説明

エタノールの製造方法

【課題】
エタノールの発酵生産において発酵阻害物質を含む発酵原料からでもエタノールを製造できるような方法を提供する。
【解決手段】
エタノール生産能を有し、かつエルゴステロール合成阻害剤に耐性を有するキャンディダ(Candida)属微生物を発酵培養することを特徴とする、エタノールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の発酵培養によるエタノールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能資源であるセルロース含有バイオマス由来の糖分を発酵原料とした、エタノールなどの種々の化学品の製造が盛んに検討されている。しかしながら、セルロース含有バイオマス由来の糖分にはリグニン、酢酸、ギ酸、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)、フルフラール、バニリンといった低分子成分が不純物として含まれ(非特許文献1または2)、これら低分子成分を多く含む糖分を炭素源としてエタノールなどの化学品を発酵生産する場合、微生物の増殖阻害、生産物の収率の低下を引き起こすことが課題となっており、これら低分子成分は発酵阻害物質であることが知られている(非特許文献3)。
【0003】
前述した発酵阻害物質に対して耐性を有する微生物の取得方法として、UV照射など物理的手法やエチルメタンスルホン酸処理など化学的手法で変異処理を行うことにより発酵阻害物質耐性微生物を取得する方法が知られている。具体的にはサッカロミセス・セルビシエに変異処理を施すことでバニリン耐性株を育種する方法が開示されている(特許文献1)。また、酢酸菌の酢酸耐性に関する遺伝子をクローニングし、該遺伝子を酢酸菌に導入することで酢酸耐性を向上させる方法が知られている(特許文献2)。
【0004】
また、発酵阻害物質を含む発酵原料を利用した発酵技術として、浸透圧の耐性の強い酵母を利用することで発酵阻害物質を含む発酵原料でエタノール生産を行う方法が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−224653号公報
【特許文献2】特開2005−124479号公報
【特許文献3】特開2004−337099号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S.Larsonら、”The generation of fermentation inhibitors during dilute acid hydrolysis of softwood”Enzyme Microb.Technol.24.151−159(1999)
【非特許文献2】HB.Klinkleら、“Inhibition of ethanol producing yeast and bacteria by degradation products produced during pre−treatment of biomass”Appl.Microbiol.Biotechnol.66.10−26(2004)
【非特許文献3】J.P.Delgenesら、“Effects of lignocellulose degradation products on ethanol fermentation of glucose and xylose by Saccharomyces cerevisiae,Zymomonas mobilis,Pichia stipitis and Candida shehatae”Enzyme Microbial.Technol.19.220−225(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、エタノールの発酵生産において発酵阻害物質を含む発酵原料からでもエタノールを製造できるような方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、エタノール生産能を有し、かつエルゴステロール合成阻害剤に対して耐性を有するキャンディダ属微生物を発酵培養することで上記課題が解決することを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)から(8)の技術的手段から構成される。
(1)エタノール生産能を有し、かつエルゴステロール合成阻害剤に耐性を有するキャンディダ(Candida)属微生物を発酵培養することを特徴とする、エタノールの製造方法。
(2)発酵阻害物質が含まれる発酵原料を使用して発酵培養することを特徴とする、(1)に記載のエタノールの製造方法。
(3)前記発酵阻害物質がリグニン、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、バニリン、酢酸およびギ酸からなる群から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、(2)に記載のエタノールの製造方法。
(4)前記発酵原料がセルロース含有バイオマス由来の糖分であることを特徴とする、(2)または(3)に記載のエタノールの製造方法。
(5)前記微生物がアゾール系のエルゴステロール合成阻害剤に耐性を有することを特徴とする、(1)から(4)のいずれかに記載のエタノールの製造方法。
(6)前記微生物がフルコナゾールに耐性を有することを特徴とする、(1)から(5)のいずれかに記載のエタノールの製造方法。
