説明

エアフィルター

【課題】簡単な構成で目詰まりを抑えてメンテナンスにかかるコスト、労力が少なくて済むエアフィルターを提供する。
【解決手段】 空気中に含まれる油脂分を除去して空気を浄化するエアフィルターであって、フィルター濾材の表面に油脂を分解する酵素を担持させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に厨房や台所等において油脂分を含んだ空気を浄化する装置に用いられるエアフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
厨房や台所等において排気を行う際、空気中に含まれる油脂分を除去して空気を浄化する必要があるため、エアフィルターが使用されている。エアフィルターとしては比較的安価な不織布等の繊維質のフィルターが一般的に使用されている。エアフィルターはその繊維にて油脂分を濾し取って除去するものであるため、濾し取った油脂分はエアフィルター内に蓄積されてしまい、蓄積量が多くなると目詰まりを起こしてしまう。目詰まりを起こすと空気がエアフィルターを通る際の圧力損失が大きくなるため、圧力損失が所定以上となるとエアフィルターを交換する必要があり、従来のフィルターでは短寿命であるためメンテナンスが煩わしくなると共にコストアップを招くものであった。
【0003】
そこで、エアフィルターの目詰まりを抑えて長寿命化を図るべく、各種方法で蓄積された濾過物を分解や除去するものが開発されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に示されるものは気体処理用エレメントであって、酸化チタンが担持された基材シートを設けることで、酸化チタンの光触媒作用を利用して油脂やカーボンを分解することができるものであるが、この場合には酸化チタンに紫外線を照射する必要があるため紫外線ランプを設けたものとなっている。
【0005】
また特許文献2に示されるものは、フィルタの目詰まりが進行すると、洗浄液槽の洗浄液を超音波振動子の振動によりミスト状の液滴としてフィルタに噴霧し、フィルタに蓄積している濾過物を溶解して洗い流すようにしており、前記超音波振動子等の機器を設けたものとなっている。
【0006】
上述したような従来のフィルターにあっては、いずれもフィルター内に蓄積した濾過物を分解したり除去したりする手段を備えているものの、特許文献1にあっては紫外線ランプを設ける必要があり、特許文献2にあっては超音波振動子を設ける必要があって装置が大掛かりなものとなり、コストアップとなると共に、設置スペースを要して更に設置作業が煩雑となってしまうものであった。
【特許文献1】特開平11−207116号公報
【特許文献2】特開2001−25933公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、簡単な構成で目詰まりを抑えてメンテナンスにかかるコスト、労力が少なくて済むエアフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明にあっては、空気中に含まれる油脂分を除去して空気を浄化するエアフィルターであって、フィルター濾材の表面に油脂を分解する酵素を担持させて成ることを特徴とするものである。
【0009】
このような構成とすることで、フィルター濾材にて濾過した油脂分をフィルター濾材の表面に担持させた酵素にて分解することができ、簡単な構成によって濾過した油脂分がフィルター内に蓄積されて目詰まりするのを抑えることができて、メンテナンスにかかるコスト、労力が少なくて済むようになるものである。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、フィルター濾材が布帛又は不織布からなる繊維にて形成したものであることを特徴とするものである。
【0011】
このような構成とすることで、フィルター濾材を安価に形成することが可能となる。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、フィルター濾材をプリーツ状に形成して成ることを特徴とするものである。
【0013】
このような構成とすることで、油脂分を含んだ空気がフィルター濾材の表面により広く接触して捕捉され易くなって除去率が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、フィルター濾材にて濾過した油脂分をフィルター濾材の表面に担持させた酵素にて分解することができ、簡単な構成によって濾過した油脂分がフィルター内に蓄積されて目詰まりするのを抑えることができて、メンテナンスにかかるコスト、労力が少なくて済むと共に、エアフィルターの長寿命化が図られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のエアフィルターについて説明する。
【0016】
本発明のエアフィルターは主に厨房や台所のように油脂分を含んだ空気が多く発生する場所に設けるものであるが、特に限定はされないものである。
【0017】
エアフィルターの濾材は、油脂分を除去するものについては通常は布帛又は不織布からなる繊維質の材料にて形成したものが使用されるが特に限定されない。
【0018】
