説明

エアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置

【課題】散気膜のスリットにおいて析出物の除去及び発生の抑制をすることができるエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置を提供する。
【解決手段】被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、前記空気供給管と連通するヘッダ15の開口部15aより供給された空気122を導入する導入部と、該導入部から延設され、空気122を外部に排出する複数のスリットを有する散気膜を被せる支持体とを備えたエアレーションノズル123と、前記ヘッダ内に水を空気供給配管を介して導入する水導入手段と、導入された水141を前記ヘッダの開口部15aから供給された空気122により霧化する霧化部25と、を具備し、霧化部25で霧化した水ミスト141aを空気122と共にスリットを通過しつつ外部へ排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚き、原油焚き及び重油焚き等の発電プラントに適用される排煙脱硫装置の排水処理に係り、特に、海水法を用いて脱硫する排煙脱硫装置の排水(使用済海水)をエアレーションにより脱炭酸(暴気)するエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置、エアレーション装置のスリット析出物の溶解除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭や原油等を燃料とする発電プラントにおいて、ボイラから排出される燃焼排気ガス(以下、「排ガス」と呼ぶ)は、該排ガス中に含まれている二酸化硫黄(SO2)等の硫黄酸化物(SOx)を除去してから大気に放出される。このような脱硫処理を施す排煙脱硫装置の脱硫方式としては、石灰石石膏法、スプレードライヤー法及び海水法等が知られている。
【0003】
このうち、海水法を採用した排煙脱硫装置(以下、「海水排煙脱硫装置」と呼ぶ)は、吸収剤として海水を使用する脱硫方式である。この方式では、たとえば略円筒のような筒形状を縦置きにした脱硫塔(吸収塔)の内部に海水及びボイラ排ガスを供給することにより、海水を吸収液として湿式ベースの気液接触を生じさせて硫黄酸化物を除去している。
上述した脱硫塔内で吸収剤として使用した脱硫後の海水(使用済海水)は、たとえば、上部が開放された長い水路(Seawater Oxidation Treatment System;SOTS)内を流れ排水される際、水路の底面に設置したエアレーション装置から微細気泡を流出させるエアレーションによって脱炭酸(爆気)される(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−055779号公報
【特許文献2】特開2009−028570号公報
【特許文献3】特開2009−028572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エアレーション装置で用いるエアレーションノズルは、基材の周囲を覆うゴム製等の散気膜に小さなスリットが多数設けられたものである。一般的には「ディフューザノズル」と呼ばれている。このようなエアレーションノズルは、供給される空気の圧力により、スリットから略均等な大きさの微細気泡を多数流出させることができる。
【0006】
このようなエアレーションノズルを用いて、海水中でエアレーションを連続して行うと、散気膜のスリット壁面やスリット開口近傍に、海水中の硫酸カルシウム等の析出物が析出し、スリットの間隙が狭くなったり、スリットを塞いだりする結果、散気膜の圧力損失を増大させ、散気装置に空気を供給するブロワ、コンプレッサ等吐出手段の吐出圧高が発生し、ブロワ、コンプレッサ等に負荷がかかるという、問題がある。
【0007】
析出物の発生は、散気膜の外側に位置する海水が、スリットから散気膜の内側へ浸み込み、常時スリットを通過する空気に、長時間に亙って触れて乾燥(海水の濃縮)が促進され、析出に至っている、と推定される。