ウルソデオキシコール酸の硫酸コンジュゲートと、炎症性障害及び他の用途におけるそれらの有利な使用

【課題】肝臓、肺、腎臓及び腸から成る群から選択される、器官を維持する方法を提供する。
【解決手段】器官を3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(UDCA)のスルフェートまたはそれらの塩によって灌流する工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウルソデオキシコール酸の硫酸コンジュゲートと、炎症性障害及び他の用途におけるそれらの有利な使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(“ウルソデオキシコール酸”又は“UDCA”)は20年間以上にわたって臨床的に用いられており、最初は胆石症患者の治療に有効であると実証され、さらに最近では胆汁うつ滞性(cholestatic) 肝疾患の患者の治療に有望であると判明している。UDCAの経口投与が血清肝酵素(serum liver enzyme)の有意な改良をもたらすことが充分確立しており、長期間の臨床試験の結果に基づいて、多数意見は、UDCAが初期の原発性胆汁性肝硬変の治療に有利であるということである。さらに、臨床試験は、UDCAが硬化性胆管炎、嚢胞性線維症及び慢性肝炎を有する患者における肝機能の臨床的及び生化学的インデックス(index) の改良に有益であることを示している。
【0003】
肝疾患においてUDCAによって示される有望な効果にも拘わらず、その作用機序はまだ不明である。初期の考察は、胆汁の胆汁酸プール(biliary bile acid pool)の疎水性/親水性バランスのシフトがその効力の重要な決定要素であることを示唆しているが、最近のデータはこの主張を完全には支持していない;肝機能の改良はほぼ確実に、より大きく有害と考えられる胆汁酸又は他の内因性作用剤(endogenous agent)の胆汁排泄を促進する、UDCAによって誘導される顕著な胆汁分泌亢進の結果である。
【0004】
多様な肝疾患を有する患者におけるUDCAの代謝に重点をおいた研究では、尿中のUDCAのC−3スルフェートエステルの実質的な量(substantial amount) が一貫して観察されており、この特異的代謝産物はUDCAコンプライアンス(compliance)の有用なマーカーであることが実証されている。さらに、動物試験は、胆汁酸の硫酸化が胆汁うつ滞を防止し、肝細胞損傷を制限するための重要な代謝経路を表しうることを示唆している。
【0005】
胆汁酸の細胞傷害性又は膜損傷性効果はその物理化学的性質に関係する。疎水性胆汁酸は親水性胆汁酸よりも明らかに膜損傷性であり、細胞傷害性の相対的なインデックスが逆相高圧液体クロマトグラフィー系における胆汁酸の保持容量に基づいて又はオクタノール/水中の分配係数から確立されている。ヒトの肝臓が、本質的に肝傷害性である疎水性分子のケノデオキシコール酸を、その原発性胆汁酸の1種として合成することは逆説的であり;胆汁うつ滞では、この胆汁酸の肝臓蓄積が肝臓損傷を開始する、又は肝臓損傷に寄与し、又は肝臓損傷を悪化させる可能性がある。これに反して、UDCA、ケノデオキシコール酸の7β−エピマーは高度に親水性であり、疎水性胆汁酸の膜損傷性効果に反作用することが判明している。これは多様な肝疾患の治療にUDCAを治療的に用いることの1つの根拠である。UDCAの経口又は静脈内投与後に、この胆汁酸は肝臓内で主としてコンジュゲーションによって効率的にバイオトランスフォームされる。その結果、比較的高い用量を投与した後にも、ヒトの胆汁中には無視できるような濃度及び割合の非コンジュゲート化UDCAが検出されるに過ぎない。
【0006】
UDCAはまた種々な肝疾患の治療へのその使用以外にも治療的役割を有することができる。これに関して、UDCAの保護的役割を示唆するデータが結腸発癌の動物モデルから得られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、経口投与される通常の治療用量(10〜15mg/kg体重/日)において、UDCAが腸から比較的良好に吸収されて、肝臓において主としてコンジュゲーションによって効率的にバイオトランスフォームされることで、結腸へのUDCAの実際の投与は問題である。この結果、UDCAの有効量を結腸に特異的に投与することは極めて困難である。
【0008】
それ故、結腸への投与のこの限定を想定するならば、UDCAを結腸に効果的に投与することができる化合物、組成物又は方法を有することが非常に有益であると考えられる。胃腸管の他の部分にUDCAを効果的に投与するために用いることができる化合物、組成物又は方法を有することも非常に有益であると考えられる。さらに、胃腸管又は肝臓の炎症性障害を効果的に抑制又は治療することに用いるための化合物、組成物又は方法を有することは有利であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明の1つの態様は、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(ウルソデオキシコール酸又は“UDCA”)のスルフェート(sulfate) と、薬理学的に受容されるキャリヤーとを包含する薬理学的に受容される組成物に関する。好ましい組成物では、このスルフェートはUDCA−3−スルフェート、UDCA−7−スルフェート、UDCA−3,7−ジスルフェート、グリコ−UDCA−3−スルフェート、グリコ−UDCA−7−スルフェート、グリコ−UDCA−3,7−ジスルフェート、タウロ−UDCA−3−スルフェート、タウロ−UDCA−7−スルフェート、タウロ−UDCA−3,7−ジスルフェート、又はこれらの組合せである。
【0010】
本発明の他の態様は、障害を抑制又は治療するために哺乳動物にUDCAを投与する方法であって、この障害を抑制又は治療するために充分な量でUDCAのスルフェートを哺乳動物に投与することを含む方法に関する。例えば、結腸癌、直腸癌、結腸の腫瘍(neoplasm)、直腸の腫瘍、結腸の発癌、直腸の発癌、潰瘍性大腸炎、腺腫様ポリープ、家族性ポリポーシス等のような、胃腸管の炎症性状態を抑制又は治療することに、UDCAスルフェートを有利に用いることができる。UDCAのスルフェートはまた、肝臓の炎症性障害を抑制又は治療するために投与することもできる。UDCAスルフェートは、肝疾患若しくは肝機能の血清生化学を改良するため、又は胆汁の流動を高めるため、又はリン脂質若しくはコレステロールの胆汁分泌(biliary secretion) を減ずるために用いることができる。
【0011】
さらに他の態様では、本発明は、単離された器官を、この器官をUDCAスルフェートで灌流することによって維持する方法に関する。
本発明は先行技術を凌駕する幾つかの利益及び利点を提供する。例えば、結腸癌等のような炎症性障害の抑制又は治療のために、結腸及び胃腸管の他の部分に治療有効量のUDCAを投与することができる。さらに、肝疾患を抑制若しくは治療するため又は肝機能を改良するためにUDCAスルフェートを効果的に用いることができる。本発明の下記詳細な説明を検討するならば、上記及び他の利益と利点が当業者に容易に明らかになると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)、(b)は、UDCA、UDCA−3S、UDCA−7S及びUDCA−DSの経口投与後の全空腸中のUDCAの総質量(図1(a))と肝組織中の濃度(図1(b))の、対照ラットとの比較を示す。アニオン交換クロマトグラフィー後のGC−MSを用いた個々の画分の分析によって、それらのコンジュゲーション形式に応じて胆汁酸を分離した。結果は全ての動物の平均値として表す;
【図2】対照ラットと、UDCA、UDCA3−S、UDCA7−S及びUDCA−DSを経口投与したラットとにおける糞便胆汁酸排泄を示す。アニオン交換クロマトグラフィー後のGC−MSを用いた個々の画分の分析によって、それらのコンジュゲーション形式に応じて胆汁酸を分離した。結果は全ての動物の平均値として表す;
【図3】対照ラットと、UDCA、UDCA3−S、UDCA7−S及びUDCA−DSを経口投与したラットとの糞便中のリトコール酸/デオキシコール酸の比率を示す。結果は全ての動物の平均値として表す;
【図4】(a)〜(d)はUDCA(図4(a))、UDCA3−S(図4(b))、UDCA7−S(図4(c))及びUDCA−DS(図4(d))を経口投与したラットの肝組織中のUDCA濃度を示す。アニオン交換クロマトグラフィー後のGC−MSを用いた個々の画分の分析によって、それらのコンジュゲーション形式に応じて胆汁酸を分離した。結果は全ての動物の平均値として表す;
【図5】(a)、(b)はUDCAとスルフェートコンジュゲートとのIV注入中のSprague−Dawleyラットによる平均胆嚢胆汁流動(biliary bile-flow) と胆汁酸アウトプット(bile acid output)とを示す;
【図6】UDCAとそのスルフェートコンジュゲートとの注入後の胆汁酸分泌速度と胆汁−流動との関係を示す;
【図7】UDCAとそのスルフェートコンジュゲートとの注入後の胆汁酸分泌速度と胆汁−流動との関係を示す;
