説明

エアフォイルの健全性を監視するシステム及び方法

【課題】1つ又は複数のロータブレード又はエアフォイルの健全性を監視するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】1つ又は複数のブレードのそれぞれの実際の到着時間(TOA)に基づいて、複数のブレードの各々に対応するデルタTOAを決定するステップと、1つ又は複数の動作データの影響をデルタTOAから取り除くことによって、1つ又は複数のブレードの各々に対応する正規化されたデルタTOAを決定するステップ320と、1つ又は複数のブレードの復位の影響を正規化デルタTOAから取り除くことによって、1つ又は複数のブレードの各々に対応する補正デルタTOAを決定するステップ330とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ロータブレード又はエアフォイルの健全性を監視するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータブレード又はエアフォイルは多くの装置で極めて重要な役割を果たしており、その幾つかの例には軸流圧縮機、タービン、エンジン、ターボ機械などが含まれる。例えば、軸流圧縮機は各段がロータブレード又はエアフォイルの列を含み、その後に静止ブレード又は静止エアフォイルの列が続く一連の段を有している。従って、各段は一対のロータブレード又はエアフォイルと静止エアフォイルとを備えている。典型的には、ロータブレード又はエアフォイルは入口を通って軸流圧縮機に流入する流体の運動エネルギを増大させる。更に、静止ブレード又は静止エアフォイルは一般に、流体の増大した運動エネルギを拡散によって静圧に変換する。従って、ロータブレード又はエアフォイル及び静止エアフォイルは、流体の圧力を高めるために極めて重要な役割を果たす。
【0003】
更に、エアフォイルを含む軸流圧縮機の用途が広範で多様であるため、ロータブレード又はエアフォイル、及び静止エアフォイルは更に重要である。例えば軸流圧縮機は、発電用ガスタービン、ジェットエンジン、高速艇エンジン、小規模発電所などの幾つかの装置で使用し得る。その上、軸流圧縮機は大容量空気分離プラント、溶鉱炉の空気、流動接触分解装置の空気、プロパン脱水素化などの多様な用途に使用し得る。
【0004】
エアフォイルは、エアフォイルの健全性に影響する高速、高圧及び高温などの極端且つ多様な動作条件下で長時間にわたって動作する。極端且つ多様な条件に加えて、ある種の別の要因がエアフォイルの疲労及び応力を引き起こす。この要因には、例えば遠心力を含む慣性力、圧力、エアフォイルの共振周波数、エアフォイル内の振動、振動応力、温度応力、エアフォイルの復位(reseating)、ガス又はその他の流体の負荷などがあり得る。一定期間を超える長期にわたる応力及び疲労の増大により、エアフォイルに欠陥が生じ、内部に亀裂が生ずる。1つ又は複数の亀裂は時間と共に拡がり、その結果、エアフォイル又はエアフォイルの一部が離脱することがある。エアフォイルの離脱はエアフォイルを含む装置にとって有害であり、そのため膨大な金銭的損失を生ずることがある。その上、装置の近くにいる人々にとって危険且つ脅威になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、エアフォイルの健全性をリアルタイムで予測するシステム及び方法を開発することが極めて望ましい。より具体的には、亀裂又は破損をリアルタイムで予測し得るシステム及び方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡略に述べると、本発明の一態様により、1つ又は複数のブレードの健全性を監視する方法が提供される。この方法は、1つ又は複数のブレードのそれぞれの実際の到着時間(TOA)に基づいて1つ又は複数のブレードの各々に対応するデルタTOAを決定するステップと、デルタTOAから1つ又は複数の動作データの影響を取り除くことによって、1つ又は複数のブレードの各々に対応する正規化デルタTOAを決定するステップと、1つ又は複数のブレードの復位による影響を正規化デルタTOAから取り除くことにより、1つ又は複数のブレードの各々に対応する補正デルタTOAを決定するステップと、を含む。
【0007】
一態様によれば、処理サブシステムを含むシステムが提供される。処理サブシステムは1つ又は複数のブレードのそれぞれの実際の到着時間(TOA)に基づいて1つ又は複数のブレードの各々に対応するデルタTOAを決定し、デルタTOAから1つ又は複数の動作データの影響を取り除くことによって、1つ又は複数のブレードの各々に対応する正規化デルタTOAを決定し、正規化デルタTOAから1つ又は複数のブレードの復位による影響を取り除くことにより、1つ又は複数のブレードの各々に対応する補正デルタTOAを決定する。
【0008】
本発明の上記及びその他の特徴、態様及び利点は、その全体を通して同じ番号が同様の部分を表している添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読むことにより、一層よく理解されるようになろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態による、ブレードの健全性監視システムの例示的概略図である。
【図2】本発明の実施形態による、ブレードの静的撓み及び動的撓みを決定する例示的な方法を表すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態による、ブレードの静的撓みを決定する例示的な方法を表すフローチャートである。
【図4】本発明の別の実施形態による、ブレードの静的撓みを決定する例示的な方法を表すフローチャートである。
【図5】本発明の更に別の実施形態による、ブレードの静的撓みを決定する例示的な方法を表すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態による、ブレードに対応する復位による位置ずれを決定する方法のステップを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に詳細に記載するように、本システム及び技術の実施形態は1つ又は複数のブレード又はエアフォイルの健全性を評価するものである。より具体的には、本システム及び技術は、ブレード又はエアフォイルの1つ又は複数の欠陥又は亀裂によるブレード又はエアフォイルの静的撓みを決定する。以下では、「エアフォイル」及び「ブレード」と言う用語は同じ意味で用いられる。例えば、静的撓みはブレードの予測位置又は原位置からのブレードの原位置又は予測位置の定常的変化を意味するために用いられる。本システム及び技術のある実施形態は更に、ブレードに対応する動的撓みを決定する。本明細書で用いられる「動的撓み」と言う用語は、ブレードの平均位置にわたるブレードの振動振幅を意味するために用いる。
【0011】
動作時には、基準位置でのブレードの到着時間(TOA)はブレード内の1つ又は複数の亀裂又は欠陥により予測TOAとは異なることがある。従って、ブレードのTOAの変化を利用してブレードの静的撓みを決定し得る。本明細書で用いられる「予測TOA」と言う用語は、ブレードに欠陥や亀裂がなく、ブレードが最適な状況で動作しており、負荷状態が最適で、且つブレードの振動が最小限である場合の基準位置でのブレードのTOAを意味する。以下では、理解し易くするため、「TOA」という語句、及び「実TOA」と言う用語は同じ意味で用いられる。
