説明

エキシマレーザの検査装置

【課題】 短い所要時間で、しかも熟練を必要とせず、エキシマレーザ装置の性能を多数の項目において検査できるエキシマレーザの検査装置を提供する。
【解決手段】 エキシマレーザ(16)から発振するレーザ光(3)の光品位を検査するエキシマレーザの検査装置(18)において、個々の検査項目を測定する少なくとも1台の検査ユニット(36,41,51,52)と、レーザ光(3)の光軸上に配置されてレーザ光(3)を前記検査ユニット(36,41,51,52)に導くためのビーム切り出しユニット(44)とを任意に組み合わせ可能としたことを特徴とするエキシマレーザの検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマレーザ光の波長及びビーム特性等の光品位を短時間で測定できる、エキシマレーザの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造装置用の縮小投影露光装置(以下ステッパと言う)の光源として、エキシマレーザの実用化が進められている。これは、エキシマレーザの波長が短いことから、加工の際にレンズなどの光学素子によって微細なパターンを解像できるので、より精密な加工が可能であることによる。
【0003】
しかしながら、このエキシマレーザから発振する光は、その波長のスペクトル幅である線幅がステッパ用としては広く、しかも中心波長が変動しているので、そのままではレンズなどの光学素子を透過する際に色収差や焦点ボケが生じて露光ミスの原因となる。そのため、エキシマレーザの共振器内にグレーティングやエタロンなどの波長選択素子を搭載して、前記線幅を狭くし、かつ前記中心波長を安定化する狭帯域化という技術が知られている。
【0004】
以下、図10〜図16に基づいて従来技術を説明する。図10は本願の出願人が特開平1−44080号公報に開示したエキシマレーザ16の一例である。同図において、レーザガスはチャンバ1の内部において放電によって励起され、レーザ光3が発振する。レーザ光3は後部ウィンドウ5から出射し、第1エタロン7及び第2エタロン8を通過する間に選択された波長だけを発振させることで前記狭帯域化を行なう。
【0005】
リアミラー10で反射したレーザ光3は同じ光路を逆向きに通過し、再び第1エタロン7及び第2エタロン8を通過して波長選択され、チャンバ1内に戻って増幅され、前部ウィンドウ11を透過し、その一部がフロントミラー12を透過して図中右方向へ出射する。これらの構成が筐体17の内部に設置されている。第1エタロン7、第2エタロン8及びリアミラー10を総称して、狭帯域化ユニット19と呼ぶ。なお、この狭帯域化ユニット19は、グレーティング又はプリズム又はエタロンの組み合わせ等で構成される場合もある。
【0006】
図11に、エキシマレーザ16をステッパ22と接続した際の構成を示す。エキシマレーザ16から出射したレーザ光3は、レーザ光3が外に漏れないように半密閉された外部ダクト20の内部を通り、光軸調整用のミラー24で光軸を調整されてステッパ22に入射し、この内部で半導体ウェハを露光するための光源となる。
【0007】
このとき、ステッパに好適な加工を行なわせるためには、前記線幅と中心波長(以下、これらを波長特性と言う)の他にも、レーザのパルス発振ごとのエネルギーを示すパルスエネルギー、レーザビームの断面形状及び位置を示すビームプロファイル、ビームの発散角及び進行方向を示すビームダイバージェンス、及びレーザ光3がパルス発振する時間の幅を示すパルスデュレーションなどを所定の値にしなければならない。しかしながら、すべての項目に関して常時監視を行なうとなると、検査装置をエキシマレーザ16に幾つも設けなければならず、エキシマレーザ16が複雑で高価な構成になる。
【0008】
そこで、従来は図12に示すように、前記パルスエネルギーや波長特性など一部の項目(以下監視項目と言う)に関しては筐体17の内部に常設のモニター部14を設け、レーザ光3の一部をビームスプリッタ2で分割してこのモニター部14に入射し、これら監視項目を常にモニターしている。同図において、狭帯域化ユニット19、エキシマレーザ16に電圧を供給するレーザ電源15、モニター部14は例えばパソコン等で構成されるレーザコントローラ23に接続されており、エキシマレーザ16はこのレーザコントローラ23からの指令によって制御され、レーザ発振を行なう。
【0009】
また、前記監視項目以外の検査項目については、図13に示すように定期点検や修理などのメンテナンスの際や、ステッパ22の露光に異常が起きた際などに、検査装置18を筐体17の外部に取りつけて前記検査項目に関する検査を行なっている。チャンバ1の交換や光学部品の清掃などのメンテナンスの終了後、外部ダクト20の一部を取り外し、そこに検査装置18を挿入する。
