説明

エアフィルタ用濾材

【課題】 生分解性の繊維を含む構成繊維が樹脂によって結合した濾材において、この樹脂を環境に負担をかけない材料からなる樹脂とすることにより、嵩高性と耐久性に優れ且つ環境に充分に配慮し得るエアフィルタ用濾材を提供することを課題とする。
【解決手段】 上記の課題を解決するための手段は、生分解性繊維を含む構成繊維が天然ゴム系樹脂によって結合していることを特徴とするエアフィルタ用濾材である。また、前記天然ゴム系樹脂が、天然ゴムにアクリル系重合体が共重合した樹脂であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗塵除去用として好適な濾材であり、特に調理場や台所などで用いる換気扇やレンジフード、或いは空調機の空気取り入れ口などにおいて、油煙や塵埃から機器を守るために使用する濾材として好適なエアフィルタ用濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
調理場や台所などで用いる換気扇やレンジフード、或いは空調機の空気取り入れ口などにおいては、これらの機器を空気中の油煙や塵埃から守るために難燃性を有した濾材が設置されており、このような濾材は使用機器に応じて換気扇フィルタやレンジフードフィルタなどの名称で呼ばれている。このような機器用の濾材は、空気中の油煙や塵埃が機器の中に進入して回転翼や電子部品などに付着してトラブルを起こすことを防止する機能をもつものであるが、繊維間距離の少ない緻密な繊維構造に形成して油煙や塵埃の除去効率を高め過ぎると、濾材前後の圧力損失が大きくなり、機器が必要とする風量が急激に低下してしまうという問題を生じる。そのため、このような機器用の濾材として、繊維組織が比較的粗いものが使用されている。また、メンテナンスの面ではできる限り長時間使用できることが求められており、このため油煙や塵埃をできるだけ多く保持できるように、濾材の厚さを比較的厚くしたものが要求されている。
【0003】
このような機器用の濾材としては、例えば特許文献1のレンジフードフィルタが知られている。この公報には、ガラス繊維製フィルタ素材に、リン酸グアニジンを主成分とする難燃剤を付着させたことを特徴とする難燃化されたレンジフードフィルタが開示されており、また使用形態として織布や不織布によって補強されることが開示されている。しかし、フィルター材の繊維がガラス繊維であるので、フィルター材に可撓性がなくガラス繊維が折れてガラス繊維の破片が飛散して、手や体に刺さるなどの問題があり、取り扱いに注意が必要であった。また、最近の社会情勢から、環境に優しい材料が要求されており、ガラス繊維は焼却できず、また廃棄によって分解もされないことからガラス繊維に替わる素材として生分解性の素材が求められていた。
【0004】
このような生分解性の素材を用いた濾材としては、例えば特許文献2のフィルター材が知られている。この公報には、セルロース繊維を主体とする繊維ウェブを金属水酸化物を添加した難燃性熱可塑性樹脂で結合したフィルター材が開示されている。このフィルター材は、セルロース繊維を主体とする繊維ウェブを用いているため、構成繊維については生分解性の機能を有している。しかし、使用されている難燃性熱可塑性樹脂が、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びアクリル系樹脂などの石油を原料とする樹脂であり、しかも生分解機能も有しない樹脂である。このように、生分解性の繊維を主体とした構成繊維を樹脂によって結合してフィルター材を形成する場合、この樹脂が生分解性を有しない、あるいは石油を原料とする樹脂である場合は、生分解性の度合いに限度のあるフィルター材しか得ることができないという問題があった。
【0005】
なお、生分解性の素材を用いた濾材として、特許文献3のように生分解性の繊維を熱融着性の繊維で結合したフィルター基材も知られている。しかし、熱融着性の繊維で構成繊維間を結合した場合、濾材の厚さが厚くならないという問題があり、また耐久性に劣るという問題があった。
【0006】
また、生分解性の繊維を生分解性の樹脂によって結合した濾材としては、例えば特許文献3の生分解性難燃性不織布からなるフィルターが知られている。この公報には、非ハロゲンリン酸エステル化合物を含むポリ乳酸エマルジョンを用いて生分解性の繊維または不織布の生分解性繊維間を接着することにより難燃処理したフィルターが開示されている。しかし、ポリ乳酸を構成繊維間を結合する樹脂として用いた場合、フィルターの保管時に生分解機能が働き始め、フィルター使用時には強度劣化が生じてしまうという問題があった。また、ポリ乳酸樹脂が高価のため製造コストも高くなるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平5−168830号公報
【特許文献2】特開2003−126628号公報
【特許文献3】特開平9−234316号公報
【特許文献4】特開2006−63473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の従来技術の欠点を解消すべくなされたものであり、生分解性の繊維を含む構成繊維が樹脂によって結合した濾材において、この樹脂を環境に負担をかけない材料からなる樹脂とすることにより、嵩高性と耐久性に優れ且つ環境に充分に配慮し得るエアフィルタ用濾材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段は、請求項1に係る発明では、生分解性繊維を含む構成繊維が天然ゴム系樹脂によって結合していることを特徴とするエアフィルタ用濾材であり、このエアフィルタ用濾材を構成する天然ゴム系樹脂は植物を原料とする樹脂であるので生分解性を有している。また、天然ゴム系樹脂は仮に焼却された場合でも、植物によって吸収された二酸化炭素を放出するのみであるので、大気中の二酸化炭素の量を増やしていることにはならない。その結果、エアフィルタ用濾材を構成する繊維と樹脂が共に環境に負担をかけない材料となり、嵩高性と耐久性に優れ且つ環境に充分に配慮し得るエアフィルタ用濾材を提供することができる。また、天然ゴム系樹脂は柔軟であるので、樹脂が粉となって落ちる現象が少ないという利点がある。