(7)前記微生物がキャンディダ・グラブラータ(Candida glabrata)、キャンディダ・ボイディーニ(Candida boidinii)、キャンディダ・ディッデンシアエ(Candida diddensiae)、キャンディダ・ケフィール(Candida kefyr)、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・メタノソルボーサ(Candida methanosorbosa)、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、キャンディダ・シビクルトリックス(Candida silvicultrix)、キャンディダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)、キャンディダ・タータリボランス(Candida tartarivorans)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)、キャンディダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)またはキャンディダ・ウィッカーハミイ(Candida wickerhamii)であることを特徴とする、(1)から(6)のいずれかに記載のエタノールの製造方法。
(8)前記微生物が受託番号NITE P−984またはNITE P−985で寄託される微生物であることを特徴とする、(1)から(7)のいずれかに記載のエタノール製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、発酵阻害物質を含む発酵原料からでもエタノールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】取得した発酵阻害物質耐性株の26S ribosomal DNAのD1/D2領域の塩基配列の比較。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のエタノール製造方法は、エタノール生産能を有し、かつエルゴステロール合成阻害剤に耐性を有するキャンディダ属(Candida属)微生物を発酵培養してエタノールを製造することを特徴とする。
【0013】
キャンディダ属とは、真核生物・真菌界・子嚢菌目・サッカロミセス網・サッカロミセス目に属するアナモルフである。生理・生化学及び形態に特筆すべき共通性が認められない子嚢菌系の菌種がキャンディダ属であり、現在、約200菌種が存在する。そして、キャンディダ属微生物の中にはエタノール生産能を有するものが存在する。
【0014】
エタノール生産能を有するキャンディダ属微生物の具体例としては、キャンディダ・グラブラータ(Candida glabrata)、キャンディダ・ソリコラ(Candida solicola)、キャンディダ・ランビカ(Candida lambica)、キャンディダ・サンタマリア(Candida santamoriae)、キャンディダ・シハタエ(Candida shehatae)、キャンディダ・クルセイ(Candida krusei)、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)、キャンディダ・ボイディーニ(Candida boidinii)、キャンディダ・ディッデンシアエ(Candida diddensiae)、キャンディダ・ケフィール(Candida kefyr)、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・メタノソルボーサ(Candida methanosorbosa)、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、キャンディダ・シビクルトリックス(Candida silvicultrix)、キャンディダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)、キャンディダ・タータリボランス(Candida tartarivorans)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)、キャンディダ・ウィッカーハミイ(Candida wickerhamii)などを例示することができる。これらは、ATCC(American Type Culture Collection)、NBRC(NITE Biological Resource Center)、BCRC(Bioresource Collection and Research Center)、CBS(Centraalbureau voor Schimmelcultures)、JCM(Japan Collection of Microorganisms)、NCPF(National Collection of Pathogenic Fungi)、ARS(Agriculture Research Service)などに保有されており、所定の手続きにより購入することができる。
【0015】
また、エタノール生産能を有するキャンディダ属微生物は土壌より取得することもできる。
【0016】
また、本発明で使用するエタノール生産能を有するキャンディダ属微生物は、本来エタノール生産能を有さないが、染色体上あるいはベクターとして異種遺伝子あるいは同種遺伝子が導入されることによってエタノール生産能が付与された遺伝子組換え株であってもよく、また、他属酵母との細胞融合、あるいはキャンディダ属同士の細胞融合によってエタノール生産能が付与された株であってもよい。こうした遺伝子組換え株、および細胞融合株は、公知の手法で得ることができる。
【0017】
前述したエタノール生産能を有するキャンディダ属微生物の中でも、本発明ではキャンディダ・グラブラータ、キャンディダ・ボイディーニ、キャンディダ・ディッデンシアエ、キャンディダ・ケフィール、キャンディダ・マルトーサ、キャンディダ・メタノソルボーサ、キャンディダ・パラプシロシス、キャンディダ・シビクルトリックス、キャンディダ・ソノレンシス、キャンディダ・タータリボランス、キャンディダ・トロピカリス、キャンディダ・ユーティリス、キャンディダ・ビスワナチイ、キャンディダ・ウィッカーハミイが好ましく使用される。
【0018】
