説明

エアクリーナ装置

【課題】 吸気騒音の低減と、内部構造の簡素化によるメンテナンス作業の容易化とを、両立して図ることが可能なエアクリーナ装置の提供。
【解決手段】 エアクリーナ装置1の、内部空間11は、1次ダクト3の流路に連通する第1開口と2次ダクトの流路に連通する第2開口とを含む。隔壁6は、内部空間11を、第1開口を含む第1領域16と、第2開口を含むと共に第1領域16に連通する第2領域17とに区画する。エアフィルタ7は、第1領域16と第2領域17との連通部分に設けられ、第1領域16と第2領域17とを仕切る。仕切板8は、隔壁6から延びて第1開口と対向し、第1領域16を、第1開口を含む上流領域18と、エアフィルタ7に臨む下流領域19とに区画すると共に、上流領域18と下流領域19とを連通する連通路20を形成する。この連通路20の流路断面は、1次ダクト3の流路断面とほぼ等しい面積を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアクリーナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に搭載されるエアクリーナ装置には、1次ダクトと2次ダクトとが接続される。1次ダクトはエアクリーナ装置内に空気を導入し、2次ダクトは導入された空気を浄化してエンジンに供給する。
【0003】
また、一次ダクトからエアクリーナ装置への空気の流れによって生じる吸気騒音の主成分は、吸気脈動に起因する成分であり、この吸気脈動に起因する成分は、車外騒音や車室内のこもり音の原因となる。このような比較的低周波の吸気騒音を低減する方法としては、1次ダクトを長く設定することが有効である。
【0004】
ここで、キャブオーバトラック等の車両では、レイアウト上の理由からエアクリーナ装置の外部で1次ダクトを長く設定することが難しい場合がある。係る不都合を解決する方法として、1次ダクトをエアクリーナ装置の内部まで延長させる構造がある。
【0005】
【特許文献1】特開平9−236057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エアクリーナ装置を継続的に使用する場合、定期的に内部を開けてメンテナンス作業を行う必要がある。
【0007】
しかし、1次ダクトをエアクリーナ装置の内部まで延長させる構造では、内部に突出した1次ダクトがメンテナンス作業の妨げとなり、作業性が悪い。また、エアクリーナ装置の内部構造が複雑となるため、汚れやゴミが付着した場合にこれを除去することが困難となる。
【0008】
また、1次ダクトからエアクリーナ装置の内部へ放射される吸気騒音では、共鳴音(比較的周波数の高い騒音)が発生し易く、係る共鳴音の発生を抑える方法として、1次ダクトに小さな穴を開ける方法が知られている。
【0009】
しかし、エアクリーナ装置の外部に露出する1次ダクトに穴を開けると、係る穴から水等が1次ダクトを介してエアクリーナ装置の内部へ侵入するという問題が生じるため、実用化が難しい。
【0010】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、エアクリーナ装置の外部で1次ダクトを長く設定することなく、吸気騒音の低減と、内部構造の簡素化によるメンテナンス作業の容易化とを、両立して図ることが可能なエアクリーナ装置の提供にある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、水等が侵入する可能性を伴うことなく、吸気騒音の共鳴音の低減を図ることが可能なエアクリーナ装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、外気を導入する1次ダクトとエンジンに接続される2次ダクトとが接続され、1次ダクトから導入された空気を浄化して2次ダクトを介してエンジンに供給する自動車のエアクリーナ装置であって、エアクリーナ本体と、内部空間と、隔壁と、エアフィルタと、仕切板と、を備える。
【0013】
内部空間は、エアクリーナ本体の内部に設けられ、1次ダクトの流路に連通する第1開口と2次ダクトの流路に連通する第2開口とを含む。隔壁は、内部空間を、第1開口を含む第1領域と、第2開口を含むと共に第1領域に連通する第2領域とに区画する。エアフィルタは、第1領域と第2領域との連通部分に設けられ、第1領域と第2領域とを仕切る。仕切板は、隔壁から延びて第1開口と対向し、第1領域を、第1開口を含む上流領域と、エアフィルタに臨む下流領域とに区画すると共に、上流領域と下流領域とを連通する連通路を形成する。この連通路の流路断面は、1次ダクトの流路断面とほぼ等しい面積を有する。
