説明

エキスパンディング仕切弁の逆座構造

【課題】全開位置において、流路とハウジング内空洞部を隔離するに十分な力で、セグメントとゲートを相対的に移動させることができるエキスパンディング仕切弁の逆座構造を提供すること。
【解決手段】弁蓋4と、管状部6を備え、内部に空洞部32と流路16を形成するハウジングと、ゲート10及びセグメント12から成るゲート/セグメント組立品と、ゲートに連結されて該ゲート共に上下動する弁棒14を有するエキスパンディング仕切弁用の逆座構造。弁蓋の、セグメントの先端部と対向する位置に設けられた弾性力のあるストッパ40と、弁蓋に形成されたシール面と、弁棒に形成され、弁蓋に形成されたシール面と係合するシール面とを備え、仕切弁の全開位置において、弁蓋及び弁棒にそれぞれ形成されたシール面の間にメタルシートを形成すると共に、セグメントはストッパによってゲートに対して下方に付勢される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエキスパンディング仕切弁に係り、特にエキスパンディング仕切弁の逆座構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エキスパンディング仕切弁(拡張仕切弁)は、バルブのハウジング内に収納された弁体としてのゲート及びセグメントからなる組立品(ゲート/セグメント組立品)が、流路に対し直角に動作して、流路の開閉を行う弁である。弁の全閉位置及び全開位置において、ゲート及びセグメントからなる組立品(ゲート/セグメント組立品)の幅が拡張し、流路に設けられた弁座に押し付けられてハウジング内の空洞部と流路が隔離される。弁の全閉位置又は全開位置への移動中は、ゲート/セグメント組立品の幅が縮小して移動が容易となる。
【0003】
ゲート及びセグメントにはそれぞれポートが形成されている。
弁の全閉位置から、ゲートに連結された弁棒(ステム)を上昇させると、ゲート/セグメント組立品が上昇し、セグメントが弁蓋に接触するとセグメントはその動きを停止する。その後、弁棒が更に上昇するとゲートのみが上昇し、ゲート/セグメント組立品の幅が拡張して全開位置に至る。この全開位置において、ゲート及びセグメントのそれぞれのポート及び流路が連通する。
【0004】
このようなエキスパンディング仕切弁において、ハウジング内の空洞部と弁外部を密封隔離するために逆座が設けられている。この逆座の構造は、例えば、弁棒を上昇させて全開位置へ移動することによって弁棒に形成されたシール面とハウジングの弁蓋に形成されたシール面とが密着し、ハウジング内の空洞部と弁の外部を密封隔離しようとするものである。
【0005】
しかしながら、エキスパンディング仕切弁において逆座の機能を持たせるには、全開位置においてゲート/セグメント組立品が拡張し、該組立品が十分な力で弁座に押し付けられた時の弁棒の位置と弁棒のシール面が弁蓋のシール面に密着する時の弁棒の位置とが正確に一致しなければならない。エキスパンディング仕切弁をこのように製作することは不可能である。
【0006】
特開平08−178089号には、弁棒の周りの摺動可能なシール部材と、ゲートから離れるようシール部材を付勢するコイルバネとを設け、ゲート及びセグメントが弁の全開位置へ移動すると、セグメントは弁蓋と係合するため、それ以上移動しないが、弁棒及びゲートは、シール部材が弁棒とハウジングとの間でシールするようハウジングの環状シートと係合しながら移動し続けるように構成したエキスパンディング仕切弁用の逆座組立体が開示されている。シール部材は環状シートと係合し、このシール部材はコイルバネによって予め付勢されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−178089号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特開平08−178089号における逆座組立体は、コイルバネを使用してゲートをセグメントに対して相対的に移動させる構造である。コイルスプリングでは力が弱く、流路と弁のハウジング内の空洞部の流体を完全に隔離することは出来ない。
【0009】
