説明

エチレンポリマー組成物およびそれから加工された品

【課題】ポリエチレン類からなる繊維の結合強度が向上したポリエチレン組成物の提供。
【解決手段】メルトインデックス0.1−100グラム/10分と密度0.855−0.890のエチレン/オレフィン共重合体を0.5ー10重量パーセント未満含み、かつメルトインデックス0.5−500グラム/10分と密度が第一番目のポリマー密度よりも少なくとも0.01大きい密度のエチレン/オレフィン共重合体を99.5重量パーセント以下含むポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は1997年6月20日付けで提出した暫定的米国出願60/050279から優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は向上した結合性能(bonding performance)を示すポリマー組成物に関する。特に、本主題発明は、均一エチレン/α−オレフィンインターポリマー(homogeneous ethylene/α−olefin interpolymer)と高密度ポリマーのブレンド物を含んで成るポリマー組成物に関する。本主題発明は、更に、この向上した結合性能を示すポリマー組成物をいろいろな最終使用用途、例えば繊維、不織生地そしてそれから加工された品(例えば使い捨て失禁用衣類またはおむつ)および回転成形品(rotational molded articles)などで用いることにも関する。この繊維は良好な紡糸性(spinnability)を示し、結果として良好な結合強度(bond strength)と良好な伸びを示す生地をもたらす。回転成形品は良好なESCR、曲げ応力(flexural modulus)、落錐(Dart)衝撃値Bおよびアイゾッド衝撃値を示す。
【0003】
繊維の分類分けを典型的にそれの直径に従って行った。モノフィラメント(monofilament)繊維を、一般的には、個々の繊維の直径がフィラメント当たり15デニール(denier)以上、通常は30デニール以上のものとして定義した。微細なデニールの繊維は、一般に、フィラメント当たり15デニール未満の直径を有する繊維を指す。ミクロデニール(microdenier)の繊維を、一般に、直径が100ミクロン未満の繊維として定義した。繊維の分類分けをまたそれの製造方法で行うことも可能であり、例えばモノフィラメント、連続巻きファインフィラメント(continuous wound fine filament)、ステープル、即ちショートカット(short cut)繊維、スパンボンド(spun bond)およびメルトブローン(melt blown)繊維などに分類分け可能である。
【背景技術】
【0004】
多様な繊維および生地が熱可塑性プラスチック、例えばポリプロピレン、高分枝低密度ポリエチレン(LDPE)(典型的には高圧重合方法で作られる)、不均一分枝線状ポリエチレン(例えばチーグラー触媒を用いて作られた低密度線状ポリエチレン)、ポリプロピレンと不均一分枝線状ポリエチレンのブレンド物、不均一分枝線状ポリエチレンとエチレン/ビニルアルコールコポリマーのブレンド物などから作られてきた。
【0005】
いろいろなポリマー類が繊維に押出し加工可能であることが知られているが、それらの中で、高分枝LDPEを微細デニールの繊維にする溶融紡糸(melt spun)は成功裏には行われていない。米国特許第4,076,698号(Anderson他)(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているように、不均一分枝線状ポリエチレンはモノフィラメントに加工された。米国特許第4,644,045号(Fowells)、米国特許第4,830,907号(Sawyer他)、米国特許第4,909,975号(Sawyer他)および米国特許第4,578,414号(Sawyer他)(これらの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されているように、不均一分枝線状ポリエチレンはまた成功裏に微細デニールの繊維にも加工された。米国特許第4,842,922号(Krupp他)、米国特許第4,990,204号(Krupp他)および米国特許第5,112,686号(Krupp他)(これらの開示は全部引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されているように、そのような不均一分枝ポリエチレンのブレンド物も成功裏に微細デニールの繊維および生地に加工された。また、米国特許第5,068,141号(Kubo他)には、指定した融解熱を示す特定の不均一分枝LLDPEから得られた連続熱結合(continuousheat bonded)フィラメントから不織生地を製造することも開示されている。不均一分枝ポリマー類のブレンド物を用いると改良された生地がもたらされはするが、そのようなポリマー類を繊維破壊なしに紡糸するのはより困難である。
【0006】
米国特許第5,549,867号(Gessner他)には、紡糸を改良する目的で低分子量のポリオレフィンを分子量(Mz)が400,000から580,000のポリオレフィンに添加することが記述されている。Gessner他が挙げた実施例は、チーグラー・ナッタ触媒を用いて作られた高分子量が高い方のポリプロピレンが70から90重量パーセントで低分子量メタロセン(metallocene)ポリプロピレンが10から30重量パーセントのブレンド物に向けたものであった。
【0007】
WO 95/32091(Stahl他)には、異なる融点を示すポリプロピレン樹脂から作られ、異なる繊維製造方法で作られた繊維のブレンド物、例えばメルトブローン繊維とスパンボンド繊維のブレンド物などを用いることで結合温度(bonding temperatures)を低くすることが開示されている。Stahl他は、イソタクティックプロピレンコポリマーとそれの融点よりも高い融点を有する熱可塑性ポリマーのブレンド物を含んで成る繊維を請求している。しかしながら、Stahl他は異なる繊維のブレンド物を用いて結合温度を操作するような教示をある程度与えてはいるが、Stahl他は、同じ融点を有する繊維から作られた生地の生地強度を向上させる手段に関しては指針を与えていない。
【0008】
Lai、Knight、ChumおよびMarkovichの名前の米国特許出願544,497(引用することによって本明細書に組み入れられる)には、実質的に線状であるエチレンポリマー類(substantially linear ethylene polymers)と不均一分枝エチレンポリマー類のブレンド物およびこのようなブレンド物をいろいろな最終使用用途(繊維を包含)で用いることが開示されている。開示された組成物は、好適には、密度が少なくとも0.89グラム/センチメートル3の実質的に線状であるエチレンポリマーを含んで成る。しかしながら、Lai他が開示した加工温度は165℃を越えるにすぎない。それとは対照的に、繊維の一体性を保とうとする場合には、結晶性材料の全部が融合前または融合中に溶融してしまうことがないように、しばしば、生地をより低い温度で結合させることが行われた。
【0009】
ヨーロッパ特許出願公開第(EP)340,982号には、第一成分のコア(core)と第二成分の殻(sheath)を含んで成る2成分繊維が開示されており、上記第二成分は更に非晶質のポリマーと少なくとも部分的には結晶性のポリマーのブレンド物を含んで成る。開示された非晶質ポリマー:結晶性ポリマーの範囲は15:85から00(原文のまま、90]:10であった。上記第二成分は好適には上記第一成分と同じ一般のポリマー型(general polymeric type)の結晶性および非晶質ポリマー類を含んで成り、ポリエステルが好適である。例えば、その実施例には非晶質および結晶性ポリエステルを第二成分として用いることが開示されている。EP340,982号の表IおよびIIには非晶質ポリマーが示すメルトインデックスが低くなるにつれて同様にウエブ強度(web strength)も不利益に低下することが示されている。現職(incumbent)のポリマー組成物には、一般に0.7から200グラム/10分の範囲のメルトインデックスを示す高密度ポリエチレンと線状低密度ポリエチレンが含まれている。
【0010】
上記ポリマー類は市場において繊維用途で良好な成果を果してはいるが、結合強度を向上させることができれば、生地の強度がより強くなり、従って不織生地および品物の製造業者ばかりでなく最終的な消費者にとって価値が増大することから、そのようなポリマー類から作られた繊維にとって利点になるであろう。しかしながら、結合強度がいくら良くなっても、紡糸性が有害に低下するか或は加工中に繊維または生地が装置に粘着する度合が有害に高くなると言った犠牲を伴うべきでない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
最適なメルトインデックスを示す高融点ポリマーに低融点の均一ポリマーを含めると充分な繊維紡糸性能を維持しながら向上した結合性能を示すカレンダー加工生地が有効に得られることを見い出した。従って、本主題発明は、ポリマーブレンド物から作られた0.1から50デニールの範囲の直径を有する繊維を提供するものであり、上記ポリマーブレンド物は、
a. i. 0.5から100グラム/10分のメルトインデックス、および