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、散気膜のスリットにおいて析出物の除去及び発生の抑制をすることができるエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置、エアレーション装置のスリット析出物の溶解除去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、前記空気供給管と連通するヘッダの開口部より供給された空気を導入する導入部と、該導入部から延設され、空気を外部に排出する複数のスリットを有する散気膜を被せる支持体とを備えたエアレーションノズルと、前記ヘッダ内に水を空気供給配管を介して導入する水導入手段と、導入された水を前記ヘッダの開口部から供給された空気により霧化する霧化部と、を具備し、霧化部で霧化した水ミストを空気と共にスリットを通過しつつ外部へ排出することを特徴とするエアレーション装置にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記エアレーションノズルの圧力損失が所定値以上の場合、前記ヘッダ内に空気供給管を介して水を導入する制御を行う制御手段を有することを特徴とするエアレーション装置にある。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記開口部の開口形状が、円形、矩形であることを特徴とするエアレーション装置にある。
【0012】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記霧化部が、前記ヘッダの開口部内に設けられた通気管と、前記ヘッダ内の水面下にその下端部が浸漬され、その上端部が通気管内に臨む水導入管とを有することを特徴とするエアレーション装置にある。
【0013】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記水が真水または海水のいずれかであることを特徴とするエアレーション装置にある。
【0014】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、前記空気供給配管に、フィルタと冷却器とが設けられていることを特徴とするエアレーション装置にある。
【0015】
第7の発明は、海水を吸収剤として使用する脱硫塔と、前記脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路と、前記水路内に設置され、前記使用済海水中に微細気泡を発生して脱炭酸を行う請求項1乃至6のエアレーション装置とを具備することを特徴とする海水排煙脱硫装置にある。
【0016】
第8の発明は、被処理水中に浸漬され、被処理水中にエアレーションノズルの散気膜のスリットから微細気泡を発生させるエアレーション装置を用い、空気導入管内に水を導入し、エアレーションノズル内に空気を供給する際、水を霧化し、霧化された水ミストが含まれた空気を、散気膜のスリットに供給し、析出物を溶解除去することを特徴とするエアレーション装置のスリット析出物の溶解除去方法にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エアレーション装置の散気膜のスリットにおいて析出物が発生した場合でも、析出物を溶解除去し、エアレーション装置に空気を供給するブロワ、コンプレッサ等吐出手段の負荷の低減を図ることができる。また、霧化部により水ミストを同伴させた空気を散気膜のスリットに供給することで、散気膜のスリットでの海水の乾燥・濃縮を防ぐことにより、硫酸カルシウム等の析出物の析出を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本実施例に係る海水排煙脱硫装置の概略図である。
【図2−1】図2−1は、エアレーションノズルの平面図である。
【図2−2】図2−2は、エアレーションノズルの正面図である。
【図3】図3は、エアレーションノズルの内部構造概略図である。
【図4】図4は、本実施例に係るエアレーション装置の概略図である。
【図5−1】図5−1は、霧化部の一例を示す図である。
【図5−2】図5−2は、霧化部の一例を示す図である。
【図6】図6は、圧力損失と時間との関係(上段)及び水流量と時間との関係(下段)を示す図である。
【図7−1】図7−1は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、および濃縮海水の状況を示す図である。
【図7−2】図7−2は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、濃縮海水及び析出物の状況を示す図である。
【図8】図8は、制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0020】
本発明による実施例に係るエアレーション装置及び海水排煙脱硫装置について、図面を参照して説明する。図1は、本実施例に係る海水排煙脱硫装置の概略図である。
図1に示すように、海水排煙脱硫装置100は、排ガス101と海水103とを気液接触してSO2を亜硫酸(H2SO3)へ脱硫反応させる排煙脱硫吸収塔102と、排煙脱硫吸収塔102の下側に設けられ、硫黄分を含んだ使用済海水103Aを希釈用の海水103と希釈混合する希釈混合槽105と、希釈混合槽105の下流側に設けられ、希釈使用済海水103Bの水質回復処理を行う酸化槽106とからなるものである。