【0010】
このとき、前記モニター部14は、経時変化等によって内蔵された測定器の特性が変化したりすることがあり、従って定期的に較正確認が必要である。前記パルスエネルギーを測定する場合を例にとって、その手順を図14に示す。まず図13における検査装置18の位置に、パルスエネルギーを測定するためのカロリーメータを設置してパルスエネルギーEを測定し(ステップS2)、モニター部14から出力される電圧Vを測定し(ステップS4)、電圧VからパルスエネルギーEを求めるための換算係数Gを、数1に従って計算で求める(ステップS6)。
(数1) G=E/V
この換算係数Gをレーザコントローラ23に手動で入力し(ステップS8)。較正を終了する(ステップS9)。
【0011】
図15に、前記検査装置18の一例としてビームのプロファイルを検査するビームプロファイラ41を示す。図中左方から入射したレーザ光3はミラー13又はビームスプリッタ34で図中下向きに反射され、転写レンズ25で例えばCCD等からなる2次元の検出器アレイ26に投影されてビームの断面形状及びその位置を測定され、これがステッパ22の光源として好適かどうかを検査される。
【0012】
また、図16に、別の検査装置18の一例として前記波長特性を検査する波長検出器36を示す。レーザ光3は、ミラー13又はビームスプリッタ34で図中下向きに反射され、拡散板59を介して分光用のエタロン28に入射する。エタロン28を透過した光は集光レンズ25で集光され、この集光レンズ25の集光面に、その波長に応じた干渉縞38が形成される。例えばMOS型素子のアレイからなるラインセンサ27を前記集光レンズ25の焦点面に配置して、その強度分布を測定することによって、レーザ光3の前記波長特性を測定することができる。このとき、波長の基準である水銀ランプの光により発生する干渉縞38と、レーザ光3により発生する干渉縞38とを比較し、絶対波長の測定を行なうこともある。
【0013】
このように、従来は検査装置18をエキシマレーザ16とステッパ22との間に挿入して検査を行なっており、一つの検査が終了した後、次の検査装置18を挿入するようにしている。そして、すべての検査が終了した後、外部ダクト20を取りつけて光軸をミラー24で調整し、露光に好適な光がステッパ22に導かれるようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来のエキシマレーザの検査装置には、次に示すような問題点がある。
【0015】
まず、検査装置18の設置時に、エキシマレーザ16とステッパ22との間の外部ダクト20を取り外さなければならず、この際に作業者がエキシマレーザ16やミラー24を動かしてしまい、光軸が大きくずれることがあり、この再調整に長時間を要する。
【0016】
また、検査装置18をエキシマレーザ16に対して精密に位置決めしなければならず、この位置決めに長時間を要する。さらに、検査項目ごとに異なる検査装置を設置しなければならず、この設置に長時間を要する。
【0017】
また、前記メンテナンスの際にはチャンバ1の交換や光学部品の交換を行なうため、エキシマレーザ16の光軸がステッパ22に対してずれる。このため、外部ダクト20内にミラー24等を設け、メンテナンス終了後にステッパ22にレーザ光3を導き、光軸がメンテナンス前と同じになるように調整しているが、この調整にはステッパ22の内部に導かれたレーザ光3を別の手段で観察しながら行なわなければならず、作業に熟練を要し、長時間が必要である。
【0018】
また、前記メンテナンスによってエキシマレーザ16の状態や性能が変化するが、メンテナンスの前後でこれらのデータを比較していないため、メンテナンスの効果が不明である。
【0019】
また、前述したようにモニター部14は定期的に較正が必要であり、従来はこの作業を図14で説明したように手動で行なっていたため、これに長時間を要している。
【0020】
また、従来はミラー13又はビームスプリッタ34で、レーザ光3を検査装置18に導いている。ミラー13を使用している場合はレーザ光3はこれを透過せず、ステッパ22にレーザ光3を導くことはできない。また、ビームスプリッタ34を使用している場合はこれを透過する際にレーザ光3の光軸がずれ、ステッパ22にレーザ光3を導くためには光軸の再調整が必要となり、多大な時間を要する。すなわち、ステッパ22にレーザ光3を導いて稼働させながら検査を行なうことが困難であり、露光の結果と検査の結果とを対比させるのが困難である。
