説明

エステル縮合物の製造方法

【課題】 エステル縮合物を副生成物の生成を抑制し収率よく大量に合成することを可能とし、使用する触媒として触媒効率がよく、少量の使用でしかも再利用を可能とし反復して利用することができ、グリーンケミストリーの点からも好ましい工業的方法に適用できるエステル縮合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】 ジルコニウム(IV)化合物からなる触媒及びハフニウム(IV)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒と、鉄(III)化合物からなる触媒、ガリウム(III)化合物からなる触媒、スズ(IV)化合物からなる触媒、及びアルミニウム(III)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒と、アンモニウム塩担持樹脂からなる触媒担持用樹脂とを用いてエステル化反応を行うエステル縮合物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル縮合物の製造方法やこれに用いる触媒に関し、より詳しくは、エステル縮合物を高収率で得ることができ、回収した触媒の反復使用を可能とし、資源の浪費を著しく削減し、資源の有効利用を図り、環境破壊を抑制することができるエステル縮合物の製造方法や、これに用いる触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
有機合成の最も基本的な反応であるエステル化反応は、環境に優しい化学プロセスからも利用価値の高い重要な反応である。エステル化反応については既に膨大な数の報告例があるが、基質に対し1当量以上の縮合剤あるいは活性化剤を用いるケースが多く、また、反応後には大量の副生成物が生じるため煩雑な分離精製操作が必要となり、カルボン酸とアルコールのどちらか一方を過剰に用いなければ効率よくエステルを得ることができないことが多く(例えば、特許文献1、非特許文献1〜5参照。)等、グリーンケミストリー及び原子効率の観点から問題があった。本来、基質の過剰な使用は避けるべきであり、等モル量のカルボン酸とアルコールから直接、エステル化を行うことができれば理想的なプロセスとなる。重縮合触媒としては、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウムの群から選ばれた一種以上の金属化合物と、Ar−O−(Arはアリール基を表す)等の構造を有するポリエステル重合触媒(例えば、特許文献2参照。)や、原料である酸とアルコールをほぼ等モルで使用しても高収率でエステルが合成できるエステルの製法として、チタン族金属のハライド類、硝酸塩類、カルボン酸塩類、アルコラート類およびアセチルアセトン型錯体からなる群から選ばれるチタン族金属化合物を活性成分の少なくとも一つとして含有するエステル化触媒を用いるカルボン酸とアルコールとからのエステル製造方法(例えば、特許文献3参照。)が知られている。
【0003】
その他、アルミニウム化合物とそれ以外の金属化合物とからなるエステル重縮合触媒(例えば、特許文献4参照)や、ゲルマニウム化合物と、チタン、アンチモン、ジルコニウム、鉄等から選ばれる少なくとも一種の金属化合物とを触媒として用いる脂肪族ポリエステルの製造方法(例えば、特許文献5参照)や、チタンハロゲン化物の加水分解物と、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ハフニウム、鉄等から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物等を用いるポリエステル製造用触媒(例えば、特許文献6、7参照)や、アルミニウム、ジルコニウム、鉄から選ばれる1種以上の金属酸過物及び/又は金属水酸化物にリン酸イオンを含有させたエステル交換触媒(例えば、特許文献8参照)等が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開昭52−75684号公報
【特許文献2】特開2000−154241
【特許文献3】特開平8−71429号公報
【特許文献4】特開2000−302854号公報
【特許文献5】特開平8−27262号公報
【特許文献6】特開2001−48973号公報
【特許文献7】特開2001−64377号公報
【特許文献8】特開2001−17862号公報
【非特許文献1】「Synthesis」1978年p.929
【非特許文献2】「Chem. Lett」1977年p.55
【非特許文献3】「Chem. Lett.」1981年p.663
【非特許文献4】「Tetrahedron. Lett. 28」1987年p.3713
【非特許文献5】「J. Org. Chem. 56」1991年p.5307
【0005】
しかしながら、エステル化反応において、原料であるカルボン酸とアルコールをほぼ等モルで使用しても高収率で、副反応が極めて少なく、選択的にエステルを合成でき、少量でも低温で反応速度が速く、しかも、簡単な処理により再利用を可能とし反復して利用することにより、その使用量を著しく削減することができる触媒は存在しなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ますます複雑な構造を有する化合物が医薬品等の合成上望まれており、かかる医薬品等の有機化合物の合成において、エステル縮合物を副生成物の生成を抑制し収率よく大量に合成することを可能とし、使用する触媒として触媒効率がよく、少量の使用でしかも再利用を可能とし反復して利用することができ、グリーンケミストリーの点からも好ましい工業的方法に適用できるエステル縮合物の製造方法や、これに使用する触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ジルコニウム(IV)化合物やハフニウム(IV)化合物に、鉄(III)化合物、ガリウム(III)化合物、スズ(IV)化合物などを組み合わせた複合触媒が、カルボン酸とアルコールのエステル縮合反応の触媒として極めて有用であることを明らかにしている。さらに、これら複合触媒が、ある種のアンモニウム塩(イオン性液体(室温若しくは室温に近い温度でも液体となる性質を持つ塩))に非常に親和性が高いことを利用し、反応溶液(有機層)とイオン性液体の二層分離による触媒の回収・再利用に成功している(例えば、特願2003−345089号)。
【0008】