【図8】UDCAとそのスルフェートコンジュゲートとの注入後の胆汁酸分泌速度と胆汁−流動との関係を示す;
【図9】UDCAとそのスルフェートコンジュゲートとの注入後の胆汁酸分泌速度と胆汁−流動との関係を示す;
【図10】UDCAとスルフェートコンジュゲートとのIV注入中のSprague−Dawleyラットによる平均胆汁コレステロールとリン脂質アウトプットとを示す;
【図11】UDCAとスルフェートコンジュゲートとのIV注入中のSprague−Dawleyラットによる平均胆汁コレステロールとリン脂質アウトプットとを示す;
【図12】ラット胆汁注入前(preinfusion) の負イオンFAB−MSスペクトルを示す;
【図13】UDCA注入中の負イオンFAB−MSスペクトルを示す;
【図14】UDCA3−S注入中の負イオンFAB−MSスペクトルを示す;
【図15】UDCA7−S注入中の負イオンFAB−MSスペクトルを示す;
【図16】UDCA−DS注入中の負イオンFAB−MSスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
以下に出現する他の略号は下記を包含する:GC(気液クロマトグラフィー)、GC−MS(気液クロマトグラフィー−質量分析法)、FAB−MS(高速原子衝撃−質量分析法)、TLC(薄層クロマトグラフィー)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、UDCA−3S(ウルソデオキシコール酸−3−スルフェート)、UDCA−7S(ウルソデオキシコール酸−7−スルフェート)、UDCA−DS(ウルソデオキシコール酸3,7−ジスルフェート)、tBDMSエーテル(tert−ブチルジメチルシリルエーテル)及びtBDMC(tert−ブチルジメチルシリルクロリド)。
【0014】
以下に示すデータはUDCAの個々の胆汁酸スルフェートの腸代謝及び挙動と、非コンジュゲート化胆汁酸とを比較し、特に、C−7スルフェート部分の存在がUDCAの細菌分解を防止し、UDCAの腸吸収を抑制することを示す。
【0015】
材 料 と 方 法
UDCAのスルフェートエステル(sulfated ester)の合成
UDCA(99%純度)はSigma ChemicalCo.(St.Louis,MO)から入手した。UDCAのモノスルフェート及びジスルフェートエステルは、この詳細な説明における以下で段階的に詳細に説明する方法によって製造した。要約すると、モノスルフェートエステルの合成はUDCA分子中の環ヒドロキシル基の各々の選択的保護と、その後の非保護ヒドロキシル基の硫酸化と、モノスルフェートエステルを放出するための保護基の加水分解とを含む。UDCAのジスルフェートコンジュゲートはUDCAとクロロスルホン酸との反応によって製造した。ガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC−MS)を用いて、酸化、加溶媒分解及び、メチル/エステル−トリメチルシリルエーテル誘導体への転化後の生成物の分析によってスルフェート基の位置を確認した。合成胆汁塩のクロマトグラフィー純度は、高圧液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー及び毛管カラムクロマトグラフィーによって測定して、UDCA7−スルフェート及びUDCA3,7−ジスルフェートに関しては>97%であり、UDCA3−スルフェートに関しては>95%であることが発見された。
【0016】
動 物 試 験
雄Sprague−Dawleyラット(Harlan Sprague−Dawley社,Indianapolis,IN)(体重210〜290g)を3日間、12時間明暗サイクルで維持し、標準実験食餌(standard laboratory chow)を任意に与えた。次に、これらの動物を代謝ケージ(metabolic cage)に移し、その中にこれらの動物を個別に収容し、同じ食餌を与えた。UDCA、UDCA3−スルフェート、UDCA7−スルフェート及びUDCA3,7−ジスルフェートを250mg/日の用量で胃管栄養によって連続4日間投与した。各群は3〜6匹のラットを含んだ。動物の体重を毎日測定した。5日目に、動物をエーテル麻酔下で放血によって殺した。血漿を回収し、−20℃において冷凍した。肝臓を取り出し、通常の生理的食塩水中ですすぎ洗いし、液体窒素中でフラッシュ冷凍した(flash-frozen)。尿と糞便を24時間毎に回収し、−20℃において冷凍した。全ての動物はNational Academy of Sciencesによって作成された“Guide for the Care and Use of Laboratory Animals”(National Institutes of Health出版No.86−23、1985年改訂)に従ってヒューマンケア(humane care) を受けた。
【0017】
胆 汁 酸 分 析
腸内容物と糞便中の非コンジュゲート化胆汁酸とスルフェート胆汁酸
腸内容物を秤量して、小ピース(small pieces)に分解した。各群において、試験の4日目に全ての動物からの糞便(100mg)をプールし、次に磨砕して、微細ペーストにした。全てのサンプルを超音波処理し、続いて、80%メタノール中で2時間還流させ、クロロホルム/メタノール(1:1)中で1時間還流させた。サンプルを乾燥させ、乾燥した抽出物を80%メタノール(20ml)中に再懸濁させた。メタノール抽出物(腸内容物の1/40と、糞便サンプルの1/20)の画分を取り出し、内部標準のノルデオキシコール酸(10μg)を加えた。この抽出物を0.01mol/リットルの酢酸(20ml)によって希釈して、最初にLipidex1000カラム(床サイズ,4x1cm; Packard Instrument Co.,オランダ,Groningen)に通し、次にBond−Elut C18カートリッジ(Analytichem,Harbor City,CA)に通した。Lipidex 1000カラムとBond−Elutカートリッジとをメタノール(それぞれ、20mlと5ml)によって溶出させることによって、胆汁酸を回収し、一緒にした抽出物を乾燥させた。ジエチルアミノヒドロキシプロピルSephadex LH−20(Lipidex−DEAP;Package Instrument Co.)上での親油性アニオン交換クロマトグラフィーによって、非コンジュゲート化胆汁酸を中性ステロール及びコンジュゲート化胆汁酸から単離させ、分離した。非コンジュゲート化胆汁酸の回収は72%エタノール中の0.1mol/リットル酢酸(7ml)中による溶離と、その後の溶媒の蒸発とによって達成した。9mlの72%エタノール中の0.3mol/リットル酢酸(pH9.6)によって、総コンジュゲート化胆汁酸を回収した。ノルデオキシコール酸(10μg)の添加後にBond−Elut C18カートリッジに通すことによって塩を取り出し、5mlのメタノールによる溶出によって、コンジュゲート化胆汁酸を回収した。メタノール(1ml)と、蒸留したテトラヒドロフラン(9ml)と、ジオキサン中の1mol/リットル トリフルオロ酢酸(0.1ml)との混合物中で加溶媒分析をおこない、45℃に2時間加熱した。加溶媒分析後に、非コンジュゲート化胆汁酸をLipidex−DEAP上でのクロマトグラフィーによって単離した。サンプルをメタノール(0.3ml)中に溶解し、2.7mlの新たに蒸留したエーテル性(ethereal)ジアゾメタンと反応させることによって、メチルエステル誘導体を製造した。試薬の蒸発後に、メチルエステル誘導体を50mlのTri−Sil試薬(Pierce Chemicals,Rockford,IL)の添加によってトリメチルシリルエーテルに転化させた。Lipidex5000のカラム(Packard Instrument Co.)を用いて、誘導体化試薬(derivatizing reagent)を取り出し、サンプルを精製した。
【0018】
血漿と尿中の非コンジュゲート化胆汁酸とスルフェート胆汁酸
各群において、全ての動物からの尿を回収した個々の日にプールした。1日目(day1)は基底サンプルを表し、2日目、3日目及び4日目からのサンプルは胆汁酸投与中に得た。ノルデオキシコール酸(1μg)の添加後に、Bond−Elut C18カートリッジを用いて、一部の尿(3ml)と血漿(1ml)とから胆汁酸を定量的に抽出した。液体−固体抽出後に、非コンジュゲート化胆汁酸とコンジュゲート化胆汁酸との単離及び分離をLipidex−DEAP上での親油性アニオン交換クロマトグラフィーによって達成した。胆汁酸コンジュゲートの加溶媒分解と、加水分解生成物(hydrolyzed product)の単離を上述したようにおこない、胆汁酸を揮発性メチルエステル−トリメチルシリルエーテル誘導体に転化させた。
【0019】
肝臓と空腸内容物とにおける胆汁酸コンジュゲーション度