【0014】
上記構成では、外気として取り入れられた空気は、1次ダクトを流通してエアクリーナ装置に達する。エアクリーナ装置に達した空気は、第1開口から内部空間の第1領域の上流領域に流入し、仕切板に沿って上流領域内を流れ、連通路を通り、第1領域の下流領域へ流入する。下流領域へ流入した空気は、エアフィルタを通って第2領域へ流入し、第2領域から第2開口を介して2次ダクトへ流出する。エアフィルタは、エンジンに有害な成分を空気中から除去する浄化機能を有しており、浄化された空気が2次ダクトを介してエンジンへ供給される。
【0015】
ここで、第1領域の上流領域と下流領域との間の連通路は、仕切板によって、その流路断面の大きさが1次ダクトの流路断面とほぼ等しい面積を有するように設定されている。このため、第1開口から連通路までの上流領域では、1次ダクトから流入した空気に対して仕切板が大きな抵抗となることなく、第1ダクトが延長された状態に近い状態で、空気が仕切板に沿って良好に流通する。すなわち、第1開口から連通路までの距離分だけ1次ダクトを延長した状態に近い状態が得られるため、エアクリーナ装置の外部で1次ダクトを長く設定することなく、比較的低周波の吸気騒音の低減を図ることができる。
【0016】
また、エアクリーナ装置の内部空間に隔壁及び仕切板を設けるという簡単な構造であり、これらに区画される第1領域の上流領域及び下部領域と第2領域とを比較的単純な形状とすることができる。このため、内部空間に空気を良好に流通させることができ、汚れやゴミが付着し難い構造とすることができる。また、簡単な構造であるため、仮に汚れやゴミが付着した場合であっても、これらを容易に除去することができ、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0017】
また、仕切板を、第1開口から連通路までの上流領域の流路断面が1次ダクトの流路断面とほぼ等しい面積を有するように配置してもよい。
【0018】
上記構成では、第1開口から連通路までの上流領域が第1ダクトの流路とほぼ同等な状態となるため、吸気騒音の低減をさらに効果的に図ることができる。
【0019】
また、仕切板は、上流領域と下流領域とを連通する貫通孔を有してもよい。
【0020】
上記構成では、1次ダクト内の音波が貫通孔から漏れて下流領域へ放射される。これにより、1次ダクトの共鳴によって生じた騒音の増幅が抑制され、吸気騒音の共鳴音(比較的周波数の高い騒音)が低減される。また、貫通孔を内部空間の仕切板に設けたので、この貫通孔を介して外部から水等が内部空間へ侵入することがない。
【0021】
また、貫通孔を、第1開口と対向する位置に配置してもよい。
【0022】
ここで、貫通孔の位置及びその大きさ(断面積)と共鳴音の低減効果との間には、貫通孔を第1開口と対向する位置に配置した場合の方が、貫通孔を第1開口と対向しない位置に配置した場合に比べて、その大きさが小さくても共鳴音の低減効果が向上するという関係が成立する。換言すると、貫通孔を第1開口と対向しない位置に配置した場合、共鳴音の低減を充分に図るためには、貫通孔の大きさを比較的大きく形成する必要が生じる。このため、上流領域から下流領域へ貫通孔を短絡して流通する空気量が増加し、係る空気量の増加が上流領域を1次ダクトの流路の延長として機能させることに対して影響を与えて、上記比較的低周波の吸気騒音に対する低減効果が薄れてしまう可能性が生じる。
【0023】
これに対し、上記構成では、貫通孔を第1開口と対向する位置に配置しているため、貫通孔の大きさを比較的小さく形成しても、共鳴音の低減を充分に図ることが可能となる。このため、上流領域から下流領域へ貫通孔を短絡して流通する空気量を最小限に抑えることができ、上流領域を1次ダクトの流路の延長として十分に機能させることができる。従って、比較的低周波の吸気騒音に対する低減効果を確保しつつ、共鳴音の低減を十分に図ることができる。
【0024】
また、仕切板に切欠を設け、この切欠と第1領域を区画するエアクリーナ本体の内面とによって、上流領域と下流領域とを連通する貫通孔を形成してもよい。
【0025】
上記構成では、仕切板に貫通孔を形成(穿孔)せず単に切欠を設けることによって、仕切板をエアクリーナ本体に組み付けた状態において切欠とエアクリーナ本体の内面とが貫通孔を形成する。