本発明者は、さらに、これらエステル化反応に非常に有用な触媒の回収・再利用について鋭意研究を重ねた結果、上記アンモニウム塩を樹脂に担持させ、次いで、このアンモニウム塩を担持した樹脂上に触媒を担持(吸着)させることに成功し、そして、この触媒担持樹脂が、エステル化反応に固体触媒として利用でき、さらに、触媒の回収・再利用がより容易にしかも確実にできることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、[1]ジルコニウム(IV)化合物からなる触媒及びハフニウム(IV)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒A)と、鉄(III)化合物からなる触媒、ガリウム(III)化合物からなる触媒、スズ(IV)化合物からなる触媒、及びアルミニウム(III)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒B)と、アンモニウム塩担持樹脂からなる触媒担持用樹脂とを用いてエステル化反応を行うことを特徴とするエステル縮合物の製造方法や、[2]触媒A 1モルに対して、触媒Bを0.7モル以上用いることを特徴とする前記[1]に記載のエステル縮合物の製造方法や、[3]エステル化反応終了後、得られた触媒担持樹脂を用いて、次回のエステル化反応を行うことを特徴とする前期[1]又は[2]に記載のエステル縮合物の製造方法や、[4]触媒担持樹脂が洗浄用溶媒で洗浄されたものであることを特徴とする前記[3]に記載のエステル縮合物の製造方法や、[5]ジルコニウム(IV)化合物からなる触媒及びハフニウム(IV)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒A)と、鉄(III)化合物からなる触媒、ガリウム(III)化合物からなる触媒、スズ(IV)化合物からなる触媒、及びアルミニウム(III)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒B)とを担持したアンモニウム塩担持樹脂からなる触媒担持樹脂を用いてエステル化反応を行うことを特徴とするエステル縮合物の製造方法や、[6]アンモニウム塩担持樹脂からなる触媒担持樹脂が、ジルコニウム(IV)化合物からなる触媒及びハフニウム(IV)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒A)と、鉄(III)化合物からなる触媒、ガリウム(III)化合物からなる触媒、スズ(IV)化合物からなる触媒、及びアルミニウム(III)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒B)と、アンモニウム塩担持樹脂からなる触媒担持用樹脂とを用いてエステル化反応行った結果得られたものであることを特徴とする前記[5]に記載のエステル縮合物の製造方法や、[7]触媒A 1モルに対して、触媒Bを0.7モル以上用いたことを特徴とする前記[6]に記載のエステル縮合物の製造方法や、[8]触媒担持樹脂が洗浄用溶媒で洗浄されたものであることを特徴とする前記[6]又は[7]に記載のエステル縮合物の製造方法や、[9]アンモニウム塩担持樹脂において、アンモニウムカチオンが、N−アルキルピリジニウムカチオン又はN,N’−ジアルキルイミダゾリウムカチオンであり、アンモニウムアニオンが、トリフルオロメタンスルホンイミド又はトリフルオロメタンスルホナートであることを特徴とする前記[1]〜[8]のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法や、[10]アンモニウムカチオンが、N−アルキルピリジニウムカチオンであり、アンモニウムアニオンが、トリフルオロメタンスルホンイミドであることを特徴とする前記[9」に記載のエステル縮合物の製造方法に関する。
【0010】
また本発明は、[11]アンモニウム塩担持樹脂が、4−(N−ピリジニウム)ブチルポリスチレントリフルオロメタンスルホンイミドであることを特徴とする前記[10]に記載のエステル縮合物の製造方法や、[12]エステル化反応が、カルボン酸とアルコールとの反応であることを特徴とする前記[1]〜[11]のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法や、[13]エステル化反応が、溶媒を用いて加熱還流し、共沸する水を反応系から除去して行なわれることを特徴とする前記[1]〜[12]のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法や、[14]溶媒として、非極性溶媒及び/又は低極性溶媒を用いることを特徴とする前記[13]に記載のエステル縮合物の製造方法や、[15]非極性溶媒及び/又は低極性溶媒が、トルエン、キシレン、メシチレン、オクタン、ヘプタンから選ばれる1種又は2種以上の溶媒であることを特徴とする前記[14]に記載のエステル縮合物の製造方法や、[16]ジルコニウム(IV)化合物が、一般式(1)
Zr(OH)(OR (1)
(式中、Rは、アシル基又はアルキル基を示し、a及びbは、それぞれ0又は1〜4の整数であって、a+b=4の関係を有する。)で示される化合物であることを特徴とする前記[1]〜[15]のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法や、[17]ジルコニウム(IV)化合物が、一般式(3)
ZrX(3)
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Yはテトラヒドロフランを示し、eは0又は2を示す。)で表される化合物であることを特徴とする前記[1]〜[15]のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法や、[18]ハフニウム(IV)化合物が、一般式(2)
Hf(OH)(OR (2)
(式中、Rは、アシル基又はアルキル基を示し、c及びdは、それぞれ0又は1〜4の整数であって、c+d=4の関係を有する。)で示される化合物であることを特徴とする前記[1]〜[17]のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法や、[19]ハフニウム(IV)化合物が、一般式(4)
HfX(4)
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Yはテトラヒドロフランを示し、fは0又は2を示す。)で表される化合物であることを特徴とする上記[1]〜[17]のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法や、[20]鉄(III)化合物、ガリウム(III)化合物、スズ(IV)化合物、又はアルミニウム(III)化合物が、アルコキシドであることを特徴とする前記[1]〜[19]のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法に関する。
【0011】
