エアバッグのカバー体
【構成】 ガス発生器22およびエアバッグ24の乗員側を覆うカバー体26を、硬質なコア層32と、このコア層32の表面側を覆うように密着して形成した軟質な表皮層33との二層構造にする。カバー体26の裏面に、複数の線状の破断部41を形成する。この破断部41を、コア層32を薄肉にし、かつ、上下に略波状に屈曲してなる下部破断部47と、この下部破断部47の表面側を覆い、薄肉部56および厚肉部57が交互に連続する表皮層33からなる上部破断部58との二層構造にする。
【効果】 エアバッグを容易に開裂させて、エアバッグの展開性能をさらに向上できる。常時において、破断部の表面側の変形を抑止して、外観性を向上できる。
【効果】 エアバッグを容易に開裂させて、エアバッグの展開性能をさらに向上できる。常時において、破断部の表面側の変形を抑止して、外観性を向上できる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車などにおいて、乗員を衝突などの衝撃から保護するためのエアバッグを覆うエアバッグのカバー体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車などにおいて、乗員を衝突などの衝撃から保護するためのエアバッグ装置が知られている。
【0003】このエアバッグ装置は、ガス発生器(インフレータ)、常時においては折畳まれて収納されたエアバッグ、およびこのエアバッグの乗員側を覆うカバー体などを備えている。そして、衝突などの衝撃を受けた際に、ガス発生器からエアバッグ内にガスを急激に流入させて膨脹させ、この膨脹の途中で、エアバッグの圧力によりカバー体を開裂させて、エアバッグをカバー体から突出させ乗員に向けて展開することにより、乗員が前方のガラスなどに衝突するのを防止するとともに、衝撃を吸収するものである。
【0004】このカバー体として発泡ウレタン製のカバー体内に補強ネットをインサートしたものがあったが、この補強ネットを発泡ポリウレタン成形金型内にインサート保持する作業が面倒で、また均一に埋設させることが困難であった。
【0005】そこで、例えば特開平2ー220945号公報に示されているように、形状保持及び強度的保証のために比較的硬質で十分な引張り強度を有する合成樹脂でコア層を形成し、その表面を外観的風合いと感触が良好な軟質の合成樹脂で被覆したものが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなカバー体においては、内部に折畳まれたエアバッグの反力によって、薄肉に形成された脆弱部が表面側へ盛り上がってしまい外観性が悪いという問題を有している。
【0007】そこで、本発明はこのような点に鑑みなされたもので、エアバッグの膨張時には破断部から容易に破断され、通常時には破断線が外観からは目立たない良好なエアバッグのカバー体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のエアバッグのカバー体は、常時には収納されたエアバッグの乗員側を覆い、このエアバッグの膨脹の圧力により破断される破断部が形成されたエアバッグのカバー体であって、前記カバー体は、コア層と、このコア層の表面側を覆いかつこのコア層よりも軟質な表皮層との二層構造からなり、前記破断部は、前記表皮層の裏面部に交互に薄肉部および厚肉部を連続して形成してなる上部破断部と、この上部破断部の裏面側の少なくとも一部を覆って支持する、前記コア層を薄肉に形成してなる下部破断部との二層構造からなるものである。
【0009】
【作用】本発明のエアバッグのカバー体は、常時においては、収納されたエアバッグの乗員側を覆って保護する。破断部は、上部破断部と下部破断部との二層構造からなり、この上部破断部には薄肉部と交互に厚肉部が形成されているとともに、この上部破断部の裏面側の少なくとも一部は、表皮層よりも硬質なコア層を薄肉に形成してなる下部破断部にて支持されているため、常時において、破断部の位置における変形が抑止される。エアバッグの膨脹時においては、このエアバッグの膨脹の圧力により、表皮層およびコア層が薄肉に形成された部分に沿って破断が進行し、破断部が破断して、エアバッグが乗員側へ突出する突出口が形成される。この突出口からエアバッグが展開し、乗員を保護する。
【0010】
【実施例】以下、本発明のエアバッグのカバー体の一実施例の構成を図面を参照して説明する。
