説明

エキスパンションジョイントの取付け構造

【課題】傾動手段を野縁受け等へ取付ける取付部材を改善して、カバー材が大重量であってもこれを強力に支持し、エキスパンションジョインを高い安全性を持つようにように簡便に設置することができる構造を提供すること。
【解決手段】間隙をおいて相対する天井材の間隙へ、この間隙を覆うカバー材を、一方の天井材側へ取付部材で取り付けた傾動手段と、他方の天井材側に設けた支点構造とで傾動が可能となるように取付けたエキスパンションジョイントの取付け構造において、上記傾動手段6を一方の天井材3側へ取付ける取付部材5が、傾動手段6の吊り腕8を固定する固定片5aと、野縁受け22等の上面を抑える抑え片5bとを上片5cで連結して、上記抑え片5bの下端と上記固定片5aより水平に延出する下片5dとの間には野縁受け22等の挿込間隙42を形成されたものであること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間隙をおいて相対する天井材の上記間隙へカバー材を強固に簡便に取付けるのに適したエキスパンションジョイントの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、離間した天井板の間へ、天井パネルを間隙の変動に伴う傾動が可能となるように設置するには、この天井パネルの中央部を吊るバネ機構の支持部材をアングル材により野縁受け等へ取付け、天井パネルの一端を他方の天井材へ回動自在に接続する構成を採用している。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平9−60182号公報
【0003】
しかしながら、上記アングル材を取付けに用いると、天井パネルが大型であったり、タイル等の重い材質を用いたりする場合は、支持強度が不足してエキスパンションジョイントの安全な設置ができないという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記問題点を解決し、傾動手段の吊腕を野縁受け等へ取付ける取付部材を筒状構造に改善して、カバー材が大重量であってこれを強力に支持して、エキスパンションジョインの安全な設置を簡便に行なうことが可能な取付け構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明に係るエキスパンションジョイントの取付け構造は、下記の構成を採用することを特徴とする。
【0006】
間隙をおいて相対する天井材の間隙へ、この間隙を覆うカバー材を、一方の天井材側へ取付部材で取り付けた傾動手段と、他方の天井材側に設けた支点構造とで傾動が可能となるように取付けたエキスパンションジョイントの取付け構造において、上記傾動手段を一方の天井材側へ取付ける取付部材が、傾動手段の吊腕を固定する固定片と、野縁受け等の上面を抑える抑え片とを上片で連結して、上記抑え片の下端と上記固定片より水平に延出する下片との間に野縁受け等の差込間隙を形成したものである。
【0007】
上記取付部材と野縁受け等を接合する接合具は、一対の接合片の一端が押しねじを螺合した連結片で連結され、離間する他端に上記連結片に対応する顎部を形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の効果 カバー材の傾動手段を一方の天井材側へ取付ける取付部材を、傾動手段の吊腕を固定する固定片と、野縁受け等の上面を抑える抑え片とを上片で連結して、上記抑え片の下端と上記固定片より水平に延出する下片との間に野縁受け等の差込間隙を形成した構成としてあるため、カバー材が大型であったり、タイル等の重い材料を用いたものであったりしても十分な支持力を有して、安全性が高くて作動性性能にも優れたエキスパンションジョイントの容易な設置を可能とするものであって、しかも、取付部材はこれと野縁受け等との接続を行なう接続具の設置空間を有するため、クランプ式の接合具を用いての確実な接合を簡便に行なえる。
【0009】
請求項2の効果 一対の接合片の一方に設けた連結部を野縁受け等へ掛け、離間する他方に設けた顎部を取付部材に掛けてねじを手又は工具で締めるだけで、取付部材を野縁受け等へ強固に固定する操作が簡単迅速にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明に係るエキスパンションジョイントの取付け構造の実施形態を図面について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1において符号1で示すエキスパンションジョイントの一例は、間隙Sをおいて相対する天井材2と天井材3との上記間隙Sへ、この間隙Sを覆うカバー材4を、一方の天井材3側へ取付部材5で取り付けた傾動手段6と、他方の天井材2側へ設けた支点構造7とに支持させて傾動可能となるように配置したものであり、上記傾動手段6は、天井材3側より間隙Sの上方へ延長する吊腕8に下り傾斜の長孔9を設け、この長孔9へカバー材4より立ち上げた立上片10に支持される摺動子11を係合させた構成とし、上記支点構造は7は、天井材2側に円弧状をなす受座12を設けて、この受座12へカバー材4の一端に取り付けた支点部材13の円形端を係合させた構造として、間隙Sの変動に伴いカバー材4の傾動が起るようにしてある。