肝臓サンプル(100mg)を磨砕して、微細ペーストにし、腸内容物と糞便とに関して上述したように、還流と、Lipidex1000カラムに通すことによって胆汁酸を抽出した。親油性アニオン交換クロマトグラフィーによって、胆汁酸のコンジュゲーション形式に応じた胆汁酸のグループ分け(group separation) を達成した。各動物からの抽出物をプールし、Lipidex−DEAPと、下記緩衝剤:72%エタノール中の0.1mol/リットル酢酸(非コンジュゲート化胆汁酸);72%エタノール中の0.3mol/リットル酢酸、pH5.0(グリシンコンジュゲート);72%エタノール中の0.15mol/リットル酢酸、pH6.5(グリシンコンジュゲート);及び72%エタノール中の0.3mol/リットル酢酸、pH9.6(スルフェートコンジュゲート)とによるゲル床の段階的溶出とを用いて、胆汁酸とそれらのコンジュゲートとを分離した。緩衝剤の蒸発後に、硫酸化胆汁酸は加溶媒分解したが、アミド化コンジュゲート(amidated conjugate)は2. 5mlの0.2mol/リットルリン酸塩緩衝剤、pH5.6中の50単位のコリルグリシンヒドロラーゼ(Simga Chemical Co.)によって37℃において一晩加水分解した。得られた非コンジュゲート化胆汁酸をLipidex−DEAP上で単離し、メチルエステル−トリメチルシリルエーテル誘導体を上述したように製造した。
【0020】
加溶媒分解後に、ラット腸の空腸部分からのアミド化胆汁酸をLipidex−DEAP上で、72%エタノール中の0.15mol/リットル酢酸、pH6.5(6ml)によって溶出させることによって単離した。酵素加水分解を上述したようにおこない、得られた非コンジュゲート化胆汁酸を単離し、上述したように誘導体化した。
【0021】
GC−MS
メチルエステル−トリメチルシリルエーテル誘導体を30mx0.25mm DB−1融合シリカ毛管カラム(J&W Scientific,Folson,CA)上で、2℃/分の増分による225℃から295℃までの温度プログラムを用いて、30分間の最終等温期間によって分離した。同じ条件下で操作される同じガスクロマトグラフィーカラムを収容したFinnigan4635質量分析計(Finnigan Inc.,San Jose,CA)を用いて、GC−MS分析をおこなった。溶出する成分の反復走査によって50〜800ダルトンの質量範囲にわたって、電子イオン化(70eV)質量スペクトルを記録した。メチレンユニット値と呼ばれる、n−アルカンの同族列を基準にしたガスクロマトグラフィー保持インデックスと、信頼できる標準と比較した質量スペクトルとに基づいて胆汁酸の同定をおこなった。胆汁酸の定量はガスクロマトグラフィーを用いて、個々の胆汁酸のピーク高さ反応を内標準から得られたピーク高さ反応と比較することによっておこなった。
【0022】
液体二次イオン化質量分析法
ステンレス鋼プローブ上にスポットしたグリセロール/メタノールマトリックスの小滴上に約1μlのメタノール抽出物を供給した後に、尿サンプルの液体二次イオン化質量分析法負イオンスペクトルを得た。このプローブをVG Autospec Q質量分析計のイオンソース(ion source)中に導入し、セシウムヨウ素(cesium iodine)(35KeV)から発生した、高速セシウム原子のビームをサンプルを含むターゲットに発射した。50〜1000ダルトンの質量範囲にわたって負イオンスペクトルが得られた。
【0023】
統 計 分 析
データは、分析前に抽出物をプールしたときの全ての動物の平均値±SEMとして又は平均値として表現する。種々な群からの結果はペアード(paired)又はアンペアード(unpaired)両側Student t検定を用いて比較した。<0.05のP値を統計的に有意と見なされた。
【0024】
結 果
腸に沿った管腔内の胆汁酸組成
対照群の動物と、個々の胆汁酸を投与された動物とに関する腸の棄却された区分の平均重量は同じであった。対照動物では、空腸中のUDCAの総量(0.03±0.01mg)はごく僅かであり、総胆汁酸の僅か0.3%を占めるものであった。しかし、UDCA、UDCA3−スルフェート、UDCA7−スルフェート及びUDCA3,7−ジスルフェートの最終用量を投与された後24時間の全ての動物では、空腸中のUDCAの総質量(及び総胆汁酸のその割合)はより大きく、それぞれ、9.95±0.49mg(35.9%)、3.67±0.45mg(16.4%)、1.09±0.34mg(4.7%)及び0.21±0.07mg(2.0%)であった。この結果は、スルフェート基がC−7位置においてコンジュゲートされるときにUDCAが殆ど保存されないことを示す(表1)。
【0025】
UDCA及びUDCA3−スルフェートを投与された動物の空腸には、△22UDCA、外因的に投与されたUDCAの特定の代謝産物が大きな割合で、多量に検出された。しかし、この代謝産物は対照群では検出されず、UDCAのC−7スルフェートコンジュゲートを投与された動物の総空腸胆汁酸の<3%を占めた(表1)。
【0026】
空腸中のUDCAのコンジュゲーションパターンを親油性アニオン−交換クロマトグラフィーによって胆汁酸の分離後に調べた場合に(図1)、UDCAを投与された動物は主としてグリコ−及びタウロ−UDCAを有し、少量の非コンジュゲート化UDCA及び無視できる量の硫酸化UDCAを有することが判明した。UDCAのアミド化及び非コンジュゲート化形がC−7スルフェートの投与後に空腸中で検出されたが、空腸中のUDCAの総質量は非常に少なかった。UDCA−3−スルフェートを投与されたラットでは、空腸は実質的な割合のアミド化UDCAを含有し、このことは脱コンジュゲーション(deconjugation) 及び/又はアミド化による有意なバイオトランスフォーメーションを実証する。
【0027】
内因的胆汁酸に関しては、コール酸が対照動物の空腸中の主要胆汁酸であり、総胆汁酸の48.5%±2.9%(6.82±1010mg)を占め、UDCA投与後は、16.8%±1.3%(4.68±0.65mg)に有意に低下した(P=0.01)。UDCA3−スルフェートも、UDCAよりも低い程度にではあるが、コール酸の割合を低下させたが(P=0.05)、UDCAのC−7スルフェートの投与は空腸中のコール酸の割合を増加させた(P=0.01)(表1)。
【0028】
対照動物の結腸では、胆汁酸の大部分は二次的(secondary) であり、主としてデオキシコール酸及びω−ムリコール酸として同定されたが、ごく少量のリトコール酸が検出された(表2)。UDCA投与はデオキシコール酸の割合を低下させたが(P=0.003)、リトコール酸は存在する主要な胆汁酸になり、総結腸胆汁酸の32.0%±0.8%を占めた(P=0.0004)。これとは対照的に、UDCA7−スルフェートとUDCA3,7−ジスルフェートの投与は、結腸中のデオキシコール酸とリトコール酸の両方の質量と割合とを実質的に減少させた。
【0029】
糞 便 胆 汁 酸 排 泄
動物群の間で各日排泄される糞便重量の有意差は認められなかった。UDCA、UDCA3−スルフェート、UDCA7−スルフェート及びUDCAジスルフェートを投与された動物における総糞便胆汁酸の排泄は、それぞれ、14.85、10.70、12.65及び10.88mg/g糞便であった。全ての動物の糞便はUDCAを多く含有したが;非コンジュゲート化胆汁酸を投与された動物では、UDCAが殆ど排他的に非コンジュゲート化形で検出された。これとは対照的に、UDCA7−スルフェート及びUDCA3,7−ジスルフェートを投与されたラットの糞便中には無視できる濃度の非コンジュゲート化UDCAが存在し;これらの2種類のコンジュゲートは実際に無変化で糞便中に排泄された(図2)。糞便中に排泄される主要な二次的胆汁酸(secondary bile acid) の濃度は動物群の間で変化した。UDCA群では、リトコール酸が対照値から顕著に増加するが、UDCA7−スルフェート及びUDCA3,7−ジスルフェートの投与後のリトコール酸の糞便排泄は減少した。デオキシコール酸排泄でも同様な傾向が見られた。標準のラット糞便と比較すると、リトコール酸/デオキシコール酸のレイション(ration)は、UDCAを投与したときは20倍より大きく増加し、UDCA3−スルフェートを投与したときには11倍に増加したが、UDCA7−スルフェートを投与したときには増加しなかった(図3)。
【0030】
肝組織の胆汁酸組成
肝組織中の個々の胆汁酸の濃度と割合とを表3に要約する。対照動物では、UDCA濃度は12.0nmol/gであり、総肝臓胆汁酸の2.8%を占めた。UDCAとC−3スルフェートの投与は肝組織UDCAの濃度と割合とを増加させた(図1)。さらに、△22UDCAが肝臓中に比較的高い割合で検出された。これに反して、動物にC−7スルフェート胆汁酸を投与したときには、総UDCA濃度と組成%との顕著な低下が生じた。UDCA投与は肝臓リトコール酸濃度を増加させたが、スルフェートコンジュゲートの投与後は、リトコール酸の減少が生じた。全ての群において、胆汁酸の投与によってデオキシコール酸濃度は減少し、この減少はC−7スルフェートに関して大きかった。肝組織コール酸濃度はUDCAを投与したときにほぼ1/4に減少したが、C−7スルフェートコンジュゲートの投与後にはやや増加した。
【0031】
個々の胆汁酸の投与後に、肝組織中のUDCAのコンジュゲーションは、非コンジュゲート化UDCAとそのC−3スルフェートが主としてタウリンとのコンジュゲーションによって両方ともバイオトランスフォームされることを確立した。投与した胆汁酸に関係なく、無視できる濃度と割合の非コンジュゲート化UDCAと硫酸化UDCAとが全ての動物の肝組織中に存在した(図4)。
【0032】