【0012】
しかし、ブレード内の亀裂又は欠陥の他に、TOAはブレードの1つ又は複数の動作データ及び復位によっても変化することがある。動作データには、例えば、インレットガイドベーン(IGV)角度、負荷、速度、質量流量、吐出圧などを含む。本明細書で用いられる「ブレードの復位」と言う用語は、蟻継ぎ(ダブテールジョイント)などの継手内のブレードの原位置又は予測位置とは異なる位置でのブレードのロックを意味する。典型的には、ブレードは蟻継ぎなどの1つ又は複数の継手を介してロータに固締される。ブレードを含む装置の始動中、ブレードは継手内の原位置から移動することがあり、且つブレードの原位置とは異なる位置で継手内にロックされることがある。例として、装置の例にはガスタービン、圧縮機などが含まれ得る。継手内のブレードの原位置とは異なる位置でのブレードのロックは、ブレードの復位と呼ばれる。ブレードの位置の変化によりブレードの実TOAが変わることがある。
【0013】
その結果、動作データ及びブレードの復位の影響により、ブレードの実TOAに基づいて決定された静的撓みは、ブレードの亀裂又は欠陥による正確な、又は精密な静的撓みとは異なり、又はそれを超える。従って、以下では「静的撓み」と呼ぶ正確な静的撓みを決定するために、実TOAに対する動作データ及びブレードの復位の影響を受けないことが極めて重要である。本発明のある実施形態は静的撓みを決定するため、1つ又は複数の動作データ及びブレードの復位の影響をブレードの実TOAから無くする。本発明のある別の実施形態は実TOAに対する動作データの影響を正常化し、又はこれを補償する。
【0014】
図1は、本システムの実施形態によるロータブレードの健全性監視システム10の概略図である。図1に示すように、システム10は、ブレード12の静的撓みを決定するシステム10によって監視される1つ又は複数のブレード又はエアフォイル12を含む。ある実施形態では、システム10は更に、ブレードの12に対応する動的撓みも決定する。現時点で考えられている構成に示すように、システム10は1つ又は複数のセンサ14、16を含む。各センサ14、16は特定の時間間隔にわたって基準点でのブレード12の実TOAを表すTOA信号18、20をそれぞれ生成する。一実施形態では、センサ14、16は基準点での1つ又は複数のブレード12の到着を感知してTOA信号18、20を生成する。基準点は、例えばセンサ14、16の下にあってもよく、又はその近傍にあってもよい。実施形態では、各TOA信号18、20は特定の時間間隔にわたってサンプリング及び/又は測定され、ブレードの実TOAを決定するために利用される。実TOAは、例えば時間単位又は度単位で測定し得る。
【0015】
一実施形態では、センサ14、16は1つ又は複数のブレード12の前縁の到着を感知してTOA信号18、20を生成する。別の実施形態では、センサ14、16は1つ又は複数のブレード12の後縁の到着を感知して信号18、20を生成する。更に別の実施形態では、センサ14が1つ又は複数のブレード12の前縁の到着を感知してTOA信号18を生成し、センサ16が1つ又は複数のブレード12の後縁の到着を感知してTOA信号20を生成してもよく、又はその逆でもよい。センサ14、16は、例えば1つ又は複数のブレード12の到着を効果的に検知し得るような位置に、静止物体上の1つ又は複数のブレード12の近傍に取り付けてもよい。一実施形態では、センサ14、16の少なくとも一方は1つ又は複数のブレード12のケーシング(図示せず)上に取り付けられる。非限定的な例として、センサ14、16は磁気センサ、容量性センサ、渦電流センサなどである。
【0016】
現時点で考えられている構成に示すように、TOA信号18、20は処理サブシステム22によって受信される。処理サブシステム22は、TOA信号18、20に基づいて1つ又は複数のブレード12の実TOAを決定する。更に、処理サブシステム22は1つ又は複数のブレード12の実TOAに基づいて1つ又は複数のブレード12の静的撓みを決定する。より具体的には、処理サブシステム22は1つ又は複数のブレード12の実TOAを処理することによって1つ又は複数のブレード12の静的撓みを決定するように構成されている。前述のように、ブレード12の実TOAは、1つ又は複数の動作データ及びブレード12の復位に影響されることがある。
【0017】
その結果、1つ又は複数のブレード12の実TOAに基づいて決定された静的撓みは、実TOA及びブレード12の復位に及ぼす動作データの影響により誇張された値になることがある。例えば、ブレード12の実TOAに及ぼす動作データ及びブレード12の復位の影響により、ブレード12の実TOAに基づいて決定された静的撓みは、ブレード12内に亀裂や欠陥がない場合でもブレード12内の1つ又は複数の欠陥又は亀裂を示すことがある。従って、一実施形態では、処理サブシステム22は1つ又は複数のブレード12の実TOAに及ぼす1つ又は複数の動作データの影響を決定する。更に、処理サブシステム22は1つ又は複数のブレード12の実TOAに及ぼす1つ又は複数の動作データの影響を差し引くことによって静的撓みを決定する。前述のように、動作データにはインレットガイドベーン(IGV)の角度、負荷の変動、ブレードの復位、非同期的振動、同期的振動、速度の変動、温度、速度などが含まれ得る。処理サブシステム22は、例えば、センサ、カメラ及びその他の機器を介して動作データを監視するオンサイト監視機械(OSM)24からの動作データを受信し得る。その上、処理サブシステム22はブレード12の実TOAに及ぼすブレードの復位の影響を正規化する。実TOAに及ぼす動作データの影響を差し引き、又は正規化することによる静的撓みの決定は、図2〜5を参照してより詳細に説明する。処理サブシステム22は更に、静的撓み及び1つ又は複数のブレード12の実TOAに基づいて1つ又は複数のブレード12に対応する動的撓みも決定する。一実施形態では、処理サブシステム22は、静的撓み、動的撓み、TOA、デルタTOA、いずれかの中間データなどのデータを記憶するデータレポジトリ26を有する。
【0018】
次に図2を参照すると、本発明の実施形態による1つ又は複数のブレードの静的撓み及び動的撓みを決定する例示的方法100を表すフローチャートが示されている。1つ又は複数のブレードは、例えば1つ又は複数のブレード12(図1を参照)である。方法は、1つ又は複数のブレードの各々に対応するTOA信号が処理サブシステム22(図1を参照)などの処理サブシステムによって受信されるステップ102で開始される。図1を参照して前述したように、TOA信号はセンサ14、16(図1を参照)などのセンサによって生成され得る。更に、TOA信号は、例えばTOA信号18、20である。
【0019】
更に、ステップ104で、処理サブシステムにより、1つ又は複数のブレードの各々に対応する実TOAが決定される。処理サブシステムは、1つ又は複数のブレードの各々に対応するTOA信号を利用して実TOAを決定する。より具体的には、処理サブシステムはブレードに対応するTOA信号を利用してブレードに対応する1つ又は複数の実TOAを決定する。ステップ106で、1つ又は複数のブレードの各々に対応するデルタTOAを決定し得る。ブレードに対応するデルタTOAは、例えばステップ104で決定されたブレードに対応する実TOAと、ブレードに対応する予測TOA105との差である。ブレードに対応するデルタTOAはある時点でのブレードの予測TOA105との差異を表すことに留意されたい。デルタTOAは、例えば以下の方程式(1)を用いて決定し得る。
【0020】
【数1】

