説明

エチレンプラントのフロントエンドのための二重圧力式触媒蒸留水素化塔システム

炭化水素供給原料の熱分解からのチャージガスを、オレフィンプラントのフロントエンド触媒蒸留水素化システムにて処理して、エチレン生成物とプロピレン生成物をより効率的に回収し、副生物を処理する。システム中に2つの塔(第1の塔は高めの圧力で運転され、第2の塔は低めの圧力で運転される)を使用することによって、システムの汚染速度を減少させる。第1の塔において水素化と分留が行われるが、第2の塔は分留塔としてのみ機能する。汚染を防止するために、それぞれの塔からのボトム流れの温度を200℃未満に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンを製造するための方法とシステムに関し、特に、生成物をより効率的に回収し、副生物を処理するために、チャージガス供給物をプロセシングすることに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン、プロピレン、および他の有用な石油化学品は、エタンからバキュームガスオイルまでの範囲にわたる種々の炭化水素供給原料を熱分解することによって製造されている。これらの供給原料の熱分解においては、水素から熱分解燃料油までの範囲の多種類の生成物が得られる。クラッキング工程からの流出物(一般には、チャージガスまたは分解ガスと呼ばれる)は、こうしたあらゆる種類の物質で構成されており、これらを種々の生成物流れと副生物流れとに分離(分留)し、次いで不飽和副生物の少なくとも一部を反応(水素化)させなければならない。
【0003】
一般的なチャージガス流れは、エチレンとプロピレンの所望生成物のほかに、C2アセチレン類、C3アセチレン類、C4以上のアセチレン類、ジエン、オレフィン、ならびに相当量の水素とメタンを含有する。芳香族炭化水素も存在し、そして他の環状化合物や飽和炭化水素も存在する。
【0004】
米国特許第5,679,241号と2002年7月24日付け出願の米国特許出願第10/202,702号において、エチレンプラントのフロントエンド触媒蒸留塔システムが開示されており、これらの特許文献によれば、高度不飽和炭化水素(アセチレン類やジエン類として)を、スチームクラッキング装置-チャージガス圧縮機のトレインにおいて、含有されている水素と反応させてオレフィンを形成させる。このプロセスにおいては、汚染速度(fouling rate)を遅くする上で、触媒床の温度をできるだけ高いレベルに制御するのが望ましい。温度をできるだけ高くすることで、必要とされる触媒の量が最小限に抑えられる。さらに、温度を高くすると、エチレンやプロピレンに対する全体としての選択性を高めることができる。しかしながら、最適の触媒蒸留温度を達成する条件は、比較的高い塔ボトム温度をもたらすことがあり、塔のボトムにおける汚染速度を増大させることがある。この汚染速度は抑制剤を加えることによって制御することができるけれども、塔システムにおいて低いボトム温度と低いコア汚染速度(core fouling rate)を保持しつつ、高い触媒床温度が達成されるように、触媒蒸留水素化システムを設計するのが望ましい。
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、オレフィンプラントにおけるフロントエンド触媒蒸留水素化システムを提供し、汚染速度を低下させるためにボトム生成物温度を低く保持しつつ、システム中の触媒床温度をできるだけ高くするようシステムを運転することにある。本発明は、異なった圧力で運転される2つの塔を使用することを含む。第1の高圧塔中には、触媒反応器構造物が幾つかの分留ゾーンと共に存在している。高圧塔のボトムにおいては、幾らかのより軽質の炭化水素が残存するように温度が調整される。高圧塔からのボトム流れが、分留塔である第2の塔(より低い圧力で運転される)に送られる。この第2の塔のネットボトム生成物は、システムからのネットボトム流れである。この流れの温度は低い。塔の総圧が低いからである。触媒床の温度は、単一塔における単一圧力システムの場合とほぼ同じままであるが、塔のそれぞれにおけるボトム温度は大幅に低い。低圧塔のネットオーバーヘッド流れを完全に凝縮させ、高圧塔に戻す。
【0006】