【0010】
請求項2に係る発明では、前記天然ゴム系樹脂が、天然ゴムにアクリル系重合体が共重合した樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ用濾材であり、特に耐久性に優れるという利点がある。
【0011】
請求項3に係る発明では、前記共重合がグラフト共重合であることを特徴とする請求項2に記載のエアフィルタ用濾材であり、特に耐久性に優れると共に天然ゴムとしての特性が充分に生かされ得るという利点がある。
【0012】
請求項4に係る発明では、前記構成繊維の50質量%以上が生分解性繊維からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、環境に充分に配慮したエアフィルタ用濾材を提供することができるという利点がある。
【0013】
請求項5に係る発明では、難燃剤を含有していることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、難燃性に優れるという利点がある。
【0014】
請求項6に係る発明では、前記天然ゴム系樹脂が難燃剤を含有していることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、構成繊維が難燃剤を含有した天然ゴム系樹脂によって結合している。このようなエアフィルタ用濾材に対しては構成繊維を結合する工程と難燃剤を塗布する工程とを同時に行なうことが可能となり、生産効率に優れるという利点がある。また、天然ゴム系樹脂は柔軟であるので、難燃剤を含有した樹脂が粉となって落ちる現象が少ないという利点がある。
【0015】
請求項7に係る発明では、前記難燃剤は非ハロゲン系の難燃剤であることを特徴とする請求項5または6に記載のエアフィルタ用濾材であり、難燃剤が非ハロゲン系の難燃剤からなるので、特に環境に優しいという利点がある。
【0016】
請求項8に係る発明では、面密度が30〜300g/mであり、風速2m/秒の時の圧力損失が30Pa以下である請求項1〜7の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、特に換気扇やレンジフードに好適に使用されるという利点がある。
【発明の効果】
【0017】
生分解性の繊維を含む構成繊維が樹脂によって結合した濾材において、この樹脂を環境に負担をかけない材料からなる樹脂とすることにより、嵩高性と耐久性に優れ且つ環境に充分に配慮し得るエアフィルタ用濾材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、生分解性繊維を含む構成繊維が天然ゴム系樹脂によって結合しているエアフィルタ用濾材である。
【0019】
前記生分解性繊維としては、例えば、レーヨンなどの再生繊維、綿、羊毛などの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維がある。これらの中でも構成繊維中にレーヨン繊維を含むことが好ましく、レーヨン繊維を含むことにより着火しても濾材に穴が空くことがなく、また燃焼中の燃えカスが落下することを防ぐという利点がある。
【0020】
また、前記生分解性繊維としては、例えばポリビニルアルコール系繊維、ポリ乳酸樹脂から形成されるポリ乳酸系繊維などの合成繊維がある。ここで、ポリ乳酸樹脂とは、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする共重合物である。ポリ乳酸を製造するための乳酸としては、D体のみ、L体のみ、D体とL体の混合物のいずれでもよい。ポリ乳酸を主体とする共重合物としては、乳酸(D体のみ、L体のみ、D体とL体の混合物のいずれでもよい。)と、例えばε−カプロラクトン等の環状ラクトン類、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類から選ばれるモノマーの一種又は二種以上とを共重合したものが挙げられる。共重合の割合としては、乳酸100質量部に対して、共重合させるモノマーは10質量部以下が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。本発明のエアフィルタ用濾材は構成繊維に前記生分解性繊維を含むことにより、環境に配慮した濾材となっている。
【0021】
また、前記生分解性繊維として、高分子量成分であるポリ乳酸樹脂Aと、低分子量成分であるポリ乳酸樹脂Bとがサイドバイサイド型に配された複合繊維であり、このポリ乳酸系複合繊維の断面において中空度10〜40%の中空部を有したポリ乳酸系複合繊維を含むことが好ましい。このようなポリ乳酸系複合繊維を含むことにより、嵩高性と圧縮に対する耐性に優れヘタリが生じ難く、厚さの回復性にも優れたエアフィルタ用濾材となり得る。
【0022】
前記ポリ乳酸系複合繊維は、横断面における中空度が10〜40%であることが好ましい。ここで、中空度とは、中空複合繊維の中空部を含む全断面積に占める中空部の比率である。中空であることにより、繊維の質量に比較して繊維が太く、繊維の剛性に優れると共に嵩高性に優れたエアフィルタ用濾材となり得る。また、同じ太さの中実の繊維と比較した場合、原料コストが低くなり、また軽いエアフィルタ用濾材とすることができる。なお、横断面における中空度が10%未満では繊維剛性や嵩高性の向上効果が失われる場合がある。また、中空度が40%を超えると、中空割れを生じたり中空部分が潰れやすくなり、エアフィルタ用濾材のクッション性の向上効果が失われる場合がある。
【0023】