【0021】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであり、短い所要時間で、しかも熟練を必要とせず、エキシマレーザ装置の性能を多数の項目において検査できるエキシマレーザの検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
【0022】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
発振するレーザ光3の光品位が検査されるエキシマレーザ16において、
前記エキシマレーザ16の筐体17内に、エキシマレーザ16の性能を検査する検査装置18、又はエキシマレーザ16のビームを前記検査装置18に導くためのビーム切り出しユニット44を挿入する空間30を設けている。
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、前記筐体内に検査装置挿入用の空間を設けたことで、前記エキシマレーザとこれを使用する外部装置(例えばステッパ)との間に設けられ、かつビームを伝送するための外部ダクトを取り外すことなく検査が行なえる。これにより、外部ダクト取り外しの際に起こり得る光軸ずれの問題が起こらないので、検査が容易に行なえるとともに検査に要する時間が短縮できる。
【0024】
また、請求項2に記載の発明は、
請求項1記載のエキシマレーザ16において、
前記検査装置18、又は前記ビーム切り出しユニット44を着脱自在とし、かつ装着時にエキシマレーザ16に対して位置決めする位置決め手段49を備えている。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、エキシマレーザに対して検査装置又はビーム切り出しユニットを着脱容易に取りつけられ、かつ位置決め容易な位置決め手段を備えているので、これらのユニットを検査装置に挿入する際の取りつけ及び位置決めに長時間を要することがなく、検査を常に一定の位置で行なえるので、データの比較が容易である。また、位置決めの繰り返し精度を向上させることができるので光路のずれなどによる測定ミスがなく、高い検査精度を得ることができる。
【0026】
また、請求項3に記載の発明は、
エキシマレーザ16から発振するレーザ光3の光品位を検査するエキシマレーザの検査装置18において、
個々の検査項目を測定する少なくとも1台の検査ユニット36,41,51,52と、
レーザ光3の光軸上に配置されてレーザ光3を前記検査ユニット36,41,51,52に導くためのビーム切り出しユニット44とを任意に組み合わせ可能としている。
【0027】
請求項3に記載の発明によれば、検査装置をビーム切り出しユニットと個々の検査項目を測定する検査ユニットとを組み合わせ可能な構成としているので、この検査ユニットを目的とする検査項目に適合する検査ユニットに交換することによって複数の検査項目をまとめて測定でき、検査装置の交換に要する時間を短縮できる。また、複数の検査ユニットで同時に検査を行なえるので、検査時間を短縮できる。
【0028】
また、請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載のエキシマレーザの検査装置18において、
前記検査ユニットが、少なくとも、ビームの断面形状と位置を測定するビームプロファイラ41、ビームの発散角と進行方向とを測定するビームダイバージェンス測定装置51、レーザ光3の中心波長と線幅からなる波長特性を測定する波長検出器36、レーザ光3のパルス発振する際の時間幅を測定するパルスデュレーション測定装置、又はレーザ光3のパルスエネルギーを測定するパルスエネルギー測定装置52のいずれか一つである。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、これらの計測装置の少なくともいずれか一つを設置することによって、例えばステッパの露光などの加工に必要なレーザ光の一つの特性を知ることができ、検査結果に異常があればその対策を行なうことによって光源として好適なレーザ装置を得ることができる。
【0030】
また、請求項5に記載の発明は、
請求項3に記載のエキシマレーザの検査装置18において、
前記ビーム切り出しユニット44が、同じ厚みで同じ材質の2個のビームスプリッタを少なくとも1組以上備え、
前記2個のビームスプリッタは、それぞれの法線が同一平面上で交わり、かつ前記レーザ光3が各ビームスプリッタに入射する入射角が略等しくなるように配置されている。
【0031】
