説明

エステルで予備鎖延長したエポキシ末端増粘剤およびその製造方法

本発明は増粘剤、特に官能性末端基を有する末端基含有ポリマーに関するものであり、前記ポリマーは、ポリオールによって予備鎖延長されており、反応によって別の官能基を末端に有するポリマーを与える。この増粘剤は、組成物の特性を低下させる遊離体または遊離体派生物を低い含量でしか含まない。これらは、高分子量付加生成物の形成がかなり低減されるかまたは排除されていて、このため得られる生成物が低粘度であり且つ良好な貯蔵安定性を有するという特徴も有する。式(I)のエポキシ末端ポリマーが特に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靭性改良剤(toughness improver)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーはかねてから材料として用いられてきている。しかし、一部のポリマーは、突然の衝撃応力でポリマーマトリクスが壊れる、すなわちその靭性が低い、という問題を有している。特にエポキシ樹脂をベースとするポリマーマトリクスは非常に硬いが、多くの場合、それほど耐衝撃性がない。したがって、その耐衝撃性を向上させる試みが長い間行われてきた。
【0003】
この試みは、これまで、例えば、いわゆる液状ゴムとよばれる特定のコポリマーを用いて行われてきた。化学反応性基、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、ビニル、またはアミノ基を用いることによって、このような液状ゴムをマトリクス中に化学的に組み込むことができる。例えば、かねてから、ヒドロキシル、カルボキシル、ビニル、またはアミノ基を末端に有する反応性液状ゴムのブタジエン/アクリロニトリルコポリマーが存在しており、これはHycar(登録商標)の商品名でB.F.Goodrich社またはNoveon社によって供給されている。これらに用いる出発原料は、常にカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーであり、これに対して大過剰のジアミン、ジエポキシド、またはグリシジル(メタ)アクリレートが通常、添加される。しかし、これにより、一方で高粘度になるという影響がもたらされ、他方では非常に多い量の未転化のジアミン、ジエポキシド、またはグリシジル(メタ)アクリレート(これらは複雑な方法で除去しなければならないか、そうでなければ機械特性に著しい悪影響を及ぼす)という影響がもたらされる。
【0004】
しかし、多くの場合に望まれることは、さらに強化された耐衝撃性を得ることであり、かつより多種多様な靭性改良剤をもつことである。この方向における一つのそのような可能性は、靭性改良剤調製において、ビスフェノール類によってエポキシ末端ポリマーを鎖延長すること、あるいは高分子量エポキシ樹脂を使用することにある。この場合もまた、その反応形態にしたがって、多量の未転化ビスフェノール、または多量の鎖延長されたエポキシ樹脂が生じ、これらの両方とも組成物の特性に悪影響を直ちに及ぼしうる。さらにこのような付加体は急速に、もはや液状ではなくなり、その結果としてそのような靭性改良剤を含む組成物は、多くの場合に、もはや信頼できる方法で適用できなくなる。さらに、ビスフェノール類の使用は、低下した貯蔵安定性をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、従来技術の問題を解決することができる、末端官能基を有する靭性改良剤を提供することである。請求項1、9、11、および12に記載したポリマーは、そのようなポリマーを提供する。これらは全て、請求項9に記載したカルボキシル末端ポリマーから調製でき、これは容易に入手可能なカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーから得ることができる。予めの鎖延長および末端停止のための様々な分子から生じる可能性は、広範囲の様々な靭性改良剤を可能にし、要求に合わせることを可能にする。官能基を末端に有するこれらのポリマーは、それらが、狭い分子量分布を有し、かつ靭性改良剤として好適な分子を非常に高い割合で有するという大きな利点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この利点は、請求項1、11、および12に記載のポリマーの調製の出発点として役立つ請求項9に記載のカルボキシル末端ポリマーの調製方法を通して、特に、請求項15に記載の末端基で末端封鎖されたポリマーを調製するための2つの工程を含む方法を通して生まれる。請求項13に記載した方法は、存在する全ての未転化の反応剤が、既に靭性改良剤として作用する物質のみであることを確実にし、さらにこの物質は、請求項1、11、または12に記載されたポリマーへとさらに導くいずれかの反応工程において反応して反応性靭性改良剤を与える。したがって、機械特性に悪影響を及ぼす化合物が、(それが存在するとしても)ごくわずかな量しか形成されず、それによって非常に効果の高い靭性改良剤が提供され得る。予備鎖延長およびエポキシ末端化から生じる多くの可能性にもかかわらず、このポリマーは驚くほど低い粘度を有する。
【0007】
請求項1、9、11、および12に記載のポリマーは、請求項16に記載したとおり、ポリマーマトリクスの耐衝撃性を高める手段として広く使用できる。特に好ましいのは、エポキシ樹脂マトリクス中でのこれらの使用である。
【0008】
本発明のさらなる側面は、請求項1、9、11、11、または12に記載のポリマーを含む組成物、ならびに請求項22および23に記載の硬化した組成物に関する。
【0009】
特に好ましいのは、このようなポリマーを接着剤、特に熱硬化性エポキシ樹脂接着剤に用いることである。これらは非常に良好な耐衝撃性を有する。
【0010】
本発明の好ましい態様は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第一の側面では、本発明は下記式(I)のエポキシ末端ポリマーに関する。
【化1】

【0012】
上記式中、Rは、カルボキシル末端のブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNから、末端のカルボキシル基を取り除いた後の二価の基である。さらに、Rは、n個のOH基を有するポリオールから、n個のOH基を取り除いた後の残基であり、Yは、Hまたはメチルである。Rは、ジグリシジルエーテルDGEから2つのグリシジルエーテル基を取り除いた後の残基である。最後に、nは2〜4、好ましくは2である。
【0013】
本明細書において「グリシジルエーテル基」は、下記式:
【化2】

