説明

エステルの製造用触媒

チタン、ジルコニウム又はハフニウムの化合物と、2ヒドロキシカルボン酸と、そしてテトラエチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドからなる群から選択される第四級アンモニウム化合物とを含み、場合により、アルコール又は水を含む、エステル化反応に使用するのに適した触媒。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、エステル、特にポリエステルの製造に特に有用な触媒組成物、並びに当該触媒を使用する製造方法及び当該触媒組成物の残留物を含有するエステル製品に関する。
一定の金属及び金属含有組成物は、エステル化及びエステル交換を含む、エステル形成反応を触媒するために使用することは周知である。チタンアルコキシドのようなチタン化合物は、アンチモン化合物のような他の金属化合物に加えてまたはその代わりにポリエステルの製造に使用できる。アンチモン化合物はポリエステル製造用の触媒として非常に慣用的に使用されるが、一定の欠点がある。その欠点にはアンチモン固有の毒性や、アンチモン残留物がポリエステル中に残留し、灰色を示したり、極端な場合、ポリエステル中に眼に見える小さな斑点を与えるという事実等もある。従って、高度に活性なエステル化触媒であるチタン触媒は、アンチモン化合物の要求事項を減少させるか除くために、ポリエステル製造のアンチモンに対する魅力的な代替物を提供する。しかし、チタン触媒は、ポリマー中に残留するチタン化合物が黄色の着色を生じさせる傾向があるという欠点がある。ポリエステル製品の最終用途が中間色又は「無色透明(water-white)」物質であることが必要な場合、ポリエステルの色は青色化化合物やトナーを加えることにより調整できる。酢酸コバルトのような無機トナーが一般的であるが、チタン触媒によりもたらされる黄色を相殺するために、ポリエステルのコバルト含量を減少させる要望が、有機染料の使用の増加を促進させてきている。染料やトナーの添加によるポリエステルの着色管理のための必要性が十分でなく、ポリエステル製造の経費に追加し、従って、トナーやその他の着色管理添加剤を使用する必要性を減少させるか回避するのが望ましい。
【0002】
したがって、本発明の目的は、エステルの製造に使用するための改良した触媒組成物を提供することである。さらに、本発明の目的はポリエステルの製造に使用でき、しかも公知のチタン系触媒組成物と比較して黄色着色の少ないポリエステルを製造する触媒組成物を提供することである。
【0003】
EP−A−0812818におけるエステルの製造方法は、チタン又はジルコニウムのオルトエステル又は縮合オルトエステル、少なくとも2個のヒドロキシル基を含有するアルコール、2−ヒドロキシ酸及び塩基の反応生成物を含む触媒の存在下でエステル化を行うことを含む。これらの触媒は単なるチタンアルコキシド触媒よりも安定であり、より良い色のポリエステルを製造するのに有用である。しかし、塩基として一定の化合物の選択が本発明の改良した触媒を製造できることを示唆していない。
【0004】
WO 01/56694は、ポリエステルを含むエステルの製造用の触媒として使用するのに適した触媒組成物を開示し、当該触媒組成物は、好ましくは少なくとも2個のヒドロキシ基を有するアルコール及び塩基の存在下で、チタン及びジルコニウムからなる群から選択される第1金属、ゲルマニウム、アンチモン及びスズからなる群から選択される第2金属並びにカルボン酸のコンプレックスである有機金属化合物を含む。これらの2金属コンプレックスは塩基を含有するが、有機塩基の選択が、好適な無機塩基を超える特定の利点を導くことを開示していない。
【0005】
WO 02/42537は、EP−A−0812818に開示されているタイプの触媒と、アンチモン、ゲルマニウム又はスズから選択される第2触媒成分との組み合わせが繊維紡糸用途のためのポリエステルの製造に特に有用であることを開示する。第四級アンモニウム化合物を適切な塩基として挙げているが、本発明の触媒組成物がアンチモン、ゲルマニウム又はスズの不存在下で黄色化を減少させたポリエステルを製造するのに特に有効であるということを開示していない。
【0006】
本発明では、
a)チタン、ジルコニウム又はハフニウムの化合物
b)2−ヒドロキシカルボン酸並びに
c)テトラエチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドからなる群から選択される第四級アンモニウム化合物
の反応生成物を含む、エステル化反応に使用するのに適した触媒を提供する。
【0007】
本発明の第2態様では、ポリエステルを含むエステルの製造方法を提供し、当該方法は、ポリヒドロキシアルコールであることのできるアルコールと、多官能性カルボン酸であることのできる少なくとも1種のカルボン酸、又はそのエステルとを一緒に反応させ、ポリエステルであることのできるエステルを形成することを含み、当該反応は本発明の触媒の存在下で起こる。好ましくは、反応は触媒的に有効な量のアンチモン、ゲルマニウム又はスズの不存在下で行われる。
【0008】
本発明の第3態様では、
a)ポリヒドロキシアルコールと少なくとも1種の多官能性カルボン酸、又はそのエステルとを一緒に反応させて多官能性カルボン酸のポリヒドロキシエステルを形成し、
b)当該ポリヒドロキシエステルを重縮合させてポリエステルを形成する
