説明

エキシマランプの電極製造方法

【課題】 外側電極を安価且つ確実に製造可能なエキシマランプの電極製造方法を提供すること。
【解決手段】 同軸円筒状に形成された内管11および外管12よりなる放電管10を含み、内管10の内側の内側電極15と外管12の外表面に配置された外側電極14との間に高電圧を印加し、内管11と外管12との間の空間15に封入されたガスを放電発光させるエキシマランプの電極製造方法であって、表面に予め澱粉質31を塗布した転写紙3に導電性物質により電極パターン14cを形成する第一の工程と、澱粉質31および電極パターン14cを覆うカバーコート17を形成する第二の工程と、第二の工程で得た転写紙3を湿らせて外管11の表面に貼り付ける第三の工程と、転写紙3を剥離して外管11の表面にカバーコート17ととともに電極パターン14cを残存させる第四の工程と、この第四の工程で残存させた電極パターン14cを焼成して電極14とする第五の工程を経る方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプ(誘電体バリア放電ランプ)の製造方法に関し、特にエキシマランプの外管の外表面に形成する網状の外側電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプは、半導体集積回路、液晶表示パネルおよびプリント回路基板などの電子部品の製造工程における紫外線露光装置等に広く使用されている。エキシマランプに関する従来技術は、例えば特許文献1に記載の「高輝度光照射装置」および特許文献2に記載の「誘電体バリア放電ランプ」などに開示されている。
【0003】
従来のエキシマランプは、基本的には、同軸の内管および外管よりなる放電管を備え、内管の内表面の内側電極と外管の外表面の外側電極との間に高電圧を印加して、内管と外管との間の空間に封入された希ガスをエキシマ放電させて発光させる。
【0004】
従来のエキシマランプの外側電極は、例えば穿孔した金属板を放電管に螺旋状に巻きつけて密着している。このような電極では巻き付け時の緩み、電極の一部の盛り上がりなどが不可避的に生じて、電極と放電管の表面との間に隙間が生じる。
【0005】
このように隙間において放電が発生すると、電力を浪費させ、発光効率を低下させる。また、金属線を編組したシームレス状の網状電極を使用しても金属線の交差部に隙間が生じ、放電管と電極を密着させることは困難である。また、金属線のように太さのある電極を使用すると、角度を有する放射光線に対して障壁となり、発光効率を低下させる。
【特許文献1】特開2000-223078号公報
【特許文献2】特開2001- 23577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような不具合を解決するために、エキシマランプにおいて、金属薄膜を放電管に密着させて電極を形成している。この金属薄膜は、印刷、メッキ、蒸着、スパッタ技法などで形成している。これらの技法のうち、蒸着およびスパッタ技法は、作業が煩雑であり高価なものとなる。また、印刷技術では、オフセット印刷が一般的であるが、曲面の印刷には曲面印刷機を使用しなければならない。しかし、長尺の放電管になると作業性が非常に悪く、高価になるとともに電極の精度が著しく低下する。さらに、インクの種類によっては、膨張係数の違いによりマイクロクラックを生じ、ランプ点灯中に電極が剥がれてランプの寿命を低下させる。
【0007】
また、導電性物質とガラス(二酸化珪素)とを混合した複合体を使用した導電性インクは、ガラス質が存在するために、放電管に使用されている誘電体内に極度に接合し、食い込み、密着性を向上させることができる。この極度の食い込みにより、この誘電体と膨張率の異なる導電性物質も同様に食い込んで、放電管にマイクロクラックなどを生じ、破損を促進することがあるので、ランプの寿命を低下させる。また、ガラス質が混合された複合体では、印刷電極の焼結時にガラス質が電極の開口部に残留して、ランプの照度を低下させる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するために考えられたものであって、作業性が優れ、製造したランプ寿命および発光効率の低下を阻止可能なエキシマランプの電極製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエキシマランプの電極製造方法は、同軸円筒状に形成された内管および外管よりなる放電管を含み、前記内管の内側に配置された内側電極と前記外管の外表面に配置された外側電極との間に高電圧を印加し、前記内管と前記外管との間の空間に封入されたガスを放電発光させるエキシマランプの電極製造方法であって、表面に予め澱粉質を塗布した転写紙に導電性物質により電極パターンを形成する第一の工程と、前記澱粉質および電極パターンを覆うカバーコートを形成する第二の工程と、前記第二の工程で得た転写紙を湿らせて前記外管の表面に貼り付ける第三の工程と、転写紙を剥離して前記外管の表面に前記カバーコートととともに電極パターンを残存させる第四の工程と、前記第四の工程で残存させた電極パターンを焼成する第五の工程を経る方法である。
【0010】
本発明の電極製造方法における電極パターンは、金、銀、プラチナ、ニッケル、クロムの金属またはこれら2以上の金属の合金で形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエキシマランプの電極製造方法によると、外側電極は、転写紙に印刷された電極パターンを放電管の外表面に転写して焼き付けるので、製造工程が極めて簡単である。また、転写シートの幅および長さを変更することにより、任意の長さおよび直径の放電管に簡単に対応可能である。さらに、外側電極を放電管の外表面に対して密着形成が可能であるから、良好な発光特性が得られるという実用上の顕著な効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明によるエキシマランプの電極製造方法の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の電極製造方法を適用するエキシマランプの縦断面図であり、図2は、エキシマランプの外側電極の一部を拡大して示した図である。このエキシマランプは、図1に示すように、同軸状に配置された内管11および外管12よりなり、その両端を接合部16により接合して閉端とした放電管10、内管11の内表面に設けた内側電極13および外管12の外表面に設けた外側電極14により構成される。