【0011】図2において、11は自動車などのステアリングホイール本体で、このステアリングホイール本体11は、環状のリム部12と、その中心に位置したボス部14と、これらのリム部12とボス部14とを連結した複数のスポーク部15などから構成されている。そして、図1に示すように、このボス部14の下部(車両側)には、ボスプレート16があり、このボスプレート16に、各スポーク部15の芯金15a が溶接などにより固定され、さらに、これらの各芯金15a の先端部に、リム部12の芯金12aが溶接などにより固定されている。
【0012】また、このボスプレート16の中央下部に、図示しないステアリングシャフトが嵌着される嵌着孔17a が形成された金属製のボス17が、溶接などにより固定されている。
【0013】また、ボス部14の下部の周囲は、下部カバー18により覆われており、リム部12および各スポーク部15は軟質の合成樹脂層19などにより覆われている。
【0014】そして、ボス部14の上下方向の中間位置には、略中央部に円孔20a が形成され、端部20b が下方に折曲された取付板20が取付けられている。また、この取付板20の端部20b には、複数の小径の通孔20c が形成されている。
【0015】そして、この円孔20a に、略円柱形状のガス発生器22が下方から嵌合して取付けられており、さらに、このガス発生器22の上部(乗員側)にエアバッグ24が折り畳んだ状態で収納されている。そして、このガス発生器22の上下方向の中間位置から突設されたフランジ部22a と、エアバッグ24の開口部24a の周辺部とが、取付板20の円孔20a の周縁部を挾持した状態で、リベット25などにより固定されている。
【0016】そして、これらのガス発生器22およびエアバッグ24の乗員側を覆うように、カバー体26が取付けられている。このカバー体26は、図1ないし図3に示すように、乗員側に向かって緩やかに膨出した曲面形状の上面部27と、ステアリングホイール本体11の各スポーク部15に対向する部分を除いて上面部27の端部から下方に向かって突設された側面部28とを有している。また、上面部27の裏面側の端部近傍からは、この上面部27の裏面側を取り囲むように、複数の板状の取付片29が下方に向かって突設されており、さらに、この取付片29の先端部近傍にはそれぞれ単数または複数の円孔29a が形成されている。
【0017】そして、この取付片29の円孔29a および取付板20の通孔20c を挿通した状態でかしめられたリベット30により、カバー体26が取付板20の端部20b に取付けられている。また、以上のようにガス発生器22、エアバッグ24、およびカバー体26などにより構成されたエアバッグユニットは、図示しないボルトにより、ステアリングホイール本体11に取付けられている。
【0018】また、このカバー体26は、コア層32と、このコア層32の表面側を覆うように密着して形成された表皮層33との二層構造になっている。
【0019】そして、このコア層32は、熱可塑性ウレタンエラストマーなどからなり、比較的硬質で十分な引張り強度を有しており、カバー体26の裏面側のほぼ全体およびこの裏面側から突設された各取付片29を構成している。
【0020】また、表皮層33は、ウレタン発泡体などからなり、上記のコア層32より軟質で、外観的風合いと感触が良好なものである。
【0021】そして、このカバー体26の裏面側に、エアバッグ24の膨脹の圧力により破断される脆弱な破断部41が形成されている。
【0022】この破断部41は、平面形状においては、図3R>3に示すように、カバー体26の前後方向のほぼ中央部から両側に向かって形成された中央破断線42と、この中央破断線42の両側方向の中央部から後側に向かって形成された後部破断線43と、この後部破断線43の後端部から両側に向かって形成された後端破断線44と、中央破断線42の両側端近傍からそれぞれ前側に向かって形成された前部破断線45,45とからなっている。
【0023】また、この破断部41は、断面形状においては、図1、図3ないし図8に示すように、表皮層33およびコア層32の肉厚を順次変化させて構成されている。
【0024】すなわち、破断部41においては、コア層32は、破断部41以外の上面部27などの部分よりも肉薄な下部破断部47として形成されている。そして、この下部破断部47は、均一な肉厚を保持したまま、各破断線42,43,44,45の長手方向に沿って上下に屈曲され、破断部41以外の部分よりも表面側に突出した表板部51と、裏面が破断部41以外の部分の裏面と略水平状になる裏板部52とを、上下に拡開状に傾斜した傾斜板部54にて連続した形状に形成されている。なお、この各破断線42,43,44,45の長手方向に沿った両側部も、上下に拡開状に傾斜して形成されている。
