エチレン重合用触媒、それを用いたエチレン系重合体の製造方法、並びにそれによって得られるエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子
【課題】重合活性、触媒粒子性状に優れ、かつ、パウダー粒子性状、溶融流動性に優れたエチレン系重合体粒子を製造することができる新規なエチレン重合用触媒、それを用いたエチレン系重合体の製造方法、並びにそれによって得られるエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子の提供。
【解決手段】無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とするエチレン重合用触媒等により提供。
【解決手段】無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とするエチレン重合用触媒等により提供。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン重合用触媒、それを用いたエチレン系重合体の製造方法、並びにそれによって得られるエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子に関し、さらに詳しくは、重合活性、触媒粒子性状に優れ、かつ、パウダー粒子性状、溶融流動性に優れたエチレン系重合体粒子を製造することが可能なエチレン重合用触媒、それを用いたエチレン系重合体の製造方法、並びにそれによって得られるエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種産業分野において、プラスチック製のパイプ、フィルム、射出成型体、及び中空成形体が盛んに用いられるようになった。特に安価・軽量であり、成形加工性、低温強度、耐薬品性、リサイクル性に優れる等の理由からポリエチレン系樹脂(エチレン系重合体)が広範に用いられている。
一般に、エチレン系重合体は、重合触媒を用いたエチレンの単独重合によって、あるいは、エチレンとα−オレフィン等のコモノマーとの共重合によって製造されるが、用途に応じた適切な特性を有するエチレン系重合体を製造するために、様々な重合触媒が開発されている。現在、主要な重合触媒として、ラジカル重合触媒、チーグラー触媒、メタロセン触媒と並んで、フィリップス触媒が重用されている。
フィリップス触媒は、クロム化合物をシリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア等の無機酸化物担体に担持させ、非還元性雰囲気で賦活することにより、担持されたクロム元素の少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であるが、比較的広い分子量分布と長鎖分岐構造に起因する優れた溶融加工特性を有するエチレン系重合体を生成することから、特に中空成形分野において重要なエチレン重合用触媒となっている。
【0003】
フィリップス触媒に用いられる無機酸化物担体に対するこれまでの研究成果を紹介すると、金属酸化物のヒドロゲルを微粉砕して得られる微粉末を担体とすることにより、重合活性やメルトインデックス特性、更には生成ポリマー粒子性状が改善されたクロム触媒が特許文献1〜2に開示されている。また、特許文献3には、酸化物担体を微粉砕することにより粒子形状を制御されたフィリップス触媒が開示されている。
しかしながら、これらの方法により得られたエチレン重合用触媒は、粉砕による粒子形状や微細構造の破壊が生じることを避けることはできないため、触媒粒子性状やα−オレフィン共重合性が悪かったり、重合活性や生成ポリマー粒子性状の改善が不十分であったりして、改善の余地が大きかった。
【0004】
また、特許文献4〜6には、結合剤によりゆるく結合させた固体担体粒子の粗凝集体粒子や、微粉砕したシリカゲルをケイ酸ナトリウムの硫酸水溶液に再分散させて噴霧乾燥して得られる球状粒子や、シリカ微細粒子の集合体から形成された球状二次粒子からなるシリカマクロポア粒子を担体として用いたオレフィン重合用触媒の例が開示されている。
しかしながら、これらの方法により得られたエチレン重合用触媒は、固体担体粒子や原料シリカゲルの粒子性状や微細構造の特性が凝集後の形状や微細構造にそのまま受け継がれるため、粒子の不均一性が生じることが避けられず、触媒粒子性状や生成ポリマー粒子性状が必ずしも良好なものではなく、また、α−オレフィン共重合性や重合活性の改善への寄与が不十分であった。
【0005】
さらに、特許文献7には、アルコキシシランの加水分解によって合成された均一なヒドロゲルを水熱処理することにより得られるシリカ粒子を担体として用いたオレフィン重合用触媒の例が開示されている。
しかしながら、この方法により得られたエチレン重合用触媒は、均一なヒドロゲル由来部分の材料強度が大きすぎることによる担体粒子の不均一性が生じることが避けられず、触媒粒子性状や生成ポリマー粒子性状が必ずしも良好なものではなく、また、α−オレフィン共重合性や重合活性の改善への寄与が不十分であったり、高価なアルコキシシランを出発原料とする故、経済的に不利であった。
【0006】
こうした状況下に、従来のフィリップス触媒のもつ問題点を解消し、重合活性、触媒粒子性状に優れ、かつ、パウダー粒子性状、溶融流動性に優れたエチレン系重合体粒子を製造することが可能なエチレン重合用触媒の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−80414号公報
【特許文献2】特表2007−520610号公報
【特許文献3】特表2003−517506号公報
【特許文献4】特表2000−513402号公報
【特許文献5】特開2001−122612号公報
【特許文献6】特開2006−273667号公報
【特許文献7】特開2003−192713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記した従来技術の問題点に鑑み、重合活性、触媒粒子性状に優れ、かつ、パウダー粒子性状、溶融流動性に優れたエチレン系重合体粒子を製造することが可能なエチレン重合用触媒、それを用いたエチレン系重合体の製造方法、並びにそれによって得られるパウダー粒子性状、溶融流動性に優れたエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、無機酸化物担体にクロム化合物を担持したクロム触媒において特定の粒子形状と微細構造を有するエチレン重合用触媒を調製したところ、重合活性や触媒粒子性状等に優れているだけでなく、パウダー粒子性状、溶融流動性に優れたエチレン系重合体粒子を製造することが可能であるという良好な特性が発現されることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記無機酸化物担体(a)は、担体内部よりも担体表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明において、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて、触媒粒子の断面におけるケイ素元素含量を測定した際に、触媒粒子表面のケイ素元素検出量が該触媒粒子内部に存在するケイ素元素より多いことを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、触媒粒子の最外周部領域における平均ケイ素濃度(x)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(x/z)が、下記の[式1]を満たすことを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
1.05≦x/z≦4.00 [式1]
(但し、x、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の最外周部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向の幅4μmに渡って形成される領域をいい、一方、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
【0014】
また、本発明の第5の発明によれば、第3または第4の発明において、触媒粒子の外周下層部領域における平均ケイ素濃度(y)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(y/z)が、下記の[式2]を満たすことを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
1.05≦y/z≦4.00 [式2]
(但し、y、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の外周下層部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向への距離5μm〜8μmの間の幅4μmに渡って形成される領域をいい、一方、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
【0015】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、前記無機酸化物の主成分は、シリカであることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0016】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、前記無機酸化物担体(a)は、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を反応させてシリカゾルとし、固形物を分離、乾燥して得られたものであることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0017】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、前記無機酸化物担体(a)の細孔分布は、細孔径50nm以下の細孔容積が0.30〜1.6ml/gであることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0018】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、前記無機酸化物担体(a)の細孔分布は、細孔径2.0乃至6.0nmの細孔容積が0.005ml/g以上0.10ml/g未満であることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0019】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、前記無機酸化物担体(a)は、BET比表面積が100m2/g以上600m2/g未満であることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0020】
また、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明において、前記無機酸化物担体(a)の粒径分布は、粒子径が250μm以上の粒子が全体の0.3重量%以下、粒子径が10μm以下の粒子が全体の4.0重量%以下、平均粒径の1/10倍の粒径以下の粒子が全体の1.0重量%以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のエチレン重合用触媒が提供される。
【0021】
さらに、本発明の第12の発明によれば、第1〜11のいずれかの発明に係るエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合又はエチレンとα−オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
【0022】
また、本発明の第13の発明によれば、第12の発明において、前記α−オレフィンは、炭素数が3〜8であることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
【0023】
さらに、本発明の第14の発明によれば、第12または第13の発明に係る方法により製造されるエチレン系重合体であって、温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜100g/10分、密度が0.935〜0.960g/cm3であることを特徴とするエチレン系重合体が提供される。
【0024】
また、本発明の第15の発明によれば、第12または第13の発明に係る方法により製造されるエチレン系重合体であって、温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜15g/10分、密度が0.940〜0.955g/cm3であることを特徴とするエチレン系重合体が提供される。
【0025】
さらに、本発明の第16の発明によれば、第12または第13の発明に係る方法により製造されることを特徴とするエチレン系重合体粒子が提供される。
【0026】
また、本発明の第17の発明によれば、第16の発明において、第14または第15の発明に規定する特性を有することを特徴とするエチレン系重合体粒子が提供される。
【0027】
また、本発明の第18の発明によれば、第16または第17の発明において、重合反応終了後の状態における嵩密度が0.35〜0.55g/cm3であり、かつ、篩法で測定された平均粒径が100μm〜5mmであり、目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の1.0重量%以下であることを特徴とするエチレン系重合体粒子が提供される。
【0028】
また、本発明の第19の発明によれば、第18の発明において、重合反応終了後の状態における嵩密度が0.38〜0.55g/cm3であることを特徴とするエチレン系重合体粒子が提供される。
【0029】
また、本発明の第20の発明によれば、第18または第19の発明において、重合反応終了後の状態における目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の0.7重量%以下であることを特徴とするエチレン系重合体粒子が提供される。
【発明の効果】
【0030】
本発明のエチレン重合用触媒は、重合活性と触媒粒子性状に優れ、これを用いることにより、経済性と生産プロセス安定性に極めて優れたエチレン系重合体の製造方法を提供することが可能である。また、本発明のエチレン重合用触媒は、水素等の連鎖移動剤を用いることなく高MFRのエチレン系重合体を製造可能とし、ヘキセン等のα−オレフィンコモノマーとの優れた共重合性により少量のコモノマーで効率的にエチレン・α−オレフィン共重合体を製造可能とするので、この点においても経済性に優れている。更に、本発明の方法で製造されるエチレン系重合体粒子は、微粉が少なく球形の極めて優れた粒子性状を有するため、重合パウダー粒子の乾燥、保管サイロへの空送、各種添加剤との混合等が容易であり、また、ペレット化工程を経ることなく直接成形機へ供給することも可能であるため、重合反応工程はもちろんのこと、その後の工業生産工程上において経済的効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】本発明のエチレン重合用触媒(実施例1)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図1B】本発明のエチレン重合用触媒(実施例1)に係るEPMA分析の他の例(粒子外、最外周部領域、外周下層部領域、中央部領域)を示す写真およびその解析結果を示すグラフである。
【図2】本発明のエチレン重合用触媒(実施例8)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図3】本発明のエチレン重合用触媒(実施例10)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図4】本発明ではないエチレン重合用触媒(比較例1)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図5A】本発明ではないエチレン重合用触媒(比較例13)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図5B】本発明のエチレン重合用触媒(比較例13)に係るEPMA分析の他の例(粒子外、最外周部領域、外周下層部領域、中央部領域)を示す写真およびその解析結果を示すグラフである。