さらに本発明は、[21]ジルコニウム(IV)化合物からなる触媒及びハフニウム(IV)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒A)と、鉄(III)化合物からなる触媒、ガリウム(III)化合物からなる触媒、スズ(IV)化合物からなる触媒、及びアルミニウム(III)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒B)とを担持したことを特徴とするエステル化反応に用いられる触媒担持樹脂や、[22]アンモニウム塩担持樹脂において、アンモニウムカチオンが、N−アルキルピリジニウムカチオン又はN,N’−ジアルキルイミダゾリウムカチオンであり、アンモニウムアニオンが、トリフルオロメタンスルホンイミド又はトリフルオロメタンスルホナートであることを特徴とする前記[21]に記載のエステル化反応に用いられる触媒担持樹脂や、[23]アンモニウムカチオンが、N−アルキルピリジニウムカチオンであり、アンモニウムアニオンが、トリフルオロメタンスルホンイミドであることを特徴とする前記化[22]に記載のエステル化反応に用いられる触媒担持樹脂や、[24]アンモニウム塩担持樹脂が、4−(N−ピリジニウム)ブチルポリスチレントリフルオロメタンスルホンイミドであることを特徴とする前記[23]に記載のエステル化反応に用いられる触媒担持樹脂に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエステル縮合物の製造方法は、副生成物の生成を抑制し、効率よくエステル縮合物を製造することができ、触媒効率がよく、しかも触媒効率を低下させず反復して利用することができるため、再利用が可能であり、グリーンケミストリーの点からも好ましく、安価に大量にエステル縮合物を製造することができ、最も基本的な有機反応であるエステル縮合物の工業上の製造方法としても好適であって、有機合成上の価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る第1のエステル縮合物の製造方法としては、ジルコニウム(IV)化合物からなる触媒及びハフニウム(IV)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒A)と、鉄(III)化合物からなる触媒、ガリウム(III)化合物からなる触媒、スズ(IV)化合物からなる触媒、及びアルミニウム(III)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒B)と、アンモニウム塩担持樹脂からなる触媒担持用樹脂とを用いてエステル化反応を行う方法であれば、特に制限されるものではなく、触媒担持用樹脂は、エステル化反応の開始前に反応系に添加することが好ましいが、反応途中に添加することも可能である。
【0014】
本発明のエステル縮合物の製造方法によれば、触媒Aと共に触媒Bを用いるので、触媒Aを単独で用いるよりも活性が高く、効率よくエステル縮合物を製造することができると共に、反応に用いた触媒(触媒A及び触媒B)を効率よく触媒担持用樹脂に担持して回収することができる。
【0015】
また、本発明に係る第2のエステル縮合物の製造方法は、上記触媒Aと触媒Bとを担持したアンモニウム塩担持樹脂からなる触媒担持樹脂を用いてエステル化反応を行う方法であれば特に制限されるものではなく、このエステル縮合物の製造方法によっても、副生成物の生成を抑制し、効率よくエステル縮合物を製造することができる。本発明に係る第2のエステル縮合物の製造方法に用いる触媒担持樹脂としては、その製法等特に制限されるものではなく、単に、触媒A及び触媒Bと触媒担持用樹脂とを添加し反応させて得たものを用いてもよいが、上記本発明の第1のエステル縮合物の製造方法により回収されたものが好ましく、複数回エステル化反応に使用されたものを用いることができる。
【0016】
本発明において用いられる触媒担持樹脂は、触媒効率を低下させず反復して利用することができるため、再利用が可能であり、グリーンケミストリーの点からも好ましく、安価に大量にエステル縮合物を製造することができ、最も基本的な有機反応であるエステル縮合物の工業上の製造方法としても好適であって、有機合成上の価値が極めて高い。エステル化反応終了後、得られた触媒担持樹脂を用いて、次回のエステル化反応を行う場合、触媒担持樹脂は洗浄用溶媒で洗浄されたものであることが好ましい。これにより、触媒担持樹脂から生成物(エステル縮合物)や不純物を排除して、触媒効率を低下させることなく次回の反応に使用することができる。
【0017】
前記触媒担持用樹脂(触媒担持樹脂)としてのアンモニウム塩担持樹脂としては、触媒A及び触媒Bを担持することができる樹脂であれば特に制限されるものではなく、例えば、アンモニウム塩担持ポリスチレン、アンモニウム塩担持ポリエチレン、アンモニウム塩担持ポリアクリロニトリル等が挙げられ、触媒A及び触媒Bの活性を低下させるような極性基をポリマー上に含まないアンモニウム担持ポリスチレンが好ましい。
【0018】
アンモニウム塩担持樹脂におけるアンモニウム塩は、アンモニウムカチオンが、N−アルキルピリジニウムカチオン又はN,N’−ジアルキルイミダゾリウムカチオンであり、アンモニウムアニオンが、トリフルオロメタンスルホンイミド又はトリフルオロメタンスルホナートであることが好ましく、アンモニウムカチオンが、N−アルキルピリジニウムカチオンであり、アンモニウムアニオンが、トリフルオロメタンスルホンイミドであることが特に好ましい。具体的に、アンモニウム塩としては、例えば、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホンイミド、N,N’−ジアルキルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンイミド、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、N,N’−ジアルキルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホナートが挙げられ、より具体的には、4−(N−ピリジニウム)ブチルトリフルオロメタンスルホンイミド、4−[N−(N’−メチル)イミダゾリウム]ブチルトリフルオロメタンスルホンイミドを挙げることができる。
【0019】
かかる触媒担持用樹脂の使用量としては、上記触媒A及び触媒Bを十分に担持することができる量であれば特に制限されるものではなく、その樹脂の種類等にもよるが、一般に、樹脂に担持されたアンモニウム塩のモル量が、触媒の総使用モル量に対して、10〜100倍程度となる量であることが好ましく、20〜40倍程度となる量であることがより好ましい。
【0020】
上記触媒担持用樹脂としてのアンモニウム塩担持樹脂の製造方法としては、例えば、ハロゲン化アルキルポリスチレンにピリジンやN−アルキルイミダゾールを反応させて、ハロゲン化ピリジニウム塩担持ポリスチレンを製造し、かかるハロゲン化ピリジニウム塩担持ポリスチレンに対して、金属トリフルオロメタンスルホンイミドを反応させる方法を挙げることができる。上記アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは炭素数3〜5のアルキル基が挙げられ、ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。また、金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等を挙げることができる。
