説明

エキシマランプ

【課題】 長時間点灯された場合であっても、紫外線反射膜の反射率の低下の程度が小さく抑制され、紫外線反射膜の剥がれを生じさせることがなく、従って、真空紫外光を効率よく出射することのできるエキシマランプを提供すること。
【解決手段】 放電空間を有するシリカガラスよりなる放電容器を備え、当該放電容器を形成するシリカガラスが介在する状態で一対の電極が設けられてなり、前記放電容器の放電空間内においてエキシマ放電を発生させるエキシマランプであって、前記放電容器の、放電空間に曝される表面に、シリカ粒子とアルミナ粒子とよりなる紫外線反射膜が形成されており、当該紫外線反射膜は、前記放電容器の管壁負荷をb〔W/cm2 〕とするとき、放電空間に曝される表面層部分において、アルミナ粒子が(10b−4)wt%以上、70wt%以下の割合で含有されてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカガラスよりなる放電容器を備え、当該放電容器を形成するシリカガラスが介在する状態で一対の電極が設けられてなり、前記放電容器の内部にエキシマ放電を発生させるエキシマランプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば金属、ガラスおよびその他の材料よりなる被処理体に、波長200nm以下の真空紫外光を照射することにより、当該真空紫外光およびこれにより生成されるオゾンの作用によって被処理体を処理する技術、例えば被処理体の表面に付着した有機汚染物質を除去する洗浄処理技術や、被処理体の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成処理技術が開発され、実用化されている。
【0003】
真空紫外光を照射する装置としては、例えば、エキシマ放電によってエキシマ分子を形成し、当該エキシマ分子から放射される光を利用するエキシマランプを光源として具えてなるものが用いられており、このようなエキシマランプにおいては、より高強度の紫外線を効率よく放射するために多くの試みがなされている。
具体的には、例えば、図6を参照して説明すると、紫外線を透過するシリカガラスよりなる放電容器(51)を備え、この放電容器(51)の内側と外側にそれぞれ電極(55,56)が設けられてなるエキシマランプ(50)において、放電容器(51)の放電空間(S)に曝される表面に、紫外線反射膜(20)を形成することが記載されており、紫外線反射膜としては、シリカ粒子のみからなるもの、およびアルミナ粒子のみからなるものが実施例に例示されている(特許文献1参照)。
このエキシマランプ(50)においては、放電容器(51)の一部に、紫外線反射膜 (20)が形成されていないことにより放電空間(S)内で発生した紫外線を出射する光出射部(58)が形成されている。
【0004】
このような構成のエキシマランプ(50)によれば、放電容器(51)の、放電空間 (S)に曝される表面に、紫外線反射膜が設けられていることにより、紫外線反射膜が設けられた領域においては、放電空間(S)内で発生した紫外線が紫外線反射膜によって反射されるので、シリカガラスに入射せずに、光出射部(58)を構成する領域において紫外線がシリカガラスを透過して外部に放射されるので、基本的には、放電空間(S)内で発生した紫外線を有効的に利用することができ、しかも、光出射部(58)の以外の領域を構成するシリカガラスの紫外線歪みによるダメージを小さく抑制することができ、クラックが発生することを防止することができる、とされている。
【0005】
【特許文献1】特許第3580233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成のエキシマランプにおいては、長時間点灯されると、紫外線反射膜の反射率が低下するという問題や、紫外線反射膜の剥がれが生じるという問題が発生することが判明した。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、長時間点灯された場合であっても、紫外線反射膜の反射率の低下の程度が小さく抑制され、紫外線反射膜の剥がれを生じさせることがなく、従って、真空紫外光を効率よく出射することのできるエキシマランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエキシマランプは、放電空間を有するシリカガラスよりなる放電容器を備え、当該放電容器を形成するシリカガラスが介在する状態で一対の電極が設けられてなり、前記放電容器の放電空間内においてエキシマ放電を発生させるエキシマランプであって、
