説明

エアゾール製品および該エアゾール製品の噴射方法

【課題】噴射物が広範囲に広がり、さらに塗布面で平面状の氷結物を形成することにより、塗布面での付着性を保ちながら、かつ、過度に塗布面を冷却することのないエアゾール製品および該エアゾール製品の噴射方法を提供すること。
【解決手段】水性原液5〜50重量%と、液化ガス50〜95重量%とからなるエアゾール組成物を充填したエアゾール製品であり、前記水性原液と前記液化ガスとが乳化してなり、前記エアゾール組成物を噴射する噴射角度が、前記エアゾール製品の噴射孔を原点として18〜60度であり、前記エアゾール組成物中の液化ガスの単位時間および単位面積当たりの噴射量が、0.009〜0.130g/秒・cm2であるエアゾール製品および該エアゾール製品の噴射方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール製品および該エアゾール製品の噴射方法に関する。さらに詳しくは、噴射物が広範囲に広がり平面状に氷結するエアゾール製品および該エアゾール製品の噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塗布面で液垂れを生じず、かつ、氷結状に凍らせることが可能なエアゾール用組成物が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、シャーベット状の泡沫を噴出する外用エアゾール剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2960445号公報
【特許文献2】特許第2903708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載の発明では、塗布面に積雪状またはシャーベット状に噴射物を形成することが可能であったものの、噴射した際に広範囲に拡がらず、中心部が凸状に盛り上がり、シャーベット状の塊ができるという問題がある。その場合、盛り上がった中心部の周囲が先に融解することから、氷結物の付着性が悪く、患部を冷やす前に患部以外へ氷結物が移動してしまうという問題がある。また、周囲の融解をおこさない場合であっても、中心部のみが長時間、過度に患部を冷却するため、人体に使用した場合に凍傷を起こすという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、噴射物が広範囲に広がり、さらに塗布面で平面状の氷結物を形成することにより、塗布面での付着性を保ちながら、かつ、過度に塗布面を冷却することのないエアゾール製品および該エアゾール製品の噴射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエアゾール製品は、水性原液5〜50重量%と、液化ガス50〜95重量%とからなるエアゾール組成物を充填したエアゾール製品であり、
前記水性原液と前記液化ガスとが乳化してなり、
前記エアゾール組成物を噴射する噴射角度が、前記エアゾール製品の噴射孔を原点として18〜60度であり、
前記エアゾール組成物中の液化ガスの単位時間および単位面積当たりの噴射量が、0.009〜0.130g/秒・cm2である。
【0008】
前記噴射孔の長さが0.1〜20mmであることが好ましい。
【0009】
また、本発明のエアゾール製品の噴射方法は、水性原液5〜50重量%と、液化ガス50〜95重量%とからなるエアゾール組成物を充填したエアゾール製品の噴射方法であり、前記エアゾール組成物を噴射する噴射角度が、前記エアゾール製品の噴射孔を原点として18〜60度であり、前記エアゾール組成物中の液化ガスの単位時間および単位面積当たりの噴射量が、0.009〜0.130g/秒・cm2であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエアゾール製品および該エアゾール製品の噴射方法によれば、噴射物が広範囲に広がり、塗布面で平面状の氷結物を形成することにより、塗布面での付着性を保ちながら、かつ、過度に塗布面を冷却することのないエアゾール製品および該エアゾール製品の噴射方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のエアゾール製品を噴射した際の単位時間および単位面積当たりの液化ガスの噴射量と噴射角度との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のエアゾール製品は、水性原液5〜50重量%と、液化ガス50〜95重量%とからなるエアゾール組成物を充填したエアゾール製品であり、前記水性原液と前記液化ガスとが乳化してなり、前記エアゾール組成物の噴射物の噴射角度が、前記エアゾール製品の噴射孔を原点として18〜60度であり、前記エアゾール組成物中の液化ガスの単位時間および単位面積当たりの噴射量が、0.009〜0.130g/秒・cm2である。
【0013】