ことを含むポリエステルの製造法を提供し、工程a)とb)との少なくとも1工程は本発明の触媒の存在下で行い、好ましくは、触媒的に有効な量のアンチモン、ゲルマニウム又はスズの不存在下で実施することを特徴とする。
【0009】
チタン、ジルコニウム又はハフニウムの化合物は、好ましくは、アルコキシド又は縮合アルコキシドである。このようなアルコキシドは式M(OR)を有し、式中、Mはチタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、Rはアルキル基である。より好ましくは、Rは1〜6個の炭素原子を含み、特に適切なアルコキシドにはテトライソプロピルチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−n−プロポキシジルコニウム及びテトラ−n−ブトキシジルコニウム等がある。チタン、ジルコニウム又はハフニウムの化合物は、好ましくは、チタンの化合物である。本発明に有用な触媒を製造するのに適切な縮合アルコキシドは、典型的にはチタン若しくはジルコニウムアルコキシドの注意深い加水分解により製造され、式RO[M(ORO]によりしばしば表され、式中、Rはアルキル基を表し、Mはチタン又はジルコニウムを表す。好ましくは、nは20未満であり、より好ましくは、10未満である。好ましくは、Rは1〜6個の炭素原子を含有し、有用な縮合アルコキシドにはポリブチルチタネート、ポリイソプロピルチタネート及びポリブチルジルコネート等がある。
【0010】
好適な2−ヒドロキシカルボン酸には乳酸、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸等がある。幾つかの適切な酸は水和物又は水溶液として提供される。この形態の酸並びに無水酸の形態の酸は本発明に使用される触媒を製造するのに適切である。反応生成物中のチタン、ジルコニウム若しくはハフニウムに対する2−ヒドロキシカルボン酸の好適なモル比はチタン、ジルコニウム若しくはハフニウム1モル当たり1〜4モルである。より好適な触媒は、チタン、ジルコニウム若しくはハフニウム1モル当たり1.5〜3.5モルの2−ヒドロキシ酸を含有する。
【0011】
第四級アンモニウム化合物対2−ヒドロキシカルボン酸のモル比は、好ましくは、0.05〜2:1の範囲である。クエン酸(三塩基酸)の場合、好適な量は、2−ヒドロキシ酸1モル当たり0.1〜1.5モルの範囲の第四級アンモニウム化合物である。一般に、存在する第四級アンモニウム化合物の量は、普通、チタン、ジルコニウム若しくはハフニウム1モル当たり0.05〜4モルであり、好ましくは、チタン、ジルコニウム若しくはハフニウム1モル当たり2〜3モルである。触媒を調製するとき第四級アンモニウム化合物と共に水を加えるとしばしば都合よい。第四級アンモニウム化合物は水に可溶性であり、水溶液として都合よく使用されるからである。
【0012】
触媒は、場合により、アルコール、好ましくは、2個以上のヒドロキシル基を含有するアルコールを含有する。好適には、アルコールは二価アルコール、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール又はジエチレングリコール若しくはポリエチレングリコールのようなより長い鎖を含有する二価アルコールである。1,2−エタンジオール又は1,4−ブタンジオールが特に好適である。グリセリン、トリメチロールプロパン若しくはペンタエリトリトールのような高級多価アルコール又は脂肪族、シクロ脂肪族若しくは芳香族アルコール又は、例えば、C〜C22アルコール、例えば、エタノール、メタノール、ペンタノール、ブタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール等のようなモノアルコールからも触媒を製造できる。触媒がポリエステル製造のために意図されるとき、加えられるアルコールは、好ましくは、少なくとも2個のヒドロキシル基を含有し、好ましくは、ポリエステル製造に使用されるものに類似する組成を有する。アルコール(存在する場合)は、金属化合物と2−ヒドロキシ酸及び第四級アンモニウム化合物との反応後を含むいずれの段階でも、触媒反応混合物に加えることができる。調製した触媒は、さらに一定量のアルコール中に稀釈できる。触媒調製の間又は後に反応混合物に水を加えることができ、2−ヒドロキシ酸又は第四級アンモニウム化合物のための溶媒として存在できる。
【0013】
したがって、ポリエステル製造に使用するための触媒として特に有用な好適な形体では、本発明は
a)チタン、ジルコニウム又はハフニウムの化合物、
b)少なくとも2個のヒドロキシル基を含有するアルコール、
c)2−ヒドロキシカルボン酸、並びに
d)テトラエチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドからなる群から選択される第四級アンモニウム化合物
の反応生成物を含む触媒を含む。
【0014】
好ましくは、この触媒はチタン、ジルコニウム又はハフニウムの各モルに対して2〜12モルの二価アルコールを含む。より好適には、触媒はチタン、ジルコニウム又はハフニウムのモル当たりに3〜8モルの二価アルコールを含む。さらに、一定量のアルコール又は水を触媒に加えることができる。
【0015】