ii. 0.855から0.950グラム/センチメートル3の密度、を有する均一エチレン/α−オレフィンインターポリマーである1番目のポリマーを0.5重量パーセントから25重量パーセント(ポリマーブレンド物の重量の)、ならびに
b. i. 0.5から500グラム/10分のメルトインデックス、および
ii. 該1番目のポリマーの密度より少なくとも0.01グラム/センチメートル3大きい、好適には少なくとも0.03グラム/センチメートル3大きい、より好適には少なくとも0.05グラム/センチメートル3大きい、最も好適には少なくとも0.07グラム/センチメートル3大きい密度、
を有するエチレンホモポリマーまたはエチレン/α−オレフィンインターポリマーである2番目のポリマーを含む。
【0012】
ここで、この繊維は165℃未満の温度で結合し得る(bondable)。
好適には、本発明の繊維は、
a. i. ≧5.63のメルトフロー比(I10/I2)を示し、
ii.式:
Mw/Mn≦(I10/I2)−4.63
で定義される分子量分布Mw/Mnを示し、
iii. 表面メルトフラクチャー(surface melt fracture)が起こり始める時の臨界せん断速度が、ほぼ同じI2およびMw/Mnを示す線状エチレンポリマーの表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度より、少なくとも50パーセント大きく、かつ
iv. 約0.90グラム/センチメートル3未満の密度を有する、
少なくとも1種の実質的に線状であるエチレン/α−オレフィンインターポリマー、および
b. 0.935グラム/センチメートル3より大きい密度を有する少なくとも1種のエチレンポリマー、
を含んで成るポリマー組成物から製造される。
【0013】
本主題発明は、更に、少なくとも0.935グラム/センチメートル3の密度および0.5グラム/10分を越えるメルトインデックスから500グラム/10分のメルトインデックスを示すエチレンホモポリマーまたはエチレン/α−オレフィンインターポリマーの結合強度を向上させる方法も提供し、ここでは、この方法に、それと0.855から0.890グラム/センチメートル3の密度および0.1から10グラム/10分のメルトインデックスを示す線状もしくは実質的に線状である均一エチレン/α−オレフィンインターポリマーが0.5から10重量パーセント未満の密な混合物(intimate admixture)を与えることを含める。
【0014】
本主題発明は、更に、向上した結合強度を示すポリマー組成物も提供し、このポリマー組成物は、
a. i. 0.1から100グラム/10分のメルトインデックス、および
ii. 0.855から0.890グラム/センチメートル3の密度、
を有する均一エチレン/α−オレフィンインターポリマーである1番目のポリマーを0.5重量パーセントから10重量パーセント未満(ポリマー組成物の重量の)ならびに、
b. i. 0.5から500グラム/10分のメルトインデックス、および
ii. 該1番目のポリマーの密度より少なくとも0.01グラム/センチメートル3大きい、好適には少なくとも0.03グラム/センチメートル3大きい、より好適には少なくとも0.05グラム/センチメートル3大きい、最も好適には少なくとも0.07グラム/センチメートル3大きい密度、
を有するエチレンホモポリマーまたはエチレン/α−オレフィンインターポリマーである2番目のポリマーを含む。
【0015】
本主題発明は、更に、0.1から50デニールの範囲の直径を有する繊維も提供し、この繊維は、CRYSTAF結晶化速度曲線(crystallization kinetic curve)で測定した時に30℃で可溶な画分が少なくとも0.5重量パーセントであるとして特徴づけられるポリマー組成物から製造される。ここで、この繊維は165℃未満の温度で結合し得る。
【0016】
本主題発明は、更に、繊維、生地、不織品、ロト成形品(rotomolded article)、フィルム層、射出成形品、ブロー成形品、射出ブロー成形品または押出し加工被覆組成物の形態における本発明のポリマー組成物も提供する。
【0017】
本発明の繊維および生地の製造は通常の合成繊維または生地工程[例えばカーデッドステープル(carded staple)、スパンボンド、メルトブローンおよびフラッシュスパン(flash spun)]で実施可能であり、これらを用いると、繊維紡糸性の著しい犠牲なしに高い伸びと引張り強度を有する生地を製造することができる(特に本ポリマー組成物にこれの使用用途に最適なメルトインデックスを示す1番目のポリマーを含めた時)。本発明のポリマー組成物は優れた加工性を示すことから、本発明の繊維および生地は通常の装置を用いて製造可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
上記および他の態様を以下に示す図に関連させて行う詳細な説明でより詳細に記述する。
【0019】
本明細書に開示するポリマー組成物で用いる均一に分枝していて実質的に線状であるエチレンポリマー類は、エチレンと少なくとも1種のC3−C20α−オレフィンのインターポリマー類であり得る。本明細書で用いる用語「インターポリマー」および「エチレンポリマー」は、このポリマーがコポリマー、ターポリマーであってもよいことを示す。均一に分枝していて線状もしくは実質的に線状であるエチレンポリマー類を得るためにエチレンと一緒に有効に共重合するモノマー類には、C3−C20α−オレフィン類、特に1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが含まれる。特に好適なコモノマー類には1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが含まれる。エチレンとC3−C20α−オレフィンのコポリマー類が特に好適である。
【0020】
用語「実質的に線状である」は、ポリマーバックボーンが炭素1000個当たり0.01個の長鎖分枝から炭素1000個当たり3個の長鎖分枝、より好適には炭素1000個当たり0.01個の長鎖分枝から炭素1000個当たり1個の長鎖分枝、特に炭素1000個当たり0.05個の長鎖分枝から炭素1000個当たり1個の長鎖分枝で置換されていることを意味する。
【0021】
長鎖分枝を、本明細書では、コモノマーが組み込まれる結果としていくらか生じる短鎖分枝の長さよりも長い鎖長を有する分枝として定義する。この長鎖分枝の長さはポリマーバックボーンの長さとほぼ同じであり得る。
【0022】
長鎖分枝は13C核磁気共鳴(NMR)分光法で測定可能であり、それをRandall(Rev.Macromol.Chem.Phys.,C29(2&3),275-287頁)の方法(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)を用いて量化した。
【0023】
実質的に線状であるエチレンポリマー類の場合、このようなポリマー類は、
a) ≧5.63のメルトフロー比(I10/I2)を示し、
b) 式:
Mw/Mn≦(I10/I2)−4.63
で定義される分子量分布Mw/Mnを示し、かつ
c) グロス(gross)メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断応力が4x106ダイン/cm2を越えるか、或はそれと組み合わせて、表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度が、ほぼ同じI2およびMw/Mnを示す均一もしくは不均一分枝線状エチレンポリマーの表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度より、少なくとも50パーセント大きい、として特徴づけ可能である。
【0024】
線状エチレンポリマー類は、実質的に線状であるエチレンポリマー類とは対照的に、長鎖分枝を持たない、即ちそれらが有する長鎖分枝の数は炭素1000個当たり0.01個未満である。従って、用語「線状エチレンポリマー類」は、長鎖分枝を数多く有することが本分野の技術者に知られている高圧分枝ポリエチレンもエチレン/酢酸ビニルコポリマー類もエチレン/ビニルアルコールコポリマーも指さない。
【0025】
線状エチレンポリマー類には、例えば、チーグラー重合方法[例えば米国特許第4,076,698号(Anderson他)(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)]を用いて作られた伝統的な不均一分枝線状低密度ポリエチレンポリマー類または線状高密度ポリエチレンポリマー類または均一線状ポリマー類[例えば米国特許第3,645,992号(Elston)(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)]が含まれる。
【0026】
繊維の成形で用いる均一線状エチレンポリマー類および実質的に線状であるエチレンポリマー類は両方とも均一な分枝分布を示す。用語「均一な分枝分布」は、コモノマーが所定分子内にランダムに分布していてコポリマー分子の実質的に全てが同じエチレン/コモノマー比を有することを意味する。本発明で用いる均一エチレン/α−オレフィンポリマー類は、TREF技術で測定した時、「高密度」画分を測定可能量で本質的に含まない[即ち、均一分枝エチレン/α−オレフィンポリマー類は、メチル数が炭素1000個当たり2に等しいか或はそれ以下の分枝度を有するポリマー画分の量が典型的に15重量パーセント未満、好適には10重量パーセント未満、より好適には5重量パーセント未満であるとして特徴づけられる]。