本発明の目的は、全開位置においてゲート/セグメント組立品が拡張し、該組立品が十分な力で弁座に押し付けられた時の弁棒の位置と弁棒のシール面が弁蓋のシール面に密着する時の弁棒の位置との不一致があっても正常に機能するエキスパンディング仕切弁の逆座構造を提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、全開位置において、流路とハウジング内空洞部を完全に隔離するに十分な力で、セグメントとゲートを相対的に移動させることができるエキスパンディング仕切弁の逆座構造を提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の他の目的は、逆座としてメタルシールを採用することにより、シール部材を不要とすることができるエキスパンディング仕切弁の逆座構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、弁蓋と、管状部を備え、内部に空洞部と流路を形成するハウジングと、ゲート及びセグメントから成るゲート/セグメント組立品と、ゲートに連結されて該ゲート共に上下動する弁棒と、を有するエキスパンディング仕切弁用の逆座構造において、弁蓋の、セグメントの先端部と対向する位置に設けられた弾性力のあるストッパと、弁蓋に形成されたシール面と、弁棒に形成され、弁蓋に形成されたシール面と係合するシール面とを備え、エキスパンディング仕切弁の全開位置において、弁蓋及び弁棒にそれぞれ形成されたシール面の間にメタルシートを形成すると共に、セグメントは弾性力のあるストッパによってゲートに対して下方に付勢される、エキスパンディング仕切弁用の逆座構造が提供される。
【0013】
弾性力のあるストッパは、好ましくは板バネである。
エキスパンディング仕切弁の全開位置における板バネの撓みは、1mm以上3mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本実施例のエキスパンディング仕切弁の逆座構造によれば、逆座の構造として、弁蓋の、前記セグメントの先端部と対向する位置に、弾性力のあるストッパを取り付けたことにより、ゲート/セグメント組立品が拡張し、該組立品が十分な力で弁座に押し付けられる時の弁棒の位置と、弁棒のシール面が弁蓋のシール面に密着する時の弁棒の位置とが正確に一致せずに若干のずれがあっても、ストッパの弾性力によりそのずれを吸収することが出来る。従って、逆座の機能を確実に発揮することが出来る。
【0015】
また、本発明のエキスパンディング仕切弁の逆座構造によれば、弁蓋の、セグメントの先端部と対向する位置に弾性力のあるストッパ(板バネ)を設けた。コイルバネとは異なり、ストッパの弾性力を十分大きなものとすることができるので、流路とハウジング内の空洞部を完全に隔離するために十分な力を得ることができる。
【0016】
さらに、本発明によるエキスパンディング仕切弁の逆座構造においては、弁棒自体に逆座用のシール面を形成しているので、シール部材を必要としない。このため、弁棒とゲート間にメタルシールを形成することが出来る。特に、高温でシール部材の使用できない地熱用のエキスパンディング仕切弁に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例によるエキスパンディング仕切弁を示す縦断面図である。
【図2】図1の実施例によるエキスパンディング仕切弁の一部を拡大して示す縦断面図である。
【図3】図1の実施例によるエキスパンディング仕切弁のストッパ(板バネ)の横断面図である。
【図4】図1の実施例によるエキスパンディング仕切弁のストッパ(板バネ)の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
本実施例のエキスパンディング仕切弁は、弁蓋4及び管状部6を有するハウジング8と、該ハウジング8内に収納された弁体としてのゲート10及びセグメント12からなる組立品(ゲート/セグメント組立品)と、ゲート10に連結された弁棒(ステム)14とを有し、ハウジング8の管状部6は流路16を形成する。このエキスパンディング仕切弁は更に、ハウジング8内の流路16に設けられた対向する弁座18,20を備える。弁蓋4にはゲート10が上下動するための貫通孔22が設けられている。
【0019】
ゲート/セグメント組立品は、流路16に対し直角(上下方向)に動作して、流路16の開閉を行う。ゲート10は上下2つの傾斜面24、26を有し、セグメント12はゲート10の2つの傾斜面24、26と係合する2つの傾斜面28、30を有する。
【0020】