前記水性原液は、乳化剤を含む。また、必要に応じて水溶性高分子、有効成分、アルコール類、油分などを配合することができる。水性原液はエアゾール容器内では後述する液化ガスと乳化しており、エアゾール容器から外部に噴射されると水性原液は液化ガスの気化熱により効率よく冷却されて氷結物になる。
【0014】
乳化剤としては、たとえば、POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー;モノヤシ油脂肪酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;POE硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸ペンタグリセリル、モノミリスチン酸ペンタグリセリル、モノオレイン酸ペンタグリセリル、モノステアリン酸ペンタグリセリル、モノラウリン酸デカグルセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル;モノオレイン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノパルミチン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸POEソルビット、テトラステアリン酸POEソルビット、テトラオレイン酸POEソルビットなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;などのHLBが10〜19、好ましくは11〜18である非イオン系界面活性剤、などがあげられる。HLBが10よりも小さい場合は、液化ガスが連続相になりやすい傾向があり、HLBが19よりも大きい場合は液化ガスを乳化しにくくなる傾向がある。
【0015】
前記乳化剤の配合量は、水性原液中0.1〜10重量%、さらには0.2〜8重量%であることが好ましい。界面活性剤の配合量が0.1重量%よりも少ない場合は、水性原液と液化ガスとの乳化安定性が悪くなり、10重量%よりも多い場合は塗布面上で残りやすく使用感が悪くなる。
【0016】
水性原液の主溶媒は水であり、乳化剤により液化ガスと乳化する。該水としては、たとえば、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水などがあげられる。
【0017】
前記水の配合量は、水性原液中50〜99.9重量%、さらには60〜99.5重量%であることが好ましい。水の配合量が50重量%よりも少ない場合は液化ガスと乳化しにくくなる。99.9重量%よりも多い場合は液化ガスと乳化させるための乳化剤を必要量配合しにくくなる。
【0018】
前記水溶性高分子は水性原液の粘度を調整して噴射物を氷結しやすくする、氷結物の固さなどの状態を調整する、などの作用がある。
【0019】
前記水溶性高分子としては、たとえば、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガムなどのガム質;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ニトロセルロース、結晶セルロースなどのセルロース系高分子;デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、デンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどがあげられる。水性原液に液化ガスの保持力を高くし、噴射物を平面状に氷結しやすくなる効果が得られやすい点から、セルロース系高分子、特にヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0020】
前記水溶性高分子を配合する場合の配合量は、水性原液中0.01〜5重量%、さらには0.05〜3重量%であることが好ましい。水溶性高分子の含有量が0.01重量%よりも少ない場合は前述の効果が得られにくく、5重量%を超える場合は水性原液の粘度が高くなりすぎ、液化ガスとの乳化を阻害する。
【0021】
なお、水性原液の粘度は1〜20,000(mPa・s 20℃)であることが好ましく、さらには3〜10,000(mPa・s)であることが好ましい。水性原液の粘度が1(mPa・s)よりも小さい場合は乳化安定性が悪く、20,000(mPa・s)よりも大きい場合は粘度の低い液化ガスと乳化しにくくなる。
【0022】