ここで△TOAk(t)はtの時点でのブレードkに対応するデルタTOA、すなわち
tの時点でのブレードkに対応する予測TOAとの差異であり、TOAact(k)はtの時点でのブレードkに対応する実TOAであり、TOAexp(k)はブレードkに対応する予測TOAである。
【0021】
本明細書で用いられる「予測TOA」と言う用語は、ブレード内に欠陥又は亀裂がなく、実TOAに及ぼす動作データの影響が最小限である場合にブレードが動作状態で機能している場合の基準位置でのブレードの実TOAを意味する。一実施形態では、ブレードに対応する実TOAを、ブレードを含む装置が最近配備され、又は購入された場合のブレードの予測TOAと同一であると見なすことによってブレードに対応する予測TOAを決定する。このような決定は、装置が最近配備され、又は購入されたため、全てのブレードが最適な状況で機能し、負荷状態は最適であり、ブレード内の振動が最小限であることを前提にしている。別の実施形態では、装置内の全てのブレードの実際の到着時間(TOA)の実時間の平均値を取ることによって予測TOAを決定する。装置には、例えば軸流圧縮機、発電用ガスタービン、ジェットエンジン、高速艇エンジン、小規模発電所などが含まれ得る。デルタTOAは時間単位又は度単位で表されることに留意されたい。
【0022】
一実施形態では、ステップ108で、1つ又は複数のブレードの各々に対応するデルタTOAの単位をミル単位に変換してもよい。一実施形態では、度単位である1つ又は複数のブレードの各々に対応するデルタTOAを、以下の方程式(2)を用いてミル単位に変換してもよい。
【0023】
【数2】

ここで、△TOAmils(k)(t)はtの時点でのブレードkのミル単位のデルタTOAであり、△TOADeg(k)(t)はtの時点でのブレードkの度単位のデルタTOAであり、Rはロータの中心からブレードkの先端までを計測した半径である。半径Rはミル単位である。別の実施形態では、以下の方程式(3)を用いて秒単位のデルタTOAをミル単位に変換してもよい。
【0024】
【数3】