請求項5に記載の発明によれば、2個の同じビームスプリッタを互いに法線が同一平面上で交わり、かつ入射角が等しくなるように八の字に組み合わせることによって、レーザ光の光路の変化をキャンセルすることができる。これを組み合わせてビーム切り出しユニットを構成しているので、光軸を変化させることなく例えばステッパなどの相手装置に光を入射させながら検査を行なえる。これにより、例えばステッパの露光結果と検査結果を密接に対比させることができ、露光の問題などが起きたときに原因を究明するのが容易である。
【0032】
また、請求項6に記載の発明は、
請求項3に記載のエキシマレーザの検査装置18において、
前記検査装置18の内部を清浄な不活性ガスでパージするパージ手段50を備えている。
【0033】
請求項6に記載の発明によれば、パージ手段により清浄な不活性ガスで、検査装置内部をパージしている。これによって、レーザ光との反応で光学部品から発生する有機物を検査装置内部から追い出すことができるので、この有機物がレーザ光と反応して光学部品を破損するという現象が起きるのを防ぎ、光学部品の寿命を延ばすことができる。なお、パージ手段としては例えば窒素などの不活性ガスを供給する配管と、この不活性ガスを排出する小孔から構成することができる。
【0034】
また、請求項7に記載の発明は、
エキシマレーザ16から発振するレーザ光3の光品位を検査するエキシマレーザの検査方法において、
エキシマレーザ16にあらかじめ設けられた空間30に、検査装置18をメンテナンス前に設置し、
メンテナンスの前後でレーザ光3の各光品位の検査を行なってこの検査結果を比較し、検査後のエキシマレーザ16の良否を判断するようにしている。
【0035】
請求項7に記載の発明によれば、メンテナンスの前後で検査結果を比較している。これにより、メンテナンスの効果が把握できるとともに、メンテナンスの効果がなかった場合やメンテナンスによってレーザの性能が却って劣化した場合などに、即座に再度メンテナンスを行なうことができるので、早い段階で再調整が可能となり、やり直し作業の短縮化によりトータルのメンテナンス時間を短縮できる。
【0036】
また、請求項8に記載の発明は、
エキシマレーザ16から発振するレーザ光3の光品位を検査する検査方法において、
検査時に設置される検査装置18から得た検査データと、エキシマレーザ16の内部に常設されたモニター部14から得たデータを比較し、
前記検査データに基づいて、前記モニター部14を自動的に較正するようにしている。
【0037】
請求項8に記載の発明によれば、内部に常設されたモニター部と検査時に設置される検査装置とを通信ライン等で接続することによって両者から得られたデータを自動的に比較することが可能となり、モニター部から得られたデータを検査データに換算するための換算係数を自動的に較正することができる。これによって、従来手動でモニター部の較正に要していた時間よりも、短時間で容易に較正を行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図を参照しながら、本発明に係わる実施形態を詳細に説明する。なお、図において同一の符号を付したものは、従来例と同一の構成を表すものとし、説明を省略する。
【0039】
図1〜図8に基づいて、第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態に係わるエキシマレーザ16の構成図である。同図において、常設のモニター部14は固定台31の上に固定され、このモニター部14と筐体17の壁の間には、検査装置18挿入用に点線で囲まれた空間30が設けられている。この空間30には、通常のレーザ発振時には内部ダクト33が設置されており、レーザ光3が外部に漏れないようにカバーしている。このとき、外側にある筐体17が光漏れを防ぐカバーの役割を果たしているので、内部ダクト33の構造や取りつけは外部ダクト20に比べて簡単なものでよい。
【0040】
図2に、検査装置挿入時のエキシマレーザ16の構成図を示す。メンテナンス時に内部ダクト33を取り外し、その空間30に検査装置18を挿入し、検査を行なう。内部ダクト33は、外部ダクト20のようにその内部に光軸調整用のミラー24を備えていないので、これを外しても光軸がずれることはない。
【0041】
このとき、前記検査装置18は筐体17内に位置決めされており、この位置決めの一例を、図3にレーザの平面図で示す。前記固定台31の上には、ガイドレール37が設置されており、検査装置18は、このガイドレール37に沿って移動自在な例えばローラや褶動部材からなる移動手段(図示せず)を備えており、この移動手段により図中下側からこのガイドレール37に沿って移動してストッパ32によって位置決めされ、固定ブロック29で固定される。これらのストッパ32、固定ブロック29、ガイドレール37及び前記移動手段等により、位置決め手段49を構成している。