前記有効成分としては、たとえば、クロタミトン、d−カンフルなどの鎮痒剤、サリチル酸メチル、インドメタシン、ピロキシカム、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤、オキシコナゾール、クロトリマゾール、スルコナゾール、ビフォナゾール、ミコナゾール、イソコナゾール、エコナゾール、チオコナゾール、ブテナフィン、およびこれらの塩酸塩、硝酸塩、酢酸塩などの塩、などの抗真菌剤、酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤、アラントイン、グリシルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、リドカイン、塩酸リドカインなどの局所麻酔剤、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジンなどの殺菌・消毒剤、l−メントール、カンフルなどの清涼剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、レシチン、尿素などの保湿剤、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジルなどの消臭剤、N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)、カプリル酸ジエチルアミドなどの害虫忌避剤、フタルスリン、アレスリン、ペルメトリン、シスメスリン、プロパルスリン、レスメトリン、d−フェノトリン、テフルスリン、ベンフルスリンなどの殺虫成分、サイネピリン、ピペロニルブトキサイト、オクタクロロジプロピルエーテルなどの効力増強剤、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾンなどの紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタンなどの紫外線散乱剤、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、dl−α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロールおよびこれらの混合物などのビタミン類、アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液、アルブチン、コウジ酸などの美白剤;天然香料、合成香料などの各種香料、などがあげられる。
【0023】
前記有効成分を配合する場合の配合量は、水性原液中0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜8重量%配合される。有効成分の配合量が0.05重量%よりも少ない場合は、有効成分の効果が充分に発揮できない傾向があり、10重量%よりも多い場合は、有効成分濃度が高くなりすぎ、有効成分によっては人体へ悪影響を及ぼす場合がある。
【0024】
前記アルコール類は、水に溶解しにくい有効成分を溶解するための溶媒として、また噴射したときの凍りやすさを調整するなどの目的で用いられる。
【0025】
前記アルコール類としては、たとえば、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数が2〜3個の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどの2〜3価のポリオールなどがあげられる。
【0026】
前記アルコール類を配合する場合の配合量は、水性原液中0.1〜40重量%であることが好ましく、さらには0.3〜30重量%であることが好ましい。前記アルコール類の配合量が0.1重量%よりも少ない場合は前述の効果が得られにくく、40重量%よりも多い場合は水性原液と液化ガスとが乳化しにくく、噴射物が氷結しにくくなる。
【0027】
前記油分は、水性原液と液化ガスとの乳化状態を調整する、すべりを良くしたり艶を出すなどの使用感を向上させる、などの目的で用いられる。
【0028】
前記油分としては、たとえば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、イソパラフィンなどの炭化水素油;アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、乳酸セチル、ステアリン酸イソセチル、セトステアリルアルコール、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのエステル油、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコールなどの高級アルコール、アボガド油、マカダミアナッツ油、シア脂、オリーブ油、ツバキ油などの油脂、ミツロウ、ラノリンロウなどのロウ類などがあげられる。
【0029】
前記油分を配合する場合の配合量は、水性原液中0.1〜20重量%、さらには0.5〜10重量%であることが好ましい。油分の配合量が0.1重量%よりも少ない場合は油分を配合する効果が得られにくく、20重量%よりも多い場合は噴射物が氷結しにくくなる、乾燥性が悪くなるなど、使用感が低下する。
【0030】
本発明に用いられる水性原液は、乳化剤、必要に応じて配合される水溶性高分子などを水やアルコール類に溶解させて調製する。なお、水性原液は、必要に応じて油分を乳化させたり、後述するパウダーを分散させてもよい。
【0031】
前記パウダーは、水性原液と液化ガスを乳化しやすくする、乳化安定性を向上させるなど、乳化補助剤として用いられる。
【0032】