ここで、△TOAmils(k)(t)はtの時点でのブレードkのミル単位のデルタTOAであり、△TOASec(k)(t)は秒単位のデルタTOAであり、Rはブレードのロータの中心からのブレードの半径である。半径Rはミル単位である。
【0025】
更に、ステップ110で、デルタTOAに基づいて1つ又は複数のブレードの各々の静的撓みが決定される。1つ又は複数のブレードの静的撓みの決定については、図3〜5を参照してより詳細に説明する。その後のステップ112で、1つ又は複数のブレードに対応する動的撓みを決定する。一実施形態では、ブレードに対応する静的撓みをブレードに対応するデルタTOAから減算して、ブレードに対応する動的撓みを決定する。別の実施形態では、ブレードに対応する静的撓みをブレードに対応するフィルタ処理されたデルタTOAから減算してブレードに対応する動的撓みを決定する。例えば、ステップ106で決定されたブレードに対応するデルタTOAをフィルタ処理することによってフィルタ処理されたデルタTOAを決定する。平均フィルタリング、メディアンフィルタリングなどを含む1つ又は複数の技術を用いてデルタTOAをフィルタ処理してもよい。
【0026】
前述のように、1つ又は複数のブレードの実TOAを用いてブレードの静的撓みを決定する。しかし、1つ又は複数の動作データ及びブレードの復位がブレードの実TOAに影響を及ぼすことがある。その結果、ブレードの実TOAに基づいて決定された静的撓みは正確な静的撓みではないことがある。従って、正確な静的撓みを決定するために、実TOAに対する1つ又は複数の動作データ及びブレードの復位の影響を取り除くか差し引くことが不可欠である。実TOA又は実TOAに基づいて決定されるデルタTOAから、1つ又は複数の動作データ及びブレードの復位が及ぼす影響を差し引くことによって静的撓みを決定する例示的方法を、図3を参照して説明する。ここで図3を参照すると、本発明の実施形態によるブレードの静的撓みを決定する例示的方法110を表すフローチャートが示されている。より具体的には、本発明の例示的態様に基づいて図2のステップ110をより詳細に記載する。
【0027】
図3に示すように、参照番号302はブレードに対応するデルタTOAを表す。一実施形態では、図2のステップ106を参照して記載した技術を用いてデルタTOA302を決定する。更に、ステップ304で、ブレード、又はブレードを含む装置に対応する1つ又は複数の動作データを受信する。前述のように、動作データには、例えば(IGV)角度、負荷、温度、速度、質量流量、吐出圧などが含まれる。動作データは、例えば処理サブシステム22によってオンサイトモニタ24(図1を参照)から受信される。
【0028】
更に、ステップ306で、ブレードがブレードを含む装置の始動後に初めて動作しているか否かを確認するチェックを行う。ステップ306で、ブレードがブレードを含む装置の始動後に初めて動作していることが判定された場合は、制御はステップ308に移される。ステップ308で、動作データの1つ又は複数の部分に基づいて、1つ又は複数の係数が決定される。係数は、例えば以下の方程式(4)を用いて決定し得る。
【0029】
【数4】

ここで、△TOAkはブレードkのデルタTOAであり、

は動作データの1つ又は複数の部分であり、

は係数である。一実施形態では、係数は動作データの1つ又は複数の部分の線形結合を形成することによって決定する。更に、係数を決定するために動作データの1つ又は複数の部分の値を代入する。更に、ステップ312で、ステップ308で決定された係数がデータレポジトリ26(図1を参照)などのデータレポジトリに保存される。係数がデータレポジトリに保存されると、データレポジトリ内にあるその他の係数は消去されることがあることに留意されたい。
【0030】
ステップ306に戻ってこれを参照すると、ブレードが始動後に始めて動作しているのではないことが判定されると、制御はステップ310に移る。ステップ310で、データレポジトリから係数が検索される。係数はステップ310で、その係数がブレードを含む装置の始動中に既に決定されており、従ってデータレポジトリに既に存在するという前提で検索される。その後のステップ314で、デルタTOA302に及ぼすIGV角度の影響を決定する。一実施形態では、IGVによる影響は以下の例示的方程式(5)を用いて決定する。
【0031】
【数5】

ここで、TIGV(t)はtの時点でデルタTOAに及ぼすIGVの影響であり、IGV(t)はtの時点でのIGVの角度であり、fはIGV(t)の関数である。一実施形態では、IGVの関数はIGV(t)及びIGV(t)に対応する係数の倍数を決定することによって決定する。
【0032】
ステップ316で、負荷によるデルタTOA302への影響を決定する。負荷によるデルタTOA302への影響は、以下の方程式(6)を用いて決定する。
【0033】
【数6】

ここで、Tload(t)はtの時点でデルタTOAに及ぼす負荷の影響であり、DWATTはtの時点での負荷であり、gは負荷の関数である。一実施形態では、DWATTの関数はDWATT(t)及びDWATTに対応する関数の倍数を決定することにより決定する。別の実施形態では、DWATTの関数は、DWATT(t)及び係数、及びDWATTに対応する別の係数の倍数の線形結合を決定することにより決定する。
【0034】
その後のステップ318で、デルタTOA302に及ぼす入口温度(CTIM)の影響を決定する。入口温度(CTIM)による影響は、以下の方程式(7)を用いて決定する。
【0035】
【数7】

ここで、TCTIM(t)はtの時点でデルタTOAに及ぼす入口温度の影響であり、CTIM(t)はtの時点の入口温度であり、dは入口温度に対応する係数である。その後のステップ314でデルタTOA302に及ぼすIGVの影響、ステップ316での負荷の影響、ステップ318でのCTIMの影響が、及びステップ320で正規化デルタTOAが決定される。正規化デルタTOAは、例えばIGV、負荷及び入口温度(CTIM)などの動作データの影響をデルタTOA302から減ずることによって決定する。
【0036】
一実施形態では、正規化デルタTOAは、例えば以下の例示的方程式(8)によって決定する。
【0037】
【数8】

