらに、温度を低下させるための常用の処理をおこなってもよく、この場合、これらは冷却された反応器、冷却された材料および/または冷却された出発材料、たとえばPMUの使用である。0℃またはほぼ0℃の温度としては、実際には0℃〜約5℃、好ましくは0℃〜約3℃の温度範囲である。
【0062】
中間洗浄中で考えられうるホルモン損失を、可能な限りわずかに維持するために、中間洗浄および/またはさらに工程b)で使用されるアルカリ調整洗浄液を、これらの変法によれば、室温を下廻って、好ましくは0℃〜10℃の温度に冷却する。さらに有利または好ましい温度範囲は、前記に示された0℃〜約5℃の温度範囲、好ましくは0℃〜約3℃の温度の温度範囲である。好ましくは0℃またはほぼ0℃の温度で処理する場合には、たとえば、好ましくは中間洗浄中および/またはさらに工程b)中で使用されたアルカリ調整された水を、ほぼ0℃を上廻るように冷却する。冷却されたアルカリ調整洗浄水を工程b)で使用することによって、予冷却方法またはすでに実施された吸着体樹脂の冷却の維持が達成され、たとえば冷却された洗浄水を中間洗浄のために使用する際の、望ましくない再加熱が生じることを回避することができる。したがって、好ましくは中間洗浄および先行する工程b)の双方は、たとえば室温を下廻る温度、好ましくは0℃〜10℃の温度であるか、あるいは好ましくは前記に示された温度で実施する。
【0063】
本発明の前記変法においては、方法を、室温を下廻る温度で実施し、すべての使用された装置、たとえばポリマー吸着体樹脂を収容するための反応器であるか、あるいは、これをすでに備えた反応器および/または使用されるPMUを、室温を下廻る相当する温度、特に0℃〜10℃の温度にか、あるいは、前記に示した好ましくは維持される温度範囲に予め冷却したものを使用することは望ましい。
【0064】
本発明の工程d)、e)およびf):
引き続き、本発明の工程d)の記載により、洗浄された結合型エストロゲンを負荷する吸着体樹脂を、結合型エストロゲン混合物を溶離するのに十分な量の溶離液で処理し、かつ工程e)でPMUの結合型エストロゲン天然混合物を含有する溶離液を得て、かつ場合によっては濃縮した。得られ場合によっては濃縮された溶離液が、二相混合物を示す場合には、工程f)中で溶離液の水相を除去し、その結果、PMUの結合型エストロゲンの天然混合物を含有する水相を獲得し、この場合、これらは場合によってはさらに濃縮することができる。
【0065】
吸着体樹脂カラムの再生
再生のために、カラムを最初に、吸着体樹脂の床体積当たりそれぞれ1〜4、好ましくは2〜3床体積のpH13に調整された50%エタノール含有エタノール/水混合物を使用して、その後に相当する体積の10%濃度クエン酸ナトリウム水溶液を用いて、引き続いて相当する量の蒸留水を用いて洗浄した。すべての再生工程は、40℃〜45℃の温度で実施した。カラムは、数倍、たとえば40倍まで負荷し、さらに再生することができる。
【0066】
例1:
WO98/08526およびWO03/048183の比較例に相当する方法
例2a、2bおよび3(本発明による方法)
例2a:室温で50体積%の酢酸エチルを有する溶離液
例2b:45℃で50体積%の酢酸エチルを有する溶離液
例3:40℃で単相の酢酸エチル含有溶離液混合物を有する溶離液。
【0067】
a)半極性ポリアクリルエステル−吸着体樹脂へのPMUのエストロゲン含分の吸着(すべての例)
330mmの高さで、40mm直径を有するカラムに、200mlの水中に膨潤させた半極性のポリアクリルエステル−吸着体樹脂(=Amberlite XAD-7 (Typ HP), Rohm und Haas社、粒径0.3〜1.2mm、双極性1.8デバイ、平均孔径80オングストローム、比表面積 約450m/g乾燥)を充填する。7lの限外濾過装置によって濾過されたPMU(=35床体積(以下BVと略す))、その結合型エストロゲンの含量、この場合、これらは、エストロゲンスルフェート、エキリンスルフェートおよび17α−DH−エキリンとして換算されたものであり、ならびにクレゾールの含量を、HPLCを用いて測定し(値については第1表参照)、室温で、例1では平均16.7ml/分(=5BV/h)の通過速度で、例2aでは40ml/分(=12BV/h)および例2bおよび3では24.4ml/分(=7.3BV/h)の通過速度で、カラムに導入した。PMUのエストロゲン含分は、完全に、負荷された半極性の吸着体樹脂−カラム上に吸着した。流出した尿液を、HPLCによって、結合型エストロゲンの前記含量について試験し、かつ実際にエストロゲン不含であると評価した。流出物を排除した。