【0025】また、この破断部41においては、表皮層33は、表面側が破断部41以外の上面部27などの部分とほぼ平面状に連続する形状に形成されているため、下部破断部47の形状により、下部破断部47の表板部51の上部では他の部分より薄肉な薄肉部56となり、下部破断部47の裏板部52の上部では他の部分より厚肉な厚肉部57となり、全体として、表面部がほぼ平面状で、裏面部が交互に薄肉および厚肉に連続して形成された上部破断部58として形成されている。
【0026】そして、これらの上部破断部58と下部破断部47とが、カバー体26の他の部分と同様に、上下に密着して形成され、上部破断部58の裏面側を下部破断部47が覆って支持する二層構造になっている。
【0027】また、図3および図4に示すように、各破断線42,43,44,45同士の連続部分においては、それぞれ下部破断部47の表板部51は略T字状に形成された分岐部51a になっている。
【0028】そして、自動車の衝突事故などの場合において、自動車の車体の衝撃を図示しない衝撃センサが検知すると、この衝撃センサがガス発生器22を作動させ、エアバッグ24の内部にガスを急激に放出させ、このエアバッグ24を急激に膨脹させる。
【0029】すると、この膨脹の圧力により、カバー体26に裏面側から圧力が加わり、まず、この膨脹の圧力が最も加わる、中央破断線42の中央部の略T字状に形成された分岐部51a が破断し、カバー体26の開裂が始まる。
【0030】そして、この破断は、コア層32が薄肉に形成されて、カバー体26の他の部分より開裂しやすく形成された破断部41に沿って進行する。すなわち、中央破断線42および後部破断線43に沿って両側方向および後側方向へ進行し、さらに各分岐部51a を介して後端破断線44と前部破断線45,45とに進行する。
【0031】そして、このように破断部41が破断する過程で、あるいは、破断部41が完全に開裂した状態で、膨脹するエアバッグ24の圧力により、カバー体26が変形しつつ前方および両側方に扉状に開口してエアバッグ24の突出口が形成され、この突出口からエアバッグ24が乗員に突出して展開するようになっている。
【0032】そして、本実施例のエアバッグ24のカバー体26によれば、硬質のコア層32を薄肉に形成してなる下部破断部47と、軟質の表皮層33からなる上部破断部58とにより破断部41を形成したため、エアバッグ24の膨脹時にこの破断部41にてカバー体26を容易に破断して、エアバッグ24の展開性能をさらに高めることができる。このとき、下部破断部47の裏板部52に対応する位置においては、上部破断部58は厚肉に形成されているが、下部破断部47は表皮層33を構成するウレタン発泡体にて形成されているため、かかる厚肉部57も、エアバッグ24の膨脹の圧力により容易に破断することができる。
【0033】また、本実施例のカバー体26は、二色射出成形あるいはインサート成形により容易に製造し得るため、カバー体26の生産効率を向上することができる。
【0034】さらに、軟質な表皮層33からなる上部破断部58には、薄肉部56と交互に厚肉部57が形成されており、また、硬質なコア層32を薄肉に形成してなる下部破断部47により、この上部破断部58の裏面側が支持されているため、常時において、折り畳まれたエアバッグ24の反力による、破断部41の位置におけるカバー体26の表面側への盛り上がりの発生を防止して外観性を良好にし、商品性を高めることができる。
【0035】なお、破断部41の形状は本実施例のものに限られるものではなく、図9ないし図12に示すように、上記の実施例における下部破断部47の傾斜板部54に矩形状などの開口部61を形成し、この開口部61からカバー体26の裏面側に上部破断部58を露出させることもできる。このような開口部61を形成することにより、破断部41の開裂をより容易にすることができる。
【0036】また、カバー体26を用いるエアバッグ装置は、自動車のステアリングホイールのみに適用されるものではなく、例えば、助手席前のインストルメントパネルに取付けることもでき、また、他種の車両に適用することもできる。
【0037】