ここで、Norm_△TOAkはtの時点でブレードkに対応する正規化デルタTOAであり、△TOAk(t)はtの時点でブレードkに対応するデルタTOAであり、Tload(t)、TCTIM(t)、TIGV(t)はtの時点でデルタTOAに及ぼす負荷、入口温度及びIGVのそれぞれの影響である。
【0038】
典型的には、1つ又は複数のブレードは蟻継ぎなどの1つ又は複数の継手を介してロータに固締される。ブレードを含む装置の始動中、ブレードは継手内の原位置から移動することがあり、且つブレードの原位置とは異なる位置で継手内にロックされることがある。継手内のブレードの原位置とは異なる位置でのブレードのロックは、ブレードの復位と呼ばれる。ブレード位置の変化によって、ブレードの実TOAが変化することがある。従って、ブレードの実TOAに基づいて決定されたデルタTOA及び正規化デルタTOAは正確ではないことがある。より具体的には、デルタTOA及び正規化デルタTOAは、ブレードの復位により正確ではないことがある。従って、ブレードの復位による影響を取り除くため、ブレードに対応する実TOA、デルタTOA、又は正規化デルタTOAを補正することが不可欠である。ステップ322〜330は、ブレードの復位による影響を取り除くためにステップ320で決定された正規化デルタTOA及びブレードのデルタTOA302を補正する。
【0039】
ステップ322で、ブレードが始動後に初めて動作しているか否かを確認するチェックを行う。ステップ322で、ブレードが始動後に初めて動作しているものと判定された場合は、制御はステップ324に移される。ステップ324で、ブレードに対応する復位によるずれを決定する。本明細書で用いる「復位によるずれ」と言う用語は、ブレードの復位による影響をブレードのデルタTOA、実TOA又は正規化デルタTOAから取り除くために利用できる数値を意味する。復位によるずれの決定については、図6を参照してより詳細に説明する。その後、ステップ324で決定された復位によるずれを、ステップ326でデータレポジトリに保存する。復位によるずれを、例えばデータレポジトリ26(図1を参照)に保存する。現時点で考えられる構成では、ブレードはブレードを含む装置の始動中の原位置とは異なる位置でロックされる場合があることを前提にしているため、ブレードの復位によるずれはブレードが始動後に初めて動作している場合に決定されることに留意されたい。
【0040】
ステップ322に戻ってこれを参照すると、ブレードがブレードを含む装置の始動後に初めて動作しているのではないものと判定された場合は、制御はステップ328に移される。ブレードが始動後に初めて動作しているのではない場合、それはブレードに対応する復位によるずれがブレードを含む装置の始動後に既に決定されており、且つ既にデータレポジトリに保存されていることを示していることに留意されたい。従って、ステップ328で、ブレードに対応する復位によるずれをデータレポジトリから検索する。
【0041】
ステップ326で復位によるずれを保存し、又はステップ328で復位によるずれを検索した後、補正デルタTOAをステップ330で決定する。一実施形態では、ステップ320でブレードの復位に関して決定された正規化デルタTOAを補正することによって、補正デルタTOAを決定する。例えば、ブレードに対応する正規化デルタTOAから復位によるずれを差し引くことによって、補正デルタTOAを決定する。別の実施形態では、デルタTOA302を補正することによって補正デルタTOAを決定する。この実施形態では、ブレードに対応するデルタTOA302から復位によるずれを差し引くことによって補正デルタTOAを決定する。更に、ステップ332で、静的撓み334を生成するために補正デルタTOAをフィルタ処理する。補正デルタTOAのフィルタ処理によって、補正デルタTOAからノイズを低減し得る。例えば、メディアンフィルタリング、移動平均フィルタリング、又はその組み合わせを用いて補正デルタTOAのフィルタ処理を行う。
【0042】
前述のように、1つ又は複数の動作データは複数のブレードの実TOAに影響を及ぼす。しかし、動作データはブレードの実TOAに均一には影響を及ぼさないことがある。従って、1つ又は複数のブレードの実TOAは、複数のブレードの別のブレードの実TOAよりも多くの影響を受けることがある。その結果、1つ又は複数のブレードに対応する静的撓みは、別のブレードに対応する静的撓みと比較して動作データによる影響が付加されることで、ブレード内の欠陥又は亀裂を呈することがある。それに加え、ブレードの実TOAに基づいて決定された静的撓みが正確な静的撓みではないことがある。従って、装置内の複数のブレードの実TOAに及ぼす動作データの影響を正規化することが不可欠である。実TOA、又は実TOAに基づいて決定されたデルタTOAに及ぼす1つ又は複数の動作データの影響を正規化することによって静的撓みを決定する例示的方法を、図4及び5を参照して説明する。
【0043】
次に図4を参照すると、別の実施形態による静的撓みを決定する例示的方法110’のステップを表すフローチャートが示されている。より具体的には、図4は静的撓みを決定するための本発明の実施形態による図2のステップ110を説明している。図4に示すように、参照番号402は、タービン、軸流圧縮機などの装置内の複数のブレードに対応するデルタ到着時間(TOA)を表している。複数のブレードの各々に対応するデルタTOAは、図2のステップ106を参照して説明する技術を用いて決定する。一実施形態では、デルタTOA402は図2のステップ106で決定されたデルタTOAと同様のものである。
【0044】
更に、ステップ404で、複数のブレードに対応するデルタTOAの標準偏差を計算する。例えば、複数のブレードが5つのブレードを含み、5つのブレードの各々がデルタTOA1、デルタTOA2、デルタTOA3、デルタTOA4、デルタTOA5としてのデルタTOAを有している場合は、デルタTOA1、デルタTOA2、デルタTOA3、デルタTOA4、デルタTOA5の標準偏差をステップ404で計算する。その後ステップ406で、ブレードが複数のブレードを含む装置の始動後に初めて動作しているか否かを確認するチェックを行う。ステップ406で、ブレードが始動後に初めて動作していることが判定された場合は、制御はステップ408に移される。
【0045】
理解し易くするため、「標準偏差」と言う用語は以下では「現在の標準偏差」を意味する。図4に示すように、ステップ404で計算された標準偏差をステップ408で初期標準偏差410として保存する。初期標準偏差410を、データレポジトリ26などのデータレポジトリに保存する。本明細書で用いる「初期標準偏差」と言う用語は、ブレードが始動後に初めて動作を開始する場合に決定される現在の標準偏差を意味する。より具体的には、ステップ404で決定された標準偏差を初期標準偏差410としてデータレポジトリに保存する。
【0046】
ステップ406に戻ってこれを参照すると、ブレードが始動後に初めて動作しているのではない場合は、制御はステップ412に移される。ステップ404で決定された現在の標準偏差及び初期標準偏差410を用いてステップ412でデルタシグマ_1を決定する。より具体的には、ステップ404で決定された現在の標準偏差と初期標準偏差410との差を決定することによって、デルタシグマ_1を決定する。複数のブレードを含む装置の始動後に初めてステップ412が処理される場合は、初期標準偏差410とステップ404で決定された現在の標準偏差の値は等しい。従って、デルタシグマ_1の値はステップ412でゼロに等しい。
【0047】
更に、ステップ414で、複数のブレードのうちの1つ又は複数のブレードに対応する正規化デルタTOを決定する。正規化デルタTOAは、例えば以下の方程式(9)に基づいて決定する。
【0048】
【数9】

