説明

ウレタン製透明保護材、ウレタン製透明保護材の製造方法及び樹脂組成物

【課題】
耐衝撃性、風合いやタック感、意匠性に優れた透明な弾性保護材を提供する。
【解決手段】
数平均分子量3000〜7000及び数平均分子量400〜700の少なくとも2種のポリオキシプロピレンポリオールを含有するポリオキシプロピレンポリオール成分と、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分とを含む樹脂組成物を反応させることによって得られ、上記数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールは、不飽和度が0.01ミリ当量/g以下であるウレタン製弾性透明保護材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン製透明保護材、ウレタン製透明保護材の製造方法及び樹脂組成物に関する。
【0002】
種々の用途に対して各種プレート等が使用されているが、このようなプレートのなかには、表面を保護する必要があるものが存在する。このため、プレート表面を保護するために、プレート表面に各種樹脂層を形成させることによって保護層を形成することが広く行われている。
【0003】
このようなプレートとして、近年IDタグが使用されるようになってきている。IDタグとは、自己認識技術RFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられるものであり、このIDタグの保護層には、従来ポリカーボネート等の硬質樹脂が用いられてきた。しかし、硬質樹脂は、使用用途によれば、衝撃によるワレが発生しやすく、長期使用に耐えられないといった問題が生じていた。また、意匠性、風合いを求められる用途では、硬質樹脂の保護層では充分に対応できなかった。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために、弾性体からなる保護層が検討され、塩化ビニル製のものが提案されたが、環境問題で塩化ビニルが敬遠され、脱塩化ビニル製弾性保護層が求められるようになった。また、他の方法として、通常のエラストマーを保護層として用いることも提案されたが、この場合、耐衝撃性はあるが、風合いがなくゴム状であるために意匠性に欠けるといった問題があった。また、タック感があるため、人が手に持って利用するIDタグのような分野では不快感を与える結果となる。
【0005】
特許文献1には、紫外線安定剤、紫外線吸収剤及び酸化防止剤を含有するポリオール成分と、イソシアネート成分とからなる二液タイプの意匠性部品用ポリウレタン材料が開示されている。しかし、これは、主に変色等が発生せず、良好な外観を呈する意匠性の向上を目的としたものであり、人が触ったときの感触についての風合いやタック感については、検討されていない。
【0006】
特許文献2には、数平均分子量4000〜12000のポリオキシアルキレンポリオールとイソシアネートとを反応して得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、数平均分子量4000〜12000のポリオキシアルキレンポリオールを主成分とする硬化剤とを反応させて得られる熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形品が開示されている。しかし、これは、低硬度を目的としたもので、IDタグの保護層には適していない。また、風合いやタック感についても検討されていない。
【0007】
従って、上述のように、耐衝撃性等の保護機能に加え、優れた風合いやタック感、意匠性を有し、更に、作業性も良好で高生産性を有する保護材が必要とされていた。
【0008】
【特許文献1】特開昭64−4646号公報
【特許文献2】特開2003−252947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、耐衝撃性、風合いやタック感、意匠性に優れた透明な弾性保護材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、数平均分子量3000〜7000及び数平均分子量400〜700の少なくとも2種のポリオキシプロピレンポリオールを含有するポリオキシプロピレンポリオール成分と、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分とを含む樹脂組成物を反応させることによって得られ、上記数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールは、不飽和度が0.01ミリ当量/g以下である
ことを特徴とするウレタン製弾性透明保護材である。
【0011】
上記ウレタン製弾性透明保護材において、上記数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールと、上記数平均分子量400〜700のポリオキシプロピレンポリオールとの混合比は、質量比で40/60〜70/30であることが好ましい。
【0012】
上記ウレタン製弾性透明保護材は、シリコーン系界面活性剤及び/又は末端にイソシアネート基と反応する官能基を有するシリコーンを含有するものであることが好ましい。
