説明

エアアウトレットバルブ装置

【課題】洗車時に水圧・風圧が加わっても水が車内に浸入することを的確に防止でき、車内の空気を車外へ排出できるエアアウトレットバルブ装置を提供する。
【解決手段】自動車のボディー1に車内と車外とを連通して形成された開口部4に取り付けられ、車内から車外への空気の流れのみを許容するエアアウトレットバルブ装置5において、開口部4から車内側に延出されたダクト8と、可撓性材料から板状に形成されその上部14aがダクト8の内部に固定され下部14bが自由となっている複数のバッフルプレート14と、各バッフルプレート14の下部14bの車内側の側面14cが夫々当接されて、各バッフルプレート14を斜めに支えると共に各バッフルプレート14が車内側に開くことを防止して車外側にのみ開くことを許容する複数のストッパ部16とを備え、各ストッパ部16の近傍に、各バッフルプレート14の下部14bの端末14dを下方から覆うようにして車外側に延出された隔壁20を夫々配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアを閉めたとき、車内の空気が車外に流出することを許容するエアアウトレットバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、トラック等のキャブ1のリヤピラー2の背面2a(又はバックパネル3)には、車内と車外とを連通する開口部4が形成されており、この開口部4には、キャブ1の側面に設けられたドアを閉めたとき、車内の空気が車外に流出することを許容するため、図5に示すように、エアアウトレットバルブ装置5aが装着されている(特許文献1参照)。
【0003】
エアアウトレットバルブ装置5aは、開口部4に装着される枠部6と、枠部6に格子状に設けられたグリル7と、枠部6から車内側に延出されたダクト8と、ダクト8に開口された通気口9とを備えている。かかるエアアウトレットバルブ装置5aは、ダクト8を開口部4に挿入してダクト8の下面に配設された爪部10を開口部4の下縁に嵌合させ、リヤピラー2の背面2aに形成されたボディー孔11に押し込まれたグロメット12に枠部6を挟んでネジ13を締め込むことで、開口部4に装着される。
【0004】
ダクト8の内部には、図6に示すように、車内から車外への空気の流れのみを許容するバッフルプレート14が、上下方向に間隔を隔てて複数配設されている。バッフルプレート14は、ゴム等の可撓性材料から薄い板状に形成され(図7参照)、その上部14aがダクト8内に上下方向に間隔を隔てて複数配設された取付部15に固定され、下部14bが自由となっている。また、ダクト8の内部には、図6に示すように、各バッフルプレート14の下部14bの車内側の側面14cが夫々当接されるストッパ部16が、上下方向に間隔を隔てて複数配設されている。各ストッパ部16は、各バッフルプレート14を斜めに支えると共に、各バッフルプレート14が車内側に開くことを防止して車外側にのみ開くことを許容する。
【0005】
【特許文献1】実公平7−14021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記エアアウトレットバルブ装置5aにおいては、洗車時等に、エアアウトレットバルブ装置5aに車外側から水圧・風圧が加わると、バッフルプレート14が車外側に浮き上がり、車内への水の浸入が発生し得る。
【0007】
詳しくは、トラック等の比較的背の高い車両においては、図4に示すように、エアアウトレットバルブ装置5aの設置場所(開口部4)がキャブ1のリヤピラー2の背面2aの上下方向の略中間位置となるケースが多く、この場合、人間の身長を考慮すると洗車時の水圧・風圧が斜め下方からにエアアウトレットバルブ装置5aに加わり易い。この結果、図6に矢印Xで示すように、バッフルプレート14の下部14bの端末14dに向けて斜め上方に水圧・風圧が加わることになり、バッフルプレート14が捲れ上がってしまう。
【0008】
そのため、エアアウトレットバルブ装置5aの設置場所が洗車時の水圧・風圧が直接加わらない場所に限定されたり、水避けのグリル7(図5参照)が大型化して十分な通風面積が確保できなかった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、洗車時に水圧・風圧が加わっても水が車内に浸入することを的確に防止でき、且つ車内の空気を車外へ排出できるエアアウトレットバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、自動車のボディーに車内と車外とを連通して形成された開口部に取り付けられ、車内から車外への空気の流れのみを許容するエアアウトレットバルブ装置において、上記開口部に装着され上記開口部から車内側に延出されたダクトと、可撓性材料から板状に形成されその上部が上記ダクトの内部に固定され下部が自由となっている複数のバッフルプレートと、上記ダクトの内部に配設され、上記各バッフルプレートの下部の車内側の側面が夫々当接されて、上記各バッフルプレートを斜めに支えると共に上記各バッフルプレートが車内側に開くことを防止して車外側にのみ開くことを許容する複数のストッパ部とを備え、且つ上記各ストッパ部の近傍に、上記各ストッパ部側から上記各バッフルプレートの下部の端末を下方から覆うようにして車外側に延出された隔壁を夫々配設したものである。