ここで、Norm_△TOAk(t)はtの時点でのブレードkに対応する正規化デルタTOAであり、△TOAk(t)はtの時点でのブレードkに対応するデルタTOAであり、△σ(t)_1はtの時点でのデルタシグマ_1であり、Kは定数である。一実施形態では、ブレードに対応するデルタTOAの平均に基づいて定数Kの値を決定する。一実施形態では、Kの値は1である。別の実施形態では、Kの値は−1である。更に別の実施形態では、Kの値は0である。
【0049】
更に、ステップ416で、複数のブレードのうちの1つ又は複数のブレードに対応する正規化デルタTOAの現在の標準偏差を決定する。その後のステップ418で、デルタシグマ_2を決定する。例えば、正規化デルタTOAの現在の標準偏差と正規化デルタTOAの以前の標準偏差との差を決定することによって、デルタシグマ_2を決定する。「正規化デルタTOAの以前の標準偏差」と言う用語は、ステップTの時点で決定された正規化デルタTOAの現在の標準偏差と比較して、ステップT−1の時点で決定された正規化デルタTOAの現在の標準偏差を示すために用いる。
【0050】
ステップ420でのデルタシグマ_2を決定した後、デルタシグマ_2が所定の第1の閾値以上であるか、及び/又は複数のブレードが始動後に初めて動作しているかを確認するチェックを行う。所定の第1の閾値は、ブレードに対応するデルタTOAに基づいて経験的に決定する。ステップ420でデルタシグマ_2が所定の第1の閾値以上であるか、又は複数のブレードが始動後に初めて動作していることが決定されると、制御はステップ422に移される。ステップ422で、複数のブレードのうちの1つ又は複数のブレードに対応する復位によるずれを決定する。復位によるずれの決定については図6を参照してより詳細に説明する。復位によるずれの決定をした後、ステップ424で復位によるずれをデータレポジトリ26(図1を参照)などのデータレポジトリに保存する。
【0051】
ステップ420に戻ってこれを参照すると、デルタシグマ_2が所定の第1の閾値以上ではなく、複数のブレードが始動後に初めて動作しているのではないことが決定された場合は、制御はステップ426に移される。ステップ426で、復位によるずれをデータレポジトリから検索する。デルタシグマ_2が所定の第1の閾値以上ではなく、ブレードが始動後に初めて動作しているのではない場合は、復位によるずれは生じないことに留意されたい。従って、ステップ426でデータレポジトリから既存の復位によるずれが検索される。復位によるずれを検索した後、ステップ428で複数のブレードのうちの1つ又は複数のブレードに対応する補正デルタTOAを決定する。例えば、図3のステップ330を参照して説明した技術を用いて補正デルタTOAを決定する。図3を参照して前述したように、図3のステップ330を参照して説明した技術を用いて補正デルタTOAを決定する。例えば、ステップ414で決定されたブレードに対応する正規化デルタTOA、及びステップ426でデータレポジトリから検索したブレードに対応する復位によるずれを用いて、ブレードに対応する補正デルタTOAを決定する。一実施形態では、ブレードに対応する復位によるずれをブレードに対応するデルタTOAから差し引くことによってブレードに対応する補正デルタTOAを決定する。デルタTOAは、例えば複数のブレードに対応するデルタTOA402の1つである。
【0052】
更に、ステップ430で、複数のブレードのうちの1つ又は複数のブレードに対応する静的撓み432を生成するために補正デルタTOAをフィルタ処理する。図3を参照して前述したように、補正デルタTOAのフィルタ処理によって補正デルタTOAからノイズを低減し得る。例えば、メディアンフィルタリング、移動平均フィルタリング、又はその組み合わせを用いて補正デルタTOAのフィルタ処理を行う。
【0053】
次に図5を参照すると、別の実施形態による静的撓みを決定する例示的方法110”のステップを表すフローチャートが示されている。より具体的には、図5は静的撓みを決定するための本発明の実施形態による図2のステップ110を説明している。図5に示すように、参照番号502は、タービン、軸流圧縮機などの装置内の複数のブレードに対応するデルタ到着時間(TOA)を表している。複数のブレードの各々に対応するデルタTOAは、図2のステップ106を参照して説明する技術を用いて決定する。一実施形態では、デルタTOA502は、図2のステップ106で決定されたデルタTOAと同様のものである。
【0054】
更に、ステップ504で、複数のブレードの各々に対応するデルタTOAの標準偏差を計算する。例えば、複数のブレードが5つのブレードを含み、5つのブレードの各々がデルタTOA1、デルタTOA2、デルタTOA3、デルタTOA4、デルタTOA5としてのデルタTOAを有している場合は、デルタTOA1、デルタTOA2、デルタTOA3、デルタTOA4、デルタTOA5の標準偏差をステップ504で決定する。その後のステップ506で、複数のブレードのうちの1つ又は複数のブレードに対応する正規化されたデルタTOAを決定する。例えば、以下の方程式(10)を用いて正規化されたデルタTOAを決定する。
【0055】
【数10】