上記ウレタン製弾性透明保護材は、IDタグを保護するものであることが好ましい。
【0013】
本発明は、数平均分子量3000〜7000及び数平均分子量400〜700の少なくとも2種のポリオキシプロピレンポリオールを含有するポリオキシプロピレンポリオール成分と、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分とを含む樹脂組成物を用いてポッティング法によって保護層を形成する工程(1)及び上記保護層を加熱硬化させる工程(2)からなり、上記数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールは、不飽和度が0.01ミリ当量/g以下であることを特徴とするウレタン製弾性透明保護材の製造方法でもある。
【0014】
本発明はまた、数平均分子量3000〜7000及び数平均分子量400〜700の少なくとも2種のポリオキシプロピレンポリオールを含有するポリオキシプロピレンポリオール成分と、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分とを含み、上記数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールは、不飽和度が0.01ミリ当量/g以下であることを特徴とする樹脂組成物でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明のウレタン製弾性透明保護材は、数平均分子量3000〜7000及び数平均分子量400〜700の少なくとも2種のポリオキシプロピレンポリオールを含有するポリオキシプロピレンポリオール成分と、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分とを含む樹脂組成物を反応させることによって得られるものであって、上記数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールは、不飽和度が0.01ミリ当量/g以下のものである。このため、優れた耐衝撃性に加え、タック感がなく風合いに優れ、意匠性のある透明な弾性保護材を得ることができる。本発明において、上記保護材は、例えば、IDタグ等の被塗物上に、上記樹脂組成物をポッティングによって流し、成形することによって形成される保護層である。
【0016】
本発明のウレタン製弾性透明保護材は、ポリオキシプロピレンポリオール成分と、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分とを含む樹脂組成物を反応させることによって得られるものである。上記保護材は、ポリオキシプロピレンポリオール成分と脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートとを反応して得られるものであるため、耐衝撃性を有し、また、種々の形状に対応できる意匠性を有し、IDチップ表面にデザインを入れることができる透明性を有する。更に、人が持って使うために要求される耐汗性や耐水性を満たすこともできる。
【0017】
更に上記保護材としては、風合いや心地よい感触として、弾性があり、かつ、ゆっくりと曲がりが戻る感じであることが好ましい。この性質を発現するために、本発明では、数平均分子量3000〜7000及び数平均分子量400〜700の2種のポリオキシプロピレンポリオールを使用する。上記の性質を発揮するためには、ガラス転移温度を常温近くに示すものにすればよいが、ガラス転移温度を常温近くにしただけでは、低温で硬くなってしまうという問題が発生する場合もある。このため、本発明においては、低温でもガラス転移温度を示すために、上記保護材に高分子量と低分子量の2種の数平均分子量を有するポリオキシプロピレンポリオールを使用する。
【0018】
上記ポリオキシプロピレンポリオール成分は、数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオール(以下、高分子量ポリオキシプロピレンポリオールともいう)及び数平均分子量が400〜700のポリオキシプロピレンポリオール(以下、低分子量ポリオキシプロピレンポリオール)の少なくとも2種類のポリオキシプロピレンポリオールを含むものである。
【0019】
上記高分子量ポリオキシプロピレンポリオールの数平均分子量が3000未満であると、低温特性が充分でない。7000を超えると、軟らかくなりすぎたり、低分子量ポリオキシプロピレンポリオールとの相溶性に劣り透明性が損なわれる。低分子量ポリオキシプロピレンポリオールとのバランスをとることができる点で、上記高分子量ポリオキシプロピレンポリオールの数平均分子量は、3000〜6000であることが好ましい。
【0020】
また、上記低分子量ポリオキシプロピレンポリオールの数平均分子量が400未満であると、極性が高くなり、高分子量ポリオキシプロピレンポリオールとの相溶性に劣り、透明性が損なわれる。700を超えると、ガラス転移温度が低くなり、耐衝撃性に劣り、反撥弾性が高すぎて風合いも損なわれる。
【0021】