触媒は、各成分(金属化合物、アルコール(使用する場合)、2−ヒドロキシ酸及び第四級アンモニウム化合物)をいずれかの適切な段階で混合し、存在し得る副生物(例えば、金属化合物がテトライソプロポキシチタンのようなアルコキシドのとき、イソプロピルアルコール)を除去することにより調製できる。1好適方法では、金属アルコキシド又は縮合アルコキシド及び二価アルコールを混合し、次いで、2−ヒドロキシ酸を、次に第四級アンモニウム化合物を加え、又は予備中和した2−ヒドロキシ酸溶液を加える。別の好適な方法では、金属アルコキシド又は縮合アルコキシドをまず2−ヒドロキシ酸と反応させる。場合により、副生アルコールをこの段階で除去できる。次いで、この混合物に第四級アンモニウム化合物を加え、本発明の触媒である反応生成物を製造し、場合により、続いてアルコール及び/又は水で稀釈する。所望の場合、副生アルコールを、例えば、蒸留により製造プロセスのいずれかの段階、例えば、二価アルコールで好適な生成物を稀釈する前又は後に除去できる。反応混合物の成分、特に、2−ヒドロキシ酸及び第四級アンモニウム化合物を水性溶液として加えるとき、反応混合物は、蒸留により除去できる水を含有し、場合により、金属アルコキシド(使用する場合)から副生アルコールと共に除去できる。触媒を溶媒で稀釈でき、それは好ましくはエステル化反応に使用されるアルコールであるが、しかし異なるアルコールや水のような別の溶媒を含むことができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートを製造するのに触媒が使用される場合、触媒は1,2−エタンジオールで稀釈できる。
【0016】
本発明の方法のエステル化反応は、エステルが生成するいずれの反応であってもよい。この反応は、カルボン酸又はその無水物はアルコールと反応してエステルを形成する直接エステル化か、又は第1アルコールが第1エステルと反応して第1アルコールのエステルを生成し、第1エステルの開裂により生成する第2アルコールであるエステル交換(transesterification)(アルコーリシス)か、又は2種のエステルが反応してアルコキシ基の交換による2種の異なるエステルを形成するエステル交換(interesterification)であることができる。
【0017】
直接エステル化に、飽和及び不飽和モノカルボン酸、例えば、ステアリン酸、イソステアリン酸、カプリン酸、カプロン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、トリアコンタン酸、安息香酸、メチル安息香酸、及びサリチル酸等、ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ナフタレンジカルボン酸、パモン酸等、そしてこれらの酸の無水物、並びにポリカルボン酸、例えば、トリメリット酸、クエン酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、そしてこれらの酸の無水物等を含む多くのカルボン酸及び無水物を使用できる。直接エステル化にしばしば使用されるアルコールには脂肪族直鎖及び分岐鎖一価アルコール、例えば、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、及びステアリルアルコール等、並びに多価アルコール、例えば、グリセリン及びペンタエリトリトール等がある。本発明の好適な方法は、2−エチルヘキサノールとフタル酸無水物とを反応させ、ビス(2−エチルヘキシル)フタレートを形成することを含む。
【0018】
アルコーリシスに使用されるエステルは、一般に、メチル、エチル及びプロピルエステルのようなより低級の同族体である。それは、エステル化反応の間、蒸留により置換されるアルコールを除去するのが普通だからである。直接エステル化に適した酸のこのようなエステルは本発明の方法に使用される。頻繁に、より長鎖のアルコールのうちの(メタ)アクリレートエステルは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレートのようなエステルのアルコリシスにより製造される。アルコーリシス反応に使用される典型的なアルコールにはブチル、ヘキシル、n−オクチル及び2−エチルヘキシルアルコール並びにジメチルアミノエタノールのような置換アルコール等がある。エステル化反応が2種のエステル間のエステル交換であるとき、一般に、エステルは、蒸留により除去できる揮発性製品エステルを生成するように選択される。
【0019】
ポリマーエステルは直接エステル化又はエステル交換に関連する方法により製造でき、本発明の方法の特に好適な実施態様は前述した触媒の存在下でのポリエステル化反応である。ポリエステル化反応では、ポリ塩基酸又はポリ塩基酸のエステルが、普通、多価アルコールと反応して、しばしばジエステル中間生成物を介してポリマーエステルを生成する。ポリエステル製造に使用される典型的なポリ酸にはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(特に、2,6−ナフタレンジカルボン酸)及びこれらの酸の置換体、例えば、スルホネート基を含有する酸等がある。脂肪族ポリ酸も使用でき、特に、C〜C10脂肪族ジカルボン酸を使用できる。または、ポリエステルの製造は、ジカルボン酸のエステル(典型的には、低級アルキルエステル)から出発して達成でき、例えば、上述したジ−若しくはポリ−カルボン酸のいずれかのC〜Cアルキルエステルであることができる。これらのうち、特にジメチルテレフタレートまたはジメチルナフタレートのようなメチルエステルがポリエステルの製造のために好適な出発物質である。