【0042】
位置決め手段49の別の例を、図4にレーザの平面図で示す。固定台31の上には、位置決めピン39,40が設置されている。まず、位置決めピン40を検査装置18及び固定台31に設けられた位置決め孔に嵌め、その回転方向の位置を位置決めピン39によって位置決めし、これをボルト42によって固定する。
【0043】
次に、空間30に設置される検査装置18の一例を図5に示す。同図において検査装置18は、第1のビームスプリッタ34及び第2のビームスプリッタ35で構成されるビーム切り出しユニット44と、ビームの前記プロファイルを測定するビームプロファイラ41及びレーザ光3の前記波長特性を測定する波長検出器36の各検査ユニットとから構成されている。
【0044】
同図において、左方から入射したレーザ光3は、その一部を第1のビームスプリッタ34で例えば図中下方に反射され、前記ビームプロファイラ41に入射する。ここでレーザ光3は、ビームの断面形状及びその位置を測定され、これがステッパ22の光源として好適かどうかを検査される。
【0045】
また、第1のビームスプリッタ34を透過したレーザ光3は、その一部を第2のビームスプリッタ35で例えば図中上方に反射され、前記波長検出器36に入射する。ここでレーザ光3は、前記波長特性を測定され、これがステッパ22の光源として好適かどうかを検査される。
【0046】
各検査ユニットは、例えばパソコン等で構成された検査コントローラ21に接続され、この検査コントローラ21からの指令に応じて計測をおこなっている。この検査コントローラ21は、各検査ユニットから検査データを収集し、記録することも行なう。また、この検査コントローラ21はレーザコントローラ23にも接続されており、レーザコントローラ23からの指令に従って検査を実行する。
【0047】
前記検査ユニットは、ビーム切り出しユニット44に対して図中点線の位置で着脱可能かつ位置決め容易となっており、この着脱及び位置決め方法の一例について図6、図7に基づいて説明する。図6において、ビーム切り出しユニット44には開口部53及びネジを切ったネジ穴4が設けてある。各検査ユニット(図では例えばビームプロファイラ41)にも穴6が設けてあり、この穴6からボルトでビーム切り出しユニット44に固定するようにしている。各検査ユニットには開口部57が設けてあり、レーザ光3はこの開口部57を通過して各検査ユニットの内部に入射する。図7に、検査ユニットの詳細図を示す。検査ユニットのビーム切り出しユニット44と接する面9には前記開口部53の形状に合わせた突起部54が設けられており、突起部54を開口部53の内側に嵌挿させることによって、検査ユニットの位置決めを容易に行なうことができる。
【0048】
また、ビーム切り出しユニット44において、第1のビームスプリッタ34と第2のビームスプリッタ35とを同じ厚みで同じ材質とし、それぞれの法線が同一平面上で交わり、かつ前記レーザ光3が各ビームスプリッタに入射する入射角が略等しくなるように八の字に配置することが好ましい。これにより、これらのビームスプリッタ34,35に入射するレーザ光3の入射角が同じで向きが反対となるので、ビームスプリッタ34,35を透過したことによる光路の変化をキャンセルすることができ、レーザ光3の光軸が検査装置18を通過する前と後で変わらないようにできる。
【0049】
本実施形態による検査の手順の一例を、図8にフローチャートで示す。まず、内部ダクト33を外し、筐体17内の空間30に検査装置18を挿入する(ステップS12)。次に、メンテナンス前の状態でレーザ発振を行ない(ステップS14)、その検査データ、例えば前記波長特性及び前記ビームプロファイルを検査コントローラ21で収集し、記録する(ステップS16)。その後レーザのメンテナンスを行ない(ステップS18)、メンテナンス終了時点でレーザの発振を行ない(ステップS20)、メンテナンス後の検査データを検査コントローラ21で収集し(ステップS22)、これをメンテナンス前の検査データと比較して、前記波長特性や前記ビームプロファイルの変動などがないかをチェックする(ステップS28)。このとき比較の結果がNGならば、ステップS18に戻ってメンテナンスの一部を再度やり直す。ステップS28で比較の結果がOKなら、検査を終了する(ステップS30)。
【0050】
このとき、エキシマレーザ16内に常設されたモニター部14では、検査装置18による検査と同時に、前記監視項目の計測を行なうことができる。これらのデータを監視データと言うが、レーザコントローラ23と検査コントローラ21とを接続することによって、前記監視データと検査装置18で測定した検査データとをレーザコントローラ23で比較することができる。これにより、前記図14のフローチャートで示したモニター部14の較正手順を自動化することができる。