上記数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールの不飽和度は、0.01ミリ当量/g以下である。ポリオキシプロピレンポリオールは、−OHとプロピレンオキサイドから合成され、分子延長により高分子化されること等により得られるものであるが、通常この時に異性化反応が生じて、CH=CHCHOHが生じることになる。本発明において、上記不飽和度とは、この量を意味する。
【0022】
上記高分子量ポリオキシプロピレンポリオールの不飽和度が0.01ミリ当量/gを超えると、タック感が現れる。通常、ポリオキシプロピレンポリオールは分子量が高くなると不飽和度が大きくなり、モノオールが存在することから、このモノオールが反応ストッパーとなり、イソシアネートで高分子化した場合、部分的に充分に分子延長されず、これがタック感となって現れるものと推察される。
【0023】
本発明では、高分子量ポリオキシプロピレンポリオール及び低分子量ポリオキシプロピレンポリオールを併用するとともに、上記高分子量ポリオキシプロピレンポリオールとして不飽和度が0.01ミリ当量/g以下のものを使用することによって、耐衝撃性、種々の形状に対応できる意匠性、透明性、耐汗性、耐水性、風合い、触った時の心地よい感触に優れ、タック感が抑制された保護材を得ることができる。上記高分子量ポリオキシプロピレンポリオールの不飽和度は、0.007ミリ当量/g以下であることが好ましい。
なお、上記の不飽和度は、「JIS K 1557 ポリウレタン用ポリエーテル試験方法 6.7 総不飽和度」記載の測定方法で得られる値である。
【0024】
上記高分子量ポリオキシプロピレンポリオールと、上記低分子量ポリオキシプロピレンポリオールとの混合比は、樹脂固形分質量比で40/60〜70/30であることが好ましい。上記低分子量ポリオキシプロピレンポリオールの質量比が40%未満であると、ゆっくりと戻る感じの風合いを得ることができないおそれがある。70%を超えると、硬くなりすぎて風合いを損ねるおそれがある。
【0025】
上記高分子量ポリオキシプロピレンポリオール、上記低分子量ポリオキシプロピレンポリオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記高分子量ポリオキシプロピレンポリオールの市販品としては、アクレイム3300N、アクレイム6320N(商品名、いずれも、住化バイエルウレタン社製)、プレミノールS−X3003、プレミノールS−3006(商品名、いずれも、旭硝子社製)等を挙げることができる。
【0027】
上記低分子量ポリオキシプロピレンポリオールの市販品としては、スミフェンTM、スミフェンS429(商品名、いずれも、住化バイエルウレタン社製)、エクセノール430、400MP(商品名、いずれも、旭硝子社製)、MN400、MN700(商品名、いずれも、三井武田ケミカル社製)等を挙げることができる。
これらのそれぞれのポリオキシプロピレンポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記ポリオキシプロピレンポリオール成分は、上記高分子量ポリオキシプロピレンポリオール、上記低分子量ポリオキシプロピレンポリオール以外のポリオキシプロピレンポリオールを含むものであってもよい。
【0029】
本発明で用いられるポリイソシアネート成分は、脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するものである。
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、炭素数6〜10の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
上記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、炭素数6〜16の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0031】
なかでも、コストや作業衛生面等の点から、イソホロンジイソシアネートが好ましい。HDIのトリマーは、比較的極性が高くポリオキシプロピレンポリオールとの相溶性に劣るため、少量を他のイソシアネートとブレンドして使用することが好ましい。上記ポリイソシアネート成分は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のイソシアネート化合物を含むものであってもよい。
【0032】
上記ポリオキシプロピレンポリオール成分及び上記ポリイソシアネート成分は、上記ポリオキシプロピレンポリオール成分のOH基と上記ポリイソシアネートのNCO基の比(NCO基/OH基、NCO Index ともいう。)は、0.95〜1.15の範囲で反応させたものが好ましい。この範囲にすることにより、ポリウレタンとして所定の機械的強度を確保できる。0.95未満であると、未反応のOH基が増え、タック感が増すおそれがある。1.15を超えると、イソシアネートが過剰になり、反応性が低下するおそれがある。
【0033】
上記ポリオキシプロピレンポリオール成分と上記ポリイソシアネート成分とを含む樹脂組成物は、シリコーン系界面活性剤及び/又は末端にイソシアネートと反応する官能基を有するシリコーンを含有してなるものであることが好ましい。