【0027】
分枝分布の均一性はいろいろな様式で測定可能であり、そのような様式には、短鎖分枝分布指数(SCBDI)(Short Chain Branch Distribution Index)または組成分布分枝指数(CDBI)(Composition Distribution Branch Index)の測定が含まれる。SCBDIまたはCDBIを、全コモノマーモル含有量中央値の50パーセント以内に入るコモノマー含有量を有するポリマー分子の重量パーセントとして定義した。ポリマーのCDBIは、本技術分野で知られている技術で得られるデータ、例えばWild他著「Journal of Polymer Science,Poly.Phys.Ed.」、20巻、441頁(1982)、米国特許第5,008,204号(Stehling)(これらの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている如き、例えば昇温溶出分離法(temperature rising elution fractionation)(本明細書では「TREF」と省略する)などから容易に計算された。CDBIを計算する技術は米国特許第5,322,728号(Davey他)および米国特許第5,246,783号(Spenadel他)(これらの開示は両方とも引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。均一分枝線状エチレンポリマー類および実質的に線状であるエチレンポリマー類の場合のSCBDIまたはCDBIは、典型的に30パーセントを越え、好適には50パーセントを越え、より好適には60パーセントを越え、更により好適には70パーセントを越え、最も好適には90パーセントを越える。
【0028】
本発明の繊維の製造で用いる線状および実質的に線状である均一エチレンポリマー類は、示差走査熱量計(DSC)で測定した時、不均一分枝線状エチレンポリマー類(これは不均一に分枝しているポリマーが幅広い分枝分布を示すことが原因で溶融ピークを2つ以上示す)とは対照的に、典型的に溶融ピークを1つのみ示す。
【0029】
実質的に線状であるエチレンポリマー類は非常に予想外な流動特性を示し、このポリマーが示すI10/I2値は、このポリマーが示す多分散指数(即ちMw/Mn)から本質的に独立していた。これは、I10/I2値を高くするには多分散指数も高くする必要がある通常の均一線状エチレンポリマー類および不均一分枝線状ポリエチレン樹脂とは対照的であった。実質的に線状であるエチレンポリマー類はまた良好な加工性を示しかつ紡糸口金パックを通る時の圧力降下の度合が低い(高せん断濾過を用いた時でも)。
【0030】
本発明の繊維および生地の製造で用いるに有用な均一線状エチレンポリマー類は、線状のポリマーバックボーンを有していて長鎖分枝を全く持たずかつ狭い分子量分布を示す公知種類のポリマー類である。上記ポリマー類はエチレンと炭素原子数が3から20の少なくとも1種のα−オレフィンコモノマーのインターポリマー類であり、好適にはエチレンとC3−C20α−オレフィンのコポリマー、最も好適にはエチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンまたは1−オクテンのコポリマー類である。この種類のポリマー類は、例えばElstonの米国特許第3,645,992号に開示されており、その後、メタロセン触媒を用いて上記ポリマー類を製造する方法が、例えばヨーロッパ特許第0 129 368号、ヨーロッパ特許第0 260 999号、米国特許第4,701,432号、米国特許第4,937,301号、米国特許第4,935,397号、米国特許第5,055,438号およびWO 90/07526などに示されているように、開発された。このようなポリマー類は通常の重合方法(例えば気相、スラリー、溶液および高圧)を用いて製造可能である。
【0031】
上記1番目のポリマーは、ASTM D−792に従って測定して、少なくとも0.850グラム/センチメートル3、好適には少なくとも0.855グラム/センチメートル3、より好適には少なくとも0.860グラム/センチメートル3で、典型的には0.920グラム/センチメートル3以下、好適には0.900グラム/センチメートル3以下、より好適には0.890グラム/センチメートル3以下、最も好適には0.880グラム/センチメートル3以下の密度を有する線状もしくは実質的に線状である均一エチレンポリマーである。上記2番目のポリマーがエチレンポリマーである時、この2番目のポリマーは、上記1番目のポリマーの密度より少なくとも0.01グラム/センチメートル3、好適には少なくとも0.03グラム/センチメートル3、より好適には少なくとも0.05グラム/センチメートル3、最も好適には少なくとも0.07グラム/センチメートル3大きい密度を有する。この2番目のポリマーは、典型的に少なくとも0.880グラム/センチメートル3、好適には少なくとも0.900グラム/センチメートル3、より好適には少なくとも0.935グラム/センチメートル3、更により好適には少なくとも0.940グラム/センチメートル3、最も好適には少なくとも0.950グラム/センチメートル3の密度を有する。
【0032】
本発明の繊維および生地の製造で用いる1番目および2番目のポリマー類の分子量を、便利には、ASTM D−1238、条件190℃/2.16kg(以前は「条件(E)」として知られておりそしてまたI2として知られる)に従うメルトインデックス測定値を用いて示した。メルトインデックスはポリマーの分子量に反比例した。従って、分子量が高くなればなるほどメルトインデックスが低くなるが、この関係は直線的でなかった。上記1番目のポリマー類の場合のメルトインデックスは、一般に少なくとも0.1グラム/10分、好適には少なくとも0.5グラム/10分、より好適には少なくとも1グラム/10分で、一般に100グラム/10分以下、好適には30グラム/10分以下、より好適には10グラム/10分以下、更により好適には5グラム/10分以下、最も好適には1.5グラム/10分以下であった。上記2番目のポリマーの場合のメルトインデックスは、一般に少なくとも0.5グラム/10分、好適には少なくとも3グラム/10分、より好適には少なくとも5グラム/10分であった。
【0033】
メルトブローン繊維の場合の2番目のポリマーのメルトインデックスは、好適には少なくとも50グラム/10分、より好適には少なくとも100グラム/10分で、好適には1000グラム/10分以下、より好適には500g/10分以下であった。スパンボンデッド繊維の場合の2番目のポリマーのメルトインデックスは、好適には少なくとも15グラム/10分、より好適には少なくとも25グラム/10分で、好適には100グラム/10分以下、より好適には35g/10分以下であった。ステープル繊維の場合の2番目のポリマーのメルトインデックスは、好適には少なくとも8グラム/10分、より好適には少なくとも10グラム/10分で、好適には35グラム/10分以下、より好適には25g/10分以下であった。フラッシュスパン繊維の場合の2番目のポリマーのメルトインデックスは、好適には少なくとも0.1グラム/10分、より好適には少なくとも0.5グラム/10分で、好適には3グラム/10分以下、より好適には2g/10分以下であった。
【0034】
回転成形品で用いるポリマー組成物の場合の1番目のポリマーのメルトインデックスは、好ましくは少なくとも0.5グラム/10分、好適には少なくとも1.0グラム/10分で、好適には20グラム/10分以下、より好適には10g/10分以下、最も好適には5g/10分以下であった。回転成形品で用いるポリマー組成物の場合の2番目のポリマーのメルトインデックスは、好適には少なくとも3グラム/10分、より好適には少なくとも5グラム/10分で、好適には50グラム/10分以下、より好適には20g/10分以下、最も好適には10g/10分以下であった。
【0035】
エチレンポリマー類が有する分子量の特徴づけで用いるに有用な別の測定値を、便利には、ASTM D−1238、条件190℃/10kg(以前は「条件(N)」として知られておりそしてまたI10として知られる)に従うメルトインデックス測定値を用いて示した。上記2つのメルトインデックス項の比率がメルトフロー比であり、これをI10/I2として表示した。本発明の繊維を製造する時に用いるに有用な実質的に線状であるエチレンポリマー類を用いたポリマー組成物の場合のI10/I2比は長鎖分枝の度合を示す、即ちこのI10/I2比が高ければ高いほど、そのポリマー内の長鎖分枝が多くなる。この実質的に線状であるエチレンポリマー類の場合、狭い分子量分布(即ち1.5から2.5のMw/Mn)を維持しながらI10/I2比を変えることができる。この実質的に線状であるエチレンポリマー類が示すI10/I2比は、一般に少なくとも5.63、好適には少なくとも6、より好適には少なくとも7、特に少なくとも8であった。
【0036】
均一に分枝していて実質的に線状であるエチレンポリマー類の場合のI10/I2比の上限は一般に50以下、好適には30以下、特に20以下であった。
【0037】
本発明の繊維および生地の製造で用いるに有用な1番目のポリマー、2番目のポリマーまたはポリマー組成物全体に、また、本出願者らが見い出した向上した繊維および生地特性を妨害しない度合で、添加剤、例えば抗酸化剤[例えばヒンダードフェノール系、例えばCiba Geigy Corp.が製造しているIrganox(商標)1010など、ホスファイト類、例えばCiba Geigy Corp.が製造しているIrgafos(商標)168など]、粘着(cling)添加剤(例えばポリイソブチレン(PIB)など)、抗ブロック(antiblock)添加剤、顔料などを含有させることも可能である。
