説明

エアチューブを装着した作業服、及び当該作業服に使用されるエアチューブ

【課題】作業中にクリンカ等の固形物が落下してきた場合、衝撃を十分保護し得るようなエアチューブ付作業服の構成を提供すること。
【解決手段】衝撃を緩和し得るクッション性エアチューブ1を外側に装着した作業服2であって、当該エアチューブ1は、両側における腕の付け根部分を含む肩部の全領域をカバーし11、前側の腹部及び後側の背部の各左右両側において垂下した状態にあり、かつ当該前側及び後側において垂下したチューブは、腰部両側の外側周囲をカバーするように、湾曲した状態にて相互に連結しており、少なくとも前側にて垂下している部分は、肩部の全領域をカバーしている部分と連結していることに基づき、前記課題を達成すると共に、作業者の転倒及び落下に際しても、衝撃を緩和し、人身事故を防ぎ、しかも作業に支障を来たさないようなエアチューブ1を装着した作業服、及び当該作業服2に使用されるエアチューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業中に上方から固形物が落下した場合、当該落下に対し、エアタイプのクッションによって身体に対する衝撃を緩和し得る作業服及び当該作業服を構成し得るエアチューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築現場の作業中に、建築資材が落下したり、あるいは地下工事の作業中に、地上の物体が落下し、作業者の身体に衝突することがある。
【0003】
例えば、都市ごみ等の大型焼却炉の修理を目的として、当該炉を停止したうえで、作業者が炉内に侵入したうえで作業を行っている際、当該炉が稼動中に耐火壁に付着したガラス状のクリンカが数Kg以上に固まった状態にて、上方から落下し作業者に衝突し、多大な人身事故が発生することになる。
【0004】
そのような人身事故の対策として極力クリンカを除去してから炉内に入ることが奨励されているが、その除去作業段階においても、ヘルメットだけを着けた作業者はクリンカ等の落下に対しては無防備に近い状況にあり、当該落下に対処する作業服の出現が要請されるところである。
【0005】
交通事故において、身体が二輪車、自動車等の運転対象物から放出状態となった場合に、身体を防御するために、エアチューブを装着している衣服は、下記の特許文献1,2に開示されており、さらには、特定の位置から身体が下方に落下した場合、死亡事故を防止するために、エアバックの衣服の構成が、下記の特許文献3に開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの特許文献に提案されている構成は、上方からの落下物につき、特に身体を防御する構成、更には当該構成に基づく作用効果は何ら開示及び示唆されている訳ではない。
【0007】
【特許文献1】特開2002−20907号公報
【特許文献2】登録第3080718号実用新案公報
【特許文献3】特開平10−31919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、作業中にクリンカ等の固形物が落下してきた場合、衝撃を十分緩和し、かつ保護し得るようなエアチューブを装着した作業服、及び当該作業服に使用されるエアチューブを構成し得るエアチューブを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)衝撃を緩和し得るクッション性エアチューブを外側に装着した作業服であって、当該エアチューブは、両側における腕の付け根部分を含む肩部の全領域をカバーし、前側の腹部及び後側の背部の各左右両側において垂下した状態にあり、かつ当該前側及び後側において垂下したチューブは、腰部両側の外側周囲をカバーするように、湾曲した状態にて相互に連結しており、少なくとも前側にて垂下している部分は、肩部の全領域をカバーしている部分と連結していることに基づくエアチューブを装着した作業服、
(2)前記(1)のエアチューブを装着した作業服、及び当該作業服に使用されるエアチューブ、
からなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、少なくともヘルメット3を装着したうえで作業を行っている場合には、上方からの固形物の落下に対して、エアチューブ1のうち、両側における腕の付け根の部分を含む肩部の全領域をカバーする部分11のクッションによって、前記落下に基づく衝撃を緩和し、ひいては身体を防御することが可能であると共に、作業者が転倒した場合、又は下方に落下した場合においても、エアチューブのうち、前方の腹部及び後方の背部において左右両側から垂下した部分によって、少なくとも腹部及び背部を防御し、人身事故を相当軽減することが出来る。