【0021】
また、本発明のエステル化反応において、触媒Bは、触媒A 1モルに対して、0.7モル以上用いることが好ましく、0.8モル以上用いることがより好ましく、0.9モル以上用いることがさらに好ましい。一般に、触媒Aは、アンモニウム塩担持樹脂からなる触媒担持用樹脂に担持されにくいが、触媒Bを所定量用いることにより、触媒担持用樹脂に触媒(触媒A及び触媒B)を容易に担持させることができる。また、触媒Aの活性が触媒Bに比して高いので、触媒活性及び触媒の回収・再利用の点を考慮すると、触媒A:触媒Bが、モル比で、1:0.7〜1:2の割合となるように用いることが好ましく、1:0.8〜1:1.5の割合となるように用いることがより好ましく、1:0.9〜1:1.2の割合となるように用いることがさらに好ましい。
【0022】
本発明のエステル縮合物の製造方法のエステル化反応としては、カルボン酸とアルコールとの反応、多価カルボン酸と多価アルコールとの反応との反応等を挙げることができる。かかるエステル化反応に使用されるカルボン酸としては、モノカルボン酸として、鎖状若しくは環状の脂肪酸や芳香族酸、これらに不飽和結合を有するもの若しくは置換基を有するもの等いずれのものであってもよく、例えば、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、イソ吉草酸、メチルエチル酢酸、トリメチル酢酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸や、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸や、安息香酸等の芳香族酸を例示することができ、多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸や、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸や、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸等のジカルボン酸や、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸等のトリカルボン酸や、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸等のテトラカルボン酸等を挙げることができる。
【0023】
本発明におけるエステル化に用いられるアルコールは、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールであってもよく、直鎖状若しくは環状のアルキル基、アルケニル基や、アリール基等の置換基を有するもの等であってもよい。かかるアルコールとしては、例えば、一価のアルコールとして、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−デカノール、n−ドデカノール、ステアリルアルコール、2−エチルヘキサン−1−オール、ネオペンチルアルコール等の脂肪族第一級アルコールや、ベンジルアルコール等の芳香族第一級アルコール、また、イソプロピルアルコール、s−ブチルアルコール、1−メチルヘキサン−1−オール等の脂肪族第二級アルコール、シクロヘキサノール、2−アダマンチロール等の脂環式第二級アルコール、t−ブチルアルコール、1−アダマンチロール、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、3,5−ジメチルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール等の第三級アルコールを挙げることができる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ピナコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリビニルアルコール等を具体的に挙げることができる。これらのアルコールは、1種又は2種以上を適宜選択することができ、例えば、第一級ヒドロキシ基と、第二級ヒドロキシ基とを有する多価アルコールにおいては、嵩高いカルボン酸と第一級ヒドロキシ基との縮合反応を選択的に生じさせ、また、第一級ヒドロキシ基と第二級ヒドロキシ基の距離が離れている程、第一級ヒドロキシ基との縮合反応を選択的に生じさせ得る等、化学選択的にエステル縮合物を生成することもできる。
【0024】
本発明のエステル縮合物の製造方法のエステル化反応においては、等モルのカルボン酸とアルコールを用いても製造することができ、かかるカルボン酸とアルコールとして、それぞれ一価のカルボン酸とアルコールを用いると、単量体エステルが得られ、α,ω−脂肪族ジカルボン酸等の多価カルボン酸と、α,ω−脂肪族ジオール等の多価アルコールとを用いると、ポリエステルを合成することができる。また、カルボン酸とアルコールとして、1分子内に水酸基とカルボキシ基とを両末端にそれぞれ有するω−ヒドロキシカルボン酸を用いてもポリエステルを合成することができ、かかるω−ヒドロキシカルボン酸として、ω−ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシドデカン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、4−(p−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、3−(p−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、4−(m−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、3−(m−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸等を例示することができる。
【0025】
本発明のエステル縮合物の製造方法に用いられるジルコニウム(IV)化合物としては、四価のジルコニムを分子内に有する化合物であれば、いずれのものであってもよく、例えば、一般式(3)
ZrX (3)