フィルター濾材の素材としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維のような合成繊維をはじめ、ガラス繊維等種々の繊維が用いられるが、特に限定されないものである。
【0019】
そして、フィルター濾材の表面には、油脂分を分解する能力を有する酵素を担持させるものである。酵素としては、例えばリパーゼ等が挙げられる。酵素のフィルター濾材の表面への担持は、酵素を水に分散させた液体にフィルター濾材を浸し、一定時間おいた後でフィルター濾材を引き上げ、その後乾燥させればフィルター濾材の表面に酵素が付着した状態となる。また、スプレーにてフィルターに噴霧して乾燥させたり、あるいは、粉末状にした酵素を接着材のような粘着性の部材によってフィルター濾材の表面に添着してもよく、特に限定されないものである。
【0020】
上記フィルター濾材は、板状部材を上下左右四つ組み合わせて正面視ロ字状をした外枠部内に収容して形成してある。ここで、外枠部の前後方向の厚み(板状部材の幅)内においてフィルター濾材をジグザグ状(プリーツ状)に収容するのが好ましく、これによって、平面状のフィルター濾材を空気の流れ方向に垂直に配置した場合に較べて、フィルター濾材を通過する油脂分を含んだ空気はフィルター濾材の表面により広く接触するため捕捉され易くなって除去率が向上すると共に、捕捉された油脂分は空気の流れ方向の後端のフィルター濾材の折れ曲がり部に風圧によって移動して落下させることが可能となる。
【0021】
フィルター濾材には油脂分が濾過されるのであるが、このようにフィルター濾材の表面に酵素を担持させたことで、濾過した油脂分がフィルター内に蓄積されて目詰まりするのを抑えることができて、使用前に一度酵素を担持するという簡単な構成によって目詰まりするのを抑えることができて、メンテナンスにかかるコスト、労力が少なくて済むようになり、またエアフィルターの長寿命化が図れるものである。また、フィルター濾材を布帛又は不織布からなる繊維にて形成しすることで、フィルター濾材を安価に形成することが可能となる。
【0022】
また、本発明の効果を検証するための実験を行ったので、その結果について説明する。
【0023】
フィルター濾材は、日本バイリーン株式会社の「PA305」(商品名)を使用した。また、油を分解する酵素としては、大和化学工業株式会社の「グリーンバイオ101RY」(商品名)を使用した。ここでは、前記フィルター濾材500×500を、液状の前記酵素150gをスプレーにてフィルターに噴霧して乾燥させて実施例を形成した。乾燥後に計測した重量の増加分は約59gであった(すなわち59gの酵素成分が担持された)。
【0024】
また比較例として、酵素を担持していない上記フィルター濾材と同様のフィルター濾材を用意した。
【0025】
そして、実施例と比較例を実際の厨房に同様の条件となるように配置し、約2週間使用した。本実験では目詰まりの大小を比較するもので、目詰まりは圧力損失にて評価した。
【0026】
その結果について表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
この結果より、実施例にあっては使用前と使用後とを比較して圧力損失の増分が1paと小さく目詰まりが進行していないのに対し、比較例にあっては使用前と使用後とを比較して圧力損失の増分が6.9paと大きく、目詰まりが進行しているのが分かる。なお、実施例の方が使用前においては圧力損失が高いのであるが、これは酵素を担持しているためで、使用後においては比較例よりも小さくなっていると共に増分が上記のように小さいため、更に使用を継続しても当分は問題がないが、比較例の方は圧力損失が既に大きくなっている上に更なる増大が予想され、取り替える必要がある。
【0029】
以上の結果より、本発明による効果が実証された。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態のエアフィルターの断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 エアフィルター
2 外枠部
3 フィルター濾材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に含まれる油脂分を除去して空気を浄化するエアフィルターであって、フィルター濾材の表面に油脂を分解する酵素を担持させて成ることを特徴とするエアフィルター。
【請求項2】
フィルター濾材が布帛又は不織布からなる繊維にて形成したものであることを特徴とする請求項1記載のエアフィルター。
【請求項3】
フィルター濾材をプリーツ状に形成して成ることを特徴とする請求項1又は2記載のエアフィルター。

【図1】
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【公開番号】特開2007−190518(P2007−190518A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12801(P2006−12801)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(593196861)ヤマトヨ産業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】