説明

エアリング装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は管状樹脂の製造装置の内、冷却装置に関するものである。さらに詳しく説明すると本発明は押出成形、例えばインフレーション成形方法により熱可塑性樹脂の管状フィルムを高速で製造する際に、ダイより押出された樹脂を効率よく冷却するエアリング装置を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】図6は従来のエアリング装置機構及びその作用を示す説明図である。図6に示すエアリング装置は冷却風が冷却風入口1よりエアリング装置の中に入り仕切板2により環状方向に対し整流作用を受け、環状吹出口3よりエアリング装置の中心線(A)に向けて環状方向に対しほぼ均一に冷却風4が吹出されというものである。
【0003】また、特公昭47−29384号、特公平1−54182号公報には吹出口を二箇所に設けたエアリング装置が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】インフレーション成形によるフィルムの製造速度を速めるためには、エアリング装置から吹出される冷却風の風速を速めて冷却効果を増加させる事が必要である。しかし図6に示すような従来のエアリング装置では、極めて速い風速で冷却風を一箇所から吹出すためバブルの一部5の場所で極端な溶融樹脂の変形がおこり、このことがバブル6の安定性を悪化させ高速でのフィルムの製造を困難とさせる原因となっていた。一方、特公昭47−29384号、特公平1−54182号公報に開示されている装置においても高速でフィルムを製造する場合、より早い風速で冷却風を吹出させることが難しく、速度によってはバブルの安定性が悪くなる場合があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係るエアリング装置は上記の課題を解決することを目的にしており、二箇所に設けられた空気の吹出口の一方の吹出口7は中心線(A)に対し垂直に向けられ、他方の吹出口8は同じ中心線(A)に対して0°以上90°以下の角度をもって向けられ、吹出口7と吹出口8の少なくとも一方の吹出口の通路には整流板14が設けられ、該整流板14はバブル5の接線方向15からエアリングの内径20の1/2以内の長さだけ並行移動させた線上で、且つ、バブル5の接線方向15に対し−35°以上+45°以下の傾きをもつ直線上に設置されていることを特徴とするエアリング装置とし、上記課題を解決したものである。
【0006】
【作用】本発明のエアリング装置は図1に示すように二箇所の吹出口から冷却風4を吹出す構造となっているため、冷却風が別々の場所に向いて進行する。しかも、一方の吹出口7は冷却風を溶融樹脂に向けてほぼ垂直に向けて吹出す構造となっているため、その部分で溶融樹脂は急冷され溶融状態の樹脂粘度が下がってバブル6の安定性が良くなり、もう一方の吹出口8から吹出す冷却風の風速をより高めることが可能となる。そのため、より大きな冷却効果が得られ、高速でフィルムの製造を行う場合でもバブル6が安定し正常な製品を得ることができるようになる。
【0007】しかも、整流板14によりバブル5の接線方向側に向け冷却風を吹出させることができ、バブルの変形を少なくし、より早い風速で冷却風を吹出させることが可能となり、より大きな冷却効果が得られるようになる。
【0008】この発明では、冷却効果を飛躍的に高めることができるようになり、したがって、従来に見られたようなバブルの変形が少なく、高速でフィルムを製造する場合においてもバブル6の安定性が非常に良好である。
【0009】
【実施例】本発明の実施例を図1と図2に基づいて説明する。図1は本発明の一例を示すエアリング装置の一部切欠き正面図であり、図2は平面図である。図1において冷却風入口1よりエアリング装置に入った冷却風4は、仕切板2で整流を受け環状方向においてほぼ均一な風速となる。このしくみは従来品と同様である。さらに冷却風はエアリング装置リップ部を経て吹出口7及び吹出口8より吹出される。
【0010】エアリング上リップ10、エアリング中リップ11、エアリング下リップ12はエアリング本体13にそれぞれ取付けられる。エアリング本体13から送られてくる冷却風はエアリング中リップ11で仕切られて吹出口7、吹出口8に分配される。エアリング上リップ10は上下動が可能であり、これを上下させることにより吹出口8の吹出口面積を変え、この部分の風速を調整する構造としている。
【0011】吹出口8の角度は中心線(A)に対して角度αが0°以上90°以下とすることが必要である。より好ましくは30°以上90°以下とするとよい。さらに好ましくは35°以上65°以下とするとよりよくなる場合がある。さらに詳しく説明すると、エアリング中リップ11の吹出口8側の壁角度を0°以上90°以下とすることが必要である。より好ましくは30°以上90°以下とするとよい。さらに好ましい角度は35°以上65°以下である。吹出口8のもう片方の壁、即ちエアリング上リップ10の吹出口8の部分の角度はエアリング中リップ11の吹出口8部分の角度に対し+15°以上−15°以下の範囲内に設定することが好ましい。さらに好ましくは+10°以上−10°以下の範囲内に設定することがより好ましい。