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Yはテトラヒドロフランを示し、eは0又は2を示す。)で表される化合物であってもよく、具体的には、フッ化ジルコニウム(ZrF4)、塩化ジルコニウム(ZrCl4)、臭化ジルコニウム(ZrBr4)、ヨウ化ジルコニウム(ZrI4)等のハロゲン化合物や、これらジルコニウム(IV)ハロゲン化物に、テトラヒドロフランが配位したエーテル錯体、具体的には、ZrF4・(THF)2、ZrCl4・(THF)2、ZrBr4・(THF)2、ZrI4・(THF)2等を挙げることができる。また、上記テトラヒドロフランの他、エーテル配位子やアミド配位子が、ジルコニウム(IV)ハロゲン化物等に配位した水に対する安定性が高いエーテル錯体やアミド錯体であってもよい。かかるアミド配位子としては、RCONR(式中、Rは水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシ基を表し、R、Rは独立して水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基を示し、R〜Rは相互に結合して環を形成してもよい。)の構造式で表されるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジアセトアミド、N−アセト−2−ケトオキサゾリジン等のアミド化合物を挙げることができる。その他、本発明のエステル縮合物の製造方法に用いるジルコニウム(IV)化合物として、硫酸ジルコニウム(Zr(SO)等の硫酸塩類や、ジシクロペンタジエニルジルコニウム(IV)ジクロリド等のアルキルジルコニウム(IV)化合物類を挙げることができる。また、ジルコニウム(IV)ハライド塩類等を触媒としてエステル反応を行ない反応終了後、塩酸水溶液を用いて触媒を抽出し、この塩酸水溶液抽出物を濃縮していく過程で固体の析出が生じたときに濃縮操作を停止させて得られるZr(IV)XO・nHOの構造式で表されるニハロゲン化酸化ジルコニウム水和物等を反復使用できるジルコニウム(IV)化合物触媒として挙げることができる。上記構造式中、Xはハロゲン原子を表し、nは整数を表し、nは6以上、好ましくは8である。かかる二ハロゲン化酸化ジルコニウム水和物としては、二フッ化酸化ジルコニウム水和物、二塩化酸化ジルコニウム水和物、二臭化酸化ジルコニウム水和物、二ヨウ化酸化ジルコニウム水和物等を挙げることができる。
【0026】
更に、本発明のエステル縮合物の製造方法に用いられるジルコニウム(IV)化合物としては、一般式(1)
Zr(OH)(OR (1)
(式中、Rは、アシル基又はアルキル基を示し、a及びbは、それぞれ0又は1〜4の整数であって、a+b=4の関係を有する。)で示される化合物を挙げることができる。一般式(1)中、Rが示すアシル基として、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基等を具体的に挙げることができる。かかる一般式(1)で表されるジルコニウム(IV)化合物としては、ジルコニウム(IV)テトラアセテート、ジルコニウム(IV)トリアセテートヒドロキシド、ジルコニウム(IV)ジアセテートジヒドロキシド、ジルコニウム(IV)アセテートトリヒドロキシド、ジルコニウム(IV)テトラヒドロキシド、ジルコニウム(IV)テトラプロピオネート、ジルコニウム(IV)トリプロピオネートヒドロキシド、ジルコニウム(IV)ジプロピオネートジヒドロキシド、ジルコニウム(IV)プロピオネートトリヒドロキシド、ジルコニウム(IV)テトライソプロピオネート、ジルコニウム(IV)トリイソプロピオネートヒドロキシド、ジルコニウム(IV)ジイソプロピオネートジヒドロキシド、ジルコニウム(IV)プロピオネートトリヒドロキシド、ジルコニウム(IV)テトラブチレート、ジルコニウム(IV)トリブチレートヒドロキシド、ジルコニウム(IV)ジブチレナートジヒドロキシド、ジルコニウム(IV)ブチレートトリヒドロキシド等を具体的に例示することができる。
【0027】
また、一般式(1)中、Rが示すアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等を挙げることができ、かかるRを有する一般式(1)で表されるジルコニウム(IV)化合物としては、具体的には、ジルコニウム(IV)メトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウム(IV)プロポキシド、ジルコニウム(IV)イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)ブトキシド、ジルコニウム(IV)イソブトキシド、ジルコニウム(IV)t−ブトキシド、ジルコニウム(IV)ペンチルオキシド等のジルコニウム(IV)アルコキシドを例示することができる。
【0028】
本発明のエステル縮合物の製造方法に用いられるハフニウム(IV)化合物としては、四価のハフニウムを分子内に有する化合物であれば、いずれのものであってもよく、例えば、一般式(4)
HfX (4)
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Yはテトラヒドロフランを示し、fは0又は2を示す。)で表される化合物であってもよく、具体的には、フッ化ハフニウム(HfF4)、塩化ハフニウム(HfCl4)、臭化ハフニウム(HfBr4)、ヨウ化ハフニウム(HfI4)等のハロゲン化合物や、これらハフニウム(IV)ハロゲン化物に、テトラヒドロフランが配位したエーテル錯体、具体的には、HfF4・(THF)2、HfCl4・(THF)2、HfBr4・(THF)2、HfI4・(THF)2等を挙げることができる。また、上記テトラヒドロフランの他、エーテル配位子やアミド配位子が、ハフニウム(IV)ハロゲン化物等に配位した水に対する安定性が高いエーテル錯体やアミド錯体であってもよい。かかるエーテル配位子やアミド配位子としては、上記ジルコニウム(IV)化合物における配位子と同様の配位子を挙げることができる。その他、本発明のエステル縮合物の製造方法に用いるハフニウム(IV)化合物として、硫酸ハフニウム(Hf(SO4))等の硫酸塩類や、ジシクロペンタジエニルハフニウム(IV)ジクロリド等のアルキルハフニウム(IV)化合物類を挙げることができる。また、ハフニウム(IV)ハライド塩類等を触媒としてエステル反応を行ない反応終了後、塩酸水溶液を用いて触媒を抽出し、この塩酸水溶液抽出物を濃縮していく過程で固体の析出が生じたときに濃縮操作を停止させて得られるHfXO・nHOの構造式で表されるニハロゲン化酸化ハフニウム水和物等を反復使用できるハフニウム(IV)化合物触媒として挙げることができる。上記構造式中、Xはハロゲン原子を表し、nは整数を表し、nは6以上、好ましくは8である。かかる二ハロゲン化酸化ハフニウム水和物としては、二フッ化酸化ハフニウム水和物、二塩化酸化ハフニウム水和物、二臭化酸化ハフニウム水和物、二ヨウ化酸化ハフニウム水和物等を挙げることができる。
【0029】
更に、本発明のエステル縮合物の製造方法に用いられるハフニウム(IV)化合物としては、一般式(2)
Hf(OH)(OR (2)