【0068】
b)負荷された吸着体樹脂−カラムの洗浄(すべての例)
負荷された吸着体樹脂−カラムは、pH13を有する1.0l(=BV)の水酸化ナトリウム水溶液を用いて洗浄した。さらにこのアルカリ性洗浄水を、平均16.7ml/分(=5BV/h)の通過速度でカラムに導いた。この流出した洗浄液を、HPLCを用いて、結合型エストロゲンおよびクレゾールの含量について試験した。この試験は、洗浄工程において、カラムに装填された全エストロゲンの5%未満が洗浄除去されたことを示した。
【0069】
c)中間洗浄(すべての例)
負荷された吸着体樹脂−カラムを、600mlの水(=3BV)で洗浄した。さらに中性の洗浄水を平均16.7ml/分(=5BV/h)の通過速度で、カラムに導入した。この流出した洗浄液をHPLCを用いて、結合型エストロゲンおよびクレゾールの含量について試験した。この試験は、これらの洗浄工程において、カラムに導入された全エストロゲンのわずかな含分(最大であっても数%)のみが洗浄除去されたことを示した。
【0070】
洗浄した吸着体樹脂−カラムからの結合型エストロゲンのd)およびe)の脱着
例1−比較例
溶離液(エタノール/水30:70)1.1l(=5.5BV)を、平均8.2ml/分(=2.4BV/h)の通過速度で、45℃に予め加熱したカラムに導入した。この流出した溶離液は、6個のフラクションE1〜E5に収容した。このフラクションは、それぞれ200ml(=1BV)または100ml(=0.5BV、E6に関して)に達し、かつHPLCを用いて結合型エストロゲンおよびクレゾールの含量について試験した(値については第1表参照)。
【0071】
最初の4個のフラクションは、カラムで吸着された量の結合型エストロゲンの約80〜98%を含有していた。最後のフラクションは、結合型エストロゲンを少量のみ含有していた。これらの結合型エストロゲンを含有するフラクションは、ガレン製剤のためのさらなる処理に適したエクストラクトであることを示した。
【0072】
例2:
例2a−室温による50体積%酢酸エチルを含む溶離液
例2b−45℃での50体積%酢酸エチルを含む溶離液
二相の溶離液(酢酸エチル−水混合物50:50)900ml(=4.5BV)を、平均16.7ml/分(=5.0BV/h)の通過速度で、定められた溶離温度に加熱されたカラムに導いた。この流出した溶離液を、E1〜E9の9個のフラクションに収容した。フラクションはそれぞれ100ml(=0.5BV)を有しており;この場合、4番目のフラクションからは溶離液として二相混合物が得られ、この場合、これらはそれぞれの溶離物を分析する目的で、水相と有機相とに分離した(E4〜E9、それぞれLMは溶剤相およびWは水相である)。すべてのフラクションを、HPLCを用いて、結合型エストロゲンおよびクレゾールの含量について試験した(第1表に示す)。さらに一つにまとめたフラクションに対して、さらに非結合型脂肪族化合物、たとえばホルモノネチンの含量についてGCを用いて測定した(さらに第II表参照)。
【0073】
最初の3個のフラクションは、わずかな量のみのエストロゲンを有していた。引き続いてのフラクション4〜8の水相においては、カラム全量の約80〜98%の結合型エストロゲンの吸着分を含有していた。最後のフラクションは、わずかな量のみのエストロゲンを含有していた。これは、結合型エストロゲンの主要量を含有するフラクションが、ガレン製剤への加工に適したエクストラクトであることを示す。
【0074】
単相−エタノール−水−混合物(30:70)を用いての公知の溶離方法に引き続いて、本発明による抽出を完全なものするために、酢酸エチル−水−混合物を用いて調整した。
【0075】
その後のエタノール性溶離によって、例2aではなおも顕著な量の結合型エストロゲン、この場合、これは負荷された量の約6.8%に相当するもの、が溶離した。45℃に溶離温度を増加させることによって、最初にエタノール溶離によって溶離させたなおもカラムに存在する結合型エストロゲンの量は、1%を下廻る量に減少した。
【0076】
例3−40℃での単相の酢酸エチル含有溶離液混合物を用いての溶離
単相溶離液(酢酸エチル−水−アセトン混合物1:1:1.4) 1.0l(=5BV)を、平均16.7ml/分の通過速度(=5.0BV/時)で、40℃に加熱されたカラムに導いた。この得られた溶離物を、13個の異なる大きさのフラクションに収容した。第1フラクションは100ml(=0.5BV)を有し、後続の10個のフラクションはそれぞれ50ml(=0.25BV)を有し、その一方で、最後の2個のフラクションはそれぞれ200mlで収容した。カラムから洗浄水を排除した後に、驚くべきことに、すでに二相溶離液が生じた(フラクション4から)。すべてのフラクションは、HPLCを用いて、結合型エストロゲンおよびクレゾールの含量について試験した(値については第I表参照)。