本発明で使用するエタノール生産能を有するキャンディダ属微生物は、エルゴステロール合成阻害剤耐性を有することを特徴としている。エルゴステロール合成阻害剤とは、真菌のエルゴステロール合成に関わる酵素あるいは酵素群に阻害的に作用し、そのエルゴステロール合成を阻害する作用を有する薬剤のことを指す。エルゴステロールは、酵母、糸状菌など真菌の細胞膜を構成する主成分の一つであり、この合成が阻害されると細胞の増殖あるいは生育ができなくなることが知られている。エルゴステロール合成阻害メカニズムと発酵阻害物質の発酵阻害メカニズムの因果関係は不明であるが、本発明者はエルゴステロール合成阻害剤耐性を有するキャンディダ属微生物は発酵阻害物質を含む発酵原料からでもエタノールを製造することができることを新規に見出し、本発明を完成させた。
【0019】
エルゴステロール合成阻害剤として、アリルアミン系とチオカルバメート系、ベンジルアミン系、モルホミン系、アゾール系が例示されるが、本発明ではアゾール系のエルゴステロール合成阻害剤に耐性を有するキャンディダ属微生物を使用することが好ましい。
【0020】
アゾール系のエルゴステロール合成阻害剤の標的はP−450であり、アゾール系のエルゴステロール合成阻害剤の窒素原子が、P−450のヘム鉄に結合することによって、基質がP−450に結合できなくなり、その結果、エルゴステロールの合成阻害がおこり、細胞膜の障害をきたし真菌の発育が阻害される。
【0021】
アゾール系のエルゴステロール合成阻害剤は、イミダゾール系(化学式(1))と、トリアゾール系(化学式(2))に分類できる。
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、Rは炭素原子を含む構造を有し、その中に窒素原子を2つ含む五員環を有してもよい。)。
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、R’は炭素原子を含む構造を有し、その中に窒素原子を3つ含む五員環を有してもよい。)。
【0026】
イミダゾール系のエルゴステロール合成阻害剤の具体例としては硝酸イソコナゾール、硝酸エコナゾール、塩酸クロコナゾール、クロトリマゾール、硝酸スルコナゾール、ビホナゾール、塩酸ネチコナゾール、ケトコナゾール、硝酸ミコナゾール、ラノコナゾール、硝酸オキシコナゾールが例示される。トリアゾール系のエルゴステロール合成阻害剤の具体例としてはフルコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾールが例示される。
【0027】
本発明では、前記アゾール系のエルゴステロール合成阻害剤のなかでもトリアゾール系のエルゴステロール合成阻害剤に対して耐性を有するキャンディダ属微生物を使用することがより好ましく、フルコナゾールに対して耐性を有するキャンディダ属微生物を使用することがさらに好ましい。
【0028】
また、本発明での「エルゴステロール合成阻害剤に対して耐性を有する」とは、0.05重量%のエルゴステロール合成阻害剤を含む液体培地において、キャンディダ・グラブラータ標準菌(NBRC0622)よりも増殖能が高いことをいう。
【0029】
「エルゴステロール合成阻害剤に対して耐性を有する」ことを判断するための液体培地としてはキャンディダ属微生物が生育できる培地であれば特に制限はなく、YPD培地、YAPD培地、YM培地、LB培地、SC培地、SD培地、ポテトスクロース培地、麦芽エキス培地、イーストスターチ培地などの公知の培地を例示することができ、さらにはこれらの公知の培地を基本として構成する培地成分を適宜改変したものを用いることもできる。培地の改変の例としては、SC培地に含有されるアミノ酸成分を各2倍量にするなどである。本発明で好ましく用いられるのは、キャンディダ属微生物の増殖性が優れるYPD培地、YM培地またはSC培地の改変培地(以下、SC3培地という)である。表1にSC3培地の糖以外の培地組成を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
前述の液体培地(0.05重量%のエルゴステロール合成阻害剤を含む)に対して、標準菌または被検対象のキャンディダ属微生物を植菌する。植菌量は、特に限定されないが、比較に使用する液体培地(0.05重量%のエルゴステロール合成阻害剤を含まない)と同じ培地を使用して6時間〜48時間培養した前培養液でOD600が10以上となった前培養液を0.1〜10重量%範囲で液体培地に植菌して増殖能を比較する。その際、液体培地中の単糖濃度、好ましくはグルコース濃度を、10〜100g/Lの範囲で調整し、単糖を48時間以内に消費される条件下で、植菌あるいは培養あるいは標準菌との比較を行う。
【0032】
前述した培養条件において、被検対象のキャンディダ属微生物の濁度増加が標準菌に対して高い微生物を「エルゴステロール合成阻害剤に対して耐性を有する」微生物であると判断する。なお、本明細書において「標準菌」とはキャンディダ・グラブラータ標準菌(NBRC0622)のことであり、本明細書中で単に「標準菌」と表記した場合は該微生物を示すこととする。なお、本発明においては、前述した培養条件において標準菌よりも濁度増加が1.2〜2倍の数値を示す微生物が好ましく、2倍以上の数値を示す微生物がより好ましい。
【0033】