【0026】
さらに、エアフィルタ本体は、1次ダクトと2次ダクトとが接続される第1本体と、第1本体に対して着脱自在に固定される第2本体とを有し、第1本体及び第2本体は、第2本体が第1本体に固定された状態で内部空間を区画する内面をそれぞれ有し、第1本体に接続された1次ダクトの先端は、第2本体が第1本体に固定された状態で少なくとも第2本体側へ突出しないように構成してもよい。
【0027】
上記構成では、第1本体から第2本体を取り外すことによって内部空間が開放される。ここで、車体側に接続されている第1ダクト及び第2ダクトは、共に第1本体に接続されているので、第1本体を車体側に残したまま第2本体のみを車体側から容易に取り外すことができる。従って、第1本体を第2本体から取り外す際に、第1本体及び第2本体が周辺の車載部品に接触してこれを破損させてしまうことを防止することができる。また、第1本体に対するメンテナンス作業は、第1ダクト及び第2ダクトが接続された状態で車体側に残したまま行うことができ、且つ、第2本体に対するメンテナンス作業は、車体側から取り外した状態で行うことができる。従って、係るメンテナンス作業に際して、第1ダクト及び第2ダクトが邪魔にならず、メンテナンス作業を一段と容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るエアクリーナ装置によれば、エアクリーナ装置の外部で1次ダクトを長く設定することなく、吸気騒音の低減と、内部構造の簡素化によるメンテナンス作業の容易化とを、両立して図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は本発明の一実施形態に係るエアクリーナ装置を部分的に破断した状態を示す斜視図、図2は図1のエアクリーナ装置を他の部分で破断した状態を示す斜視図、図3は図1のエアクリーナ装置を矢印III方向から視た要部断面図、図4は図3のIV−IV矢視断面図、図5は図3のV−V矢視断面図、図6は図5の下本体及びエアフィルタを示す断面図である。なお、図中の矢印50は空気の流れ方向を示している。
【0031】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るエアクリーナ装置1は、自動車のエンジンルーム2に固定部材(図示省略)によって着脱自在に取り付けられている。エアクリーナ装置1には、外気を導入する1次ダクト3とエンジン(図示省略)に空気を供給する2次ダクト4とが接続されている。1次ダクト3及び2次ダクト4は、共に略円筒形状を有し、それぞれの内周面が空気の流路を区画形成している。
【0032】
エアクリーナ装置1は、エアクリーナ本体5と隔壁6とエアフィルタ7と仕切板8とを備えている。
【0033】
エアクリーナ本体5は、第1本体としての上本体9と第2本体としての下本体10とを有し、上本体9と下本体10とを組み合わせた状態で略矩形箱体状となる。すなわち、上本体9は、略矩形状の上壁9aと、上壁9aの各周縁から図中下方へ延びる2対の相対向する側壁9b,9c,9d,9eとを備え、下本体10は、略矩形状の下壁10aと、下壁10aの各周縁から図中上方へ延びる2対の相対向する側壁10b,10c,10d,10eとを備え、上本体9と下本体10とを組み合わせた状態で、上壁9aと下壁10aとが相対向し、上本体9側の各側壁9b,9c,9d,9eの端縁(図中下端縁)とこれに対応する下本体10側の各側壁10b,10c,10d,10eの端縁(図中上端縁)とが密接する。下本体10は、上本体9と組み合わされた状態で、ボルト及びナット等の締結部材(図示省略)や相互に係合する係合部材(図示省略)などによって上本体9に着脱自在に固定される。
【0034】
上本体9と下本体10とを組み合わせた状態で、エアクリーナ本体5の内面5a(上本体9の上壁9a及び各側壁9b,9c,9d,9eの内面と下本体10の下壁10a及び各側壁10b,10c,10d,10eの内面)は、略矩形状の内部空間11を区画する。この内部空間11は、後述するように、1次ダクト3の流路に連通する第1開口12(図3に示す)と2次ダクト4の流路に連通する第2開口13(図4に示す)とを含む。
【0035】