前記放電容器の、放電空間に曝される表面に、シリカ粒子とアルミナ粒子とよりなる紫外線反射膜が形成されており、当該紫外線反射膜は、前記放電容器の管壁負荷をb〔W/cm2 〕とするとき、放電空間に曝される表面層部分において、アルミナ粒子が(10b−4)wt%以上、70wt%以下の割合で含有されてなるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエキシマランプによれば、紫外線反射膜がシリカ粒子とアルミナ粒子とからなり、アルミナ粒子が適正な割合で含有されてなるものであることにより、長時間点灯された場合であっても、粒界が消失されることなく維持されるので、真空紫外光を効率よく拡散反射させることができて反射率の程度を小さく抑制することができ、しかも、アルミナ粒子が混入されることによる紫外線反射膜の放電容器に対する結着性が大幅に低下することがなく、紫外線反射膜が放電容器から剥がれることを確実に抑制することができ、従って、真空紫外光を効率よく出射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明のエキシマランプの一例における構成の概略を示す説明用断面図であって、(a)放電容器の長手方向に沿った断面を示す横断面図、(b)(a)におけるA−A線断面図である。
このエキシマランプ10は、両端が気密に封止されて内部に放電空間Sが形成された、断面矩形状の中空長尺状の放電容器11を備えており、この放電容器11の内部には、放電用ガスとして、例えばキセノンガスや、アルゴンと塩素とを混合したガスが封入されている。
放電容器11は、真空紫外光を良好に透過するシリカガラス、例えば合成石英ガラスよりなり、誘電体としての機能を有する。
【0011】
放電容器11における長辺面の外表面には、一対の格子状の電極、すなわち、高電圧給電電極として機能する一方の電極15および接地電極として機能する他方の電極16が長尺な方向に伸びるよう対向して配置されており、これにより、一対の電極15,16間に誘電体として機能する放電容器11が介在された状態とされている。
このような電極は、例えば、金属よりなる電極材料を放電容器11にペースト塗布することにより、あるいは、プリント印刷することによって形成することができる。
【0012】
このエキシマランプ10においては、一方の電極15に点灯電力が供給されると、誘電体として機能する放電容器11の壁を介して両電極15,16間に放電が生成され、これにより、エキシマ分子が形成されると共にこのエキシマ分子から真空紫外光が放射されるエキシマ放電が生ずるが、このエキシマ放電によって発生する真空紫外光を効率良く利用するために、放電容器11の内表面に、シリカ粒子とアルミナ粒子とからなる紫外線反射膜20が設けられている。ここに、放電用ガスとしてキセノンガスを用いた場合は、波長172nmにピークを有する真空紫外線が放出され、放電用ガスとしてアルゴンと塩素とを混合したガスを用いた場合には、波長175nmにピークを有する真空紫外線が放出される。
【0013】
紫外線反射膜20は、例えば、放電容器11における長辺面の、高電圧給電電極として機能する一方の電極15に対応する内表面領域とこの領域に連続する短辺面の内表面領域の一部にわたって形成されており、放電容器11における長辺面の、接地電極として機能する他方の電極16に対応する内表面領域において紫外線反射膜20が形成されていないことによって光出射部(アパーチャ部)18が構成されている。
紫外線反射膜20の膜厚は、例えば10〜100μmであることが好ましい。
【0014】
紫外線反射膜20は、少なくとも放電空間Sに曝される表面層部分、すなわち、エキシマ放電に伴って生ずるプラズマの影響を受けてシリカ粒子が溶融して粒界の消失が発生しうる部分、例えば深さ2μm程度の範囲内において、アルミナ粒子がシリカ粒子と混在されてなるものであり、例えばシリカ粒子とアルミナ粒子との堆積体により構成することができる。