【0021】
海水排煙脱硫装置100では、排煙脱硫吸収塔102において海水供給ラインLを介して供給される海水103の内の一部の吸収用の海水103を排ガス101と気液接触させて、排ガス101中のSO2を海水103に吸収させる。そして、排煙脱硫吸収塔102で硫黄分を吸収した使用済海水103Aは、排煙脱硫吸収塔102の下部に設けられている希釈混合槽105に供給される希釈用の海水103と混合させる。そして、希釈用の海水103と混合希釈された希釈使用済海水103Bは、希釈混合槽105の下流側に設けられている酸化槽106に送給され、酸化用空気ブロア121より供給された空気122をエアレーションノズル123により供給し、水質回復させた後、排水124として海へ放流するようにしている。
図1中、符号102aは海水を上方に噴出させる液柱用の噴霧ノズル、120はエアレーション装置、122aは気泡、L1は海水供給ライン、L2は希釈海水供給ライン、L3は脱硫海水供給ライン、L4は排ガス供給ライン、L5は空気供給ラインである。
【0022】
このエアレーションノズル123の構成を図2−1、図2−2及び図3を参照して、散気膜がゴム製の場合について説明する。
図2−1は、エアレーションノズルの平面図、図2−2は、エアレーションノズルの正面図、図3はエアレーションノズルの内部構造概略図である。
図2−1、図2−2に示すように、エアレーションノズル123は、基材の周囲を覆うゴム製の散気膜11に小さなスリット12が多数設けられたものであり、一般的には「ディフューザノズル」と呼ばれている。このようなエアレーションノズル123は、空気供給ラインL5から供給される空気122の圧力により散気膜11が膨張すると、スリット12が開いて略均等な大きさの微細気泡を多数流出させることができる。
【0023】
図2−1、図2−2に示すように、エアレーションノズル123は、空気供給ラインL5から分岐した複数(本実施例では8本)の枝管(図示せず)に設けられたヘッダ15に対して、フランジ16を介して取り付けられている。希釈使用済海水103B中に設置されるヘッダ15には、耐食性を考慮して樹脂製パイプ等が使用されている。なお、ヘッダ15は、後述する図4に示すように、希釈使用済海水103B中に設置される空気供給ラインL5より分岐した分岐空気供給ラインL5A〜5Hに連通して空気をエアレーションノズル123内に導入している。
【0024】
エアレーションノズル123は、たとえば図3に示すように、使用済海水103Bに対する耐食性を考慮して樹脂製とした略円筒形状の支持体20を用い、この支持体20の外周を覆うようにして多数のスリット12が形成されたゴム製の散気膜11を被せた後、左右両端部をワイヤやバンド等の締結部材22により固定した構成とされる。
【0025】
また、上述したスリット12は、圧力を受けない通常の状態においては閉じている。なお、海水排煙脱硫装置100においては、常時空気122を供給している状態では、常にスリット12は開放状態である。
【0026】
ここで、支持体20の一端20aは、ヘッダ15に取り付けた状態で空気122の導入を可能とすると共に、その他端20bは、海水103が導入可能に開口されている。
このため、一端(空気導入部)20a側は、ヘッダ15及びフランジ16を貫通する空気導入口20cを介してヘッダ15内部と連通している。そして、支持体20の内部は、支持体20の軸方向の途中に設けた仕切板20dにより分割され、この仕切板20dにより空気の流通が阻止されている。さらに、この仕切板20dよりヘッダ15側となる支持体20の側面には、散気膜11の内周面と支持体外周面との間に、すなわち、散気膜11を加圧して膨張させる加圧空間11aへ空気122を流出させるための空気出口20e、20fが開口している。従って、ヘッダ15からエアレーションノズル123に流入する空気122は、図中に矢印で示すように、空気導入口20cから支持体20の内部へ流入した後、側面の空気出口20e、20fから加圧空間11aへ流出することとなる。
なお、締結部材22は、散気膜11を支持体20に固定するとともに、空気出口20e、20fから流入する空気が両端部から漏出することを防止するものである。
【0027】
このように構成されたエアレーションノズル123において、ヘッダ15から空気導入口20cを通って流入する空気122は、空気出口20e、20fを通って加圧空間11aへ流出することにより、最初はスリット12が閉じているため加圧空間11a内に溜まって内圧を上昇させる。内圧が上昇された結果、散気膜11は加圧空間11a内の圧力上昇を受けて膨張し、散気膜11に形成されているスリット12が開くことによって空気122の微細気泡を希釈使用済海水103B中に流出させる。このような微細気泡の発生は、枝管L5A〜5H及びヘッダ15を介して空気供給を受ける全てのエアレーションノズル123で実施される。