【発明の効果】本発明のエアバッグのカバー体によれば、破断部は、上部破断部と下部破断部との二層構造からなり、この上部破断部には薄肉部と交互に厚肉部が形成されているとともに、この上部破断部の裏面側の少なくとも一部は、表皮層よりも硬質なコア層を薄肉に形成してなる下部破断部にて支持されているため、常時において、破断部の位置における変形を抑止して外観性を良好にし商品性を向上することができる。エアバッグの膨脹時においては、このエアバッグの膨脹の圧力により、表皮層およびコア層が薄肉に形成された部分に沿って破断が進行し、容易に破断部を破断して、エアバッグが乗員側へ突出する突出口を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエアバッグのカバー体の図2におけるA−A断面図である。
【図2】同上ステアリングホイールの平面図である。
【図3】同上カバー体の裏面側からみた斜視図である。
【図4】同上カバー体の一部を切り欠いた斜視図である。
【図5】同上カバー体の図3および図4におけるI−I断面図である。
【図6】同上カバー体の図4におけるII−II断面図である。
【図7】同上カバー体の図4におけるIII −III 断面図である。
【図8】同上カバー体の図4におけるIV−IV断面図である。
【図9】本発明のカバー体の他の実施例を示す一部を切り欠いた斜視図である。
【図10】同上カバー体の図9におけるV−V断面図である。
【図11】同上カバー体の図9におけるVI−VI断面図である。
【図12】同上カバー体の図9におけるVII −VII 断面図である。
【符号の説明】
24 エアバッグ
26 カバー体
32 コア層
33 表皮層
41 破断部
47 下部破断部
56 薄肉部
57 厚肉部
58 上部破断部
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車などにおいて、乗員を衝突などの衝撃から保護するためのエアバッグを覆うエアバッグのカバー体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車などにおいて、乗員を衝突などの衝撃から保護するためのエアバッグ装置が知られている。
【0003】このエアバッグ装置は、ガス発生器(インフレータ)、常時においては折畳まれて収納されたエアバッグ、およびこのエアバッグの乗員側を覆うカバー体などを備えている。そして、衝突などの衝撃を受けた際に、ガス発生器からエアバッグ内にガスを急激に流入させて膨脹させ、この膨脹の途中で、エアバッグの圧力によりカバー体を開裂させて、エアバッグをカバー体から突出させ乗員に向けて展開することにより、乗員が前方のガラスなどに衝突するのを防止するとともに、衝撃を吸収するものである。
【0004】このカバー体として発泡ウレタン製のカバー体内に補強ネットをインサートしたものがあったが、この補強ネットを発泡ポリウレタン成形金型内にインサート保持する作業が面倒で、また均一に埋設させることが困難であった。
【0005】そこで、例えば特開平2ー220945号公報に示されているように、形状保持及び強度的保証のために比較的硬質で十分な引張り強度を有する合成樹脂でコア層を形成し、その表面を外観的風合いと感触が良好な軟質の合成樹脂で被覆したものが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなカバー体においては、内部に折畳まれたエアバッグの反力によって、薄肉に形成された脆弱部が表面側へ盛り上がってしまい外観性が悪いという問題を有している。
【0007】そこで、本発明はこのような点に鑑みなされたもので、エアバッグの膨張時には破断部から容易に破断され、通常時には破断線が外観からは目立たない良好なエアバッグのカバー体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のエアバッグのカバー体は、常時には収納されたエアバッグの乗員側を覆い、このエアバッグの膨脹の圧力により破断される破断部が形成されたエアバッグのカバー体であって、前記カバー体は、コア層と、このコア層の表面側を覆いかつこのコア層よりも軟質な表皮層との二層構造からなり、前記破断部は、前記表皮層の裏面部に交互に薄肉部および厚肉部を連続して形成してなる上部破断部と、この上部破断部の裏面側の少なくとも一部を覆って支持する、前記コア層を薄肉に形成してなる下部破断部との二層構造からなるものである。
【0009】