【図6】本発明ではないエチレン重合用触媒(比較例15)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図7】本発明ではないエチレン重合用触媒(比較例16)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図8】本発明のエチレン系重合体粒子(実施例1)を示す写真である。
【図9】本発明のエチレン系重合体粒子(実施例6)を示す写真である。
【図10】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例1)を示す写真である。
【図11】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例2)を示す写真である。
【図12】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例3)を示す写真である。
【図13】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例6)を示す写真である。
【図14】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例10)を示す写真である。
【図15】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例11)を示す写真である。
【図16】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例13)を示す写真である。
【図17】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例14)を示す写真である。
【図18】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例15)を示す写真である。
【図19】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例16)を示す写真である。
【図20】本発明のエチレン系重合体粒子(実施例1〜11)と本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例1〜16)とを共重合性の観点から対比した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とするエチレン重合用触媒、該エチレン重合用触媒を用いてなるエチレン系重合体の製造方法、さらには、該エチレン系重合体の製造方法によって得られるエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子に係るものである。以下、本発明を各項目ごとに説明する。
【0033】
[I]本発明のエチレン系重合用触媒
本発明のエチレン系重合用触媒は、無機酸化物担体にクロム化合物を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とする。
ところで、無機酸化物担体にクロム化合物を担持し、非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム元素が6価となるクロム触媒は、一般にフィリップス触媒として知られており公知である。この触媒の概要は、M.P.McDaniel著,Advances in Catalysis,Volime 33,47頁,1985年,Academic Press Inc.; M.P.McDaniel著,Handbook of Heterogeneous Catalysis,2400頁,1997年,VCH; M.B.Welchら著,Handbook of Polyolefins:Synthesis and Properties,21頁,1993年,Marcel Dekker等の文献に記載されている。
【0034】
本発明でエチレン重合用触媒として使用されるクロム触媒は、上記フィリップス触媒を改良することによって、後述するような、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在するという従来に無い特徴的な粒子構造を保有せしめたものである。この特徴的な粒子構造の形成は、使用する無機酸化物担体の粒子構造、粒子内細孔構造等を高度に制御することにより達成されたものである。以下に詳細を説明する。
【0035】
(a)無機酸化物担体
本発明で用いられる無機酸化物担体としては、周期律表第2〜14族の金属の酸化物であり、好ましくは第2、4、5、7、8、13、14族の金属の酸化物であり、更に好ましくは第2、4、13又は14族の金属の酸化物である。
具体的な例としては、マグネシア、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ、トリア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、又はこれらの混合物が挙げられる。なかでも、シリカ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナが好ましい。無機酸化物担体が複合酸化物あるいは混合物の場合、該複合酸化物あるいは混合物の主成分はシリカであることが好ましい。この場合、主成分とは金属元素として50モル%、より好ましくは60モル%、更に好ましくは70モル%を超えて存在する金属酸化物のことをいう。シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナの場合、シリカ以外の金属成分としてチタン、ジルコニウム又はアルミニウム原子が0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、さらに好ましくは1〜5重量%含有されたものが用いられる。
これらのクロム触媒に適する担体の製法、物理的性質及び特徴は、C.E.Marsden著,Preparation of Catalysts,Volume V,215頁,1991年,Elsevier Science Publishers; C.E.Marsden著,Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,Volume 21,193頁,1994年等の文献に記載されている。本発明では、上記無機酸化物担体に20重量%を上限に、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸チタニウム等のリン酸塩や、同硫酸塩、同硝酸塩、同ハロゲン化物等を含有することもある。
本発明によるエチレン重合用触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在するという従来に無い特徴的な粒子構造を保有するものである。この特徴的な粒子構造の形成は、使用する無機酸化物担体の粒子構造、粒子内細孔構造等を高度に制御することにより達成されたものである。
【0036】
本発明において用いられる無機酸化物担体は、比表面積が100m2/g以上、好ましくは200m2/g以上、より好ましくは280m2/g以上、さらに好ましくは350m2/g以上となるよう選択することが好ましい。比表面積が100m2/g未満の場合は、分子量分布が狭くかつ長鎖分岐が多くなることと関係すると考えられるが、製造されるエチレン系重合体の耐久性、耐衝撃性がともに低下する。比表面積の上限値は特に制限されないが、通常は1000m2/g未満、好ましくは700m2/g未満、更に好ましくは600m2/g未満である。
また、50nm以下の細孔の細孔容積としては、0.3〜3.0cm3/g、好ましくは0.7〜2.0cm3/g、さらに好ましくは1.0〜1.6cm3/gの範囲のものが用いられる。更に、2.0〜6.0nmの細孔の細孔容積としては、0.000〜0.20cm3/g、好ましくは0.005〜0.10cm3/g、さらに好ましくは0.01〜0.08cm3/gの範囲のものが用いられる。50nm以下の細孔容積が0.3cm3/gより小さいと、生成するエチレン系重合体のHLMFRが小さくなりすぎて溶融流動性が不足して溶融成形に支障をきたしたり、長鎖分岐が増えすぎてエチレン系重合体強度が低下したり、担体強度が強くなり過ぎて、エチレン系重合体中への触媒破片の分散が不十分となって製品外観を悪化させたりするので好ましくない。また50nm以下の細孔容積が3.0cm3/gより大きいと、担体強度が弱くなるので破砕による触媒粒子微粉やエチレン系重合体微粉の増加が生じたり、長鎖分岐が減ってしまうのでエチレン系重合体の溶融成形加工性が低下したりするので好ましくない。より大きなHLMFRを示すエチレン系重合体の製造のために特に好ましい50nm以下の細孔容積は1.2〜1.5cm3/gである。更に、2.0〜6.0nmの細孔の細孔容積が0.20cm3/gより大きいと、HLMFRの小さいエチレン系重合体成分の生成量が多くなって溶融成形に支障をきたすので好ましくない。
【0037】
また、本発明において用いられる無機酸化物担体の平均細孔径は、好ましくは7.0〜30nm、更に好ましくは8.0〜25nmであり、α−オレフィン共重合性に特段に優れたエチレン重合用触媒を得るためには14〜20nmであることが特に好ましい。平均細孔径が7.0nmより小さいと、重合活性やHLMFR、α−オレフィン共重合性が低下してしまうので好ましくない。平均細孔径が30nmより大きいと、細孔径分布が広がってしまう傾向が顕著となり、低分子量成分の生成量が増加してエチレン系重合体強度を低下させたりするので好ましくない。
【0038】
平均粒径としては、一般的なクロム触媒に用いられる担体と同様10〜200μm、好ましくは20〜150μm、さらに好ましくは30〜100μmの範囲のものが用いられる。上記範囲を外れると、ESCR及び耐衝撃性のバランスがとりにくくなる。また、優れた粒子性状のエチレン重合用触媒を得るためには、更には、後述する微粉が少なく球形の極めて優れた粒子性状を有するエチレン系重合体粒子を得るためには、前記無機酸化物担体は、径が250μm以上の粒子が全体の0.3重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることが更に好ましく、検出されないことが特に好ましい。また、径が10μm以下の粒子は全体の4.0重量%以下であることが好ましく、2.0重量%以下であることが更に好ましく、1.0重量%以下であることが特に好ましい。更には、平均粒径の1/10倍の粒径以下の粒子が全体の1.0重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることが更に好ましく、検出されないことが特に好ましい。
【0039】
上述のような無機酸化物担体を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、その一つとして、凝集成長法で合成した非晶質シリカ等の定形粒子とシリカヒドロゲルを微粉砕して得られた非晶質シリカ微粒子の混合スラリーを噴霧造粒して製造する方法が挙げられる。この製造方法によると、該定形粒子を主成分とするコアと該微粒子を主成分とするシェルから構成される非晶質シリカ系複合粒子が得られることが、例えば特開平11−60230号公報等に詳細に記載されている。
【0040】
コアを形成する粒子としては、凝集成長法で合成される非晶質シリカ等の定形粒子が好ましいが、それ以外にも、非晶質シリカ微粒子との混合スラリー形成と噴霧造粒に支障の無い範囲内で粒子形状を保持している粒子であればよく、例えば、従来公知の製法によるシリカゲル粉砕品を噴霧造粒して粒子形状を賦形した粒子も使用可能である。
凝集成長法による定形粒子は、ケイ酸アルカリ水溶液と酸水溶液の混合液を放置して生成する粒状ゾルとして得られるが、このとき、凝集成長剤としてカルボキシメチルセルロース、アクリルアミド系重合体等の水溶性高分子を添加したり、更に凝集成長助剤として、上記以外にも水溶性高分子や、水溶性無機電解質である金属鉱産塩あるいは有機酸塩を使用することも出来る。助剤として使用可能な水溶性高分子としては、例えば、澱粉、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビヤガム、トラガントガム、プリテイシュガム、クリスタルガム、セネガールガム、PVA、メチールセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレングリコール、等のノニオン系の高分子を使用することができ、また、水溶性無機電解質としては、アルカリ金属塩、例えば塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等のアルカリ金属の鉱酸塩;アルカリ土類金属塩、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム等の鉱酸塩;塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸チタニル等の他の水溶性金属塩を使用することができる。
【0041】
析出条件としては、一般に0〜100℃、好ましくは10〜40℃の温度で、1〜50時間、好ましくは3〜20時間程度の放置が適している。一般に、温度が低い程、析出粒子の粒径が大きくなり、温度が高い程析出粒子の粒径が小さくなるので、温度を制御することにより、粒状物の粒径を制御可能である。該定形粒子の粒径は電子顕微鏡で測定して、0.1〜20μm、好ましくは0.3〜15μm、さらに好ましくは0.5〜10μmの数平均粒径を有するものである。また、ゾル形成時に、ケイ酸アルカリ以外にアルミナゾルやアルミニウムイオン等の他金属源を共存させることにより、複合酸化物粒子を得ることも出来る。更には上記以外の従来公知の方法により入手可能な無機酸化物粒子、例えば酸処理ゼオライト、イオン交換焼成ゼオライト、各種ケイ酸塩、粘土等の粒子を使用することが出来る。
【0042】
シェルを形成する非晶質シリカ微粒子は、シリカゾルをそのまま使用することも出来るが、取り扱いの利便上、シリカゲルの湿式粉砕物を用いるのが好ましい。シリカゾルあるいはシリカゲルは、通常従来公知の方法であるケイ酸アルカリ水溶液と酸水溶液との反応物が用いられる。ゾル形成時に、複合酸化物微粒子を得ることを目的として、ケイ酸アルカリ以外にアルミナゾルやアルミニウムイオン等の他金属源を共存させることも出来る。
湿式粉砕により、2次粒子の粒径が4μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2.5μm以下の微細ヒドロゲルスラリーを準備し、非晶質シリカ系複合粒子の製造に用いられる。
上記の定形粒子と微粒子のスラリーを噴霧造粒することにより、本発明のエチレン重合用触媒の担体として好適な無機酸化物担体を製造する。噴霧造粒に供するスラリーとしては、該定形粒子と微粒子がSiO2基準のシリカ重量比が好ましくは20:80〜80:20、更に好ましくは30:70〜70:30で混合されたスラリーが用いられる。
【0043】
無機酸化物担体の粒子構造は、噴霧造粒時のノズル径、噴霧速度、原料濃度、原料組成等、従来公知の噴霧造粒条件を適宜選択することによって調整することが可能であり、無機酸化物の粒子表層と内部の濃度の大小は、該定形粒子と該微粒子の混合量比、スラリー濃度比によって制御が可能であり、該微粒子の含有量を大きくすると表層部の厚みを厚くなり、小さくすると厚みは薄くなり、該定形粒子の粒子サイズを大きくすると表層部の厚みは薄くなり、小さくすると厚みは厚くなる傾向にある。
【0044】