【0028】
以下、本実施例に係るエアレーション装置について説明する。本発明では、散気膜11のスリット12に霧化した水を空気と共に導入することにより、該スリット12において硫酸カルシウム等の析出物の析出を除去又は抑制する手段を提供する。
以下に、本発明を具体的に説明する。
図4は、本実施例に係るエアレーション装置の概略図である。
図4に示すように、本実施例に係るエアレーション装置120は、被処理水である希釈使用済海水(図示せず)中に浸漬され、希釈使用済海水103B中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気122を吐出手段であるブロア121A〜121Dにより供給する空気供給ラインL5と、空気供給ラインL5に水141を供給する水分供給手段である水タンク140及び供給ポンプP1と、水分が含まれた空気が供給されるスリットを有する散気膜11を備えたエアレーションノズル123とを具備するものである。
また、空気供給ラインL5には、2基の冷却器131A、131Bと、2基のフィルタ132A、132Bとが各々設けられている。これにより、ブロア121A〜121Dにより圧縮された空気は冷却され、次いで濾過されている。
なお、ブロアが4基あるのは、通常は3基で運転しており、その内の1基は予備としている。また、冷却器131A、131Bと、フィルタ132A、132Bとが各々2基あるのは、連続して運転する必要から、通常は片方のみで運転し、他方はメンテナンス用としている。
【0029】
ここで、本実施例では、水分の供給としては、真水を用いているが、真水の代わりに、海水(例えば、希釈海水供給ラインL2の海水103、希釈混合槽105の使用済海水103A、酸化槽106の希釈使用済海水103B等を)を用いるようにしてもよい。
【0030】
本実施例によれば、真水タンク140により水(真水または海水)141を供給する。供給された水は、ヘッダ15内の開口部15aの下端以下のヘッダ内に溜まり、開口部15aからエアレーションノズル側に流出する。開口部15aを通過する水は、エアレーションノズル123に供給する空気122が開口部15aを通過する際に、霧化することができる。
すなわち、開口部15a及び空気導入口20cのオリフィス部に対して、空気122を供給することで水ミスト141aを発生させるようにしている。
図3においては、霧化部25は、ヘッダ15内に導入された水141と、開口部15a及び空気導入口20cのオリフィス部から構成されている。
【0031】
図5−1及び図5−2は、霧化部の他の一例を示す図である。
図5−1の霧化部は、前記ヘッダ15の開口部15a内に設けられた通気管51と、ヘッダ15内の水面下にその下端部52aが浸漬され、その上端部52bが通気管51内に臨む水導入管52から構成されている。
そして、上端部52bの開口を空気122が通過する際に、空気122の流速が速いので、水が持ち上げられる効果により、持ち上げられた水141を霧化し、水ミスト141aを発生するようにしている。
【0032】
図5−2は、水導入管52が中空の通気管51に一部が埋設され、上端部52bの開口部分が中空の通気管51に臨むようにしている。
【0033】
また、開口部15aの形状としては、円形や矩形又は菱形のいずれであってもよい。
【0034】
このように、空気122の導入に際して、水141を霧化して同伴させることで、湿り空気がエアレーションノズル123に供給されることとなり、以下1)及び2)の効果を奏する。
1) エアレーション装置の散気膜11のスリット12において析出物が発生した場合でも、霧化部25より水ミスト141aを発生することで、析出物を溶解除去し、エアレーション装置に空気を供給するブロワ、コンプレッサ等吐出手段の負荷の低減を図ることができる。
2) 霧化部25により水ミスト141aを同伴させた空気122を散気膜11のスリット12に供給することで、スリット12での海水の乾燥・濃縮を防ぐことにより、硫酸カルシウム等の析出物の析出を事前に回避することができる。
【0035】
2)の対応の場合、水ミスト141aの発生により、散気膜11のスリット12に浸入してくる海水の乾燥(濃縮)を防止し、硫酸カルシウム等の海水中の塩の析出を防止するようにしている。霧化した水ミスト141aは、スリットに濃縮海水が形成されている場合には、海水の濃縮緩和(塩分濃度低下)に寄与する。
また、水ミストが蒸発することにより、供給空気の相対湿度が上昇するため、上記に加え、スリット12に浸入してくる海水の乾燥(濃縮)が防止される。
【0036】