本発明の好適なポリエステル化反応には、テレフタル酸またはジメチルテレテレフタレートと1,2−エタンジオール(エチレングリコール)との反応で、ポリエチレンテレフタレート(PET)を生成し、1,3−プロパンジオールとの反応で、ポリプロピレンテレフタレート(ポリ(トリメチレン)テレフタレートすなわちPTTとしても知られている)を生成し、又は1,4−ブタンジオール(ブチレングリコール)との反応で、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を生成し、あるいはナフタレンジカルボン酸と1,2−エタンジオールとの反応でポリエチレンナフタレート(PEN)を生成する。その他のグリコールまたは1,6−ヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチレン−シクロヘキサン(シクロヘキサンジメタノール)のようなより高級ポリオール並びに同様のジオールもポリエステルを調製するのに適しており、混合物中に使用でき、コポリエステルを生成できる。
【0020】
本発明の触媒及び方法は、テレフタル酸またはそのエステルと1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオールまたは1,3−プロパンジオールとの反応によるPET、PBT、又はPTTの製造に特に適している。本発明の触媒及び方法は、公知のチタンアルコキシ度触媒と比較して、多くの利点を示すことが見出された。
【0021】
ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルの典型的な製造方法は2段階からなる。第1段階では、ジメチルテレフタレート又はテレフタル酸を1,2−エタンジオールと反応させてプレポリマーを形成し、副生メタノール又は水を除去する。第2段階において続いてプレポリマーを減圧下加熱して1,2−エタンジオールを除去し、長鎖ポリマーを形成する。これらの段階のうち一方又は双方は本発明にしたがうエステル化プロセスを含む。ポリブチレンテレフタレートの典型的な製造法は同様であるが、第1段階のジメチルテレフタレートは標準的に使用され、使用される二価アルコールは1,4−ブタンジオールである。方法は回分式又は連続式のいずれかで操作できる。本発明の触媒組成物をポリエステル化反応に添加する好適な手段は使用されるグリコール(例えば、ポリエチレンテレフタレートの製造におけるエチレングリコール)の溶液の形態である。この添加方法は、第1段階又は第2段階におけるポリエステル化反応に対する触媒組成物の添加に応用できる。
【0022】
本発明のエステル化反応は、エステル化反応について知られているいずれかの適切な技術を使用して行うことができる。
直接エステル化では、酸若しくは無水物及び過剰のアルコールを、典型的には、必要の場合溶媒中で、触媒の存在下で加熱する。水は普通反応の副生物であり、溶媒及び/又はアルコールの沸騰混合物との共沸混合物として水を除去する。一般に、濃縮される溶媒及び/又はアルコール混合物は水と混和せず、したがって、溶媒及び/又はアルコールが反応容器に戻される前に分離されている。反応が完了したら、過剰のアルコール及び溶媒(使用されるとき)を蒸発させる。従来のエステル化方法と対照的に、反応混合物から触媒を除去する必要性は一般的にはない。典型的な直接エステル化反応はビス(2−エチルヘキシル)フタレートの製造であり、無水フタル酸と2−エチルヘキサノールとの混合により製造される。モノエステルを形成する開始反応は速いが、続くモノエステルのジエステルへの変換は、水が除去されるまで180〜200℃で触媒の存在下で還流により行う。
【0023】
アルコーリシス反応では、エステル、第1アルコール及び触媒を混合し、一般に、生成アルコール(第2アルコール)を、しばしばエステルとの共沸混合物として蒸留により除去する。頻繁に、第2アルコールを生成エステル又は第1アルコールの有意な損失をもたらさないで効率的に分離させるために、アルコーリシスから生成した蒸気混合物を分留することが必要である。アルコーリシス反応が行われる条件は反応成分に主に依存し、一般にこれらの成分は使用される混合物の沸点に加熱される。
【0024】
本発明の好適な方法はポリエチレンテレフタレートの製造である。ポリエチレンテレフタレートの典型的な回分製造は、テレフタル酸とエチレングリコールを触媒組成物と共に反応器に装填することにより行われ、所望により、内容物を約0.3Mpa(40psi)の圧力下で260〜270℃に加熱する。反応は酸が溶解すると始まり、水が取り除かれ、ビスヒドロキシエチルテレフタレート(bishydroxyethylterephthalate:BHET)を形成する。或いは、ジメチルテレフタレートのようなエステルをテレフタル酸の代わりに使用し、反応の第1段階からメタノールを除去しビスヒドロキシエチルテレフタレートを形成する。生成物を第2オートクレーブ反応器に移し、必要の場合、触媒組成物を加える。100Pa(1mバール)の最終的真空下で260〜310℃に加熱し重縮合を行う。溶融生成エステルを反応器から排出し、冷却し、チップ化する。次いで、チップ化したポリエステルを、より高分子量のポリマーが要求される場合、固体状態重合に付すことができる。典型的には、安定剤(普通、リン酸や有機リン酸塩のようなリン化合物に基づく)、色調会わせ化合物(例えば、コバルト化合物や有機染料)、顔料等のような添加剤を、溶融重合の間、又は最初のエステル化若しくはエステル交換段階時に添加する。
【0025】