前記ポリ乳酸系複合繊維は、高分子量成分であるポリ乳酸樹脂Aと、低分子量成分であるポリ乳酸樹脂Bとが、サイドバイサイド型に配された繊維であり、両樹脂間の分子量の差により生じる、延伸や熱処理時の収縮率差により、スパイラル状の捲縮が発現する。このスパイラル状の捲縮が発現することにより、嵩高性と圧縮に対する耐性に優れヘタリが生じ難く、厚さの回復性にも優れたエアフィルタ用濾材となり得る。ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bの分子量の差は大きい程、捲縮発現には有利であるが、分子量の差が大きすぎると、紡糸安定性が悪くなる。また分子量の差が小さすぎると、捲縮の発現性が低下する。そのため、ポリ乳酸樹脂Aの数平均分子量とポリ乳酸樹脂Bの数平均分子量の差は10000〜40000、特に15000〜35000であることが好ましい。また、ポリ乳酸樹脂Aの数平均分子量は、60000〜90000であることが好ましい。また、ポリ乳酸樹脂Bの数平均分子量は、50000〜80000であることが好ましい。
【0024】
前記ポリ乳酸系複合繊維の繊度は10〜50デシテックスであることが好ましく、このような比較的高い値の繊度を有することにより、繊維の剛性に優れ、その結果、反発性に特に優れたエアフィルタ用濾材となり得る。また、前記繊度は12〜40デシテックスであることがより好ましく、12〜30デシテックスであることが更に好ましい。10デシテックス未満であると、繊維剛性や嵩高性の向上効果が得られなかったり、嵩高性と反発性の向上効果が得られない場合がある。また、50デシテックスを超えると繊維の紡糸性が劣り、エアフィルタ用濾材を構成することができなくなる場合がある。
【0025】
前記ポリ乳酸系複合繊維は以上のような形態を有しているが、このようなポリ乳酸系複合繊維は、例えばユニチカ株式会社製のテラマックHP8Fを利用することができる。
【0026】
本発明のエアフィルタ用濾材の構成繊維は、前記生分解性繊維を含むことが必要である。生分解性繊維を含む割合としては、特に限定されず、エアフィルタ用濾材の要求水準に応じて適宜定めることができるが、生分解性繊維を50質量%以上含むことが好ましく、エアフィルタ用濾材を使用後に廃棄しても大部分の繊維の生分解がすすみ環境に優しいという利点がある。また、70質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことが更に好ましい。50質量%未満であると、エアフィルタ用濾材全体の生分解性に劣り、環境に充分に配慮したエアフィルタ用濾材が得られなくなる場合がある。
【0027】
なお、前記構成繊維がポリ乳酸系繊維とレーヨン繊維とからなることが望ましく、ポリ乳酸系繊維とレーヨン繊維の配合比率としては、構成繊維が前記ポリ乳酸系繊維20〜80質量%とレーヨン繊維80〜20質量%からなる態様が好ましく、前記ポリ乳酸系複合繊維30〜70質量%とレーヨン繊維70〜30質量%からなる構成がより好ましい。
【0028】
前記生分解性繊維以外の構成繊維としては、廃棄処理の点から有機質繊維であることが好ましく、有機質繊維としては、例えば、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維などの合成繊維を挙げることができる。
【0029】
また、その他の構成繊維として、熱接着性の繊維を含むことも可能である。このような熱接着性の繊維としては、例えば他の繊維よりも融点が低く他の繊維を熱接着することのできる単一樹脂成分からなる繊維や、他の繊維よりも融点が低く他の繊維を熱接着することのできる低融点成分を繊維表面に有する複合繊維がある。このような複合繊維には、その横断面形状が例えば、低融点成分を繊維表面に有する芯鞘型やサイドバイサイド型等の複合繊維があり、またその材質は例えば、共重合ポリエステル/ポリエステル、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリエステルなどの繊維形成性重合体の組み合わせからなる複合繊維がある。
【0030】
本発明のエアフィルタ用濾材の構成繊維は、平均繊度が5〜30デシテックスであることが好ましく、また繊維組織の形態も特に限定されず、例えば繊維組織が二層以上の多層構造となっている場合であっても、全体の構成繊維の平均繊度が5〜30デシテックスであれば好ましい。本発明ではこのような比較的高い値の繊度を有することにより、繊維の剛性に優れ、その結果、嵩高性と反発性に特に優れたエアフィルタ用濾材となり得る。また、前記平均繊度は8〜25デシテックスであることがより好ましく、12〜20デシテックスであることが更に好ましい。5デシテックス未満であると、嵩高性と反発性に優れたエアフィルタ用濾材が得られない場合があり、また圧力損失が高くなり過ぎて、粗塵用フィルタやレンジフード用などの濾材として不適になる場合がある。また、30デシテックスを超えると繊維組織が粗くなりすぎて、塵埃捕集が不充分になる場合がある。
【0031】
なお、構成繊維の平均繊度の計算方法としては、構成繊維に含まれる各繊維の繊度をaデシテックス、bデシテックス、cデシテックス・・・として、各繊維の含有割合をそれぞれa’質量%、b’質量%、c’質量%・・・とすると、(a’/a)+(b’/b)+(c’/c)・・・=(100/x)の関係式が成り立ち、この関係式から平均繊度xを求めることができる。
【0032】