【0051】
本実施形態では、空間30はビーム切り出しユニット44のみが入るような大きさにして、ミラーなどを使ってレーザ光3を筐体17の外部に設置された検査装置18に導くようにしてもよい。
【0052】
また、空間30をモニター部14と筐体17の壁の間に設けたが、これをモニター部14とフロントミラー12の間に設けてもよい。
【0053】
他の検査ユニットとしては、他に、前述したようにレーザ光3のビームの発散角と進行方向とを測定するビームダイバージェンス測定装置、ビームのパルスエネルギーを測定するパルスエネルギー測定装置、レーザ光3の前記パルスデュレーションを測定するパルスデュレーション測定装置などがあり、これらを順次設置して検査を行なうようにする。
【0054】
このように本実施形態によれば、筐体17内に空間30を設けており、ここに検査装置18を設置するので、検査装置18を設置する際に内部ダクト33を外すだけで検査装置18の挿入が可能である。この内部ダクト33は前述の理由により外部ダクト20に比べて構造が簡単で、着脱が容易である。しかも、内部に光軸合わせ用のミラー24を備えていないため、これを着脱することによって光軸が狂うという可能性がなく、光軸合わせの必要がない。
【0055】
また、この検査装置18は検査ユニットとしてビームダイバージェンス測定装置51を設置することによって、レーザ光3の進行方向及び発散角を常に測定し、光軸がずれないように監視及び調整を行ないながら、メンテナンスや他の検査項目の測定を行なえる。また、光軸がずれてもステッパ22にレーザ光3を導くことなく、エキシマレーザ16の光学部品を調整してレーザ単体で光軸を合わせることができるので、メンテナンス後に外部ダクト20の内部にあるミラー24を動かして光軸を調整する必要がなく、メンテナンスに要する時間を短縮することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、検査装置18をそれぞれ着脱可能で、かつ位置決めが容易な検査ユニットから構成して、各ユニット単位でこれを交換するようにしているので、検査装置18全体を交換するのに比べれば、交換に要する時間を短縮することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、前記検査装置18はエキシマレーザ16に対する位置決め手段49を備えており、従来は長時間を必要としたレーザ光3に対する検査装置18の位置決めを短時間で行なえるようになる。また、位置決め手段49によって検査装置18をレーザ光3の光軸に対して精密に、かつ繰り返し精度よく位置決め可能であり、検査の精度を向上させることができる。
【0058】
また、ビーム切り出しユニット44として、一対のビームスプリッタ34,35を前記八の字に配置することによって、これらを透過したことによる光路の変化をキャンセルすることができる。これにより、検査装置18を設置した状態でステッパ22にレーザ光3を導き、ステッパ22を稼働させながら検査を行なうことができるので、露光に不具合が生じたときなどの原因の究明が容易である。
【0059】
また、メンテナンスの前後で前記検査データを比較するようにしているので、メンテナンスの効果が正確に把握でき、メンテナンスによってレーザの性能が劣化するような場合も再度メンテナンスを行なうことで、容易にレーザの性能を回復させることができる。
【0060】
また、エキシマレーザ16の内部に常設したモニター部14と、検査装置18とを接続しており、両者から得たデータを比較してモニター部14から得たデータを検査データに換算するための換算係数Gを自動で較正できるので、これまで手動で行なっていた較正のための時間を短縮できる。
【0061】
次に、図9に基づいて第2の実施形態を説明する。同図において、検査装置18は、前記波長検出器36、前記ビームプロファイラ41、前記ビームダイバージェンス測定装置51及び前記パルスエネルギー測定装置52の各検査ユニットを組み合わせたものである。
【0062】
本実施形態において、レーザ光3の一部は第1のビームスプリッタ34で図中上向きに反射され、レーザのパルス発振ごとのエネルギーを測定するパルスエネルギー測定装置52に入射する。このパルスエネルギー測定装置52にはカロリーメータ45が備えられており、その測定値と第1のビームスプリッタ34の反射率から、ビームのエネルギーを演算することができる。或いは、パルスエネルギーの測定を正確にするため、図中点線の位置に一時的にミラー55を設置して、レーザ光3をすべてカロリーメータ45に入射させ、そのパルスエネルギーを測定してもよい。