【0012】
上記天井材2と天井材3とは、所要幅で長尺に形成した公知ものを用い、側縁にはそれぞれ額縁材14と額縁材15とを取り付ける。
【0013】
一方の額縁材14は、図2(a)に示す通り、天井材2の側縁に平行する側片14aと、側縁14aの下部に左方へ直角に曲るように設けた下片14bと、側片14aの上端と水平部14cの中間部で接合されて、水平部14cの左端から右方へ折り返す部分に上記受座12を形成した上片14dと、受座12の外面より左方へ水平に延出する取付片16とを有する構成としてある。
【0014】
他方の額縁材15は、図2(b)に示す通り、天井材3の側縁に平行する側片15aと、この側縁15aの下部に右方へ直角に曲がるように設けた下片15bと、側片15aの上部から右方へ斜めに延出し、その上端よりに右側へ水平に延出する取付片17を連接した上片15cとを有する構成として、上記取付片17は右側の一部分が他の部分よりも高くなる段部18を有するようにしてある。
【0015】
天井材2と天井材3を建物躯体19と建物躯体20へ取り付けるには、図1に示す通り建物躯体19と建物躯体20の下側に吊り具21で野縁受け22を水平に吊り、この野縁受け22へ取付部材23で所定の間隔で野縁24を取り付けて、この野縁24へ釘、ネジ等で天井材2及び天井材3を止め付ける。
【0016】
カバー材4は、図3に示す通り、天井材2及び天井材3と同じ材料で間隙Sを閉塞するのに充分な幅の長尺物に形成し、両側にはカバー材4の上面に当る当片25、26を一体形成した額縁材27、28を嵌める。そして、一方の額縁材27は、カバー材4の側縁と平行する側片27aの下側に直角に右方へ曲がる下片27bを設け、上側には左方へ斜めに延出する目隠片29を設けて、この目隠片29の上端に上記支点部材13を形成してあり、他方の額縁材28は、カバー材4の側縁と平行する側片28aの下側に、直角に左方へ曲がる下片28bを設け、上側には右方へ斜めに延び出す目隠片30を設けて、この目隠片30の上端には右方へ延び出す水平部30aを連設してある。
【0017】
カバー材4の上方に摺動子11を支持させる立上片10は、カバー材4の上へ所定の間隔で取付けるものであり、図4(a)に示す通り、短寸の水平取付板31の後側から直立する構造として、背面の上部左端側に摺動子11を取り付ける。この摺動子11は吊り腕8に設けた傾斜孔9と線状接触させる必要があるので、円形断面のものを用いるか、軸32で立上片10へ回動自在に取り付けたローラを用いることが好ましい。
【0018】
上記水平取付板31は、これと同じく短寸に形成して、図4(b)に示す通り上側に一対の係止溝33、33を対設した座板34の上へ、両側を係止溝33、33に係合させて重ねる。そして、係止溝33、33を押しつぶすことにより水平取付板31を座板34へかしめ付け、座板34の両側下面に形成した凹条35と凹条36を、額縁材27及び28に設けた当片25及び26の上面に形成される凸条37と凸条38へ係合させて、両者を図1に示す通りねじ39で結合する。
【0019】
上記傾動手段6の吊腕8は、図4(c)に示す通り、基部8aの右端に前または後へ直角に曲がるように取付片40を設け、基部の下側に前または後へ直角に曲がる支持片41を設けて、取付片40は図1に示す通り取付部材5とボルト42で結合し、支持片41は天井材3へ取付けた額縁材15の取付片17とねじ43で結合して、吊腕8の強固で安定した取り付けができるようにする。
【0020】
また、吊り腕8は傾斜孔9の下側には、常態ではカバー材4が天井材2及天井材3と面一をなすように間隙Sへ納まるとき、立上片5の左縁へ当接して安定を保つためのストッパー44を設け、カバー材4の重心を多少右側へ偏移させることにより上記状態が保持されるようにする。
【0021】