【作用】本発明のエアバッグのカバー体は、常時においては、収納されたエアバッグの乗員側を覆って保護する。破断部は、上部破断部と下部破断部との二層構造からなり、この上部破断部には薄肉部と交互に厚肉部が形成されているとともに、この上部破断部の裏面側の少なくとも一部は、表皮層よりも硬質なコア層を薄肉に形成してなる下部破断部にて支持されているため、常時において、破断部の位置における変形が抑止される。エアバッグの膨脹時においては、このエアバッグの膨脹の圧力により、表皮層およびコア層が薄肉に形成された部分に沿って破断が進行し、破断部が破断して、エアバッグが乗員側へ突出する突出口が形成される。この突出口からエアバッグが展開し、乗員を保護する。
【0010】
【実施例】以下、本発明のエアバッグのカバー体の一実施例の構成を図面を参照して説明する。
【0011】図2において、11は自動車などのステアリングホイール本体で、このステアリングホイール本体11は、環状のリム部12と、その中心に位置したボス部14と、これらのリム部12とボス部14とを連結した複数のスポーク部15などから構成されている。そして、図1に示すように、このボス部14の下部(車両側)には、ボスプレート16があり、このボスプレート16に、各スポーク部15の芯金15a が溶接などにより固定され、さらに、これらの各芯金15a の先端部に、リム部12の芯金12aが溶接などにより固定されている。
【0012】また、このボスプレート16の中央下部に、図示しないステアリングシャフトが嵌着される嵌着孔17a が形成された金属製のボス17が、溶接などにより固定されている。
【0013】また、ボス部14の下部の周囲は、下部カバー18により覆われており、リム部12および各スポーク部15は軟質の合成樹脂層19などにより覆われている。
【0014】そして、ボス部14の上下方向の中間位置には、略中央部に円孔20a が形成され、端部20b が下方に折曲された取付板20が取付けられている。また、この取付板20の端部20b には、複数の小径の通孔20c が形成されている。
【0015】そして、この円孔20a に、略円柱形状のガス発生器22が下方から嵌合して取付けられており、さらに、このガス発生器22の上部(乗員側)にエアバッグ24が折り畳んだ状態で収納されている。そして、このガス発生器22の上下方向の中間位置から突設されたフランジ部22a と、エアバッグ24の開口部24a の周辺部とが、取付板20の円孔20a の周縁部を挾持した状態で、リベット25などにより固定されている。
【0016】そして、これらのガス発生器22およびエアバッグ24の乗員側を覆うように、カバー体26が取付けられている。このカバー体26は、図1ないし図3に示すように、乗員側に向かって緩やかに膨出した曲面形状の上面部27と、ステアリングホイール本体11の各スポーク部15に対向する部分を除いて上面部27の端部から下方に向かって突設された側面部28とを有している。また、上面部27の裏面側の端部近傍からは、この上面部27の裏面側を取り囲むように、複数の板状の取付片29が下方に向かって突設されており、さらに、この取付片29の先端部近傍にはそれぞれ単数または複数の円孔29a が形成されている。
【0017】そして、この取付片29の円孔29a および取付板20の通孔20c を挿通した状態でかしめられたリベット30により、カバー体26が取付板20の端部20b に取付けられている。また、以上のようにガス発生器22、エアバッグ24、およびカバー体26などにより構成されたエアバッグユニットは、図示しないボルトにより、ステアリングホイール本体11に取付けられている。
【0018】また、このカバー体26は、コア層32と、このコア層32の表面側を覆うように密着して形成された表皮層33との二層構造になっている。
【0019】そして、このコア層32は、熱可塑性ウレタンエラストマーなどからなり、比較的硬質で十分な引張り強度を有しており、カバー体26の裏面側のほぼ全体およびこの裏面側から突設された各取付片29を構成している。
【0020】また、表皮層33は、ウレタン発泡体などからなり、上記のコア層32より軟質で、外観的風合いと感触が良好なものである。
【0021】そして、このカバー体26の裏面側に、エアバッグ24の膨脹の圧力により破断される脆弱な破断部41が形成されている。
【0022】この破断部41は、平面形状においては、図3R>3に示すように、カバー体26の前後方向のほぼ中央部から両側に向かって形成された中央破断線42と、この中央破断線42の両側方向の中央部から後側に向かって形成された後部破断線43と、この後部破断線43の後端部から両側に向かって形成された後端破断線44と、中央破断線42の両側端近傍からそれぞれ前側に向かって形成された前部破断線45,45とからなっている。
【0023】また、この破断部41は、断面形状においては、図1、図3ないし図8に示すように、表皮層33およびコア層32の肉厚を順次変化させて構成されている。