【0012】吹出口8の通路には整流板を設けてもよい。吹出口7及び吹出口8の少なくとも一方には整流板を設けるが、吹出口8に設けた場合で説明する。図3は整流板14をバブル5の接線上に取付けた例を示す中リップ11部分の平面図である。整流板14によりバブル5の接線方向側に向け冷却風を吹出させることができる。整流板14を設けることにより、バブルの変形を少なくし、より速い風速で冷却風をエアリング装置から吹出させることが可能となる。その結果、冷却効果をさらに増加させることができる。整流板14は、エアリング上リップ10、エアリング中リップ11のどちらに取付けてもよい。つぎに整流板14の取付け位置の例を図によって説明する。図4および図5は中リップ11の吹出口8付近の拡大平面図であり、説明のため、整流板は1つしか図示していない。いずれの場合も整流板14は冷却風をバブル5の接線方向側に向けて吹出すように設置される。
【0013】図4において、整流板14はバブル5の接線方向15からエアリング中リップ17に示すエアリングの内径20の1/2以内の長さだけ、好ましくはエアリングの内径20の1/4以内の長さだけ並行移動させた線18または19上に設置される。また、図5に示すように、整流板14をバブル5の接線方向15に対し角度βが−35°以上+45°以下の傾きをもつ直線上に設置される。角度βが−30°以上+30°以下の範囲内、特に角度βが−20°以上+20°以下の範囲内に設置するとより好ましい場合がある。
【0014】整流板14の長さは、整流効果をもたすため吹出口の長さ21の1/2以上あることが好ましい場合がある。また整流板14の枚数は4枚以上が好ましい。一方、吹出口7は、中心線(A)に対して垂直方向をとすることが必要である。本発明において垂直方向とは、図1におけるγの値が0°±10°、好ましくは0°±5°をいう。さらに詳しく説明すると、エアリング中リップ11の吹出口7部分とエアリング下リップ12の吹出口7部分の中心軸(A)に対する角度が、それぞれ0°±10°、好ましくは0°±5°であることが必要である。又この吹出口7付近に、前記したような整流板を取付けてもよい。整流板を取付ける場合、その取付け方は前記の吹出口8に取付ける場合と同様にする。
【0015】さらに吹出口7及び吹出口8両方に整流板14を取付けてもよい。本発明のエアリング装置の大部分もしくは一部の材質を、従来のものにかえてアルミニウムもしくはアルミニウム合金とすることができる。軽量で交換の際の取外し、取付け作業が容易におこなえ、作業性が大幅に向上する。
【0016】
【発明の効果】本発明のエアリング装置を用いてインフレーション成形を行なうと、冷却効果を飛躍的に高めることができるようになり、バブルの変形を少なくでき、高速で安定した成形が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例を示す一部切欠き正面図である。
【図2】本発明の一例を示す平面図である。
【図3】本発明の中リップ部分の一例を示す平面図である。
【図4】整流板の取付け位置の例を説明するための、中リップの吹出口付近の拡大平面図である。
【図5】整流板の取付け位置の別の例を説明するための、中リップの吹出口付近の拡大平面図である。
【図6】従来のエアリング装置機構及びその作用説明した説明図。
【符号の説明】
1 冷却風入口
2 仕切板
3 従来エアリング装置の吹出口
4 冷却風
5 バブルの一部
6 バブル
7 バブルに対し垂直方向に向けられたエアリング装置の吹出口
8 もう一方のエアリング装置の吹出口
9 熱交換を受けた冷却風
10 エアリング上リップ
11 エアリング中リップ
12 エアリング下リップ
13 エアリング本体
14 整流板
15 バブルの接線方向
16 吹出口7への冷却風の流入口
17 エアリング中リップの一部
22 ダイ
23 案内板
24 ピンチロール
25 エアリング上リップの調整用ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 二箇所に設けられた空気の吹出口の一方の吹出口7は中心線(A)に対し垂直に向けられ、他方の吹出口8は同じ中心線(A)に対して0°以上90°以下の角度をもって向けられ、吹出口7と吹出口8の少なくとも一方の吹出口の通路には整流板14が設けられ、該整流板14はバブル5の接線方向15からエアリングの内径20の1/2以内の長さだけ並行移動させた線上で、且つ、バブル5の接線方向15に対し−35°以上+45°以下の傾きをもつ直線上に設置されていることを特徴とするエアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】第2549791号
【登録日】平成8年(1996)8月8日
【発行日】平成8年(1996)10月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−31871
【出願日】平成4年(1992)2月19日
【公開番号】特開平5−228993
【公開日】平成5年(1993)9月7日
【出願人】(000000033)旭化成工業株式会社 (901)
【参考文献】
【文献】特開昭59−146817(JP,A)
【文献】特開平5−169529(JP,A)
【文献】特公昭47−29384(JP,B2)