【0038】
混合多孔度カラムが備わっているWaters 150℃高温クロマトグラフィー装置を140℃の装置温度で操作するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、全体としてのインターポリマー生成物サンプルおよび個々のインターポリマー成分を分析した。溶媒は1,2,4ートリクロロベンゼンであり、これを用いてサンプルが0.3重量パーセント入っている溶液を注入用として調製した。流量を1.0ミリリットル/分にし、注入量を100マイクロリットルにした。
【0039】
狭い分子量分布のポリスチレン標準(Polymer Laboratories製)を溶出体積とに関連して用いることで、分子量測定値を引き出す。下記の式:
Mポリエチレン=a*(Mポリスチレン)b
を引き出すに適切な、ポリエチレンとポリスチレンに関するMark−Houwink係数[WilliamsおよびWordが「Journal of Polymer Science」、Polymer Letters、6巻、(621)1968の中で記述している如き]を用いて、ポリエチレンの相当する分子量を決定した。上記式中、a=0.4316およびb=1.0である。下記の式:
j=(Σwi(Mij))j
[式中、wiは、GPCカラムから溶出して来る画分i中の分子量Miを有する分子の重量画分であり、Mwを計算する時j=1でMnを計算する時j=−1である]
に従う通常様式で重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnを計算した。
【0040】
実質的に線状で均一に分枝しているエチレンポリマー類は、式:
Mw/Mn≦(I10/I2)−4.63
で定義されるMw/Mnを示した。
【0041】
線状および実質的に線状の両方の均一エチレンポリマー類の場合のMw/Mnは好適には1.5から2.5、特に1.8から2.2であった。
【0042】
メルトフラクチャー現象を識別する目的で、見掛けせん断速度に対する見掛けせん断応力のプロットを用いた。Ramamurthy著「Journal of Rheology」、30(2)、337−357、1986に従い、特定の臨界流量を越えると観察される押出物の不規則さは、幅広い意味で2つの主要な型に分類分け可能である、即ち表面メルトフラクチャーとグロスメルトフラクチャーに分類分け可能である。
【0043】
表面メルトフラクチャーは、明らかに安定した流れ条件下で起こり、そしてその詳細な範囲は、鏡面光沢の損失から、よりひどい「鮫肌」形態に至る。本開示では、押出物の表面粗さが40x倍率でのみ検出可能になる時(押出物の光沢が失われ始める時)であるとして、表面メルトフラクチャーが起こり始める時を特徴づけた。この実質的に線状であるエチレンポリマー類の場合の表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度は、同じI2およびMw/Mnを示す均一線状エチレンポリマーの表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度より、少なくとも50パーセント大きかった。
【0044】
グロスメルトフラクチャーは不安定な流れ条件下で起こり、そしてその詳細な範囲は、規則正しい歪み(粗い部分と滑らかな部分が交互に現れる、螺旋状など)から不規則な歪みに至る。商業的受け入れに関して(例えばブローンフィルム製品などで)、表面の欠陥は、存在していたとしても最小限でなければならない。本明細書では、GERによって押出された押出物が示す表面粗さおよび構造の変化を基にして、表面メルトフラクチャーが起こり始める時(OSMF)およびグロスメルトフラクチャーが起こり始める時(OGMF)の臨界せん断速度を用いることにする。
【0045】
気体押出しレオメーター(gas extrusion rheometer)を「Polymer Engineering Science」、17巻、No.11、770頁(1977)の中でM.Shida、R.N.ShroffおよびL.V.Cancioが記述しており、そしてこれはVan Nostrand Reinhold Co.が出版しているJohn Dealy著「Rheometers for Molten Plastics」(1982)の97頁にも記述されている(両方の出版物とも引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)。全てのGER実験を、直径が0.0296インチでL/Dが20:1のダイスを用いて窒素圧を5250から500psigにして190℃の温度で実施した。メルトフラクチャー現象を識別する目的で、見掛けせん断速度に対する見掛けせん断応力のプロットを用いた。Ramamurthy著「Journal of Rheology」、30(2)、337−357、1986に従い、特定の臨界流量を越えると観察される押出物の不規則さは、幅広い意味で2つの主要な型に分類分け可能である、即ち表面メルトフラクチャーとグロスメルトフラクチャーとに分類分け可能である。
【0046】
本明細書に記述するポリマー類の場合のPIは、直径が0.0296インチでL/Dが20:1のダイスを用いて窒素圧を2500psigにして190℃の温度で実施したGER[即ち、相当する見掛けせん断応力が2.15X106ダイン/cm2]で測定した時の材料が示す見掛け粘度(Kポイズで表す)である。
【0047】
このプロセシングインデックス(processing index)の測定を、入り口角度が180°で直径が0.0296インチでL/Dが20:1のダイスを用いて窒素圧を2500psigにして190℃の温度で行った。
【0048】
本繊維の製造で用いる均一に分枝していて実質的に線状であるエチレンポリマー類の重合で用いるに適した典型的な拘束幾何(constrained geometry)触媒には、好適には、1990年7月3日付けで提出した米国出願545,403(現在は米国特許第5,132,380号);1991年9月12日付けで出願してここに放棄した758,660;そして1991年6月24日付けで出願してここに放棄した720,041、そして米国特許第5,272,236号および米国特許第5,278,272号に開示されている如き拘束幾何触媒が含まれる。
【0049】
このようなポリマー類は、反応槽を少なくとも1基用いた連続(バッチ式とは対照的に)管理重合方法で製造可能であるが、また反応槽を複数用いた方法[例えば米国特許第3,914,342号(Mitchell)(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているように反応槽を複数配置した形態を用いた方法]でそれを製造することも可能であり、この場合には、2番目のエチレンポリマーの重合を他の少なくとも1基の反応槽内で行う。このような複数の反応槽は直列または並列で運転可能であり、これらの反応槽の少なくとも1つに少なくとも1種の拘束幾何触媒を入れて所望特性のエチレンポリマーが生成するに充分な重合温度および圧力下で用いる。本方法の好適な態様に従い、上記ポリマー類をバッチ方法とは対照的に連続方法で生成させた。拘束幾何触媒技術を用いる場合、好適には、重合温度を20℃から250℃にした。より高いI10/I2比(例えば7以上、好適には少なくとも8、特に少なくとも9のI10/I2)を示して狭い分子量分布(1.5から2.5のMw/Mn)を示すポリマーが望まれる場合には、反応槽内のエチレン濃度を好適には反応槽内容物の8重量パーセント以下、特に反応槽内容物の4重量パーセント以下にした。この重合を好適には溶液重合方法で実施した。本明細書に記述する実質的に線状であるポリマー類を生成させる時に一般にMw/Mnを比較的低く保持しながらI10/I2を操作することは、反応槽の温度またはそれと組み合わせたエチレン濃度の関数であった。I10/I2は、一般に、エチレンの濃度を低くしそして温度を高くすればするほど高くなる。
【0050】
本発明の繊維の製造で用いる線状もしくは実質的に線状である均一エチレンポリマー類の製造に適した重合条件は、一般に、溶液重合方法に有効な条件であるが、本発明の出願をそれに限定するものでない。またスラリーおよび気相重合方法も適当な触媒および重合条件を用いることを条件として有効であると考えられる。
【0051】
本明細書で用いるに有用な均一線状エチレンポリマー類の1つの重合技術が米国特許第3,645,992号(Elston)(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示された。
【0052】
本発明に従う連続重合は、一般に、従来技術のチーグラー・ナッタまたはカミンスキー・シン型重合反応でよく知られている条件、即ち0から250℃の温度および大気圧から100気圧(100MPa)の圧力下で達成可能である。
【0053】
本明細書に開示する組成物は通常の如何なる方法で製造してもよく、そのような方法には、個々の成分をドライブレンドした後に溶融混合するか、或は個別の押出し機(例えばバンバリーミキサー、ハークミキサー、ブラベンダー内部ミキサーまたは2軸押出し加工機)で溶融前の混合を行うことが含まれる。
【0054】