を意味し、式中のYがHである場合だけでなく、本明細書では、簡単のために、式中のYがメチルである基をも意味する。
【0014】
より特に、Rは、Noveon社によってHycar(登録商標)CTBNの名称で市販されているカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNのカルボキシル基を形式的に取り除くことによって得られる基である。これは下記式(IV)の構造を有することが好ましい。
【化3】

【0015】
この式中、破線は2つのカルボキシル基の結合部位を表す。Rは、1〜6個の炭素原子を有する、特に4個の炭素原子を有する、直鎖または分岐状のアルキレン基であり、これは任意選択により不飽和基で置換されていてもよい。特に言及すべき態様では、置換基Rは式(VII)の置換基であり、式中、破線はここでも結合部位を表す。
【化4】

【0016】
さらに、指数qは40〜100、特に50〜90である。さらに、標識bおよびcは、ブタジエンに由来する構造要素を表し、aはアクリロニトリルに由来する構造要素を表す。次に、指数x、m、およびpは、構造要素a、b、およびcの互いに対する割合を記述する値を表す。指数xは、0.05〜0.3を表し、指数mは0.5〜0.8を表し、指数pは0.1〜0.2を表し、但しx、m、およびpの合計が1に等しいことを条件とする。
【0017】
当業者には、式(IV)で示される構造および、式(V)、(V’’’)、および(VI’’’)中に示されるさらなる構造も、単純化された表現として理解されるべきであることが明らかである。単位a、bおよびc、またはdおよびe、またはd’およびe’は、したがって、それぞれ互いに、ランダムに、交互に、またはブロックとして配列されていることができる。したがって、より詳細には、式(IV)は、必ずしもトリブロックコポリマーではない。
【0018】
基は、n個のOH基を有するポリオールから、n個のOH基を取り除いた後の残基である。
【0019】
好適なポリオール類は、特に、以下のポリオール類である:
− ポリオキシアルキレンポリオール、これらはポリエーテルポリオールともいわれ、これらは、エチレンオキシド、プロピレン1,2-オキシド、1,2-もしくは2,3-ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、またはこれらの混合物の重合生成物であって、場合により、2個もしくは3個の活性水素(H)原子を有する開始剤分子(例えば、水、または2個もしくは3個のOH基を有する化合物など)を用いて重合される。例えば、いわゆるダブルメタルシアン化物錯体触媒(DMC触媒と略される)を用いて製造された、不飽和度〔ASTM D2849-69に準拠して測定され、ポリオール1 g当たりの不飽和のミリ当量(mEq/g)で表される〕が低いポリオキシアルキレンポリオール、または、例えば、NaOH、KOH、もしくはアルカリ金属アルコラートなどのアニオン性触媒を用いて合成された、不飽和度が高いポリオキシアルキレンポリオール、のいずれの物質を用いることもできる。特に適している物質は、0.02 mEq/g未満の不飽和度を有し、且つ300〜20000ダルトンの範囲のモル質量を有するポリオキシプロピレンジオールおよびトリオール、ポリオキシブチレンジオールおよびトリオール、400〜8000ダルトンのモル質量を有するポリオキシプロピレンジオールおよびトリオール、並びに、いわゆる「EO末端キャップされた」(エチレンオキシドで末端キャップされた)ポリオキシプロピレンジオールまたはトリオールである。後者は、特定のポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールであって、これは例えば、ポリプロポキシル化反応終了後に、エチレンオキシドを用いて純粋なポリオキシプロピレンポリオールをアルコキシル化する方法によって得られ、したがって生成物は、一級ヒドロキシ基を有している。
− ヒドロキシ末端ポリブタジエンポリオール、例えば、1,3-ブタジエンとアリルアルコールとの重合によって、あるいはポリブタジエンの酸化によって製造されるものなど、およびこれらの水素化生成物;
− スチレン-アクリロニトリル-グラフトポリエーテルポリオール、例えば、Lupranol(登録商標)の名称でElastogron社から供給されているものなど;
− ポリエステルポリオール、例えば、二価〜三価アルコール〔例えば、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパンなど、または前記アルコール類の混合物〕から、有機ジカルボン酸またはそれらの酸無水物もしくはエステル〔例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびヘキサヒドロフタル酸、または前記カルボン酸の混合物〕を用いて製造されるポリエステルポリオール類、並びに、ラクトン類(例えば、ε-カプロラクトンなど)から得られるポリエステルポリオール類;
− ポリカーボネートポリオール(例えば、ポリエステルポリオールを形成させるために用いられる上述したアルコール類を、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはホスゲンと反応させることによって得られるもの)
− 1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール〔2,2-ビス-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール〕、ジペンタエリスリトール〔3-(3-ヒドロキシ-2,2-ビスヒドロキシメチルプロポキシ)-2,2-ビスヒドロキシメチルプロパン-1-オール〕、グリセロール〔1,2,3-プロパントリオール〕、トリメチロールプロパン〔2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール〕、トリメチロールエタン〔2-(ヒドロキシメチル)-2-メチル-1,3-プロパンジオール〕、ジ(トリメチロールプロパン)〔3-(2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブトキシ)-2-エチル-2-ヒドロキシメチルプロパン-1-オール〕、ジ(トリメチロールエタン)〔3-(3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-メチルプロポキシ)-2-ヒドロキシメチル-2-メチルプロパン-1-オール〕、ジグリセロール〔ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)エーテル〕;
− 二量化脂肪酸の還元によって得られるポリオール。
【0020】
ジオールが、特に好適なポリオールであることが明らかとなった。
【0021】
特に好適なポリオールは、ポリオキシアルキレンジオール、特に下記式(V)のポリオキシアルキレンジオールである。
【化5】