しかも、前記基本構成においては、作業者は両腕を何ら拘束されていないことから、作業者の作業には何ら支障は生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1(a)、(b)は、前記(1)の基本構成における典型的な実施形態を示しており、作業服2の外側に装着されているエアチューブ1は、両側における腕の付け根部分を含む肩部の全領域をカバーしている部分11、前側の腹部及び後側の背部の各左右両側において垂下した状態となっている部分12及び13、かつ当該前側及び後側において垂下したチューブが腰部両側をカバーするように、外側に湾曲した状態にて、相互に連結している部分14との協働によって前記発明の効果を発揮することが可能となる。
【0012】
両側における腕の付け根部分を含む肩部の全領域をカバーしている部分11には、上方部から固形物が落下することによってその上側表面に対して、衝突するアクシデントが少なからず発生し、特に尖った固形物が直接衝突した場合には、前記カバーしている部分11が裂ける危険性さえ生じ得る。
【0013】
そのような事故を可能な限り防御するために、前記カバーしている部分11の上側表面において、他の部分よりも比較的硬質のプラスチックによる素材(無論折り曲げ等の可塑性を有することを前提とする)によって被覆すると良い。
【0014】
前記のように、エアチューブ1は、肩部、前側腹部、後側背部を囲んだ状態であり、少なくとも前側において垂下している部分12が、肩部の全領域をカバーしている部分11と連結していることから、エアを充填して場合には、安定した状態にて、身体に装着することができ、エアチューブ1は、作業服2に固着されている必要はなく、分離可能、即ち着脱自在であるような実施形態も採用可能である(無論固着した実施形態も採用可能である)。
【0015】
そして、エアチューブ1が作業服2から分離可能な実施形態の場合には、全ての作業服2にエアパイプを固着する必要がなく、当該作業を行う人員用にエアチューブ1を支給し、作業服2の外側に装着することによって作業可能となることから、極めて経済的なエアチューブ1の使用が可能となる。
図1(a)(b)に示す実施形態は、後側の背部において垂下した部分が上側において、肩部の全領域をカバーした部分11と連結せずに、独自に左右方向に連結しているが、当該実施形態の場合には、特に、エアチューブ1と作業服とを分離可能である場合に、作業者は作業外の段階にて、エアが充填されているエアチューブ1を、肩部のカバー部分11と後側背部における上側連結部分とによる隙間からエアチューブ1全体を容易に外すことが出来る。
図2に示す実施形態は、後側の背部において垂下した部分13が上側において、肩部の全領域をカバーしている部分11と連結していることを特徴としている。
当該実施形態の場合には、後側背部の構成が簡便である。
但し、図1(a)(b)の実施形態に示すように、エアを充填した状態にて後側における前記のような隙間からエアチューブ1を容易に取り外すことは出来ない。
しかしながら、図2の実施形態の場合においても、エアが充填されている段階にて、腰部の両側をカバーした状態にある部分14に両腕を内側から挿入して、当該部分を左右両側に押し広げ、更には、エアチューブ1を上側に移動させることによって、当該エアチューブ1全体を作業服から取り外すことが可能である。
図1,2の実施形態においては、落下した固形物が頭部に衝突した場合には、ヘルメット3によってカバーすることを前提としているが、ヘルメット3では落下による衝撃を十分十週することが不可能な場合があり、その場合には頭部を通じて身体に衝撃が伝達することにならざるを得ない。
図3に示す実施形態は、肩部の全領域をカバー部分からエアチューブ1の一部を、さらに上側に延設し、頭部をカバーするエアキャップ15を形成していることを特徴としている。
このような実施形態の場合には、落下した固形物が頭部に衝突しても、エアキャップ15のクッションによって、衝突に伴う衝撃を緩和することが可能となる。
尚、図3の上側に示す点線は頭部が挿入される内側表面部分を示す。
エアチューブ1にエアを注入する方法としては、エアポンプ、エアボンベによって注入する方法、更には人の呼吸によって注入する方法の何れも採用することが出来る。
前記(1)による基本構成は、エアチューブ1を装着した作業服を対象としているが、エアチューブ1と作業服2とを分離可能、即ち着脱自在とする実施形態に着目した場合には、前記(2)のように、前記(1)の基本構成による作業服を構成し、かつ使用されるエアチューブ1もまた、発明の対象となり得る。
したがって、図1,2,3に示す各実施形態及び後述する実施例のような、エアチューブ1を装着した作業服2におけるエアチューブ1もまた発明の対象となっている。
【実施例】
【0016】
実施例においては、図4に示すように、左右両側の腰部をカバーした状態となっている連結部分におけるチューブの左右両側方向の最大幅が肩部の全領域をカバーしている部分の左右両側方向の幅の約1/3以上とすることによって身体が落下した場合、又は転倒した場合に、両腕に対する左右両側方向からの衝撃を緩和し得ることを特徴としている。
【0017】
前記各実施形態において、作業者が転倒した場合、或いは落下した場合において、少なくとも、前側腹部及び後側背部については、当該転倒または落下に伴う衝撃を緩和することが可能である。
【0018】