血漿及び尿の胆汁酸組成
UDCAを投与された動物中の非コンジュゲート化血漿UDCA濃度は4.8±2.2μmol/リットルであり、この値はUDCA3−スルフェート(0.9±0.4μmol/リットル)、UDCA7−スルフェート(0.7±0.5μmol/リットル)及びUDCAジスルフェート(1.0±0.2μmol/リットル)を投与された動物に関して検出された値よりも有意に大きかった。硫酸化UDCA濃度は全ての動物群において同じであり、<0.3μmol/リットルであった。
【0033】
UDCAの尿排泄は、全ての動物に関して胆汁酸投与前は無視できる程度(<0.4nmol/リットル)であった。UDCA後に、尿の非コンジュゲート化UDCA排泄は642.7nmol/日であった。これはスルフェートコンジュゲート(UDCA3−スルフェート,5.2nmol/日;UDCA7−スルフェート,1.8nmol/日;及びUDCA3,7−ジスルフェート,1.3nmol/日)を投与された動物の尿中に排泄されるUDCA濃度よりも有意に大きかった。UDCAのスルフェートコンジュゲートは非コンジュゲート化UDCA(4.6nmol/日)、UDCA3−スルフェート(2.7nmol/日)、UDCA7−スルフェート(317.8nmol/日)及びUDCA3,7−ジスルフェート(217.1nmol/日)の投与後の尿中にも検出された。これは一日投与量の<0.05%に相当するが、これらの胆汁酸コンジュゲートを液体二次イオン化質量分析法によって検出することが可能であった。
【0034】
考 察
肝組織UDCA濃度はUDCAの経口投与によって顕著に増加したが、この胆汁酸は主としてアミド化によってコンジュゲート化された。無視できる量の非コンジュゲート化UDCAが検出され(図4)、これに関して、その代謝はヒトの代謝に類似する。これとは対照的に、C−7スルフェート及びジスルフェートコンジュゲートを投与した場合には、UDCAの肝臓濃度は対照動物に比べて低く、このことはこれらのコンジュゲートが腸から吸収されないために、UDCAの保存が無視できる程度であることを実証した。肝臓UDCA濃度はC−3スルフェートの投与後に増加したが、これが主としてアミド化されるという事実は、UDCA3−スルフェートの有意な脱硫酸化(desulfation) とアミド化とがおこなわれたことを実証した。空腸におけるUDCAのコンジュゲーションのパターンは肝組織の同パターンに匹敵するが、UDCA投与群とUDCA3−スルフェート投与群では高い割合の非コンジュゲート化UDCAが存在した(図1)。胆汁酸供給(feeding) の以前の研究は、胆汁酸プールの最大の富化が4日間までに得られ、供給を持続しても胆汁酸組成の他の変化がもはや生じないことを確立している。
【0035】
UDCAのC−7スルフェートの腸吸収が無いことは糞便の胆汁酸組成にさらに表れる。UDCA7−スルフェート及びUDCA3,7−ジスルフェートを投与された動物におけるUDCAの総量の糞便濃度は、UDCA又はUDCA3−スルフェートを投与された動物の糞便中に検出されるUDCA濃度よりも顕著に大きかった。さらに、UDCAのC−7スルフェートは主として無変化で糞便中に排泄された。これらの研究結果は、C−3胆汁酸スルフェートに対してのみ活性であることが既に判明している細菌スルフェート(bacterial sulfate) の基質特異性によって説明することができる。UDCA投与は主要な二次的胆汁酸とリトコール酸及びデオキシコール酸との糞便排泄に対して顕著な影響を及ぼした。非コンジュゲート化UDCA及びUDCA3−スルフェートを投与した場合には糞便リトコール酸濃度の大きな増加が生じたが、UDCA7−スルフェート及びUDCA3,7−ジスルフェートの投与はこれらの二次的胆汁酸の糞便アウトプットに有意な影響を与えなかった。
【0036】
糞便及び肝臓のリトコール酸濃度の増加はUDCAとこれより軽度ではあるがそのC−3スルフェートとの腸細菌バイオトランスフォーメーションによって説明することができる。UDCAからリトコール酸へのバイオトランスフォーメーションはラットとヒトの両方において同じような程度に生ずる。UDCAを投与された動物の糞便中のデオキシコール酸の増加は末端回腸におけるコール酸吸収の既知の競合阻害と一致し、このコール酸吸収の競合阻害は結腸への溢流(spill-over)の増加と、その結果の7α−デヒドロキシレーション(dehydroxylation)とをもたらし、デオキシコール酸を形成する。興味深いことには、UDCA C−7スルフェートは逆の効果を有するように思われる;肝組織中のコール酸濃度は対照動物に比べてやや増加し、糞便コール酸とデオキシコール酸濃度は減少した。
【0037】
UDCAが有意なバイオトランスフォーメーションを受けてリトコール酸になり、糞便デオキシコール酸濃度を高め、これらの両方が高度に疎水性の胆汁酸であるという事実を考慮すると、化学的に誘導された結腸癌の動物モデルにおいてUDCAの有益な効果が示されていることは恐らく意外であろう。これらのモデルでは、疎水性胆汁酸が腫瘍の成長を促進することが決定的に確立されている。胆汁酸の直腸投与と経口投与、盲腸への胆汁転換(diversion) 、コレスチラミン供給、食餌の脂肪及びある種の繊維(全てが結腸を通しての胆汁酸の流動を高める条件)は、促進効果と一致して、腫瘍形成を増強する。in vitro研究は、デオキシコール酸とリトコール酸がコマイトジェン性(comitogenic) であり、結腸上皮細胞増殖速度を高めることを実証する。オルニチンデカルボキシラーゼ活性とHLAクラスI及びクラスII抗原とに対する他の効果も判明している。
【0038】
UDCAの化学予防効果(chemopreventive effect)に関しては幾つかの可能な説明が存在する。膜傷害性である疎水性胆汁酸と共にin vitroで同時インキュベートする又はin vivoで同時注入するときのUDCAの細胞保護効果と同様な形式で、結腸におけるリトコール酸形成の増加の如何なる有害な効果も比較的高濃度のUDCAの存在によって緩衝されることができる。或いは、保護効果は結腸デオキシコール酸濃度の低下の結果である可能性があり、このことはデオキシコール酸が結腸癌の促進において非常に重要であることを意味すると考えられる。硫酸化胆汁酸の投与によって結腸デオキシコール酸が同様に減少するにも拘わらず、UDCAのC−7スルフェート類は、これらのコンジュゲートがより大きく疎水性の胆汁酸にバイオトランスフォームされないので、原則としてUDCAよりも優れている。さらに、小腸においてC−7スルフェートの吸収が無いことは小量の使用によって同様な化学的予防効果を得ることを可能にすると考えられる。
【0039】
ヒトの結腸発癌における胆汁酸の役割はあまり明らかにされていない。初期の研究は、糞便胆汁酸排泄、特にリトコール酸とデオキシコール酸の排泄が結腸癌患者、腺腫ポリープ患者及び家族性ポリポーシス患者において増加することを示唆しているが、これらの研究結果は数人の他の研究者によっては実証されていない。対照と比較して、結腸癌患者又は腺腫ポリープ患者は糞便中の増大した水相リトコール酸及びデオキシコール酸濃度を有すると報告されており、これらの濃度は結腸細胞の増殖度と相関した。結腸癌の動物モデルとin vito細胞系とにおいてUDCAの化学保護(chemoprotective) /細胞保護効果を支持する先行データにも拘わらず、UDCA投与後のリトコール酸形成の増加は結腸におけるUDCAの総合的効力を限定すると考えられる。糞便中のリトコーレート/デオキシコーレートのレイションはUDCA投与後及びUDCA3−スルフェート投与後は対照に比べて顕著に増加する(図3)。このことは、結腸癌患者及び結腸癌の高い危険性状態にある患者では糞便リトコーレート/デオキシコーレートの比率が増加し、この比率は診断価値があると提案されているので、あまり望ましくない。他方では、UDCA7−スルフェート及びUDCA3,7−ジスルフェートの投与はリトコーレート/デオキシコーレートのレイションを変化させなかった。統計的に有意ではないが、このレイションの減少傾向が観察されたが、これらの二次的胆汁酸の量的な糞便排泄は対照動物と同じであった。
【0040】
さらに、上記で考察したように、UDCAのC−7位置におけるスルフェート基の導入はこの分子の親水性を高め、腸吸収を防止することによって、結腸へのUDCAの部位特異的投与を容易にする。リトコール酸に転化することによって、糞便のリトコール酸/デオキシコール酸比率を高め、結腸疾患の危険因子と見なされる非コンジュゲート化UDCAとは対照的に、C−7スルフェートは代謝的に不活性である。それ故、これらのコンジュゲート化胆汁酸は結腸においてUDCAよりも有効な化学保護剤であると考えられる。
【0041】
ラットにおける胆汁流動(bile-flow)と胆汁脂質分泌に対するデオキシコール酸のスルフェートエステルの代謝と効果
UDCAのC−3及びC−7スルフェートエステルとジスルフェートコンジュゲートをすぐ下記で段階的に詳述するように製造した。続いて、胆道フィステル(bile fistula)中のこれらの胆汁酸の肝臓代謝を試験し、これらの胆汁酸をUDCAと比較して、胆汁流動と胆汁脂質分泌に対するこれらの効果を確認した。
【0042】
材 料 と 方 法
ウルソデオキシコール酸3−スルフェート(UDCA−3S)の合成