紫外線反射膜20は、シリカ粒子およびアルミナ粒子それ自体が高い屈折率を有する真空紫外光透過性を有するものであることから、シリカ粒子またはアルミナ粒子に到達した真空紫外光の一部が粒子の表面で反射されると共に他の一部が屈折して粒子の内部に入射され、さらに、粒子の内部に入射される光の多くが透過され(一部が吸収)、再び、出射される際に屈折される、このような反射、屈折が繰り返し起こる「拡散反射」させる機能を有する。
また、紫外線反射膜20は、シリカ粒子およびアルミナ粒子、すなわちセラミックスにより構成されていることにより、不純ガスを発生させず、また、放電に耐えられる特性を有する。
【0015】
紫外線反射膜20を構成するシリカ粒子は、例えばシリカガラスを粉末状に細かい粒子としたものなどを用いることができる。
シリカ粒子は、以下のように定義される粒子径が例えば0.01〜20μmの範囲内にあるものであって、中心粒径(数平均粒子径のピーク値)が、例えば0.1〜10μmであるものが好ましく、より好ましくは0.3〜3μmであるものである。
また、中心粒径を有するシリカ粒子の割合が50%以上であることが好ましい。
【0016】
紫外線反射膜20を構成するアルミナ粒子は、以下のように定義される粒子径が例えば0.1〜10μmの範囲内にあるものであって、中心粒径(数平均粒子径のピーク値)が、例えば0.1〜3μmであるものが好ましく、より好ましくは0.3〜1μmであるものである。
また、中心粒径を有するアルミナ粒子の割合が50%以上であることが好ましい。
【0017】
紫外線反射膜20を構成するシリカ粒子およびアルミナ粒子の「粒子径」とは、紫外線反射膜20をその表面に対して垂直方向に破断したときの破断面における、厚み方向におけるおよそ中間の位置を観察範囲として、走査型電子顕微鏡(SEM)によって拡大投影像を取得し、この拡大投影像における任意の粒子を一定方向の2本の平行線で挟んだときの当該平行線の間隔であるフェレー(Feret)径をいう。
具体的には、図2(a)に示すように、略球状の粒子Aおよび粉砕粒子形状を有する粒子Bなどの粒子が単独で存在している場合には、当該粒子を一定方向(例えば紫外線反射膜20の厚み方向(Y軸方向))に伸びる2本の平行線で挟んだときの当該平行線の間隔を粒径DA,DBとする。
また、出発材料の粒子が溶融して接合した形状を有する粒子Cについては、図2(b)に示すように、出発材料である粒子C1,C2と判別される部分における球状部分のそれぞれについて、一定方向(例えば紫外線反射膜20の厚み方向(Y軸方向))に伸びる2本の平行線で挟んだときの当該平行線の間隔を測定し、これを当該粒子の粒径DC1,DC2とする。
【0018】
紫外線反射膜20を構成するシリカ粒子およびアルミナ粒子の「中心粒径」とは、上記のようして得られる各粒子の粒子径についての最大値と最小値との粒子径の範囲を、例えば0.1μmの範囲で複数の区分、例えば15区分程度に分け、それぞれの区分に属する粒子の個数(度数)が最大となる区分の中心値をいう。
【0019】
シリカ粒子およびアルミナ粒子が、真空紫外光の波長と同程度である上記範囲の粒子径を有するものであることにより、真空紫外光を効率よく拡散反射させることができる。
【0020】
以上において、上記エキシマランプ10における紫外線反射膜20に含有されるアルミナ粒子の割合は、放電容器11の管壁負荷をb〔W/cm2 〕とするとき、(10b−4)wt%以上、70wt%以下とされる。
エキシマランプにおいては、電極間の電位差が大きくなるに従ってプラズマの発生頻度が高くなるので、入力電力が大きい、すなわち、管壁負荷が大きいほど、紫外線反射膜がプラズマにさらされる頻度が高くなり、より厳しい条件で使用されることになる。然るに、後述する実験例の結果にも示すように、アルミナ粒子の含有割合の下限値が、放電容器11の管壁負荷との関係において、設定されることにより、紫外線反射膜20の反射率の低下の程度を小さく抑制することができる。
【0021】
このような紫外線反射膜20は、例えば「流下法」と呼ばれる方法により、形成することができる。すなわち、水とPEO樹脂(ポリエチレンオキサイド)を組み合わせた粘性を有する溶剤に、シリカ粒子およびアルミナ粒子を混ぜて分散液を調製し、この分散液を放電容器形成材料内に流し込むことにより、放電容器形成材料の内表面における所定の領域に付着させた後、乾燥、焼成することにより水とPEO樹脂を蒸発させることにより、紫外線反射膜20を形成することができる。
