説明

エスカレータ移動踏み段およびエスカレータ

【課題】移動踏み段上の抗菌、汚れ付着防止、洗浄の容易化を行うことが可能なエスカレータ移動踏み段およびエスカレータを提供する。
【解決手段】光触媒が乗降面に塗布されたことを特徴とするエスカレータ移動踏み段1が提供される。また、光触媒が乗降面5に塗布されたエスカレータ移動踏み段1と、エスカレータ移動踏み段1がその表面を下に向けた状態で移動する構造物内に設置され、乗降面5に対して紫外線を照射する光源2とを有することを特徴とするエスカレータ10が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータ移動踏み段およびエスカレータに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、エスカレータの移動踏み段の乗降面は、櫛状の溝を有しており、エスカレータの利用者から落下した埃や塵、機械の潤滑に必要な潤滑油が付着しているが、清掃する方法として、作業員がその溝一本一本をブラシでかき出したり、ウェスなどで拭き取ったりしている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−328786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記清掃方法では、櫛状の溝を一本一本作業員が、屈んだ体勢で長時間手で清掃を行うため、肉体的苦痛を伴うという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、移動踏み段上の抗菌、汚れ付着防止、または清掃の容易化を行うことが可能なエスカレータ移動踏み段およびエスカレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点によれば、光触媒が乗降面に塗布されたことを特徴とするエスカレータ移動踏み段が提供される。
【0007】
本発明の第2の観点によれば、光触媒が乗降面に塗布されたエスカレータ移動踏み段と、上記エスカレータ移動踏み段が移動する復路を構成する構造物内に設置され、上記乗降面に対して紫外線を照射する光源とを有することを特徴とするエスカレータが提供される。
【0008】
本発明の第3の観点によれば、光触媒が乗降面に塗布されたエスカレータ移動踏み段を有し、上記エスカレータ移動踏み段は、室内照明用の照明装置から発せられる紫外線が上記乗降面に対して照射されるように設置されていることを特徴とするエスカレータが提供される。
【0009】
本発明の第4の観点によれば、光触媒が乗降面に塗布されたエスカレータ移動踏み段を有し、上記エスカレータ移動踏み段は、太陽光が上記乗降面に対して照射されるように設置されていることを特徴とするエスカレータが提供される。
【0010】
上記エスカレータは、上記エスカレータ移動踏み段の乗降面を清掃する清掃手段を有してもよい。
【0011】
上記エスカレータは、上記エスカレータ移動踏み段の乗降面に対して水を噴霧する水噴霧手段を有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、エスカレータ移動踏み段およびエスカレータにおいて、移動踏み段上の抗菌、汚れ付着防止、または清掃の容易化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるエスカレータ10の構成を示す全体図である。エスカレータ10は、無端状に連結され駆動される乗客運搬用の移動踏み段1と、当該移動踏み段1と連動する移動手摺り12と、踏段1の反転動作が行われる上部機械室14および下部機械室15と、各移動踏み段1が移動する復路を構成するエスカレータトラス13とを備える。ここで、復路とは、移動踏み段1に人が乗降する区間を往路と言うのに対して、移動踏み段1に人が乗降しない区間を言う。
【0015】
エスカレータ10は、通常、駆動装置11が上部機械室14に設置されていて、上部機械室14内における移動踏み段1の駆動方向が下向きであれば上りエスカレータ、上向きであれば下りエスカレータとなる。
【0016】
図2は、エスカレータ10に使用されている移動踏み段1の断面拡大図である。図2に示すように、移動踏み段1の乗降面5には櫛状の溝が設けられている。なお、本実施形態では、移動踏み段1の乗降面5には予め光触媒(例えば、酸化チタン)が塗布されている。
【0017】
エスカレータトラス13内には、移動踏み段1の乗降面5に対して紫外線を発光する光源2(例えば、ランプ、発光ダイオード等)が下階から上階に続く斜面に一定間隔を置いて設けられている。また、移動踏み段1の表面を清掃する清掃手段として、清掃ブラシ3が上下階の機械室内に設けられている。また、移動踏み段1の乗降面5に対して水を噴霧する水噴霧手段として、電動式水噴霧器4が下部機械室15内の清掃ブラシ3付近に設けられている。
【0018】
電動式水噴霧器4が下部機械室15内のみに設けられている理由は、上部機械室14内には動力電源盤(図示せず)や、制御盤(図示せず)が集中し、そこに電動式水噴霧器4が設けられると、動力電源盤、制御盤に水が掛かることによって漏電する可能性が考えられるためである。
【0019】
もし動力電源盤や、制御盤に対して防水対策が実施されていれば、上部機械室14内にも電動式水噴霧器4が設けられてよい。清掃ブラシ3については、上記のような問題がないため、上下階の機械室内に設けられている。