本発明をより深く理解するために、先行技術のフロントエンド触媒蒸留水素化システム(図1)について簡単に説明する。前述したように、このようなシステムは、米国特許第5,679,241号と米国特許出願第10/202,702号に開示されており、かなり詳細に説明されている。これらのシステムの目的は、エチレンやプロピレンの水素化をそれほど起こさずに、C2〜C5のジオレフィンとアセチレン類を水素化することによって相当量の水素フラクションを除去することにある。このシステムでは、圧縮したチャージガス10(11において加熱することができる)を触媒蒸留水素化塔12に供給し、そこで触媒反応と蒸留を同時に行う。塔12は、供給箇所より下にストリッピングセクション14、および供給箇所より上に精留/反応セクション16を有する。どちらのセクションも、分離ゾーン18、20、および22を形成する蒸留内在物(distillation internals)を収容し、精留/反応セクション16は、触媒ゾーン24を形成する1つ以上の触媒床を収容する。塔はリボイラーループ26を有し、副次的な凝縮器、インターリボイラー(interreboilers)、およびポンプ・アラウンド(pump-around)を組み込むこともでき、熱交換器があってもなくてもよい。図1にはこれらの構成成分は示されていないが、米国特許第5,679,241号と米国特許出願第10/202,702号には開示されており、これらを使用して特定の応用における二重圧力式システムの性能を高めることができる、とされている。
【0007】
塔12が脱ペンタン装置として運転される場合のボトム液28はC6以上の成分を含有し、通常はガソリンのプロセシングに使用される。塔はさらに脱ブタン装置として運転することもでき、この場合、ボトム液28はC5+流れである。塔12からのオーバーヘッド蒸気30が凝縮器32を通過し、一部凝縮した流れ34が分離容器36に送られる。凝縮器32における好ましい冷媒は冷却水である。蒸気と液体が分離され、還流液体38が塔12に戻される。蒸気40が42においてさらに冷却され、分離容器44に送られ、液体46が再循環され、容器36における還流液体と合流する。次いで、ネット蒸気生成物48が、さらなるプロセシングのために送られる。
【0008】
図1に示す先行技術のシステムは単一圧力のシステムであり、触媒蒸留水素化の全体的な操作が狭い圧力範囲で行われる。下記の表1は、脱ペンタン装置として運転されるこのような先行技術のシステムにおける物質収支の例であり、関係する重要な運転パラメーターが記載してある。表1と表2において、そして本明細書での説明の全体にわたって、圧力は絶対圧力として記載されている。一般的なナフサを適度な分解率でクラッキングすることによって得られる供給ガスを使用して、塔システムを約17kg/cm2の単一操作圧力にて運転するときに望ましい触媒床温度を約125℃に保持するためには、ボトム温度を203℃にすればよいことが表1からわかる。この温度では、抑制剤を使用しないとある程度の汚染が起こりうる。図1のシステムが脱ブタン装置として運転される場合は、個々のデータは変わるが、ボトム温度は高いままである。これは、塔12のオーバーヘッド流れが周囲温度の冷媒によって一部凝縮されるよう、脱ブタン装置が脱ペンタン装置より高い圧力で運転されなければならないからである。
【0009】
【表1】

【0010】
本発明の二重圧力式触媒蒸留水素化システムを図2に示す。本システムの第1の塔は、一般には図1の塔12と同じ圧力(この例では、約17kg/cm2の圧力の狭い範囲である)で運転される高圧塔50である。高圧塔の圧力は、分解ガスの組成と冷媒の温度に応じて14〜20kg/cm2の範囲であってよい。代表的な圧力は16〜18kg/cm2である。エチレンプラントのチャージガス圧縮機の中間段階もしくは最終段階からのチャージガス52が、二重圧力式塔システムの第1の高圧塔50に流入する。チャージガス供給物52は加熱するのが好ましいが、予熱なしで高圧塔に流入してもよい。予熱の温度は80〜120℃の範囲であるのが好ましい。チャージガス供給物は、後述の低圧塔のグロスオーバーヘッド流れとの熱交換によって予熱するのがさらに好ましい。これとは別に、還流凝縮器70で冷却する前の高圧塔のグロスオーバーヘッド流れ(図2には示されていない)によって予熱することもできる。高圧塔50は一般に、精留/反応セクション58に2つの分留ゾーン54と56(1つは触媒ゾーン60の上に、そしてもう1つは触媒ゾーン60の下に)を有する。触媒ゾーン60は、分留ゾーンとしても機能する。塔50への蒸気チャージガス供給物52より下では、リボイラー62によってもたらされる分離だけを利用することができる。しかしながら、このストリッピングゾーン66に追加の分留ゾーン64が存在するのが好ましい。この分留ゾーン66(存在する場合)は一般に、理論分離段数がほとんどない。高圧塔50と後述する低圧塔の両方における分留ゾーンは、工業的に得られる標準的な物質移動接触装置〔トレー(たとえば、バルブトレー、シーブトレー、およびセグメンタルトレー)、シェッドデッキ(shed decks)、または充填物(たとえば、ランダム充填物や構造化充填物等)を含む〕を使用する。