【0022】
式中、g´は、エチレンオキシドに由来する構造要素であり、h´はプロピレンオキシドに由来する構造要素であり、i´はテトラヒドロフランに由来する構造要素である。さらに、g、h、およびiは、それぞれ0〜40であり、但し、g、h、およびiの合計は、1以上であることを条件とする。
【0023】
これらは、特に、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレングリコール/プロピレングリコール、または(ポリ)ブチレングリコール、またはポリ(オキシ-1,4-ブタンジイル)-α-ヒドロ-ω-ヒドロキシル(当業者にポリ-THFまたはポリテトラメチレンエーテルグリコールとして知られているもの)である。このようなポリブチレングリコールは、DuPont社からのTetrathane(登録商標)製品系列およびBASF Corp.からのPoly-THF(登録商標)製品系列として商業的に入手可能である。
【0024】
基は、ジグリシジルエーテルDGEから2つのグリシジルエーテル基を取り除いた基である。
【0025】
一つの態様では、ジグリシジルエーテルDGEは、脂肪族または脂環式のジグリシジルエーテル、特に、飽和もしくは不飽和の、分岐もしくは非分岐の、環式もしくは開鎖(オープンチェーン)の二官能性C〜C30アルコールのジグリシジルエーテル、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、オクタンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルである。
【0026】
より特に、ジグリシジルエーテルDGEは、第一に、脂肪族または脂環式ジグリシジルエーテル、特に、下記式(VI´´)または(VI´´´)のジグリシジルエーテルである。
【化6】

【0027】
これらの式中、rは1〜9、特に3または5である。さらに、qは0〜10であり、tは0〜10であり、但し、qとtの合計が1以上であることを条件とする。最後に、dはエチレンオキシドに由来する構造要素であり、eはプロピレンオキシドに由来する構造要素である。したがって、式(VI’’’)は、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、および(ポリ)エチレングリコール/プロピレングリコールジグリシジルエーテルであり、単位dおよびeは、ブロック、交互、またはランダムに配列されることができる。
【0028】
特に好適な脂肪族または脂環式ジグリシジルエーテルは、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、またはヘキサンジオールジグリシジルエーテルである。
【0029】
さらなる態様では、ジグリシジルエーテルDGEはエポキシ樹脂である。このエポキシ樹脂は、液状エポキシ樹脂または固体エポキシ樹脂であることができる。
【0030】
「固体エポキシ樹脂」の用語は、エポキシ技術分野の当業者に周知であり、「液状エポキシ樹脂」と対比して使われる。固体樹脂のガラス転移温度は室温より高く、すなわち、これらは室温で自由に流動する粉末にまで細かく粉砕することができる。
【0031】
好ましい固体エポキシ樹脂は下記式(VIII)を有する。
【化7】

【0032】
この式中、置換基R、R、およびYはそれぞれ独立に、HまたはCHである。さらに、指数S1は1.5より大きく、特に2〜12である。
【0033】
本明細書中、置換基、残基、または基と関連しての「独立に」の用語の使用は、同じ記号で示される置換基、残基、または基が、同一分子内で同時に異なる定義で現れることができると解釈されるべきである。
【0034】
このような固体エポキシ樹脂は、例えば、Dow社、Huntsman社、またはHexion社から市販されている。
【0035】
1〜1.5の指数S1をもつ式(VIII)の化合物は、当業者によって、半固体エポキシ樹脂(semisolid epoxy resin)と言われている。本発明に対しては、これらは同様に固体樹脂であると考えられる。しかし、好ましい固体エポキシ樹脂はより狭義の固体エポキシ樹脂であり、すなわち、指数S1が1.5より大きな値を有する固体エポキシ樹脂である。
【0036】
好ましい液状エポキシ樹脂は下記式(IX)を有する。
【化8】

【0037】
この式中、置換基R、R、およびYはそれぞれ独立に、HまたはCHである。さらに、指数S1は0〜1の値を有する。S1が0.2未満の値を有することが好ましい。
【0038】
したがって、これらは好ましくは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、およびビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテル(「A/F」の記号は、ここでは、その製造において反応剤として用いられるアセトンとホルムアルデヒドとの混合物を指す)である。このような液状樹脂は、例えば、Araldite(登録商標)GY 250、Araldite(登録商標)PY 304、Araldite(登録商標)GY 282(Huntsman社)、またはD.E.R.(登録商標)331もしくはD.E.R.(登録商標)330(Dow社)として、またはEpikote 828(Hexion社)として入手可能である。
【0039】
さらに、ジグリシジルエーテルDGEは、エポキシ化されたノボラックであってよい。
【0040】
さらに特に好ましい態様では、ジグリシジルエーテルDGEは、2つのグリシジルエーテル基を取り除いた後のRに相当する下記式(VI)または(VI´)を有するジグリシジルエーテルである。
【化9】

【0041】
これらの式中、R’、R’’、およびR’’’は、それぞれ独立に、H、メチル、またはエチルであり、zは0または1であり、sは0または0.1〜12である。
【0042】
特に好ましいジグリシジルエーテルDGEはビスフェノールFジグリシジルエーテルである。
【0043】
式(I)のエポキシ末端ポリマーは以下のように調製することができる:
第一の工程(「予備鎖延長」)では、式 HOOC-R-COOHのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNと、式 R2(OH)nを有するポリオールPとを、ある化学量論比(n’≧n)のHOOC-R-COOHを用いて、下記式(II)のカルボキシル末端ポリマーを調製する。
【化10】