本組成物をインサイチューで製造する別の技術が、1993年1月29日付けでBrian W.S.KolthammerおよびRober S. Cardweeの名前で提出した表題が「EthyleneInterpolymerizations」の係属中USSN 08/010,958(これの開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に開示された。USSN 08/010,958には、とりわけ、均一触媒を少なくとも1基の反応槽内で用いそして不均一触媒を他の少なくとも1基の反応槽内で用いてエチレンとC3−C20アルファ−オレフィン類の共重合を行うことが記述されている。上記反応槽は逐次的または並列運転可能である。
【0055】
また、不均一エチレン/α−オレフィンポリマーを各画分が狭い組成(即ち分枝)分布を示す特定のポリマー画分に分別し、指定特性を有する画分を選択しそしてその選択した画分を別のエチレンポリマーと一緒に適当量でブレンドすることにより、本組成物を製造することも可能である。このような方法は、明らかに、USSN 08/010,958のインサイチュー共重合のようには経済的ではないが、それでも本発明の組成物を得る目的で使用可能である。
【0056】
本明細書に開示するポリマー組成物は、CRYSTAF結晶化技術(本実施例に関連してより詳細に開示する)で特徴付け可能である。本ポリマー組成物は、好適には、30℃で可溶なCRYSTAF画分が少なくとも0.5、好適には少なくとも1、より好適には少なくとも3パーセントで、好適には20パーセント以下、より好適には15パーセント以下、最も好適には10パーセント以下、最も好適には8パーセント以下であるとして特徴づけられる。
【0057】
本発明の繊維は、好適には、ホモフィル(homofil)繊維(時にはホモフィラメント繊維と呼ぶ)である。ホモフィル繊維は、単一の領域(ドメイン)を有していて他の区別し得るポリマー領域(2成分繊維が持つような)を持たない繊維である。このようなホモフィル繊維にはステープル繊維、スパンボンド繊維、メルトブローン繊維[例えば米国特許第4,340,563号(Appel他)、米国特許第4,663,220号(Wisneski他)、米国特許第4,668,566号(Braun)、米国特許第4,322,027号(Reba)、米国特許第3,860,369号(これらは全部引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されている如き装置を使用]、ゲルスパン(gel spun)繊維[例えば米国特許第4,413,110号(Kavesh他)(引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されている装置を使用]、およびフラッシュスパン繊維[例えば米国特許第3,860,369号に開示されている装置を使用]が含まれる。
【0058】
The Dictionary of Fiber & Textile Technology,Hoechst Celanese Corporation著に定義されているように、ゲル紡糸(gel spinning)は、「固化の主機構が沈澱したポリマーと溶媒から成るゲルフィラメントが生成するように冷却でポリマー溶液をゲル化させることにある[1つの]紡糸方法である。溶媒の除去を達成した後に浴液中で洗浄を行うことで固化を達成する。得られた繊維は高い引張り強度と引張り応力を示す製品を得るために延伸可能である。」を指す。
【0059】
The Nonwoven Fabrics Handbook,John R.Starr,Inc.著,INDA,Association of the Nonwoven Fabrics Industry出版に定義されているように、フラッシュ紡糸は、「ポリマー溶液を押出し加工しそして個々のフィラメントが高度に原線維状の形態に崩壊するように溶媒の迅速な蒸発を起こさせた後にスクリーン上に集めてウエブを生成させる改良スパンボンディング(spunbonding)方法」を指す。
【0060】
ステープル繊維は溶融紡糸(melt spun)可能である(即ちそれらは追加的な延伸なしに最終的な繊維直径に直接押出し加工可能である)か、或はより大きな直径になるように溶融紡糸した後に通常の繊維延伸技術を用いて所望の直径になるようにそれに熱延伸または冷延伸を受けさせることも可能である。本明細書に開示する新規な繊維をまた結合用繊維(bonding fibers)として用いることも可能であり、特に、この新規な繊維の融点をそれを取り巻くマトリックス(matrix)繊維よりも低くした時に可能である。繊維を結合させる用途では、典型的には、結合用繊維を他のマトリックス繊維と一緒にブレンドした後、その構造物全体に熱をかけると、その結合用繊維が溶融してそれを取り巻くマトリックス繊維を結合させる。この新規な繊維を用いることで利点を受ける典型的なマトリックス繊維には、これらに限定するものでないが、ポリ(エチレンテレフタレート)繊維、綿繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、他の不均一分枝ポリエチレン繊維および線状ポリエチレンホモポリマー繊維が含まれる。このようなマトリックス繊維の直径は最終使用用途に応じて多様であり得る。
【0061】
また、本明細書に開示するポリマー組成物を用いて2成分繊維を製造することも可能である。そのような2成分繊維では、本明細書に開示するポリマー組成物を上記繊維の少なくとも一部に含める。例えば、殻/コア2成分繊維(即ち殼がコアを同心的に取り巻いている繊維)の場合、本エチレンポリマーブレンド物を存在させるのは殻またはコアのいずれであってもよい。また、異なるエチレンポリマーブレンド物を独立して同じ繊維の殻およびコアとして用いることも可能であり、特に、殻成分の融点の方をコア成分の融点よりも低くする場合に可能である。他の種類の2成分繊維も同様に本発明の範囲内であり、そのような繊維には、繊維が横に並んでいる如き構造(例えばポリマーの個別領域を有する繊維であって、本エチレンポリマーブレンド物が繊維の表面の少なくとも一部を構成している)が含まれる。1つの態様は、本明細書に開示するポリマー組成物が殻の中に与えられておりそしてより高い融点を有するポリマー、例えばポリエステルテレフタレートまたはポリプロピレンがコアの中に与えられている2成分繊維の態様であった。
【0062】
このような繊維の形状には制限がない。例えば、典型的な繊維は円形の断面形状を有するが、時には、繊維に異なる形状、例えば三葉形または平ら(即ち「リボン」様)形状を持たせる。本明細書に開示する繊維は繊維の形状による制限を受けない。
【0063】
繊維の直径はいろいろな様式で測定および報告可能である。一般的には、繊維の直径をフィラメント当たりのデニールで測定した。デニールは、繊維の長さ9000メートル当たりの繊維のグラムとして定義される織物用語である。モノフィラメントは、一般に、フィラメント当たりのデニールが15を越える、通常は30を越える押出し加工ストランド(strand)を指す。微細なデニールの繊維は一般にデニールが15以下の繊維を指す。ミクロデニール(別称ミクロ繊維)は一般に直径が100マイクロメートル以下の繊維を指す。本明細書に開示する新規な繊維の場合の直径は幅広く多様であり得る。しかしながら、完成品の能力に適合するように繊維のデニールを調節することができ、このように、好適には、メルトブローンの場合には0.5から30デニール/フィラメントで、スパンボンドの場合には1から30デニール/フィラメントで、連続巻き(continuous wound)フィラメントの場合には1から20,000デニール/フィラメントであろう。
【0064】
そのような新規な繊維から作られる生地には織りおよび不織両方の生地が含まれる。不織生地は多様な様式で製造可能であり、そのような生地には、米国特許第3,485,706号(Evans)および米国特許第4,939,016号(Radwanski他)(これらの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されている如きスパンレースド(spunlaced)[即ち流体力学的に絡ませた(hydrodynamically entangled)]生地、ステープル繊維の毛ば立て(carding)及び熱結合による生地、連続繊維を1つの連続操作でスパンボンディングすることによる生地、または繊維をメルトブローイング(melt blowing)で生地にした後に得られたウエブをカレンダー加工または熱結合を行うことによる生地が含まれる。このようないろいろな不織生地を製造する技術は本分野の技術者によく知られており、本開示を特別な如何なる方法にも限定するものでない。また、上記繊維から作られる他の構造物も本発明の範囲内に含まれ、それには、例えば、本新規繊維と他の繊維[例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)または綿]のブレンド物が含まれる。
【0065】
有用な非制限添加剤物質には、顔料、抗酸化剤、安定剤、界面活性剤[例えば米国特許第4,486,552号(Niemann)、米国特許第4,578,414号(Sawyer他)または米国特許第4,835,194号(Bright他)(これらの開示は全部引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されている如き]が含まれる。
【0066】