紫外線反射膜20を形成するに際して用いられるシリカ粒子およびアルミナ粒子の製造は、固相法、液相法、気相法のいずれの方法も利用することができるが、これらのうちでも、サブミクロン、ミクロンサイズの粒子を確実に得ることができることから、気相法、特に化学蒸着法(CVD)が好ましい。
具体的には、例えば、シリカ粒子は、塩化ケイ素と酸素を900〜1000℃で反応させることにより、アルミナ粒子は、原料の塩化アルミニウムと酸素を1000〜1200℃で加熱反応させることにより、合成することができ、粒子径は、原料濃度、反応場での圧力、反応温度を制御することにより調整することができる。
【0022】
一般に、エキシマランプにおいては、エキシマ放電に伴って、プラズマが発生することが知られているが、上記のような構成のエキシマランプにおいては、プラズマが紫外線反射膜に対して略直角に入射して作用することになるため、紫外線反射膜の温度が局所的に急激に上昇され、紫外線反射膜が例えばシリカ粒子のみからなるものであれば、プラズマの熱によって、シリカ粒子が溶融されて粒界が消失されてしまうため、真空紫外光を拡散反射させることができなくなって反射率が低下する。
然るに、紫外線反射膜20が、シリカ粒子とアルミナ粒子とからなり、アルミナ粒子が適正な割合で含有されてなるものであることにより、上記構成のエキシマランプ10によれば、プラズマによる熱にさらされた場合であっても、シリカ粒子より高い融点を有するアルミナ粒子は溶融しないため、互いに隣接するシリカ粒子とアルミナ粒子とが粒子同士で結合されることが防止されて粒界が維持されるので、長時間点灯された場合であっても、真空紫外光を効率よく拡散反射させることができて初期の反射率を維持することができ、しかも、アルミナ粒子が混入されることによる紫外線反射膜20の放電容器11に対する結着性が大幅に低下することがないため、紫外線反射膜20が放電容器11から剥がれることを確実に抑制することができ、従って、真空紫外光を効率よく出射することができる。
また、アルミナ粒子はシリカ粒子よりも高い屈折率を有するため、シリカ粒子のみからなる紫外線反射膜に比して、高い反射率を得ることができる。
【0023】
また、エキシマ発光が生じる放電空間Sに曝される放電容器11の内表面に紫外線反射膜20が形成されていることにより、放電空間S内の真空紫外線が光出射部18以外の領域におけるシリカガラスに入射されることに伴う紫外線歪みによるダメージを小さくすることができ、クラックが発生することを防止することができる。
【0024】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験例を説明する。
<実験例1>
図1に示す構成に従って、紫外線反射膜の表面より2μmの膜厚中に含まれるアルミナ粒子の含有量が0〜50wt%の範囲で変更されたことの他は同一の構成を有する4種類のエキシマランプを作製すると共に、紫外線反射膜を有さないことの他は同一の構成を有するエキシマランプを作製した。ここに、紫外線反射膜の表面より2μmの膜厚中に含まれるアルミナ粒子の含有量およびシリカ粒子の含有割合は、紫外線反射膜を放電空間側から、電子顕微鏡により数100〜1000倍の倍率で観測しながら、エネルギー分散型X線分析装置を用いた定量分析を行うことにより得られたものであり、アルミナ粒子の含有量を、アルミナ粒子質量/(シリカ粒子質量+アルミナ粒子質量)×100「wt%」と表し、シリカ粒子の含有量を、シリカ粒子質量/(シリカ粒子質量+アルミナ粒子質量)×100「wt%」と表す。
【0025】
〔エキシマランプの構成〕
放電容器の寸法は、10×42×150mm、肉厚が2.5mmであり、放電用ガスとして、キセノンガスを40kPaの封入量で放電容器内に封入した。
高電圧供給電極および接地電極の寸法は、30×100mmである。
紫外線反射膜を構成するシリカ粒子は、粒子径が0.3〜1.0μmの範囲内にあり、中心粒径が0.5μm、中心粒径を有する粒子の割合が50%であるものである。
紫外線反射膜を構成するアルミナ粒子は、粒子径が0.2〜0.7μmの範囲内にあり、中心粒径が0.4μm、中心粒径を有する粒子の割合が50%であるものである。