【0044】
この反応のためには、ポリオールPとHOOC-R-COOHとを、OH基に対するCOOH基の化学量論比[COOH]/[XH]が2以上となる量で用いる。
【0045】
この比が2である(n’=nに対応する)場合、より高分子量のものが高い割合に向かう傾向となり、これは式(II)のカルボキシル末端ポリマーの、あるいは式(I)のエポキシ末端ポリマーの顕著な粘度の上昇をもたらすおそれがあり、これは一部の状況下で問題を引き起こすおそれがある。2未満(<2)の比(n’<nに対応する)、特に2よりかなり小さい(<<2)比の場合、この問題は非常に顕著に大きくなる。したがって、2より大きな(>2)値がこの比として好ましい。典型的には、4より大きな値、特に2よりかなり大きな(>>2)値(n’>>nに対応する)が、非常に好ましい。これらの場合には、反応混合物は、かなり多い量の未転化のHOOC-R-COOHを含む。しかし、このことは、以下に議論するように、どのようなさらなる問題も引き起こさない。
【0046】
当業者には、ポリオールPおよび/または式HOOC-R-COOHのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNの混合物を用いることができることも明らかである。
【0047】
第二の工程(「停止(termination)」)では、式(II)のカルボキシル末端ポリマーと、式(III)のジグリシジルエーテルDGEとを、化学量論的過剰量(n´´≧n)のジグリシジルエーテルDGEを用いて、下記式(I)のエポキシ末端ポリマーを調製する。
【化11】

【0048】
この反応のためには、式(II)のポリマーと式(III)のジグリシジルエーテルとを、COOH基に対するグリシジルエーテル基の化学量論比:
【化12】

が2以上となるような、互いに対する量で用いる。
【0049】
この比が2である場合(n’’=nに相当する)、より高分子量のものの割合が大きくなり、これは式(I)のエポキシ末端ポリマーの顕著に高い粘度をもたらすおそれがあり、このことは一部の状況下で問題を引き起こすおそれがある。2より小さな比(n’<nに対応する)、特に2よりかなり小さい比(<<2)では、この問題は非常に大きくなる。したがって、この比として2より大きな値(>2)が好ましい。典型的には、4より大きな値(>4)、特に2よりかなり大きな値(>>2)(n’’>>nに対応する)が非常に好ましい。
【0050】
第一の工程からの未転化のカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBN(HOOC-R-COOH)がこの第二の工程の開始時に反応混合物中になお存在する場合には、それは第二の工程で反応して、従来技術によって公知の下記式(X)のエポキシ末端ポリマーを与える。
【化13】

【0051】
この方法では、耐衝撃性改良剤として用いることができる最大数のエポキシ末端ポリマーが最終的な混合物中に存在することを確実にすることができる。より特に、従来技術の方法とは対照的に、適用特性の悪化、特に高粘度をもたらす大きな分子量分布となることを防ぐことができる。
【0052】
当業者には、式(II)のカルボキシル末端ポリマー類および/または式(III)のジグリシジルエーテル類DGEの混合物を用いることもできることも明らかである。このような調製の様式では、式(I)のエポキシ末端ポリマー類の混合物はその場で生成する。
【0053】
両方の工程で、エステルが形成される。
【0054】
アルコールとカルボン酸とのこのような反応は、当業者に公知であり、これらの反応条件も同様である。より詳細には、この反応は昇温し、かつ場合によっては触媒の影響下で行うことができる。
【0055】
カルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNを用いたポリオールのエステル化は、昇温して、特にエステル化触媒の影響下、特に酸の影響下で行うことが好ましい。そのような酸は、好ましくは、硫酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、リン酸、または亜リン酸である。硫酸が好ましい。エステル化で生じた水は、大気圧下、あるいは減圧下で反応混合物から除去することができる。反応混合物の上またはその中を通るガス流を導くこともできる。ガス流は、例えば、空気または窒素であってよい。
【0056】
カルボキシル末端ポリマーによるジグリシジルエーテルDGEのエステル化は、好ましくは高温で、典型的には100℃、好ましくは約140℃の温度で、且つ場合によって触媒を用い、かつ好ましくは保護ガス下で行われる。そのような触媒の例は、トリフェニルホスフィン、三級アミン、四級ホスホニウム塩または四級アンモニウム塩である。
【0057】
下記式(II)のカルボキシル末端ポリマーは、したがって、本発明のさらなる側面を形作る。この式(II)中の基および指数の定義、選択肢、および好ましい態様は、式(I)のエポキシ末端ポリマーについて詳細に既に上述したものに相当する。
【0058】
本発明のさらなる側面は、式 R2(OH)nを有するポリオールPと、式HOOC-R-COOHのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNとの反応によって、式(II)のカルボキシル末端ポリマーを調製する方法であって、この方法は、R2(OH)nおよびHOOC-R-COOHを、OH基に対するCOOH基の化学量論比[COOH]/[XH]が2以上に相当する互いに対する量で、この反応に用いることを特徴とする。この方法は既に本明細書中で上に詳細に説明している。この方法は既に本明細書中で上に詳細に説明している。
【0059】
本発明のさらなる側面は、式(II)のカルボキシル末端ポリマーと、下記式(III)のジグリシジルエーテルDGEとの反応によって式(I)のエポキシ末端ポリマーを調整する方法であって、式(II)のポリマーと、下記式(III)のジグリシジルエーテルDGEとを、COOH基に対するグリシジルエーテル基の化学量論比:
【化14】

が2以上に対応した互いに対する量で、この反応に用いることを特徴とする。
【化15】

【0060】
この方法は既に本明細書中で上に詳細に説明している。
【0061】
式(I)のエポキシ末端ポリマーをさらに反応させ得ることは当業者に明らかである。例えば、より特に、ポリフェノールを用いた、特にビスフェノール、例えばビスフェノールAを用いた鎖延長は、いくつかの状況下で、例えば以下の式(XIII)および(XIV)で表される、さらに高分子量のエポキシ末端ポリマーまたはフェノール末端ポリマーを得るために非常に有用である。
【化16】