前記パウダーとしては、たとえば、乾式法により調製したシリカ、湿式法により調製したシリカ、タルク、酸化亜鉛、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、セラミックパウダー、窒化ホウ素などがあげられる。
【0033】
前記パウダーの配合量は、水性原液中0.01〜5重量%であり、0.03〜3重量%であることが好ましく、さらには0.05〜2重量%であることが好ましい。パウダーの配合量が0.01重量〜5重量%を外れる場合、乳化促進効果が得られにくくなる。
【0034】
前記水性原液の配合量は、エアゾール組成物中5〜50重量%であり、10〜45重量%であることが好ましく、さらに15〜40重量%であることが好ましい。水性原液の配合量が5〜50重量%から外れると液化ガスと乳化しにくく、噴射物が氷結しにくくなるという問題がある。
【0035】
前記液化ガスは、エアゾール容器内では液体であり、水性原液と乳化して乳化物を形成する。
【0036】
前記液化ガスとしては、たとえば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、フロン類、およびこれらの混合物などが挙げられる。また液化ガス中にノルマルペンタン、イソペンタンを配合してもよい。なお、液化ガスとして、液化石油ガスとジメチルエーテルの混合液化ガスを用いると、噴射孔で氷結物が付着してスプレーパターンを乱すことを防止できる。
【0037】
前記液化ガスの配合量は、エアゾール組成物中50〜95重量%であり、55〜90重量%であることが好ましく、さらに60〜85重量%であることが好ましい。液化ガスの配合量が50〜95重量%から外れると水性原液と乳化しにくく、噴射物が氷結しにくくなるという問題がある。
【0038】
前記エアゾール組成物は、耐圧容器に水性原液、液化ガスを充填し、耐圧容器にエアゾールバルブを固着してエアゾール容器を密封し、水性原液と液化ガスをエアゾール容器内で乳化させることにより製造することができる。なお、液化ガスはエアゾールバルブを固着してからエアゾールバルブを通じて充填してもよく、エアゾールバルブを固着する直前にアンダーカップ充填により充填しても良い。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けることによりエアゾール製品となる。
【0039】
本発明のエアゾール製品は、前述のエアゾール組成物を噴射する噴射角度を特定の範囲とし、エアゾール組成物中の液化ガスの単位時間と単位面積当たりの噴射量を特定の範囲にすることにより、噴射物が広範囲に拡がり、かつ平面状に氷結する。
【0040】
前記噴射角度は、噴射部材の噴射孔を原点として18〜60度である。噴射角度が25〜55度であることがさらに好ましい。噴射角度が18度未満の場合、比較的に前方直線状に噴射されることとなり、噴射物は中心部の盛り上がった凸状の氷結物になりやすいという問題があり、噴射角度が60度を超えると、広い範囲に噴射されすぎることとなり、液化ガスの気化熱が分散してしまい噴射物が氷結しにくくなるという問題がある。
【0041】
また、前記エアゾール組成物中の液化ガスの単位時間と単位面積当たりの噴射量は0.009〜0.130g/秒・cm2である。噴射量が0.009g/秒・cm2未満の場合、水性原液を氷結させる冷却能力が不足して噴射物が氷結しにくくなるという問題があり、噴射量が0.130g/秒・cm2を超える場合、中心部の盛り上がった氷結物が得られやすいという問題がある。なお、前記液化ガスの単位時間および単位面積当たりの噴射量は、1秒間当たりのエアゾール組成物の噴射量(g/秒)を測定し、液化ガスの配合割合(重量%)と噴射孔からの適正噴射距離5〜15cmの位置での噴射物の面積(cm2)から算出した値である。
【0042】
前記噴射部材の噴射孔は、直径が0.1〜1.0mmであることが好ましい。直径が0.1mm未満の場合、噴射角度が小さくなりやすい傾向があり、1.0mmを超える場合、液化ガスの単位時間および単位面積当たりの噴射量が多くなりやすい傾向がある。なお噴射孔への通路がストレート形状である場合は噴射孔の直径は0.3〜0.5mmが特に好ましい。また、噴射孔の直前でエアゾール組成物を旋回させてから噴射するメカニカルブレークアップ機構を備えている場合は噴射孔の直径は0.2〜0.6mmが特に好ましい。
【0043】
前記噴射部材の噴射孔の長さは、0.1〜20mmが好ましく、0.2〜7mmが特に好ましい。噴射孔の長さが0.1mm未満の場合、噴射角度が大きくなりやすい傾向があり、20mmを超える場合、噴射角度が小さくなりやすい傾向がある。また噴射孔内で一部が氷結して噴射の拡がり(スプレーパターン)が乱れやすくなる傾向がある。
【0044】
前記エアゾールバルブは特に限定されないが、前述の液化ガスの単位時間および単位面積当たりの噴射量で噴射しやすくするためには、ステム孔の直径が0.3〜0.5mmであり、ハウジングのアンダータップ孔の直径が1.0〜2.0mm、ベーパータップ孔を備えていないものを用いることが好ましい。ステム孔は複数個設けてもよい。
【0045】