【0020】
(動作)
図3は、第1の実施形態にかかるエスカレータ10の動作フロー図である。
【0021】
ステップS10では、エスカレータ10の運転が開始される。運転開始後、移動踏み段1の乗降面5に、機械潤滑に必要な油や、乗降者に付着した埃やゴミが付着する。
【0022】
ステップS20では、エスカレータトラス13内に設置された紫外線を発光する光源2が点灯される。ここで、光源2の点灯時間は、ユーザが任意の時間を設定することができる。
【0023】
以上の動作によって、エスカレータ10が運転し、移動踏み段1がエスカレータトラス13内の光源2上を移動することで、移動踏み段1の乗降面5に紫外線が照射される。光触媒が塗布された移動踏み段1に紫外線が照射されると、光触媒の活性化作用により移動踏み段1の乗降面5の抗菌、汚れ付着防止が行われ、移動踏み段1の乗降面5の汚れが落ちやすくなる。
【0024】
ステップS30では、電動式水噴霧器4のタイマー動作が開始される。
【0025】
ステップS40では、電動式水噴霧器4は、任意に設定されたタイマー起動時間になったか否かを判断する。もしタイマー起動時間になったと判断した場合、処理はステップS50に遷移する。もしタイマー起動時間になっていないと判断した場合、処理はステップS40に遷移する。
【0026】
ステップS50では、電動式水噴霧器4から移動踏み段1の乗降面5に対して水が噴霧される。そして、移動踏み段1の乗降面5に塗布された光触媒が、光源2によって発光された紫外線と反応することによって、乗降面5の汚れの下に噴霧された水が入り込み、汚れが浮き上がることにより、光触媒に紫外線を照射したのみの場合と比べて、抗菌および汚れ付着防止がより促される。次に、処理はステップS30に遷移する。
【0027】
また、本実施形態では、清掃ブラシ3が設けられていることによってエスカレータ10を稼動しながら移動踏み段1の乗降面5が清掃される。特に、電動式水噴霧器4から移動踏み段1の乗降面5に対して水が噴霧されて汚れが浮き上がったところを清掃ブラシ3でその汚れをかき出すことで、移動踏み段1の乗降面5の清掃効果が一層向上する。
【0028】
なお、上記説明では、光触媒として酸化チタンを例示したが、当該光触媒は、他の態様であってもよい。
【0029】
また、上記説明では、移動踏み段の溝の形状として櫛状を例示したが、当該移動踏み段の溝の形状は他の態様であってもよい。
【0030】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態にかかるエスカレータの全体図である。第1の実施形態と同一部分は説明を省略する。
【0031】
エスカレータ10は、例えば、デパート等建築物内に設置されており、エスカレータ10が設置されている場所における天井7に室内照明用の照明装置8が設置されている。照明装置8は、例えば、蛍光ランプや白熱球等、紫外線を発光する照明器具が好ましい。本実施形態では、紫外線を発光する光源はエスカレータトラス13内に設けられていない。
【0032】
(動作)
エスカレータ10の動作において第1の実施形態と異なる点は、エスカレータトラス13内に紫外線を発光する光源を設けずに、光触媒が塗布された移動踏み段1の乗降面5に対して、照明装置8から照射される紫外線を利用して、移動踏み段1の乗降面5の抗菌、汚れ付着防止を行う点である。
【0033】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態にかかるエスカレータの全体図である。第1の実施形態と同一部分は説明を省略する。
【0034】
エスカレータの移動踏み段1は、太陽光が乗降面5に対して照射されるように設置されている。本実施形態では、エスカレータ10は、屋外に設置されており、太陽9が発光する紫外線が移動踏み段1の乗降面5の清浄化に利用される。また、紫外線を発光する光源はエスカレータトラス13内に設けられていない。
【0035】
(動作)
エスカレータ10の動作において第1の実施形態と異なる点は、エスカレータトラス13内に紫外線を発光する光源を設けずに、光触媒が塗布された移動踏み段1の乗降面5に対して、太陽9から照射される紫外線を利用して、移動踏み段1の乗降面5の抗菌、汚れ付着防止を行う点である。
【0036】
(第1の実施形態の効果)
本実施形態によれば、光触媒が乗降面5に塗布されたエスカレータ移動踏み段1が提供される。
【0037】
この構成によれば、乗降面5に塗布された光触媒に紫外線を照射させることによって光触媒を活性化し、乗降面5の抗菌または汚れ付着防止を行なうことができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、エスカレータ10は、光触媒が乗降面5に塗布されたエスカレータ移動踏み段1と、エスカレータ移動踏み段1が移動する復路を構成する構造物内に設置され、乗降面5に対して紫外線を照射する光源2とを有する。
【0039】
この構成によれば、光触媒の活性化作用により、エスカレータ10の移動踏み段1の乗降面5の抗菌または汚れ付着防止を行なうことができる。また、光源2から発光される紫外線は乗降者に照射されないので、光触媒の活性化作用を強めるために紫外線の量を多くすることができる。
【0040】