イミダゾール(3.5g)とtert−ブチルジメチルシリルクロリド(1.6g)とを、無水ジメチルホルムアミド(1.5ml)−ピリジン(0.75ml)中のUDCA(2g)の氷冷(ice-cold)溶液に加え、この混合物を30分間撹拌した。次に、この反応混合物を氷水(20ml)中に注入して、酢酸エチル(100ml)によって抽出した。有機層を水で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、蒸発させた。得られた油性残渣をヘキサン−酢酸エチル(3:1容量%、250ml)中に溶解し、40gのシリカゲルカラム(28−200 Mesh、Aldrich Chemical Co.社、Wisconsin)。溶液を蒸発させた後に、残渣をエタノール中に溶解し、生成物のUDCA−3−tBDMSエーテル(2.15g、収率83%)を結晶化した。室温における無水酢酸(20ml)とピリジン(20ml)とによるUDCA−3−tBDMSエーテル(2.0g)の5の処理は、油性生成物としてUDCA7−アセテート3−tbDMSエーテルを生じた。アセトン(24ml)中のUDCA7−アセテート3−tbDMSエーテルの溶液に、18% HCl(2.4ml)を加え、混合物を室温において30分間撹拌した。得られた生成物を酢酸エチル中に抽出し、水によって洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、溶媒を蒸発させて、ウルソデオキシコール酸7−アセテートを油性生成物として得た。無水ピリジン(12ml)中のクロロスルホン酸(1.2ml)をUDCA7−アセテート(1.2g)の氷冷溶液に加え、この溶液を50℃に加熱した。30分間後に、水(400ml)を加えて反応混合物の反応を停止させ、生成物をオクタデシルシラン結合シリカの大型カートリッジ、MEGA−BOND−ELUT(Varian、Harbor City、CA)上に吸収させ、メタノールによる溶出によって回収した。次に、メタノール抽出物を蒸発乾固させ、次に、UDCA7−アセテート3−スルフェートのピリジニウム塩を0.2M NaOHメタノール溶液(40ml)中に溶解することによって二ナトリウム塩に転化させ、濾過した。濾液を冷エーテル(400ml)によって希釈して、沈殿を回収し、冷エーテルによって洗浄し、乾燥させた。固体(1.0g)をMeOH(10ml)中に溶解し、3.5M NaOH(10ml)を加え、溶液を室温において18時間撹拌した。水(500ml)によって希釈した後に、生成物をMEGA−BOND−ELUTによって抽出した。カートリッジからのメタノール抽出物を蒸発乾固させ、0.2M NaOHメタノール溶液(30ml)中に溶解して、濾過した。濾液を冷エーテル(300ml)によって希釈し、得られた沈殿を回収し、エーテルによって洗浄した。この操作をメタノール(20ml)とエーテル(200ml)とによって3回繰り返して、UDCA−3−スルフェートの二ナトリウム塩(0.62g、収率50%)を得た。
【0043】
ウルソデオキシコール酸7−スルフェート(UDCA−7S)の合成
無水ピリジン(9ml)中のクロロスルホン酸(0.9ml)をUDCA3−tbDMSエーテル(900mg)の氷冷溶液に加え、混合物を50℃に加熱した。30分間後に、水(400ml)を加えて、反応を停止させた。沈殿の、UDCA3−tbDMS7−スルフェートのピリジウム塩を水によって洗浄し、真空下で乾燥させ、HClによって上述したように加水分解した。生成物をMEGA−BOND−ELUTのカートリッジによって抽出し、メタノール抽出物を蒸発乾固させ、0.2M NaOHメタノール溶液(30ml)中に溶解した。メタノール溶液を冷エーテル(300ml)によって希釈して、沈殿した二ナトリウム塩を上述したように単離して、UDCA7−スルフェートの純粋な二ナトリウム塩(640mg、収率76%)を得た。
【0044】
ウルソデオキシコール酸3,7−ジスルフェート(UDCA−DS)の合成
ピリジン(10ml)中のクロロスルホン酸(1ml)を無水ピリジン(10ml)中のUDCA(1g)の氷冷溶液に加え、混合物を50℃に加熱した。60分間後に、水(500ml)を加えて、反応を停止させた。生成物をMEGA−BOND−ELUTによって抽出し、上述したように単離して、UDCA−ジスルフェートの二ナトリウム塩(1.1g、収率91%)を得た。
酸化、加溶媒分解及び、メチル−トリメチルシリル(Me−TMS)エーテル誘導体への転化後の全ての合成した化合物中のスルフェート基の位置を、ガス−クロマトグラフィー−質量分析法(GC−MS)を用いて確認した。合成化合物のクロマトグラフィー純度は高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)及び毛管カラムガスクロマトグラフィー(GC)によって測定して、>97%であることが判明した。
【0045】
動物試験
成体雄Sprague−Dawleyラット(体重200〜230g)をペントバルビタール(Nembutal、7.5mg/100g体重)の腹腔内注入によって麻酔させ、追加の投与量によって鎮静状態に維持した。右頚静脈と総胆管とに、PE−50ポリエチレンチューブ(Clay−Adams,Parsippany,N.J.)を用いてカニューレを挿入した。実験を通して、直腸プローブとサーモスタット制御加熱パッド(Harvard Apparatus Co.社,Millis,Mas.)とを用いて、体温を37℃に維持した。Harvardポンプ(Harvard Apparatus Co.社)を用いて、生理的食塩水を1.0ml/時の速度で、頚静脈中に2時間の対照期間(control period)にわたって注入した。基底分析(base-line analysis)のために2つの10分間胆汁サンプルを回収した後に、胆汁酸を個々に、段階的に投与量を増加させて(0.5、1.0及び2.0μmol/分/100g体重)30分間にわたって静脈内(i.v.)注入した。胆汁酸溶液は0.45%生理的食塩水中3%ヒトアルブミン中に調製した。各実験に6匹の動物を用いて、胆汁を予め秤量した管中に10分間毎に回収した。実験の終了時に、心臓穿刺によって血液を採取し、膀胱の吸引によって尿を採取した。全ての生物学的標本は−20℃において保存した。この動物試験プロトコール(#1B10044)はChildren’s Hospital Medical Center(Cincinnati,Ohio)のBioethics委員会によって認可された。
【0046】
分析方法
プレコートした(precoated) シリカゲルGプレート(Merck,0.2mm厚さ)上でn−ブタノール−酢酸−水(10:1:1、容量比)の溶媒系を用いて、TLCをおこなった。ホスホモリブデン酸の10%エタノール溶液を吹き付けた後に120℃において5分間加熱することによって、スポットを可視化した。
可変波長UV検出器を装備し、25x0.46cmのHypersil ODSカラム(5μm粒度;Keystone Scientific,Bellefonte,PA)を収容するVarian 5000HPLC機器(Varian Associates社,Palo Alto,CA)を用いて、HPLCをおこなった。このカラムは周囲温度において操作し、溶離用溶媒は、pH6.8に調節し、Rossi等の方法[「ヒト胆汁中のコンジュゲート化胆汁酸の高圧液体クロマトグラフィー分析:硫酸化及び非硫酸化リトコリルアミデートの同時分解(simultaneous resolution) と、総コンジュゲート化胆管(common conjugated bile duct) 」,J.Lipid Res.28:589〜595(1987)]から改良した、メタノール−0.01Mリン酸塩緩衝剤(65:35、容量比)であった。流速度は1.0ml/分であり、胆汁酸は205nmにおける吸収によって検出された。
GCは30メートルDB−1(4mm内径;0.25μmフィルム)融合シリカ毛管カラム(J&W Scientific社,Rancho Cordova,CA)を収容するHewlett−Packard5890ガス クロマトグラフ上で、2℃/分の増分による225℃から295℃までの温度プログラムと、それぞれ、2分間と30分間の初期と最終の等温期間とを用いて、実施した。ヘリウムをキャリヤーガスとして1.8ml/分の流速度で用いた。
【0047】
GC−MSは、同じGCカラムを収容して、同じクロマトグラフィー条件下で操作されるVG Autospec Q磁気セクター機器(magnetic sector instrument) 又はFinnigan4635クァドルプルGC−MS−DS機器上で実施した。電子イオン化(70eV)質量スペクトルを50〜1000Da/eの質量範囲にわたって溶出成分の反復走査によって記録した。
胆汁サンプル、尿及び合成化合物の負イオン高速原子衝突−質量分析法(FAB−MS)スペクトルを、FABプローブの銅ターゲット上にスポットしたグリセロールマトリックスの小滴上に、等量の約1μlのオリジナル胆汁抽出物と、10μl〜50μlの尿抽出物と、メタノール中に溶解したμg量の合成胆汁酸とを供給した後に得た。このプローブを質量分析計のイオンソース中に直接導入し、8kV及び20μAで操作されるサドル フィールド 原子ガン(saddle field atom gun) (Ion Tech,Teddington,Middlesex,UK)によって発生したキセノン、又はセシウム ヨウ素( 35kV)から発生したセシウムのいずれかの高速原子ビームを、サンプルを含むターゲットに発射した。50〜1000Da/eの質量範囲にわたって負イオンスペクトルが得られた。