また、無機酸化物担体の比表面積、細孔容積、平均細孔径等の粒子内構造である細孔性状は、原料として使用する該定形粒子及び該微粒子の細孔性状を変化させることによって各々独立に制御することが可能である。該定形粒子及び該微粒子の細孔性状については従来公知の様々な方法が知られている。こうして得られた無機酸化物担体はそのまま使用しても良いし、従来公知の分級操作により好ましい粒径に調整したものを使用することも可能である。 また、上述のような無機酸化物担体を製造する方法の別の方法の一つとして、適切に選択された界面活性剤の共存下において生成せしめたヒドロゲルを利用する方法も考えられ、これについては例えば特開2004−143026号公報等に詳細に記載されている。
【0045】
本発明の無機酸化物担体は、クロム元素を担持するために次項で説明するクロム化合物で処理する工程に処する前に、加熱処理を行っておくことが、製造するエチレン系重合体の機械的物性をより良いものとするために好ましい。これは、該加熱処理により、生成するエチレン系重合体に主成分よりも高分子量のポリマー成分が付与されるためである。
加熱処理は、通常窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下あるいは気流下、100〜900℃、好ましくは150〜700℃、更に好ましくは200℃〜650℃の温度で実施される。
【0046】
(b)クロム化合物
本発明で上記の無機酸化物担体(a)にクロム元素を担持するために使用されるクロム化合物としては、担持後に非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム元素が6価となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、酸化クロム、クロムのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、クロム酸塩、重クロム酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、クロム−1,3−ジケト化合物、クロム酸エステル等が挙げられる。具体的には三酸化クロム、三塩化クロム、塩化クロミル、クロム酸カリウム、クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、トリス(2−エチルヘキサノエート)クロム、クロムアセチルアセトネート、ビス(tert−ブチル)クロメート等が挙げられる。なかでも三酸化クロム、酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートが好ましい。酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートのような有機基を有するクロム化合物を用いた場合でも、後に述べる非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分は燃焼し、最終的には三酸化クロムを用いた場合と同様に無機酸化物担体表面の水酸基と反応し、少なくとも一部のクロム元素は6価となってクロム酸エステルの構造で固定化されることが知られている(V.J.Ruddickら著,J.Phys.Chem.,Volume100,11062頁,1996年; S.M.Augustineら著,J.Catal.,Volume 161,641頁,1996年)。
【0047】
(c)担持
無機酸化物担体へのクロム化合物の担持は、含浸、溶媒留去、昇華等の公知の方法によって行うことができ、使用するクロム化合物の種類によって適当な方法を用いればよい。担持するクロム化合物の量は、クロム元素として担体に対して0.2〜2.0重量%、好ましくは0.3〜1.7重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0048】
本発明では、無機酸化物担体にクロム化合物が担持されたクロム触媒に、さらにフッ素化合物を含有させることがある。
フッ素化合物の含有方法(フッ素化)は、溶媒中でフッ素化合物溶液を含浸させた後、
溶媒を留去する方法、あるいは溶媒を用いずにフッ素化合物を昇華させる方法など、公知の方法によって行うことができ、使用するクロム化合物の種類によって、適宜好適な方法を用いればよい。無機酸化物担体にクロム化合物を担持してからフッ素化合物を含有させてもよいし、フッ素化合物を含有させてからクロム化合物を担持してもよいが、クロム化合物を担持してからフッ素化合物を含有させる方が好ましい。
フッ素化合物の含有量は、フッ素元素の含有量として、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜8重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
【0049】
フッ素化合物としては、フッ化水素HF、フッ化アンモニウムNH4F、ケイフッ化アンモニウム(NH4)2SiF6、ホウフッ化アンモニウムNH4BF4、一水素二フッ
化アンモニウム(NH4)HF2、ヘキサフルオロリン酸アンモニウムNH4PF6、テ
トラフルオロホウ酸HBF4のようなフッ素含有塩類が用いられ、なかでも、ケイフッ化アンモニウム、一水素二フッ化アンモニウムが好ましい。
これらを、水又はアルコールなどの有機溶媒に溶解させた後、クロム触媒に含浸させるのが均一性の観点から好ましいが、固体のままクロム触媒と混合するだけでもよい。溶解して含浸させる場合は、表面張力による細孔体積の縮小(shrinkage)を抑えるために、アルコールなどの有機溶媒を用いるのがより好ましい。また、溶媒を用いた場合は、風乾、真空乾燥、スプレードライなど、既知の方法によって、溶媒を飛ばして乾燥させる。あるいは、賦活工程の間にフッ素化合物を投入する方法でもよい。ただし、この場合、フッ素化合物の固体をガス中で流動化させるので、均一性の観点からできるだけ微細な粒子状のフッ素化合物固体を用いることが好ましい。
【0050】
(d)賦活
クロム化合物の担持後に焼成して活性化処理を行う。焼成活性化は、水分を実質的に含まない非還元性雰囲気、例えば酸素又は空気下で行なうことができる。この際、不活性ガスを共存させてもよい。好ましくは、モレキュラーシーブス等を流通させ十分に乾燥した空気を用い、流動状態下で行う。焼成活性化は通常400〜900℃、好ましくは430〜800℃、より好ましくは450〜650℃、さらに好ましくは490〜600℃の温度にて30分〜48時間、好ましくは1時間〜24時間、さらに好ましくは2時間〜12時間行う。この焼成活性化により無機酸化物担体に担持されたクロム化合物のクロム元素が少なくとも一部は6価に酸化されて担体上に化学的に固定される。焼成活性化を400℃未満で行うと重合活性が低下し、また分子量分布が広くなって耐久性は向上するものの耐衝撃性が低下する。焼成活性化を、800℃を越える温度で行うと、分子量分布が狭くなって耐衝撃性は向上するものの耐久性が低下し、さらに900℃を超える温度で行うと、シンタリングが起こり、活性が低下する。
【0051】
このようにして、本発明で使用するエチレン重合用触媒が得られるが、本発明のエチレン系重合体の製造方法に際しては、クロム化合物担持前又はクロム化合物担持後の焼成活性化前にチタンテトライソプロポキシドのようなチタンアルコキシド類、ジルコニウムテトラブトキシドのようなジルコニウムアルコキシド類、アルミニウムトリブトキシドのようなアルミニウムアルコキシド類、トリアルキルアルミニウムのような有機アルミニウム類、メチルアルモキサンのようなアルモキサン類、ジアルキルマグネシウムのような有機マグネシウム類などに代表される金属アルコキシド類もしくは有機金属化合物やケイフッ化アンモニウムのようなフッ素含有塩類等を添加してエチレン重合活性、α−オレフィンとの共重合性や得られるエチレン系重合体の分子量、分子量分布を調節する公知の方法を併用してもよい。これらの添加は、2種類以上を用いることももちろん可能である。
【0052】
これらの金属アルコキシド類もしくは有機金属化合物は非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分は燃焼し、チタニア、ジルコニア、アルミナ又はマグネシアのような金属酸化物に酸化されて触媒中に含まれる。またフッ素含有塩類の場合は無機酸化物担体がフッ素化される。
これらの方法は、C.E.Marsden著,Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,Volume 21,193頁,1994年; T.Pullukatら著,J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.,Volume 18,2857頁,1980年; M.P.McDanielら著,J.Catal.,Volume 82,118頁,1983年等の文献に記載されている。
【0053】
本発明においては、焼成活性化したクロム触媒に不活性炭化水素溶媒中で有機アルミニウム化合物(好ましくは、トリアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムアルコキシド及び/又はアルモキサン化合物)、有機マグネシウム化合物(好ましくは、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム等のジアルキルマグネシウム)、有機亜鉛化合物(好ましくは、ジエチル亜鉛、メチルエチル亜鉛等のジアルキル亜鉛)を担持し、さらに溶媒を除去・乾燥して、有機アルミニウム化合物担持クロム触媒、有機マグネシウム化合物担持クロム触媒、有機亜鉛化合物担持クロム触媒として用いることもできる。これら有機金属処理は2種類以上を用いることももちろん可能である。
次に、上記有機金属処理で使用される有機金属がアルミニウムである場合について、以下に具体的に例示する。
【0054】
トリアルキルアルミニウムは、下記一般式(A)
R’1R’2R’3Al (A)
(式中、R’1、R’2、R’3は、炭素原子数1〜18のアルキル基であり、同一であ
っても異なっていてもよい。)で示される化合物である。
トリアルキルアルミニウムの具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等が挙げられ、なかでもトリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムが好ましい。
【0055】
本発明においては、焼成活性化したクロム触媒に不活性炭化水素溶媒中でアルキルアルミニウムアルコキシド化合物を担持し、さらに、溶媒を除去・乾燥して、得られたアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を、重合触媒として用いることもできる。
【0056】
アルキルアルミニウムアルコキシド化合物としては、アルキルアルミニウムジアルコキシド及びジアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられ、好ましくはジアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられる。
ジアルキルアルミニウムアルコキシドの具体例としては、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジn−ブチルアルミニウムメトキシド、ジi−ブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジn−ブチルアルミニウムエトキシド、ジi−ブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムn−プロポキシド、ジエチルアルミニウムn−プロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−プロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムn−プロポキシド、ジメチルアルミニウムi−プロポキシド、ジエチルアルミニウムi−プロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムi−プロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−プロポキシド、ジメチルアルミニウムn−ブトキシド、ジエチルアルミニウムn−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジメチルアルミニウムi−ブトキシド、ジエチルアルミニウムi−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムi−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−ブトキシド、ジメチルアルミニウムt−ブトキシド、ジエチルアルミニウムt−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムt−ブトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド等が挙げられる。これらの中でも、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムn−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムエトキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジエチルアルミニウムi−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムエトキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−ブトキシドが好適である。
【0057】
アルキルアルミニウムアルコキシド化合物の担持量は、クロム原子に対するアルキルアルミニウムアルコキシド化合物のモル比が0.01〜100、好ましくは0.1〜20、更に好ましくは0.3〜2.0である。
【0058】
(e)エチレン重合用触媒の解析
上記(a)〜(d)の手順により得られる本発明のエチレン重合用触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在するという従来に無い特徴的な粒子構造を保有している。この特徴的な粒子構造は、得られた該触媒をある断面でカットして、その断面についての該無機酸化物を主に構成する金属元素含量、好ましくはケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウムの原子含量、より好ましくはケイ素元素含量を、電子線プローブマイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer;以下、単に「EPMA」と略称することもある。)により、測定することにより顕在化することが可能である。なお、EPMAは、以下のような原理を持った装置である。
【0059】
細く収束し加速させた電子線を試料表面にあて、そこから出てくる特性X線を、X線分光器で測定する。特性X線は、各元素の原子核を取り巻く内殻電子の遷移によって発生するX線で、元素に固有な幾つかの波長(エネルギー)としてあらわれる。よって特性X線の波長から元素の種類が、その強度から元素の含有量がわかる。
なお、本発明の触媒粒子において、無機酸化物が触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に多く集中して存在する領域は、触媒粒子の断面であって、その長径が30μm以上の断面(粒子の平均粒径が30μmより小さい場合は、該平均粒径以上の長径を有する断面)を見た場合に、触媒粒子の表面から内部に向かって、1μm以上、好ましくは2μm以上、更に好ましくは5μm以上、長径の2/5以下、好ましくは長径の1/3以下、更に好ましくは長径の1/4以下である。この範囲に無機酸化物が多く集中することにより、本発明の著しい効果を発揮することができる。
【0060】
触媒粒子において、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に多く集中して存在する無機酸化物の量の割合は、上記で規定した断面を見た場合、単位面積当たりの無機酸化物量として、触媒粒子内部に対する触媒粒子表面の割合が1.001倍以上、好ましくは1.05倍以上、より好ましくは1.1倍以上、さらに好ましくは1.15倍以上、特に好ましくは1.2倍以上であり、かつ、20倍以下、好ましくは10倍以下、より好ましくは4倍以下、さらに好ましくは3倍以下、特に好ましくは2倍以下である。