エルゴステロール合成阻害剤に対して耐性を有するキャンディダ属微生物の取得方法は、土壌からの単離や、変異導入などの方法がある。土壌からの単離は、土壌サンプルを滅菌水で懸濁し、上清をエルゴステロール合成阻害剤含有の固体培地に塗布する。そこから生育したキャンディダ属微生物を単離する。また、変異導入はキャンディダ属微生物にUVや薬剤で変異を導入し、エルゴステロール合成阻害剤含有の固体培地に塗布する。そこから生育したキャンディダ属微生物を単離する。なお、エルゴステロール合成阻害剤に対して耐性を有していれば既知のキャンディダ属微生物であってもよく、具体例として、BCRC21432、BCRC22517、BCRC22518、BCRC22519、BCRC22520、BCRC22521、BCRC22523、BCRC22524、BCRC22527、BCRC22528、BCRC22529のキャンディダ・ボイディーニ、NBRC1971、NBRC10416のキャンディダ・ディッデンシアエ、JCM3760のキャンディダ・ケフィール、NBRC1975、NBRC1976、NBRC1977、NBRC1978のキャンディダ・マルトーサ、BCRC21489、BCRC22450のキャンディダ・メタノソルボーサ、NBRC10305、BCRC21253のキャンディダ・パラプシロシス、NBRC10312のキャンディダ・シビクルトリックス、NBRC10027のキャンディダ・ソノレンシス、NRRL Y27291のキャンディダ・タータリボランス、NBRC0199、NBRC0618、NBRC10241、NBRC1401、NBRC1402、NBRC1403、NBRC1404、NBRC20520、NBRC21436、NBRC21437のキャンディダ・トロピカリス、NRRL Y1542のキャンディダ・ユーティリス、NBRC10321のキャンディダ・ビスワナチイ、NBRC10322のキャンディダ・ウィッカーハミイが挙げられる。
【0034】
前記微生物を発酵培養する際の発酵原料は、該微生物が資化可能な炭素源を含む発酵原料であれば特に制限はないが、前述の通りエルゴステロール合成阻害剤に対して耐性を有するキャンディダ属微生物は発酵阻害物質、好ましくはリグニン、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、バニリン、酢酸およびギ酸に対して耐性を有することが本発明者によって新規に見出されたことから、発酵阻害物質、好ましくはリグニン、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、バニリン、酢酸およびギ酸からなる群から選ばれる1以上の化合物を含む発酵原料を使用することができる。
【0035】
発酵阻害物質を含む発酵原料としては、セルロース含有バイオマス由来の糖分や廃糖蜜を例示することができる。
【0036】
セルロース含有バイオマスは、バガス、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー、ビートパルプ、綿実殻、パーム空殻房、稲わら、麦わら、竹、笹、などの草本系バイオマス、あるいはシラカバ、ブナなどの樹木、廃建材などの木質系バイオマスを例示でき、こうしたセルロース含有バイオマスは公知の手法にて加水分解することにより糖分が得られ、不純物として発酵阻害物質が含まれる。具体的には、糖分はグルコースを主成分とし、その他キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトースなどが含まれ、発酵阻害物質としては、リグニン、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、バニリン、酢酸およびギ酸からなる群から選ばれる1以上の化合物が含まれる。
【0037】
セルロース含有バイオマスの加水分解処理方法については特に制限はないが、好ましい加水分解処理方法として、水熱処理、希硫酸処理または酵素処理が例示され、それらの処理方法に関しては以下の通りである。
【0038】
水熱処理の条件としては、セルロース含有バイオマスが、0.1〜50重量%となるよう水を添加後、100〜400℃、好ましくは180〜300℃の高圧熱水で、1秒〜60分処理する。こうした温度条件において処理することにより、キシラン含有バイオマス中の成分である、キシラン、セルロース、リグニンなどの加水分解が起こる。処理回数は特に限定されず該処理を1回以上行えばよい。また、該処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。
【0039】
希硫酸処理の条件としては、硫酸の濃度は0.1〜15重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。反応温度は100〜300℃の範囲で設定することができ、120〜250℃で設定することが好ましい。反応時間は1秒〜60分の範囲で設定することができる。処理回数は特に限定されず1回以上行えばよい。特に上記処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。
【0040】
酵素処理の条件としては、酵素の濃度は0.1〜10g/Lであることが好ましく、0.5〜2重量%であることがより好ましく、また、セルロース含有バイオマスの濃度は0.1〜20重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることがより好ましい。反応温度は20〜60℃の範囲で設定することができ、40〜50℃で設定することが好ましい。反応pHはpH3〜7の範囲で設定することができ、pH4〜5で設定することが好ましい。反応時間は1分〜72時間の範囲で設定することができ、12時間〜24時間で設定することが好ましい。なお、酵素処理を行なう前に上記の水熱処理や希硫酸処理を行なうことが好ましい。希硫酸処理を行なった場合、処理セルロース系バイオマスは酸を含んでおり、酵素処理を行うため中和を行なう必要がある。処理回数は特に限定されず前記処理を1回以上行えばよい。特に上記処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。
【0041】
廃糖蜜とはサトウキビや甜菜から砂糖を精製する際に分離される食品廃材であって、糖分とともに発酵阻害物質が含まれる。廃糖蜜の糖分は、スクロースを主成分とし、その他スクロースを構成するグルコースおよびフルクトースが含まれる。また、廃糖蜜には発酵阻害物質としてヒドロキシメチルフルフラールまたは酢酸が含まれる。
【0042】