このような水(真水、海水)141をヘッダ15内の開口部15a近傍まで導入することにより、エアレーションノズル123に供給される空気122が開口部15aと空気導入口20cを通過する際に、水141を霧化し、霧化した水ミスト141aを同伴した空気がスリット12に導入されるので、散気膜11のスリット12に付着した硫酸カルシウム等を溶解し、これにより、散気膜11の圧力損失の低減を図る。または析出を事前に抑制することができる。
【0037】
なお、ヘッダ15内への水141の導入が開口部15aまで満たない水位WLの場合には、霧化することができないので、オリフィス部において水ミストを発生することができない。この場合は、図5−1、図5−2に示す事例を適用することにより、水ミストの発生が可能となる。
また、開口部15aを超えて水位WLが高くなった場合には、開口部15a以下となるまでは、水141のみがエアレーションノズル123内に導入され、スリット12の析出物の溶解に寄与する。そして、水141の水位WLが適正になった際には、空気122の霧化により水ミスト141aを発生することができる。
【0038】
なお、水141の導入は水タンク140からポンプP1を介して行われており、空気導入管の内圧よりも水圧を高くして、水141を空気導入管内に導入するようにしている。なお、水圧が低いときには、昇圧ポンプを用いるようにしている。
【0039】
[付着物が発生した場合の対策]
ここで、エアレーション装置の運転初期は、制御手段により空気122を空気供給ラインL5内に導入して、エアレーションのみを行っている。この場合には、水141は空気供給ラインL5には導入していない。
そして、スリット12に付着物が発生すると、エアレーションノズル123の圧力損失が規定値以上に上昇する。このような圧力損失の上昇があった場合には、水タンク140から水141を空気供給ラインL5より分岐した分岐空気供給ラインL5A〜5Hに導入し、導入された水141が各エアレーションノズル123の導入部にまで行きわたった際に、空気122の霧化作用により水ミスト141aを発生させることができる。
【0040】
この圧力損失と時間との関係、水流量と時間との関係を図6に示す。
図6は、圧力損失と時間との関係(上段)及び水流量と時間との関係(下段)を示す図である。
図6に示すように、圧力損失の上昇で所定値Xとなった際に、水を導入(ON)し、この水141の導入を圧力損失が正常値の許容範囲となるまで継続する。
なお、圧力損失が、正常値になった時点で水の導入を停止すると、圧力損失は、水の効果が無くなり次第、再び上昇し始める。
一方、圧力損失が正常値になった時点で、水の導入量をスリット12に流入する空気の相対湿度が100%程度となる様に調整し、継続して水を導入すれば、圧力損失の正常値からの上昇を防止することができる。
この対策は、複数の空気供給管がある場合には、そのブロック毎に行うことで効率的な対応を図ることができる。
【0041】
海水の塩分濃度は通常約3.4%であり、96.6%の水に3.4%の塩が溶けている。この塩は、塩化ナトリウムが77.9%、塩化マグネシウムが9.6%、硫酸マグネシウムが6.1%、硫酸カルシウムが4.0%、塩化カリウムが2.1%、その他0.2%の構成となっている。
【0042】
この塩のなかで、海水の濃縮(海水の乾燥)につれて、硫酸カルシウムが最初に析出する塩であり、その析出の閾値が海水の塩分濃度で約14%である。
【0043】
図7−1〜図7−2は、散気膜11のスリット12における、空気(水分を供給した状態)の流出と海水103の浸入と付着物の発生を示す図である。
ここで、本発明において、スリット12とは、散気膜11に形成される切れ込みをいい、スリット12の間隙は空気が排出される通路となる。
この通路を形成するスリット壁面12aは、海水103が接触しているが、空気122の導入によって乾燥・濃縮され、濃縮海水103aとなり、その後スリット壁面に析出物103bが析出され、スリットの通路を閉塞するものとなる。
【0044】
なお、図7−1及び図7−2に、散気膜11のスリット12における、空気による海水の乾燥・濃縮が進行して析出物が成長する状態を示す。
図7−1は、濃縮海水103aの一部において、局所的に海水の塩分濃度が14%を超えた部分に析出物103bが発生している状態である。この状態では析出物103bが僅かであるので、スリットを空気が通過する際の圧力損失が僅かに上昇するものの、空気122は通過可能である。
【0045】
これに対し、図7−2は、濃縮海水103aの濃縮が進行すると、析出物103bによる閉塞(プラッキング)状態となり、圧力損失が大きくなる状態である。なお、このような状態でも空気122の通路は残っているものの吐出手段にはかなりの負荷がかかるものとなる。これによりエアレーションノズル123に圧力損失の上昇となる。
【0046】