本発明のエアフィルタ用濾材は、前記構成繊維が結合しているが、構成繊維が結合している形態としては、不織布の形態であることが好ましい。このような不織布は、従来エアフィルタ用濾材として使用される不織布であることが可能であり、例えば、乾式法により繊維ウエブを形成した後、天然ゴム系樹脂によって接着して結合することにより形成することが可能である。このような乾式法不織布の製法を用いた場合、構成繊維の配合割合を自由に調整することが容易となり、また均一な繊維ウエブを得ることができるという利点がある。具体的には、捲縮加工された繊維をカード機によって繊維フリースに形成し、さらにこの繊維フリースを例えば交差させるようにして複数枚積層して繊維ウエブを形成する。また必要に応じて構成繊維の配合割合が異なる二層以上の繊維フリースを積層して繊維ウエブを形成する。次いで、この繊維ウエブに液状の天然ゴム系樹脂をスプレーやプリントなどによる塗布、及び/又は含浸した後、加熱により乾燥と必要に応じて熱硬化させることにより、構成繊維を天然ゴム系樹脂で結合してエアフィルタ用濾材を形成することができる。これらの結合方法の中でも、液状の天然ゴム系樹脂をスプレーにより塗布して結合する方法であると、嵩高な状態で繊維ウエブを接着できるため、嵩高性に優れたエアフィルタ用濾材を形成でき、好適な製造方法である。また、液状の天然ゴム系樹脂を塗布、または含浸する前に、繊維ウエブに予めニードルパンチ加工を施すことも可能である。このニードルパンチ加工は厚さが薄くならない程度の軽度のニードルパンチ加工であることが好ましく、天然ゴム系樹脂による結合を確実に行なうことができるという利点がある。
【0033】
前記天然ゴム系樹脂としては、天然ゴムや天然ゴムに他の樹脂を共重合した樹脂を挙げることができる。これらの中でも特にメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂を共重合させた樹脂であることが好ましく、天然ゴムに他の樹脂を共重合した樹脂は、特に耐久性に優れるという利点がある。また、この共重合はグラフト重合であることが好ましく、特に耐久性に優れると共に天然ゴムとしての特性が充分に生かされ得るという利点がある。
【0034】
前記天然ゴム系樹脂は植物を原料とする樹脂であるので生分解性を有している。また、天然ゴム系樹脂は植物を原料とする樹脂であるので、仮に焼却された場合でも、植物によって吸収された二酸化炭素を放出するのみであるので、大気中の二酸化炭素の量を増やしていることにはならない。その結果、エアフィルタ用濾材を構成する繊維と樹脂が共に環境に負担をかけない材料となり、嵩高性と耐久性に優れ且つ環境に充分に配慮し得るエアフィルタ用濾材を提供することができる。また、天然ゴム系樹脂によって構成繊維が結合されているので、濾材がゴム弾性に優れ、厚さ回復性に優れるという利点や、天然ゴム系樹脂は柔軟であるので、樹脂が粉となって繊維から脱落する現象が少ないという利点がある。
【0035】
本発明では、構成繊維が天然ゴム系樹脂によって結合しているが、構成繊維が天然ゴム系樹脂と他の樹脂とが併用された天然ゴム系複合樹脂によって結合している形態も可能である。このような形態を得るには、例えば、天然ゴム系樹脂と他の樹脂とが混合された液状の混合樹脂を構成繊維に適用することで可能となる。しかし、天然ゴム系樹脂の混合比率が高いことが望ましく、前記天然ゴム系複合樹脂に対して50〜99質量%であることが好ましく、70〜99%であることがより好ましく、85〜99%であることが更に好ましい。
【0036】
前述の他の樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂を適用することができ、例えばポリアクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、尿素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル・エーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、シリコーン系樹脂、などを適用することができる。これらの樹脂の中でも、実質的にハロゲン元素を含まない、アクリル酸エステル系樹脂、尿素系樹脂などが好ましい。また他の樹脂として、合成ゴム系などのゴム系の樹脂を用いることも可能である。合成ゴム系樹脂としては、例えばSBR系樹脂、NBR系樹脂などを適用することができる。
【0037】
また他の樹脂として、生分解性樹脂である、例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)(例えば、ポリグリコール酸、ポリ−L−乳酸など)、ポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、β−ヒドロキシ酪酸−βヒドロキシ吉草酸共重合体など)、ポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリ−ε−カプロラクトンなど)、ポリアルキレンジカルボキシレート(例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート共重合体など)を適用することができ、所望によりこれらの材料の少なくとも1種以上用いることも可能である。
【0038】
本発明では、前記構成繊維と前記天然ゴム系樹脂との質量比率は、構成繊維50〜90質量%に対して天然ゴム系樹脂50〜10質量%であることが好ましく、構成繊維55〜85質量%に対して天然ゴム系樹脂45〜15質量%であることがより好ましく、構成繊維60〜80質量%に対して天然ゴム系樹脂40〜20質量%であることが更に好ましい。構成繊維が50質量%未満であると濾材としての厚さを充分に得られない場合があり、また前記天然ゴム系樹脂の剥離量が多くなるという問題が生ずる場合がある。また構成繊維が90質量%を超えると濾材としての強度などの物性に劣る場合がある。
【0039】
本発明のエアフィルタ用濾材は、難燃剤を含有していることが好ましく、難燃剤を含有する形態としては、例えば構成繊維が天然ゴム系樹脂によって結合された後に、難燃剤を含有する難燃剤液を含浸加工、またはスプレー加工によって塗布して得られる形態がある。また、例えば構成繊維が難燃剤を含む天然ゴム系樹脂で結合して得られる形態が可能である。本発明では、後者の形態であることが好ましく、構成繊維を結合した後に難燃剤を塗布する工程を必要としないため、生産効率に優れるという利点がある。また、天然ゴム系樹脂は柔軟であるので、難燃剤を含有した樹脂が粉となって繊維から脱落する現象が少ないという利点がある。