(式中、Rは、アシル基又はアルキル基を示し、c及びdは、それぞれ0又は1〜4の整数であって、c+d=4の関係を有する。)で示される化合物を挙げることができる。一般式(2)中、R2が示すアシル基として、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基等を具体的に挙げることができる。かかる一般式(2)で表されるハフニウム(IV)化合物としては、ハフニウム(IV)テトラアセテート、ハフニウム(IV)トリアセテートヒドロキシド、ハフニウム(IV)ジアセテートジヒドロキシド、ハフニウム(IV)アセテートトリヒドロキシド、ハフニウム(IV)テトラヒドロキシド、ハフニウム(IV)テトラプロピオネート、ハフニウム(IV)トリプロピオネートヒドロキシド、ハフニウム(IV)ジプロピオネートジヒドロキシド、ハフニウム(IV)プロピオネートトリヒドロキシド、ハフニウム(IV)テトライソプロピオネート、ハフニウム(IV)トリイソプロピオネートヒドロキシド、ハフニウム(IV)ジイソプロピオネートジヒドロキシド、ハフニウム(IV)プロピオネートトリヒドロキシド、ハフニウム(IV)テトラブチレート、ハフニウム(IV)トリブチレートヒドロキシド、ハフニウム(IV)ジブチレナートジヒドロキシド、ハフニウム(IV)ブチレートトリヒドロキシド等を具体的に例示することができる。
【0030】
また、一般式(2)中、Rが示すアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等を挙げることができ、かかるRを有する一般式(2)で表されるハフニウム(IV)化合物としては、ハフニウム(IV)メトキシド、ハフニウム(IV)エトキシド、ハフニウム(IV)プロポキシド、ハフニウム(IV)イソプロポキシド、ハフニウム(IV)ブトキシド、ハフニウム(IV)イソブトキシド、ハフニウム(IV)t−ブトキシド、ハフニウム(IV)ペンチルオキシド等のハフニウム(IV)アルコキシドを例示することができる。
【0031】
これらジルコニウム(IV)化合物、ハフニウム(IV)化合物は、触媒として1種又は2種以上を混合して用いることができ(触媒A)、その使用量としては特に制限されるものではないが、カルボン酸とアルコールからエステルを合成する場合、触媒A総量で、カルボン酸及びアルコールの量の0.1〜10mol%、好ましくは0.1〜5mol%を挙げることができる。
【0032】
また、本発明のエステル縮合物の製造方法に用いられるジルコニウム(IV)化合物及び/又はハフニウム(IV)化合物と共に用いられる鉄(III)化合物、ガリウム(III)化合物、スズ(IV)化合物、アルミニウム(III)化合物としては、特に制限されるものではないが、これら金属のアルコキシドを具体的に挙げることができる。具体的に、かかるアルコキシドとしては、例えば、鉄(III)メトキシド、鉄(III)エトキシド、鉄(III)プロポキシド、鉄(III)イソプロポキシド、鉄(III)ブトキシド、鉄(III)イソブトキシド、鉄(III)t−ブトキシド、鉄(III)ペンチルオキシドや、ガリウム(III)メトキシド、ガリウム(III)エトキシド、ガリウム(III)プロポキシド、ガリウム(III)イソプロポキシド、ガリウム(III)ブトキシド、ガリウム(III)イソブトキシド、ガリウム(III)t−ブトキシド、ガリウム(III)ペンチルオキシドや、スズ(IV)メトキシド、スズ(IV)エトキシド、スズ(IV)プロポキシド、スズ(IV)イソプロポキシド、スズ(IV)ブトキシド、スズ(IV)イソブトキシド、スズ(IV)t−ブトキシド、スズ(IV)ペンチルオキシドや、アルミニウム(III)メトキシド、アルミニウム(III)エトキシド、アルミニウム(III)プロポキシド、アルミニウム(III)イソプロポキシド、アルミニウム(III)ブトキシド、アルミニウム(III)イソブトキシド、アルミニウム(III)t−ブトキシド、アルミニウム(III)ペンチルオキシドを例示することができ、これらの中でも、鉄(III)メトキシド、鉄(III)エトキシド、鉄(III)プロピキシド、鉄(III)イソプロポキシド等が、環境破壊を抑制でき、安価であるため好ましい。これらガリウム(III)化合物や、スズ(IV)化合物や、アルミニウム(III)化合物は、1種又は2種以上を適宜選択して混合して使用することができる。また、これらガリウム(III)化合物や、スズ(IV)化合物や、アルミニウム(III)化合物は、ジルコニウム(IV)化合物及び/又はハフニウム(IV)化合物と、予め混合し複合金属塩触媒として使用してもよいし、また、反応系にそれぞれ別個に添加して使用することもできる。
【0033】
本発明のエステル縮合物の製造方法に用いられる溶媒としては特に制限されるものではなく、極性溶媒、又は極性溶媒と非極性溶媒及び/又は低極性溶媒との混合溶媒、非極性溶媒及び/又は低極性溶媒を例示することができるが、非極性溶媒及び/又は低極性溶媒が、エステル化反応により生成する水の反応系外への除去の容易さから好ましい。すなわち、非極性溶媒及び/又は低極性溶媒を用いて加熱還流を行い、共沸する水を反応系から簡便に除去することが好ましく、かかる水の除去方法としては、カルシウムヒドリドやモレキュラーシーブス等の公知の脱水剤を用いる方法を例示することができるがこれらに限定されるものではない。上記非極性溶媒及び/又は低極性溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、オクタン、ヘプタン、ペンタメチルベンゼン、m−ターフェニル、ベンゼン、エチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(テトラリン)を例示することができる。また、メタノール等の揮発性のアルコールを基質として用いる場合は、かかるアルコールは溶媒としての作用も合わせ有するので、必ずしも溶媒を用いる必要はない。
【0034】
本発明のエステル縮合物の製造方法のエステル化反応は、乾燥不活性ガス雰囲気下、例えば、アルゴン又は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。アルゴン雰囲気はアルゴンを流下させる等の方法で形成することができ、反応をアルゴン雰囲気で行うことにより、脱水と脱酸素雰囲気を同時に達成することができる。また、一価のカルボン酸と一価のアルコールとの縮合反応や、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールとの重縮合反応においては、加熱還流下100〜200℃、特に120〜160℃で1〜24時間反応を行うことが好ましく、他方、芳香族カルボン酸と芳香族アルコールの縮合反応においては、加熱還流下120〜250℃、特に150〜200℃で24〜72時間反応を行うことが好ましい。これらの縮合反応や重縮合反応によって得られる単量体エステルやポリエステルの精製は、等モルのカルボン酸とアルコールを用いることができ、また、副反応が生じていないことから、従来法に比してその精製は公知の方法により非常に容易に行うことができる。
【0035】
エステル反応終了後、使用した触媒を反復使用するため、例えば、以下のような処理を行うことができる。