【0062】
これらの式中、指数fは0または1である。Rは、ここでは、H、アルキル、またはアルケニル基、特にアリル基である。
【0063】
さらなる側面は、式(II)のカルボキシル末端ポリマーと、ジアミン、(メタ)アクリレート官能性アルコール、またはグリシジルエーテル官能性(メタ)アクリレートとから形成される反応生成物であり、これらは、以下の例示的反応スキームにしたがって、特に、式(XI)、(XI’)、および(XI’’)のアミン末端ポリマー、または式(XII)および(XII’)の(メタ)アクリレート末端ポリマーをもたらす。
【0064】
【化17A】

【化17B】

【化17C】

【0065】
これらの式中、RはHまたはメチルであり、Rは二価の基、特に、アルキレン、シクロアルキレン、または(ポリ)オキシアルキレン基である。ジアミン類である、1-(2-アミノエチル)ピペラジン(DA1)、2-メチルペンタメチレンジアミン(DA2)、または1,2-ジアミノシクロヘキサン(DA3)と、グリシジル(メタ)アクリレート(GMA)と、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート(HMA)とは、それぞれ化学量論的過剰量で用いられる。すなわち、k、k’、k’’、k’’’、およびk’’’’はそれぞれnよりも大きい。
【0066】
アミドおよびエステルの形成のための反応条件は文献公知であり、これらの反応生成物、特に式(XI)、(XI’)、(XI’’)、(XII)、および(XII’)のポリマーの合成に適用することができる。
【0067】
本発明のさらなる側面は、したがって、下記式(XV)の末端基を有するポリマー:
【化18】

の調製方法であって、その方法は以下の2つの工程を含む。
a)予備鎖延長(pre-extension) 工程、すなわち、式 R2(OH)nを有するポリオールPを、化学量論的過剰量の式HOOC-R-COOHのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNと反応させて、既に上述した式(II)のカルボキシル末端ポリマーを得る反応であって、ポリオールPとHOOC-R-COOHとを、OH基に対するCOOH基の比[COOH]/[XH]が2以上となる互いに対する量で用いる方法での反応させる工程。ここで、ポリオールPおよび式HOOC-R-COOHのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNは、既に上述したように選択されるべきである。
b)停止(termination)工程、すなわち、式(II)のカルボキシル末端ポリマーと、ジグリシジルエーテル、ジアミン、(メタ)アクリレート官能性アルコール、またはグリシジルエーテル官能性(メタ)アクリレートとを反応させる工程であって、このジグリシジルエーテル、ジアミン、(メタ)アクリレート官能性アルコール、またはグリシジルエーテル官能性(メタ)アクリレートと、式(II)のカルボキシル末端ポリマーとを、式(II)のカルボキシル末端ポリマーの分子のCOOH基1モル当たり1モルのジグリシジルエーテル、ジアミン、(メタ)アクリレート官能性アルコール、またはグリシジルエーテル官能性(メタ)アクリレートに相当する互いに対する量で用いる方法で反応させる工程。
【0068】
ここで式(XV)中、R10は二価の基であり、Qは、下記式(XVI)、(XVI´)、(XVI´´)、およびNHからなる群から選択される末端基である。
【化19】

但し、
が-NHまたは式(XVI’’)である場合には、Qは-NH-であり、
が式(XVI’)である場合には、Qは-O-または式(XVII)であり、
が式(XVI)である場合には、Qは式(XVII)であることを条件とする。
【0069】
式(XV)の末端基を有するポリマーは、特に、上述した、式(I)のエポキシ末端ポリマー、式(II)のカルボキシル末端ポリマー、式(XI)、(XI’)、または式(XI’’)のアミン末端ポリマー、および式(XII)または(XII’)の(メタ)アクリレート末端ポリマーであると考えられる。
【0070】
このようにして調製した式(II)のカルボキシル末端ポリマー、および記載した式(XV)の末端基を有するポリマー、特に、式(I)のエポキシ末端ポリマー、式(XI)、(XI’)、または(XI’’)のアミン末端ポリマー、および式(XII)または(XII’)の(メタ)アクリレート末端ポリマーは、ポリマーマトリクスの耐衝撃性を増大させる手段として用いることができ、いわゆる耐衝撃性改良剤として有用である。
【0071】
式(II)のカルボキシル末端ポリマーと、式(XV)の末端基を有するポリマー、特に式(I)のエポキシ末端ポリマー、式(XI)、(XI’)、または(XI’’)のアミン末端ポリマー、および式(XII)または(XII’)の(メタ)アクリレート末端ポリマーは、室温で液状または粘稠乃至高粘度であることが好ましい。これらは、少なくとも60℃の温度で従来の手段によって加工可能であることが好ましい。最も好ましくは、これらは少なくとも60℃で、注ぐことができるか、あるいは少なくとも蜂蜜状の稠度である。これらが高粘度または固体である場合には、場合により、これらを、溶媒または樹脂、例えば、液状エポキシ樹脂中に、溶解、乳化、または分散させてもよい。
【0072】
式(I)、(II)、(XI)、(XI’)、(XI’’)、(XII)、および(XII’)のこれらのポリマーは、架橋性組成物、特にこれらのポリマーが反応によって組み込まれ得るシステム中に用いることが好ましい。これらのポリマーが用いられる組成物についての問題は、したがって、特にポリマーマトリクスに左右される。例えば、特に、フリーラジカル開始または紫外線開始重合反応によってポリマーマトリクスに架橋する(メタ)アクリレート樹脂または不飽和ポリエステル樹脂には、式(XII)または(XII’)の(メタ)アクリレート末端ポリマーを用いることが好ましい。
【0073】
式(I)のエポキシ末端ポリマーおよび式(II)のカルボキシル末端ポリマーおよび式(XI)、(XI’)、または式(XI’’)のアミン末端ポリマーは、エポキシ樹脂組成物に用いることが好ましい。
【0074】
式(I)のエポキシ末端ポリマーの場合、これらをエポキシ樹脂Aが存在する成分中に用いることが好ましい。エポキシ樹脂Aは、式(IX)の液状エポキシ樹脂、または式(VIII)の固体エポキシ樹脂であってよい。一つの態様では、この組成物は、エポキシ樹脂Aと並んで、エポキシ樹脂用の硬化剤Bを含み、この硬化剤は昇温により活性化される。このような組成物は、特に熱硬化性エポキシ樹脂接着剤として用いられ、熱活性化可能な硬化剤Bの熱活性化よりも高い温度に加熱する過程で硬化して、硬化した組成物を形成する。
【0075】
式(II)のカルボキシル末端ポリマーの場合は、これらを同様に、エポキシ樹脂Aが存在する成分中に用いることができる。
【0076】
しかし、式(II)のカルボキシル末端ポリマー、または式(XI)、(XI’)、もしくは(XI’’)のアミノ末端ポリマーの場合は、これらは硬化剤成分中でも用いることができる。このような硬化剤成分は、エポキシ樹脂用硬化剤、例えば、ポリアミンまたはポリメルカプタンを含む。これらの2成分を混合する結果として、これらは特に室温においても互いに反応して硬化した組成物を形成する。
【0077】
このような組成物は広く用いることができる。その例は、接着剤、シーラント、コーティング、発泡体、構造発泡体、塗料、注入樹脂、または被覆剤である。それらは、例えば、建築または土木工学に、工業製品または消費者製品の製造または修理に用いることができる。それらは、接着剤、特に車体構築、および窓、屋内電気器具、または輸送の態様、例えば、水用または陸用乗り物、好ましくは、自動車、バス、トラック、列車、または船舶を製造するための接着剤として、あるいは工業生産または修理において、接合部(ジョイント)、継ぎ目、または空洞を封止するためのシーラントとして用いることが特に好ましい。
【0078】
特に好ましくは、このような組成物は、耐衝突性接着剤として、特に、輸送手段の構築のために、好ましくは輸送手段の構築のOEM部門において用いられる。
【0079】
加えて、好ましくは、このような組成物は、建築および土木工学のための構造接着剤として、または大きな応力がかかりうる工業用コーティング剤として用いられる。
【実施例】
【0080】
[実施例]
用いた原料:
【表1】