本発明の第二好適方法はポリブチレンテレフタレートの製造である。ポリブチレンテレフタレートの典型的な回分製造は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールを所望の場合触媒組成物と共に反応器に装填することにより行われ、約0.3Mpaの圧力下で170〜210℃に内容物を加熱する。反応は230℃で酸が溶解すると始まり、水が取り除かれる。生成物を第2オートクレーブ反応器に移し、必要の場合、触媒組成物を加える。100Paの最終的真空下で240〜260℃に加熱し1,4−ブタンジオール副生物を除去する。溶融生成エステルを反応器から排出し、冷却し、チップ化する。
【0026】
色調整剤(例えば、コバルト化合物、顔料や染料)、安定剤(特に、リン化合物、例えば、リン酸やリン酸エステル種に基づくもの)、充填剤等のポリエステル化反応に慣用的な添加剤をポリエステル反応混合物に添加することもできる。一般に、リン含有安定剤は、約5〜250ppm P、特に、5〜100ppm(生成ポリエステル基準)のレベルで添加する。
【0027】
本発明の方法で使用する触媒の量は、一般に、チタン又はジルコニウム含量(触媒を基準にTi又はZrとして表される)に依存する。普通、量は、直接又は交換エステル化反応について、生成エステルの重量を基準に1〜1000百万分の1部(ppm)である。好適には、量は生成エステルの重量を基準に2〜450ppm、より好適には、生成エステルの重量を基準に5〜50ppmである。ポリエステル化反応では、通常、生成ポリエステルの重量の割合として表して2〜500ppmの量で使用され、普通、生成ポリエステルを基準にTi又はZrとして表して2〜500ppmの量で使用される。好適には、Ti又はZrとして表して2〜150ppm、より好適には、2〜50ppmの量である。
【0028】
本発明の触媒は単独で又は公知の触媒系と組み合わせて使用できる。特に、標準的に2段階で行われるポリエステル製造について、第1(直接エステル化若しくはエステル交換)段階又は第2段階のいずれかについて別の触媒を使用するのが望ましく、本発明の触媒は他の段階で使用される。幾つかのポリエステルプロセスでは、反応の第1段階では触媒を使用しないでBHETを形成し、本発明の触媒は重縮合反応についてのみ使用する。場合により、エステル化又はポリエステル化において本発明の触媒と一緒に追加の触媒を使用できる(ポリエステル製造プロセスの第1段階又は第2段階のいずれかで)。ポリエステル製造における適切な共触媒には公知のアンチモン、マグネシウム、亜鉛、錫、及びゲルマニウム触媒等がある。
【0029】
特に、我々は本発明の触媒と亜鉛含有化合物との組み合わせがポリエステル製造に特に利点があることを見出した。亜鉛化合物の共存は、溶融重合の速度、使用する反応温度をより低くできる、より高い固相重合反応(solid-phase polymerisation:SPP)速度の点において、亜鉛化合物を添加しない本発明の触媒系と比較して、予期されない向上を与えることが見出された。好適な亜鉛化合物はポリエステル反応媒体に可溶性であり酢酸亜鉛のような塩が特に好適である。酢酸亜鉛はポリエステル製造に使用するための周知の触媒であるが、しかし、本発明の触媒と一緒でSPP速度を増加させるその相乗効果は予期されない。SPP速度の促進のために亜鉛化合物を使用するとき、最終ポリエステル組成物中のZnの量を基準に5〜200ppmの濃度で存在するのが好ましい。
【0030】
本発明の方法を経済的速度でエステル又はポリエステルを製造するのに有効であることを示してきた。
本発明を下記の実施例により例証する。
【0031】
(実施例1)(3モルTEAH)
フラスコ中に50%w/wクエン酸水溶液(959g、2.5モルクエン酸)を入れた。攪拌下のこの溶液にチタンイソプロポキシド(284g、1モル)(VERTECTMTIPT)及び100g(1.6モル)のイソプロパノール(IPA)をゆっくりと加えた。得られた混合物を還流下1時間90℃に加熱して濁った溶液を得、次いで、真空下蒸留して遊離水(free water)及びイソプロパノール(300g)を除去した。生成物を50℃以下に冷却し、35%w/w水性テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)(1262g、3モル)を攪拌下の溶液にゆっくりと加え、次いで、496g(8モル)のエチレングリコールを加え、真空下加熱して水/イソプロパノール(1178g)を除去した。さらに一定量の水(34g)及びエチレングリコール(631g)を生成物に加え、次いで、90℃で60分間還流させた。得られた生成触媒組成物は2.1%Tiを含有した。
【0032】
(実施例2)(2モルTEAH)
フラスコ中に50%w/wクエン酸水溶液(480g、1.25モルクエン酸)を入れた。攪拌下のこの溶液にチタンイソプロポキシド(142g、0.5モル)及び50g(0.8モル)のイソプロパノールをゆっくりと加えた。得られた混合物を還流下1時間90℃に加熱して濁った溶液を得、次いで、真空下蒸留して遊離水及びイソプロパノール(151g)を除去した。生成物を50℃以下に冷却し、35%w/w水性TEAH(421g、1モル)を攪拌下の溶液にゆっくりと加え、次いで、248g(4モル)のエチレングリコールを加え、真空下加熱して遊離水/イソプロパノール(378g)を除去した。さらに一定量の水(17g)及びエチレングリコール(315g)を生成物に加え、次いで、90℃で60分間還流させた。得られた生成触媒組成物は2.1%Tiを含有した。
【0033】
(実施例3)(1モルTEAH)