【0014】
これら内側電極13および外側電極14の間に、高電圧交流電源9から高電圧を印加することにより、放電管10の内部空間15に封入された放電用ガス(アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガス)をエキシマ放電させて紫外線を発光させる。
【0015】
図2に示すように、外側電極14は、例えば6角形の細線14bによる多数の開口14aを有するハニカム構造の網状電極である。この外側電極14は、好ましくは金、銀、プラチナ、ニッケルまたはクロムなどの金属またはこれら2種類以上の金属の合金により形成される。また、この外側電極14の開口率は、70%以上に選定される。
【0016】
図1に示すエキシマランプの一例においては、放電管10は、透明な石英で形成され、その全長が約380mmであり、内管11の外径は約20mmおよび外管12の外径は約30mmである。そして、エキシマランプの発光長は、約300mmである。
【0017】
次に、図3(a)〜(f)に基づいて、図2に示すエキシマランプの外側電極14の製造工程を説明する。
【0018】
図3(a)に示すように、表面に予め澱粉質31を塗布した転写紙3を用意し、 図3(b)に示すように、澱粉質31の表面に導電性物質により電極パターン14cをガリ版印刷またはシルク印刷により印刷する。
【0019】
図3(c)に示すように、電極パターン14cを印刷した表面にカバーコート17を形成して澱粉質31を覆う。
【0020】
図3(d)に示すように、カバーコート17で覆われた転写紙3を湿らせて外管12に巻回して貼り付ける。
【0021】
水に漬けると、澱粉質31が溶けて、転写紙3を剥離することができる。転写紙3を剥離すると、図3(e)に示すように、カバーコート17ととともに電極パターン14cが外管12の表面に残存する。
【0022】
そして、電極パターン14cが転写された放電管10を600℃〜700℃の高温炉内で焼き付け(焼成)すると、カバーコート17が燃焼して消失し、図3(f)に示すように、網状電極14を形成することができる。
【0023】
以上の工程を経て形成したエキシマランプの網状電極14の膜厚は約2.0〜2.5μmであり、線幅は約400μmである。従って、この網状電極14の開口率は、約77%である。
【0024】
次に、図4(A)に示す従来の金属線を編組して形成した電極を有するエキシマランプと、図4(B)に示す本発明の電極製造方法により形成した網状電極を有するエキシマランプの動作を比較する。
【0025】
図4(A)に示す従来の網状電極においては、放電管10の外管12の外表面に金属線40が配置されている。また、交差部では、この金属線40上に破線で示すように交差する金属線41が重ねられる。交差部以外の場所では、角度θ1で示す角度の放射光線が外部に放射可能であるが、交差部では、θ1より狭いθ2の放射光線のみが外部へ放射されることになり、発光量が制限され、発光効率が低下する。
【0026】
一方、図4(B)に示す本発明の網状電極14においては、放電管10の外径に対して網状電極14の厚みが約0.1mm以下に抑えられるので、図示するように広い放射角度θ3までの光線が外部へ放射可能であり、発光効率が大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の電極製造方法を適用するエキシマランプの一例の構成を示す縦断面図、
【図2】図1に示すエキシマランプに適用する外側電極の拡大図、
【図3】本発明によるエキシマランプの電極製造工程を示す断面図、
【図4】従来の金属線の編組電極を使用した外側電極(A)と本発明により製造したエキシマランプの外側電極(B)との特性比較図である。
【符号の説明】
【0028】
10 放電管
11 内管
12 外管
13 内側電極
14 外側電極(網状電極)
14a 開口
14b 細線
14c 電極パターン
17 カバーコート
3 転写紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸円筒状に形成された内管および外管よりなる放電管を含み、前記内管の内側に配置された内側電極と前記外管の外表面に配置された外側電極との間に高電圧を印加し、前記内管と前記外管との間の空間に封入されたガスを放電発光させるエキシマランプの電極製造方法であって、
表面に予め澱粉質を塗布した転写紙に導電性物質により電極パターンを形成する第一の工程と、
前記澱粉質および電極パターンを覆うカバーコートを形成する第二の工程と、
前記第二の工程で得た転写紙を湿らせて前記外管の表面に貼り付ける第三の工程と、
転写紙を剥離して前記外管の表面に前記カバーコートととともに電極パターンを残存させる第四の工程と、
前記第四の工程で残存させた電極パターンを焼成する第五の工程を経ることを特徴とするエキシマランプの電極製造方法。
【請求項2】
前記電極パターンは、金、銀、プラチナ、ニッケル、クロムの金属またはこれら2以上の金属の合金で形成されることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプの電極製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−93159(P2006−93159A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342352(P2005−342352)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【分割の表示】特願2002−291719(P2002−291719)の分割
【原出願日】平成14年10月3日(2002.10.3)
【出願人】(000128496)株式会社オーク製作所 (175)