しかも、チューブ全体を作業服から着脱自在とした構成の場合には、前側の左右両側に垂下しているチューブの部分との間に挿入することによって、両腕をも保護することが可能である。
【0019】
しかしながら、転倒または落下の際、常に両腕をそのような状態とする時間的余裕が確保し得ない場合が生じる。
【0020】
実施例の場合には、前記のように、腰部をカバーしている状態にある連結部分の左右両側の最大幅を肩部の全領域をカバーしている部分の左右両側幅の約1/3以上であることから、左右両側に相当突出しており、前記転倒及び落下に際し、作業者は両腕を腰部の上側で、胴部の側部に当てるだけで、前記突出部分のクッション性によって転倒及び落下に伴う衝撃を相当緩和し、両腕の被害を減少させることが少なくなる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る作業服及びパイプは、危険な作業場における器具として利用可能であるばかりか、自動二輪車及び乗用車の運転における交通事故を緩和するための器具としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】上側肩部、後側背部の上端との連結部分とが相互に独立した実施形態を示しており、(a)は後側背部の見取り図を示しており、(b)は前側腹部の正面図を示している。
【図2】後側背部において、垂下した状態にある部分と、肩部の全領域をカバーした部分とが連結している実施形態を示す背面図である(チューブのみを図示し、作業服の図示は省略する)。
【図3】エアキャップを設けた実施形態における部分側面図である(チューブのみを図示し、作業服の図示は省略する)。
【図4】実施例の構成を示す正面図である(チューブのみを図示し、作業服の図示は省略する)。
【符号の説明】
【0023】
1 エアチューブ
11 肩部全領域をカバーする部分
12 前側腹部背部において垂下している部分
13 後側背部腰部において垂下している部分
14 両側腰部をカバーしている部分
15 エアキャップ
2 作業服
3 ヘルメット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にエアを充満することによって、衝撃を緩和し得るクッション性エアチューブを外側に装着した作業服であって、当該エアチューブは、両側における腕の付け根部分を含む肩部の全領域をカバーし、前側の腹部及び後側の背部の各左右両側において垂下した状態にあり、かつ当該前側及び後側において垂下したチューブは腰部両側の外側周囲をカバーするように、湾曲した状態にて相互に連結しており、少なくとも前側にて垂下している部分は、肩部の全領域をカバーしている部分と連結していることに基づくエアチューブを装着した作業服。
【請求項2】
エアチューブは、作業服に固着されておらず、作業服から分離可能であることを特徴とする請求項1記載のエアチューブを装着した作業服。
【請求項3】
後側の背部において垂下した部分が上側において、肩部の全領域をカバーした部分と連結せずに、独自に左右方向に連結していることを特徴とする請求項1,2記載のエアチューブを装着した作業服。
【請求項4】
後側の背部において垂下した部分が上側において、肩部の全領域をカバーしている部分と連結していることを特徴とする請求項1,2記載のエアチューブを装着した作業服。
【請求項5】
肩部の全領域をカバーしている部分からエアチューブの略中央に位置している一部を、さらに上側に延設し、頭部をカバーし得るエアキャップを形成していることを特徴とする請求項1,2記載のエアチューブを装着した作業服。
【請求項6】
左右両側の腰部をカバーした状態となっている連結部分におけるチューブの左右両側方向の最大幅が肩部の全領域をカバーしている部分の左右両側方向の幅の約1/3以上とすることによって身体が落下した場合、又は転倒した場合に、両腕に対する左右両側方向からの衝撃を緩和し得ることを特徴とする請求項1,2記載のエアチューブを装着した作業服。
【請求項7】
エアチューブの素材としてプラスチックを採用し、かつ、肩部の全領域をカバーしている部分の上側表面につき、他の部分よりも硬質であるプラスチックによって表面を被覆していることを特徴とする請求項1,2記載のエアチューブを装着した作業服。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5記載のエアチューブを装着した作業服を構成し、かつ使用されるエアチューブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−138312(P2007−138312A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330508(P2005−330508)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(300055258)
【出願人】(599051890)株式会社風船工房匠 (13)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】