説明

エステルワックス及びそれを含有するトナー用バインダー樹脂、及びトナー

【課題】
トナーの低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性を改善すること、及び低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性を改善するエステルワックスを含有するバインダー樹脂及びバインダー樹脂を含有し、低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性に優れたトナーを提供することを目的とする。
【解決手段】
トナーの低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性を改善するエステルワックスとして、構成脂肪酸がC16〜C22の飽和脂肪酸からなり、且つ水酸基価が12〜30mgKOH/gであることを特徴とするポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる。本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルをトナーに配合することにより、トナーの低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真などにおいて、静電荷像の現像に使用するトナーの低温定着性、耐ブロッキング性、及び印字耐久性を改善する効果を持つポリグリセリン脂肪酸エステル及びこのポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するトナー用バインダー樹脂、及びトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による普通紙のコピー機、レーザープリンターなどの現像剤として、トナーが用いられている。トナーの製造方法には、機械的粉砕法、重合法、粉霧乾燥法などがあり、それぞれ特徴を持っている。しかし、安全性、品質の安定性、生産効率の面で、全体の8割から9割のトナーは機械的粉砕法で生産されている。機械的粉砕法とは、バインダー樹脂中に結着樹脂や着色剤などの各成分を溶融混練させ、粉砕、分級してトナーを製造する方法であるが、粉砕法で製造されたトナーは、最終的に機械的な力で微粒子化されるため、トナー粒子の粒径が不均一となる。粒径が不均一であると、トナーの流動性や摩擦帯電性が悪化するため、良好な繊細画像は得られにくい欠点を持つ。一方、重合法は粒子の均一性を向上できる方法であり、均一な球形のトナーが得られるため、従来の粉砕法トナーよりも高性能の機能を有するトナーを製造できる方法として、近年普及してきている。重合法とは、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、重合性単量体、着色剤、帯電制御剤、離型剤などを含有する単量体混合物を重合することによりトナーを得る方法であり、スチレン−アクリル系の樹脂の場合では、乳化重合法、懸濁重合法などの製法が知られており、ポリエステル系の樹脂の場合では、エステル伸長重合法、溶解懸濁法、CM(ケミカルミリング法)などが知られている。
【0003】
ところで、最近パソコンの普及と共に、レーザープリンター、デジタル複合機用のトナーとして、省エネルギーに寄与できること、印字及び複写の高速化に対応できること、フルカラー化に対応できること、環境対応型であることなどトナーに要求される項目が高度なものになってきている。コピー機やプリンターで最もエネルギーを消費する部分はトナーの紙への定着工程であるが、一般に、この定着工程では、ヒーターを内包する定着ローラと加圧ローラの間に転写材を通して、熱と圧力の併用で定着を行なう熱ローラ定着方式が採用されている。しかしながら、熱ローラ定着方式では、ローラと転写材上のトナーが圧着するため、溶融したトナーがローラ表面に付着して後続の転写材を汚す、いわゆるオフセット現象が生じ易くなる。
【0004】
また、熱ローラ定着方式を採用する定着工程では、通常、定着ローラの温度を150℃以上にする必要があり、エネルギー源として多くの電力を消費する。近年、画像形成装置における、消費電力の低減化、印字速度及び複写速度の高速化への要求の高まりにより、定着時の定着ローラの温度(定着温度)を下げることが求められている。
【0005】
上記画像形成装置の消費電力の低減化、及び高速化の要請に対し、定着ローラの温度が、低温でも転写材に定着可能なトナー(低温定着化トナー)の設計が検討されている。例えば、トナーを構成する樹脂として、低分子量の成分を有する樹脂を用いる試み、低融点の成分を有する樹脂を用いる試み等が行われてきた。
【0006】
しかしながら、トナーを構成する樹脂の分子量や融点を低下させ過ぎてしまうと、トナーの定着工程においては、トナーの低温定着化は可能となるが、オフセット現象は改善されない。さらに、トナーの保存時においては、トナー粒子同士が融着する、いわゆるブロッキングという現象が引き起こされ、トナーの保存性を悪化させる問題も生じる。
【0007】
このため、トナーの保存時においては、トナーの保存性(耐ブロッキング性)を保ち、トナーの定着工程においては、低温定着化を可能とし(低温定着性)、オフセット現象が発生せず(耐オフセット性)、大量の印刷を行なってもカブリの発生がない(印字耐久性)などの印字性能に優れたトナーの開発が求められている。
【0008】
このような課題を解決するワックスとして、特許文献1では、多官能エステルワックスの酸価が1mgKOH/g以下、且つ水酸基価が10mgKOH/g以下であるものが用いられている。また、特許文献2では、ポリグリセリン脂肪酸エステルの酸価が3mgKOH/g以下、水酸基価が5mgKOH/g以下であるものが用いられている。さらには、特許文献3においても、ジグリセリン脂肪酸エステルの酸価が10mgKOH/g以下、水酸基価が10mgKOH/g以下であるものが用いられている。これらの酸価、及び水酸基価が極めて小さいエステルワックスは、熱溶融特性は良くなるものの、用紙との接着性が乏しくなる場合や、また、極性が低すぎるために、エステルワックスを樹脂中に微分散させることが困難である場合が存在した。また、これらの品質のポリグリセリン脂肪酸エステルを得るには、原料のポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応のみで得ることは困難であり、エステル化反応物に残存する未反応の遊離脂肪酸成分や、部分エステル成分を取り除くために、水洗分液処理などの精製工程を実施する必要があった。この精製工程を実施することによる製造コストの上昇が懸念されていた。一方、特許文献4では、ポリグリセリンと脂肪酸との部分エステルが用いられている。これらの部分エステルは、前述した水酸基価が極めて小さいエステルワックスに比べて極性が高いため、樹脂に溶解してしまう場合があり、樹脂のガラス転移温度を著しく低下させる恐れがある。そのため、低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性の改善は充分であるとは言えなかった。