本発明の好適な態様において、本発明の繊維から得られた生地が示す生地伸び(fabric elongation)は、未変性(unmodified)の2番目のポリマーから作られた繊維を用いて製造された生地のそれよりも少なくとも20パーセント高い、より好適には少なくとも50パーセント高い、最も好適には少なくとも100パーセント高い。
【0067】
本発明の好適な態様において、本発明の繊維から製造した生地が示す生地強度(fabric strength)は、未変性の2番目のポリマーから作られた繊維を用いて製造された生地のそれよりも少なくとも5パーセント高い、より好適には少なくとも10パーセント高い、最も好適には少なくとも20パーセント高い。
【0068】
本発明の好適な態様において、本発明の繊維が示す紡糸性[最大延伸(draw)rpm]が未変性の2番目のポリマーから作られた繊維の紡糸性(最大延伸rpm)よりも低い度合は、25パーセント以下であり、より好適には、低い度合は15パーセント以下であった。延伸rpmはまたスパンボンド工程の延伸圧(draw pressure)にも相互関係を示し得る。
【0069】
本明細書に開示するポリマー組成物から製造可能な有用な品物にはフィルム、繊維および成形品(例えばブロー成形品、射出成形品およびロト成形品)が含まれる。
【0070】
本主題発明を、特に、カレンダーロールで結合させる生地の製造で有効に用いた。典型的な最終使用品には、これらに限定するものでないが、おむつおよび他のパーソナル衛生品の構成要素、使い捨て布(例えば病院の衣服)、耐久性布[例えば絶縁上着(insulated outerwear)]、使い捨てハンカチ、フキンなどが含まれる。
【0071】
本主題発明を、更に、カーペットまたは室内装飾品構成要素の結合、そして他のウエブ[例えば産業輸送用サック、革ひも類(strapping)およびロープ、ランバーラップ(lumber wraps)、プールカバー、ジオテキスタイル(geotextile)および防水布(tarpaulins)]の結合またはそれと強化の組み合わせで有効に用いた。
【0072】
本主題発明は、更に、接着剤調合物にも使用可能であり、これを場合により1種以上の粘着付与剤、可塑剤またはワックスと組み合わせてもよい。
【0073】
上記1番目のポリマーと2番目のポリマーを以下の表1に示す量でドライブレンドした。次に、この2成分を30mmの2軸押出し加工機WPZSK30に送り込んで一緒に溶融ブレンドした。
【0074】
紡糸をAlex James実験室規模紡糸装置(Alex James,Inc.から入手可能)を用いて実施した。試験を行うべき樹脂を1インチx24インチの単軸押出機に送り込んだが、ここでは、溶融温度(melt temperature)を195℃から220℃で変化させた。溶融させたポリマーを1.752cc/回転のZeithギアポンプに送り込んだ。ポリマーを3重のスクリーン構造(20/200/20メッシュ)に通して流す、図3に示す紡糸性試験の場合を除き、全ての試験、例えば紡糸性、生地伸びおよび生地強度に関する試験で、ポリマーを3重のスクリーン構造(20/400/20メッシュ)に通して流す。次に、そのポリマーは、各々の直径が400μmの穴が108個含まれていて穴のL/Dが4/1の紡糸口金を通って出た。その溶融したポリマーは各穴から0.37グラム/分で押出された後、クエンチチャンバ(quench chamber)で空冷された。
【0075】
この押出された繊維は3メートル移動して直径が6インチのフィードゴデット(feed godet)(1xの延伸、即ち冷延伸は全く起こらない)に続いて直径が6インチのワインダーゴデット(winder godet)に至る。これらのゴデットを1分当たり2000−2200回転(rpm)に設定した。このような条件にした時の繊維のデニールは3.0から3.5デニールであった。サンプルを2番目のゴデットの所で2分間集めた後、このゴデットから切り取った。次に、このサンプルを長さが1インチから1.5インチの長さ(ステープル繊維として知られる長さ)になるように切断した後、リラックス処理を最低で24時間行った(left to relax)。実験室の一貫性を助長する目的でそのような繊維熟成を用いたが、これは生地を製造する場合には必要でないであろう。
【0076】
繊維サンプルの紡糸性を下記の如く測定した。生地用繊維を製造する紡糸で記述した温度および圧力条件と同じ条件を用いて、直径が6インチのゴデットロールの所で追加的繊維に延伸を行った。ゴデットロールが1分当たりに回転する回転数(rpm)を、3から5本の繊維破壊がダイスの所で観察されるようになるまで高めた。破壊が起こる時のrpmを、ポリマーを紡糸することができる最大rpmとして記録し、それを1または2回繰り返して、その平均値を表に報告した。それゆえ、これは、繊維の破壊が生じることで紡糸の悪化が起こる前に紡糸可能な最も微細なデニールであった。
【0077】
このステープル繊維を1.25gの試験片として量り分け、典型的には1サンプル当たり4−8個の試験片を量り分けた。この1.25gの試験片をSpinLab Rotor Ring 580に最大速度で45秒間送り込んで、ウエブを毛ば立て(card)て配向させた後、取り出し、再び送り込んで再毛ば立てを更に45秒間受けさせた。この2番目の毛ば立て後、3.5インチのウエブを取り出して、3.5インチx12インチの金属製フィードトレー(feed tray)に入れた。
【0078】
熱結合装置は2本ロールのBeloit Wheeler Model 700 Laboratory Calendarであった。上部のロールは、直径が5インチで面(face)が12インチの硬化クロムメッキ加熱鋼ロール(hardened chromed,heated steel roll)であり、20パーセントが正方形模様のエンボスで覆われていた(embossed)。下部のロールはエンボスが施されていない以外は同じであった。ボンドロール(bond roll)を1000psiに設定したが、これは、この装置に関して1線形インチ当たり340ポンド(pli)に相当していた[1000psi−下部ロールがスプリング力に打ち勝つための400psi=600psix1.988平方インチの円柱表面積/3.5インチのウエブ幅=340pli]。
【0079】
エンボスロール(embossed roll)への粘着が起こらないようにする目的で、上部ロールの温度の方が常に低くなるように上記ボンドロールの温度を4度Fだけ離した。上記ボンドロールを228度Fから250度F(上部ロールの温度)および232度Fから254度F(下部ロールの温度)の範囲の温度に設定した。上記ロールを23.6フィート/分で回転させた。次に、繊維ウエブ(fiber web)を上記2本のロールの間に通して供給領域の反対側から取り出した。次に、得られた不織生地を1インチx4インチの生地片に切断した。
【0080】
分析に先立って各試験片の重量を測定して、その重量をコンピュータープログラムに入力した。この1インチx4インチ試験片を200ポンドのロードセル(load cell)が備わっているSintech 10Dの上部グリップと下部グリップに試験片の各末端が1インチ固定されるように長さ方向に位置させた。次に、上記試験片を一度に1本づつ破壊点に至るまで5インチ/分で引っ張った。次に、上記試験片が受けた歪み(伸び)パーセントに加えて破壊に至る力を正規化した値(グラム)を計算するコンピューターで試験片の寸法および及ぼした力を用いた。次に、同じ温度で行った同じブレンド物のグループに入る試験片全体にわたって値の平均を取った。次に、歪みパーセントに対する温度の値そして破壊に至る力を正規化した値に対する温度の値をx−y軸上にプロットして、現存樹脂に比較した時の向上度合を決定した。
【0081】
実施例10bおよび12*を除く実施例の各々のポリマー組成物の場合、2番目のポリマーは、比較実施例Aのポリマー、即ちチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造した密度が0.955グラム/センチメートル3でメルトインデックス(I2)が29グラム/10分の高密度エチレン/オクテンコポリマーであった。
【0082】
実施例10bのポリマー組成物の場合の2番目のポリマーは、比較実施例Eのポリマー、即ちチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造した密度が0.955グラム/センチメートル3でメルトインデックス(I2)が25グラム/10分のエチレン/オクテンコポリマーであった。
【0083】
PolymerChar(バレンシア、スペイン)から入手可能なCRYSTAF装置を用いてCRYSTAF結晶化速度曲線を生成させた。ポリマーサンプルを115℃のトリクロロベンゼンに濃度が0.05重量パーセントになるように溶解させた。このポリマーが溶解した時点で、その溶液を0.2℃/分の冷却速度で30℃にまで冷却した。冷却中、上記装置は上記溶液のサンプルを規則的な間隔で取り出して、赤外検出器でその溶液中のポリマー濃度を測定する。ポリマーの濃度を温度に対比させて示す曲線を得た。この曲線から短鎖分枝分布を引き出した。表1に報告する可溶画分は30℃の溶液に入っているポリマーの量であった。
【0084】
表1に挙げるデータに関して、下記の式:
2=[[重量パーセント1*(I21-1/3.5+[重量パーセント2*(I22-1/3.5-3.5に従って全体としてのメルトインデックスを計算した。
【0085】
更に、表1に挙げるデータに関して、下記の式:
密度=1/[重量パーセント1*1/密度1]+[重量パーセント2*1/密度2
に従って全体としての密度を計算した。
【0086】