前記発酵阻害物質を含む発酵原料に含まれる糖分または発酵阻害物質の量は、公知の手法により定性定量を実施することができる。糖分はガスクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーまたは酵素法で定量できる。また、発酵阻害物質については、リグニンはKlason法またはアセチルブロミド法、チロシン法、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラールおよびバニリンはガスクロマトグラフィーまたは逆相クロマトグラフィー、酢酸およびギ酸はガスクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーまたは滴定法で定量できる。
【0043】
前記微生物を発酵培養してエタノールを製造する際の発酵原料に含まれる糖分濃度は、培地総量に対して1〜200g/Lが好ましく、50〜100g/Lがより好ましい。また、発酵原料には炭素源以外の栄養源として、硫安、硝安、塩安、尿素、ペプトン、肉エキス、その他有機及び無機窒素化合物(好ましくはアミノ酸をバランスよく含む有機窒素化合物)が含まれていてもよく、同様に、無機塩類としてリン酸カルシウム、鉄、マンガン、その他無機塩類を、ビタミン類としてチアミン、ナイアシン、ピリドキシン、ビオチンあるいはこれらを含有する酵母エキス、コーン・スチープ・リカーまたはその他天然物が含まれていてもよい。
【0044】
その他、前記微生物を発酵培養してエタノールを製造する際の培養条件として、培地のpHは好ましくはpH2〜9、より好ましくはpH3〜7である。また、培養温度は好ましくは5〜45℃、より好ましくは20〜35℃である。また、発酵培養時間は好ましくは1分〜120時間、より好ましくは24時間〜60時間である。また、発酵培養時の通気量は好ましくは0.01〜10vvm、より好ましくは0.1〜1vvmである。
【0045】
エタノールは、培地を回収して分離・濃縮・精製する。培地よりエタノールを分離・濃縮する方法は特に限定されないが、蒸留法、浸透気化膜法、超音波霧化法等を例示できる。蒸留法とは、同じ温度でエタノールは水より高い蒸気圧を持っていることを利用し、エタノールを分離・濃縮する方法である。エタノールの希薄水溶液を蒸発させた時の蒸気のエタノール濃度は、エタノールが水より蒸発しやすいので、液体のエタノール濃度より高くなり、この蒸気を凝縮させることでエタノールを濃縮できる。また、浸透気化膜法とは、選択的にエタノールを透過する分離膜を介して、供給側に原料液を供給し、透過側に真空(減圧)気相を保持することで、膜を選択透過した成分は膜の透過側で気化することでエタノールを分離・濃縮する方法である。膜透過の駆動力は膜透過成分の供給側と透過側の蒸気圧の差である。超音波霧化法の原理に関し示す。液中から液界面に超音波を当てると超音波霧化が起こる。含水エタノールで超音波霧化を生起させると、発生した霧のエタノール濃度が高くなるためこれを回収することで、エタノールの分離・濃縮を行う。
【0046】
次いで、分離・濃縮した含水エタノールをさらに精製(脱水)することによって、無水エタノールを得ることができる。エタノールを精製する方法は特に限定されないが、共沸蒸留法、抽出蒸留法、吸着法、膜分離法を例示できる。共沸蒸留法とは、水との混合液が最低沸点を示す共沸を形成し、かつ、水との溶解性が低く相分離する性質を有する溶剤を、共沸剤として含水エタノールに添加して蒸留することで、含水エタノールを脱水する方法である。共沸剤としては、ジクロヘキサン、ジエチルエーテル、ノルマルペンタンなどが一般的に用いられる。抽出蒸留法とは、沸点が高く、かつ、エタノール及び水とは共沸を形成しない溶剤を第3成分として添加し、水を溶剤に抽出しながら蒸留することで、エタノール/水の共沸をブレークして含水エタノールを脱水する方法である。抽出剤としてはグリセリンやエチレングリコールなどが一般的に用いられる。吸着法とは水を選択的に吸着する吸着剤、例えばコーングリッツ、シリカゲル、アルミナ、イオン交換樹脂、ゼオライトなどを用いて、水を吸着させ無水エタノールを製造する。膜分離法は、エタノール/水混合物を、膜を介して選択的に水を膜透過させる精製方法である。使用する膜は異なるが、原理は前述した浸透気化膜法と同様である。
【実施例】
【0047】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(参考例1)グルコース測定
グルコース濃度は、以下のHPLC条件で、標品との比較により定量した。
カラム:Luna NH(Phenomenex社製)
移動相:ミリQ:アセトニトリル=25:75(流速0.6mL/min)
反応液:なし
検出方法:RI(示差屈折率)
温度:30℃。
【0049】
(参考例2)エタノールの測定
エタノール蓄積濃度の測定には、以下のガスクロマトグラフ法により定量した。
ガスクロマトグラフ:GC−2010(株式会社島津製作所製)
キャピラリー:TC−1(内径:0.53mm、長さ:15m、膜厚:1.5μm、ジーエルサイエンス社製)
検出方法:水素塩イオン化検出器による検出。
【0050】
(参考例3)培養液の濁度の測定
培養液の濁度(OD値)の測定は、サンプルと同倍率に蒸留水で希釈した培地でブランクを取り、サンプルの吸光度(600nm)を測定し、濁度とした。希釈は、吸光度の値が0.01〜0.9の範囲に収まるように行い、希釈倍率をかけた値を濁度とした。
【0051】
(参考例5)発酵阻害物質濃度の分析方法
[HMF、フルフラール、バニリン]
糖液に含まれるフラン系発酵阻害物質(HMF、フルフラール)、およびフェノール系発酵阻害物質であるバニリンは下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
カラム:Synergi HidroRP 4.6mm×250mm(Phenomenex社製)