【0009】
【特許文献1】特開2006−276293号公報
【特許文献2】特開2008−89909号公報
【特許文献3】特開2006−268056号公報
【特許文献4】特許第2697953号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、トナーの製造方法、樹脂の種類に関わらず、バインダー樹脂中にワックスが微分散され、これにより、トナーの定着温度を低下させ、かつブロッキングを防止する効果に優れた低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性を改善するエステルワックスを提供することであり、且つ当該エステルワックスを安価に、且つ容易に製造することにある。さらに、本発明は低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性を改善するエステルワックスを含有するバインダー樹脂及びバインダー樹脂を含有し、低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性に優れたトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、構成脂肪酸が、炭素数16〜22の飽和脂肪酸からなるポリグリセリン脂肪酸エステルであって、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価が12〜30mgKOH/gであることによって、上記の課題を解決することができるという知見を見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを添加したトナーは、樹脂に対してエステルワックスが高度に微分散することによって、低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性の何れにおいても向上効果に優れていた。従って、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを特定量配合することにより、低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性に優れたトナーが得られ、高速印刷用画像形成装置に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、構成脂肪酸としてパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が挙げられ、これらを単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリンは、水酸基価から算出した平均重合度が2〜20、好ましくは2〜10のものを使用する。また、この範囲のポリグリセリンを単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。ここで、平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)である。詳しくは、次式(式1)および(式2)から平均重合度が算出される。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
上記(式2)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(I)、2003年度版」に準じて算出される。
【0016】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は80%〜92%である必要があり、好ましくは85%〜92%である。エステル化率が80%未満、または92%を超えた場合では、樹脂に対する分散性が低下する。そのため、トナーの低温定着性や耐ブロッキング性の悪化に繋がり所望の性能が得られない、あるいは使用量に制限が出てくるなどの問題が生じやすい。ここで、エステル化率とは、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、ポリグリセリンに付加している脂肪酸のモル数(M)としたとき、(M/(n+2))×100=エステル化率(%)で算出される値である。なお、水酸基価とは、上述の水酸基価と同様に算出される値である。
【0017】
さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価は、12〜30mgKOH/gであり、好ましくは12〜25mgKOH/gである。水酸基価が12〜30mgKOH/gの範囲を外れると、樹脂に対する分散性が低下する、あるいは樹脂と相溶化する。そのため、トナーの低温定着性や耐ブロッキング性の悪化に繋がり所望の性能が得られない、あるいは使用量に制限が出てくるなどの問題が生じやすい。ここで、水酸基価とは、上述の水酸基価と同様に算出される値である。
【0018】
本発明におけるバインダー樹脂として、スチレン・アクリル共重合樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂など、及びこれらを数種複合する樹脂が挙げられるがこれに限定するものではない。
【0019】
本発明のトナーとは、乾式トナー、液体トナーの何れであっても良い。乾式トナーの場合は、着色剤や荷電制御剤、離型剤などをバインダー樹脂中に分散させたものが一般的であり、それが1成分トナーまたは2成分トナーであっても良い。さらには磁性を有するものであっても非磁性であっても良い。また、必要であれば二酸化ケイ素、金属石鹸、ポリオレフィンワックスなどのトナー用添加剤を配合しても良い。また、液体トナーの場合も同様に、着色剤、荷電制御剤に加え、キャリアとしての炭化水素油や植物油、また、これらに樹脂を分散させる為の分散剤などが配合されたものが一般的であり、1成分トナー、2成分トナー、磁性、非磁性などを問わない。