【0048】
胆汁分析
胆汁量を1g/mlの密度を想定して、重量分析によって測定した。加溶媒分解前(非硫酸化胆汁酸)と加溶媒分解後(総胆汁酸)とに、胆汁中の総3α−ヒドロキシ胆汁酸濃度を酵素的に測定した(Mashige,F.等,「血清中の総胆汁酸の直接分光測定法」,Clin.Chem.27:1352〜1356(1981))。胆汁流動速度に胆汁酸濃度を乗ずることによって、胆汁酸アウトプットを算出した。胆汁リン脂質(biliary phospholipid)をコリンオキシダーゼ方法(Nippon Shoji社,日本、大阪)に基づく酵素的方法によって測定した(Grantz,D.等,「胆汁中のコリン含有リン脂質の酵素による測定」,J.Lipid Res.22:273〜276(1981))。コレステロールも酵素的に測定した(Boehringer Mannehim,Indianapolis,IN)(Fromm,H.等,「ヒト胆汁中のコレステロール分析のための単純酵素アッセイの使用」,J.Lipid Res.21:259〜261(1980))。
【0049】
胆汁及び尿の胆汁酸分析
注入した胆汁酸の肝臓バイオトランスフォーメーションを測定するために、6匹の動物からの胆汁回収物(bile collections)をプールし、抽出、加溶媒分解、加水分解及び誘導体化後に、胆汁の胆汁酸をGC−MSによって測定した。胆汁酸の定量はGCを用いて、個々の胆汁酸のピーク高さ反応を、最初の胆汁サンプルに加えた内標準のノルデオキシコール酸から得られたピーク高さ反応に比較することによって、達成した。胆汁酸の同定はメチレンユニット値(MU)と呼ばれる、n−アルカンの同族系列に比較して、保持インデックスに基づいておこなった、質量スペクトルの分画パターン(fragmentation pattern) を信頼できる標準と比較した。信頼できる胆汁酸標準の100を越える質量スペクトルと保持インデックスとのリストが最近、基準ソース(reference source)として編集された(Lawson,A.M.等,「胆汁酸の質量分析法」,The Bile Acids,4巻,Methods and Applications,167〜267頁(1988))。6匹の動物からの尿回収物をプールし、胆汁酸をBondElut−C18カートリッジを用いた液体−固体抽出によって抽出し、胆汁酸を加溶媒分解、加水分解及び誘導体化後に、GC−MSによって胆汁酸を分析した。
【0050】
親油性アニオン交換クロマトグラフィーを用いた胆汁酸のグループ分け
UDCA−3Sを注入した動物の場合に、胆汁酸注入(1.0μmol/分/100g体重)の最終期間中に胆汁を回収した。胆汁酸を加溶媒分解し、親油性アニオン交換ゲル、ジエチルアミノヒドロキシプロピルSephadex LH−20(Packard Instruments,Groningen,オランダ)を用いて、それらのコンジュゲーション形式に基づいてグループに分離した。加水分解と、Me−TMSエーテルの調製後に、各画分中の胆汁酸組成をGC−MSによって測定した。
【0051】
統計的方法
結果は平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表現した。胆汁流動と胆汁脂質アウトプットとは、それぞれ、μl/分/g肝臓とnomol/分/g肝臓として表す。統計分析はINSTATプログラム(Graphpad Software社,San Diego,CA)を用いておこなった。グループ間のパラメトリックデータ(parametric data) をStudent t−検定を用いて分析した。異なるグループ間の統計的比較は一方向分散分析(one way analysis of variance) (ANOVA)によっておこなった。これらの数値が異なる胆汁塩の注入に関して有意であることが判明し、任意の2グループの比較をBonferroni t−検定によっておこなった。線形回帰分析をおこなった。各胆汁酸の胆汁分泌促進活性を胆汁酸分泌速度と胆汁流動との間の相互関係の回帰線の勾配から判定し、μl/μmolとして表現した。勾配間の比較は一方向ANOVAによっておこなった。
【0052】
結 果
胆汁流動と胆汁酸分泌
胆汁流動と胆汁酸分泌速度とに対するUDCA、UDCA−3S、UDCA−7S及びUDCA−DSのi.v.注入の効果を図5(a)と(b)に示し、表4に要約する。全ての胆汁酸は顕著に胆汁分泌促進性であり、最大胆汁流動の順序はUDCA−3S<UDCA<UDCA−7S=UDCA−DSであった。胆汁の胆汁酸分泌速度は全ての動物において、UDCA−3S、UDCA、UDCA−DS及びUDCA−7Sの注入中に、それぞれ、138.9±11.8、145.1±17.3、222.4±24.3及び255.4±18.2nmol/分/g肝臓の最大値まで増加した。比較のために、基底胆汁酸分泌は平均して40.4±4.2nmol/分/g肝臓であった。各胆汁酸の注入後の胆汁酸分泌速度と胆汁流動との関係を図6に示す。回帰線の勾配から算出された、UDCA、UDCA−7S、UDCA−3S及びUDCA−DSの見かけの胆汁分泌促進活性は、それぞれ、16±2、15±1、13±1及び16±1μl/μmolであった。胆汁酸に依存しない胆汁流動を実証する回帰線のインターセプト(intercept) は全ての動物群に関して同じ大きさ(1.7μl/分/g肝臓)であった。
【0053】
胆汁脂質分泌
コレステロールとリン脂質との胆汁アウトプットに対するUDCAとそのスルフェートコンジュゲート注入の効果を図10と図11に示す。UDCAとUDCA−7S注入の最初の40分間にわたって、胆汁コレステロールは増加し、それぞれ、1.88±0.19と1.76±0.21nmol/分/g肝臓の最大分泌速度に達し、コレステロール分泌はUDCA−7Sによって維持されたが、UDCAをさらに投与量を段階的に高めながら注入した場合には顕著な低下を示した。注入前の期間(pre-infusion period) では、コレステロールの対応する分泌速度は平均して、それぞれ、1.46±0.1と1.42±0.16nmol/分/g肝臓であった。これに反して、UDCA−3SとUDCA−DSの注入は胆汁コレステロールアウトプットを基底値に比べて有意に低下させて、それぞれ、0.40±0.05と0.37±0.12nmol/分/g肝臓にした。胆汁リン脂質分泌はUDCAとUDCA−7Sの注入によって有意に増加したが、これに反して、UDCA−3SとUDCA−DSは胆汁リン脂質を有意に減少させた(表4)。
【0054】
胆汁及び尿の胆汁酸の負イオンFAB−MS分析
非コンジュゲート化UDCAの注入前(基底期間)と注入中に回収したプールされたラット胆汁の負イオンFAB−MSスペクトルを図12と図13に示す。基底胆汁サンプル中のm/z514とm/z498とのイオンは、それぞれ、トリヒドロキシ−及びジヒドロキシ−コラノエートのタウリンコンジュゲートを表し、ラット胆汁中の主要な種である原発性胆汁酸を表す。UDCAの注入中に、スペクトル中の主要なイオンはm/z498とm/z448になり、このことは注入されたUDCAが殆ど排他的にタウリン及びグリシンとコンジュゲートしたことを示す。m/z471のイオンはジヒドロキシコラノエート(UDCA)スルフェートを表し、m/z567とm/z589(ナトリウムアダクツ)のイオンはUDCAのフルクロニドコンジュゲートを表す。
UDCA−7Sの注入中に、スペクトル(図15)中の主要なイオンはm/z471であり、そのナトリウムアダクツはm/z493であり、これらのイオンは無変化UDCA−7Sを表す。UDCA−7Sのさらなる代謝転換を示す、他の有意なイオンは存在しなかった。
UDCA−3Sの注入中に、m/z471とm/z493(ナトリウムアダクツ)におけるイオンは無変化胆汁酸の胆汁分泌を確証し、m/z550とm/z600におけるイオンはグリシン及びタウリンによるアミド化を表す(図14)。
UDCA−DSの注入中に、主要なイオンはm/z471とm/z493(ナトリウムアダクツ)とm/z573とであった。m/z573のイオンはUDCA−DSを表し、m/z471とm/z493はフラグメントイオンである。UDCA−DSのさらなる代謝転換を示す、他のイオンは存在しなかった(図16)。
【0055】
胆汁の胆汁酸のGC−MS分析
表5は、UDCAの注入後の胆汁中の個々の胆汁酸と、種々なスルフェートコンジュゲートとの相対的%組成を要約する。基底状態において、コール酸、α−ムリコール酸及びβ−ムリコール酸がラット胆汁の主要な胆汁酸であった。全ての化合物の注入中に、UDCAが主要な胆汁中胆汁酸になり、%組成は全ての群で同じであり、このことは硫酸化胆汁酸の全てが肝臓によって吸収されて、胆汁中に効率的に分泌されたことを示した。
UDCAのC−7スルフェートとジスルフェートエステルとのアミド化を含めたバイオトランスフォーメーションを支持する証拠は存在しなかったが、非コンジュゲート化UDCAとUDCA−3Sの両方は、恐らく側鎖において、さらなるヒドロキシル化によって代謝された、しかし、ヒドロキシル化代謝産物の正確な構造はまだ明確に確立されていない。