【0024】すなわち、破断部41においては、コア層32は、破断部41以外の上面部27などの部分よりも肉薄な下部破断部47として形成されている。そして、この下部破断部47は、均一な肉厚を保持したまま、各破断線42,43,44,45の長手方向に沿って上下に屈曲され、破断部41以外の部分よりも表面側に突出した表板部51と、裏面が破断部41以外の部分の裏面と略水平状になる裏板部52とを、上下に拡開状に傾斜した傾斜板部54にて連続した形状に形成されている。なお、この各破断線42,43,44,45の長手方向に沿った両側部も、上下に拡開状に傾斜して形成されている。
【0025】また、この破断部41においては、表皮層33は、表面側が破断部41以外の上面部27などの部分とほぼ平面状に連続する形状に形成されているため、下部破断部47の形状により、下部破断部47の表板部51の上部では他の部分より薄肉な薄肉部56となり、下部破断部47の裏板部52の上部では他の部分より厚肉な厚肉部57となり、全体として、表面部がほぼ平面状で、裏面部が交互に薄肉および厚肉に連続して形成された上部破断部58として形成されている。
【0026】そして、これらの上部破断部58と下部破断部47とが、カバー体26の他の部分と同様に、上下に密着して形成され、上部破断部58の裏面側を下部破断部47が覆って支持する二層構造になっている。
【0027】また、図3および図4に示すように、各破断線42,43,44,45同士の連続部分においては、それぞれ下部破断部47の表板部51は略T字状に形成された分岐部51a になっている。
【0028】そして、自動車の衝突事故などの場合において、自動車の車体の衝撃を図示しない衝撃センサが検知すると、この衝撃センサがガス発生器22を作動させ、エアバッグ24の内部にガスを急激に放出させ、このエアバッグ24を急激に膨脹させる。
【0029】すると、この膨脹の圧力により、カバー体26に裏面側から圧力が加わり、まず、この膨脹の圧力が最も加わる、中央破断線42の中央部の略T字状に形成された分岐部51a が破断し、カバー体26の開裂が始まる。
【0030】そして、この破断は、コア層32が薄肉に形成されて、カバー体26の他の部分より開裂しやすく形成された破断部41に沿って進行する。すなわち、中央破断線42および後部破断線43に沿って両側方向および後側方向へ進行し、さらに各分岐部51a を介して後端破断線44と前部破断線45,45とに進行する。
【0031】そして、このように破断部41が破断する過程で、あるいは、破断部41が完全に開裂した状態で、膨脹するエアバッグ24の圧力により、カバー体26が変形しつつ前方および両側方に扉状に開口してエアバッグ24の突出口が形成され、この突出口からエアバッグ24が乗員に突出して展開するようになっている。
【0032】そして、本実施例のエアバッグ24のカバー体26によれば、硬質のコア層32を薄肉に形成してなる下部破断部47と、軟質の表皮層33からなる上部破断部58とにより破断部41を形成したため、エアバッグ24の膨脹時にこの破断部41にてカバー体26を容易に破断して、エアバッグ24の展開性能をさらに高めることができる。このとき、下部破断部47の裏板部52に対応する位置においては、上部破断部58は厚肉に形成されているが、下部破断部47は表皮層33を構成するウレタン発泡体にて形成されているため、かかる厚肉部57も、エアバッグ24の膨脹の圧力により容易に破断することができる。
【0033】また、本実施例のカバー体26は、二色射出成形あるいはインサート成形により容易に製造し得るため、カバー体26の生産効率を向上することができる。
【0034】さらに、軟質な表皮層33からなる上部破断部58には、薄肉部56と交互に厚肉部57が形成されており、また、硬質なコア層32を薄肉に形成してなる下部破断部47により、この上部破断部58の裏面側が支持されているため、常時において、折り畳まれたエアバッグ24の反力による、破断部41の位置におけるカバー体26の表面側への盛り上がりの発生を防止して外観性を良好にし、商品性を高めることができる。
【0035】なお、破断部41の形状は本実施例のものに限られるものではなく、図9ないし図12に示すように、上記の実施例における下部破断部47の傾斜板部54に矩形状などの開口部61を形成し、この開口部61からカバー体26の裏面側に上部破断部58を露出させることもできる。このような開口部61を形成することにより、破断部41の開裂をより容易にすることができる。