前記エアゾール組成物を噴射すると、噴射物は氷結物を形成する。本発明のエアゾール組成物を噴射した際に得られる氷結物の面積は、16〜90cm2であることが好ましく17cm2〜85cm2であること特に好ましい。ここで、凍結物の面積は、噴射孔から対象物(例えばペーパータオルやハンカチ)までの距離が適正噴射距離である5cm〜15cmの範囲で3g噴射したときに対象物上に形成される氷結物の面積である。氷結物の面積が16cm2よりも小さい場合、平らな氷結物が得られず、中心部が凸状に盛り上がりシャーベット状の塊ができるおそれがあり、90cm2よりも大きい場合、氷結物が形成されにくい。また広範囲に噴射するため単位面積辺りの噴射量が少なく塗布面上で直ぐに溶けてしまうなどの傾向がある。
【0046】
次に、本発明のエアゾール製品の噴射方法について説明する。
【0047】
本発明のエアゾール製品の噴射方法は、水性原液5〜50重量%と、液化ガス50〜95重量%とからなるエアゾール組成物を充填したエアゾール製品の噴射方法であり、前記エアゾール組成物の噴射物の噴射角度が、前記エアゾール製品の噴射孔を原点として18〜60度であり、前記エアゾール組成物中の液化ガスの単位時間および単位面積当たりの噴射量が、0.009〜0.130g/秒・cm2となるよう噴射することを特徴とする。
【0048】
エアゾール製品を構成する各成分および噴射物の噴射角度、噴射量については前述と同様である。
【0049】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
評価方法を下記に示す。なお、下記評価方法による評価は、エアゾール組成物を充填したエアゾール製品を25℃に温度設定した恒温水槽内に30分間保持し、その後、エアゾール製品を対象物から適正噴射距離である5cmまたは15cm離したところから噴射した結果である。
【0051】
1.噴射状態
◎:均一で平らに凍る
○:少し中心部が盛り上がるが平らに凍る
△1:平らに凍るが薄くすぐに溶ける
△2:中心部が盛り上がって凍る
×:凍らない
2.噴射角度
噴射孔を原点として測定した噴射物の角度
◎:26〜60度
○:18〜25度
×:18度未満または60度を超える
3.単位時間および単位面積当たりの液化ガスの噴射量
○:0.009〜0.130g/秒・cm2
×:0.009未満または0.130を超える(g/秒・cm2
【実施例】
【0052】
実施例1、2および比較例1
下記の水性原液1を調製し、水性原液1を25g(25重量%)、アルミニウム製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを取り付け、液化ガスとして液化石油ガス(*1)を75g(75重量%)充填した。次いでエアゾール容器を上下に振り、水性原液と液化ガスを乳化させてエアゾール組成物を製造した。なお水性原液1の液密度は1.00g/mLであった。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2に示す。また、図1として、単位時間および単位面積当たりの液化ガスの噴射量を横軸に、噴射角を縦軸にプロットする。黒丸は実施例を表し、参照符号1を付す。なお、後述する比較例は、白抜きの三角で表し、参照符号2を付す。
<水性原液1>
POE(20)POP(8)セチルエーテル(*2) 0.5
タルク(*3) 0.5
精製水 99.0
合 計 100.0(重量%)
*1:25℃での圧力が0.2MPa
*2:NIKKOL PBC-44(商品名)、日光ケミカルズ社製
*3:クラウンタルクPP(商品名)、松村産業社製
【0053】
実施例3、4および比較例2
液化ガスとして液化石油ガス(*4)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてエアゾール組成物を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
*4:25℃での圧力が0.3MPa
【0054】
実施例5〜6
液化ガスとして、液化石油ガス(*1)70重量%とジメチルエーテル30重量%の混合液化ガス(*5)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてエアゾール組成物を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
*5:25℃での圧力が0.3MPa
【0055】
実施例7〜9および比較例3
下記の水性原液2を調製し、水性原液2を25g(25重量%)、アルミニウム製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを取り付け、液化ガス(*1)を75g(75重量%)充填した。次いでエアゾール容器を上下に振り、水性原液と液化ガスを乳化させてエアゾール組成物を製造した。なお水性原液2の液密度は1.00g/mLであった。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
<水性原液2>
POE(20)POP(8)セチルエーテル(*2) 0.5
タルク(*3) 0.5