【0063】
第1のビームスプリッタ34を透過したレーザ光3の一部は、第2のビームスプリッタ35で図中下向きに反射され、ビームの進行方向と発散角とを測定するビームダイバージェンス測定装置51に入射する。ビームダイバージェンス測定装置51は、例えばCCD等からなる2次元の検出器アレイ48と集光レンズ56とからなり、入射したレーザ光3を集光レンズ56で検出器アレイ48に集光し、その焦点の大きさと場所とを検出することでビームの進行方向と発散角とを測定することができる。これがメンテナンスの前後で変化していないかどうかを知ることによって、ステッパ22に入射するレーザ光3のビームの進行方向と発散角とが正しい状態にあるかどうかを検査することができる。
【0064】
さらに、第2のビームスプリッタ35を透過したレーザ光3の一部は、第3のビームスプリッタ46で反射して前記ビームプロファイラ41に入射し、ここでビームの断面形状及びその位置を測定される。また、第3のビームスプリッタ46を透過したレーザ光3の一部は、第4のビームスプリッタ47で反射して前記波長検出器36に入射し、ここでその波長特性を測定される。もちろん、さらに前記ビームデュレーション測定装置など、他の検査ユニットを接続することも可能である。
【0065】
ここで、検査装置18は全体が密閉され、パージ手段50として窒素配管43及び小孔58が備えられている。この窒素配管43からは窒素気体が連続的に供給され、小孔58から排出されるようになっており、検査装置18の内部を常に清浄な雰囲気に保つことができる。これは、検査装置18内部のエタロン28などの光学部品や筐体内壁に、紫外線光であるレーザ光3にさらされてゴミ等の有機物が発生し、この有機物が紫外線光と反応して光学部品表面に付着し、破損するという現象が起きるのを防ぐためである。
【0066】
このように本実施形態によれば、必要な検査項目に適した検査ユニットをまとめて備えた検査装置18をあらかじめ空間30に設置することにより、必要な検査をすべて完了することができるので、検査ユニットを交換する必要がなく、検査に要する時間を短縮することができる。
【0067】
また、検査装置18に窒素気体を供給することによって、前記発生する有機物を除くことができ、光学部品の破損を防いでその寿命を延ばすことができる。
【0068】
さらに、検査装置18は前記ビームダイバージェンス測定装置51を備えているので、レーザ光3の進行方向及び発散角を常に測定し、光軸が狂わないようにレーザを調整しながらメンテナンスや他の検査項目の測定を行なえる。これにより、メンテナンス及び検査の後の光軸調整が不要もしくは時間が短縮される。
【0069】
以上説明したように、本発明によれば、筐体17内に検査装置18挿入用の空間30及び位置決め手段49を設け、検査装置18をビーム切り出しユニット44とそれぞれ着脱可能な個々の検査ユニットとを組み合わせた構成としている。これにより、検査の際に外部ダクト20を外す必要がなく、しかも検査装置18の位置決めが容易であり、かつ位置決め精度が向上するので検査精度を向上させることができる。さらに、検査ユニットの交換によって各種の検査を行なえるので、設置が簡単であり検査時間が短縮できる。
【0070】
また、エキシマレーザ16の内部に常設したモニター部14と検査装置18とを接続しており、両者から得たデータを比較してモニター部14から得たデータを検査データに換算するための換算係数Gを自動で較正できるので、これまで手動で行なっていた較正のための時間を短縮できる。
【0071】
また、検査装置18に窒素等の清浄気体を供給するパージ手段を備えているので、光学部品の寿命を延ばすことができる。
【0072】
また、メンテナンスの前後で検査データを比較するようにしているので、メンテナンスの効果が明確に把握でき、メンテナンスによって悪影響が出た場合にもすぐに修正が可能である。
【0073】
ちなみに、本発明ではエキシマレーザにステッパを接続した場合を例にとって説明したが、本発明はエキシマレーザの検査装置に係わるものであり、エキシマレーザを光源として使用する装置であれば、特にステッパにこだわるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態に係わるエキシマレーザの構成図。
【図2】検査装置挿入の説明図。
【図3】検査装置位置決めの説明図。
【図4】検査装置位置決めの説明図。
【図5】検査装置の構成図。
【図6】検査ユニットの取付図。