弁の全閉位置及び全開位置において、ゲート/セグメント組立品の幅が拡張し、管状部6の弁座18、20に押し付けられる。弁の全閉位置又は全開位置への移動中は、ゲート/セグメント組立品の幅が縮小して移動が容易となる。
【0021】
ゲート10及びセグメント12にはそれぞれポート(図示せず)が形成され、仕切弁が全開位置にあるとき、これらのポート及び流路16が整列して流路16の上流側と下流側が連通する。
【0022】
より詳細には、弁棒14が下降中はゲート/セグメント組立品の上側の傾斜面24、28が接触する。セグメント12がそれ以上下降できなくなると、ゲート10がゲート/セグメント組立品の傾斜面24、28に沿って更に下方へ移動し、その結果、ゲート/セグメント組立品の幅が広がってハウジング8の管状部6に設けられた対向する弁座18、20に強い力で押し付けられ、流路16の上流側と下流側を機械的な力で密封・遮断する。
【0023】
また、弁棒14が上昇中はゲート/セグメント組立品の下側の傾斜面26、30が接触する。セグメント12が弁蓋4に接触すると、該セグメント12はその動きを停止する。その後、弁棒14が更に上昇するとゲート10のみがゲート/セグメント組立品の互いに係合する傾斜面26、30に沿って更に上昇し、ゲート/セグメント組立品の幅が拡張する。全開位置において、ゲート/セグメント組立品はハウジング8の流路16に設けられた対向する弁座18、20に強い力で押し付けられ、ハウジング8内の空洞部32と流路16が隔離される。この時、ゲート10及びセグメント12にそれぞれ設けられたポートを通して流路16の上流側と下流側が連通する。
【0024】
次に本実施例による、ハウジング8内の空洞部32と弁の外部を密封隔離するための逆座構造について説明する。この逆座構造は、弁棒14を上昇させて全開位置へ移動することによって弁棒14に形成されたシール面34と弁蓋4に形成されたシール面36とが密着し、ハウジング8内の空洞部32とハウジング8の外部を密封隔離させるものである。
【0025】
弁棒14の下方先端部にはテーパ部分を有する拡大部38が形成されている。また、弁蓋4は、弁棒14のテーパ部分に対応するテーパ部分を有する。即ち、弁蓋4の貫通孔の下方開口部付近は、その径を拡大され、弁棒14が全開位置へと上昇したときに弁棒14の拡大部38と弁棒14の下端部とが、それぞれのテーパ部分において係合するように形成されている。
【0026】
弁蓋4には、全開位置においてセグメント12の上端部に対向することになる位置に弾性体から成るストッパ40が取り付けられている。このストッパ40は板バネである。セグメント12の上端部には、ストッパ40との接触面積を大きくするために流路16の方向に突き出した拡張部42を設けている。
【0027】
次に本実施例による逆座構造の作用について説明する。
弁棒14が上方に移動すると、セグメント12がストッパ40に接触する。さらに弁棒14が上昇すると、弁棒14の先端部のテーパ部分と該テーパ部分と係合する弁蓋4の下方部分に形成されたテーパ部分とが互いに密着することにより、それぞれシール面34、36として作用し、ハウジング8内の空洞部32とハウジング8の(弁蓋4の)外部とを密封隔離する。弁棒14及び該弁棒14に連結されたゲート10の上下方向の位置は固定される一方、セグメント12はストッパ40の弾性力により、ゲート/セグメント組立品の傾斜面26、30に沿って、ゲート10に対して相対的に下方に押され、ゲート/セグメント組立品の幅が広がり、ゲート/セグメント組立品が弁座18、20に押し付けられる。これにより、流路16内の流体はハウジング8空洞部32と隔離され、密封される。
【0028】
このとき、ストッパ40の撓みは、例えば、サイズが12インチ(300mm)のエキスパンディング仕切弁、より詳細には、API6D“Specification for Pipeline Valves”12 inch Class600 Gate Valveの場合、1mm以上3mm以下であることが好ましい。しかしながら、これには限定されず、全開位置において、流路とハウジング内空洞部を隔離するに十分な力で、セグメントとゲートを相対的に移動させることができるという目的を達成することができるような撓みであればよい。
【0029】
なお、ストッパ40は撓みによって材料の許容応力を超えないように設計される。
【0030】