無機酸化物量の触媒粒子内部に対する触媒粒子表面の割合が1.001倍未満の場合、重合活性や触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状や溶融流動性が悪化したりするので好ましくない。また、無機酸化物量の触媒粒子内部に対する触媒粒子表面の割合が20倍より大きい場合、触媒粒子強度が不足して、触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状が悪化したりするので好ましくない。
本発明の触媒粒子において、上記で規定した触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に多く集中して存在する領域は、上記で規定した断面を見た場合、その外周部の70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上を占める。該領域は、厳密に完全なリング状に分布していることが最も好ましいことはいうまでもない。
【0061】
ここで、触媒粒子内部および触媒粒子表面の単位面積当たりの無機酸化物量を上記EPMA測定法から導出する方法として、ケイ素元素を対象とする場合の一例を以下に具体的に説明しておく。
EPMA法においては、測定対象元素の含有量が直接測定されるのではなく、該元素のX線強度が測定されて、試料中のケイ素のX線強度に関するマッピング画像が得られる。その際に、このX線強度に関するマッピング画像を、ケイ素濃度に関するマッピング画像に変換するためには、測定されたX線強度を該元素濃度に換算する必要がある。X線強度の元素濃度への換算は、対象試料の組成に近い組成を持つ複数の標準試料を用いてX線強度と該濃度との関係を予め検量線として求めるいわゆる検量線法で行う。
【0062】
本発明において、このようにして得られる触媒粒子断面におけるケイ素濃度分布に関するカラーマッピング画像を粒子形状およびケイ素濃度情報に関する画像処理を行い、上述の触媒粒子内部および触媒粒子表面の内部構造を、更に最外周部領域、外周下層部領域、および、中央部領域に分けて、各3領域の平均ケイ素濃度を各々x、y、z(単位;重量%)として、触媒粒子構造の特徴を解析、設計を行った結果、エチレン重合用触媒としての更なる性能向上に至った。
【0063】
すなわち、本発明のオレフィン重合用触媒は、その触媒粒子の断面における最外周部領域と該触媒粒子の中央部領域のケイ素濃度(各々x、z;単位 重量%)の比(x/z)が下記の[式1]を満たすことが好ましい。
1.05≦x/z≦4.00 [式1]
ここで、触媒粒子の最外周部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向の幅4μmに渡って形成される領域をいい、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。より好ましくは、1.10≦x/z≦3.00である。x/zが1.05未満の場合、重合活性や触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状や溶融流動性が悪化したりするので好ましくない。また、x/zが4.00より大きい場合、触媒粒子強度が不足して、触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状が悪化したりするので好ましくない。
【0064】
また、本発明のオレフィン重合用触媒は、その触媒粒子の断面における外周下層部領域と該触媒粒子の中央部領域のケイ素濃度(各々y、z;単位 重量%)の比(y/z)が下記の[式2]を満たすことも好ましい。
1.05≦y/z ≦4.00 [式2]
ここで、触媒粒子の外周下層部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向への距離5μm〜8μmの間の幅4μmに渡って形成される領域をいい、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。より好ましくは、1.10≦y/z≦3.00である。y/zが1.05未満の場合、重合活性や触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状や溶融流動性が悪化したりするので好ましくない。また、y/zが4.00より大きい場合、触媒粒子強度が不足して、触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状が悪化したりするので好ましくない。
【0065】
更に、本発明のオレフィン重合用触媒は、上記x、y、zを、各領域内においてケイ素濃度1.5重量%刻みで識別されるエリアの面積分率の平均値、すなわち、最外周部領域の平均ケイ素濃度xを、低ケイ素濃度エリアからスタートして面積分率が累計10%、50%、90%となるケイ素濃度として各々「10%ケイ素濃度x10;単位 重量%」、「50%ケイ素濃度x50」、「90%ケイ素濃度x90」と定義し、同様に、外周下層部領域の平均ケイ素濃度yを、各々「10%ケイ素濃度y10」、「50%ケイ素濃度y50」、「90%ケイ素濃度y90」と定義し、中央部領域の平均ケイ素濃度zを、各々「10%ケイ素濃度z10」、「50%ケイ素濃度z50」、「90%ケイ素濃度z90」と定義したとき、触媒粒子の外周部と中央部のケイ素濃度比を詳細に表現した下記の[式1a]〜[式1c]、[式2a]〜[式2c]の少なくともいずれか1つ以上を満たす場合が、より好ましい。
1.20≦x10/z10≦4.00 [式1a]
1.05≦x50/z50≦4.00 [式1b]
1.05≦x90/z90≦4.00 [式1c]
1.05≦y10/z10≦4.00 [式2a]
1.02≦y50/z50≦4.00 [式2b]
1.02≦y90/z90≦4.00 [式2c]
さらに、下記の[式1a’]〜[式1c’]、[式2a’]〜[式2c’]の少なくともいずれか1つ以上を満たす場合が、更に好ましい。
1.30≦x10/z10≦3.00 [式1a’]
1.10≦x50/z50≦2.00 [式1b’]
1.10≦x90/z90≦2.00 [式1c’]
1.10≦y10/z10≦2.00 [式2a’]
1.05≦y50/z50≦2.00 [式2b’]
1.08≦y90/z90≦2.00 [式2c’]
さらに、下記の[式1a”]〜[式1c”]、[式2a”]〜[式2c”]の少なくともいずれか1つ以上を満たす場合が、更により好ましい。
1.50≦x10/z10≦2.00 [式1a”]
1.24≦x50/z50≦1.50 [式1b”]
1.15≦x90/z90≦1.50 [式1c”]
1.15≦y10/z10≦1.60 [式2a”]
1.10≦y50/z50≦1.50 [式2b”]
1.10≦y90/z90≦1.50 [式2c”]
上記触媒粒子の外周部と中央部のケイ素濃度比が好ましい範囲より小さいと、重合活性や触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状や溶融流動性が悪化したりするので好ましくない。また、該ケイ素濃度比が好ましい範囲より大きいと、触媒粒子強度が不足して、触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状が悪化したりするので好ましくない。
【0066】
本発明のエチレン重合用触媒は、上述のように、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在するという従来に無い特徴的な粒子構造を保有することにより、特段大きな比表面積を保有していないにもかかわらず、担持されたクロム原子がエチレン等のモノマーと効率的に接触することが可能となり、更には重合の進行に伴い生成するエチレン系重合体に活性点が遮蔽されてしまうことがないので、極めて高い重合活性を維持することが可能となったものである。HLMFRの大きなエチレン系重合体を得たり、共重合性を改善するために、細孔容積を大きくしたり、平均細孔径を大きくすることは従来から知られていたものの、重合活性が低下してしまう欠点があったが、本発明のエチレン重合用触媒を使用すると重合活性を犠牲にすることなく、HLMFRや共重合性を向上させることがはじめて可能となったのである。
また、本発明の触媒を用いると、担体が適度な強度を有するため、重合の初期段階においては、触媒粒子は比較的割れにくく効率的に重合が進行し、さらに重合が進行した段階においては、触媒粒子の適度な割れが発生して、細か過ぎる重合体微粉粒子の発生が抑制される。
【0067】
[II]本発明のエチレン系重合体の製造方法
本発明のエチレン系重合体の製造方法は、上記[I]で得られたエチレン重合用触媒を使用して実施され、具体的には、上記[I]で得られたエチレン重合用触媒を使用してエチレンを単独重合させるか、あるいは、エチレンとα−オレフィンを共重合させることによって実施される。
α−オレフィンとしては、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜12、更に好ましくは3〜8のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等を使用することができる。また、改質を目的とする場合のジエンとの共重合も可能である。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。なお、重合の際のコモノマー含有率は、任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%である。
【0068】
上記のエチレン重合用触媒を用いて、エチレン系重合体の製造を行うに際しては、スラリー重合、溶液重合のような液相重合法あるいは気相重合法など、いずれの方法を採用することができるが、特にスラリー重合法が好ましく、パイプループ型反応器を用いるスラリー重合法、オートクレーブ型反応器を用いるスラリー重合法、いずれも用いることができる。なかでもパイプループ型反応器を用いるスラリー重合法が好ましい(パイプループ型反応器とこれを用いるスラリー重合の詳細は、松浦一雄・三上尚孝編著、「ポリエチレン技術読本」、148頁、2001年、工業調査会に記載されている)。
【0069】
液相重合法は、通常炭化水素溶媒中で行う。炭化水素溶媒としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素の単独又は混合物が用いられる。気相重合法は、不活性ガス共存下にて、流動床、攪拌床等の通常知られる重合法を採用でき、場合により重合熱除去の媒体を共存させる、いわゆるコンデンシングモードを採用することもできる。
液相重合法における重合温度は、一般的には0〜300℃であり、実用的には20〜200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは70〜150℃、特に好ましくは70〜110℃である。反応器中の触媒濃度及びエチレン濃度は重合を進行させるのに十分な任意の濃度でよい。
例えば、触媒濃度は、液相重合の場合反応器内容物の重量を基準にして約0.0001〜約5重量%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、液相重合の場合反応器内容物の重量を基準にして約1%〜約10%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、気相重合の場合、全圧として0.1〜10MPaの範囲とすることができる。また、水素を共存させて重合を行うことも可能であり、耐久性、耐衝撃性、剛性のバランスに優れたエチレン系重合体を製造するためには、水素とエチレンを特定の比率とした条件下で重合させるのがよい。水素は、一般的には分子量を調節するためのいわゆる連鎖移動剤としての働きを有するとされているが、水素とエチレンを特定の比率とした条件下で重合させることにより、耐久性を向上させ、且つ耐衝撃性及び剛性のバランスを向上させることができる。水素の共存によりかかる効果が得られる理由の詳細は不明であるが、特定の分子量域に適度な長さ又は数の長鎖分岐を導入する働きを有するため、あるいはエチレンとα−オレフィンとの共重合による短鎖分岐の分布を変える働きを有するためと考えられる。
【0070】
重合方法としては、反応器を一つ用いてエチレン系重合体を製造する単段重合だけでなく、生産量を向上させるため、又は分子量分布やコモノマー組成分布を広げるため、少なくとも二つの反応器を連結させて多段重合を行うこともできる。多段重合の場合、二つの反応器を連結させ、第一段の反応器で重合して得られた反応混合物を続いて第二段の反応器に連続して供給する二段重合が好ましい。第一段の反応器より第二段の反応器への移送は連結管を通して、第二段反応器からの重合反応混合物の連続的排出により行われる。
【0071】
第一段反応器及び第二段反応器で同一の重合条件で製造してもよいし、あるいは第一段反応器及び第二段反応器で同一のHLMFR、密度のポリエチレン系樹脂を製造してもよいが、分子量分布を広げる場合には、両反応器で製造するポリエチレン系樹脂の分子量に差をつけるのが好ましい。第一段反応器で高分子量成分、第二段反応器で低分子量成分を、又は第一段反応器で低分子量成分、第二段反応器で高分子量成分をそれぞれ製造するいずれの製造方法でもよいが、第一段反応器で高分子量成分、第二段反応器で低分子量成分を製造する方法の方が、第一段から第二段への移行にあたり中間の水素のフラッシュタンクを必要としないため生産性の面でより好ましい。
【0072】
第一段においては、エチレン単独又は必要に応じてα−オレフィンとの共重合を、水素濃度のエチレン濃度に対する重量比(Hc/ETc)、重合温度又は両者により分子量を調節しながら、またα−オレフィン濃度のエチレン濃度に対する重量比で密度を調節しながら重合反応を行う。
第二段においては、第一段から流れ込む反応混合物中の水素及び同じく流れ込むα−オレフィンがあるが、必要に応じてそれぞれ新たな水素、α−オレフィンを加えることができる。従って、第二段においても、水素濃度のエチレン濃度に対する重量比(Hc/ETc)、重合温度又は両者により分子量を調節しながら、またα−オレフィン濃度のエチレン濃度に対する重量比により密度を調節しながら重合反応を行うことができる。触媒や有機アルミニウム化合物のような有機金属化合物についても、第一段から流れ込む触媒により二段目で引き続き重合反応を行うだけでなく、第二段で新たに触媒、有機アルミニウム化合物のような有機金属化合物又はその両者を供給してもよい。
【0073】
二段重合によって製造する場合の高分子量成分と低分子量成分の比率としては、高分子量成分が10〜90重量部、低分子量成分が90〜10重量部、好ましくは高分子量成分が20〜80重量部、低分子量成分が80〜20重量部、さらに好ましくは高分子量成分が30〜70重量部、低分子量成分が70〜30重量部である。また、高分子量成分のHLMFRは、0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜50g/10分、低分子量成分のHLMFRは、10〜1000g/10分、好ましくは10〜500g/10分である。
【0074】
[III]本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子
本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、上記[II]のエチレン系重合体の製造方法によって製造される。該エチレン系重合体はエチレン単独重合体の場合もあるし、コモノマーとしてプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどのα−オレフィンを1種類以上含むエチレン・α−オレフィン共重合体の場合もあり、この時得られるエチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含量は15mol%以下、好ましくは10mol%以下が望ましい。α―オレフィンとしては好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、さらに好ましくは1−ヘキセンが好適に用いられる。また上述のように少量のジエン類やスチレン類等の改質用モノマーを含有することもできる。