【0011】
チャージガス供給物52が高圧塔50中において上方に移動し、下向流液体と接触する。チャージガス供給物が触媒蒸留水素化ゾーン60に流入し、そこでガス中に含まれている水素が不飽和物質(特に、アセチレン類やジエン)と反応して、好ましくは対応するオレフィン化合物を形成する。オリゴマー化生成物が形成された場合は、下向流炭化水素液体によってこれらの生成物を触媒から洗い落とす。したがってこれらの化合物は、形成されると直ちに触媒表面から除去され、これにより触媒に対する汚染速度が抑えられる。触媒ゾーン60は、貴金属触媒(たとえば、パラジウムや銀)またはこれらの混合物等の水素化触媒を収容する。これとは別に、ニッケル等の非貴金属水素化触媒を収容してもよい。さらにこれとは別に、非貴金属触媒と貴金属触媒の両方を収容してもよい(混合して、あるいは好ましくは層状にして)。触媒床の温度は90〜135℃の範囲であり、図2の例では125℃である。
【0012】
触媒水素化ゾーン中の触媒はバルク装填することができ、押出物、ペレット、球状物、またはオープンリング形状物で構成される。触媒は、構造物の一部(たとえば、ワイヤメッシュもしくは他のタイプのガーゼの表面上に付着させた触媒、またはモノリス構造物の壁体上に含有させた触媒)であるのがさらに好ましい。触媒は、米国特許第6,000,685号、第5,730,843号、第5,189,001号、および第4,215,011号に記載のように、特別に設計された容器中に収容されるのが最も好ましい。
【0013】
触媒床を出た後、上向き流れのガスは、アセチレンやジエンのバルクが水素化された状態で第2の分留ゾーン56に進み、そこで還流物と接触する。オーバーヘッド蒸気68が、周囲温度の冷媒(好ましくは冷却水)と対向して還流凝縮器70内にて一部凝縮される。72において蒸気と液体が分離され、液体還流物74が高圧塔50に戻される。蒸気76は、ベント凝縮器78においてさらに冷却することができる。実施する場合、84において液体82をベント凝縮器から分離し、この液体82をメインの還流凝縮器70からの液体と合流させ、高圧塔に還流物74として戻す。次いでネット蒸気生成物86をさらに水素化して、残留濃度のアセチレンを除去する(図示せず)。この後、蒸気生成物が、チャージガス圧縮機またはエチレンプラントの冷却トレインに流れていき、有用な炭化水素生成物と水素生成物が燃料生成物から分離される。有用な炭化水素を引き続き処理して、化学薬品グレードおよび/またはポリマーグレードのエチレン生成物とプロピレン生成物を得る。
【0014】
高圧塔50においては、小さな規模の分留ゾーン64が蒸気供給物52の下に存在するのが好ましい。蒸気供給物より下の塔において下向きに流れる液体は、リボイラー62からの上向きに流れる蒸気との接触によって、軽質で高蒸気圧の成分(たとえば、エタン以下の軽質物質)のほとんどがストリッピングされる(安定化される)。C3成分のほとんどもストリッピングされる。しかしながら、完全な脱ペンタンは達成されない。温度が低く保持されるために、相当量のC4成分とC5成分がボトム流れ88中に残る。一般には、リボイラーは、スチームを凝縮させることによって加熱される。これとは別に、エチレンプラントからの廃熱(クエンチオイルとしての)を加熱媒体として使用することもできる。高圧塔50からのボトム生成物88は、軽質成分が少なく、中程度の範囲の成分(特に、C4炭化水素とC5炭化水素)が多く、そしてさらにC6+炭化水素も含んでいる。低圧塔におけるオーバーヘッド流れを、冷却を施すことなく完全に凝縮させることができるよう、この流れから軽質成分を除去するのが望ましい。高圧塔からのボトム流れ88の温度は200℃未満であり、160℃未満であるのが好ましい。
【0015】