反応終了後、室温まで冷却し、反応溶液と上記触媒A及び触媒Bを担持した触媒担持樹脂とをろ過により分別し、目的のエステル縮合物を得る。エステル縮合物は必要に応じて、蒸留又はシリカゲルクロマトグラフィー等常法によって精製することができる。他方、ろ過により得た触媒担持樹脂は、必要に応じて、エステル生成物や未反応の原料が抽出されなくなるまで洗浄用溶媒でよく洗浄する。洗浄用溶媒としては、エステル生成物や未反応の原料を洗浄できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、エーテル類(ジエチルエーテル等)を用いることができる。この洗浄された触媒担持樹脂は、この触媒溶液はエステル化反応終了後、再利用してもその活性が維持され、反復使用が可能である。
【0036】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
〔エステル触媒担持用樹脂の合成〕
200mLのフラスコに、スターラーチップと4−ブロモブチルポリスチレン樹脂(2.7mmol−Br/g,200〜400mesh、cross-linked with 2%DVB(ジビニルベンゼン);3g,8.1mmolのBr含有量)とアセトニトリル(30mL)とTHF(30mL)とピリジン(6.6mL,81mmol)を加え、90℃のオイルバスを使って20時間過熱還流させた。続いて、この反応溶液を室温まで冷し、その後減圧濃縮した。こうして得られた臭化ピジニウム塩担持樹脂を検体乾燥機(100℃)の中に入れて17時間減圧乾燥させた。得られた臭化ピジニウム塩担持樹脂は3.56g(1.99mmol−ピジニウム塩/g)であった(変換率88%)。
【0038】
【化1】

【0039】
上記反応で得られた臭化ピリジニウム塩担持樹脂3.56g(1.99mmol−ピジニウム塩/g)の入ったフラスコにスターラーチップ、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(23.25g,19.9mmol)、水(40mL)とTHF(40mL)を加えた。このフラスコをオイルバス(80℃)につけ、20時間過熱還流させた。その後、一旦フラスコを室温まで冷し、生成したピリジニウムトリフルオロメタンスルホンイミド担持樹脂をろ過によって集め、THF,HO,EtOAc(酢酸エチル),ヘキサン,EtO(ジエチルエーテル)を使って順次フィルター上で洗った。得られたポリマーを検体乾燥機(60℃)で12時間減圧乾燥させた。得られたピリジニウムトリフルオロメタンスルホンイミド担持樹脂(4−(N−ピリジニウム)ブチルポリスチレントリフルオロメタンスルホンイミド)は4.76g(1.26mmol−ピリジニウムトリフルオロメタンスルホンイミド/g)であった(変換率85%)。
【0040】
【化2】

【0041】
〔エステル縮合反応〕
(ピリジニウムトリフルオロメタンスルホンイミド担持樹脂の1回目の利用)
50mLのフラスコに、スターラーチップ、Zr(Oi−Pr)(16.4mg,0.05mmol)、Fe(Oi−Pr)(11.7mg,0.05mmol)、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホンイミド担持樹脂(2.78g,3.5mmolのピリジニウムトリフルオロメタンスルホンイミド含有量)、4−フェニル酪酸(821mg,5mmol)、ベンジルアルコール(0.517mL,5mmol)とヘプタン(20mL)を加え、フラスコ上部にDean−Stark分水装置と冷却管を繋いだ。フラスコをオイルバス(115℃)につけて13時間加熱還流し、その間に生成する水を共沸脱水した。反応後、フラスコを室温まで冷却し、反応溶液と樹脂をろ過により分けた。樹脂内に含まれているエステル生成物や未反応の原料が抽出されなくなるまで回収した樹脂をジエチルエーテルでよく洗浄した。回収した樹脂は繰り返し、樹脂担持型Zr(IV)−Fe(III)触媒として、繰り返し回収・再利用した。一方、ろ液を濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して目的とするエステルを91%の収率で単離した。
【0042】
【化3】

【0043】
(Zr(IV)−Fe(III)担持樹脂の再利用(2回目以降))
50 mLのフラスコに、スターラーチップ、1回目のエステル縮合反応で回収した樹脂担持型Zr(IV)−Fe(III)触媒、4−フェニル酪酸(821mg,5mmol)、ベンジルアルコール(0.517mL,5mmol)とヘプタン(20 mL)をフラスコに加えた。それ以外は1回目の実験手順と同様に、フラスコ上部にDean−Stark分水装置と冷却管を繋ぎ、フラスコをオイルバス(115℃)につけて13時間加熱還流し、その間に生成する水を共沸脱水した。反応後、フラスコを室温まで冷却し、反応溶液と樹脂をろ過により分けた。樹脂内に含まれているエステル生成物や未反応の原料が抽出されなくなるまで回収した樹脂をジエチルエーテルでよく洗浄した。回収した樹脂は繰り返し、樹脂担持型Zr(IV)−Fe(III)触媒として、繰り返し回収・再利用した。一方、ろ液を濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して目的とするエステルを得た。その収率を以下表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から明らかなように、本発明における触媒担持樹脂は、その活性を維持したまま、繰り返し使用することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム(IV)化合物からなる触媒及びハフニウム(IV)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒A)と、鉄(III)化合物からなる触媒、ガリウム(III)化合物からなる触媒、スズ(IV)化合物からなる触媒、及びアルミニウム(III)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒B)と、アンモニウム塩担持樹脂からなる触媒担持用樹脂とを用いてエステル化反応を行うことを特徴とするエステル縮合物の製造方法。
【請求項2】
触媒A 1モルに対して、触媒Bを0.7モル以上用いることを特徴とする請求項1に記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項3】
エステル化反応終了後、得られた触媒担持樹脂を用いて、次回のエステル化反応を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項4】
触媒担持樹脂が洗浄用溶媒で洗浄されたものであることを特徴とする請求項3に記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項5】