UDCA−3Sの注入中に胆汁中に分泌された胆汁酸コンジュゲートの分離は、等しい割合(25%)の注入された胆汁酸がタウリンコンジュゲート及びグリシンコンジュゲートとして回収され、UDCAが殆ど排他的にタウリン及びグリシンによってコンジュゲートされたことを実証した。UDCA−7SとUDCA−DSのバイオトランスフォーメーションが無いことがFAB−MSによって確認されたので、さらなるコンジュゲート分離試験は不必要であると思われた。
【0056】
尿の胆汁酸分析
全ての尿サンプルの負イオンFAB−MS分析は、UDCAのスルフェートエステルが全て尿中に排泄されたことを示し、これはGC−MS分析によって確証された。しかし、量的には、尿中に排泄されたUDCAスルフェートの相対的割合は、排除の主要な経路であった胆汁排泄に比べて小さかった。UDCAを注入した場合には、総投与量の無視できる割合(0.01%)が尿中に出現した。UDCA−3スルフェート、UDCA−7スルフェート及びUDCA−ジスルフェートに関しは、尿中に出現した、投与量の対応する割合は、それぞれ、2.8%、0.9%及び2.2%であった。
【0057】
考 察
上述した結果は、UDCAと同様に、スルフェートコンジュゲートの全てが明らかに胆汁分泌促進性であり、胆汁酸分泌を高めることを実証する。個々の胆汁酸に関する最大胆汁流動の順序はUDCA−DS=UDCA−7S>UDCA>UDCA−3Sであり、HPLC保持インデックスから評価された、それらの相対的な疎水性/親水性特性に直接関係しなかった。
【0058】
胆汁酸核のC−7位置におけるスルフェート部分の存在は、UDCAによって誘導されるよりも有意に高い胆汁流動を生じ、C−3スルフェートは、胆汁分泌促進性であるが、胆汁流動の刺激に関しては、非コンジュゲート化UDCAよりも効果的ではなかった。これらの差異は、C−3スルフェートの有意なアミド化が初回通過肝臓クリアランス中におこなわれるが、C−7位置のスルフェート部分がバイオトランスフォーメーションを妨害するという事実によって説明されることができる。アミド化スルフェートが低い胆汁分泌促進性を有することも考えられる。興味深いことには、胆汁中に出現するUDCAの相対的割合は、これらの化合物の間に胆汁流動の有意差が存在したとしても、試験した全ての胆汁酸に関して同じであった。
【0059】
コレステロールとリン脂質の分泌に関しては、明確な傾向が認められた。最大に極性である胆汁酸(それらのHPLC保持インデックスによって証明)が胆汁コレステロールとリン脂質のアウトプットを有意に低下させることが判明した。胆汁酸の疎水性/親水性と、コレステロール及びリン脂質の分泌との間のこの関係は、恐らく分子の洗浄力(detergenicity) に関連すると思われる、即ち、低洗浄性で高度に極性の胆汁酸スルフェートはより大きく疎水性の胆汁酸よりも低い膜傷害性である。
【0060】
非コンジュゲート化UDCAに比べて、UDCAの高親水性3−スルフェートと3,7−ジスルフェートコンジュゲートによって誘導される、低いコレステロール及びリン脂質の分泌と大きい胆汁分泌亢進(hypercholeresis) との複合効果は、これらの特定の胆汁酸スルフェートが胆汁分泌停止性肝疾患の治療のためのより高い効力の薬剤でありうることを示唆する。
【0061】
個々のUDCAスルフェートの肝臓バイオトランスフォーメーションの明白な差異が観察された。例えば、核中のC−7位置におけるスルフェート部分の置換は肝臓バイオトランスフォーメーションを妨害するので、UDCA−7スルフェートとUDCA−ジスルフェートとは両方とも無変化で胆汁中に分泌された。このことはUDCAのC−3スルフェートには該当せず、このC−3スルフェートは胆汁中に限定された程度で無変化分泌されるのみでなく、タウリン及びグリシンによる知覚されうるアミド化と、恐らく側鎖におけるさらなるヒドロキシル化とをも受けた。他方では、非コンジュゲート化UDCAは主としてタウリンによってコンジュゲート化され、これより軽度に、グリシンコンジュゲート、スルフェートコンジュゲート及びフルクロニドコンジュゲートに転化されてから、胆汁分泌される。
【0062】
比較的高濃度を注入した後にも、無視できる量のUDCAスルフェートが尿中に排泄された。このことは、尿中の胆汁酸の大部分がスルフェートコンジュゲートであることを考えるときに、特に意外であった。それ故、胆汁分泌停止性肝疾患を有する患者に胆汁の胆汁酸スルフェートが存在しないことと、硫酸化した尿中胆汁酸の高い割合と高濃度という研究結果とは腎臓硫酸化によってのみ説明されることができ、胆汁酸の肝臓硫酸化によっては説明されない。これらの観察は、硫酸化胆汁酸が肝臓によって容易に吸収され、胆汁中に運ばれることを明確に実証するが、肝臓硫酸化が胆汁うつ滞における重要な代謝経路であるという一般に受容された考えを支持するとは思われない。これに関して、腎臓は胆汁うつ滞中に肝臓を胆汁酸の有害性から保護するために重要な代謝器官である。
【0063】
ラットは、胆汁酸を有意に6β−ヒドロキシル化する種であり、CDCA及びUDCAの6β−ヒドロキシル化が生ずることが判明している。この試験では、例えばムリコール酸異性体のような、UDCAのヒドロキシル化生成物の有意な量を検出することができなかった。胆道フィステルラットにおいてタウロケノデオキシコール酸ジスルフェートとグリコケノデオキシコール酸ジスルフェートとが90%まで代謝されて、3α,7α−ジスルフェート、6β−ヒドロキシ5β−コラン酸(α−ムリコール酸の3α,7α−ジスルフェート)になることが報告されている。本発明に関して実施された実験では、UDCA−7SもUDCA−ジスルフェートもヒドロキシル化されなかった。これらの実験は、スルフェート基の存在が核の肝臓バイオトランスフォーメーションを防止することを強度に示唆する。しかし、ヒドロキシル化を担当する酵素が基質としてのアミド化胆汁酸に選択的に作用することが可能であると考えられる。
【0064】
胆汁酸とタウリンとのコンジュゲーションは酵素(胆汁酸CoA:グリシン/タウリン−N−アシル−トランスフェラーゼ)の基質アフィニティと、肝臓中のタウリンの供給とに依存することが考えられる。UDCA−3Sの一部がタウリン及びグリシンによってアミド化されることを示したFAB−MSとGC−MSの出願人の結果は、スルフェートエステルが非スルフェート胆汁酸に比べて酵素に対して低いアフィニティを有することを実証する。UDCA−7SとUDCA−DSがタウリン又はグリシンによってアミド化されなかったという観察は、7β−スルフェート部分の存在が酵素活性を妨害することを実証する。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
【表7】

【0072】
本発明の幾つかの特定の態様を上記で詳述したが、本発明の範囲はこれらの態様に限定されず、下記のような態様が含まれる。
1.3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(UDCA)のスルフェートと、薬理学的に受容されるキャリヤーとを含む、薬理学的に受容される組成物。
2.前記スルフェートがUDCA−3−スルフェート、UDCA−7−スルフェート、UDCA−3,7−ジスルフェート、グリコ−UDCA−3−スルフェート、グリコ−UDCA−7−スルフェート、グリコ−UDCA−3,7−ジスルフェート、タウロ−UDCA−3−スルフェート、タウロ−UDCA−7−スルフェート、タウロ−UDCA−3,7−ジスルフェート、及びこれらの組合せから成る群から選択される、1記載の薬理学的に受容される組成物。
3.前記スルフェートがUDCA−3−スルフェート、UDCA−7−スルフェート、UDCA−3,7−ジスルフェート及びこれらの組合せから成る群から選択される、1記載の薬理学的に受容される組成物。
4.前記スルフェートがUDCA−7−スルフェート、UDCA−3,7−ジスルフェート及びこれらの組合せから成る群から選択される、1記載の薬理学的に受容される組成物。
5.前記スルフェートが胃腸管の炎症性状態を抑制又は治療するために有効な量で存在する、1記載の薬理学的に受容される組成物。
6.前記炎症性状態が小腸の炎症性状態、大腸の炎症性状態、及びこれらの組合せから成る群から選択される、5記載の薬理学的に受容される組成物。
7.前記炎症性状態が結腸癌、直腸癌、結腸の腫瘍、直腸の腫瘍、結腸の発癌、直腸の発癌、潰瘍性大腸炎、腺腫様ポリープ、家族性ポリポーシス及びこれらの組合せから成る群から選択される、5記載の薬理学的に受容される組成物。
8.前記スルフェートが肝臓の炎症性状態を抑制又は治療するために有効な量で存在する、1記載の薬理学的に受容される組成物。
9.前記スルフェートが哺乳動物の大腸にUDCAを投与するために有効な量で存在する、1記載の薬理学的に受容される組成物。
10.前記スルフェートがC−7炭素上にスルフェート部分を含み、前記スルフェートが、UDCAによる又はC−7炭素上にスルフェート部分を有さないUDCAスルフェートによる大腸へのUDCA投与に比べて、哺乳動物の大腸へのUDCA投与を改良するために有効な量で存在する、9記載の薬理学的に受容される組成物。
11.UDCAの腸吸収を阻害するための、1記載の薬理学的に受容される組成物。