【0011】
上記隔壁又は上記ストッパ部に、上記バッフルプレートの下部の端末に臨む突起部を設け、該突起部と上記端末との間の隙間を、上記隔壁と上記端末との間の隙間よりも狭くすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るエアアウトレットバルブ装置によれば、洗車時に水圧・風圧が加わっても水が車内に浸入することを的確に防止でき、且つ車内の空気を車外へ排出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
本実施形態に係るエアアウトレットバルブ装置5は、図5を用いて前述したエアアウトレットバルブ装置5aと比べると、内部構造の一部のみが異なっていて外部(外観)は同様となっている。よって、本実施形態に係るエアアウトレットバルブ装置5は、前述のものと同様にして、図4に示すトラック等のキャブ1のリヤピラー2の背面2a(又はバックパネル3)に車内と車外とを連通して形成された開口部4に、図5に示すようにしてネジ13等により固定される。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るエアアウトレットバルブ装置5は、キャブ1のリヤピラー2の背面2aに形成された開口部4に装着される枠部6と、枠部6に格子状に設けられたグリル7と、枠部6から車内側に延出されたダクト8と、ダクト8に開口された通気口9とを備えている。かかるエアアウトレットバルブ装置5は、ダクト8を開口部4に挿入してダクト8の下面に設けられた爪部10を開口部4の下縁に嵌合させ、リヤピラー2の背面2aに穿設されたボディー孔11(図5参照)に押し込まれたグロメット12に枠部6を挟んでネジ13を締め込むことで、リヤピラー2の開口部4に装着される。図2に示すように、リヤピラー2は、外側パネル2b、内側パネル2cを有する。
【0016】
図1に示すように、ダクト8の内部には、上下多段に分割開口17が形成されたバッフルプレート支持フレーム18が取り付けられており、各分轄開口17には、車内から車外へ向かう空気の流れに対しては車外側に傾動して分割開口17を開き、反対方向の空気の流れに対しては分割開口17を閉じるバッフルプレート14が設けられている。
【0017】
各バッフルプレート14は、ゴム等の可撓性材料から薄い板状に形成され(図7参照)、その上部14aが図1の部分拡大図である図3に示すように分轄開口17の上縁に設けられた取付部15に固定され、下部14bが自由となっていてその下部14bの車内側の側面14cが分割開口17の下縁に形成されたストッパ部16に当接されている。ストッパ部16は、各バッフルプレート14を斜めに支えると共に、各バッフルプレート14が車内側に開くことを防止して車外側にのみ開くことを許容する。
【0018】
ダクト8の内部には、図3に示すように、各バッフルプレート14の車内側の面14eに当接する押え部材19が設けられている。押え部材19は、桟状に形成されており、バッフルプレート14を斜めに支え、バッフルプレート14が車内側に開くことを防止する。バッフルプレート14を斜めに配置する理由は、バッフルプレート14は、形状のくせが付き易い材質(ゴム)からなるため、自重によって分割開口17を確実に閉鎖するためである。
【0019】
各ストッパ部16の近傍には、ストッパ部16側からバッフルプレート14の下部14bの端末14dを下方から覆うようにして車外側に延出された隔壁20が夫々配設されている。隔壁20は、分割開口17の下縁を構成する水平板17aの下面に装着される。隔壁20の端部には、折曲部20aが形成されており、この折曲部20aと分割開口17の上縁を構成するリブ板17bとの間に、バッフルプレート14の上部14aが挟持される。
【0020】
また、隔壁20の上面には、バッフルプレート14の下部14bの端末14dに臨む突起部21が設けられていて、突起部21と端末14dとの隙間が、隔壁20と端末14dとの隙間よりも狭くなっている。突起部21は、バッフルプレート14の下部14bの端末14dに対向するように、図3にて、紙面裏表方向に沿って細長く形成されている。なお、突起部21は、ストッパ部16に設けられてもよい。