【0020】
また、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルが使用できるトナーの製造方法であるが、機械的粉砕法、粉霧乾燥法、重合法、マイクロカプセル法など限定されることなく適用することができる。
【実施例】
【0021】
次に、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、今回使用したポリグリセリンは、ジグリセリンS、ポリグリセリン#500、#750(いずれも阪本薬品工業株式会社製)であり、水酸基価から算出した平均重合度は各々2,6,10である。以下、本発明の実施例及び比較例を示す。ただし、部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0022】
(WAX1〜6、及び9〜14のポリグリセリン脂肪酸エステルの合成)
ジグリセリンSを100gとパルミチン酸571gを反応容器に入れ、触媒及び窒素気流下、240℃で反応させ、平均エステル化率が約92%、水酸基価が18mgKOH/gのジグリセリンパルミテート(WAX1)を得た。以下同様に、ポリグリセリンと脂肪酸の種類、及びポリグリセリンに対する脂肪酸のモル比率を変化させてWAX2〜6、及び9〜14を製造し、表1に示した。
【0023】
(WAX7〜8のポリグリセリン脂肪酸エステル精製品の合成)
ジグリセリンSを100gとステアリン酸704gを反応容器に入れ、触媒及び窒素気流下、240℃で反応させた。次いで、得られた反応物をトルエン、エタノール混合溶媒に希釈した後、水酸化ナトリウム水溶液を加え70℃で30分間撹拌した。その後、30分間静置して水層部を除去した。さらに、イオン交換水を加え70℃で30分間撹拌した後、30分間静置して水層部を除去する操作を4回繰り返し、得られたエステル層を減圧条件下で溶媒を留去し、平均エステル化率が約100%、酸価が0.3mgKOH/g、水酸基価が1.5mgKOH/gのジグリセリンステアレート精製品(WAX7)を得た。また、脂肪酸の種類を変更したWAX8を同様に製造し、表1に示した。
【0024】
【表1】

【0025】
(実施例1)
スチレン80.5部及びn−ブチルアクリレート19.5部からなるコア用単量体と、カーボンブラック7部、帯電防止剤1部、ジビニルベンゼン0.3部、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー0.5部、ジグリセリンパルミテート(WAX1)15部を添加、混合、溶解してコア用重合性単量体組成物を得た。コア用重合性単量体組成物の調整は全て室温で行った。
【0026】
他方、室温でイオン交換水250部に塩化マグネシウム9.5部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム5.8部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド分散液を調整した。この分散液の調整は全て室温で行った。上記コロイドの粒度分布をレーザー回折散乱法粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製)にて、体積累計が50%に相当する体積平均粒子径であるDv50(単位μm)を測定したところ、0.30μmであった。
【0027】
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、室温で上記コア用重合性単量体組成物を投入し、液滴が安定するまで攪拌した。そこに重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカノエート6部添加後、インライン型分散機を用いて15,000rpmの回転数で30分間高せん断攪拌して、単量体混合物の液滴を造粒した。この造粒した単量体混合物の水分散液を10Lの反応器に入れ、60℃で重合反応を開始させた。次に、室温でメチルメタクリレート3部とイオン交換水30部を超音波乳化機にて微分散化処理して、シェル用重合性単量体の水分散液を得た。このシェル用重合性単量体と水溶性開始剤として過硫酸アンモニウム0.3部を蒸留水65部に溶解し、これを反応器に入れ、4時間重合を継続した後、反応を停止しトナー粒子の水分散液を得た。
【0028】
上記により得たコア・シェル型重合体粒子の水分散液を室温で攪拌しながら、硫酸により酸洗浄を行い、ろ過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えてスラリー化し、水洗浄を行った。その後、再度脱水と水洗浄を室温で数回繰り返し行って、固形分をろ過した後、乾燥機にて45℃で一昼夜乾燥を行い、重合体粒子を得た。この重合体粒子100部に、室温で疎水化処理したコロイダルシリカ0.6部を添加し、ヘンシルミキサーを用いて混合して重合法トナーを得た。
【0029】
(実施例2)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をジグリセリンステアレート(WAX2)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0030】
(実施例3)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をジグリセリンベヘネート(WAX3)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0031】
(実施例4)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をヘキサグリセリンベヘネート(WAX4)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0032】
(実施例5)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をデカグリセリンステアレート(WAX5)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0033】