12.UDCAとその代謝産物との腸転換を阻害するための、1記載の薬理学的に受容される組成物。
13.細菌分解による、UDCAとその代謝産物との腸転換を阻害するための、12記載の薬理学的に受容される組成物。
14.7α−デヒドロキシレーションによる、UDCAとその代謝産物との腸転換を阻害するための、13記載の薬理学的に受容される組成物。
15.前記スルフェートがC−7炭素上にスルフェート部分を含み、結腸中のリトコール酸又はその塩、及びデオキシコール酸又はその塩の量を減ずるための、1記載の薬理学的に受容される組成物。
16.前記スルフェートがC−7炭素上にスルフェート部分を含み、結腸におけるリトコール酸又はその塩の、デオキシコール酸又はその塩に対する比率を実質的に高めることなく、結腸にUDCAを投与するための、1記載の薬理学的に受容される組成物。
17.肝疾患及び肝機能の血清生化学を改良するための、1記載の薬理学的に受容される組成物。
18.前記血清生化学がアラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ及びこれらの組合せから成る群から選択される酵素の血清濃度を包含する、17記載の薬理学的に受容される組成物。
19.胆汁流動を高めるための、1記載の薬理学的に受容される組成物。
20.リン脂質、コレステロール及びこれらの組合せから成る群から選択される脂質の胆汁分泌を減ずるための、1記載の薬理学的に受容される組成物。
21.前記組成物が単離された器官を灌流するために製剤化されている、1記載の薬理学的に受容される組成物。
22.前記単離された器官が肝臓、肺、腎臓及び腸から成る群から選択される、21記載の薬理学的に受容される組成物。
23.経口投与、局所投与又は静脈内投与用に製剤化されている、1記載の薬理学的に受容される組成物。
24.静脈内投与用に製剤化されている、8記載の薬理学的に受容される組成物。
【0073】
25.哺乳動物に3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(UDCA)を投与して、障害を抑制又は治療する方法であって、UDCAのスルフェートを前記障害を抑制又は治療するために充分な量で前記哺乳動物に投与する工程を含む方法。
26.前記スルフェートがUDCA−3−スルフェート、UDCA−7−スルフェート、UDCA−3,7−ジスルフェート、グリコ−UDCA−3−スルフェート、グリコ−UDCA−7−スルフェート、グリコ−UDCA−3,7−ジスルフェート、タウロ−UDCA−3−スルフェート、タウロ−UDCA−7−スルフェート、タウロ−UDCA−3,7−ジスルフェート、及びこれらの組合せから成る群から選択される、25記載の方法。
27.前記スルフェートがUDCA−3−スルフェート、UDCA−7−スルフェート、UDCA−3,7−ジスルフェート及びこれらの組合せから成る群から選択される、25記載の方法。
28.前記スルフェートがUDCA−7−スルフェート、UDCA−3,7−ジスルフェート及びこれらの組合せから成る群から選択される、25記載の方法。
29.前記障害が胃腸管の炎症性状態である、25記載の方法。
30.前記炎症性状態が小腸の炎症性状態、大腸の炎症性状態、及びこれらの組合せから成る群から選択される、29記載の方法。
31.前記炎症性状態が結腸癌、直腸癌、結腸の腫瘍、直腸の腫瘍、結腸の発癌、直腸の発癌、潰瘍性大腸炎、腺腫様ポリープ、家族性ポリポーシス及びこれらの組合せから成る群から選択される、29記載の方法。
32.前記障害が肝臓の炎症性状態である、25記載の方法。
33.前記スルフェートが前記哺乳動物の大腸にUDCAを供給するために充分な量で投与される、25記載の方法。
34.前記スルフェートがC−7炭素上にスルフェート部分を含み、前記スルフェートが、UDCAによる又はC−7炭素上にスルフェート部分を有さないUDCAスルフェートによる大腸へのUDCA投与に比べて、哺乳動物の大腸へのUDCA投与を改良するために有効な量で投与される、33記載の方法。
35.前記方法がUDCAの腸吸収を阻害する、25記載の方法。
36.前記方法がUDCAとその代謝産物との腸転換を阻害する、25記載の方法。
37.前記方法が細菌分解による、UDCAとその代謝産物との腸転換を阻害する、36記載の方法。
38.前記方法が7α−デヒドロキシレーションによる、UDCAとその代謝産物との腸転換を阻害する、37記載の方法。
39.前記スルフェートがC−7炭素上にスルフェート部分を含み、前記スルフェートが結腸中のリトコール酸又はその塩、及びデオキシコール酸又はその塩の量を減ずるために充分な量で投与される、25記載の方法。
40.前記スルフェートがC−7炭素上にスルフェート部分を含み、前記スルフェートが結腸におけるリトコール酸又はその塩の、デオキシコール酸又はその塩に対する比率を実質的に高めることなく、結腸にUDCAを供給するために充分な量で投与される、25記載の方法。
41.前記障害が肝臓の障害であり、前記スルフェートが肝疾患及び肝機能の血清生化学を改良するために充分な量で投与される、25記載の方法。
42.前記血清生化学がアラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ及びこれらの組合せから成る群から選択される酵素の血清濃度を包含する、41記載の方法。
43.前記スルフェートが胆汁流動を高めるために充分な量で投与される、25記載の方法。
44.前記スルフェートが、リン脂質、コレステロール及びこれらの組合せから成る群から選択される脂質の胆汁分泌を減ずるために充分な量で投与される、25記載の方法。
45.前記スルフェートが、経口投与、静脈内投与及びこれらの組合せから成る群から選択される方法によって投与される、25記載の方法。
46.前記スルフェートが静脈内投与によって投与される、32記載の方法。
47.単離された器官を維持する方法であって、前記単離された器官を3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(UDCA)のスルフェートによって灌流する工程を含む方法。
48.前記単離された器官が肝臓、肺、腎臓及び腸から成る群から選択される、47記載の方法。
【0074】
また、下記のような態様が含まれる。
1.3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(UDCA)のスルフェートまたはそれらの塩と、薬理学的に受容されるキャリヤーとを含む、静脈内投与される哺乳動物の肝疾患を抑制または治療するための組成物であって、前記スルフェートがUDCA−7−スルフェート及びUDCA−3,7−ジスルフェートから成る群から選択され、肝疾患を抑制または治療するための有効量で存在する薬理学的に受容される組成物。
2.肝疾患及び肝機能の血清生化学を改良するための、1記載の薬理学的に受容される組成物。
3.前記血清生化学がアラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ及びこれらの組合せから成る群から選択される酵素の血清濃度を包含する、2記載の薬理学的に受容される組成物。
4.胆汁流動を高めるための、1記載の薬理学的に受容される組成物。
5.リン脂質、コレステロール及びこれらの組合せから成る群から選択される脂質の胆汁分泌を減ずるための、1記載の薬理学的に受容される組成物。
6.器官を維持する方法であって、前記器官を3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(UDCA)のスルフェートまたはそれらの塩によって灌流する工程を含む方法。
7.前記器官が肝臓、肺、腎臓及び腸から成る群から選択される、6記載の方法。
8.前記器官が単離された器官である6記載の方法。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、肝臓、肺、腎臓及び腸などの器官を維持する方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器官を維持する方法であって、前記器官を3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(UDCA)のスルフェートまたはそれらの塩によって灌流する工程を含む方法。
【請求項2】
前記器官が肝臓、肺、腎臓及び腸から成る群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項3】
前記器官が単離された器官である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−6445(P2011−6445A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184945(P2010−184945)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【分割の表示】特願2006−3753(P2006−3753)の分割
【原出願日】平成8年11月19日(1996.11.19)
【出願人】(500469235)チルドレンズ ホスピタル メディカル センター (40)
【Fターム(参考)】