上記シリコーン系界面活性剤及び/又は末端にイソシアネートと反応する官能基を有するシリコーン(以下、これらを「平滑剤」ともいう)を含有することにより、ポリカーボネートポリオールとの相溶性がよく、透明でかつ平滑な面を有する成形品を得ることができる。また、IDチップの上に、上記樹脂組成物をポッティングにより流し、成形することが好適に行うことができるため、種々の形状に対応することができ、金型が不要となる。更に、樹脂の硬化収縮により表面がシワになったり、反応が遅く硬化に時間がかかったりするといった問題が生じることを防止することができる。
【0034】
上記シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ジメチルシリコーン、環状シリコーン、トリメチルシロキケイ酸、メチルフェニルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、高級アルコキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等を挙げることができる。市販品としては、例えば、SZ1142(商品名、日本ユニカー社製)、SH192、SH190、SF2904(商品名、いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)等を挙げることができる。
【0035】
上記末端にイソシアネート基と反応する官能基を有するシリコーンとしては、例えば、アルコール変性シリコーン、エーテル変性シリコーン又はアミノ変性シリコーン等を挙げることができ、具体的には、KF6001、X−22−160AS、X−22−4271、X−22−4842(商品名、いずれも、信越化学社製)を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記平滑剤の総含量は、上記ポリオキシプロピレンポリオール100質量部に対して、0.5〜1質量部であることが好ましい。0.5質量部未満であると、平滑性の寄与が不充分であるおそれがある。1質量部を超えても、効果は変わらず経済的に不利となる。0.5〜0.8質量部であることがより好ましい。
【0037】
上記ポリオキシプロピレンポリオールと上記ポリイソシアネートとを含む樹脂組成物は、反応を促進する目的で、触媒を含むものであってもよい。なかでも、スズ触媒を使用することが好ましい。上記スズ触媒を使用することにより、硬化速度を早め、かつ透明な保護材を形成することができる。なお、アミン系触媒は、反応速度が遅いため多量に配合する必要があるが、この場合、アミンの黄色褐色に着色したりするので好ましくない。
【0038】
上記スズ触媒としては、特に限定されず、公知のものを用いればよく、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、2−エチルヘキサン酸スズ等のスズ化合物を挙げることができる。
【0039】
上記触媒の含有量は、上記ポリオキシプロピレンポリオール成分及び上記ポリイソシアネート成分の合計質量100質量部に対して、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。
【0040】
本発明において、上記樹脂組成物は、上述の成分に、必要に応じて安定剤、難燃剤、防黴剤等の添加剤を配合してもよい。
上記安定剤の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を挙げることができる。上記難燃剤の例としては、クロロアルキルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、アンモニウムポリホスフェート、有機臭素化合物等を挙げることができる。上記防黴剤の例としては、ペンタクロロフェノール、ペンタクロロフェノールラウレート、ビス(トリ−n−ブチル錫)オキシド等を挙げることができる。
本発明において、上記樹脂組成物の反応は、ポリオール及びイソシアネートを反応させる従来公知の方法を用いることができる。
【0041】
上記ウレタン製弾性透明保護材は、ガラス転移温度が2個〔Tg1(高温側)、Tg2(低温側)〕存在するものであり、Tg1は、25〜40℃であることが好ましく、Tg2は、−25℃以下であることが好ましい。これにより、風合いと低温特性を両立させることができる。
【0042】
上記ウレタン製弾性透明保護材は、動摩擦係数(μ)が0.35以下であることが好ましい。これにより、タック感を抑制することができる。
上記ウレタン製弾性透明保護材は、透過率が400〜700nmの波長領域で85%以上であることが好ましい。これにより、透明性を得ることができる。
【0043】