高圧塔50からのボトム生成物88を、好ましくは冷却せずに低圧塔90に送る。この例における低圧塔90は脱ペンタン装置でもあり、高圧塔50に類似していて、約6kg/cm2の圧力で運転される。この低圧塔に対する圧力は、組成に応じて4〜10kg/cm2の範囲であってよい。代表的な圧力は4〜8kg/cm2である。低圧塔90は、供給物88より上に分離ゾーン92を、そして供給物88より下に分離ゾーン94を収容する。低圧塔は、供給トレーより上に、92で示される分留トレーを幾つか有するのが好ましい。これとは別に、塔90は、供給物88を一番上のトレーに流入させた状態でストリッピング塔として運転することもできるし、あるいは供給物88を塔90のライン96オーバーヘッドに向けることもできる。オーバーヘッド生成物はC5以下の成分であり、ボトム生成物はC6以上の成分である。グロスオーバーヘッド96は、98においてチャージガス供給物との熱交換によってある程度凝縮し、次いで熱交換器100において完全に凝縮する。熱交換器100における好ましい冷却剤は冷却水である。完全に凝縮した流れ102を103においてポンプ移送し、液体流れの一部104を還流物として戻す。この還流物は、図2に示すように、ポンプ103を出て行く温度で戻すことができる。これとは別に、還流物は、別個の熱交換器を使用してグロスオーバーヘッド流れ96と対向させて予熱することもできるし、あるいはマルチパスのプレートフィン熱交換器(multi-pass platefin exchanger)(図示せず)を使用することによって、110における追加の熱交換器使用として予熱することもできる。塔90からのネットオーバーヘッド生成物液体流れ106が110においてオーバーヘッド96からの熱で予熱され、流れ112として高圧塔50に戻される。この流れ112は、高圧塔に戻す前にある程度気化させるのが好ましい。熱交換器114において、外部の熱流れ(たとえば、スチームやある種の廃熱流れ)によってさらなる予熱が行われる。この加熱された戻り流れ112に対する塔流入箇所は、一般には触媒床60より下(たとえば、システムへの蒸気供給物52と同じ流入箇所)である。熱交換器114におけるこのさらなる予熱は、高圧塔におけるリボイラーの動作要件(duty requirement)を緩和させる。戻り流れは、存在しうるオリゴマーの濃度が無視できる程度なので、高圧塔のリボイラーにインプットされる熱と比較して、この流れへの熱インプットをできるだけ大きくするのが好ましい。
【0016】
低圧塔のボトム流れ116はC6+炭化水素成分である。この流れ116のC5含量は、一般には1%未満であり、好ましくは0.1%未満である。このボトム流れ116の温度は200℃未満であり、好ましくは160℃未満である。このボトム流れは、一般には、エチレンプラントのほかの場所で捕集される熱分解ガソリン流れと合流し、そしてさらに水素化されて自動車用ガソリンを生成する。これとは別に、この流れをさらに処理して、ベンゼン、トルエン、またはキシレン等の芳香族炭化水素を回収することもできる。表2は、脱ペンタン装置として運転される、図2の本発明のシステムに対する物質収支である。この表には、関与している重要な運転パラメーターが記載されている。
【0017】
【表2】

【0018】
【表3】

【0019】
上記の説明は、脱ペンタン装置として運転される本発明のシステムを説明しているが、本発明のシステムは、脱ブタン装置としても適用することができる。フロースキームは類似しているが、運転圧力はより高くなる。圧力は、高圧塔においても(還流物を生成できるように)、および低圧塔においても〔オーバーヘッド流れを冷却し、周囲温度媒体(好ましくは冷却水)によって完全に凝縮できるように〕より高い。脱ペンタン装置の運転の場合に比べ、高圧塔の運転圧力がより高いことで、触媒床の温度が100〜135℃(好ましくは110〜125℃)の所望の温度範囲に保持される。脱ブタン装置としての運転に対するフロースキームは、図2または図3のフローキスームと類似している。高圧塔の圧力は、分解ガスの組成および冷媒の温度に応じて28〜43kg/cm2の範囲である。代表的な圧力は34〜39kg/cm2である。低圧塔の圧力は5〜14kg/cm2の範囲である。代表的な圧力は11〜12kg/cm2である。脱ブタン装置として運転される場合、流れ86中のC5含量は一般には1%未満であり、好ましくは0.1%未満である。流れ116中のC4含量は一般には1%未満であり、好ましくは0.1%未満である。
【0020】