移動相:アセトニトリル−0.1% リン酸(流速1.0mL/min)
検出方法:UV(283nm)
温度:40℃。
【0052】
[酢酸、ギ酸]
糖液に含まれる有機酸系発酵阻害物質(酢酸、ギ酸)は下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
カラム:Shim−Pack SPR−HとShim−Pack SCR 101H(株式会社島津製作所製)の直列
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
【0053】
[リグニン]
糖液に含まれるリグニンは、吸光光度方式水質測定器DR 2800(HACH社製)を用いてチロシン法による吸光度測定(700nm)にて定量した。
【0054】
(参考例6)セルロース系バイオマスの水熱処理および酵素による加水分解工程
工程(1):セルロース系バイオマスより水熱処理物を得る工程
セルロース系バイオマスとして、稲藁を使用した。セルロース系バイオマスを約100μmとなるようカッターミルで細断した。その後、セルロース系バイオマスの固形分重量15%となるように水を添加した。このセルロース系バイオマス混合溶液を200℃で15分オートクレーブ処理した。処理後、固液物を軽く沈降させた後、上澄み成分を水熱処理物として使用した。この水熱処理物の固形物濃度は、約5%であった。
【0055】
工程(2):水熱処理物に糖化酵素を添加し、セルロース系バイオマス糖化液を得る工程
工程(1)で調整した水熱処理物に糖化酵素セリックシーテック(ノボザイム社製)とセリックエイチテック(ノボザイム社製)を添加し、糖化を行った。糖化条件は以下の通りである。
水熱処理物:2L(工程(1)で調製)
pH:5.0
糖化酵素:セリックシーテックをタンパク質濃度1mg/mLとなる様に添加。セリックエイチテックをセリックシーテックの1/10ボリュームとなる様に添加。
反応温度および時間:50℃、24時間。
【0056】
実施例2の水熱処理物糖化液に含まれる成分組成を参考例1および5の方法に準じて分析した。分析結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
(実施例1)エルゴステロール合成阻害剤(フルコナゾール)耐性微生物の土壌からの取得
採取した土壌サンプル0.1gを蒸留水1mlに懸濁し、1分間静置することで固液分離した上清100μLを、以下の0.05%(w/v)フルコナゾール含有YPD寒天培地にスプレッドし、25℃で24時間インキュベートした。
YPD寒天培地:2%(w/v) グルコース、2%(w/v) ペプトン、1%(w/v) Yeast Extract、2%(w/v) 寒天粉
培地へのフルコナゾール添加:培地を121℃で15分間オートクレーブ滅菌し、培地温度が50℃以下になってから、フルコナゾールをジメチルスルホキシドに懸濁してフィルター滅菌(ミリポア社製 Millex−GV 0.22μm)した溶液を最終濃度0.05%(w/v)になるように培地に添加。
【0059】
YPD寒天培地上の分離株について、26S ribosomal DNAのD1/D2領域の一部の塩基配列を解析後、データベース検索した(ビジョンバイオ株式会社に委託)。その結果、2株についてキャンディダ・グラブラータ(Candida glabrata)のD1/D2領域の塩基配列と99%以上の配列同一性が見られたので(図1)、これら2株はキャンディダ・グラブラータ(Candida glabrata)と同定した。
【0060】
キャンディダ・グラブラータと同定された2株について、次のように命名し、これらを独立法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに2010年10月5日付で寄託した。それらの受託番号は、それぞれ、次のとおりである。
Candida glabrata I−1:NITE P−984
Candida glabrata I−2:NITE P−985。
【0061】
(実施例2)寒天培地でのエルゴステロール合成阻害剤耐性試験
実施例1で得られた株(耐性株)を、キャンディダ・グラブラータ NBRC0622(Candida glabrata NBRC0622、標準菌)と共に、以下の0.05%(w/v)フルコナゾール含有SC3寒天培地にスポットし、25℃、48時間培養した。
SC3寒天培地組成:5%(w/v) グルコース、0.017%(w/v) Yeast Nitrogen Base、0.0384%(w/v) Yeast Synthetic Drop−out Medium Supplement Without Tryptophan、0.00162%(w/v) L−トリプトファン、0.0075%(w/v) 硫酸アンモニウム、2%(w/v)寒天粉。
培地へのフルコナゾール添加:培地を121℃で15分間オートクレーブ滅菌し、培地温度が50℃以下になってから、フルコナゾールをジメチルスルホキシドに懸濁してフィルター滅菌(ミリポア社製 Millex−GV 0.22μm)した溶液を最終濃度0.05%(w/v)になるように培地に添加。
【0062】
培養後、耐性株は標準菌と比較してコロニーの大きさが2倍以上になることを確認し、耐性株は標準菌よりもエルゴステロール合成阻害剤耐性において優れることが確認できた。
【0063】
(実施例3)液体培地でのエルゴステロール合成阻害剤耐性試験
フルコナゾールを含まないSC3液体培地(フィルター滅菌)10mLに標準菌と耐性株を植菌し、25℃、180rpmで前培養した。得られた前培養液を0.05%(w/v)フルコナゾール含有SC3液体培地(フィルター滅菌)10mLに1%植菌し、25℃、180rpmで60時間培養した培養液の濁度(OD600)を測定した(表3)。
【0064】
測定の結果、耐性株の濁度は標準菌の2倍以上であり、耐性株は本発明で定義されるエルゴステロール合成阻害剤耐性の特徴を有していることを確認した。
【0065】
【表3】