ここで、Norm_△TOAk(t)はtの時点でのブレードkに対応する正規化デルタTOAであり、△TOAk(t)はtの時点でのブレードkに対応するデルタTOAであり、Mean△TOA1toj(t)はブレードkを含むブレード1からjに対応するデルタTOAの平均値である。
【0056】
更に、ステップ508で、複数のブレードのうちの1つ又は複数のブレードに対応する正規化デルタTOAの標準偏差を決定する。その後のステップ510で、デルタシグマ_3を決定する。例えば、正規化デルタTOAの標準偏差と正規化デルタTOAの以前の標準偏差との差を決定することによって、デルタシグマ_3を決定する。「正規化デルタTOAの以前の標準偏差」と言う用語は、Tの時点で決定された正規化デルタTOAの標準偏差と比較してT−1の時点で決定された正規化デルタTOAの標準偏差を意味する。
【0057】
ステップ510でデルタシグマ_3を決定した後、デルタシグマ_3が所定の第2の閾値以上であるか、及び/又は複数のブレードが始動後に初めて動作しているかを確認するチェックをステップ512で行う。所定の第2の閾値は履歴デルタTOAに基づいて経験的に決定する。ステップ512でデルタシグマ_3が所定の第2の閾値以上であるか、又は複数のブレードが始動後に初めて動作していることが決定されると、制御はステップ514に移される。ステップ514で、複数のブレードのうちの1つ又は複数のブレードに対応する復位によるずれを決定する。復位によるずれの決定については、図6を参照してより詳細に説明する。復位によるずれを決定した後、ステップ516で復位によるずれをデータレポジトリ26(図1を参照)などのデータレポジトリに保存する。
【0058】
ステップ512に戻ってこれを参照すると、デルタシグマ_3が所定の第2の閾値以上ではなく、複数のブレードが始動後に初めて動作しているのではないことが決定された場合は、制御はステップ518に移される。ステップ518で、複数のブレードの1つ又は複数のブレードに対応する復位によるずれをデータレポジトリから検索する。デルタシグマ_3が所定の第2の閾値以上ではなく、ブレードが始動後に初めて動作しているのではない場合は、復位によるずれは生じないことに留意されたい。従って、ステップ518でデータレポジトリから既存の復位によるずれが検索される。復位によるずれを検索した後、複数のブレードのうちの1つ又は複数のブレードに対応する補正デルタTOAをステップ520で決定する。例えば、図3のステップ330を参照して説明した技術を用いて補正デルタTOAを決定する。図3を参照して前述したように、図3のステップ330を参照して説明した技術を用いて補正デルタTOAを決定する。例えば、ステップ506で決定されたブレードに対応する正規化デルタTOA、及びステップ518でデータレポジトリから検索したブレードに対応する復位によるずれを用いてブレードに対応する補正デルタTOAを決定する。一実施形態では、ブレードに対応する復位によるずれをブレードに対応する正規化デルタTOAから差し引くことによって、ブレードに対応する補正デルタTOAを決定する。別の実施形態では、ブレードに対応する復位によるずれをブレードに対応するデルタTOAから差し引くことによって、ブレードに対応する補正デルタTOAを決定する。デルタTOAは、例えば複数のブレードに対応するデルタTOA502の1つである。
【0059】
更に、ステップ522で、補正デルタTOAをフィルタ処理して、静的撓み524を生成する。図3を参照して前述したように、補正デルタTOAのフィルタ処理によって、補正デルタTOAからノイズを低減し得る。例えば、メディアンフィルタリング、移動平均フィルタリング、又はその組み合わせを用いて補正デルタTOAのフィルタ処理を行う。
【0060】
次に図6を参照すると、本発明の実施形態によるブレードに対応する復位によるずれを生成するための方法600のステップを表すフローチャートが示されている。より具体的には、方法600は図3のステップ328、図4のステップ422、及び図5のステップ514を説明している。図6に示すように、参照番号602はブレードに対応する正規化されたデルタ到着時間(TOA)を表している。一実施形態では、正規化デルタ到着時間(TOA)602は、図3のステップ320、図4のステップ414、及び図5のステップ506を参照して記載した技術を用いて決定された1つ又は複数の正規化デルタTOAである。一実施形態では、正規化デルタTOA602は、ブレードの過渡事象の後に決定されたブレードに対応する1つ又は複数の正規化デルタTOAである。過渡事象には、例えばブレードを含む装置の始動又は遮断、ブレードの継続的な速度変化などが含まれる。
【0061】
更に、参照番号604は、過渡事象以前に生成された正規化デルタTOAを用いて決定されたブレードに対応する1つ又は複数の補正デルタTOAを表している。この過渡事象は、それ以降に正規化デルタTOA602が決定された過渡事象である。ステップ606で、ブレードが始動後に初めて動作しているか否かを判定するチェックが行われる。ステップ606で、ブレードが始動後に初めて動作していることが判定されると、制御はステップ608に移される。更に、ステップ608で、ブレードがベース負荷で動作しているか否かのチェックを行う。ステップ608で、ブレードがベース負荷で動作していないことが判定されると、制御はステップ610に移される。ステップ606に戻ってこれを参照すると、ブレードが始動後に初めて動作しているのではないことが判定されると、制御はステップ610に移される。ステップ610で、ブレードに対応する復位によるずれがデータレポジトリ26(図1を参照)などのデータレポジトリに既に存在することが言明される。従って、復位によるずれは決定されない。
【0062】
ステップ608に戻ってこれを参照すると、ブレードがベース負荷で動作していることが判定されると、制御はステップ612移される。ステップ612で、1つ又は複数の正規化デルタTOA602の第1の平均値を決定する。更に、ステップ614で、1つ又は複数の補正デルタTOA604の第2の平均値を決定する。第1の平均値と第2の平均値とを決定した後、ステップ616で第1の平均値から第2の平均値を差し引くことによって、ブレードに対応する復位によるずれ618を決定する。
【0063】
本発明の実施形態は、TOAに及ぼす動作データの影響を決定する。それに加え、本発明は動作データの影響をTOAから差し引いて正規化されたデルタTOAを決定する。更に、本発明はブレードのTOAに及ぼす動作データの影響を正規化して正規化デルタTOAを決定する。ブレード内の欠陥や亀裂を判定するために、正規化デルタTOAを利用してもよい。本発明のある実施形態は更に、ブレードの復位によるブレードのTOAの変化を検知し易くする。更に、ブレードの健全性を監視するために正規化デルタTOAの決定を利用する。例えば、ブレード内に1つ又は複数の亀裂があるか否かを判定するために正規化デルタTOAを利用する。
【0064】
上記のこうした目的又は利点の全てが必ずしもいずれかの特定の実施形態によって達成されるものではないことを理解されたい。従って、例えば、当業者であれば、本明細書で教示又は示唆され得る他の目的又は利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点又は一連の利点を達成又は最適化する方法で、本明細書に記載のシステム及び技術を具現化又は実行してもよいことを認識されよう。
【0065】
本発明を限定された数の実施形態のみに関連して詳細に記載したが、本発明は開示されたこうした実施形態に限定されるものではないことが容易に理解されよう。むしろ、これまでに記載していないが本発明の趣旨と範囲に適合する任意の変化、変更、置換え又は同等の形態を組み込むように本発明を修正することができる。加えて、本発明の様々な実施形態を記載したが、本発明の態様は記載した実施形態の幾つかだけを含んでもよいことを理解されたい。従って、本発明は以上の説明に限定されるものと見なされるべきではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のブレードの健全性を監視する方法であって、
前記1つ又は複数のブレード(12)のそれぞれの実際の到着時間(TOA)に基づいて、前記1つ又は複数のブレード(12)の各々に対応するデルタTOAを決定するステップ(106)と、
1つ又は複数の動作データの影響を前記デルタTOAから取り除くことによって、前記1つ又は複数のブレード(12)の各々に対応する正規化されたデルタTOAを決定するステップ(320)と、
前記1つ又は複数のブレードの復位の影響を前記正規化デルタTOAから取り除くことによって、前記1つ又は複数のブレード(12)の各々に対応する補正デルタTOAを決定するステップ(330)と、を含む方法。
【請求項2】
前記1つ又は複数のブレードの各々に対応する正規化デルタTOAを決定するステップは、
前記1つ又は複数の動作データを受信するステップ(304)と、
前記1つ又は複数の動作データに基づいて1つ又は複数の係数を決定するステップ(308)と、
前記1つ又は複数の係数及び前記1つ又は複数の動作データを利用して、前記1つ又は複数の動作データが前記それぞれの実TOAに及ぼす影響を決定するステップ(314、316、318)と、
前記1つ又は複数の動作データの影響を前記デルタTOAから差し引いて、前記正規化デルタTOAを生じるステップ(320)とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数の動作データに基づいて1つ又は複数の係数を決定するステップ(308)は、以下の方程式、
【数1】