傾動手段6の吊腕8を野縁受け22等へ取付ける取付部材5は、図5に示す通りの長尺物であって、傾動手段の吊腕8をボルト42で固定する固定片5aと、野縁受け22等の上面を抑える抑え片5bとを上片5cで連結し、この上記抑え片5bの下端と上記固定片5aの下端より水平に延出する下片5dとの間に、野縁受け22等を挿込む間隙46を形成する。そして、この間隙46から取付部材5内へ野縁受け21等を挿し込み、取付部材5の下片5dと結合具47で結合する。また、抑え片5bの下端には、野縁受け22等の上面へ当たる当片5eを設け、この当片5eを結合具48で野縁受け22等と結合する。
【0022】
また、天井材2の額縁材14も野縁受け22等へ固定する。このために図4(d)に示す通り縦片49aと、横片49bとでアングル状に形成した取付部材49を用いて、縦片49aを図1に示す通りボルト50でアングル51と結合し、横片49bを天井材2へ嵌めた額縁材14より延出する取付片16とねじ52で結合する。
【0023】
なお、上記取付部材5とアングル51とは、図1に示す通り位置決めねじ53で野縁受け22等の端部へ取り付けて置いて、取付部材5と吊り腕8とのボルト42による結合及びアングル51と取付部材49とのボルト50による結合を行うようにする。
【0024】
上記結合具47は、図6(a)に示す通り一対の結合片54が、一端を押しねじ55を螺合した連結片56で連結され、離間する他端に結合片54を先下がり傾斜を有する形状に形成することで、上記連結片56に対応する顎部57を形成したものであり、図1に示す通り野縁受け22等へ連結片56が掛り、取付部材5の下片5dへ顎部57が掛るように結合具47を取付部材5内の空間58へ収めて、押しねじ55を手で撮み59を回し締め付ける。
【0025】
また、接合具48は、図6(b)に示す通り、接合具47が連結片56に摘み59を有する押しねじ55を螺合して、押しねじ55を手で締めるようにしたのに対し、押しねじ55をドライバー等で回す頭60を有するものとしてある。
【0026】
上記構成のエキスパンションジョイント1の設置は、天井材2及び3の取付前に下記の通りに行なう。
【0027】
先ず、一方の天井材2を支持する野縁受け22の端部へ位置決めねじ53でアングル51を取付けて、このアングル51に取付部材49の縦片49aをボルト50で固定する。
そして、取付部材49の横片49bに額縁材14に付設した取付片16をねじ52で固定すると、取付片16に設けた受座12がカバー材4に設けた支点部材12を受けて、カバー材4に支点部材12を中心とした回動運動を行なわせる支点構造7が構成される。
【0028】
次に、他方の天井材3を支持する野縁受け22の端部を、取付部材5に設けた空間58内へ間隙46より挿し入れて、取付部材5の下片5dを位置決めねじ53で野縁受け22へ固定する。そして、取付部材5の固定片5aに吊り腕8の基部8aに設けた取付片40をボルト42で結合する。
【0029】
更に、取付部材5の空間58内へ接合具47を差し入れて、結合片54の一端に設けた連結片56を野縁受け22の上面へ当て、他端に設けた顎部57を取付部材5の下片5dへ掛けて、押しねじ55を摘み59で回して野縁受け22と下片5bとを結合してから、取付部材5の外側に顎部57が取付部材5に設けた当片5eへ掛り、連結片56が野縁受け22の下面へ掛かるように接合具48を配置して、押しねじ55を頭60をドライバー等で回すことにより、当片5eと野縁受け22を接合すると、吊り腕8の取付部材5による強固で安定した取り付けが行なわれる。
【0030】
上記の通りに取付部材49と取付部材5が取付けられたら、一方の野縁受け22へ天井材2を取付けて、この天井材2に嵌めた額縁材14の取付片16を取付部材49の横片49bへねじ52で固定すると、額縁材14の上片14dに設けた受座12が、カバー材4の額縁材27の目隠片29に設けた支点部材13を受けて支点構造7を構成する。
【0031】
また、他方の野縁受け22へ天井材3を取付けて、この天井材3に嵌めた額縁材15の取付片17を吊り腕8の水平の支持片41へねじ43で固定すると、額縁材15の取付片17が、額縁材28の目隠片30に連接した水平部30aに移動自在に支持される。
【0032】
この状態において、天井材2と天井材3との間隙Sにカバー材4を右上がりに傾けて挿入して、一方の額縁材27に設けた支点部材13を、天井材2の額縁材14に設けた受座12に係合させ、他方の額縁材28に設けた水平部30aを天井材3の額縁材28に設けた水平の取付片17に支持させて置いて、カバー材4へ立上片10で取り付けられる摺動子11を吊り腕8の長孔9へ係合させれば、地震、地盤沈下などで天井材2と天井材3との間隙Sが狭まるように変動すると、傾動手段6と支点構造7の作用でカバー材4が右上がりに傾いて、間隙Sの変動を吸収する操作を確実に行なう。
【実施例2】
【0033】