本実施例のエキスパンディング仕切弁においては、逆座の構造として、弁蓋4の、全開位置においてセグメント12の上端部に対向することになる位置に、弾性力のあるストッパ40を取り付けたことにより、ゲート/セグメント組立品が拡張し、該組立品が十分な力で弁座18、20に押し付けられる時の弁棒14の位置と、弁棒14のシール面34が弁蓋4のシール面36に密着する時の弁棒14の位置とが正確に一致せずに若干のずれがあっても、ストッパ40の弾性力によりそのずれを吸収することが出来る。従って、逆座の機能を確実に発揮することが出来る。
【0031】
次にストッパ40の材質、形状等について説明する。
ストッパ40の材料としては、例えばJIS G4303 SUS(17−4ph鋼)JIS G4053 SCM430、SCM435、SCM440(Cr−Mo鋼)を用いることが出来る。
【0032】
上述のAPI6D“Specification for Pipeline Valves”12 inch Class600 Gate Valveのエキスパンディング仕切弁において、本実施例によるストッパ40でセグメント12をゲート10に対して相対的に押し下げ、ゲート/セグメント組立体を弁座18、20に密着させて、流路16内の流体をハウジング8内の空洞部32と隔離するために必要な力を実験によって求めると、約5000kgである。
【0033】
ストッパ40の撓みδ(mm)を2mmとすると、
δ=7LW/bhE=2mm
ここで、図3及び4に示すように、Lはストッパ40の腕の長さ(mm)、Wはセグメント12へ加わる下向きの力(kg)、bはストッパ40の幅(mm)、hはストッパ40の厚さ(mm)、Eは縦弾性係数である。
【0034】
Lを140mm、Wを5000kg、bを60mm、hを32mm、Eを21000kg/mmとすると、ストッパ40の応力σ(kg/mm)は
σ=3LW/bh
=34.2kg/mm
となる。上記の計算結果は、変位測定及び応力測定を用いた実験により確認されている。
【0035】
従って、この応力σがストッパ40の材料の許容応力を超えないようにその材料を選択する必要がある。上述したJIS G4303 SUS(17−4ph鋼)JIS G4053 SCM430、SCM435、SCM440(Cr−Mo鋼)の許容応力は上記34.2kg/mmを上回っている。
【0036】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこの実施例には限定されず、添付の特許請求の範囲に記載された範囲内において当業者にとり本明細書及び添付の図面の記載から自明な変更を加えた実施例をも含む。
【符号の説明】
【0037】
4 弁蓋
6 管状部
8 ハウジング
10 ゲート
12 セグメント
14 弁棒
16 流路
18、20 弁座
22 貫通孔
24、26 ゲートの傾斜面
28、30 セグメントの傾斜面
32 空洞部
34 弁棒に形成されたシール面
36 弁蓋に形成されたシール面
38 弁棒の拡大部
40 板バネ(ストッパ)
42 セグメントの拡張部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁蓋と、管状部を備え、内部に空洞部と流路を形成するハウジングと、
ゲート及びセグメントから成るゲート/セグメント組立品と、
前記ゲートに連結されて該ゲート共に上下動する弁棒と、
を有するエキスパンディング仕切弁用の逆座構造において、
前記弁蓋の、前記セグメントの先端部と対向する位置に設けられた弾性力のあるストッパと、
前記弁蓋に形成されたシール面と、
前記弁棒に形成され、前記弁蓋に形成されたシール面と係合するシール面とを備え、
前記エキスパンディング仕切弁の全開位置において、前記弁蓋及び前記弁棒にそれぞれ形成された前記シール面の間にメタルシートを形成すると共に、前記セグメントは前記弾性力のあるストッパによって前記ゲートに対して下方に付勢される、エキスパンディング仕切弁用の逆座構造。
【請求項2】
前記ストッパは板バネである、請求項1記載のエキスパンディング仕切弁用の逆座構造。
【請求項3】
前記エキスパンディング仕切弁の全開位置における前記ストッパの撓みは、1mm以上3mm以下である、請求項1または2記載のエキスパンディング仕切弁用の逆座構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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