フラスコ中に50%w/wクエン酸水溶液(480g、1.25モルクエン酸)を入れた。攪拌下のこの溶液にチタンイソプロポキシド(142g、0.5モル)及び50g(0.8モル)のイソプロパノールをゆっくりと加えた。得られた混合物を還流下1時間90℃に加熱して濁った溶液を得、次いで、真空下蒸留して遊離水及びイソプロパノール(151g)を除去した。生成物を50℃以下に冷却し、35%w/w水性TEAH(210g、0.5モル)を攪拌下の溶液にゆっくりと加え、次いで、248g(4モル)のエチレングリコールを加え、真空下加熱して水/イソプロパノール(168g)を除去した。さらに一定量の水(17g)及びエチレングリコール(315g)を生成物に加え、次いで、90℃で60分間還流させた。得られた生成触媒組成物は2.1%Tiを含有した。
【0034】
(実施例4)(3モルTEAH)
フラスコ中に50%w/wクエン酸水溶液(960g、2.5モルクエン酸)を入れた。チタンイソプロポキシド(284g、1モル)(VERTECTMTIPT)を20分間にわたって加え、次いで50g(0.8モル)のイソプロパノール(IPA)を加えた。この混合物を還流下1時間90℃に加熱した。生成物を冷却し、35%w/w水性TEAH(1262g、3モル)及び400gの水を攪拌下の溶液にゆっくりと加え、真空下加熱して遊離水/イソプロパノールを除去した。得られた生成固形触媒組成物は4.95%のTiを含有した。
【0035】
(実施例5)(3モルTMAH)
フラスコ中に50%w/wクエン酸水溶液(240g、0.62モルクエン酸)を入れた。攪拌下のこの溶液にチタンイソプロポキシド(71g、0.25モル)及び25g(0.42モル)のイソプロパノールをゆっくりと加えた。得られた混合物を還流下1時間90℃に加熱して濁った溶液を得、次いで、真空下蒸留して遊離水及びイソプロパノール(74g)を除去した。生成物を50℃以下に冷却し、25%w/w水性テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)(274g、0.75モル)を攪拌下の溶液にゆっくりと加え、次いで、124g(2モル)のエチレングリコールを加え、真空下加熱して遊離水/イソプロパノール(253g)を除去した。さらに一定量の水(9g)及びエチレングリコール(158g)を生成物に加え、次いで、90℃で60分間還流させた。得られた生成触媒組成物は2.1%Tiを含有した。
【0036】
(実施例6)(2モルTMAH:モルTi)
フラスコ中に50%w/wクエン酸水溶液(240g、0.62モルクエン酸)を入れた。攪拌下のこの溶液にチタンイソプロポキシド(71g、0.25モル)及び25g(0.42モル)のイソプロパノールをゆっくりと加えた。得られた混合物を還流下1時間90℃に加熱して濁った溶液を得、次いで、真空下蒸留して遊離水及びイソプロパノール(75g)を除去した。生成物を50℃以下に冷却し、25%w/w水性TMAH(182g、0.50モル)を攪拌下の溶液にゆっくりと加え、次いで、124g(2モル)のエチレングリコールを加え、真空下加熱して遊離水/イソプロパノール(161g)を除去した。さらに一定量の水(9g)及びエチレングリコール(158g)を生成物に加え、次いで、90℃で60分間還流させた。得られた生成触媒組成物は2.1%Tiを含有した。
【0037】
(実施例7)(1モルTMAH)
フラスコ中に50%w/wクエン酸水溶液(240g、0.62モルクエン酸)を入れた。攪拌下のこの溶液にチタンイソプロポキシド(71g、0.25モル)及び25g(0.42モル)のイソプロパノールをゆっくりと加えた。得られた混合物を還流下1時間90℃に加熱して濁った溶液を得、次いで、真空下蒸留して遊離水及びイソプロパノール(75g)を除去した。生成物を50℃以下に冷却し、25%w/w水性TMAH(91g、0.25モル)を攪拌下の溶液にゆっくりと加え、次いで、124g(2モル)のエチレングリコールを加え、真空下加熱して遊離水/イソプロパノール(70g)を除去した。さらに一定量の水(9g)及びエチレングリコール(158g)を生成物に加え、次いで、90℃で60分間還流させた。得られた生成触媒組成物は2.1%Tiを含有した。
【0038】
(実施例8)(比較)(3モルコリン)
フラスコ中に50%w/wクエン酸水溶液(480g、1.25モルクエン酸)を入れた。攪拌下のこの溶液にチタンイソプロポキシド(142g、0.5モル)及び10g(0.16モル)のイソプロパノールをゆっくりと加えた。得られた混合物を還流下1時間90℃に加熱して濁った溶液を得、次いで、真空下蒸留して遊離水及びイソプロパノール(112g)を除去した。生成物を50℃以下に冷却し、45%w/w水性コリンヒドロキシド(403g、1.5モル)を攪拌下の溶液にゆっくりと加え、次いで、284g(4.5モル)のエチレングリコールを加え、真空下加熱して遊離水/イソプロパノール(342g)を除去した。さらに一定量の水(27g)及びエチレングリコール(286g)を生成物に加え、次いで、90℃で60分間還流させた。得られた生成触媒組成物は2.1%Tiを含有した。
【0039】
(実施例9)(3モルNHOH)