【0081】
〔カルボキシル末端ポリマーの調製〕
[ヘキサンジオールでの予備鎖延長](「CTBN-HD-CTBN」)
300.0 g(171 meqのCOOH)のカルボキシル末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー(Hycar(登録商標)CTBN 1300X13)、2.53 gの1,6-ヘキサンジオール(42.8 meqのOH)、および1.0 gのp-トルエンスルホン酸・一水和物(5.3 meq)を、撹拌機、窒素注入口、および真空への連結部を備えたフランジ接続型フラスコ中に量り取った。この混合物を穏やかな減圧下で150℃にて4時間にわたって一定質量になるまで撹拌した。粘稠なマスが得られ、酸価は約23.7 mg/g KOH(約422 meq/kg)だった。触媒は中和しなかった。こうして得られた生成物をCTBN1と名付けた。
【0082】
〔エポキシ末端ポリマーの調製〕
[BFDGEでの末端処理](「BFDGE-CTBN-HD-CTBN-BFDGE」)
100 g(約42.2 meqのCOOH)のCTBN1および150.0 g(822 meqのエポキシ)のEpilox F 17-00を、撹拌機、窒素注入口、および真空への連結部を備えたフランジ接続型フラスコ中に量り取った。この混合物を、約3.36 eq/kgのエポキシ含量をもつ粘稠なエポキシ樹脂が得られるまで、穏やかな減圧下で180℃にて3時間にわたって撹拌した。こうして得られた生成物をETBN1と名付けた。
【0083】
[ビスフェノールAを用いて後鎖延長したETBN1]
(「BFDGE-CTBN-HD-CTBN-BFDGE-BPA-BFDGE-CTBN-HD-CTBN-BFDGE」)
150 g(約503 meqのエポキシ)のETBN1および7.5 g(約66 meqのOH)のビスフェノールAを、撹拌機、窒素注入口、および真空への連結部を備えたフランジ接続型フラスコ中に量り取った。この混合物を、約2.77 eq/kgのエポキシ含量を有する粘稠なエポキシ樹脂が得られるまで、穏やかな減圧下で180℃にて3時間にわたって撹拌した。こうして得られた生成物をETBN2と名付けた。
【0084】
[BADGEを末端に有するCTBN(比較)](「BADGE-CTBN-BADGE」)
100 g(約57 meqのCOOH)のカルボキシル末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー(Hycar(登録商標) CTBN 1300X13)および150.0 g(810 meqのEP)のD.E.R. 331を、撹拌機、窒素注入口、および真空への連結部を備えたフランジ接続型フラスコ中に量り取った。この混合物を、約2.99 eq/kgのエポキシ含量を有する粘稠なエポキシ樹脂が得られるまで、穏やかな減圧下で180℃にて3時間にわたって撹拌した。こうして得られた生成物を、比較ETBNと名付けた。
【0085】
〔耐衝撃性改良剤としての効果〕
エポキシ末端ポリマーETBN1、およびETBN2は、熱硬化性エポキシ樹脂接着剤において、比較ポリマー(比較ETBN)と比べて大きな耐衝撃性の向上を示した。
【0086】
〔組成物例〕
表1にしたがって、接着剤組成物Z1、Z2、および比較組成物(Z比較1)を以下のように調製した。
プラネタリーミキサーに最初にジシアンジアミド以外の全ての成分を投入し、90〜100℃で減圧下にて1時間撹拌し、次にジシアンジアミドを添加し、さらに10分間の撹拌の後、混合物をカートリッジに移した。
【0087】
[PUプレポリマー(PUPrep)の調製]
150 gのPoly-THF 2000(BASF社、OH価 57 mg/g KOH)および150 gのLiquiflex H(Krahn社、ヒドロキシル末端ポリブタジエン、OH価 46 mg/g KOH)を、105℃にて減圧下で30分間乾燥させた。一度、温度を90℃に下げて、61.5 gのイソホロンジイソシアネートと0.14 gのジブチルスズジラウレートを添加した。反応を90℃にて減圧下で、NCO含量が2時間後に3.10%で一定になるまで行った(計算されたNCO含量: 3.15%)。次に、96.1 gのカルダノール(cardanol, Cardolite NC-700, Cardolite社)をブロック化剤として添加した。NCO含量が3.5時間後に0.1%未満になるまで、この混合物をさらに105℃にて減圧下で撹拌した。生成物を、PUPrepとして用いた。
【0088】
〔試験法〕
[引張強度(TS)(DIN EN ISO 527)]
組成物のサンプルを2枚のテフロン(登録商標)ペーパーの間に2 mmの層の厚さに押しつけた。次に、この組成物を180℃にて30分間にわたって硬化させた。テフロン(登録商標)ペーパーを取り除き、熱い状態でDIN規格にしたがって試験体を打ち抜いた。1日の貯蔵後、この試験体を、標準気候条件下で、2 mm/分の引張速度で分析した。
引張強度(「TS」)は、DIN EN ISO 527に準拠して測定した。
【0089】
[破断に対する力学的抵抗(ISO 11343)]
上述した組成物と、90×20×0.8 mmの寸法の電気亜鉛メッキしたDC04スチール(eloZn)とから試験体を作製した。接着剤領域は、0.3 mmの層厚さで20×30 mmだった。硬化は180℃で30分間行った。破断に対する力学的抵抗は、それぞれの場合に、室温およびマイナス30℃で測定した。衝撃速度は2 m/sだった。破壊エネルギー(FE)(ジュール単位で表す)は、測定曲線の下の面積である(25%〜90%、ISO 11343に準拠)。
【0090】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)のエポキシ末端ポリマー:
【化1】