【0040】
前記難燃剤としては、特に限定されることなく、無機系の難燃剤及び有機系の難燃剤のいずれも適用可能である。これらの難燃剤の中でも、環境に与える影響から考慮して非ハロゲン系難燃剤が好ましい。
【0041】
無機系の非ハロゲン系難燃剤としては、例えば水和金属化合物、水和シリケート化合物、リン系化合物、窒素系化合物、硼素系化合物、アンチモン系化合物等を適用することができる。水和金属化合物には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム等があり、リン系化合物には赤リン、メタリン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、縮合リン酸アミドがあり、窒素系化合物にはリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウムがあり、硼素系化合物にはホウ酸亜鉛があり、アンチモン系化合物には酸化アンチモンがあり、その他各種金属硝酸塩、各種金属錯体等を適用することができる。これらのうち特に、難溶性のメタリン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、縮合リン酸アミドなどのリン系難燃剤、あるいは難溶性の水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが好適である。
【0042】
また、有機系の非ハロゲン系難燃剤としては、例えばNメチロールジメチルホスホノプロピオンアミド、ポリリン酸カルバメート、グアニジン誘導体リン酸塩、環状ホスホン酸エステル、リン酸メラミンなどのリン系難燃剤を適用することができる。また、リン系難燃剤以外にも、例えばシアヌル酸メラミンなどの難燃剤を適用することができる。
【0043】
本発明では、前記構成繊維と難燃剤を含む天然ゴム系樹脂(以下、難燃剤含有天然ゴム系樹脂と称することがある。)との質量比率は、構成繊維25〜75質量%に対して難燃剤含有天然ゴム系樹脂75〜25質量%であることが好ましく、構成繊維32〜68質量%に対して難燃剤含有天然ゴム系樹脂68〜32質量%であることがより好ましく、構成繊維40〜60質量%に対して難燃剤含有天然ゴム系樹脂60〜40質量%であることが更に好ましい。構成繊維が25質量%未満であると濾材としての厚さを充分に得られない場合があり、また難燃剤含有天然ゴム系樹脂が粉となって繊維から脱落する量が多くなるという問題が生ずる場合がある。また構成繊維が75質量%を超えると濾材としての強度などの物性に劣る場合があり、また含まれる難燃剤の量も少なくなるので、濾材としての難燃性に劣る場合がある。
【0044】
また、天然ゴム系樹脂と難燃剤との質量比率は、エアフィルタ用濾材の全体の質量を100%とすると、天然ゴム系樹脂10〜65質量%に対して難燃剤65〜10質量%であることが好ましく、天然ゴム系樹脂15〜50質量%に対して難燃剤50〜15質量%であることがより好ましく、天然ゴム系樹脂15〜45質量%に対して難燃剤45〜15質量%であることが更に好ましい。天然ゴム系樹脂が10質量%未満であると濾材としての強度などの物性に劣る場合があり、天然ゴム系樹脂が65質量%を超えると相対的に難燃剤の量が減少して難燃性が低下する場合がある。また難燃剤が10質量%未満であると難燃性が低下する場合がある。
【0045】
前記難燃剤含有天然ゴム系樹脂は前記構成繊維に対して厚さ方向に均一に塗布及び/又は含浸されていることが可能であるが、片面において難燃剤の量が多くなるように塗布されることも可能である。片面において難燃剤の量が多くなるように塗布されることにより、難燃剤の量が多く塗布された面を空気流入側に配置することにより難燃性の効果をより高めることが可能である。例えば、空気流出側における難燃剤の質量と空気流入側における難燃剤の質量比率を1:2〜1:10とすることが可能であり、望ましくは1:3〜1:7程度である。
【0046】
前記難燃剤含有天然ゴム系樹脂を得るには、具体的には、例えば難燃剤含有樹脂液として、粉末状の非ハロゲン系難燃剤を液体中に懸濁させたスラリーと、液状の天然ゴム系樹脂とを混合した難燃剤含有樹脂液を準備する。スラリーは、一般的に、粉末状の非ハロゲン系難燃剤20〜80質量%と水80〜20質量%とを混合し、分散安定剤を用いて、非ハロゲン系難燃剤を分散させることによって得ることができる。あるいは、難燃剤含有樹脂液として、液体状の非ハロゲン系難燃剤を他の液体中に溶解又は分散させた難燃剤液と液状の天然ゴム系樹脂とを混合した難燃剤含有樹脂液を準備する。なお、難燃剤含有樹脂液に抗菌剤、抗黴剤または撥水剤などが含まれるようにすることも可能である。
【0047】
本発明では、前記構成繊維中の生分解性繊維と前記天然ゴム系樹脂と前記非ハロゲン系難燃剤とを総称して「環境配慮材料」とすると、前記構成繊維中の生分解性繊維の質量と前記天然ゴム系樹脂の質量と前記非ハロゲン系難燃剤の質量とを合計してなる環境配慮材料の質量がエアフィルタ用濾材に占める割合が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。環境配慮材料の質量が50質量%未満であると、充分に環境に配慮された濾材にならないという問題が生じる場合がある。
【0048】
本発明のエアフィルタ用濾材の嵩高性に関しては、見かけ密度が0.005〜0.04g/cmであることが好ましく、0.008〜0.035g/cmであることが好ましく、0.01〜0.03g/cmであることが更に好ましい。ここで、見かけ密度とは単位面積当たりの質量を厚さで除した値で表すものとする。なお、厚さは1cmあたり0.5gの荷重のもとに測定した値とする。
【0049】