フラスコ中に50%w/wクエン酸水溶液(480g、1.25モルクエン酸)を入れた。攪拌下のこの溶液にチタンイソプロポキシド(142g、0.5モル)及び10g(0.17モル)のイソプロパノールをゆっくりと加えた。得られた混合物を還流下1時間90℃に加熱して濁った溶液を得、次いで、真空下蒸留して遊離水及びイソプロパノール(112g)を除去した。生成物を50℃以下に冷却し、28%w/w水性アンモニウムヒドロキシド(188g、0.5モル)を攪拌下の溶液にゆっくりと加え、次いで、248g(4モル)のエチレングリコールを加え、真空下加熱して遊離水/イソプロパノール(363g)を除去した。さらに一定量の水(46g)及びエチレングリコール(503g)を生成物に加え、次いで、90℃で60分間還流させた。得られた生成触媒組成物は2.1%Tiを含有した。
【0040】
(実施例10)(比較)
実施例1の方法にしたがったが、132.5g(0.63モル)のクエン酸、72.0g(0.25モル)のチタンイソプロポキシド、94.9g(0.76モル)の32%w/w水酸化ナトリウム水溶液及び125.5g(2.0モル)のエチレングリコールを使用した。生成物はわずかに濁り、まさに黄白色液体だった(Ti含量は3.85重量%)。
【0041】
(実施例11)(比較)
実施例1の方法にしたがったが、132.5g(0.63モル)のクエン酸、72.0g(0.25モル)のチタンイソプロポキシド、31g(0.25モル)の32%w/w水酸化ナトリウム水溶液及び125.5g(2.0モル)のエチレングリコールを使用した。生成物はわずかに濁り、まさに黄白色液体だった(Ti含量は3.85重量%)。
【0042】
(実施例12)ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)の製造
攪拌しているジャケット装着反応器にエチレングリコール(2.04kg)、イソフタル酸(125g)及びテレフタル酸(4.42kg)を装填した。触媒を加え、反応器を40psiの圧力で226〜252℃に加熱し、第1段階直接エステル化(DE)プロセスを開始した。水がエチレングリコールの再循環で形成したら、水を除去した。DE反応の完了時に、反応器の内容物を大気圧にしてから真空を一定に適用した。得られた混合物を真空下290±2℃に加熱してエチレングリコールを除去し、ポリエチレンテレフタレートを得た。約0.62のIVを示す一定トルクに到達したら、最終ポリエステルを排出した。ポリエステル反応混合物中に8ppmのTi含量を生じるように触媒を加えた。得られたポリエステルの重縮合(PC)のための時間及び極限粘度数(IV)及び色値を表1に示す。ポリマーには無機及び有機トナーを加えなかった。ポリマーの色をByk−Gardner Colourview分光光度計を使用して測定した。色表示に使用する共通モデルはCielab L、a及びb目盛りであり、ここで、b−値は黄色度を示す。ポリマーの黄色度はb−値と共に増加する。
【0043】
極限粘度数(intrinsic viscosity:IV)は25℃のo−クロロフェノールのポリエステルの8%溶液の溶液粘度により測定される。
【0044】
【表1】

【0045】
結果は、本発明の触媒は非常に速い重縮合をもたらし、一方、生成ポリエステルは実施例9の比較チタン触媒より顕著に黄色化が少ないことを示す。反応器を出る5分後及び15分後間の色変化により示された、溶融安定性も本発明の触媒を使用して非常に良好である。相対的に高濃度で添加されたアンチモン触媒と比較して、重縮合時間は本発明の触媒を使用してはるかに短時間であり、得られたポリマーはより明るく(より高いL値)、ポリマーに望ましい「光沢」を与える。
【0046】
(実施例13)加水分解試験
【0047】
【表2】

【0048】
チタン触媒の加水分解安定性は次の方法により決定した。350ppmのTiを含有する触媒の必要量を40gのモノエチレングリコール及び0.6gの水(1.5%)に加えた。得られた溶液を完全に混合し、加圧ガラス管中に入れ、2時間280℃のオーブン中で加熱し、その後、管を取り出し、室温に冷却した。色変化と目に見える沈殿がある場合、それを記録した。試験した触媒と結果を上記の表2に示した。
【0049】
(実施例14〜22) 共触媒の使用
エチレングリコール(2.04kg)、イソフタル酸(125g)及びテレフタル酸(4.42kg)を攪拌下のジャケット装備反応器に装填した。この反応器を40psiの圧力で226〜252℃に加熱し、第1段階直接エステル化(DE)プロセスを開始した。水がエチレングリコールの再循環で形成したら、その水を除去した。DE反応の完了時、反応器の内容物を大気圧にし、その後、真空を一定にした。反応器が大気圧にあるときに、リン酸、実施例1の触媒、共触媒(表3及び4に示す)、並びに有機色管理染料システム(3ppm PolysyntherenTM Blue RBL及び2ppm Polysynthren Red GFP;双方ともClariantから入手)を約5分間隔で加え、使用の場合、均一化する。各ポリエステル製造における各添加剤の量を、金属又はリンを基準ppmとして表3に示す。使用した共触媒は、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム又はクエン酸カルシウムの各水溶液だった。得られた混合物を真空下285±2℃に加熱し、エチレングリコールを除去し、ポリエチレンテレフタレートを得た。約0.60dl/gのIVを示す定トルクに達したら、溶融ポリマー化ポリエステルを排出した。得られたポリエステルの重縮合(PC)の時間及び極限粘度数(IV)及び色値を表3に示した。
【0050】