【0075】
本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、HLMFRが0.1〜1000g/10分、好ましくは0.5〜500g/10分、密度が0.900〜0.980g/cm3、好ましくは0.920〜0.970g/cm3である。該エチレン系重合体は、ESCRと耐衝撃性が高くバランスに優れるので、特にブロー成形製品、なかんずく大型ブロー成形製品で大きな効果を発揮する。ブロー成形製品用のエチレン系重合体のHLMFRは、1〜100g/10分、特に大型ブロー成形製品用のエチレン系重合体は、1〜15g/10分である。ブロー成形製品用のエチレン系重合体の密度は、0.935〜0.960g/cm3、特に大型ブロー成形製品用のエチレン系重合体の密度は、0.940〜0.955g/cm3である。得られたエチレン系重合体は、混練することも好ましい。混練は単軸又は二軸の押出機又は連続式混練機を用いて行うことができる。また得られるエチレン系共重合体は、常法によりブロー成形することができる。また、本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、いわゆる伸長粘度のストレインハードニングパラメーターλmaxが1.05〜1.50であることもより良い成形性を保有するためには好ましい。
【0076】
HLMFRが0.1g/10分未満であると、パリソン(ブロー成形において、成形器の口金から押し出されたパイプ状の溶融ポリマー;金型内で空気圧により膨張させる以前の状態)の押出成形時に押出量が不足し、成形不安定な状態となり実用的でないし、また、1000g/10分を越えてもパリソンの形成が溶融粘度及び溶融張力の不足のため不安定となり実用的でない。HLMFRは、重合温度や水素濃度の制御などの方法で調整することができる。例えば、重合温度を高くする、又は水素濃度を高くすることによりHLMFRを高くすることができる。ここでHLMFRは、JIS K−7210に準拠し、温度190℃、荷重21.60kgの条件で測定したものである。
密度が0.900g/cm3未満であると、中空プラスチック成形品の剛性が不足し、0.980g/cm3を越えると中空プラスチック成形品の耐久性が不足する。密度は、α−オレフィンの種類や含有量の制御などの方法で調整することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂中のα−オレフィン含有量を低くする(重合時のα−オレフィン添加量を低くする)、又は同じ含有量であれば、炭素数の小さいα−オレフィンを用いることにより、密度を高くすることができる。密度は、JIS K−7112に準拠し、ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/分の速度で降温し厚み2mmtのシートを成形し、このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、密度勾配管に入れ測定したものである。
【0077】
本発明のポリエチレン系樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が好ましくは25以上、さらに好ましくは27以上のものである。上限は特に限定されないが、50までが一般的である。
【0078】
ところで、分子量分布(Mw/Mn)は、下記のGPC測定を行ない、数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)を求めて分子量分布(Mw/Mn)を算出し求められる。
[ゲル透過クロマトグラフ(GPC)測定条件]
装 置:Waters社製150Cモデル、
カラム:昭和電工社製Shodex−HT806M、
溶 媒:1,2,4−トリクロロベンゼン、
温 度:135℃、
単分散ポリスチレンフラクションを用いてユニバーサル評定。
【0079】
MwのMnに対する比率(Mw/Mn)で示される分子量分布(Mw/Mnが大きいほど分子量分布が広い)については、「サイズ排除クロマトグラフィー(高分子の高速液体クロマトグラフィー)」(森定雄著,共立出版,96頁)に記載された分子量と検出器感度の式に、n−アルカン及びMw/Mn≦1.2の分別直鎖ポリエチレン系樹脂のデータを当てはめて、次式で示される分子量Mの感度を求めた後、サンプル実測値の補正を行なった。
分子量Mの感度=a+b/M
(式中、a、bは定数で、a=1.032、b=189.2)
【0080】
分子量分布は、触媒の賦活温度、重合温度の制御などの手法、特に賦活温度の制御で調整することができる。即ち、賦活温度を高くすれば分子量分布が狭くなり、逆に賦活温度を低くすれば分子量分布は広くなる。また、その効果は賦活温度の場合より小さいが、重合温度の制御によっても調整することができる。即ち、重合温度を高くすれば分子量分布はやや狭くなり、逆に重合温度を低くすれば分子量分布はやや広くなる。
得られたエチレン系重合体は、次いで混練することも好ましい。単軸又は二軸の押出機又は連続式混練機を用いて行われる。上記の方法により製造されたエチレン系重合体は、1種類でも複数種類を混合して使用してもよく、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とすることができるが、本発明で製造されるエチレン系重合体粒子は、そのきわめて良好な粉体粒子性状を活用することにより、ペレット化を経ることなく、直接各種成形機に供給して成形を行って所望の成形品とすることも可能であり、ペレット化の工程を省略することが可能であるので省エネルギー化の観点で非常に好ましい。
【0081】
ここで、本発明で製造されるエチレン系重合体粒子とは、上述のエチレン重合用触媒を使用してエチレン系重合体の製造を重合反応槽内で行った直後の重合粒子形態を保持したままの状態をいい、更に詳述すると、重合反応終了後に溶媒等を乾燥留去させる程度に必要な150℃程度の温度、好ましくは130℃程度の温度、更に好ましくは110℃程度の温度より高温で処理されることの無い状態のエチレン系重合体粒子のことをいい、その粒子嵩密度が0.32〜0.60g/cm3、好ましくは0.35〜0.55g/cm3、更に好ましくは0.38〜0.50g/cm3であって、また、篩法で測定された平均粒径が100μm〜5mm、好ましくは200μm〜3mm、更に好ましくは300μm〜2mmであり、目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の1.0重量%以下、好ましくは0.7重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下であることが好ましい。下限は0重量%であることはいうまでもない。粒子嵩密度が0.32g/cm3より小さいと、同一体積当たりの製品重量が少なくなるので、成形等の処理効率が悪くなり、逆に粒子嵩密度が0.60g/cm3より大きいと、重合槽や乾燥機等での攪拌による分散が悪くなるので好ましくない。また、篩法で測定された平均粒径が100μmより小さいと気流輸送時の拡散による汚染が問題となったり、静電気による器壁への付着が酷くなり、5mmより大きいと各種添加剤との混合に支障をきたすので好ましくない。目開き40μmの篩を通過する粒子が全体の1.0重量%より多くなると、気流輸送時の微粉拡散による汚染が問題となったり、静電気による器壁への付着が酷くなるので好ましくない。
【0082】
本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子には、必要に応じて、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、パール顔料、偏光パール顔料、架橋剤、発泡剤、中和剤、熱安定剤、結晶核剤、無機又は有機充填剤、難燃剤等の公知の添加剤を配合することができる。
添加剤として、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上適宜併用することができる。充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等が使用可能である。いずれの場合でも、上記ポリエチレン系樹脂に、必要に応じ各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。
【0083】
[IV]中空プラスチック成形品の製造、及び製品或いは用途
本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、特に限定されず、従来からの公知の多層中空成形機を用いて押出ブロー成形法により成形することができる。例えば、複数の押出機で各層の構成樹脂を加熱溶融させた後、多層のダイにより溶融パリソンを押出し、次いでこのパリソンを金型で挟み、パリソンの内部に空気を吹き込むことにより、多層の中空プラスチック成形品が製造される。
さらに、本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子には、必要に応じて目的を損なわない範囲で、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、有機あるいは無機系顔料、充填剤、無機フィラー、紫外線防止剤、分散剤、耐候剤、架橋剤、発泡剤、難燃剤などの公知の添加剤を添加することができる。
また、本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、具体的には、製品としては、燃料タンク等のタンク、灯油缶、ドラム缶、薬品用容器、農薬用容器、溶剤用容器、各種プラスチックボトル等の製品、特に自動車用燃料タンクとして供され、或いは本発明の中空プラスチック成形品の用途としては、燃料タンク等のタンク、灯油缶、ドラム缶、薬品用容器、農薬用容器、溶剤用容器、各種プラスチックボトル等が挙げられ、特に自動車用燃料タンクとして用いられるのが最も好ましい。
【実施例】
【0084】
以下においては、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明し、本発明の卓越性と本発明の構成における優位性を実証するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において使用した測定方法は、以下の通りである。
【0085】
(1)物性測定のためのポリマー前処理
オートクレーブ重合で得られたポリエチレン系樹脂の物性評価東洋精機製作所社製プラストグラフ(ラボプラストミルME25;ローラー形状はR608型)を用い、添加剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガノックスB225(リン系安定剤のIRGAFOS 168とフェノール系酸化防止剤のIRGANOX 1010の1/1ブレンド物)を0.2重量%添加し、窒素雰囲気下、回転数毎分40回転にて、180℃で7分間混練した。
【0086】
(a)ハイロードメルトフローレート(HLMFR):
JIS K−7210(2004年版)の附属書A表1−条件Gに従い、試験温度190℃、公称荷重21.60kgにおける測定値をHLMFRとして示した。
(b)密度:
JIS K−7112(2004年版)に従い測定した。
【0087】
(c)分子量分布(Mw/Mn):
生成エチレン系重合体について下記の条件でゲル透過クロマトグラフ(GPC)を行ない、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求めて分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
[ゲル透過クロマトグラフ測定条件]
装 置:Waters 150Cモデル、
カラム:昭和電工社製Shodex−HT806M、
溶 媒:1,2,4−トリクロロベンゼン、
温 度:135℃、
単分散ポリスチレンフラクションを用いてユニバーサル評定。
MwのMnに対する比率(Mw/Mn)で示される分子量分布(Mw/Mnが大きいほど分子量分布が広い)については、「サイズ排除クロマトグラフィー(高分子の高速液体クロマトグラフィー)」(森定雄著,共立出版,96頁)に記載された分子量と検出器感度の式にn−アルカン及びMw/Mn≦1.2の分別直鎖ポリエチレンのデータを当てはめて、次式で示される分子量Mの感度を求めた後、サンプル実測値の補正を行なった。
分子量Mの感度=a+b/M
(式中、a、bは定数で、a=1.032、b=189.2)
【0088】
(2)触媒構造の分析
(a)電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)による触媒分析:
賦活後のクロム触媒の試料を樹脂包埋後研磨し、Au蒸着後、島津製作所社製EPMA−1600でマッピング分析を行った。EPMAによるマッピングのX線強度は、測定対象元素(Si−Kα線)のX線プロファイルを測定し、ピーク波長を求め、この波長でX線強度を測定した。カラー画像は強度を16段階に色分けし、表示される。
【0089】
マッピング条件
加速電圧:15kV
ビーム電流:50nA
ビーム径:1μm
分光結晶:PET(Pentaerythritol)
測定時間:50msecまた100msec
測定面積:512μm×512μmまたは256μm×256μm
以上のようにして、EPMAによって触媒分析を行った結果を図1〜7に示す。
【0090】
得られたケイ素X線強度を、ケイ素濃度分布画像に変換するための上述検量線は、次のように作成した。
すなわち、標準試料としてポアがなく密度一定で均一なソーダ石灰シリカガラス(Na2O・K2O−CaO・MgO−Al2O3−SiO2系)に着色のためにクロムを添加した市販の色ガラスを用いた。色ガラス中のケイ素とクロムの均一性については、EPMAで分析し偏在のないことを確認した。色ガラス2点(標準試料)の測定は、EPMAマッピング分析と同様の前処理、測定条件で、各20箇所測定を行い、その平均値をX線強度とした。ケイ素含有量0重量%は測定対象元素のX線プロファイルを測定しバックグラウンド波長を求め、前述同様の測定条件で平均X線強度を求め使用した。また、濃度は色ガラス2点の化学分析を行い、含有量を決定した。このX線強度と濃度から検量線を作成し、マッピング分析データを濃度データに変換し、濃度範囲を1.5重量%刻みで16段階に色分けしカラー画像化した。
【0091】
[標準試料]
市販の色ガラス(Si;32.2重量%、Cr;0.11重量%)
市販の色ガラス(Si;31.5重量%、Cr;0.24重量%)
[化学分析方法]
ケイ素:試料をアルカリ溶融し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)にて測定により求めた。
クロム:試料を酸分解し、ICP−AESにて測定により求めた。
【0092】
こうして得られたケイ素濃度分布画像を画像処理する手法は、以下の(i)〜(v)の順の通りである。
(i)EPMA画像(1μm/画素)(ケイ素濃度1.5重量%刻み16段階で色分けしたカラー画像)を入力した。
(ii)ケイ素濃度3.0重量%以下を粒子外として認識させ、粒子を1画素縮小させた。
(iii)粒子内部をユークリッド法による距離変換処理をした。
(iv)外周から4μm領域を「粒子最外周部領域」、5〜8μm領域を「粒子外周下層部領域」、それより内部を「粒子中央部領域」とした。
(v)「粒子最外周部領域」、「粒子外周下層部領域」、「粒子中央部領域」のそれぞれの領域での16階調のEPMA像の面積割合を求めた。なお、これら画像処理は、(株)日本ローパー製Image Pro Plusを用いた。
【0093】
上記の各領域内における面積分率の累計%ケイ素濃度は、1.5重量%刻みの増分で区分けされた各区間(すなわち、0〜1.5重量%区間、1.5〜3.0重量%区間、3.0〜4.5重量%区間、・・・、18.0〜19.5重量%区間、19.5〜21.0重量%区間、21.0重量%以上区間)の平均ケイ素濃度を各区間中間濃度(すなわち、0.75重量%、2.25%、3.75重量%、・・・、18.75重量%、20.25重量%、21.75重量%)と定義し、該区間の面積分率をX−Y軸に累計プロットした場合の10%累計点、50%累計点、90%累計点の濃度を、各々「10%ケイ素濃度;単位 重量%」、「50%ケイ素濃度」、「90%ケイ素濃度」として算出した。