(式中、Rは、カルボキシル末端のブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNから、末端のカルボキシル基を取り除いた後の二価の基であり;
は、n個のOH基を有するポリオールPから、n個のOH基を取り除いた後の残基であり;
は、ジグリシジルエーテルDGEから2つのグリシジルエーテル基を取り除いた後の基であり;
は、Hまたはメチルであり;
nは2〜4、好ましくは2である)。
【請求項2】
が下記式(IV):
【化2】

(式中、破線は2つのカルボキシル基の結合部位を表し;
bおよびcは、ブタジエンに由来する構造要素を表し、且つ、aはアクリロニトリルに由来する構造要素を表し;
Rは、1〜6個の炭素原子を有する、特に4個の炭素原子を有する、直鎖または分岐状のアルキレン基であり、これは任意選択により不飽和基で置換されていてもよく;
qは40〜100、特に50〜90であり;
xは0.05〜0.3であり、mは0.5〜0.8であり、pは0.1〜0.2であり、但し、x+m+p=1であることを条件とする)
を有することを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ末端ポリマー。
【請求項3】
が、任意選択により酸素、窒素、または硫黄原子を有していてもよい、二価の脂肪族、脂環式、または芳香族の有機基であることを特徴とする、請求項1または2に記載のエポキシ末端ポリマー。
【請求項4】
ポリオールPが、ポリオキシアルキレンジオール、特に下記式(V)のポリオキシアルキレンジオール:
【化3】

(式中、g´は、エチレンオキシドに由来する構造要素であり、h´は、プロピレンオキシドに由来する構造要素であり、i´は、テトラヒドロフランに由来する構造要素であり、g、h、およびiは、それぞれ0〜30であり、但しg、h、およびiの合計が1以上であることを条件とする)
であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ末端ポリマー。
【請求項5】
が、下記式(VI)または(VI´):
【化4】

(式中、R´、R´´、およびR´´´は、それぞれ独立に、H、メチル、またはエチルであり、zは0または1であり、sは0または0.1〜12である)
を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエポキシ末端ポリマー
【請求項6】
ジグリシジルエーテルDGEがビスフェノールFジグリシジルエーテルであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエポキシ末端ポリマー。
【請求項7】
ジグリシジルエーテルDGEが、脂肪族または脂環式ジグリシジルエーテル、特に、下記式(VI´´)または(VI´´´)のジグリシジルエーテル:
【化5】

(式中、rは1〜9であり、
dはエチレンオキシドに由来する構造要素であり、eはプロピレンオキシドに由来する構造要素であり、
qは0〜10であり、tは0〜10であり、但し、qとtの合計が1以上であることを条件とする)
であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエポキシ末端ポリマー
【請求項8】
ジグリシジルエーテルDGEが、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、またはヘキサンジオールジグリシジルエーテルであることを特徴とする、請求項7に記載のエポキシ末端ポリマー。
【請求項9】
下記式(II)のカルボキシル末端ポリマー:
【化6】

(式中、Rは、カルボキシル末端のブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNから、末端のカルボキシル基を取り除いた後の二価の基であり;
は、n個のOH基を有するポリオールPから、n個のOH基を取り除いた後の残基であり;
nは2〜4、好ましくは2である)。
【請求項10】
が下記式(IV):
【化7】

