説明

エスカレータ保守用冶具

【課題】より簡便に保守作業を行うことができるエスカレータ保守用冶具を提供することである。
【解決手段】ランディングプレート部の少なくとも一部を開いてトラス58内で保守作業を行う際に使用されるエスカレータ保守用冶具10であって、ステップ軸43を支える支持部18と、トラス58内の床面60からの支持部18の高さ位置を調整する位置調整部16と、位置調整部16を保持するための保持部12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータ保守用冶具に係り、特に、ランディングプレート部の少なくとも一部を開いてトラス内で保守作業を行う際に使用されるエスカレータ保守用冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商業施設等の様々な場所においてエスカレータが設置されている。高揚程のエスカレータ等においては、各ステップを駆動するためのステップチェーンの代わりに、1ステップ毎の伸び量が小さいステップリンクが用いられている。エスカレータの乗降口付近では、ステップが水平状態となり、それ以外の部分ではステップが階段状態となっている。また、ステップは、乗降口に到着した後はトラスの内部側を移動するが、湾曲したインナーレールとアウターレールによって形成されたターンマッチ部によって軌道の反転動作が行われる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−63768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エスカレータの保守点検作業の1つとして、ランディングプレート部の少なくとも一部を開いて、保守作業員がトラス内に入ってインナーレールやアウターレール等の部品を取り替える場合がある。このとき、ステップ軸の位置がずれてしまうと、インナーレールやアウターレールを再度取り付けるときにインナーレールやアウターレールとステップ軸の両端に設けられた駆動ローラとの位置関係の調整に時間を要することがある。
【0005】
本発明の目的は、より簡便に保守作業を行うことができるエスカレータ保守用冶具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエスカレータ保守用冶具は、ランディングプレート部の少なくとも一部を開いてトラス内で保守作業を行う際に使用されるエスカレータ保守用冶具であって、ステップ軸を支える支持部と、トラス内の床面からの支持部の高さ位置を調整する位置調整部と、位置調整部を保持するための保持部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るエスカレータ保守用冶具において、保持部は、ランディングプレート部に形成された開口に架けて設けられた保持板であることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係るエスカレータ保守用冶具において、支持部は、ステップ軸を吊り下げるフックを含んで構成されることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るエスカレータ保守用冶具において、支持部は、ステップ軸を吊り下げる布地を含んで構成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るエスカレータ保守用冶具において、位置調整部は、支持部に接続された接続部材と、接続部材を巻き上げる巻上機とを含んで構成されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエスカレータ保守用冶具において、巻上機は、電動モータを含んで構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成のエスカレータ保守用冶具によれば、エスカレータの保守作業において、トラス内の床面からのステップ軸の位置を調整して、ステップ軸を支持することができる。これにより、保守作業において、一度取り外したインナーレールやアウターレールを再度取り付けるときに、より簡便に取り付け作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下ではステップリンクによりステップを連結している高揚程エスカレータについて説明するが、ステップチェーンによりステップを連結しているエスカレータであってもよい。また、この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【0014】
図1は、エスカレータ保守用冶具10をエスカレータ7に設置している様子を示す図である。エスカレータ7は、移動手摺32と、内側板36と、スカートガード34と、ランディングプレート38と、トラス58を含んで構成される。
【0015】