上本体9の上壁9aのうち2つの側壁9b,9dに接する角部の近傍には、内部空間11と外部とを連通するダクト挿入口14(図3に示す)が形成され、このダクト挿入口14に、第1ダクト3が嵌合されて保持される。係る状態で、第1ダクト3の先端は、上壁9aの内面から内部空間11内へ大きく突出しない。また、上本体9のうち側壁9bと対向する側壁9cには、内部空間11と外部とを連通する略円筒状のダクト嵌合部15(図4に示す)が外側に向かって突出形成され、このダクト嵌合部15の外周面に第2ダクト4の内周面が嵌合され保持される。従って、本実施形態では、ダクト挿入口14に嵌合された第1ダクト3の開口端が第1開口12を区画し、ダクト嵌合部15の開口端が第2開口13を区画する。
【0036】
隔壁6及び仕切板8は共に板形状を有し、隔壁6、エアフィルタ7及び仕切板8は共に内部空間11内に配置されている。隔壁6は、上本体9に固定され、上壁9aの内面から側壁9bの内面と略平行に図中下方へ延びる。隔壁6の両側縁は、側壁9d,9eの内面と密接し、係る隔壁6によって、内部空間11は、第1開口12を含む第1領域16と、第2開口13を含むと共に第1領域16に連通する第2領域17とに区画される。
【0037】
エアフィルタ7は、第1領域16と第2領域17との連通部分に設けられ、下本体10に着脱自在に固定されている。エアフィルタ7は、各側壁10c,10d,10eの内面及び隔壁6の端縁(図中下端縁)に密接し、第1領域16と第2領域17とを仕切る。
【0038】
仕切板8は、第1領域16に設けられ、上本体9に固定されている。仕切板8は、上壁9aの内面と略平行に配置されて第1開口12と対向し、その周縁は、側壁9b,9dの内面及び隔壁6に密接すると共に、側壁9cの内面から離間する。これにより、仕切板8は、第1領域16を、第1開口12を含む上流領域18と、エアフィルタ7に臨む下流領域19とに区画すると共に、側壁9eの内面との間で上流領域18と下流領域19とを連通する略矩形状の連通路20を形成する。
【0039】
仕切板8の位置及び寸法形状は、図3に示すように、連通路20の流路断面S2と第1開口12から連通路20までの上流領域18の流路断面S3とが、それぞれ1次ダクト3の流路断面S1とほぼ等しい面積を有するように設定されている。ここで、流路断面S1,S2,S3とは、空気の流れ方向50に対して略直交する断面をいう。
【0040】
仕切板8には、第1開口12と対向する位置で上流領域18と下流領域19とを連通する比較的小径の貫通孔21が形成されている。
【0041】
なお、上本体9への隔壁6及び仕切板8の固定は、接着剤等による固着であってもよく、また嵌め込み等による着脱自在な固定であってもよい。
【0042】
上記構成では、外気として取り入れられた空気は、1次ダクト3を流通してエアクリーナ装置1に達する。エアクリーナ装置1に達した空気は、第1開口12から上流領域18へ流入し、仕切板8に沿って上流領域18内を流れ、連通路20を通り、下流領域19へ流入する。下流領域19へ流入した空気は、エアフィルタ7を通って第2領域17へ流入し、第2領域17から第2開口13を介して2次ダクト4へ流出する。エアフィルタ7は、エンジンに有害な成分を空気中から除去する浄化機能を有しており、浄化された空気が2次ダクト4を介してエンジンへ供給される。
【0043】
ここで、第1領域16の上流領域18と下流領域19との間の連通路20は、仕切板8によって、その流路断面S2の大きさが1次ダクト3の流路断面S1とほぼ等しい面積を有するように設定されている。このため、第1開口12から連通路20までの上流領域18では、1次ダクト3から流入した空気に対して仕切板8が大きな抵抗となることなく、第1ダクト3が延長された状態に近い状態で、空気が仕切板8に沿って良好に流通する。加えて、本実施形態では、第1開口12から連通路20までの上流領域18の流路断面S3も、1次ダクト3の流路断面S1とほぼ等しい面積を有するように設定されているため、第1開口12から連通路20までの上流領域18が第1ダクト3の流路とほぼ同等な状態となる。従って、第1開口12から連通路20までの距離分だけ1次ダクト3を延長した状態に極めて近い状態が得られ、エアクリーナ装置1の外部で1次ダクト3を長く設定することなく、比較的低周波の吸気騒音の低減を図ることができる。
【0044】