【0094】
(b)レーザー回折散乱法による触媒粒子の粒径分布の測定:
装置名 MICROTRAC MT3000II型(日機装)、屈折率:粒子1.81、分散媒1.33(0.2重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液)、超音波照射40W・120秒の条件にて測定した。
【0095】
(c)細孔構造の分析:
<比表面積、細孔容積>
各試料は加熱、減圧下で十分な前処理を行った後、カンタークローム社製・オートソーブ3B型を用いて、液体窒素温度下で窒素の吸着等温線測定を行った。得られた吸着等温線の相対圧0.95での吸着量から細孔容積を、BET多点法解析を実施して比表面積を算出した。更に、細孔構造を円筒と仮定することで、式(1)に従い平均細孔径を算出した。この式でDaveは平均細孔径を、Vtotalは細孔容積を、SBETはBET多点法による比表面積を示す。
Dave=4Vtotal/SBET 式(1)
更にBJH法解析によりメソ孔分布を求め、指定範囲の細孔容量を算出した。
【0096】
(3)エチレン系重合体粒子の分析
(a)かさ密度:
金属シリンダー法により測定を行った。
(b)篩粒径測定:
内径75mmの標準篩7個(目開き44μm、88μm、177μm、350μm、710μm、1410μm、2830μm)に製品粒子6.0gを入れ、10分間振とうして測定される篩下50%積算値をもって平均粒径とした。
【0097】
[実施例1]
(1)クロム触媒前駆体の調製及び使用したシリカゲルの細孔分布測定
攪拌装置付き1Lフラスコにシリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST191201)50gとイオン交換水200mLを加え、回転数50rpmで攪拌しながら、オイルバスにて50℃に加温した。ここへ、別途調製した酢酸クロム(III)(和光純薬製)2.2gをイオン交換水70mLに溶解した水溶液全量を添加し、回転数を150rpmに上げて4時間攪拌を継続することによりクロム化合物をシリカゲルによく含浸させた。次に、オイルバス温度を155℃として水を全量留去した後、更に120℃で一晩乾燥して、緑白色を呈した流動性のよいクロム触媒前駆体粒子を得た。反応に提供したシリカゲルの細孔分析結果を表1、2に示す。
【0098】
(2)クロム触媒前駆体の賦活及びクロム触媒の分析
上記(1)で得たクロム触媒前駆体粒子15gを、多孔板目皿付き、管径3cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速6cm/sにて賦活温度550℃で12時間焼成活性化を行った。こうして6価のクロム原子を含有することを示すオレンジ色のクロム触媒を得た。こうして得られた触媒をEPMA分析により触媒断面におけるケイ素元素含量を測定した結果を図1Aに示す。図1Aより、得られた触媒の触媒表面のケイ素元素検出量が触媒内部に存在するケイ素元素より多いことが明らかであり、すなわち、該触媒内部よりも該触媒表面にシリカ粒子が多く集中して存在するクロム触媒であった。得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図1Aに示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を図1Bおよび表3に示す。
【0099】
(3)エチレン・1−ヘキセン共重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに上記(2)で得られたクロム触媒70mg及びイソブタン0.7Lを仕込み、内温を100℃まで昇温した。ここに更に1−ヘキセン5.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保持することにより重合を開始した。重合を開始してからエチレン消費速度が40g/hを超えるまでに有した時間を誘導期と定義すると、この時の誘導期は10分であった。誘導期を過ぎて更に42分間重合を継続した後、内容ガスを系外に放出することにより重合を終了した。こうして流動性のよいポリエチレン粒子211gを得た。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4300g/g/hであった。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図8に示す。
【0100】
[実施例2]
実施例1(2)で賦活温度を450℃とした以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0101】
[実施例3]
実施例1(2)で賦活温度を450℃とし、実施例1(3)で重合温度を103℃とした以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0102】
[実施例4]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを事前に窒素気流下200℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0103】
[実施例5]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを事前に窒素気流下200℃1時間、更に400℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0104】
[実施例6]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図9に示す。
【0105】
[実施例7]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを事前に窒素気流下200℃1時間、更に800℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0106】
[実施例8]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST210601)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図2に示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
【0107】
[実施例9]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST210601)を事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0108】
[実施例10]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST210602)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図3に示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
【0109】
[実施例11]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST210602)を事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。さらに、EPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
【0110】
[比較例1]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(富士シリシア化学社製;商品名
CARiACT P−6)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図4に示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図10に示す。
【0111】
[比較例2]
比較例1のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間で予備乾燥した後、更に600℃にて6時間焼成処理を行ったものを用いた以外は、比較例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図11に示す。
【0112】
[比較例3]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(富士シリシア化学社製;商品名
CARiACT P−8)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図12に示す。
【0113】
[比較例4]
比較例3で賦活温度を450℃とし、重合温度を103℃とした以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0114】
[比較例5]
比較例3のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0115】
[比較例6]
比較例3のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間
、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図13に示す。
【0116】
[比較例7]
比較例6で賦活温度を630℃とした以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0117】
[比較例8]
比較例3のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間
、更に800℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0118】
[比較例9]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(富士シリシア化学社製;商品名
CARiACT P−10)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0119】
[比較例10]
比較例9のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間
、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例9と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図14に示す。
【0120】
[比較例11]
(1)シリカ粒子の合成
ケイ酸ナトリウムと硫酸の反応で生成したシリカヒドロゲル分散液を乾燥後、湿式粉砕して得た平均粒径約3μmのシリカ微粒子分散液(固形分濃度15重量%)に、ケイ酸ナトリウムと硫酸を加え、この複合分散液を噴霧造粒することにより、球状のシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子の粒径分布と細孔構造分析結果を表1、2に示した。
(2)クロム触媒の製造とエチレン・1−ヘキセン共重合
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、上記(1)で得られたシリカ粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図15に示す。
【0121】
[比較例12]
比較例11(2)で賦活温度を450℃とし、重合温度を103℃とした以外は、比較例11と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0122】
[比較例13]
比較例11(2)のシリカ粒子の代わりに、該シリカ粒子を事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例11と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図5Aに示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を図5Bおよび表3に示す。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図16に示す。
【0123】
[比較例14]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(ダブリュー・アール・グレース社製;商品名 C−952)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図17に示す。
【0124】
[比較例15]
比較例14のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例14と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図6に示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図18に示す。
【0125】
[比較例16]
市販のクロム触媒前駆体(グレース社製HA30W)を、実施例1(2)(3)と同様にして、賦活及びエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。同一賦活温度及び重合温度の実施例の重合活性、HLMFR、共重合性を上回ることはなく、実施例のクロム触媒に比べて、劣っていた。更に、触媒粒子及びエチレン重合体粒子に粗粉や微粉が多く、重合体粒子のかさ密度も低かった。得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図7に示すが、得られた触媒のケイ素原子検出量は触媒内においてほぼ一定しており、すなわち、シリカに関して非常に均一性の高いクロム触媒であった。これは実施例のクロム触媒とは異なる傾向であった。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図19に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
(実施例と比較例の結果の対照による考察)
上記表1、2より明らかなように、本発明の要件を満たす実施例1〜11では、調製されたクロム触媒はいずれも優れた重合活性と触媒粒子性状を示した。そしてそのクロム触媒を用いて製造されたエチレン系重合体とエチレン系重合体粒子は、パウダー粒子性状、溶融流動性の点で優れた特性を示した。
また、上記表3より明らかなように、実施例1(実施例1〜7は全て同じ担体から製造した触媒の例)、実施例8、実施例10、および実施例11のクロム触媒は、いずれも、粒子の外周部領域と中央部領域の平均ケイ素濃度の比が全て1より大きいことから、これらの触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在する触媒であると判定できるが、一方、比較例1(比較例1〜10は全て同種の担体から製造した触媒の例)、比較例15(比較例14、15は同じ担体から製造した触媒の例)、および比較例16のクロム触媒はいずれも、粒子の外周部領域と中央部領域の平均ケイ素濃度の比が1を下回る傾向が大きいことから、これらの触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在していない触媒であり、また、比較例13(比較例11〜13は同じ担体から製造した触媒の例)のクロム触媒は、粒子の外周部領域と中央部領域の平均ケイ素濃度の比が1を上回る傾向が弱いことから、この触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在する傾向が実施例の触媒よりも小さいと判定できる。