本発明のエアフィルタ用濾材の用途としては、粗塵除去用や換気扇、レンジフードなどに好適であり、このような用途に適合する面密度として、30〜300g/mであることが好ましく、100〜300g/mであることが好ましく、150〜250g/mであることが更に好ましい。また、厚さは3〜25mm程度が好ましく、5〜20mmがより好ましく、7〜20mmが更に好ましい。また風速2m/秒の時の圧力損失が30Pa以下であることが好ましい。
【0050】
また、本発明のエアフィルタ用濾材は、後述の「粉落ちの試験方法」で定義する、粉落ち量(g)の値が、1.0g/m以下であることが好ましく、0.8g/m以下であることがより好ましく、0.6g/m以下であることが更に好ましい。
【0051】
また、本発明のエアフィルタ用濾材は、後述の「厚さの耐荷重試験方法」で定義する、厚さ圧縮率(%)の値が、90%以上であることが好ましく、91%以上であることがより好ましく、92%以上であることが更に好ましい。また、1g/cmの荷重を開放した後の嵩回復率(%)、すなわち後述の「厚さの耐荷重試験方法」で定義する嵩回復率(%)の値が、92%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましく、96%以上であることが更に好ましい。
【0052】
また、本発明のエアフィルタ用濾材の難燃性は、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により評価すると、難燃性の評価値が区分3であることが好ましい。なお、難燃剤が他の面よりも多く塗布された面を有する場合は、この多く塗布された面に炎を当てて試験するものとする。
【0053】
以上説明したように、本発明によって、生分解性の繊維を含む構成繊維が樹脂によって結合した濾材において、この樹脂を環境に負担をかけない材料からなる樹脂とすることにより、嵩高性と耐久性に優れ且つ環境に充分に配慮し得るエアフィルタ用濾材を提供することが可能となった。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本願発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【0055】
(粉落ちの試験方法)
評価用サンプルに対して、任意箇所から、25cm角の正方形の試験片を1枚採取する。また、この試験片を挿入するための約38cm×約26cmの大きさのポリエチレン製の透明袋を準備し、この透明袋の質量を計測して、初期質量(g)とする。次に、試験片をこの透明袋に挿入した後、試験片が挿入された透明袋を上面が平滑な台に載置して、金属性ロール(直径:約10cm、長さ:約30cm、質量:15Kg)を透明袋の上で転がしながら10往復させる。次に、透明袋の質量を計測し、試験後質量(g)とする。次いで、試験後質量から初期質量を差し引いた質量を求める。以上の試験を異なる試験片を用いて3回繰り返し、3回の試験の平均値を試験片の面積で除して単位面積当たりの「粉落ち量(g/m)」を算出する。
【0056】
(厚さの耐荷重試験方法)
評価用サンプルに対して、任意箇所から、25cm角の正方形の試験片を4枚採取する。次に、これらの試験片を重ね合わせて上面が平滑な測定台に載置して、この4枚の試験片の上に、25cm角の正方形で、質量が312.5gの加圧板を、この試験片と重ね合わせるようにして載置して、荷重が0.5g/cmとなるように押圧する。次に、この状態の試験片の各辺の中央部において、各辺につき1ヶ所ずつ、合計4ヶ所の試験片の厚さを測定し、試験片1枚あたりの平均値に換算して初期厚さとして記録する。
次いで、上記加圧板の上に、さらに25cm角の正方形で、質量が312.5gの加圧板を重ね合わせるようにして載置して、荷重が1g/cmとなるように押圧する。そして、この状態のまま、この試験片を24時間放置する。その後、荷重が1g/cmの状態の試験片の各辺の中央部において、各辺につき1ヶ所ずつ、合計4ヶ所の試験片の厚さを測定し、試験片1枚あたりの平均値に換算して「荷重後厚さ」とする。
次いで、試験片の上に載置した加圧板を除去して、加圧のない状態で80時間放置した後に、初期厚さの測定と同様にして荷重が0.5g/cmにおける厚さを測定して、「回復厚さ」とする。
次いで、厚さ圧縮率(%)及び嵩回復率(%)を次の式1及び2から求める。
厚さ圧縮率(%)=荷重後厚さ(mm)×100/初期厚さ(mm)・・・(式1)
嵩回復率(%)=回復厚さ(mm)×100/初期厚さ(mm)・・・(式2)
【0057】
(樹脂液の準備1)
天然ゴムラテックスにメチルメタアクリレートをグラフト共重合した樹脂からなるA社製のエマルジョンに、グアニジン誘導体リン酸塩からなる難燃剤を混合して、固形分の質量比が樹脂70%と難燃剤30%になるように調整した樹脂液A1(液濃度:約30%)及び固形分の質量比が樹脂30%と難燃剤70%になるように調整した樹脂液A2(液濃度:約40%)を得た。
【0058】
(樹脂液の準備2)
アクリル系樹脂からなるB社製のエマルジョンに、グアニジン誘導体リン酸塩からなる難燃剤を混合して、固形分の質量比が樹脂70%と難燃剤30%になるように調整した樹脂液(液濃度:約30%)B1及び固形分の質量比が樹脂30%と難燃剤70%になるように調整した樹脂液B2(液濃度:約40%)を得た。
【0059】
(実施例1)
ユニチカ株式会社製の中実タイプのポリ乳酸繊維(品名:テラマックPL01、繊度:11デシテックス、繊維長:51mm)を準備した。次いで、このポリ乳酸系繊維45質量%と、レーヨン繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:76mm)55質量%とを混合して、さらにカード機により繊維フリースに形成し、この繊維フリースを交差させるようにして複数枚積層して面密度100g/mの繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブの片面に、樹脂液の準備1で得た樹脂液A1(液濃度:約30%)を固形分付着が面密度30g/mになるようにスプレー塗布して、ドライヤーにより乾燥した。次いで、繊維ウエブの反対面に、樹脂液の準備1で得た樹脂液A2(液濃度:約40%)を固形分付着が面密度60g/mになるようにスプレー塗布して、ドライヤーにより乾燥し、引き続き加熱によりキュアリング加工を行い面密度190g/mのエアフィルタ用濾材を得た。