【0077】
最初のフラクションは、わずかな量のみのエストロゲンを含有していた。後続のフラクション2〜7においては、カラム全量の約80〜98%の吸着量の結合型エストロゲンを含有していた。最後のフラクションは、わずかな量のみのエストロゲンを含有していた。結合型エストロゲンの主要量を含有するフラクションは、ガレン製剤のための加工に適したエクストラクトであることを示した。
【0078】
溶離液E7〜E13は、約24時間後に2個の相に分離した。このE1〜E7の溶離液を一つにまとめて、以下のような処理をおこなった:溶離液E1〜E7を、500mlの滴加漏斗に集め、かつ約350mlの溶液になった。これは、ただちに相分離を生じることはないが、しかしながら週末に亘って放置した後には、滴加漏斗中上部に、約10mlのわずかな有機相が観察された。この相はHPLCによって、結合型エストロゲンおよびクレゾールの含量について試験した。相を分離した後に、水相をロータリエバポレーターに、70℃で8〜10%のTSになるまで濃縮した(ここで8.16%のTS、値については第II表参照)。
【0079】
吸着体樹脂−カラムの再生(すべての実施例)
再生のためにカラムを、最初にpH13に調整された50%エタノール含有エタノール/水混合物 400mを用いて、その後に10%濃度のクエン酸ナトリウム水溶液 400mlで、その後に蒸留水 400mlを用いて洗浄した。全体として再生は、40〜45℃の温度で実施した。カラムは複数倍、たとえば40倍まで負荷し、さらに再生することができる。
【0080】
溶離の際に得られた、結合型エストロゲンの主要量を含有するフラクションを、以下の表で、それぞれTS−含量(体積%)およびHPLCによって測定された結合型エストロゲン含量(ナトリウム−エストロゲンスルフェート、ナトリウム−エキリンスルフェートおよび17α−DH−エキリンの合計として測定されたCE)ならびにクレゾールの量について示した。さらに、抽出の収率は値として挙げた。
第I表:結合型エストロゲン含有フラクションの主要量の組成に基づく個々の方法の比較
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
例1のように、たとえばエタノール性溶離での試験を実施する際に、イソフラボン、たとえばエクオールの一部分は、塩基性洗浄液で洗浄除去されるが、イソフラボン、たとえばホルモノネチンの一部分は溶離液中で存在し、かつ初めて、後続の抽出によって分離した。同様に他の非結合型親油性化合物、たとえば遊離ステロイドホルモンが得られた。これに対して、本発明による溶離方法の際に、なおもカラム上で存在するイソフラボンおよび遊離ステロイドは、過剰量で、場合によっては濃縮される溶離液の水と非混和性の溶剤相中で存在し、その一方で結合型エストロゲンは、さらに処理されるべきこれらの溶離液の水相中に約98%で存在していた。これらの水相は、非結合型ステロイドホルモンを含有することなく、かつイソフラボンおよびこれに匹敵する非結合型親油性化合物をほぼ排除したものである。これらの分布は、例2aの4番目の溶離液の水相および有機相のGC分析に基づいて、たとえば以下の表から得られるように明らかにされた。
【0084】
第II表:例2aの4番目の溶離液の水相および有機溶剤相中での、結合型エストロゲン、遊離ステロイドホルモンおよびホルモノネチン(たとえばイソフラボン)の分布−GC分析の評価(水相は、測定前に約1.8倍濃縮した):
【0085】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)尿液、この場合、これは場合により粘液−および固体物質を排除した尿の液体であって、この尿液の濃縮物またはこの尿液の膜濾過によって得られた濃縮された尿残留液を示すものを、尿液中に含まれる結合型エストロゲン混合物の吸着に十分な量のポリマー吸着樹脂と接触させ、かつ、結合型エストロゲン混合物を負荷したポリマー吸着樹脂を、残りの尿液から分離し、かつ、
b)結合型エストロゲン混合物を負荷したポリマー吸着樹脂を、少なくとも12.0のpH値に調整した洗浄水で洗浄し、かつ
c)場合によっては中間洗浄をおこない、その際、結合型エストロゲンの混合物を負荷したポリマー吸着樹脂を、水で洗浄し、かつ