移動手摺32は、乗客が手を添え、または掴まる部分である。内側板36は、移動手摺32の下部に設けられたステップの側面のパネルである。スカートガード34は、内側板36の下部に設けられ、ステップの側面とわずかな隙間を保って相対しているパネルである。ランディングプレート38は、乗降口の床板のことで、表面には滑り止め加工が施されている。また、保守作業員は、ランディングプレート38の一部を開いて形成される開口38aからトラス58内に出入りして保守作業を行うが、このとき開口38aにエスカレータ保守用冶具10が設けられる。なお、エスカレータ保守用冶具10については後述する。
【0016】
トラス58内には、ステップ軸43や駆動ローラ44等が設けられている。ステップ軸43は、図示しないステップを支える軸である。駆動ローラ44は、ステップ軸43の両端に設けられ、ステップを駆動するためのローラである。ステップリンク42は、可動部がステップ軸43毎に1箇所となるステップ軸43の連結部材である。往路側駆動レール46は、駆動ローラ44を案内する往路側のレールである。帰路側駆動レール54は、駆動ローラ44を案内する帰路側のレールである。追従レール40は、図示しない追従ローラを支えるレールである。
【0017】
インナーレール48は、往路側駆動レール46の先端部に設けられる湾曲したレールである。連結部47は、インナーレール48と往路側駆動レール46とを連結する連結具である。アウターレール56は、帰路側駆動レール54の先端部に設けられる湾曲したレールであり、インナーレール48の外側に配置される。連結部57は、アウターレール56と帰路側駆動レール54とを連結する連結具である。また、インナーレール48とアウターレール56とは連結部材50によって連結される。ここで、インナーレール48とアウターレール56とを含んで構成されるターンマッチ部によって、駆動ローラ44は、往路側駆動レール46から帰路側駆動レール54に切り替わって移動する。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態のエスカレータ保守用冶具10の斜視図である。エスカレータ保守用冶具10は、保持部12と、位置調整部16と、支持部18とを含んで構成される。
【0019】
保持部12は、ランディングプレート38の一部を開いて形成された開口38aに架設されるような長さLを有し、これにより保持部12の端部が開口38aの端部と係合する。保持部12は、適当な強度を有する材料、例えば、ステンレスを用いて構成される。保持部12は、ランディングプレート38の半分程度の幅Wを有する。なお、保持部12は、適当な強度を有する保持板であるものとして説明するが、位置調整部16を保持できるものあればよく、例えば、適当な重量を有する錘からなりランディングプレート38近傍に設置されるものであってもよい。
【0020】
位置調整部16は、固定部材13と、巻上機14と、接続部材15とを含んで構成される。固定部材13は、保持部12の中心から鉛直方向に延伸している部材であり、保持部12と巻上機14とを接続する。
【0021】
接続部材15は、トラス58内の床面60からの開口38aまでの高さ以上の長さを有するチェーンである。支持部18は、接続部材15の一方端に取り付けられたフックである。巻上機14は、接続部材15の他方端から接続部材15を巻き上げて支持部18のトラス58内の床面60からの高さ位置を調整する電動式モータである。巻上機14への電力は、図示しない電源から供給される。なお、巻上機14は、電動式モータで接続部材15を巻き上げるものとして説明するが、手動で巻き上げる機構であってもよい。
【0022】
続いて、上記構成からなるエスカレータ保守用冶具10の動作について図1,図2を参照して説明する。エスカレータ7において、保守作業員がトラス58内で保守作業を行う必要がある。具体的には、連結部材50や連結部47,57を取り外し、インナーレール48やアウターレール56を交換する等の作業を行う場合がある。ここで、エスカレータ保守用冶具10の保持部12を開口38aに架設した後、支持部18がステップ軸43を支持するように、トラス58内の床面60からの高さ位置を位置調整部16によって調整する。
【0023】
このように、支持部18がステップ軸43を支持している状態にしてから、連結部材50や連結部47,57を取り外してインナーレール48やアウターレール56を交換する。そして、ステップ軸43の高さ位置を調整することなく、再度インナーレール48やアウターレール56を取り付けることができる。これにより、保守作業において、一度取り外したインナーレール48とアウターレール56と再度取り付けるときに、より簡便に取り付け作業を行うことができる。
【0024】
次に、図3〜図5を参照して上記の一実施形態の変形例であるエスカレータ保守用冶具11について説明する。図3は、エスカレータ保守用冶具11(支持部20が支持できない状態)の斜視図である。図4は、支持部20の固定部26の拡大図である。図5は、エスカレータ保守用冶具11(支持部20が支持できる状態である)の斜視図である。ここで、上記一実施形態のエスカレータ保守用冶具10とほぼ同様の構成を有するため、同一構成要素には同一符号を付して重複することとなる説明を援用によって省略し、異なる構成およびその作用について説明する。エスカレータ保守用冶具11とエスカレータ保守用冶具10との相違は、支持部20である。
【0025】