このエアフィルタ用濾材には、樹脂39g/mと難燃剤51g/mとからなる難燃剤含有樹脂が付着しており、この難燃剤含有樹脂によって、平均繊度14デシテックスの構成繊維が結合しており、環境配慮材料の割合は100%であった。また、このエアフィルタ用濾材の厚さは9.0mmであり、荷重後厚さは8.5mm(厚さ圧縮率は94%)であり、回復厚さは8.7mm(嵩回復率は97%)であり、見かけ密度は0.021g/cmであり、風速2m/秒の時の圧力損失は21Mpaであり、粉落ち量は0.35g/mであった。また、樹脂液A2の塗布により難燃剤が多く塗布された面から炎を当てて、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により、難燃性を評価すると、難燃性の評価値が区分3であり、このエアフィルタ用濾材は難燃性と優れた生分解性の機能を有しながら、嵩高性と反発性に優れレンジフード用濾材として好適であった。
【0060】
(実施例2)
実施例1の繊維ウエブ形成において、ユニチカ株式会社製のポリ乳酸系複合繊維(品名:テラマックHP8F、繊度:17デシテックス、繊維長:64mm)を準備したこと、次いで、このポリ乳酸系複合繊維45質量%と、レーヨン繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:76mm)55質量%とを混合して、さらにカード機により繊維フリースに形成し、この繊維フリースを交差させるようにして複数枚積層して面密度100g/mの繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、面密度190g/mのエアフィルタ用濾材を得た。なお、このポリ乳酸系複合繊維は高分子量成分であるポリ乳酸樹脂と、低分子量成分であるポリ乳酸樹脂とがサイドバイサイド型に配された複合繊維であり、前記複合繊維の断面において中空度22%の中空部を有していた。
このエアフィルタ用濾材には、樹脂39g/mと難燃剤51g/mとからなる難燃剤含有樹脂が付着しており、この難燃剤含有樹脂によって、平均繊度17デシテックスの構成繊維が結合しており、環境配慮材料の割合は100%であった。また、このエアフィルタ用濾材の厚さは11.9mmであり、荷重後厚さは11.1mm(厚さ圧縮率は93%)であり、回復厚さは11.6mm(嵩回復率は97%)であり、見かけ密度は0.016g/cmであり、風速2m/秒の時の圧力損失は20Mpaであり、粉落ち量は0.21g/mであった。また、樹脂液A2の塗布により難燃剤が多く塗布された面から炎を当てて、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により、難燃性を評価すると、難燃性の評価値が区分3であり、このエアフィルタ用濾材は難燃性と優れた生分解性の機能を有しながら、嵩高性と反発性に優れレンジフード用濾材として好適であった。
【0061】
(実施例3)
実施例1の繊維ウエブ形成において、実施例2と同様のポリ乳酸系複合繊維55質量%と、ポリエステル繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:51mm)45質量%とを混合して、さらにカード機により繊維フリースに形成し、この繊維フリースを交差させるようにして複数枚積層して面密度100g/mの繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、面密度190g/mのエアフィルタ用濾材を得た。
このエアフィルタ用濾材には、樹脂39g/mと難燃剤51g/mとからなる難燃剤含有樹脂が付着しており、この難燃剤含有樹脂によって、平均繊度17デシテックスの構成繊維が結合しており、環境配慮材料の割合は76%であった。また、このエアフィルタ用濾材の厚さは12.0mmであり、荷重後厚さは11.5mm(厚さ圧縮率は96%)であり、回復厚さは11.8mm(嵩回復率は98%)であり、見かけ密度は0.016g/cmであり、風速2m/秒の時の圧力損失は16Mpaであった。また、粉落ち量は0.23g/mであった。また、樹脂液A2の塗布により難燃剤が多く塗布された面から炎を当てて、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により、難燃性を評価すると、難燃性の評価値が区分3であり、このエアフィルタ用濾材は難燃性と優れた生分解性の機能を有しながら、嵩高性と反発性に優れレンジフード用濾材として好適であった。
【0062】
(比較例1)
実施例1において、繊維ウエブの片面に、樹脂液の準備2で得た樹脂液B1(液濃度:約30%)を固形分付着が面密度30g/mになるようにスプレー塗布したこと、及び繊維ウエブの反対面に、樹脂液の準備2で得た樹脂液B2(液濃度:約40%)を固形分付着が面密度60g/mになるようにスプレー塗布したこと以外は実施例1と同様にして、面密度190g/mのエアフィルタ用濾材を得た。
このエアフィルタ用濾材には、樹脂39g/mと難燃剤51g/mとからなる難燃剤含有樹脂が付着しており、この難燃剤含有樹脂によって、平均繊度14デシテックスの構成繊維が結合しており、環境配慮材料の割合は79%であった。また、このエアフィルタ用濾材の厚さは8.1mmであり、荷重後厚さは7.0mm(厚さ圧縮率は86%)であり、回復厚さは7.3mm(嵩回復率は90%)であり、見かけ密度は0.023g/cmであり、風速2m/秒の時の圧力損失は23Mpaであり、粉落ち量は1.35g/mであった。なお、樹脂液B2の塗布により難燃剤が多く塗布された面から炎を当てて、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により、難燃性を評価すると、難燃性の評価値が区分3であり、このエアフィルタ用濾材は難燃性の機能を有していたが、実施例1のエアフィルタ用濾材と比較して生分解性の機能が不充分であり、また粉落ち量が多く、さらに嵩高性と反発性にも劣り、粗塵除去用やレンジフード用濾材として不適であった。