シリカ粒子およびアルミナ粒子の粒子径の測定は、日立製電界放射型走査電子顕微鏡「S4100」を用い、加速電圧を20kVとし、拡大投影像における観察倍率を、粒子径が0.1〜1μmである粒子については20000倍、粒子径が1〜10μmである粒子については2000倍とした。
紫外線反射膜は、流下法によって、焼成温度を1100℃として得られたものであり、その膜厚は30μmである。
【0026】
各エキシマランプについて、放電容器の管壁負荷bが0.5W/cm2 、0.7W/cm2 、1.0W/cm2 、1.4W/cm2 となる条件で点灯させ、点灯直後と、一定の管壁負荷で500時間連続点灯させた後における、波長172nmのキセノンエキシマ光の照度を測定し、反射率減少による照度変化(初期照度との相対値)、すなわち、〔(500時間点灯後の発光強度)/(点灯直後の発光強度)〕を算出した。結果を下記表1に示す。
照度測定は、図3に示すように、アルミニウム製容器30の内部に配置されたセラミックス製の支持台31上に、エキシマランプ10を固定すると共に、エキシマランプ10の表面から1mm離れた位置において、エキシマランプ10に対向するよう紫外線照度計35を固定し、アルミニウム製容器30の内部雰囲気を窒素で置換した状態において、エキシマランプ10の電極15,16間に交流高電圧を印加することにより、放電容器11の内部に放電を発生させ、他方の電極(接地電極)16の網目を介して放射されるキセノンエキシマ光の照度を測定した。
【0027】
【表1】

【0028】
以上の結果より、紫外線反射膜を有さないエキシマランプにおいては、経時的な照度変化が実質的に生じていないことから、照度の低下は紫外線反射膜の反射率が低下することが原因で生じていることがわかる。
そして、製品の規格として例えば80%以上の維持率を要求されることがあるため、照度変化が0.8以上となることを判定基準とすると、照度変化が0.8以上に保たれるアルミナ粒子の含有割合は、管壁負荷が0.5W/cm2 のときには、1wt%以上、管壁負荷が0.7W/cm2 のときには、3wt%以上、管壁負荷が1.0W/cm2 のときには、6wt%以上、管壁負荷が1.4W/cm2 のときには、10wt%以上であることが必要であることが確認され、図4に示すように、照度変化が0.8以上に保たれるときのアルミナ含有量yは、管壁負荷bとの関係において、y=10b−4で示される近似直線Lより上の領域における量であれば、紫外線反射膜を所期の反射特性を有するものとして構成することができて照度の低下の程度を小さく抑制することができることが確認された。
【0029】
<実験例2>
紫外線反射膜を構成するシリカ粒子とアルミナ粒子の含有割合を下記表2に従って変更されたことの他は、実験例1で用いたものと同一の基本構成を有する6種類のエキシマランプを各々10本ずつ作製し、各エキシマランプについて、紫外線反射膜の剥がれの有無を目視にて観察した。結果を下記表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
以上の結果より、紫外線反射膜におけるアルミナ粒子の含有割合が70wt%以下であることにより、紫外線反射膜の剥がれが生じないことが確認された。
【0032】
従って、上記実験例1および実験例2に示す結果より、紫外線反射膜におけるアルミナ粒子の含有割合が、(10b−4)wt%以上(b:放電容器の管壁負荷〔W/cm2 〕)、70wt%以下であることにより、長時間点灯された場合であっても、紫外線反射膜の初期の反射率が維持され、紫外線反射膜の剥がれを生じさせることのないエキシマランプが得られることが確認された。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
本発明は、上記構成のエキシマランプに限定されるものではなく、図5に示すような、いわゆる「角型」のエキシマランプや、図6に示すような、二重管構造のエキシマランプにも適用することができる。
図5に示すエキシマランプ40は、例えば合成シリカガラスよりなる断面長方形の放電容器41を備えてなり、放電容器41の互いに対向する外表面に金属よりなる一対の外側電極45,45が放電容器41の管軸方向に延びるように配設されると共に、放電用ガスである例えばキセノンガスが放電容器41内に充填されている。図5において、符号42は排気管であり、符号43は例えばバリウムよりなるゲッターである。