ジルコニウム(IV)化合物からなる触媒及びハフニウム(IV)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒A)と、鉄(III)化合物からなる触媒、ガリウム(III)化合物からなる触媒、スズ(IV)化合物からなる触媒、及びアルミニウム(III)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒B)とを担持したアンモニウム塩担持樹脂からなる触媒担持樹脂を用いてエステル化反応を行うことを特徴とするエステル縮合物の製造方法。
【請求項6】
アンモニウム塩担持樹脂からなる触媒担持樹脂が、ジルコニウム(IV)化合物からなる触媒及びハフニウム(IV)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒A)と、鉄(III)化合物からなる触媒、ガリウム(III)化合物からなる触媒、スズ(IV)化合物からなる触媒、及びアルミニウム(III)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒B)と、アンモニウム塩担持樹脂からなる触媒担持用樹脂とを用いてエステル化反応行った結果得られたものであることを特徴とする請求項5に記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項7】
触媒A 1モルに対して、触媒Bを0.7モル以上用いたことを特徴とする請求項6に記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項8】
触媒担持樹脂が洗浄用溶媒で洗浄されたものであることを特徴とする請求項6又は7に記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項9】
アンモニウム塩担持樹脂において、アンモニウムカチオンが、N−アルキルピリジニウムカチオン又はN,N’−ジアルキルイミダゾリウムカチオンであり、アンモニウムアニオンが、トリフルオロメタンスルホンイミド又はトリフルオロメタンスルホナートであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項10】
アンモニウムカチオンが、N−アルキルピリジニウムカチオンであり、アンモニウムアニオンが、トリフルオロメタンスルホンイミドであることを特徴とする請求項9に記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項11】
アンモニウム塩担持樹脂が、4−(N−ピリジニウム)ブチルポリスチレントリフルオロメタンスルホンイミドであることを特徴とする請求項10に記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項12】
エステル化反応が、カルボン酸とアルコールとの反応であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項13】
エステル化反応が、溶媒を用いて加熱還流し、共沸する水を反応系から除去して行なわれることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項14】
溶媒として、非極性溶媒及び/又は低極性溶媒を用いることを特徴とする請求項13に記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項15】
非極性溶媒及び/又は低極性溶媒が、トルエン、キシレン、メシチレン、オクタン、ヘプタンから選ばれる1種又は2種以上の溶媒であることを特徴とする請求項14に記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項16】
ジルコニウム(IV)化合物が、一般式(1)
Zr(OH)(OR (1)
(式中、Rは、アシル基又はアルキル基を示し、a及びbは、それぞれ0又は1〜4の整数であって、a+b=4の関係を有する。)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項17】
ジルコニウム(IV)化合物が、一般式(3)
ZrX(3)
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Yはテトラヒドロフランを示し、eは0又は2を示す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項18】
ハフニウム(IV)化合物が、一般式(2)
Hf(OH)(OR (2)
(式中、Rは、アシル基又はアルキル基を示し、c及びdは、それぞれ0又は1〜4の整数であって、c+d=4の関係を有する。)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項19】
ハフニウム(IV)化合物が、一般式(4)
HfX(4)
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Yはテトラヒドロフランを示し、fは0又は2を示す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項20】
鉄(III)化合物、ガリウム(III)化合物、スズ(IV)化合物、又はアルミニウム(III)化合物が、アルコキシドであることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載のエステル縮合物の製造方法。
【請求項21】
ジルコニウム(IV)化合物からなる触媒及びハフニウム(IV)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒A)と、鉄(III)化合物からなる触媒、ガリウム(III)化合物からなる触媒、スズ(IV)化合物からなる触媒、及びアルミニウム(III)化合物からなる触媒から選ばれる少なくとも一つの触媒(触媒B)とを担持したことを特徴とするエステル化反応に用いられる触媒担持樹脂。
【請求項22】
アンモニウム塩担持樹脂において、アンモニウムカチオンが、N−アルキルピリジニウムカチオン又はN,N’−ジアルキルイミダゾリウムカチオンであり、アンモニウムアニオンが、トリフルオロメタンスルホンイミド又はトリフルオロメタンスルホナートであることを特徴とする請求項21に記載のエステル化反応に用いられる触媒担持樹脂。
【請求項23】
アンモニウムカチオンが、N−アルキルピリジニウムカチオンであり、アンモニウムアニオンが、トリフルオロメタンスルホンイミドであることを特徴とする請求項22に記載のエステル化反応に用いられる触媒担持樹脂。
【請求項24】
アンモニウム塩担持樹脂が、4−(N−ピリジニウム)ブチルポリスチレントリフルオロメタンスルホンイミドであることを特徴とする請求項23に記載のエステル化反応に用いられる触媒担持樹脂。

【公開番号】特開2006−193486(P2006−193486A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8233(P2005−8233)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】