【0063】
(比較例2)
実施例2において、繊維ウエブの片面に、樹脂液の準備2で得た樹脂液B1(液濃度:約30%)を固形分付着が面密度30g/mになるようにスプレー塗布したこと、及び繊維ウエブの反対面に、樹脂液の準備2で得た樹脂液B2(液濃度:約40%)を固形分付着が面密度60g/mになるようにスプレー塗布したこと以外は実施例1と同様にして、面密度190g/mのエアフィルタ用濾材を得た。
このエアフィルタ用濾材には、樹脂39g/mと難燃剤51g/mとからなる難燃剤含有樹脂が付着しており、この難燃剤含有樹脂によって、平均繊度17デシテックスの構成繊維が結合しており、環境配慮材料の割合は79%であった。また、このエアフィルタ用濾材の厚さは10.6mmであり、荷重後厚さは9.9mm(厚さ圧縮率は93%)であり、回復厚さは10.1mm(嵩回復率は95%)であり、見かけ密度は0.018g/cmであり、風速2m/秒の時の圧力損失は17Mpaであり、粉落ち量は1.13g/mであった。なお、樹脂液B2の塗布により難燃剤が多く塗布された面から炎を当てて、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により、難燃性を評価すると、難燃性の評価値が区分3であり、このエアフィルタ用濾材は難燃性の機能を有しており、また嵩高性と反発性には優れていたが、実施例2のエアフィルタ用濾材と比較して生分解性の機能が不充分であり、また粉落ち量が多く、粗塵除去用やレンジフード用濾材として不適であった。
【0064】
(比較例3)
実施例1の繊維ウエブ形成において、ポリエステル繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:51mm)70質量%と、レーヨン繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:76mm)30質量%とを混合して、さらにカード機により繊維フリースに形成し、この繊維フリースを交差させるようにして複数枚積層して面密度100g/mの繊維ウエブを形成したこと、及び繊維ウエブの片面に、樹脂液の準備2で得た樹脂液B1(液濃度:約30%)を固形分付着が面密度30g/mになるようにスプレー塗布したこと、及び繊維ウエブの反対面に、樹脂液の準備2で得た樹脂液B2(液濃度:約40%)を固形分付着が面密度60g/mになるようにスプレー塗布したこと、以外は実施例1と同様にして、面密度190g/mのエアフィルタ用濾材を得た。
このエアフィルタ用濾材には、樹脂39g/mと難燃剤51g/mとからなる難燃剤含有樹脂が付着しており、この難燃剤含有樹脂によって、平均繊度17デシテックスの構成繊維が結合しており、環境配慮材料の割合は43%であった。また、このエアフィルタ用濾材の厚さは11.2mmであり、荷重後厚さは10.7mm(厚さ圧縮率は96%)であり、回復厚さは11.0mm(嵩回復率は98%)であり、見かけ密度は(0.017)g/cmであり、風速2m/秒の時の圧力損失は18Mpaであり、粉落ち量は1.23g/mであった。なお、樹脂液B2の塗布により難燃剤が多く塗布された面から炎を当てて、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により、難燃性を評価すると、難燃性の評価値が区分3であり、このエアフィルタ用濾材は難燃性の機能を有しており、嵩高性と反発性には優れていたが、実施例1〜3のエアフィルタ用濾材と比較して生分解性の機能が不充分であり、また粉落ち量が多く、粗塵除去用やレンジフード用濾材として不適であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性繊維を含む構成繊維が天然ゴム系樹脂によって結合していることを特徴とするエアフィルタ用濾材。
【請求項2】
前記天然ゴム系樹脂が、天然ゴムにアクリル系重合体が共重合した樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項3】
前記共重合がグラフト共重合であることを特徴とする請求項2に記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項4】
前記構成繊維の50質量%以上が生分解性繊維からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項5】
難燃剤を含有していることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項6】
前記天然ゴム系樹脂が難燃剤を含有していることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項7】
前記難燃剤は非ハロゲン系の難燃剤であることを特徴とする請求項5または6に記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項8】
面密度が30〜300g/mであり、風速2m/秒の時の圧力損失が30Pa以下である請求項1〜7の何れかに記載のエアフィルタ用濾材。

【公開番号】特開2009−233513(P2009−233513A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80202(P2008−80202)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】