本発明の要件を満たす実施例1〜11では、調製されたクロム触媒はいずれも優れた1−ヘキセン共重合性を示した。すなわち、図20に示すように、実施例(図中の添字1〜11)の触媒で生成したエチレン・1−ヘキセン共重合体は、比較例(図中の添字c1〜c16)のエチレン・1−ヘキセン共重合体に比べ、HLMFR見合いの密度(D)が小さかった。なお、実施例2、実施例3、実施例5、実施例6、実施例7の値は密度が高い傾向を有するように見えるが、賦活温度が低温であったり、重合温度が低かったり、事前高温乾燥した無機酸化物担体を使用しているためであり、対応する比較例の値と比較するとやはり共重合性が優れていた。
【0130】
一方、比較例1、比較例2で使用したシリカは、実施例のシリカより遥かに大きい比表面積を有するので、高い重合活性が期待されたが、同一賦活温度及び重合温度の実施例(例えば実施例1、4、5、6)の重合活性を上回ることはなく、また、HLMFRが非常に低いという欠点を有していた。また、特段に低密度のポリエチレンが得られてはおらず、1−ヘキセン共重合性に優れていることもなかった。更に、エチレン重合体粒子に微粉が多かった。
そして、比較例1で得られたクロム触媒は、図4と表3より、得られた触媒の触媒表面のケイ素元素検出量よりも触媒内部に存在するケイ素原子の方が多い傾向にあることが明らかであり、すなわち、該触媒表面よりも該触媒内部にシリカ粒子が多く集中して存在するクロム触媒であった。これは実施例のクロム触媒とは逆の傾向であった。
【0131】
また、比較例3、比較例5、比較例6で使用したシリカは、実施例8のシリカとほぼ同じ細孔容積と比表面積を有しているが、同一乾燥温度、賦活温度、重合温度の実施例(例えば実施例8)の重合活性を上回ることはなく、また、HLMFRが低いという欠点を有していた。また、特段に低密度のポリエチレンが得られてはおらず、1−ヘキセン共重合性に優れていることもなかった。更に、シリカには微粉が少なかったにもかかわらず、エチレン重合体粒子に微粉が多かった。
なお、該比較例のシリカ種で実施例と同程度の高HLMFRの重合体を得るには、実施例2と比較例4の比較でわかるように重合温度を3℃以上高くするか、実施例9と比較例7の比較でわかるように賦活温度を80℃程度高くする必要があるので、実施例の触媒が高HLMFRを得るのに経済的である。
【0132】
また、該比較例9、10で使用したシリカは、実施例10、実施例11のシリカとほぼ同じ細孔容積、平均細孔径、比表面積を有しているが、同一乾燥温度、賦活温度及び重合温度の実施例の重合活性、HLMFR、共重合性を上回ることはなく、実施例のクロム触媒に比べて、劣っていた。
また、比較例11、比較例12、比較例13で使用したシリカは、同一乾燥温度、賦活温度及び重合温度の実施例(例えば実施例1、3、6)に匹敵する重合活性を有していたが、HLMFRが低いという欠点を有していた。また、特段に低密度のポリエチレンが得られてはおらず、1−ヘキセン共重合性に優れていることもなかった。更に、触媒粒子及びエチレン重合体粒子に微粉がやや多く、重合体粒子のかさ密度も低かった。
そして、比較例13で得られたクロム触媒は、図5と表3より、ケイ素元素検出量が多い領域と少ない領域を有していたが、それらの分布が実施例の触媒に見られたように明らかに表面や内部に偏在している訳ではなく、粒子内にほぼ均一に分散して存在するクロム触媒であった。これは実施例のクロム触媒とは異なる傾向であった。
【0133】
また、比較例14、比較例15で使用したシリカは、実施例10、実施例11のシリカと同程度の細孔容積、平均細孔径、比表面積を有しているが、同一乾燥温度の実施例の重合活性、HLMFR、共重合性を上回ることはなく、実施例のクロム触媒に比べて、劣っていた。更に、触媒粒子及びエチレン重合体粒子に粗粉や微粉が多かった。
そして、比較例15で得られたクロム触媒は、図6と表3より、得られた触媒のケイ素元素検出量は触媒内においてほぼ一定か内部にやや多く検出されており、すなわち、シリカに関して非常に均一性の高いクロム触媒であった。これは実施例のクロム触媒とは異なる傾向であった。
以上から、本発明における構成の要件の合理性と有意性、及び本発明の従来技術に対する優越性が明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0134】
以上から明らかなように、本発明のエチレン重合用触媒は、重合活性と触媒粒子性状に優れているため、これを用いることにより、エチレン系重合体を経済的かつ安定的に製造することができる。また、本発明のエチレン重合用触媒は、水素等の連鎖移動剤を用いることなく高MFRのエチレン系重合体を製造可能とし、ヘキセン等のα−オレフィンコモノマーとの優れた共重合性により少量のコモノマーで効率的にエチレン・α−オレフィン共重合体を製造可能とするので、この点においても経済性に優れている。更に、本発明の方法で製造されるエチレン系重合体粒子は、微粉が少なく球形の極めて優れた粒子性状を有するため、重合パウダー粒子の乾燥、保管サイロへの空送、各種添加剤との混合等が容易であり、また、ペレット化工程を経ることなく直接成形機へ供給することも可能であるため、重合反応工程はもちろんのこと、その後の工業生産工程上において経済的効果を発揮する。
したがって、このようなエチレン系重合体粒子を安定にかつ効率的に製造する本発明のエチレン重合用触媒の工業的価値は極めて大きい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン重合用触媒、それを用いたエチレン系重合体の製造方法、並びにそれによって得られるエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子に関し、さらに詳しくは、重合活性、触媒粒子性状に優れ、かつ、パウダー粒子性状、溶融流動性に優れたエチレン系重合体粒子を製造することが可能なエチレン重合用触媒、それを用いたエチレン系重合体の製造方法、並びにそれによって得られるエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種産業分野において、プラスチック製のパイプ、フィルム、射出成型体、及び中空成形体が盛んに用いられるようになった。特に安価・軽量であり、成形加工性、低温強度、耐薬品性、リサイクル性に優れる等の理由からポリエチレン系樹脂(エチレン系重合体)が広範に用いられている。
一般に、エチレン系重合体は、重合触媒を用いたエチレンの単独重合によって、あるいは、エチレンとα−オレフィン等のコモノマーとの共重合によって製造されるが、用途に応じた適切な特性を有するエチレン系重合体を製造するために、様々な重合触媒が開発されている。現在、主要な重合触媒として、ラジカル重合触媒、チーグラー触媒、メタロセン触媒と並んで、フィリップス触媒が重用されている。
フィリップス触媒は、クロム化合物をシリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア等の無機酸化物担体に担持させ、非還元性雰囲気で賦活することにより、担持されたクロム元素の少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であるが、比較的広い分子量分布と長鎖分岐構造に起因する優れた溶融加工特性を有するエチレン系重合体を生成することから、特に中空成形分野において重要なエチレン重合用触媒となっている。
【0003】
フィリップス触媒に用いられる無機酸化物担体に対するこれまでの研究成果を紹介すると、金属酸化物のヒドロゲルを微粉砕して得られる微粉末を担体とすることにより、重合活性やメルトインデックス特性、更には生成ポリマー粒子性状が改善されたクロム触媒が特許文献1〜2に開示されている。また、特許文献3には、酸化物担体を微粉砕することにより粒子形状を制御されたフィリップス触媒が開示されている。
しかしながら、これらの方法により得られたエチレン重合用触媒は、粉砕による粒子形状や微細構造の破壊が生じることを避けることはできないため、触媒粒子性状やα−オレフィン共重合性が悪かったり、重合活性や生成ポリマー粒子性状の改善が不十分であったりして、改善の余地が大きかった。
【0004】
また、特許文献4〜6には、結合剤によりゆるく結合させた固体担体粒子の粗凝集体粒子や、微粉砕したシリカゲルをケイ酸ナトリウムの硫酸水溶液に再分散させて噴霧乾燥して得られる球状粒子や、シリカ微細粒子の集合体から形成された球状二次粒子からなるシリカマクロポア粒子を担体として用いたオレフィン重合用触媒の例が開示されている。
しかしながら、これらの方法により得られたエチレン重合用触媒は、固体担体粒子や原料シリカゲルの粒子性状や微細構造の特性が凝集後の形状や微細構造にそのまま受け継がれるため、粒子の不均一性が生じることが避けられず、触媒粒子性状や生成ポリマー粒子性状が必ずしも良好なものではなく、また、α−オレフィン共重合性や重合活性の改善への寄与が不十分であった。
【0005】
さらに、特許文献7には、アルコキシシランの加水分解によって合成された均一なヒドロゲルを水熱処理することにより得られるシリカ粒子を担体として用いたオレフィン重合用触媒の例が開示されている。
しかしながら、この方法により得られたエチレン重合用触媒は、均一なヒドロゲル由来部分の材料強度が大きすぎることによる担体粒子の不均一性が生じることが避けられず、触媒粒子性状や生成ポリマー粒子性状が必ずしも良好なものではなく、また、α−オレフィン共重合性や重合活性の改善への寄与が不十分であったり、高価なアルコキシシランを出発原料とする故、経済的に不利であった。
【0006】
こうした状況下に、従来のフィリップス触媒のもつ問題点を解消し、重合活性、触媒粒子性状に優れ、かつ、パウダー粒子性状、溶融流動性に優れたエチレン系重合体粒子を製造することが可能なエチレン重合用触媒の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−80414号公報
【特許文献2】特表2007−520610号公報
【特許文献3】特表2003−517506号公報
【特許文献4】特表2000−513402号公報
【特許文献5】特開2001−122612号公報
【特許文献6】特開2006−273667号公報
【特許文献7】特開2003−192713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記した従来技術の問題点に鑑み、重合活性、触媒粒子性状に優れ、かつ、パウダー粒子性状、溶融流動性に優れたエチレン系重合体粒子を製造することが可能なエチレン重合用触媒、それを用いたエチレン系重合体の製造方法、並びにそれによって得られるパウダー粒子性状、溶融流動性に優れたエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、無機酸化物担体にクロム化合物を担持したクロム触媒において特定の粒子形状と微細構造を有するエチレン重合用触媒を調製したところ、重合活性や触媒粒子性状等に優れているだけでなく、パウダー粒子性状、溶融流動性に優れたエチレン系重合体粒子を製造することが可能であるという良好な特性が発現されることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記無機酸化物担体(a)は、担体内部よりも担体表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明において、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて、触媒粒子の断面におけるケイ素元素含量を測定した際に、触媒粒子表面のケイ素元素検出量が該触媒粒子内部に存在するケイ素元素より多いことを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、触媒粒子の最外周部領域における平均ケイ素濃度(x)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(x/z)が、下記の[式1]を満たすことを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
1.05≦x/z≦4.00 [式1]
(但し、x、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の最外周部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向の幅4μmに渡って形成される領域をいい、一方、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
【0014】
また、本発明の第5の発明によれば、第3または第4の発明において、触媒粒子の外周下層部領域における平均ケイ素濃度(y)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(y/z)が、下記の[式2]を満たすことを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
1.05≦y/z≦4.00 [式2]
(但し、y、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の外周下層部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向への距離5μm〜8μmの間の幅4μmに渡って形成される領域をいい、一方、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
【0015】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、前記無機酸化物の主成分は、シリカであることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0016】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、前記無機酸化物担体(a)は、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を反応させてシリカゾルとし、固形物を分離、乾燥して得られたものであることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0017】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、前記無機酸化物担体(a)の細孔分布は、細孔径50nm以下の細孔容積が0.30〜1.6ml/gであることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0018】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、前記無機酸化物担体(a)の細孔分布は、細孔径2.0乃至6.0nmの細孔容積が0.005ml/g以上0.10ml/g未満であることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0019】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、前記無機酸化物担体(a)は、BET比表面積が100m2/g以上600m2/g未満であることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
【0020】
また、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明において、前記無機酸化物担体(a)の粒径分布は、粒子径が250μm以上の粒子が全体の0.3重量%以下、粒子径が10μm以下の粒子が全体の4.0重量%以下、平均粒径の1/10倍の粒径以下の粒子が全体の1.0重量%以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のエチレン重合用触媒が提供される。
【0021】
さらに、本発明の第12の発明によれば、第1〜11のいずれかの発明に係るエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合又はエチレンとα−オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
【0022】
また、本発明の第13の発明によれば、第12の発明において、前記α−オレフィンは、炭素数が3〜8であることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