(実施例6)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をデカグリセリンベヘネート(WAX6)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0034】
(比較例1)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をジグリセリンステアレート精製品(WAX7)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0035】
(比較例2)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をジグリセリンベヘネート精製品(WAX8)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0036】
(比較例3)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をジグリセリンパルミテート(WAX9)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0037】
(比較例4)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をデカグリセリンベヘネート(WAX10)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0038】
(比較例5)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をジグリセリンベヘネート(WAX11)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0039】
(比較例6)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をヘキサグリセリンステアレート(WAX12)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0040】
(比較例7)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をヘキサグリセリンベヘネート(WAX13)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0041】
(比較例8)
実施例1において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をデカグリセリンステアレート(WAX14)に替えた。それ以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0042】
(実施例7)
粉砕トナーの常法により、スチレン成分80%、メタクリル酸メチル5%、アクリル酸n−ブチル15%、架橋性モノマーであるジビニルベンゼン0.2%からなるビニル系共重合体を製造した。このビニル系共重合体25部、ジグリセリンパルミテート(WAX1)10部、マグネタイト60部、ポリプロピレンワックス2部、カーボンブラック2部、帯電防止剤1部をボールミルで粉砕混合した。その後、ロールミルで溶融混練し、冷却、粗粉砕後、ジェットミルで微粉砕してトナー用組成物を得た。さらに、このトナー用組成物に、疎水性シリカ微粉末0.3部を添加して粉砕法トナーを調整した。
【0043】
(実施例8)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をジグリセリンステアレート(WAX2)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0044】
(実施例9)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をジグリセリンベヘネート(WAX3)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0045】
(実施例10)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をヘキサグリセリンベヘネート(WAX4)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0046】
(実施例11)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をデカグリセリンステアレート(WAX5)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0047】
(実施例12)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をデカグリセリンベヘネート(WAX6)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0048】
(比較例9)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をジグリセリンステアレート精製品(WAX7)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0049】
(比較例10)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をジグリセリンベヘネート精製品(WAX8)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0050】
(比較例11)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をジグリセリンパルミテート(WAX9)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0051】
(比較例12)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をデカグリセリンベヘネート(WAX10)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0052】
