説明

エスカレータの踏段

【課題】踏段の広告表示体部分を複数の表示面を有する多面柱体形状に形成し、その両端部中央を軸支して広告表示体を回転させることにより、表示面を切り替えことができるようにしたエスカレータの踏段を得る。
【解決手段】エスカレータの踏段の垂直面4に広告表示体6を備えたものにおいて、広告表字体6は、複数の表示面を有する多面柱体形状からなり、その両端部中央には、踏段の両側部の軸受部に回転可能に取り付けられる軸9を有する。また、広告表示体の踏段の垂直面に対向する面には、表示体表面を開閉自在に覆う透明の表面カバー8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレータの踏段、特に広告表示機能付きの踏段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の広告表示機能付きのエスカレータの踏段として、移動ステップの鉛直側壁(ライザ)部分に広告表示体を備えたものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−261276号公報
【特許文献2】登録実用新案第3007407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の広告表示機能付きのエスカレータの踏段では、それぞれの踏段には一つの広告表示しか入れることができないため、他の広告に替える必要がある場合は、カバーを外して広告表示を一つ一つ入れ替えなければならないという問題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、踏段の広告表示体部分を複数の表示面を有する多面柱体形状に形成し、その両端部中央を軸支して広告表示体を回転させることにより、表示面を切り替えることができるように構成したエスカレータの踏段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエスカレータの踏段においては、エスカレータの踏段の垂直面に広告表示体を備えたものにおいて、広告表字体は、複数の表示面を有する多面柱体形状からなり、その両端部中央には、踏段の両側部の軸受部に回転可能に取り付けられる軸を有するものである。また、広告表示体の踏段の垂直面に対向する面には、表示体表面を開閉自在に覆う透明の表面カバーを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、踏段の広告表示体部分を複数の表示面を有する多面柱体形状に形成し、その両端部中央を軸支して広告表示体を回転させることにより、表示面を切り替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエスカレータの踏段を備えたエスカレータを下階乗降部より見た部分斜視図、図2はこの発明の実施の形態1におけるエスカレータの踏段を示す断面図、図3はこの発明の実施の形態1におけるエスカレータの踏段を示す広告表示体部分を取り除いた斜視図、図4は広告表示体のある面の表面カバーを開いた状態を示す要部断面図、図5は広告表示体を回転して他の表示面に切り替え中の状態を示す要部断面図、図6は多面柱体からなる広告表示体の回転ロック装置を示す要部断面図、図7は多面柱体からなる広告表示体の回転ロック装置を外した状態を示す要部断面図、図8は広告表示体の表面カバーのロック装置を示す図である。
【0009】
図において、1はエスカレータ、2は欄干基部、3は移動手摺、4は踏段の垂直面(ライザ)、5は踏段の上面(ステップ面)、6は複数の表示面を有する多面柱体形状(ここでは三面柱体形状)からなる広告表示体、7は複数の表示面となる透明の表示体フレーム、7aは表示体フレーム7の端部に設けられた軸ピン、8は表示体フレーム7表面を覆う透明の表面カバーで、下端部が軸ピン7aにより回動可能に軸支されている。8aは透明の表面カバー8の上端部に水平方向に設けられた連結枠、8bは連結枠8aの両側端部上面に設けられた止め穴板、8cはこの止め穴板8bと対向するように広告表示体6側に備えられたロックピン、8dはこのロックピン8cが係脱するように止め穴板8bに設けられたくわえ溝、8eは連結枠8aの中央部前面に設けられたピン、8fはこのピン8eに連結して設けられた鍵穴付き軸、8gは連結枠8aの両側端部前面に設けられた長穴、8hは透明の表面カバー8の上端両側部に設けられたガイド押さえ兼押さえピンで、長穴8gと係合している。9は多面柱体形状からなる広告表示体6の両端部に設けられた軸で、広告表示体6を回動可能に支持する。10は広告表示体6内に設けられた直管状の照明ランプ、10aは照明ランプ10の背面側に設けられた反射板、10bはこの反射板10aの下端部に設けられたおもり支持腕、10cはこのおもり支持腕10bの先端部に設けられたおもり、11は踏段両側部に設けられたボス部で、軸9を回動可能に支持する。12は踏段ローラ、13はロック平棒、13aはこのロック平棒13と対向するように広告表示体6側に備えられた嵌め込み穴で、ロック平棒13を嵌め込み穴13aから外すことにより、広告表示体6を回転させて表示面を切り替えることができる。14は軸、15はリンク、16は鍵付き軸ピン、16aは広告表示体6の回転を防止するロック装置専用の鍵、17は軸ピン、18は連結棒、19は隔て装置、20は取付金具、20aは戻しばね、21はカム、22は凸部、22aは矩形の通し穴、23は透明の表面カバー8の開閉専用の鍵である。