d)洗浄した吸着樹脂を、これに吸着した結合型エストロゲン混合物を脱着させるのに十分な量の溶離液と接触させ、かつ
e)結合型エストロゲンの天然混合物を含有する溶離液を、吸着樹脂から分離し、かつ場合によっては濃縮する、妊馬尿から結合型エストロゲン天然混合物を得るための方法において、得られたウマ結合型エストロゲン天然混合物が、フェノール性尿成分および非結合型親油性化合物を排除したものであり、この場合、この非結合型親油性化合物は、非結合型フラボノイド、非結合型イソフラボノイド、非結合型ノルイソプレノイド、非結合型ステロイド、特にアンドロスタン−およびプレグナン−ステロイドおよびこれに匹敵する非結合型化合物から成る群からのものであり、かつ、
工程(d)中の溶離液として、
(i)水、この場合、これは場合によってはアルカリの範囲にpH値を調整したものであり、および
(ii)前記群からの非結合型親油性化合物の溶離に適した、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤少なくとも1種、
および場合によっては
(iii)水と混和可能なエーテル、低分子量アルカノールおよび低分子量脂肪族ケトン、ならびに前記溶剤の混合物から成る群から選択された、水と混和可能な有機溶剤少なくとも1種
を含む単相−または二相混合物を使用し、かつ、
工程e)中で得られ、場合によっては濃縮された溶離液が二相混合物を示す場合には、工程f)中で、得られた二相から成る溶離液の水相を分離し、かつ、結合型エストロゲン天然混合物を含有する水相を得て、かつ場合によってはこれを濃縮することを特徴とする、妊馬尿から結合型エストロゲン天然混合物を得るための方法。
【請求項2】
工程d)中で溶離液として単相−または二相混合物を使用し、この場合、これらの混合物は、(i)水、この場合、これは場合によってはアルカリの範囲にpH値を調整したものであり、および
(ii)非結合型フラボノイド、非結合型イソフラボノイド、非結合型ノルイソプレノイド、非結合型ステロイド、特にアンドロスタン−およびプレグナン−ステロイドおよびこれに匹敵する非結合型化合物から成る群からの非結合型親油性化合物の溶離に適した、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤少なくとも1種、
および場合によっては、
(iii)水と混和可能なエーテル、低分子量アルカノールおよび低分子量脂肪族ケトン、ならびに前記溶剤の混合物から成る群から選択された、水と混和可能な有機溶剤少なくとも1種
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非結合型親油性化合物を溶離するのに適した、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)を、直鎖、分枝または環式のC〜C10−アルコール、C〜C10エステル化された酸、C〜C10アルデヒド、C〜C10ケトン、C〜C10エーテル、C〜CニトリルおよびC〜Cハロゲンアルカンならびに前記溶剤の混合物から選択する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
非結合型親油性化合物を溶離するのに適した、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)を、酢酸−C〜C−アルキルエステル、ブタノール、シクロヘキサノール、ヘキサノール、ジエチルエーテル、塩化メチレン、メチル−tert.−ブチルエーテルおよび前記溶剤の混合物から選択する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非結合型親油性化合物を溶離するのに適した、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)が、酢酸−C〜C−アルキルエステル、好ましくは酢酸エチルエステルおよび/または酢酸−イソプロピル−エステルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
水と混和可能な有機溶剤(iii)を、アセトン、エタノールおよびテトラヒドロフランならびに前記溶剤の混合物から選択する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