500gの生成ポリエステルを回転反応器中で160℃30分間で結晶化させ、次いで、210℃に予加熱した固相重合反応器に装填した。210℃の温度で窒素一掃を使用してSPPを行った。12時間反応を継続し、試料を反応の開始時及びその後2時間間隔で採取した。各試料を、実施例12で記載した方法により色とIVについて分析した。時間に対するIVをプロットし、固相重合反応の速度を時間当たりのIVの変化(dlV/dt(hr))から算出した。Zn共触媒無しの%としてのIV速度及びSPP12時間後の得られたポリエステルの色を表3及び4に示す。
【0051】
結果は、本発明のチタン触媒と亜鉛共触媒とを一緒に含む触媒系を使用して製造したポリエステルのSPPが相対的に短時間の固相重合できる良好なポリマーを製造するのに驚くほど有効であることを示す。対照的に、実施例14の一般的な方法にしたがうが、250ppmのアンチモン(Sbとして添加)と80ppmZn共触媒とさらに染料系及びリン酸と一緒に含む触媒系を使用してポリエステルを製造した。得られたポリマーは、同様のレベルのZnを含むチタン系システム(実施例15)についての0.356のSPP dl/dt(hr)の速度と比較して0.315のSSP dl/dt(hr)の速度を示した。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)チタン、ジルコニウム又はハフニウムの化合物
b)2−ヒドロキシカルボン酸 並びに
c)テトラエチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドからなる群から選択される第四級アンモニウム化合物
の反応生成物を含むエステル化反応に使用するのに適した触媒。
【請求項2】
チタン、ジルコニウム又はハフニウムの化合物がチタンの化合物である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
チタン、ジルコニウム又はハフニウムの化合物が、式M(OR)(式中、Mはチタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、Rはアルキル基である)を有するアルコキシドであるか、式RO[M(ORO](式中、Rはアルキル基を示し、Mはチタン、ジルコニウム又はハフニウムを示し、nは20未満である)を有する縮合アルコキシドである請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
触媒がアルコールをさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載の触媒。
【請求項5】
前記アルコールが少なくとも2個のヒドロキシル基を含み、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール若しくはポリエチレングリコールから選択される2価のアルコール;又はグリセロール、トリメチロールプロパン若しくはペンタエリトリトールから選択される多価アルコールからなる請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
2−ヒドロキシカルボン酸が乳酸、クエン酸、リンゴ酸又は酒石酸からなる請求項1〜5のいずれかに記載の触媒。
【請求項7】
反応生成物中のチタン、ジルコニウム又はハフニウムに対する2−ヒドロキシカルボン酸のモル比がチタン、ジルコニウム又はハフニウムのモル当たり1〜4モルである請求項1〜6のいずれかに記載の触媒。
【請求項8】
存在する第四級アンモニウム化合物の量がチタン、ジルコニウム又はハフニウムのモル当たり0.05〜4モルの範囲である請求項1〜7のいずれかに記載の触媒。
【請求項9】
亜鉛の化合物をさらに含む請求項1〜7のいずれかに記載の触媒。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の触媒の存在下で、アルコール及び少なくとも1種のカルボン酸若しくはそのエステルを共に反応させ、エステルを形成することを含むエステルの製造法。
【請求項11】
ポリエステルの製造法であって、
a)多価アルコールと少なくとも1種の多官能カルボン酸若しくはそのエステルとを反応させ、多官能カルボン酸のポリヒドロキシエステルを形成すること、
b)前記ポリヒドロキシエステルを重縮合させて、ポリエステルを形成すること
を含み、工程a)及びb)のうちの少なくとも1工程を請求項1〜9のいずれかに記載の触媒の存在下で行うことを特徴とする、前記ポリエステルの製造法。
【請求項12】
a)エチレングリコールとテレフタル酸若しくはそのエステルとを反応させてビスヒドロキシエチルテレフタレートを形成すること、
b)溶融ビスヒドロキシエチルテレフタレートにリン含有化合物を含む安定剤、請求項1〜8のいずれかに記載の触媒及び亜鉛化合物を添加すること、次いで、
c)ビスヒドロキシエチルテレフタレートを重縮合させてポリエチレンテレフタレートを形成することを含む、請求項11に記載のポリエステルの製造法。
【請求項13】
前記ポリエチレンテレフタレートを固相重合に付すことをさらに含む請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2007−507577(P2007−507577A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530589(P2006−530589)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004218
【国際公開番号】WO2005/035622
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】