(式中、破線は2つのカルボキシル基の結合部位を表し;
bおよびcは、ブタジエンに由来する構造要素を表し、且つ、aはアクリロニトリルに由来する構造要素を表し;
Rは、1〜6個の炭素原子を有する、特に4個の炭素原子を有する、直鎖または分岐状のアルキレン基であり、これは任意選択により不飽和基で置換されていてもよく;
qは40〜100、特に50〜90であり;
xは0.05〜0.3であり、mは0.5〜0.8であり、pは0.1〜0.2であり、但しx+m+p=1であることを条件とする)
を有することを特徴とする、請求項9に記載のカルボキシル末端ポリマー。
【請求項11】
下記式(XI)、(XI´)、または(XI´´)のアミン末端ポリマー:
【化8】

(式中、Rは、カルボキシル末端のブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNから、末端のカルボキシル基を取り除いた後の二価の基であり;
は、n個のOH基を有するポリオールPから、n個のOH基を取り除いた後の残基であり;
nは2〜4、好ましくは2である)。
【請求項12】
下記式(XII)または(XII´)の(メタ)アクリレート末端ポリマー:
【化9】

(式中、Rは、カルボキシル末端のブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNから、末端のカルボキシル基を取り除いた後の二価の基であり;
は、n個のOH基を有するポリオールPから、n個のOH基を取り除いた後の残基であり;
は、Hまたはメチルであり;
は、二価の基、特に、アルキレン、シクロアルキレン、または(ポリ)オキシアルキレン基であり;
nは2〜4、好ましくは2である)。
【請求項13】
式 R2(OH)nのポリオールPと、式 HOOC-R-COOHのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNとの反応によって、請求項9または10に記載のカルボキシル末端ポリマーを調製する方法であって、R2(OH)nおよびHOOC-R-COOHを、OH基に対するCOOH基の化学量論比 [COOH]/[OH] が2以上となる互いに対する量で、この反応に用いることを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項9または10に記載の下記式(II)のカルボキシル末端ポリマーと、下記式(III)のジグリシジルエーテルとの反応によって、請求項1〜8に記載のエポキシ末端ポリマーを調製する方法であって、式(II)のポリマーおよび式(III)のジグリシジルエーテルを、COOH基に対するグリシジルエーテル基の化学量論比:
【化10】

が2以上となる互いに対する量で、この反応に用いることを特徴とする、方法。
【化11】

【請求項15】
下記式(XV)の末端基含有ポリマー:
【化12】

の調製方法であって、
以下の2つの工程:
a)予備鎖延長(pre-extension)工程、すなわち、式 R2(OH)nのポリオールPを、化学量論的過剰量の式 HOOC-R-COOHのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNと反応させて、請求項9または11に記載の式(II)のカルボキシル末端ポリマーを得る反応であって、ポリオールPおよびHOOC-R-COOHを、OH基に対するCOOH基の比 [COOH]/[OH] が2以上となる互いに対する量で用いる方法での反応工程であって、
ポリオールPと、式HOOC-R-COOHのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーCTBNとが、請求項1〜8のいずれか一項に記載したように選択される工程;
b)停止(termination)工程、すなわち、式(II)のカルボキシル末端ポリマーと、ジグリシジルエーテル、ジアミン、(メタ)アクリレート官能性アルコール、またはグリシジルエーテル官能性(メタ)アクリレートとを反応させる工程であって、前記ジグリシジルエーテル、ジアミン、(メタ)アクリレート官能性アルコール、またはグリシジルエーテル官能性(メタ)アクリレートと、式(II)のカルボキシル末端ポリマーとを、式(II)のカルボキシル末端ポリマーの分子のCOOH基1モル当たり1モルのジグリシジルエーテル、ジアミン、(メタ)アクリレート官能性アルコール、またはグリシジルエーテル官能性(メタ)アクリレートに相当する、互いに対する量で用いる方法で反応させる工程、
を含み、
式(XV)中、R10は二価の基であり、Qは、下記式(XVI)、(XVI´)、(XVI´´) および-NHからなる群から選択される末端基:
【化13】

(但し、
が-NHまたは式(XVI´´)である場合には、Qは-NH-であり、
が式(XVI´)である場合には、Qは-O-または式(XVII)であり、
が式(XVI)である場合には、Qは式(XVII)であることを条件とする。)
である、調製方法。
【請求項16】
ポリマーマトリクスの耐衝撃性を向上させる手段としての、請求項9または10に記載の式(II)のカルボキシル末端ポリマー、請求項15に記載の方法によって調製される式(XV)の末端基含有ポリマー、特に請求項1〜8のいずれか一項に記載の式(I)のエポキシ末端ポリマー、請求項11に記載の式(XI)、(XI´)、もしくは(XI´´)のアミン末端ポリマー、または請求項12に記載の式(XII)もしくは(XII´)の(メタ)アクリレート末端ポリマーの使用。
【請求項17】
前記ポリマーマトリクスがエポキシ樹脂マトリクスであることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
請求項11に記載の式(XI)、(XI´)、もしくは(XI´´)のアミン末端ポリマー、または請求項12に記載の式(XII)もしくは(XII´)の(メタ)アクリレート末端ポリマーを含む組成物。
【請求項19】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の式(I)のエポキシ末端ポリマー、または請求項9もしくは10に記載の式(II)のカルボキシル末端ポリマーを含む組成物。
【請求項20】
少なくとも1種のエポキシ樹脂Aをさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
昇温によって活性化されるエポキシ樹脂用硬化剤Bをさらに含むことを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
請求項20に記載の組成物と、エポキシ樹脂用硬化剤の添加によって得られる、硬化した組成物。
【請求項23】
請求項21に記載の組成物を、熱活性化可能な硬化剤Bの熱活性化温度よりも高い温度に加熱することによって得られる、硬化した組成物。

【公表番号】特表2010−513642(P2010−513642A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542097(P2009−542097)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064434
【国際公開番号】WO2008/077933
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】