よって、このような析出物103bによる閉塞(プラッキング)状態となり、圧力損失が上昇した場合には、霧化部25から水ミスト141aを発生させ、エアレーションノズル123に供給される空気122中に水ミスト141aを同伴させることで、スリット12における付着物を除去し、さらに水ミスト141aを供給することで、海水の濃縮(塩分濃度の上昇)を防ぐことができ、硫酸カルシウム等の析出を防止する。
この結果、硫酸カルシウム等の析出によるスリット12の間隙が狭くなることやスリット12の詰まりが解消され、散気膜11の圧力損失を防止できる。
【0047】
ヘッダ部への水の導入は、以下に記述する制御手段を採用するが、空気弁、水弁を手動で操作し、導入しても良い。
制御手段は、マイコン等で構成されている。制御手段は、RAMやROM等から構成されてプログラムやデータが格納される記憶部(図示せず)が設けられている。記憶部に格納されるデータは、エアレーションノズル123の圧力損失の上昇が確認され、所定値以上であると、スリット12における付着物の多量発生を検知すると共に、エアレーションノズル123の圧力損失がどのブロック(本実施例では8ブロック(第1ブロックA〜第8ブロックH))で発生したかを確認する。
また、制御手段は、水タンク140からの水141を供給する分岐空気供給ラインL5A〜5HのバルブV1〜V8に接続されている。この制御手段は、圧力損失が発生した際に、空気122の供給を停止せずに、当該圧力損失が発生したブロックのみに、バルブを開ける指令を出して、水タンク140より水141を供給し、分岐空気供給ラインL5A〜5H内に導入する。
【0048】
例えば第1ブロックAでの圧力損失の上昇があったことを確認すると、分岐空気供給ラインL5Aに水141を導入し、ヘッダ15の開口部15aに水が導入されると、霧化部25により水ミスト141aを発生させ、エアレーションノズル123内に空気122と共に水ミスト141aが同伴されるので、スリット12に析出した硫酸カルシウム等の析出物を溶解する。
制御装置は、この溶解により、エアレーションノズル123の圧力損失の低下を確認した後、水の導入の停止の指令を出し、空気122のみを供給する通常のエアレーション操作を再開する。
【0049】
次に、制御手段によるエアレーションノズル123の圧力損失の上昇があった場合の対処の制御について説明する。図8は、操作のフローチャートである。
【0050】
まず、制御手段は、図示しない圧力計からの圧力(散気管の内部圧力と水圧)を計測し、エアレーションノズルの圧力損失を計測する(ステップS11)。
【0051】
次に、計測した圧力損失が所定値以上(スリット12に付着物発生)の場合(ステップS12:Yes)、制御手段は、水141を水タンク140より空気供給管内に導入してヘッダ15内の開口部15a近傍まで水面が位置するように導入する制御を行う。これにより水ミスト141aが発生し、付着物が溶解される(ステップS13)。
【0052】
一方、水を導入して水ミストを発生させている間、圧力計からの圧力(内部圧力と水圧)を計測する(ステップS14)。
ステップS14での計測に基づき、圧力損失が所定値以下となった場合(ステップS15:Yes)、水の導入を停止し(ステップS16)、通常のエアレーションを実施する。
【0053】
ステップS14での計測に基づき、圧力損失が所定値以上の場合は(ステップS15:No)、水の導入を継続し、再度ステップS14での圧力損失の監視を継続する。
次いで、ステップS14での計測に基づき、圧力損失が所定値以下になった場合は(ステップS15:Yes)、水の導入を停止する。
【0054】
その後、引き続き、エアレーションノズルの圧力損失の上昇の監視を継続し、再度圧力損失が上昇した場合には、同様の対策を行う。
【0055】
本実施例によれば、海水にエアレーションを行うエアレーション装置において、散気孔(メンブレンスリット)での海水成分や汚泥等の汚れ成分の析出によるプラッギングが発生した場合に、迅速にプラッギングを解消することとなるので、長期間に亙って安定して操業することができる。
【0056】
[付着物の発生を抑制する場合の対策]
前述したように、霧化部25により水ミスト141aを同伴させた空気122を散気膜11のスリット12に供給することで、散気膜11のスリット12での海水の乾燥・濃縮を防ぐことができ、硫酸カルシウム等の析出物の析出を事前に回避することができる。
【0057】
この場合には、エアレーション装置の運転初期から、制御手段により水141を水タンク140より空気供給管内に導入してヘッダ15内の開口部15aにおいて水ミスト141aを発生させる。
この水ミスト141aの発生により、散気膜11のスリット12に浸入してくる海水の乾燥(濃縮)を防止し、硫酸カルシウム等の海水中の塩の析出を防止する。霧化した水ミスト141aは、スリット12に濃縮海水が形成されている場合には、海水の濃縮緩和(塩分濃度低下)に寄与する。