脱ペンタン装置として運転される場合の図2のフロースキームに対するバリエーションを図3に示す。このバリエーションにおいては、低圧脱ペンタン装置90からのネットオーバーヘッド流れ112を、弁118を介して、触媒床60より上の箇所にて高圧脱ペンタン装置の上部に送る。これは、ネットオーバーヘッド流れ112が、触媒床より下の箇所にて高圧脱ペンタン装置に送られる場合の図2とは対照的である。これとは別の戻り箇所を使用すると、図2のスキームと比較して、液体の流量および触媒床に対する組成が変わるが、システムの最高温度を約50℃ほど下げるという同じ目的は達成される。低圧塔から高圧塔への、ネットの塔オーバーヘッド流れは、予熱なしで戻すことも、あるいは幾らか予熱して戻すこともできる。図2のフロースキームとは異なって、図3の場合の戻り流れは気化されていない。低圧脱ペンタン装置からのネットオーバーヘッド流れの一部を、弁120を介して高圧脱ペンタン装置の下部に、そして他の部分を触媒床の上部に送ることもできる。このことは、2つの脱ペンタン装置の下部における全体としての最高温度を同等にして、触媒床の条件を変えるという操作においてさらなるフレキシビリティをもたらす。
【0021】
本発明の利点は、表2に示す本発明の二重圧力式システムに対する重要な運転特性と、表1に示す先行技術の単一圧力式システムとを比較することによって(この場合、どちらも、ナフサを供給原料とする水蒸気分解装置のための、フロントエンド触媒蒸留水素化システムにおける脱ペンタン装置として運転される)理解することができる。
【0022】
表1を参照すると、流れに対する運転圧力は16.2〜17.7kg/cm2の範囲である。平均の触媒床温度は約125℃に保持され、最も高い温度は、流れ28(ネットの塔ボトム流れ)における203℃である。
【0023】
表2を参照すると、図2の高圧塔50が、図1の塔12と同じ圧力で運転されている。システムへの供給物52およびシステムからのネットオーバーヘッド流れ86は、流量、組成、および温度が表1の場合と同じである。流れ116(システムのネットボトム流れを示している)は、流量と組成が表1における流れ28と同じである。しかしながら表2においては、流れ116の温度が147℃であるのに対し、表1における流れ28の温度は203℃である。このように温度がより低いのは、表1のおける流れ28の圧力が17.7kg/cm2であるのに比べて、表2における流れ116の圧力が6.5kg/cm2であるからである。
【0024】
表2における流れ88は、第1の高圧脱ペンタン装置から第2の低圧脱ペンタン装置へと進む流れである。この流れの圧力は17.4kg/cm2、すなわち表1における流れ28とほぼ同じ圧力である。しかしながら、この流れ88の温度は、表1の流れ28に対する203℃と比較して150℃である。こうしたより低い温度は、約15モル%のC5以下の炭化水素が流れ88中に存在するように図2の高圧脱ペンタン装置を運転することによって達成される(これによってこの流れの温度が低下する)。平均触媒床温度は約120℃であり、この温度は、先行技術による図1の単一圧力式システム構成物の平均触媒床温度とほぼ同じである。したがって図2のシステムは、表2のデータにおいて示されているように、触媒床の温度を保持するという目的を、そして同時に、システムの最高温度を約50℃ほど低下させるという目的を達成する。
【0025】
図4は、図2のプロセススキームのバリエーションを示す。このバリエーションにおいては、ポンプ移送される還流流れ74が、高圧塔のオーバーヘッド流れ68の一部を冷却するか又は部分的に凝縮させることによって、熱交換器122において予熱される。この予熱の結果、塔50の一番上のトレーを出て行く蒸気の温度がより高くなる。塔自体における他の全てのプロセス条件は実質的に変わらない。塔を出て行く流れの温度がより高いと、熱交換器124における廃熱回収の程度をより大きくすることができる。この廃熱は、予備加熱に利用することができる〔たとえば、供給物52の予熱(図4には示さず)、または低温を必要とするエチレンプラントにおける他の使用〕。これとは別に、この廃熱は、廃熱回収用熱交換器を組み込むことによって、還流物を予熱することなく単に回収することもできる。これは設計と操作の点でより単純にはなるが、回収できる廃熱はより少なくなる。
【0026】
先行技術の単一運転圧力触媒蒸留水素化システムを使用した場合に達成できるより低いシステム最高温度を保持しつつ、より低い平均触媒床温度またはより高い平均触媒床温度となるように、この二重圧力式システムの運転条件を改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】先行技術によるフロントエンド触媒蒸留水素化システムに対するフローシートである。
【図2】本発明によるフロントエンド触媒蒸留水素化システムに対するフローシートであり、フロースキームにおける2つのバリエーションを示している。
【図3】図2のシステムの一部であるが、低圧塔から高圧塔への戻りラインに対する別の流路を示している。