本発明のウレタン製弾性透明保護材の製造方法は、数平均分子量3000〜7000及び数平均分子量400〜700の少なくとも2種のポリオキシプロピレンポリオールを含有するポリオキシプロピレンポリオール成分と、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分とを含む樹脂組成物を用いてポッティング法によって保護層を形成するする工程(1)及び上記ウレタン製弾性透明保護層を加熱硬化させる工程(2)からなり、上記数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールは、不飽和度が0.01ミリ当量/g以下である。このような製造方法により、上述したウレタン製弾性透明保護材を製造することができる。
【0044】
上記工程(1)は、上記樹脂組成物を用いてポッティング法によって保護層を形成する工程(1)である。この工程では、IDタグ等の被塗物上に、ポリオキシプロピレンポリオール成分、ポリイソシアネート成分、平滑剤及びその他の成分を含む樹脂組成物からなる保護層を形成する。上記ポッティング法は、IDタグ等の被塗物上に上記樹脂組成物をポッティングにより流し成形する方法である。この方法は、種々の形状に対応することができ、金型が不要である。上記ポリオキシプロピレンポリオール成分、ポリイソシアネート成分、平滑剤及びその他の成分は、それぞれ上述したものと同様である。
【0045】
上記工程(2)は、上記工程(1)で形成した保護層を加熱硬化させる工程(2)である。これにより、上記保護層を加熱硬化させることができ、硬化した保護層を被塗物上に形成することができる。この結果、耐衝撃性、風合いやタック感、意匠性に優れたウレタン製弾性透明保護材(硬化した保護層)を被塗物上に形成することができる。上記加熱硬化は、60〜120℃で行うことが好ましい。硬化温度が60℃未満であると、硬化促進の硬化が乏しく、120℃を超えると、IDチップへの影響が出たり、成形後常温に戻すと硬化収縮でそりを生じたりするおそれがある。加熱時間は、1〜60分間であることが好ましい。
【0046】
数平均分子量3000〜7000及び数平均分子量400〜700の少なくとも2種のポリオキシプロピレンポリオールを含有するポリオキシプロピレンポリオール成分と、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分とを含み、上記数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールは、不飽和度が0.01ミリ当量/g以下である樹脂組成物もまた本発明の1つである。上記樹脂組成物を用いることにより、IDタグ等の被塗物上に、耐衝撃性、風合いやタック感、意匠性に優れた透明な保護材を得ることができる。上記樹脂組成物中の成分は、上述したものと同様のものである。
【0047】
本発明のウレタン製弾性透明保護材は、耐衝撃性、風合いやタック感、透明性や意匠性に優れるものである。また、金型が不要であるポッティング法により、種々の形状に対応して容易に作成することができ、作業性が良好で、高い生産性を有するものである。従って、本発明のウレタン製弾性透明保護材は、IDタグを保護するものであることが好ましい。また、その他のプレート等の保護層としても適用可能である。
【0048】
本発明のウレタン製弾性透明保護材は、特定の不飽和度を有する高分子量ポリオキシプロピレンポリオール及び低分子ポリオキシプロピレンポリオールを含有するポリオキシプロピレンポリオール成分と、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分とを含む樹脂組成物を反応させることによって得られるものである。このため、耐衝撃性、風合いやタック感、透明性や意匠性に優れるものである。
【発明の効果】
【0049】
本発明のウレタン製弾性透明保護材は、上記構成からなるので、耐衝撃性があり、タック感がなく風合いに優れ、透明性や意匠性に優れる。従って、IDタグ等の保護材として好適に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下に本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0051】
(実施例1〜5、比較例1〜5)
表1、表2に示す配合で2液型注型機を用い、IDタグ上に混合液を流し、加熱炉で加熱して透明保護材でコーティングされたIDタグを得た。
なお、使用した市販品は以下の通りである。
高分子量ポリオキシプロピレンポリオール:
「アクレイム3300N」(不飽和度0.01ミリ当量/g以下、分子量3000、水酸基価57KOHmg/g、住化バイエルウレタン社製)、
「アクレイム6320N」(不飽和度0.01ミリ当量/g以下、分子量6000、水酸基価27KOHmg/g、住化バイエルウレタン社製)、
「スミフェン3086」(不飽和度0.04ミリ当量/g、分子量3000、水酸基価57KOHmg/g、住化バイエルウレタン社製)、
「スミフェン3900」(不飽和度0.08ミリ当量/g、分子量6000、水酸基価27KOHmg/g、住化バイエルウレタン社製)
低分子量ポリオキシプロピレンポリオール:
「スミフェンTM」(分子量400、水酸基価380KOHmg/g、住化バイエルウレタン社製)、
「スミフェンS429」(分子量700、水酸基価250KOHmg/g、住化バイエルウレタン社製)
他のポリオキシプロピレンポリオール:
「スミフェン1500」(分子量1500、水酸基価112KOHmg/g、住化バイエルウレタン社製)、