また、エアクリーナ装置1の内部空間11に略板状の隔壁6及び仕切板8を設けるという簡単な構造であり、これらに区画される第1領域16の上流領域18及び下部領域19と第2領域17とはそれぞれ比較的単純な形状である。このため、内部空間11に空気を良好に流通させることができ、汚れやゴミが付着し難い構造とすることができる。また、簡単な構造であるため、仮に汚れやゴミが付着した場合であっても、これらを容易に除去することができ、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0045】
加えて、下本体10は上本体9に着脱自在に固定されるので、上本体9から下本体10を取り外すことによって内部空間11が開放される。ここで、車体側に接続されている第1ダクト3及び第2ダクト4は、共に上本体9に接続されているので、上本体9を車体側に残したまま下本体10のみを車体側から容易に取り外すことができる。従って、上本体9を下本体10から取り外す際に、上本体9及び下本体10が周辺の車載部品に接触してこれを破損させてしまうことを防止することができる。また、上本体9に対するメンテナンス作業は、第1ダクト3及び第2ダクト4が接続された状態で車体側に残したまま行うことができ、且つ、下本体10に対するメンテナンス作業は、車体側から取り外した状態で行うことができる。従って、係るメンテナンス作業に際して、第1ダクト3及び第2ダクト4が邪魔にならず、メンテナンス作業を一段と容易に行うことができる。
【0046】
また、1次ダクト3内から上流領域18に伝播した音波は、貫通孔21から漏れて下流領域19へ放射される。これにより、1次ダクト3の共鳴によって生じた騒音の増幅が抑制され、吸気騒音の共鳴音(比較的周波数の高い騒音)が低減される。また、貫通孔21を内部空間11の仕切板8に設けたので、この貫通孔21を介して外部から水等が内部空間11へ侵入することがない。
【0047】
ここで、貫通孔の位置及びその大きさ(断面積)と共鳴音の低減効果との間には、貫通孔を第1開口12と対向する位置に配置した場合の方が、貫通孔を第1開口12と対向しない位置に配置した場合に比べて、その大きさが小さくても共鳴音の低減効果が向上するという関係が成立する。換言すると、貫通孔を第1開口12と対向しない位置に配置した場合、共鳴音の低減を充分に図るためには、貫通孔の大きさを比較的大きく形成する必要が生じる。このため、上流領域18から下流領域19へ貫通孔を短絡して流通する空気量が増加し、係る空気量の増加が上流領域18を1次ダクト3の流路の延長として機能させることに対して影響を与えて、上記比較的低周波の吸気騒音に対する低減効果が薄れてしまう可能性が生じる。
【0048】
これに対し、本実施形態では、貫通孔21を第1開口12と対向する位置に配置しているため、貫通孔21の大きさを比較的小さく形成しても、共鳴音の低減を充分に図ることが可能となる。このため、上流領域18から下流領域19へ貫通孔21を短絡して流通する空気量を最小限に抑えることができ、上流領域18を1次ダクト3の流路の延長として十分に機能させることができる。従って、比較的低周波の吸気騒音に対する低減効果を確保しつつ、共鳴音の低減を十分に図ることができる。
【0049】
次に、本実施形態の変形例を図7及び図8に基づいて説明する。
【0050】
これらの変形例は、共に上記仕切板8の態様を変更したものであり、他の構成については上記実施形態と同様であるため、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
図7の仕切板23には、円弧状の切欠24が上記貫通孔21に代えて形成されている。この切欠24は、仕切板23がエアクリーナ本体5に組み付けられた状態で、エアクリーナ本体5の内面5aとの間で貫通孔25を形成する。また、側壁9eと対向して連通路26を区画する仕切板23の端縁23aは、湾曲状に形成されている。
【0052】
また、図8の仕切板27には、その角部を切り落とした切欠28が上記貫通孔21に代えて形成されている。この切欠28は、仕切板27がエアクリーナ本体5に組み付けられた状態で、エアクリーナ本体5の内面5aとの間で貫通孔29を形成する。また、側壁9eと対向して連通路26を区画する仕切板27の端縁27aは、半円弧状に形成されている。
【0053】
上記変形例では、上記本実施形態の効果に加えて、仕切板23,27に貫通孔21を形成(穿孔)せず単に切欠24,28を設けることによって、切欠24,28とエアクリーナ本体5の内面5aとにより貫通孔25,29を形成することができるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、自動車に搭載される様々なエアクリーナ装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係るエアクリーナ装置を部分的に破断した状態を示す斜視図である。