【0010】
そして、エスカレータの踏段に多面柱体形状からなる広告表示体6を回動可能に軸支している。広告表示体6は多面柱の各面(三面)に異なる広告表示あるいは注意書を入れることができる面を備え、その面は踏段垂直面(ライザ)4に面一となる。踏段には、多面柱体の回転防止のためのロック装置(ロック平棒13、嵌め込み穴13a、軸14、リンク15、鍵付き軸ピン16、軸ピン17、連結棒18、隔て装置19、取付金具20、戻しばね20a、カム21、凸部22、矩形の通し穴22a等)を備えており、このロック装置の解除は専用の鍵16aによりロック装置のリンク15を回転させて、ロック平棒13を広告表示体6の多面柱体の嵌め込み穴13aから外すことにより広告表示体6を回転させることができ、表示面を切り替えることができる。また、表示体フレーム表面の透明の表面カバー8の開閉も専用の鍵23により両側のロック装置(連結枠8a、止め穴板8b、ロックピン8c、くわえ溝8d、ピン8e、鍵穴付き軸8f、長穴8g、ガイド押さえ兼押さえピン8h等)を同時に開放させることができ、これにより広告表示や注意書の入れ替えができる。
また、広告表示体6の中心には直管状の照明ランプ10を備えることができ、反射板10aは両端を軸支し、反射板10aの下端部におもり10cを吊り下げることで常に往路側の踏段の垂直面(ライザ)の表示を照らすことができる。
【0011】
この実施の形態1によれば、ロック装置の鍵は片方のリンクに備えられているが、踏段の両側のロック装置は連結棒18で連動し、同時に両側のロックが掛かるので、踏段や表示体の変形で外れる恐れはない。また、多面柱体の広告表示体6の回転位置が正規の位置からずれているときには、隔て装置19のカム21が多面柱体の頂点に乗らないため、隔て装置19が下がるので、矩形の通し穴22aの上に連結棒18の凸部22が引っ掛り、連結棒18が引けず、ロック装置が作動できないようにしている。このため広告表示体6のロック忘れの心配がない。また、表示体の透明の表面カバー8も図8に示すように、連結枠8aとくわえ溝8dとピンと鍵を組み合わせて、両側のロック装置が同時に掛かるので、薄板からなる透明の表面カバー8が変形しても同時に両側のロックが外れることはない。また、多面柱体の広告表示体の回転ロックと透明の表面カバーのロックは、専用の鍵で開閉するので、一般の乗客によりいたずらなどで開閉することはない。また、図示を省略しているが、いずれかの鍵を挿入すると、スイッチが動作して自動的にエスカレータの運転を停止する制御がなされ、監視盤に広告切り替え作業中であるとの表示が出るように構成し、広告切り替え作業中の問題点を解決することができる。
【0012】
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2におけるエスカレータの踏段を示す要部断面図、図10はこの発明の実施の形態2におけるエスカレータの踏段を示す図6相当図、図11は目視確認をしながら手元の遠隔操作盤で広告表示体を回転駆動させ表示面を切り替え中の状態を示すエスカレータの斜視図である。なお、図中、実施の形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0013】
図において、24はウオームホイルギヤー、25はウオームギヤー、26は減速機付きモータ、27は位置決めカム、27aはカム27の位置決め凹部、28は3段階の表示面確認カム、29は位置確認スイッチ、30は位置決めスイッチ、30aは軸受、31はモータ、31aは取付ピン、31bはねじ付きモータ軸、32は連結棒にピン支持したナット、33は携帯型遠隔操作盤、34は携帯型遠隔操作盤33を持ってエスカレータ踏段を目視確認している作業員である。
この実施の形態2においては、実施の形態1の多面柱体からなる広告表示体6の回転固定ロックを遠隔操作で外し、多面体柱をモータ駆動装置で回転させ、広告表示面を切り替えできるようにしたものである。
しかし、エスカレータの移動踏段は、相互の踏段と複雑な動きをするため、作業員34がエスカレータの前に立って目視確認ができて相互の踏段と重ならない位置、つまりエスカレータの往路側の傾斜面に位置する踏段、例えば全踏段の1/3毎に区切ってそれぞれの踏段位置に移動させて切り替えできるように切り替え作業の制御をパターン化するのが望ましい。
また目視確認して切り替えすることで、確実に切り替えとロック装置が動作しているかを見届け、不確実な回転位置による不具合が起こらないように配慮することができる。
また、広告表示面を切り替えることで、建物の時間帯により広告表示を替えられるので、エスカレータの付加価値を高めることができる。
なお、三面柱体に限らず、他の多面体でも同様の効果が期待できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエスカレータの踏段を備えたエスカレータを下階乗降部より見た部分斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエスカレータの踏段を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエスカレータの踏段を示す広告表示体部分を取り除いた斜視図である。