このような構成のエキシマランプ40においては、放電容器41の内表面における、各々の外側電極45,45に対応する領域およびこれらの領域に連続する一方の内面領域にわたって、上記紫外線反射膜20が設けられ、紫外線反射膜20が設けられていないことにより光出射部44が形成されている。
【0034】
また、図6に示すエキシマランプ50は、シリカガラスよりなる円筒状の外側管52と、この外側管52内においてその管軸に沿って配置された、当該外側管52の内径より小さい外径を有する例えばシリカガラスよりなる円筒状の内側管53とを有し、外側管52と内側管53とが両端部において溶融接合されて外側管52と内側管53との間に環状の放電空間Sが形成されてなる二重管構造の放電容器51を備えており、例えば金属よりなる一方の電極(高電圧供給電極)55が内側管53の内周面に密接して設けられていると共に、例えば金網などの導電性材料よりなる他方の電極56が外側管52の外周面に密接して設けられており、放電空間S内に、例えばキセノンガスなどのエキシマ放電によってエキシマ分子を形成する放電用ガスが充填されて、構成されている。
このような構成のエキシマランプ50においては、例えば放電容器51の内側管53の内表面における全周にわたって上記紫外線反射膜20が設けられると共に、外側管52の内表面に、光出射部58を形成する一部分の領域を除いてシリカ粒子とアルミナ粒子とからなる紫外線反射膜20が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のエキシマランプの一例における構成の概略を示す説明用断面図であって、(a)放電容器の長手方向に沿った断面を示す断面図、(b)(a)におけるA−A線断面図である。
【図2】シリカ粒子およびアルミナ粒子の粒子径の定義を説明するための説明図である。
【図3】実験例におけるエキシマランプの照度の測定方法を説明するための断面図である。
【図4】エキシマランプの照度変化が0.8以上に保たれるときの、放電容器の管壁負荷と、紫外線反射膜におけるアルミナ含有量の関係を示すグラフである。
【図5】本発明のエキシマランプの他の例における構成の概略を示す説明用断面図であって、(a)放電容器の長手方向に沿った断面を示す断面図、(b)(a)の紙面に垂直な平面による断面を示す断面図である。
【図6】本発明のエキシマランプの更に他の例における構成の概略を示す説明用断面図であって、(a)放電容器の長手方向に沿った断面を示す横断面図、(b)(a)におけるA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 エキシマランプ
11 放電容器
15 一方の電極(高電圧供給電極)
16 他方の電極(接地電極)
18 光出射部(アパーチャ部)
20 紫外線反射膜
30 アルミニウム製容器
31 支持台
35 紫外線照度計
40 エキシマランプ
41 放電容器
42 排気管
43 ゲッター
44 光出射部
45 外側電極
50 エキシマランプ
51 放電容器
52 外側管
53 内側管
55 一方の電極(高電圧供給電極)
56 他方の電極
58 光出射部
S 放電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を有するシリカガラスよりなる放電容器を備え、当該放電容器を形成するシリカガラスが介在する状態で一対の電極が設けられてなり、前記放電容器の放電空間内においてエキシマ放電を発生させるエキシマランプであって、
前記放電容器の、放電空間に曝される表面に、シリカ粒子とアルミナ粒子とよりなる紫外線反射膜が形成されており、当該紫外線反射膜は、前記放電容器の管壁負荷をb〔W/cm2 〕とするとき、放電空間に曝される表面層部分において、アルミナ粒子が(10b−4)wt%以上、70wt%以下の割合で含有されてなるものであることを特徴とするエキシマランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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