【0066】
また、耐性株と標準菌について、グルコース消費量、エタノール生産速度およびエタノール蓄積濃度を評価した。
【0067】
耐性株2種と標準菌の耐性試験中のグルコース消費量を比較したところ、標準菌よりも耐性株の方がグルコース消費量は多く、培養開始から40時間、60時間の時点での耐性株のグルコース消費量は標準菌と比較し、2倍以上であった(表4)。
【0068】
【表4】

【0069】
また、耐性株2種と標準菌の耐性試験中のエタノール生産速度を比較したところ、標準菌よりも耐性株の方がエタノール生産速度が早く、培養開始から40時間、60時間の時点では標準菌と比較し、耐性株はエタノール生産速度が2倍以上であった(表5)。
【0070】
【表5】

【0071】
また、耐性株2種と標準菌の耐性試験中のエタノール蓄積濃度を比較したところ、標準菌よりも耐性株の方がエタノール蓄積濃度が多く、培養開始から40時間、60時間の時点で標準菌と比較し、選択した株はエタノール蓄積量が2倍以上であった(表6)。
【0072】
【表6】

【0073】
(実施例4)グルコースを発酵原料にしたエタノール製造
標準菌と耐性株2株について、実施例3のSC3液体培地10mLに標準菌と耐性株を植菌し、25℃、180rpmで前培養した。得られた前培養液を、前培養液と同じ培地組成の発酵試験培地に1%植菌して、25℃、180rpmで発酵試験を行い、グルコース濃度(表7)、エタノール蓄積濃度(表8)および濁度(表9)を測定した。
【0074】
測定の結果、グルコースを原料としたエタノール製造では実施例1で得られた耐性株はグルコース消費、エタノール製造および微生物の生育において標準菌と同程度であることを確認できた。
【0075】
【表7】