「SBUポリオール0480」(分子量300、水酸基価560KOHmg/g、住化バイエルウレタン社製)
シリコーン系界面活性剤:「SZ1142」(日本ユニカー社製)
末端にOH基を有するシリコーン:「KF6001」(信越化学社製)
脂環族イソシアネート:「デスモジュールI」(イソホロンジイソシアネート、住化バイエルウレタン社製)
スズ触媒:「ネオスタンU−100」(ジブチルスズジラウレート、日東化成社製)。
【0052】
(評価方法)
上記で得られたIDタグについて、硬度、タック感、風合い、平滑性、透明性について下記の方法で評価した。また、ガラス転移温度を測定した。得られた結果を表1、表2に示す。
硬度
上記IDタグの硬度は、JIS−Aスプリング硬度計を用いて求めた。90JIS−Aを超えると硬く感じる。
【0053】
ガラス転移温度
ガラス転移温度(Tg)を、DVEスペクトロラーにより、周波数10Hz、動歪0.02%、昇温モードで測定した。tanσのピーク温度により高温側をTg1、低温側をTg2とした。
【0054】
タック感
上記IDタグを手で触った時のベタツキ感の有無を評価した。
また、タック感の指標である動摩擦係数(μ)を、表面性測定器「HEIDON−14R」(新東科学社製)により、荷重50g、摩擦速度50mm/分、相手材鉄球の条件で測定した。
【0055】
風合い
上記IDタグを手で触った時の柔軟感について評価した。
また、上記IDタグの反撥弾性について、リュプリ式反撥弾性測定器を用いて求めた。40%以上であるとしっとりとした風合いに欠ける。
【0056】
平滑性
上記IDタグの表面の均一感について、外観、ヒケ、ウネリ、アバタ等を目視により評価した。
透明性(透過率)
上記IDタグ表面の保護層の透過率について、磁気分光光度計U3500(日立製作所社製)を用いて、400〜700nmの波長領域で測定した。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
表1、表2より、実施例のIDタグは、タック感がなく、風合い、平滑性、透明性の全てにおいて優れていたが、比較例のIDタグは、タック感があり、風合いも良好でないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のウレタン製透明保護材は、IDタグ等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量3000〜7000及び数平均分子量400〜700の少なくとも2種のポリオキシプロピレンポリオールを含有するポリオキシプロピレンポリオール成分と、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分とを含む樹脂組成物を反応させることによって得られ、
前記数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールは、不飽和度が0.01ミリ当量/g以下である
ことを特徴とするウレタン製弾性透明保護材。
【請求項2】
数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールと、数平均分子量400〜700のポリオキシプロピレンポリオールとの混合比は、質量比で40/60〜70/30である請求項1記載のウレタン製弾性透明保護材。
【請求項3】
シリコーン系界面活性剤及び/又は末端にイソシアネート基と反応する官能基を有するシリコーンを含有する請求項1又は2記載のウレタン製弾性透明保護材。
【請求項4】
ウレタン製弾性透明保護材は、IDタグを保護するものである請求項1、2又は3記載のウレタン製弾性透明保護材。
【請求項5】
数平均分子量3000〜7000及び数平均分子量400〜700の少なくとも2種のポリオキシプロピレンポリオールを含有するポリオキシプロピレンポリオール成分と、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分とを含む樹脂組成物を用いてポッティング法によって保護層を形成する工程(1)及び前記保護層を加熱硬化させる工程(2)からなり、
前記数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールは、不飽和度が0.01ミリ当量/g以下である
ことを特徴とするウレタン製弾性透明保護材の製造方法。
【請求項6】
数平均分子量3000〜7000及び数平均分子量400〜700の少なくとも2種のポリオキシプロピレンポリオールを含有するポリオキシプロピレンポリオール成分と、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分とを含み、
前記数平均分子量3000〜7000のポリオキシプロピレンポリオールは、不飽和度が0.01ミリ当量/g以下である
ことを特徴とする樹脂組成物。


【公開番号】特開2006−193552(P2006−193552A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3771(P2005−3771)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】