【図4】図2のシステムの一部であり、高圧塔のオーバーヘッド流れに熱回収工程が組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素、メタン、エチレン、プロピレン、ならびに他のC2、C3、C4、C5、およびC6以上の不飽和炭化水素を含有する分解ガス供給流れを、前記のエチレンとプロピレンを前記他の不飽和炭化水素の少なくとも一部から分離するように、そしてエチレンとプロピレンを水素化することなく、前記他の不飽和炭化水素の少なくとも一部を水素化するようにプロセシングする方法であって、
a. 少なくとも1つの触媒床と分留ゾーンを収容していて、第1の圧力で運転される触媒蒸留水素化塔を含んだ第1の塔中に前記供給流れを導入する工程、このとき同時に
(i) 前記のエチレンとプロピレンを水素化することなく、前記他の不飽和炭化水素の少なくとも一部を選択的に水素化し;
(ii) 生成した炭化水素混合物を分別蒸留によって、未反応の水素、メタン、エチレン、プロピレン、およびC4化合物とC5化合物を含有する第1の塔のグロスオーバーヘッド流れと、C6以上の炭化水素と幾らかのC5、C4、C3、およびC2不飽和炭化水素を主として含有する第1のボトム流れとに分離し;そして
(iii) 前記第1の塔を、前記第1のボトム流れが200℃未満の温度に保持されるように運転する;
b. 前記第1の塔のグロスオーバーヘッド流れを、第1の塔のネットオーバーヘッド流れと第1の塔の還流流れとに分離し、前記第1の塔の還流流れを前記第1の塔に戻す工程;
c. 前記第1の塔からの前記第1のボトム流れを、前記第1の圧力より低い第2の圧力で運転される分留塔を含んだ第2の塔に導入し、前記第1のボトム流れを、C6以上の炭化水素と選定された量のC5炭化水素を含有するネットボトム流れと、さらなるC6以上の炭化水素とC5、C4、C3、およびC2炭化水素を主として含有する第2の塔のグロスオーバーヘッド流れとに分離し、そして前記第2の塔を、前記ネットボトム流れが200℃未満の温度に保持されるように運転する工程;
d. 前記第2の塔のグロスオーバーヘッド流れを、第2の塔のネットオーバーヘッド流れと第2の塔の還流流れとに分離し、前記第2の塔の還流流れを前記第2の塔に戻す工程;および
e. 前記第2の塔のネットオーバーヘッド流れを前記第1の塔に再循環させる工程;
を含む前記方法。
【請求項2】
前記第1のボトム流れと前記ネットボトム流れの温度が160℃未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1と第2の塔が脱ペンタン装置として運転され、前記第2の塔からの前記ネットボトム流れ中における前記選定量のC5炭化水素が1%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の塔が14〜20kg/cm2の範囲の圧力で運転され、前記第2の塔が4〜10kg/cm2の範囲の圧力で運転される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1と第2の塔が脱ブタン装置として運転され、前記ネットボトム流れ中の前記選定量のC4炭化水素が1%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の塔が28〜43kg/cm2の範囲の圧力で運転され、前記第2の塔が5〜14kg/cm2の範囲の圧力で運転される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒床の温度が90〜135℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の塔のネットオーバーヘッド流れを再循環させる工程が、前記触媒床の下に再循環させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の塔のネットオーバーヘッド流れを再循環させる工程が、前記触媒床の上に再循環させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の塔のグロスオーバーヘッド流れとの熱交換によって、そしてこれによって前記第2の塔のグロスオーバーヘッド流れを冷却および一部凝縮させることによって、前記第2の塔のネットオーバーヘッド流れを、前記第1の塔に再循環させる前に予熱する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記予熱された第2の塔のネットオーバーヘッド流れを外部の熱流れによってさらに予熱する