【0021】
本実施形態の作用を述べる。
【0022】
図3に示すように、各分割開口17に装着された各バッフルプレート14が各隔壁20によって上下多段に仕切られて独立したバッフル区画Cが形成されているので、洗車時等に図3に矢印Xで示すように車外側から各バッフルプレート14に加わる水圧・風圧が分散され、各バッフルプレート14の浮き上がりが抑制される。また、浮き上がりの最大の原因となるバッフルプレート14の下部14bの端末14dへの水や空気の直撃が、隔壁20によって防止される。よって、各バッフルプレート14が車外側に浮き上がることが防止され、車内への水の浸入を防止できる。
【0023】
また、隔壁20の上面にはバッフルプレート14の下部14bの端末14dに対向する突起部21が設けられているので、突起部21と端末14dとの隙間を、バッフルプレート14が車外側に開くことを許容しつつ可及的に小さくできる。よって、図3に矢印Xで示す水圧・風圧がバッフルプレート14の下部14bの端末14dに直撃することが、略完全に回避される。よって、洗車時等の水圧・風圧によってバッフルプレート14が捲れ上がることを略完全に防止できる。
【0024】
また、図2に示すように、グリル7の縦ルーバー7aが車幅方向内側に向いて配設されているので、この縦ルーバー7aが洗車時等に車外の車幅方向外側からグリル7に当たる水や空気の邪魔板として機能し、水や空気がダクト8内に浸入することが防止される。なお、グリルは7、縦ルーバー7aと横ルーバー7bとから格子状に構成されている。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係るエアアウトレットバルブ装置5によれば、洗車時等における水が車内側に浸入し難くなるので、エアアウトレットバルブ装置5の設置場所が洗車時の水圧・風圧が直接加わらない場所に限定されることはなく、車体設計(キャブ1の設計)の自由度が増す。また、水避けのグリル7(図5参照)が大型化することがないので、十分な通風面積を確保できる。
【0026】
なお、突起部21は省略することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るエアアウトレットバルブ装置の縦断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1の部分拡大図である。
【図4】エアアウトレットバルブ装置が装着される自動車(トラック)のボディー(キャブ)の後方斜視図である。
【図5】エアアウトレットバルブ装置のキャブへの装着の様子を示す斜視図である。
【図6】従来のエアアウトレットバルブ装置の内部の要部を示す縦断面図である。
【図7】エアアウトレットバルブ装置のバッフルプレートの正面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 自動車のボディーとしてのキャブ
4 開口部
5 エアアウトレットバルブ装置
8 ダクト
14 バッフルプレート
14a 上部
14b 下部
14c 側面
14d 端末
16 ストッパ部
20 隔壁
21 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のボディーに車内と車外とを連通して形成された開口部に取り付けられ、車内から車外への空気の流れのみを許容するエアアウトレットバルブ装置において、
上記開口部に装着され上記開口部から車内側に延出されたダクトと、可撓性材料から板状に形成されその上部が上記ダクトの内部に固定され下部が自由となっている複数のバッフルプレートと、上記ダクトの内部に配設され、上記各バッフルプレートの下部の車内側の側面が夫々当接されて、上記各バッフルプレートを斜めに支えると共に上記各バッフルプレートが車内側に開くことを防止して車外側にのみ開くことを許容する複数のストッパ部とを備え、且つ
上記各ストッパ部の近傍に、上記各ストッパ部側から上記各バッフルプレートの下部の端末を下方から覆うようにして車外側に延出された隔壁を夫々配設したことを特徴とするエアアウトレットバルブ装置。
【請求項2】
上記隔壁又は上記ストッパ部に、上記バッフルプレートの下部の端末に臨む突起部を設け、
該突起部と上記端末との隙間を、上記隔壁と上記端末との隙間よりも狭くした請求項1に記載のエアアウトレットバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−126965(P2008−126965A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317589(P2006−317589)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】