【0087】

【0088】

【0089】
請求する発明のいろいろな特徴を更に本図に関連させて説明する。特に、図1は、本発明の繊維が示す結合性能の方が高密度ポリエチレンから生成させた繊維よりも向上していることを示している。この図に報告する値は、カレンダーロールに粘着し始める前の3最大温度で行った測定に相当する3値の平均であった。
【0090】
表1は、95重量パーセントの量の比較実施例Aに、密度が0.870グラム/センチメートル3でメルトインデックス(I2)が1グラム/10分の実質的に線状であるエチレン/オクテンコポリマーを5重量パーセント添加した場合(実施例7c)、密度が0.868グラム/センチメートル3でメルトインデックス(I2)が0.5グラム/10分の実質的に線状であるエチレン/オクテンコポリマーを5重量パーセント添加した場合(実施例9c)、および密度が0.905グラム/センチメートル3でメルトインデックス(I2)が0.8グラム/10分の不均一エチレン/オクテンコポリマーを5重量パーセント添加した場合(比較実施例C)を示し、それらの全部で結合性能が比較実施例Aに比較して向上したことを示している。しかしながら、図3に示すように、85重量パーセントの量の比較実施例Bのポリマー(比較実施例Aのポリマーと同じであるが、400メッシュのスクリーンではなく200メッシュのスクリーンに通して押出し加工した)に、密度が0.870グラム/センチメートル3でメルトインデックスが1グラム/10分の実質的に線状であるエチレン/オクテンコポリマーを15重量パーセントブレンドしたブレンド物(実施例7b)、そして密度が0.868グラム/センチメートル3でメルトインデックス(I2)が0.5グラム/10分の実質的に線状であるエチレン/オクテンコポリマーを15重量パーセントブレンドしたブレンド物(実施例9b)の方が、85重量パーセントの量の比較実施例Bに密度が0.905グラム/センチメートル3でメルトインデックスが0.8グラム/10分の不均一エチレン/オクテンコポリマーを15重量パーセントブレンドした相当するブレンド物(比較実施例D)に比べて、比較実施例Bの良好な紡糸性をより良好に保持していた。
【0091】
図2の実施例7c、8cおよび比較実施例Aは、加工温度が165℃未満、例えばカレンダーロールによる結合に特徴的な温度の場合には、2つの成分の融点差によって特性が制御され、その差が最大の時に最大の結合強度が得られることを示している。図2に報告する値は、カレンダーロールに粘着し始める前の3最大温度で行った測定に相当する3値の平均であった。
【0092】
図1に示す実施例を比較することで、1番目の成分のメルトインデックスを低くするにつれて一般に生地強度が高くなることが分かる。図1は、更に、融点が低い方の成分を組み込む量を多くすると一般に結合強度および伸びが向上することも示している。図1は、更に、ある樹脂を特定の生地性能−紡糸性能の要求に対して最適にしようとする時に利用することができる紡糸−結合性能比較も示している。実施例5a、5bおよび5cは実施例2a、2bおよび10のそれに比較して生地強度と伸びと繊維紡糸性の良好な組み合わせを示した。更に、実施例7a、7bおよび7cは実施例5a、5bおよび5cのそれに比較して生地強度と伸びと繊維紡糸性の良好な組み合わせを示した。
【0093】
回転成形品の実施例
本発明の特定組成物は更に回転成形品で用いるにも有用であることを確認した。表3に挙げる実施例では、最初に樹脂成分のタンブルブレンディング(tumble blending)を30分間行うことにより、ブレンド組成物の調製を行った。これらの実施例の各々で用いた1番目のポリマーは、米国特許第5,272,236号および米国特許第5,278,272号の教示(これらの教示は全部引用することによって本明細書に組み入れられる)に従って製造した実質的に線状であるエチレン/オクテンコポリマーであり、そして2番目のポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造した密度が0.941グラム/センチメートル3でメルトインデックス(I2)が4.0グラム/10分のエチレン/オクテンコポリマーであった。そのようにしてブレンドした組成物を2.5インチのNRM単軸押出機で加工して均一な溶融ブレンドを達成した。上記押出機を350度Fの温度に設定した。この溶融ブレンド物をペレット化用水ダイス(water pelletizing die)下のガラ(gala)で切断してペレットにした後、回転乾燥させた(spin dried)。
【0094】
このペレット状にしたブレンドサンプルを以下に示す如きASTMD−1928、手順Cに従って成形プラーク(molded plaques)に成形した。プレスの熱板を374度Fに設定した。この熱板が上記温度に到達した時点で、サンプルをプレスに入れた。圧力を10,000psiにまで高めて、この圧力を5分間保持した。上記熱板を374度Fに保持しながら圧力を30,000psiにまで高めて、この圧力を1分間保持した。この30,000psiの圧力を保持しながら、温度を40.33度F/分の割合で下げた。温度が60度Fに到達した時点で、その温度を1分間保持した。次に、圧力を解放し、熱板を開けて、サンプルを取り出した。このサンプルを標準温度および圧力下に40時間休ませた。
【0095】
この圧縮成形したプラークをいろいろな物性に関して試験し、その結果を以下の表3に挙げる。
曲げ応力をASTM D−790に従って測定した。
ESCR、10パーセントIgepalをASTM D−1693に従って測定した。
アイゾッド衝撃値(−40パーセントC)をASTM D−256に従って測定した。
落錐衝撃値BをASTM D−1709に従って測定した。
【0096】

【0097】
本主題発明は以下のとおりである。

(1) 0.1から50デニールの範囲の直径を有する繊維であって、
A. i. 0.5から100グラム/10分のメルトインデックス、および
ii. 0.850から0.920グラム/センチメートル3の密度、
を有する均一エチレン/α−オレフィンインターポリマーである1番目のポリマーを0.5重量パーセントから25重量パーセント(ポリマーブレンド物の重量の)含み、かつ
B. i. 0.5から500グラム/10分のメルトインデックス、および
ii. 該1番目のポリマーの密度より少なくとも0.01グラム/センチメートル3大きい密度、
を有するエチレンホモポリマーまたはエチレン/α−オレフィンインターポリマーである2番目のポリマーを含む、
ポリマーブレンド物から製造され、165℃未満の温度で結合し得る繊維。

(2) 該1番目のポリマーが該ブレンド物に0.5から15重量パーセントの量で与えられている(1)記載の繊維。

(3) 該1番目のポリマーがエチレンと少なくとも1種のC3−C20α−オレフィンのインターポリマーである(1)記載の繊維。

(4) 該1番目のポリマーが0.855から0.880グラム/センチメートル3の密度を有する(1)記載の繊維。

(5) 該1番目のポリマーが0.5から10グラム/10分のメルトインデックスを示す(1)記載の繊維。

(6) 該1番目のポリマーが長鎖分枝を炭素1000個当たり0.01から0.3個有する実質的に線状であるエチレン/α−オレフィンインターポリマーである(1)記載の繊維。

(7) 該1番目のポリマーが実質的に線状であるエチレン/α−オレフィンインターポリマーであり、これが、
a. ≧5.63のメルトフロー比(I10/I2)を示し、
b. 不等式:
Mw/Mn≦(I10/I2)−4.63
で定義される分子量分布Mw/Mnを示し、かつ
c. 表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度が、同じI2およびMw/Mnを示す線状エチレン/α−オレフィンインターポリマーの表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度より、少なくとも50パーセント大きい、として更に特徴づけられる、(1)記載の繊維。

(8) 該2番目のポリマーが均一エチレンポリマーであり、これが、
a. 1.5から3.0の分子量分布Mw/Mnを示し、かつ
b. この2番目のポリマーがエチレン/α−オレフィンインターポリマーの場合には少なくとも50のCDBIを示す、
として特徴づけられる、(1)記載の繊維。

(9) 該2番目のポリマーが長鎖分枝を炭素1000個当たり0.01から0.3個有するとして特徴づけられる実質的に線状であるエチレンポリマーである(1)記載の繊維。

(10) 該2番目のポリマーが実質的に線状であるエチレンポリマーであり、これが、
a. ≧5.63のメルトフロー比(I10/I2)を示し、
b. 不等式:
Mw/Mn≦(I10/I2)−4.63
で定義される分子量分布Mw/Mnを示し、かつ
c. 表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度が、同じI2およびMw/Mnを示す線状エチレンポリマーの表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度より、少なくとも50パーセント大きい、として特徴づけられる、(1)記載の繊維。

(11) 該2番目のポリマーが該1番目のポリマーの密度より少なくとも0.03グラム/センチメートル3大きい密度を有する(1)記載の繊維。

(12) 該2番目のポリマーが該1番目のポリマーの密度より少なくとも0.05グラム/センチメートル3大きい密度を有する(1)記載の繊維。

(13) 該繊維がメルトブローン繊維、スパンボンデッド繊維、カーデッドステープル繊維またはフラッシュスパン繊維であるように溶融紡糸加工で製造された(1)記載の繊維。

(14) 該繊維が2成分繊維でありそして該ポリマーブレンド物が該2成分繊維の少なくとも1層の外側層を構成している(1)記載の繊維。

(15) 少なくとも0.935グラム/センチメートル3の密度および0.5から500グラム/10分のメルトインデックスを示すエチレンホモポリマーまたはエチレン/α−オレフィンインターポリマーの結合強度を向上させる方法であって、それと一緒に0.855から0.890グラム/センチメートル3の密度および0.1から10グラム/10分のメルトインデックスを示す線状もしくは実質的に線状である均一エチレン/α−オレフィンインターポリマーを0.5から10重量パーセント未満の量で密な混合物の状態で供給することを含む方法。

(16) 向上した結合強度を有するポリマー組成物であって、
a. i. 0.1から100グラム/10分のメルトインデックス、および
ii. 0.855から0.890グラム/センチメートル3の密度、
を有する均一エチレン/α−オレフィンインターポリマーである1番目のポリマーを0.5重量パーセントから10重量パーセント未満(ポリマー組成物の重量の)含み、かつ
b. i. 0.5から500グラム/10分のメルトインデックス、および
ii. 該1番目のポリマーの密度より少なくとも0.01グラム/センチメートル3大きい密度、
を有するエチレンホモポリマーまたはエチレン/α−オレフィンインターポリマーである2番目のポリマーを含む、
ポリマー組成物。