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の塔のネットオーバーヘッド流れを再循環させる工程が、前記第2の塔のネットオーバーヘッド流れを冷却する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の塔の還流流れを、前記第1の塔のグロスオーバーヘッド流れとの熱交換によって予熱し、これにより前記第1の塔のグロスオーバーヘッド流れ中に含まれている熱のより多くの量を冷却して、グロスオーバーヘッド流れが周囲温度の冷媒と向流の形で最終的に冷却される前に、発熱量を回収することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記冷却された第1の塔のグロスオーバーヘッド流れを周囲温度の冷媒によってさらに冷却する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
水素、メタン、エチレン、プロピレン、ならびに他のC2、C3、C4、C5、およびC6以上の、不飽和炭化水素を含めた炭化水素を含有する分解ガス供給流れを、前記のエチレンとプロピレンを前記他の炭化水素の少なくとも一部から分離するように、そしてエチレンとプロピレンを水素化することなく、前記他の不飽和炭化水素の少なくとも一部を水素化するようにプロセシングする方法であって、
a. 水素化触媒と分留ゾーンを収容していて、第1の圧力で運転される触媒蒸留水素化塔中に前記供給流れを導入する工程、これにより前記他の不飽和炭化水素の少なくとも一部が水素化される;
b. エチレン、プロピレン、他のC2〜C4炭化水素、および選定された量のC5炭化水素を含有するネットオーバーヘッド流れを分離する工程;
c. 前記C6以上の炭化水素と、前記C5以下の炭化水素の一部とを含有する第1のボトム流れを分離し、前記第1のボトム流れを200℃未満の温度に保持する工程;
d. 前記第1のボトム流れを、前記第1の圧力より低い第2の圧力で運転される分留塔中に導入する工程;
e. 前記C6以上の炭化水素と、選定された量の前記C5炭化水素とを含有するネットボトム流れを分離し、前記ネットボトム流れを200℃未満の温度に保持する工程;
f. 前記C6以上の炭化水素の一部と、前記C5以下の炭化水素の一部とを含有する分留塔のネットオーバーヘッド流れを分離する工程;および
g. 前記分留塔のネットオーバーヘッド流れを、前記触媒蒸留水素化塔に再循環させる工程;
を含む前記方法。
【請求項16】
前記第1のボトム流れと前記ネットボトム流れの温度が160℃未満である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1と第2の塔が脱ペンタン装置として運転され、前記第2の塔からの前記ネットボトム流れ中における前記選定量のC5炭化水素が1%未満である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の塔が14〜20kg/cm2の範囲の圧力で運転され、前記第2の塔が4〜10kg/cm2の範囲の圧力で運転される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1と第2の塔が脱ブタン装置として運転され、前記ネットボトム流れ中の前記選定量のC4炭化水素が1%未満である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の塔が28〜43kg/cm2の範囲の圧力で運転され、前記第2の塔が5〜14kg/cm2の範囲の圧力で運転される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記触媒床の温度が90〜135℃の範囲である、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−505987(P2008−505987A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522660(P2006−522660)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/024909
【国際公開番号】WO2005/017068
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(599003073)キャタリティック・ディスティレイション・テクノロジーズ (28)
【Fターム(参考)】