【0076】
【表8】

【0077】
【表9】

【0078】
(実施例5)発酵阻害物質を含むセルロース系バイオマス由来糖液での耐性試験
参考例6で作成した発酵阻害物質を含むセルロース系バイオマス糖化液を1N 水酸化カリウムでpH7.0に調整し、1.5%(w/v)となるよう寒天粉末を添加したものを121℃で15分間オートクレーブ滅菌後、シャーレで固めて寒天培地を作成した。本寒天培地に耐性株と標準菌を上記寒天培地にスポットし、25℃で48時間培養を行なった。培養終了後にコロニーの大きさを比較すると、標準菌に比べ耐性株は2倍以上の大きさのコロニーを形成しており、耐性株は標準菌よりも発酵阻害物質に対して耐性を有することが確認できた。
【0079】
(実施例6)発酵阻害物質を含むセルロース系バイオマス由来糖液からのエタノール製造
耐性株と標準菌を実施例4の条件で前培養して得られた前培養液を、グルコース濃度が45g/Lになるようにグルコースを添加した参考例6のセルロース系バイオマス由来糖液(1N 水酸化カリウムでpH7.0に調整し、121℃で15分間オートクレーブ滅菌)10mLに1%植菌し、25℃、180rpmで発酵試験を行い、グルコース消費量(表10)とエタノール蓄積濃度(表11)を測定した。
【0080】
測定の結果、耐性株は発酵阻害物質を含むセルロース系バイオマス由来糖液に含まれるグルコースを消費してエタノール発酵できるのに対して、標準菌は発酵阻害物質の存在によりエタノール発酵が顕著に阻害された。この結果から、エタノール生産能を有し、かつエルゴステロール合成阻害剤に耐性を有するキャンディダ属微生物を利用することで、発酵阻害物質を含むセルロース系バイオマス由来糖液からエタノール製造ができることが分かった。
【0081】
【表10】

【0082】
【表11】

【0083】
(実施例7)既知のキャンディダ属微生物におけるエルゴステロール合成阻害剤耐性微生物のスクリーニング
YPDプレートに生育させた既知のキャンディダ属微生物を、それぞれ2mLのYPD培地の入った試験管に白金耳で植菌したものを一晩振とうして前培養を行った。この培養液を2mLの0.05%(w/v)フルコナゾール含有YPD培地に各1%植菌し、25℃、180rpmで48時間培養を行った後、濁度(OD600)を測定し、標準菌の2倍以上の増殖を示した微生物をエルゴステロール合成阻害剤耐性微生物として選抜した(表12)。また、標準菌の濁度未満となった微生物(表13)についてはエルゴステロール合成阻害剤耐性を持たないと判断した。
【0084】
【表12】

【0085】
【表13】

【0086】
(実施例8)発酵阻害物質を含むセルロース系バイオマス由来糖液からのエタノール製造
実施例7でエルゴステロール合成阻害剤耐性微生物として選抜した微生物に関して、実施例7の条件にて前培養を行った。前培養液を、実施例6で調製したセルロース系バイオマス由来糖液(グルコース濃度45g/Lに調整)5mLに対して1%植菌した。25℃、180rpmで48時間培養した後に回収し、発酵生産したエタノールの分析を行った(表13)。実施例7においてエルゴステロール合成阻害剤に耐性を示した微生物は、発酵阻害物質を含むセルロース系バイオマス由来糖液からエタノールを生産することを確認できた(表14)。
【0087】
【表14】

【0088】
以上の結果から、エタノール生産能を有し、かつエルゴステロール合成阻害剤に耐性を有するキャンディダ属微生物を利用することで、発酵阻害物質を含むセルロース系バイオマス由来糖液からエタノールを製造できることが分かった。
【受託番号】
【0089】
NITE P−984
NITE P−985

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール生産能を有し、かつエルゴステロール合成阻害剤に耐性を有するキャンディダ(Candida)属微生物を発酵培養することを特徴とする、エタノールの製造方法。
【請求項2】
発酵阻害物質が含まれる発酵原料を使用して発酵培養することを特徴とする、請求項1に記載のエタノールの製造方法。
【請求項3】
前記発酵阻害物質がリグニン、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、バニリン、酢酸およびギ酸からなる群から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項2に記載のエタノールの製造方法。
【請求項4】
前記発酵原料がセルロース含有バイオマス由来の糖分であることを特徴とする、請求項2または3に記載のエタノールの製造方法。
【請求項5】
前記微生物がアゾール系のエルゴステロール合成阻害剤に耐性を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のエタノールの製造方法。
【請求項6】
前記微生物がフルコナゾールに耐性を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のエタノールの製造方法。
【請求項7】
前記微生物がキャンディダ・グラブラータ(Candida glabrata)、キャンディダ・ボイディーニ(Candida boidinii)、キャンディダ・ディッデンシアエ(Candida diddensiae)、キャンディダ・ケフィール(Candida kefyr)、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・メタノソルボーサ(Candida methanosorbosa)、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、キャンディダ・シビクルトリックス(Candida silvicultrix)、キャンディダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)、キャンディダ・タータリボランス(Candida tartarivorans)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)、キャンディダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)またはキャンディダ・ウィッカーハミイ(Candida wickerhamii)であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のエタノールの製造方法。
【請求項8】
前記微生物が受託番号NITE P−984またはNITE P−985で寄託される微生物であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のエタノール製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−110321(P2012−110321A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240197(P2011−240197)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】