ヒドロキシエチルセルロース(*6) 0.1
精製水 98.9
合 計 100.0(重量%)
*6:ダイセルHEC−SE850(商品名)、ダイセル化学社製
【0056】
実施例10
水性原液2を40重量%、液化石油ガス(*1)を60重量%用いたこと以外は実施例7と同様にしてエアゾール製品を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
【0057】
実施例11
水性原液2を20重量%、液化石油ガス(*1)を80重量%用いたこと以外は実施例7と同様にしてエアゾール製品を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
【0058】
実施例12
水性原液2を15重量%、液化石油ガス(*1)を85重量%用いたこと以外は実施例7と同様にしてエアゾール製品を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
【0059】
比較例4
水性原液2を55重量%、液化石油ガス(*1)を45重量%用いたこと以外は実施例7と同様にしてエアゾール製品を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
【0060】
比較例5
水性原液2を3重量%、液化石油ガス(*1)を97重量%用いたこと以外は実施例7と同様にしてエアゾール製品を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
【0061】
実施例13〜18および比較例6〜7
液化ガスとして液化石油ガス(*4)を用いたこと以外は実施例7同様にしてエアゾール組成物を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
【0062】
実施例19〜22
液化ガスとして液化石油ガス(*7)を用いたこと以外は実施例7同様にしてエアゾール組成物を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
*7:25℃での圧力が0.45MPa
【0063】
実施例23〜31および比較例8〜10
液化ガスとして液化石油ガス(*5)を用いたこと以外は実施例7同様にしてエアゾール組成物を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。なお、比較例10については、単位時間および単位面積当たりの液化ガスの噴射量が他の実施例および比較例よりも大きな値となったため、図1では省略した。
【0064】
実施例32
水性原液2を15重量%、液化石油ガス(*5)を85重量%用いたこと以外は実施例7と同様にしてエアゾール製品を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
【0065】
実施例33
水性原液2を50重量%、液化石油ガス(*5)を50重量%用いたこと以外は実施例7と同様にしてエアゾール製品を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
【0066】
【表1】

LPG:液化石油ガス
DME:ジメチルエーテル
ST:ストレート形状の噴射孔
MB:メカニカルブレークアップ機構付き
【0067】
【表2】

【符号の説明】
【0068】
1 実施例のエアゾール組成物
2 比較例のエアゾール組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性原液5〜50重量%と、
液化ガス50〜95重量%とからなるエアゾール組成物を充填したエアゾール製品であり、
前記水性原液と前記液化ガスとが乳化してなり、
前記エアゾール組成物の噴射物の噴射角度が、前記エアゾール製品の噴射孔を原点として18〜60度であり、
前記エアゾール組成物中の液化ガスの単位時間および単位面積当たりの噴射量が、0.009〜0.130g/秒・cm2であるエアゾール製品。
【請求項2】
前記噴射孔の長さが0,1〜20mmである請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項3】
水性原液5〜50重量%と、
液化ガス50〜95重量%とからなるエアゾール組成物を充填したエアゾール製品の噴射方法であり、
前記エアゾール組成物の噴射物の噴射角度が、前記エアゾール製品の噴射孔を原点として18〜60度であり、
前記エアゾール組成物中の液化ガスの単位時間および単位面積当たりの噴射量が、0.009〜0.130g/秒・cm2となるよう噴射するエアゾール製品の噴射方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−1465(P2012−1465A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136554(P2010−136554)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】