【図4】広告表示体のある面の表面カバーを開いた状態を示す要部断面図である。
【図5】広告表示体を回転して他の表示面に切り替え中の状態を示す要部断面図である。
【図6】多面柱体からなる広告表示体の回転ロック装置を示す要部断面図である。
【図7】多面柱体からなる広告表示体の回転ロック装置を外した状態を示す要部断面図である。
【図8】広告表示体の表面カバーのロック装置を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態2におけるエスカレータの踏段を示す要部断面図である。
【図10】この発明の実施の形態2におけるエスカレータの踏段を示す図6相当図である。
【図11】目視確認をしながら手元の遠隔操作盤で広告表示体を回転駆動させ表示面を切り替え中の状態を示すエスカレータの斜視図である。
【符号の説明】
【0015】
1 エスカレータ
2 欄干基部
3 移動手摺
4 踏段の垂直面(ライザ)
5 踏段の上面(ステップ面)
6 広告表示体
7 表示体フレーム
7a 軸ピン
8 表示体表面の透明カバー
8a 連結枠
8b 止め穴板
8c ロックピン
8d くわえ溝
8e ピン
8f 鍵穴付き軸
8g 長穴
8h ガイド押さえ兼押さえピン
9 軸
10 照明ランプ
10a 反射板
10b おもり支持腕
10c おもり
11 ボス部
12 踏段ローラ
13 ロック平棒
13a 嵌め込み穴
14 軸
15 リンク
16 鍵付き軸ピン
16a 鍵
17 軸ピン
18 連結棒
19 隔て装置
20 取付金具
20a 戻しばね
21 カム
22 凸部
22a 矩形の通し穴
23 鍵
24 ウオームホイルギヤー
25 ウオームギヤー
26 減速機付きモータ
27 位置決めカム
27a 位置決め凹部
28 表示面確認カム
29 位置確認スイッチ
30 位置決めスイッチ
30a 軸受
31モータ
31a 取付ピン
31b ねじ付きモータ軸
32 ナット
33 携帯型遠隔操作盤
34 作業員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータの踏段の垂直面に広告表示体を備えたエスカレータの踏段において、
前記広告表字体は、複数の表示面を有する多面柱体形状からなり、その両端部中央には、前記踏段の両側部の軸受部に回転可能に取り付けられる軸を有することを特徴とするエスカレータの踏段。
【請求項2】
多面柱体形状からなる広告表示体の回転位置を固定するロック装置は、踏段の両側部に設けられたリンク、軸、ピン、ロック棒と、広告表示体側に設けられたロック棒が嵌め込まれる嵌め込み穴とからなり、それぞれが連結棒で連結され、鍵で両側のロック装置を同時に外すことができることを特徴とする請求項1記載のエスカレータの踏段。
【請求項3】
エスカレータの踏段の垂直面に広告表示体を備えたエスカレータの踏段において、
前記広告表字体は、複数の表示面を有する多面柱体形状からなり、その両端部中央には、前記踏段の両側部の軸受部に回転可能に取り付けられる軸を有し、前記広告表示体の前記踏段の垂直面に対向する面には、表示体表面を開閉自在に覆う透明の表面カバーを備えたことを特徴とするエスカレータの踏段。
【請求項4】
表面カバーの開閉ロック装置は、連結枠と、くわえ溝と、ピンとを備え、鍵で両側を同時にロックできることを特徴とする請求項3記載のエスカレータの踏段。
【請求項5】
ロック装置は、鍵を入れることでスイッチを動作してエスカレータの運転を自動的に停止することを特徴とする請求項2又は請求項4記載のエスカレータの踏段。
【請求項6】
エスカレータの踏段の垂直面に広告表示体を備えたエスカレータの踏段において、
前記広告表字体は、複数の表示面を有する多面柱体形状からなり、その両端部中央には、前記踏段の両側部の軸受部に回転可能に取り付けられる軸を有し、前記広告表示体の前記踏段の垂直面に対向する面には、表示体表面を開閉自在に覆う透明の表面カバーを備え、前記広告表示体を背面から照明する照明体とそれを反射する反射板とを備え、前記反射板に軸とおもりを備えることにより、前記反射板が一定方向へ向けられるように構成したことを特徴とするエスカレータの踏段。
【請求項7】
多面柱体形状からなる広告表示体の回転位置を固定するロック装置は、携帯型遠隔操作盤を備え、前記多面柱体の広告表示体の回転は、位置確認カムと表示面確認カムとスイッチとモータ駆動装置を備え、遠隔操作により多面柱体の表示面を回転切り替えができるように構成したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のエスカレータの踏段。
【請求項8】
多面柱体形状からなる広告表示体は、三面柱体形状であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のエスカレータの踏段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−161450(P2007−161450A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362208(P2005−362208)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】