(17) 該1番目のポリマーが0.855から0.870グラム/センチメートル3の密度を有する(16)記載のポリマー組成物。

(18) 該1番目のポリマーが0.05から10グラム/10分のメルトインデックスを示す(16)記載のポリマー組成物。

(19) 該2番目のポリマーが10から500グラム/10分のメルトインデックスを示す(16)記載のポリマー組成物。

(20) 該1番目のポリマーが実質的に線状であるエチレン/α−オレフィンインターポリマーであり、これが、
a. ≧5.63のメルトフロー比(I10/I2)を示し、
b. 不等式:
Mw/Mn≦(I10/I2)−4.63
で定義される分子量分布Mw/Mnを示し、かつ
c. 表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度が、同じI2およびMw/Mnを示す線状エチレン/α−オレフィンインターポリマーの表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度より、少なくとも50パーセント大きい、
として更に特徴づけられる、(16)記載のポリマー組成物。

(21) 該2番目のポリマーが均一エチレンポリマーであり、これが、
a. 1.5から3.0の分子量分布Mw/Mnを示し、かつ
b. この2番目のポリマーがエチレン/α−オレフィンインターポリマーの場合には少なくとも50パーセントのCDBIを示す、として特徴づけられる、(16)記載のポリマー組成物。

(22) 該2番目のポリマーが実質的に線状であるエチレンポリマーであり、これが、
a. ≧5.63のメルトフロー比(I10/I2)を示し、
b. 不等式:
Mw/Mn≦(I10/I2)−4.63
で定義される分子量分布Mw/Mnを示し、かつ
c. 表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度が、同じI2およびMw/Mnを示す線状エチレンポリマーの表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度より、少なくとも50パーセント大きい、として特徴づけられる、(16)記載のポリマー組成物。

(23) 該2番目のポリマーが該1番目のポリマーの密度より少なくとも0.03グラム/センチメートル3大きい密度を有する(16)記載のポリマー組成物。

(24) 該2番目のポリマーが該1番目のポリマーの密度より少なくとも0.05グラム/センチメートル3大きい密度を有する(16)記載のポリマー組成物。

(25) 繊維、ロト成形品、フィルム層、射出成形品、ブロー成形品、射出ブロー成形品または押出し加工被覆組成物の形態である(16)記載のポリマー組成物。

(26) 0.1から50デニールの範囲の直径を有する繊維であって、CRYSTAF結晶化速度曲線で測定した時に30℃で可溶な画分が少なくとも0.5重量パーセントであるとして特徴づけられるポリマー組成物から製造され、165℃未満の温度で結合し得る繊維。

(27) 30℃で可溶な画分が少なくとも1.0重量パーセントである(26)記載の繊維。

(28) 30℃で可溶な画分が少なくとも3.0重量パーセントである(26)記載の繊維。

(29) 該ポリマー組成物がメルトインデックスが0.5から40グラム/10分の均一エチレン/α−オレフィンインターポリマーである1番目のポリマーとエチレンホモポリマーまたはエチレン/α−オレフィンインターポリマーである2番目のポリマーのブレンド物である(26)記載の繊維。

(30) 該1番目のポリマーが示すメルトインデックスが0.5から10グラム/10分である(29)記載の繊維。

(31) 向上した結合強度を有するポリマー組成物を含んで成る回転成形品であって、該ポリマー組成物が、
a. i. 0.1から100グラム/10分のメルトインデックス、および
ii. 0.855から0.890グラム/センチメートル3の密度、
を有する均一エチレン/α−オレフィンインターポリマーである1番目のポリマーを0.5重量パーセントから15重量パーセント未満(ポリマー組成物の重量の)含み、かつ
b. i. 0.5から500グラム/10分のメルトインデックス、および
ii. 該1番目のポリマーの密度より少なくとも0.01グラム/センチメートル3大きい密度、
を有するエチレンホモポリマーまたはエチレン/α−オレフィンインターポリマーである2番目のポリマーを含む、
回転成形品。

(32) 該1番目のポリマーが示すメルトインデックスが0.5から5グラム/10分である(31)記載の回転成形品。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明の実施例および比較実施例の繊維が示す生地結合強度、生地伸びおよび紡糸性を示す棒グラフである。
【図2】図2は、本発明の実施例および比較実施例の繊維が示す生地結合強度、生地伸びおよび紡糸性を示す棒グラフである。
【図3】図3は、本発明の実施例および比較実施例の繊維が示す紡糸性を示す棒グラフである。
【図4A】図4Aは、本発明の実施例8c、7cおよび2bおよび比較実施例Aの繊維を製造する時に用いたポリマー組成物が示すCRYSTAF結晶化速度曲線である。
【図4B】図4Bは、本発明の実施例8c、7cおよび2bおよび比較実施例Aの繊維を製造する時に用いたポリマー組成物が示すCRYSTAF結晶化速度曲線である。
【図4C】図4Cは、本発明の実施例8c、7cおよび2bおよび比較実施例Aの繊維を製造する時に用いたポリマー組成物が示すCRYSTAF結晶化速度曲線である。
【図4D】図4Dは、本発明の実施例8c、7cおよび2bおよび比較実施例Aの繊維を製造する時に用いたポリマー組成物が示すCRYSTAF結晶化速度曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
向上した結合強度を有するポリマー組成物であって、
a. i. 0.1から100グラム/10分のメルトインデックス、および
ii. 0.855から0.890グラム/センチメートル3の密度、
を有する均一エチレン/α−オレフィンインターポリマーである1番目のポリマーを(ポリマー組成物の重量の)0.5重量パーセントから10重量パーセント未満含み、かつ
b. i. 0.5から500グラム/10分のメルトインデックス、および
ii. 該1番目のポリマーの密度より少なくとも0.01グラム/センチメートル3大きい密度、
を有するエチレンホモポリマーまたはエチレン/α−オレフィンインターポリマーである2番目のポリマーを(ポリマー組成物の重量の)99.5重量パーセント以下含む、
ポリマー組成物。
【請求項2】
該1番目のポリマーが0.855から0.870グラム/センチメートル3の密度を有する請求の範囲第1項記載のポリマー組成物。
【請求項3】
該1番目のポリマーが0.05から10グラム/10分のメルトインデックスを示す請求の範囲第1項記載のポリマー組成物。
【請求項4】
該2番目のポリマーが10から500グラム/10分のメルトインデックスを示す請求の範囲第1項記載のポリマー組成物。
【請求項5】
該1番目のポリマーが実質的に線状であるエチレン/α−オレフィンインターポリマーであり、これが、
a. ≧5.63のメルトフロー比(I10/I2)を示し、
b. 不等式:
Mw/Mn≦(I10/I2)−4.63
で定義される分子量分布Mw/Mnを示し、かつ
c. 表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度が、同じI2およびMw/Mnを示す線状エチレン/α−オレフィンインターポリマーの表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度より、少なくとも50パーセント大きい、
として更に特徴づけられる、請求の範囲第1項記載のポリマー組成物。
【請求項6】
該2番目のポリマーが均一エチレンポリマーであり、これが、
a. 1.5から3.0の分子量分布Mw/Mnを示し、かつ
b. この2番目のポリマーがエチレン/α−オレフィンインターポリマーの場合には少なくとも50パーセントのCDBIを示す、
として特徴づけられる、請求の範囲第1項記載のポリマー組成物。
【請求項7】
該2番目のポリマーが実質的に線状であるエチレンポリマーであり、これが、
a. ≧5.63のメルトフロー比(I10/I2)を示し、
b. 不等式:
Mw/Mn≦(I10/I2)−4.63
で定義される分子量分布Mw/Mnを示し、かつ
c. 表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度が、同じI2およびMw/Mnを示す線状エチレンポリマーの表面メルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断速度より、少なくとも50パーセント大きい、
として特徴づけられる、請求の範囲第1項記載のポリマー組成物。
【請求項8】
該2番目のポリマーが該1番目のポリマーの密度より少なくとも0.03グラム/センチメートル3大きい密度を有する請求の範囲第1項記載のポリマー組成物。
【請求項9】
該2番目のポリマーが該1番目のポリマーの密度より少なくとも0.05グラム/センチメートル3大きい密度を有する請求の範囲第1項記載のポリマー組成物。
【請求項10】
繊維、ロト成形品、フィルム層、射出成形品、ブロー成形品、射出ブロー成形品または押出し加工被覆組成物の形態である請求の範囲第1項記載のポリマー組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公開番号】特開2007−291400(P2007−291400A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128812(P2007−128812)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【分割の表示】特願平11−504521の分割
【原出願日】平成10年6月5日(1998.6.5)
【出願人】(590000020)ザ ダウ ケミカル カンパニー (24)
【氏名又は名称原語表記】THE DOW CHEMICAL COMPANY
【Fターム(参考)】