【図2】図1のエアクリーナ装置を他の部分で破断した状態を示す斜視図である。
【図3】図1のエアクリーナ装置を矢印III方向から視た要部断面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視断面図である。
【図5】図3のV−V矢視断面図である。
【図6】図5の下本体及びエアフィルタを示す断面図である。
【図7】変形例を示す要部断面図である。
【図8】他の変形例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1:エアクリーナ装置
2:エンジンルーム
3:1次ダクト
4:2次ダクト
5:エアクリーナ本体
5a:エアクリーナ本体の内面
6:隔壁
7:エアフィルタ
8:仕切板
9:上本体(第1本体)
10:下本体(第2本体)
11:内部空間
12:第1開口
13:第2開口
16:第1領域
17:第2領域
18:上流領域
19:下流領域
20:連通路
21:貫通孔
23:仕切板
24:切欠
25:貫通孔
26:連通路
27:仕切板
28:切欠
29:貫通孔
30:連通路
50:空気の流れ方向
S1:第1ダクトの流路断面
S2:連通路の流路断面
S3:上流領域の流路断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を導入する1次ダクトとエンジンに接続される2次ダクトとが接続され、前記1次ダクトから導入された空気を浄化して前記2次ダクトを介して前記エンジンに供給する自動車のエアクリーナ装置であって、
エアクリーナ本体と、
前記エアクリーナ本体の内部に設けられ、前記1次ダクトの流路に連通する第1開口と前記2次ダクトの流路に連通する第2開口とを含む内部空間と、
前記内部空間を、前記第1開口を含む第1領域と、前記第2開口を含むと共に前記第1領域に連通する第2領域とに区画する隔壁と、
前記第1領域と第2領域との連通部分に設けられ、該第1領域と第2領域とを仕切るエアフィルタと、
前記隔壁から延びて前記第1開口と対向し、前記第1領域を、前記第1開口を含む上流領域と、前記エアフィルタに臨む下流領域とに区画すると共に、前記上流領域と前記下流領域とを連通する連通路を形成する仕切板と、を備え、
前記連通路の流路断面は、前記1次ダクトの流路断面とほぼ等しい面積を有する
ことを特徴とするエアクリーナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアクリーナ装置であって、
前記仕切板は、前記上流領域と下流領域とを連通する貫通孔を有する
ことを特徴とするエアクリーナ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアクリーナ装置であって、
前記貫通孔は、前記第1開口と対向する位置に配置されている
ことを特徴とするエアクリーナ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエアクリーナ装置であって、
前記仕切板は、前記上流領域と下流領域とを連通する貫通孔を、前記第1領域を区画する前記エアクリーナ本体の内面との間で形成する切欠を有する
ことを特徴とするエアクリーナ装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載のエアクリーナ装置であって、
前記エアフィルタ本体は、前記1次ダクトが接続される第1本体と、該第1本体に対して着脱自在に固定される第2本体とを有し、
前記第1本体及び第2本体は、該第2本体が第1本体に固定された状態で前記内部空間を区画する内面をそれぞれ有し、
前記第1本体に接続された前記1次ダクトの先端は、前記第2本体が第1本体に固定された状態で少なくとも前記第2本体側へ突出しない
ことを特徴とするエアクリーナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−226126(P2006−226126A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37412(P2005−37412)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)