この結果、スリット12における付着物の生成が抑制されることができ、圧力損失の上昇を抑制することとなり、長期間に亙って安定して操業することができる。
【0058】
以上、本実施例では被処理水として海水を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば汚染排水処理における汚染水(例えば下水処理等)にエアレーションを行うエアレーション装置において、散気孔(メンブレンスリット)での汚泥等の汚れ成分の析出によるプラッギングを防止でき、長期間に亙って安定して操業することができる。
【0059】
以上、本実施例ではエアレーション装置として、チューブ型のエアレーションノズルを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば散気膜を有するディスク型や平板型のエアレーション装置や、スリットが常時開放しているようなセラミックス又は金属製等の散気膜を有する散気装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明に係るエアレーション装置によれば、エアレーション装置の散気膜のスリットにおいて析出物が発生した場合の除去及び発生の抑制を行うことができ、例えば海水排煙脱硫装置に適用して、長期間に亙って連続して安定した操業が可能となる。
【符号の説明】
【0061】
11 散気膜
12 スリット
100 海水排煙脱硫装置
102 排煙脱硫吸収塔
103 海水
103a 濃縮海水
103b 析出物
103A 使用済海水
103B 希釈使用済海水
105 希釈混合槽
106 酸化槽
120 エアレーション装置
122 空気
123 エアレーションノズル
140 水タンク
141 水
141a 水ミスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、
空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、
前記空気供給管と連通するヘッダの開口部より供給された空気を導入する導入部と、該導入部から延設され、空気を外部に排出する複数のスリットを有する散気膜を被せる支持体とを備えたエアレーションノズルと、
前記ヘッダ内に水を空気供給配管を介して導入する水導入手段と、
導入された水を前記ヘッダの開口部から供給された空気により霧化する霧化部と、を具備し、
霧化部で霧化した水ミストを空気と共にスリットを通過しつつ外部へ排出することを特徴とするエアレーション装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記エアレーションノズルの圧力損失が所定値以上の場合、前記ヘッダ内に空気供給管を介して水を導入する制御を行う制御手段を有することを特徴とするエアレーション装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記開口部の開口形状が、円形、矩形であることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記霧化部が、前記ヘッダの開口部内に設けられた通気管と、
前記ヘッダ内の水面下にその下端部52aが浸漬され、その上端部52bが通気管51内に臨む水導入管52とを有することを特徴とするエアレーション装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記水が真水または海水のいずれかであることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記空気供給配管に、フィルタと冷却器とが設けられていることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項7】
海水を吸収剤として使用する脱硫塔と、
前記脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路と、
前記水路内に設置され、前記使用済海水中に微細気泡を発生して脱炭酸を行う請求項1乃至6のエアレーション装置とを具備することを特徴とする海水排煙脱硫装置。
【請求項8】
被処理水中に浸漬され、被処理水中にエアレーションノズルの散気膜のスリットから微細気泡を発生させるエアレーション装置を用い、
空気導入管内に水を導入し、エアレーションノズル内に空気を供給する際、水を霧化し、
霧化された水ミストが含まれた空気を、散気膜のスリットに供給し、析出物を溶解除去することを特徴とするエアレーション装置のスリット析出物の溶解除去方法。


【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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