【0036】また、カバー体26を用いるエアバッグ装置は、自動車のステアリングホイールのみに適用されるものではなく、例えば、助手席前のインストルメントパネルに取付けることもでき、また、他種の車両に適用することもできる。
【0037】
【発明の効果】本発明のエアバッグのカバー体によれば、破断部は、上部破断部と下部破断部との二層構造からなり、この上部破断部には薄肉部と交互に厚肉部が形成されているとともに、この上部破断部の裏面側の少なくとも一部は、表皮層よりも硬質なコア層を薄肉に形成してなる下部破断部にて支持されているため、常時において、破断部の位置における変形を抑止して外観性を良好にし商品性を向上することができる。エアバッグの膨脹時においては、このエアバッグの膨脹の圧力により、表皮層およびコア層が薄肉に形成された部分に沿って破断が進行し、容易に破断部を破断して、エアバッグが乗員側へ突出する突出口を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエアバッグのカバー体の図2におけるA−A断面図である。
【図2】同上ステアリングホイールの平面図である。
【図3】同上カバー体の裏面側からみた斜視図である。
【図4】同上カバー体の一部を切り欠いた斜視図である。
【図5】同上カバー体の図3および図4におけるI−I断面図である。
【図6】同上カバー体の図4におけるII−II断面図である。
【図7】同上カバー体の図4におけるIII −III 断面図である。
【図8】同上カバー体の図4におけるIV−IV断面図である。
【図9】本発明のカバー体の他の実施例を示す一部を切り欠いた斜視図である。
【図10】同上カバー体の図9におけるV−V断面図である。
【図11】同上カバー体の図9におけるVI−VI断面図である。
【図12】同上カバー体の図9におけるVII −VII 断面図である。
【符号の説明】
24 エアバッグ
26 カバー体
32 コア層
33 表皮層
41 破断部
47 下部破断部
56 薄肉部
57 厚肉部
58 上部破断部
【特許請求の範囲】
【請求項1】 常時には収納されたエアバッグの乗員側を覆い、このエアバッグの膨脹の圧力により破断される破断部が形成されたエアバッグのカバー体であって、前記カバー体は、コア層と、このコア層の表面側を覆いかつこのコア層よりも軟質な表皮層との二層構造からなり、前記破断部は、前記表皮層の裏面部に交互に薄肉部および厚肉部を連続して形成してなる上部破断部と、この上部破断部の裏面側の少なくとも一部を覆って支持する、前記コア層を薄肉に形成してなる下部破断部との二層構造からなることを特徴とするエアバッグのカバー体。
【請求項1】 常時には収納されたエアバッグの乗員側を覆い、このエアバッグの膨脹の圧力により破断される破断部が形成されたエアバッグのカバー体であって、前記カバー体は、コア層と、このコア層の表面側を覆いかつこのコア層よりも軟質な表皮層との二層構造からなり、前記破断部は、前記表皮層の裏面部に交互に薄肉部および厚肉部を連続して形成してなる上部破断部と、この上部破断部の裏面側の少なくとも一部を覆って支持する、前記コア層を薄肉に形成してなる下部破断部との二層構造からなることを特徴とするエアバッグのカバー体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図4】
【図9】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図5】
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【図10】
【図4】
【図9】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開平5−170044
【公開日】平成5年(1993)7月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−343168
【出願日】平成3年(1991)12月25日
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【公開日】平成5年(1993)7月9日
【国際特許分類】
【出願日】平成3年(1991)12月25日
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
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