具体的には、清掃ブラシ3や電動式水噴霧器4を設置していない場合でも、作業員等は、移動踏み段1の乗降面5に水を噴霧したり、移動踏み段1の乗降面5をたわしやモップ等で掃除することで、容易に移動踏み段1の乗降面5の清掃をすることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、エスカレータ10は、さらに移動踏み段1の乗降面5を清掃する清掃ブラシ3を有する。この構成によれば、エスカレータ10を運転しながら移動踏み段1の乗降面5を清掃することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、エスカレータ10は、さらに移動踏み段1の乗降面5に対して水を噴霧する電動式水噴霧器4を有する。
【0043】
この構成によれば、水を噴霧された移動踏み段1の乗降面5に塗布された光触媒が、光源2によって発行された紫外線と反応することにより、水が乗降面5上の汚れの下に入り込み、その汚れが浮き上がる。つまり、上記光触媒の反応により、移動踏み段1の乗降面5に付着した汚れが落とし易くなり、作業員の清掃時間の短縮や、作業員の負担軽減につなげることができる。
【0044】
(第2の実施形態の効果)
本実施形態によれば、エスカレータ10には、光触媒が乗降面5に塗布された移動踏み段1を有し、移動踏み段1は、室内照明用の照明装置8から発せられる紫外線が乗降面5に対して照射されるように設置されている。
【0045】
この構成によれば、照明装置8から照射される紫外線を利用することによって光触媒の活性化作用を促進させ、エスカレータ10の移動踏み段1の乗降面5の抗菌または汚れ付着防止を行なうことができる。また、第1の実施形態のように、エスカレータトラス13内に移動踏み段1の乗降面5に対して紫外線を照射する光源を新たに設ける必要がなくなる。
【0046】
(第3の実施形態の効果)
本実施形態によれば、エスカレータ10には、光触媒が乗降面5に塗布された移動踏み段1を有し、エスカレータ移動踏み段1は、太陽光が乗降面5に対して照射されるように設置されている。
【0047】
この構成によれば、太陽9から照射される紫外線を利用することによって光触媒の活性化作用を促進させ、エスカレータ10の移動踏み段1の乗降面5の抗菌または汚れ付着防止を行なうことができる。また、第1の実施形態のようにエスカレータトラス13内に乗降面に対して紫外線を照射する光源を新たに設ける必要がなくなる。
【0048】
また、エスカレータ10は、屋外に設置されているので、雨が降ることで移動踏み段1の乗降面5に対して水を噴霧する電動式水噴霧器が設置されている場合と同様の効果が得られる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるエスカレータを示す全体図である。
【図2】エスカレータに使用されている移動踏み段の断面拡大図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかるエスカレータの動作フロー図である。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかるエスカレータを示す全体図である。
【図5】本発明の第3の実施形態にかかるエスカレータを示す全体図である。
【符号の説明】
【0051】
1 移動踏み段、2 光源、3 清掃ブラシ、4 電動式水噴霧器、5 乗降面、6 裏面、8 照明装置、9 太陽、10 エスカレータ、13 エスカレータトラス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒が乗降面に塗布されたことを特徴とするエスカレータ移動踏み段。
【請求項2】
光触媒が乗降面に塗布されたエスカレータ移動踏み段と、
前記エスカレータ移動踏み段が移動する復路を構成する構造物内に設置され、前記乗降面に対して紫外線を照射する光源と、
を有することを特徴とするエスカレータ。
【請求項3】
光触媒が乗降面に塗布されたエスカレータ移動踏み段を有し、
前記エスカレータ移動踏み段は、室内照明用の照明装置から発せられる紫外線が前記乗降面に対して照射されるように設置されている、
ことを特徴とするエスカレータ。
【請求項4】
光触媒が乗降面に塗布されたエスカレータ移動踏み段を有し、
前記エスカレータ移動踏み段は、太陽光が前記乗降面に対して照射されるように設置されている、
ことを特徴とするエスカレータ。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載のエスカレータにおいて、
前記エスカレータ移動踏み段の乗降面を清掃する清掃手段を、
有することを特徴とするエスカレータ。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のエスカレータにおいて、
前記エスカレータ移動踏み段の乗降面に対して水を噴霧する水噴霧手段を、
有することを特徴とするエスカレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−302430(P2007−302430A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133440(P2006−133440)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】