【図7】検査ユニットの詳細図。
【図8】検査手順の一例を示すフローチャート。
【図9】第2実施形態に係わる検査装置の構成図。
【図10】従来のエキシマレーザの構成図。
【図11】従来のエキシマレーザとステッパの接続図。
【図12】従来のエキシマレーザの構成図。
【図13】従来のエキシマレーザと検査装置の接続図。
【図14】モニター部の較正の手順の一例を示すフローチャート。
【図15】従来の検査装置の構成図。
【図16】従来の検査装置の構成図。
【符号の説明】
【0075】
1…チャンバ、2…ビームスプリッタ、 3…レーザ光、 4…ボルト穴、 5…後部ウィンドウ、 6…穴、 7…第1エタロン、 8…第2エタロン、 9…面、 10…リアミラー、 11…前部ウィンドウ、 12…フロントミラー、 13…ミラー、 14…モニター部、 15…レーザ電源、 16…エキシマレーザ、 17…筐体、 18…検査装置、 19…狭帯域化ユニット、 20…外部ダクト、 21…検査コントローラ、 22…ステッパ、 23…レーザコントローラ、 24…ミラー、 25…集光レンズ、 26…検出器アレイ、 27…ラインセンサ、 28…エタロン、 29…固定ブロック、 30…空間、 31…固定台、 32…ストッパ、 33…内部ダクト、 34…第1ビームスプリッタ、 35…第2ビームスプリッタ、 36…波長検出器、 37…ガイドレール、 38…干渉縞、 39…位置決めピン、 40…位置決めピン、 41…ビームプロファイラ、 42…ボルト、 43…窒素配管、 44…ビーム切り出しユニット、 45…カロリーメータ、 46…第3ビームスプリッタ、 47…第4ビームスプリッタ、 48…検出器アレイ、 49…位置決め手段、 50…パージ手段、 51…ビームダイバージェンス測定装置、 52…パルスエネルギー測定装置、 53…開口部、 54…突起部、 55…ミラー、 56…集光レンズ、 57…開口部、 58…小孔、 59…拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキシマレーザ(16)から発振するレーザ光(3)の光品位を検査するエキシマレーザの検査装置(18)において、
個々の検査項目を測定する少なくとも1台の検査ユニット(36,41,51,52)と、
レーザ光(3)の光軸上に配置されてレーザ光(3)を前記検査ユニット(36,41,51,52)に導くためのビーム切り出しユニット(44)とを任意に組み合わせ可能としたことを特徴とするエキシマレーザの検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエキシマレーザの検査装置(18)において、
前記検査ユニットが、ビームの断面形状と位置を測定するビームプロファイラ(41)、ビームの発散角と進行方向とを測定するビームダイバージェンス測定装置(51)、レーザ光(3)の中心波長と線幅からなる波長特性を測定する波長検出器(36)、レーザ光(3)のパルス発振する際の時間幅を測定するパルスデュレーション測定装置、及びレーザ光(3)のパルスエネルギーを測定するパルスエネルギー測定装置(52)のうち、少なくともいずれか一つを備えていることを特徴とするエキシマレーザの検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエキシマレーザの検査装置(18)において、
前記ビーム切り出しユニット(44)が、同じ厚みで同じ材質の2個のビームスプリッタを少なくとも1組以上備え、
前記2個のビームスプリッタは、それぞれの法線が同一平面上で交わり、かつ前記レーザ光(3)が各ビームスプリッタに入射する入射角が略等しくなるように配置されていることを特徴とするエキシマレーザの検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエキシマレーザの検査装置(18)において、
内部を清浄な不活性ガスでパージするパージ手段(50)を備えたことを特徴とするエキシマレーザの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−3371(P2006−3371A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252955(P2005−252955)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【分割の表示】特願平10−13271の分割
【原出願日】平成10年1月8日(1998.1.8)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】