支持部20は、リング部22と、布部24と、固定部26とを含んで構成される。リング部22は、例えば、ステンレス等の適当な強度を有するリング形状の部材であり、接続部材15の先端部に取り付けられる。布部24は、例えば、キャンバス地等の適当な強度を有する布地であり、一端がリング部22に取り付けられ、他端が固定部26に取り付けられる。
【0026】
固定部26は、略C字形状を有する第1固定部262と、矢印A方向あるいは矢印A方向と反対方向に回動する第2固定部266と、第2固定部266を矢印A方向と反対方向に回動させるような付勢力を有する付勢バネを含む回動軸部264とを含んで構成される。ここで、回動軸部264の付勢力によって、第2固定部266は矢印A方向と反対方向に回動するが、図4に示されるように第1固定部262の先端部262aに当接するとそれ以上回動することはない。
【0027】
続いて、上記構成からなるエスカレータ保守用冶具11の動作について図3〜図5を参照して説明する。エスカレータ7において、保守作業員がトラス58内で保守作業を行うときは、ステップ軸43をくるむように布部24を曲げた後、固定部26の第2固定部266を矢印A方向に回動させて、図5に示されるようにリング部22と噛み合わせる。そして、位置調整部16によって、支持部20がステップ軸43を支持するように、トラス58内の床面60からの高さ位置を調整する。
【0028】
これにより、保守作業において、一度取り外したインナーレール48とアウターレール56と再度取り付けるときに、より簡便に取り付け作業を行うことができる。さらに、支持部20の布部24は、布地で構成されているため、ステップ軸43を傷つけることなく支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態のエスカレータ保守用冶具をエスカレータに設置している様子を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態のエスカレータ保守用冶具の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態の変形例であるエスカレータ保守用冶具(支持部が支持できない状態)の斜視図である。
【図4】支持部の固定部の拡大図である。
【図5】本発明の一実施形態の変形例であるエスカレータ保守用冶具(支持部が支持できる状態である)の斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
7 エスカレータ、10,11 エスカレータ保守用冶具、12 保持部、13 固定部材、14 巻上機、15 接続部材、16 位置調整部、18,20 支持部、22 リング部、24 布部、26 固定部、32 移動手摺、34 スカートガード、36 内側板、38 ランディングプレート、38a 開口、40 追従レール、42 ステップリンク、43 ステップ軸、44 駆動ローラ、46 往路側駆動レール、47,57 連結部、48 インナーレール、50 連結部材、54 帰路側駆動レール、56 アウターレール、58 トラス、60 床面、262 第1固定部、262a 先端部、264 回動軸部、266 第2固定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランディングプレート部の少なくとも一部を開いてトラス内で保守作業を行う際に使用されるエスカレータ保守用冶具であって、
ステップ軸を支える支持部と、
トラス内の床面からの支持部の高さ位置を調整する位置調整部と、
位置調整部を保持するための保持部と、
を備えることを特徴とするエスカレータ保守用冶具。
【請求項2】
請求項1に記載のエスカレータ保守用冶具において、
保持部は、
ランディングプレート部に形成された開口に架けて設けられた保持板であることを特徴とするエスカレータ保守用冶具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエスカレータ保守用冶具において、
支持部は、
ステップ軸を吊り下げるフックを含んで構成されることを特徴とするエスカレータ保守用冶具。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のエスカレータ保守用冶具において、
支持部は、
ステップ軸を吊り下げる布地を含んで構成されることを特徴とするエスカレータ保守用冶具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載のエスカレータ保守用冶具において、
位置調整部は、
支持部に接続された接続部材と、
接続部材を巻き上げる巻上機とを含んで構成されることを特徴とするエスカレータ保守用冶具。
【請求項6】
請求項5に記載のエスカレータ保守用冶具において、
巻上機は、
電動モータを含んで構成されることを特徴とするエスカレータ保守用冶具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−58893(P2010−58893A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225467(P2008−225467)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】