を利用するステップを含み、
ここで、△TOAkはブレードkのデルタTOAであり、

は動作データの1つ又は複数の部分であり、

は係数である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ又は複数の係数は、前記1つ又は複数のブレードが始動後に初めて動作している場合に決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数のブレードの各々に対応する補正デルタTOAをフィルタ処理することにより、前記1つ又は複数のブレードの各々に対応する静的撓み(334)を決定するステップ(332)を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記補正デルタTOAを決定するステップ(330)は、
前記1つ又は複数のブレードの各々に対応する復位によるずれを決定するステップ(324)と、
前記正規化デルタTOAから前記復位によるずれを差し引いて前記補正デルタTOAを生じるステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記復位によるずれは、前記1つ又は複数のブレードがベース負荷で動作している場合に決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記復位によるずれは、前記1つ又は複数のブレードが始動後に初めて動作している場合に決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記復位によるずれを決定するステップ(324)は、
前記1つ又は複数のブレードの各々に対応する1つ又は複数の正規化デルタTOA(602)を検索するステップと、
前記1つ又は複数の正規化デルタTOAを利用して1つ又は複数の補正デルタTOA(604)を決定するステップと、
前記1つ又は複数の正規化デルタTOAの第1の平均値を決定するステップ(612)と、
前記1つ又は複数の補正デルタTOAの第2の平均値を決定するステップ(614)と、
前記第1の平均値から前記第2の平均値を減算して前記復位によるずれを生ずるステップ(616)とを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
処理サブシステム(22)を含むシステムであって、
前記処理サブシステム(22)は、
1つ又は複数のブレードのそれぞれの実際の到着時間(TOA)に基づいて、1つ又は複数のブレードの各々に対応するデルタTOAを決定し(106)、
1つ又は複数の動作データの影響を前記デルタTOAから取り除くことによって、前記1つ又は複数のブレードの各々に対応する正規化されたデルタTOAを決定し(320)、
前記1つ又は複数のブレードの復位の影響を前記正規化デルタTOAから取り除くことによって、前記1つ又は複数のブレードの各々に対応する補正デルタTOAを決定する(330)、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−13079(P2012−13079A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141312(P2011−141312)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】