この実施例は、天井材2と天井材3との間隙Sが野縁24の配列方向と直交するように存在するため、野縁受け22が間隙Sと平行するように存在して、その端部へ取付部材5で吊り腕8を取り付けることが出来ない場合に、野縁受け22の上へこれと直交するように補足材61を取付け、この補足材61の端部へ取付部材5で吊り腕8を取り付けるようにしたものである。
【0034】
野縁受け22の上へ補足材61を取付けるには、図7に示す通り前後の方向に配列される野縁受け22の上へ、左右方向に配列された補足材61を乗せ、この補足材61と野縁受け22とを弾性を利用した接続具62で簡便に接合する。
【0035】
上記接続具62は、図9に示す通り、弾性線材を曲げて一対の結合片63が一端を補足材61の幅に合わせた連結部64で連結され、他端には野縁受け22の下面へ掛かる鉤部65を形成されて、この鉤部65は先端側に野縁受け22の側面の下部に係合する外れ止めの段部66を有し、更に、接合片63は連結部64と鉤部65とが相対するように上半分を斜めに曲げた構成としてある。
【0036】
接続具62で、野縁受け22と補足材61とを連結するには、図8に鎖線で示す通り、野縁材22の上へ重ねた補足材61の上面へ接合具61の連結部64を当て、接合具62を矢印の方向に回動させると、接合具の鉤部65は野縁受け22の下面に係合して、その段部66が野縁受け22の側面に掛った状態で止るため、交差して配置される野縁受け22と補足材61とを簡便に確実に結合することができる。
【0037】
この実施例において、補足材61へ取付部材5及び取付部材49を取付けるため各部材の構造及び取付け状態は、実施例と同様のものであるので、実施例1に準じて部材に符号を付して構造並びに取り付け状態の説明は省略した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
カバー材が大型若しくは重いエキスパンジョンジョイントを、変調や故障を生じることなく安定確実に作動させるのに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】天井材の間隙に設けたエキスパンションジョイントの実施例1を示す断面図。
【図2】(a)(b)は、天井材へ取付ける2種類の額縁材の一部分を示す斜視図。
【図3】カバー材の一部分を示す斜視図。
【図4】(a)(b)(c)(d)は、摺動子を支持する立上片と、立上片を取付ける座板と、カバー材の吊り腕と、額縁材の取付部材を示す斜視図。
【図5】吊り腕を取付ける取付部材の一部分を示す斜視図。
【図6】(a)(b)は、取付部材と野縁受け等とを結合する2種類の結合具を示す斜視図。
【図7】天井材の間隙に設けたエキスパンションジョイントの実施例2を示す断面図。
【図8】野縁受けへ直交するように補足材を取付けた状態の説明図。
【図9】野縁受けと補足材を結合する結合の斜視図。
【符号の説明】
【0040】
1 エキスパンションジョイント
2と3 天井材
S 天井材の間隙
4 カバー材
5 取付部材
5a 固定片
5b 抑え片
5c 上片
6 傾動手段
7 支点構造
8 吊り腕
22 野縁受け
47、48 結合具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隙をおいて相対する天井材の間隙へ、この間隙を覆うカバー材を、一方の天井材側へ取付部材で取り付けた傾動手段と、他方の天井材側に設けた支点構造とで傾動が可能となるように取付けたエキスパンションジョイントの取付け構造において、
上記傾動手段を一方の天井材側へ取付ける取付部材が、傾動手段の吊腕を固定する固定片と、野縁受け等の上面を抑える抑え片とを上片で連結して、上記抑え片の下端と上記固定片より水平に延出する下片との間に野縁受け等の差込間隙を形成したものである
ことを特徴とするエキスパンションジョイントの取付け構造。
【請求項2】
上記取付部材と野縁受け等を接合する接合具は、一対の接合片の一端が押しねじを螺合した連結片で連結され、離間する他端に上記連結片に対応する顎部を形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のエキスパンションジョイントの取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−9325(P2006−9325A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185579(P2004−185579)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000250432)理研軽金属工業株式会社 (89)
【Fターム(参考)】