(比較例13)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をジグリセリンベヘネート(WAX11)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0053】
(比較例14)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をヘキサグリセリンステアレート(WAX12)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0054】
(比較例15)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をヘキサグリセリンベヘネート(WAX13)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0055】
(比較例16)
実施例7において使用したジグリセリンパルミテート(WAX1)をデカグリセリンステアレート(WAX14)に替えた。それ以外は実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0056】
(試験方法)
本実施例、及び比較例では、以下の方法で評価し、重合法トナーの試験結果を表2に示した。また、粉砕法トナーの試験結果を表3に示した。
【0057】
(ワックスの分散状態)
トナー粒子を金属コーティングし、エポキシ樹脂にて包括処理した後、超薄切片を作製した。次いで、四酸化ルテニウムにて染色後、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて、トナー樹脂に対するワックスの分散状態を観察した。ワックスの分散粒子径(μm)を測定した結果を表2、及び表3に示した。
【0058】
(最低定着温度、ホットオフセット温度)
定着ロール部の温度を変化できるように改造した市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(8枚機)を用いて、定着試験を行った。定着試験は、改造プリンターの定着ロールの温度を変化させて、それぞれの温度におけるトナーの定着率を測定し、温度−定着率の関係を求めることにより行った。定着率は、改造プリンターで印刷した試験用紙の黒ベタ領域において、テープ剥離操作前後の画像濃度の比率から計算した。すなわち、テープ剥離前の画像濃度をID前、テープ剥離後の画像濃度をID後とすると、定着率は次式から算出することができる。
定着率(%)=(ID後/ID前)×100
ここで、テープ剥離操作とは試験用紙の測定部分に粘着テープを貼り、一定圧力で付着させ、その後一定速度で紙に沿った方向に粘着テープを剥離する一連の操作である。また、画像濃度は、反射式画像濃度測定器を用いて測定した。この定着試験において、定着率80%の定着ロール温度を現像剤の最低定着温度として評価した。また、ホットオフセットの測定は、印刷された紙上にホットオフセットによる印刷汚れを確認できた温度をホットオフセット温度とし、定着ローラ温度230℃まで測定した。結果を表2、及び表3に示した。
【0059】
(耐ブロッキング性)
トナーを密閉可能な容器に入れて密閉した後、この容器を55℃の温度に保持した恒温水槽中に沈める。8時間経過した後、恒温水槽から容器を取り出し、容器内のトナーを42メッシュの篩上に移す。この際、容器内でのトナーの凝集構造を破壊しないように、容器内からトナーを静かに取り出し、かつ注意深く篩上に移す。そして、粉体測定機を用いて、強度4.5の条件で30秒間振動した後、篩上に残ったトナーの状態を観察した。トナー粒子に凝集(ケーキ化)が認められない場合を○で示し、僅かに凝集が認められる場合を△、凝集が認められる場合を×で示した。結果を表2、及び表3に示した。
【0060】
(印字耐久性)
トナー400gをトナーカートリッジに入れ、前述の改造プリンターを用いて、23℃、50RH%の環境下で、初期から16,000枚まで連続印字を行ない、反射式画像濃度測定機で測定した印字濃度が1.3以上で、かつ、白色度計(日本電色工業株式会社製)で測定した非画像部のカブリが15%以下の画質を維持できる連続印字枚数を調べ、トナーによる画像の印字耐久性を試験した。結果を表2、及び表3に示した。
【0061】
(高温放置後の印字耐久性)
トナー400gをトナーカートリッジに入れ、このカートリッジをアルミ袋で密閉した後、50℃の温度に保持した恒温水槽の中に沈める。5日間経過した後、恒温水槽からカートリッジを取りだし、その後は前述と同様の方法で印字耐久性を試験した。結果を表2、及び表3に示した。
【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを添加したトナーは、低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性に優れることが分かった。従って、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを特定量配合することにより、低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性に優れたトナーが得られ、高画質、高速化が要望される高速印刷用画像形成装置に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成脂肪酸が、炭素数16〜22の飽和脂肪酸からなるポリグリセリン脂肪酸エステルであって、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価が12〜30mgKOH/gであることを特徴とし、トナーの低温定着性、耐ブロッキング性、印字耐久性を改善するエステルワックス。
【請求項2】
請求項1記載のエステルワックスを含有するトナー用バインダー樹脂。
【請求項3】
請求項2記載のバインダー樹脂を用いたトナー。

【公開番号】特開2010−102024(P2010−102024A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272035(P2008−272035)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】