水と混和可能な有機溶剤(iii)がアセトンおよび/またはエタノールである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水と混和可能な有機溶剤(iii)がアセトンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
非結合型親油性化合物を溶離するのに適した、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)が、酢酸−C〜C−アルキルエステル、好ましくは酢酸エチルエステルおよび/または酢酸−イソプロピル−エステルであり、かつ水と混和可能な有機溶剤(iii)がアセトンおよび/またはエタノールである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
非結合型親油性化合物の溶離に適した、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)が酢酸エチルエステルであり、かつ水と混和可能な有機溶剤(iii)がアセトンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(d)中で溶離液として使用される単相−または二相混合物が、水(i)と水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)との体積比を、5:1〜1:5の範囲、好ましくは2:1〜1:2の範囲で有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程(d)中で溶離液として使用される単相−または二相混合物が、水(i)と水と混和可能な有機溶剤(iii)との体積比を、4:1〜1:5の範囲、好ましくは2:1〜1:3の範囲で有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(d)中で溶離液として使用される単相−または二相混合物が、水(i)および水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)と、水と混和可能な有機溶剤(iii)との体積比を、5:1〜1:5の範囲、好ましくは2:1〜1:2の範囲で有する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(d)中で溶離液として使用される単相−または二相混合物が、水(i)と、水と混和しないかまたはわずかにのみ混和可能な有機溶剤(ii)として使用される酢酸−C〜C−アルキルエステル、好ましくは酢酸エチルエステルおよび/または酢酸−イソプロピルエステルと、水と混和可能な有機溶剤(iii)として使用されるアセトンおよび/またはエタノールとの体積比を、1:1:1〜1:1:2の範囲、好ましくは約1:1:1.4の範囲で有する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ポリマー吸着樹脂として、半極性吸着樹脂、好ましくは非イオン性の半極性吸着樹脂を使用する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
洗浄された吸着樹脂からの結合型エストロゲン天然混合物の溶離を、工程d)で20℃〜80℃の範囲、好ましくは30℃〜50℃の範囲の温度で実施する、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−513561(P2009−513561A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519929(P2006−519929)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051479
【国際公開番号】WO2005/010021
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(391027619)ゾルファイ ファーマスーティカルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (46)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Pharmaceuticals GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20, D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】