【0023】
さらに、本発明の第14の発明によれば、第12または第13の発明に係る方法により製造されるエチレン系重合体であって、温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜100g/10分、密度が0.935〜0.960g/cm3であることを特徴とするエチレン系重合体が提供される。
【0024】
また、本発明の第15の発明によれば、第12または第13の発明に係る方法により製造されるエチレン系重合体であって、温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜15g/10分、密度が0.940〜0.955g/cm3であることを特徴とするエチレン系重合体が提供される。
【0025】
さらに、本発明の第16の発明によれば、第12または第13の発明に係る方法により製造されることを特徴とするエチレン系重合体粒子が提供される。
【0026】
また、本発明の第17の発明によれば、第16の発明において、第14または第15の発明に規定する特性を有することを特徴とするエチレン系重合体粒子が提供される。
【0027】
また、本発明の第18の発明によれば、第16または第17の発明において、重合反応終了後の状態における嵩密度が0.35〜0.55g/cm3であり、かつ、篩法で測定された平均粒径が100μm〜5mmであり、目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の1.0重量%以下であることを特徴とするエチレン系重合体粒子が提供される。
【0028】
また、本発明の第19の発明によれば、第18の発明において、重合反応終了後の状態における嵩密度が0.38〜0.55g/cm3であることを特徴とするエチレン系重合体粒子が提供される。
【0029】
また、本発明の第20の発明によれば、第18または第19の発明において、重合反応終了後の状態における目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の0.7重量%以下であることを特徴とするエチレン系重合体粒子が提供される。
【発明の効果】
【0030】
本発明のエチレン重合用触媒は、重合活性と触媒粒子性状に優れ、これを用いることにより、経済性と生産プロセス安定性に極めて優れたエチレン系重合体の製造方法を提供することが可能である。また、本発明のエチレン重合用触媒は、水素等の連鎖移動剤を用いることなく高MFRのエチレン系重合体を製造可能とし、ヘキセン等のα−オレフィンコモノマーとの優れた共重合性により少量のコモノマーで効率的にエチレン・α−オレフィン共重合体を製造可能とするので、この点においても経済性に優れている。更に、本発明の方法で製造されるエチレン系重合体粒子は、微粉が少なく球形の極めて優れた粒子性状を有するため、重合パウダー粒子の乾燥、保管サイロへの空送、各種添加剤との混合等が容易であり、また、ペレット化工程を経ることなく直接成形機へ供給することも可能であるため、重合反応工程はもちろんのこと、その後の工業生産工程上において経済的効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】本発明のエチレン重合用触媒(実施例1)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図1B】本発明のエチレン重合用触媒(実施例1)に係るEPMA分析の他の例(粒子外、最外周部領域、外周下層部領域、中央部領域)を示す写真およびその解析結果を示すグラフである。
【図2】本発明のエチレン重合用触媒(実施例8)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図3】本発明のエチレン重合用触媒(実施例10)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図4】本発明ではないエチレン重合用触媒(比較例1)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図5A】本発明ではないエチレン重合用触媒(比較例13)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図5B】本発明のエチレン重合用触媒(比較例13)に係るEPMA分析の他の例(粒子外、最外周部領域、外周下層部領域、中央部領域)を示す写真およびその解析結果を示すグラフである。
【図6】本発明ではないエチレン重合用触媒(比較例15)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図7】本発明ではないエチレン重合用触媒(比較例16)に係るEPMA分析の例を示す写真である。
【図8】本発明のエチレン系重合体粒子(実施例1)を示す写真である。
【図9】本発明のエチレン系重合体粒子(実施例6)を示す写真である。
【図10】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例1)を示す写真である。
【図11】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例2)を示す写真である。
【図12】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例3)を示す写真である。
【図13】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例6)を示す写真である。
【図14】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例10)を示す写真である。
【図15】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例11)を示す写真である。
【図16】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例13)を示す写真である。
【図17】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例14)を示す写真である。
【図18】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例15)を示す写真である。
【図19】本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例16)を示す写真である。
【図20】本発明のエチレン系重合体粒子(実施例1〜11)と本発明ではないエチレン系重合体粒子(比較例1〜16)とを共重合性の観点から対比した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とするエチレン重合用触媒、該エチレン重合用触媒を用いてなるエチレン系重合体の製造方法、さらには、該エチレン系重合体の製造方法によって得られるエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子に係るものである。以下、本発明を各項目ごとに説明する。
【0033】
[I]本発明のエチレン系重合用触媒
本発明のエチレン系重合用触媒は、無機酸化物担体にクロム化合物を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とする。
ところで、無機酸化物担体にクロム化合物を担持し、非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム元素が6価となるクロム触媒は、一般にフィリップス触媒として知られており公知である。この触媒の概要は、M.P.McDaniel著,Advances in Catalysis,Volime 33,47頁,1985年,Academic Press Inc.; M.P.McDaniel著,Handbook of Heterogeneous Catalysis,2400頁,1997年,VCH; M.B.Welchら著,Handbook of Polyolefins:Synthesis and Properties,21頁,1993年,Marcel Dekker等の文献に記載されている。
【0034】
本発明でエチレン重合用触媒として使用されるクロム触媒は、上記フィリップス触媒を改良することによって、後述するような、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在するという従来に無い特徴的な粒子構造を保有せしめたものである。この特徴的な粒子構造の形成は、使用する無機酸化物担体の粒子構造、粒子内細孔構造等を高度に制御することにより達成されたものである。以下に詳細を説明する。
【0035】
(a)無機酸化物担体
本発明で用いられる無機酸化物担体としては、周期律表第2〜14族の金属の酸化物であり、好ましくは第2、4、5、7、8、13、14族の金属の酸化物であり、更に好ましくは第2、4、13又は14族の金属の酸化物である。
具体的な例としては、マグネシア、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ、トリア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、又はこれらの混合物が挙げられる。なかでも、シリカ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナが好ましい。無機酸化物担体が複合酸化物あるいは混合物の場合、該複合酸化物あるいは混合物の主成分はシリカであることが好ましい。この場合、主成分とは金属元素として50モル%、より好ましくは60モル%、更に好ましくは70モル%を超えて存在する金属酸化物のことをいう。シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナの場合、シリカ以外の金属成分としてチタン、ジルコニウム又はアルミニウム原子が0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、さらに好ましくは1〜5重量%含有されたものが用いられる。
これらのクロム触媒に適する担体の製法、物理的性質及び特徴は、C.E.Marsden著,Preparation of Catalysts,Volume V,215頁,1991年,Elsevier Science Publishers; C.E.Marsden著,Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,Volume 21,193頁,1994年等の文献に記載されている。本発明では、上記無機酸化物担体に20重量%を上限に、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸チタニウム等のリン酸塩や、同硫酸塩、同硝酸塩、同ハロゲン化物等を含有することもある。
本発明によるエチレン重合用触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在するという従来に無い特徴的な粒子構造を保有するものである。この特徴的な粒子構造の形成は、使用する無機酸化物担体の粒子構造、粒子内細孔構造等を高度に制御することにより達成されたものである。
【0036】
本発明において用いられる無機酸化物担体は、比表面積が100m2/g以上、好ましくは200m2/g以上、より好ましくは280m2/g以上、さらに好ましくは350m2/g以上となるよう選択することが好ましい。比表面積が100m2/g未満の場合は、分子量分布が狭くかつ長鎖分岐が多くなることと関係すると考えられるが、製造されるエチレン系重合体の耐久性、耐衝撃性がともに低下する。比表面積の上限値は特に制限されないが、通常は1000m2/g未満、好ましくは700m2/g未満、更に好ましくは600m2/g未満である。
また、50nm以下の細孔の細孔容積としては、0.3〜3.0cm3/g、好ましくは0.7〜2.0cm3/g、さらに好ましくは1.0〜1.6cm3/gの範囲のものが用いられる。更に、2.0〜6.0nmの細孔の細孔容積としては、0.000〜0.20cm3/g、好ましくは0.005〜0.10cm3/g、さらに好ましくは0.01〜0.08cm3/gの範囲のものが用いられる。50nm以下の細孔容積が0.3cm3/gより小さいと、生成するエチレン系重合体のHLMFRが小さくなりすぎて溶融流動性が不足して溶融成形に支障をきたしたり、長鎖分岐が増えすぎてエチレン系重合体強度が低下したり、担体強度が強くなり過ぎて、エチレン系重合体中への触媒破片の分散が不十分となって製品外観を悪化させたりするので好ましくない。また50nm以下の細孔容積が3.0cm3/gより大きいと、担体強度が弱くなるので破砕による触媒粒子微粉やエチレン系重合体微粉の増加が生じたり、長鎖分岐が減ってしまうのでエチレン系重合体の溶融成形加工性が低下したりするので好ましくない。より大きなHLMFRを示すエチレン系重合体の製造のために特に好ましい50nm以下の細孔容積は1.2〜1.5cm3/gである。更に、2.0〜6.0nmの細孔の細孔容積が0.20cm3/gより大きいと、HLMFRの小さいエチレン系重合体成分の生成量が多くなって溶融成形に支障をきたすので好ましくない。
【0037】
また、本発明において用いられる無機酸化物担体の平均細孔径は、好ましくは7.0〜30nm、更に好ましくは8.0〜25nmであり、α−オレフィン共重合性に特段に優れたエチレン重合用触媒を得るためには14〜20nmであることが特に好ましい。平均細孔径が7.0nmより小さいと、重合活性やHLMFR、α−オレフィン共重合性が低下してしまうので好ましくない。平均細孔径が30nmより大きいと、細孔径分布が広がってしまう傾向が顕著となり、低分子量成分の生成量が増加してエチレン系重合体強度を低下させたりするので好ましくない。
【0038】
平均粒径としては、一般的なクロム触媒に用いられる担体と同様10〜200μm、好ましくは20〜150μm、さらに好ましくは30〜100μmの範囲のものが用いられる。上記範囲を外れると、ESCR及び耐衝撃性のバランスがとりにくくなる。また、優れた粒子性状のエチレン重合用触媒を得るためには、更には、後述する微粉が少なく球形の極めて優れた粒子性状を有するエチレン系重合体粒子を得るためには、前記無機酸化物担体は、径が250μm以上の粒子が全体の0.3重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることが更に好ましく、検出されないことが特に好ましい。また、径が10μm以下の粒子は全体の4.0重量%以下であることが好ましく、2.0重量%以下であることが更に好ましく、1.0重量%以下であることが特に好ましい。更には、平均粒径の1/10倍の粒径以下の粒子が全体の1.0重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることが更に好ましく、検出されないことが特に好ましい。
【0039】
上述のような無機酸化物担体を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、その一つとして、凝集成長法で合成した非晶質シリカ等の定形粒子とシリカヒドロゲルを微粉砕して得られた非晶質シリカ微粒子の混合スラリーを噴霧造粒して製造する方法が挙げられる。この製造方法によると、該定形粒子を主成分とするコアと該微粒子を主成分とするシェルから構成される非晶質シリカ系複合粒子が得られることが、例えば特開平11−60230号公報等に詳細に記載されている。
【0040】
コアを形成する粒子としては、凝集成長法で合成される非晶質シリカ等の定形粒子が好ましいが、それ以外にも、非晶質シリカ微粒子との混合スラリー形成と噴霧造粒に支障の無い範囲内で粒子形状を保持している粒子であればよく、例えば、従来公知の製法によるシリカゲル粉砕品を噴霧造粒して粒子形状を賦形した粒子も使用可能である。
凝集成長法による定形粒子は、ケイ酸アルカリ水溶液と酸水溶液の混合液を放置して生成する粒状ゾルとして得られるが、このとき、凝集成長剤としてカルボキシメチルセルロース、アクリルアミド系重合体等の水溶性高分子を添加したり、更に凝集成長助剤として、上記以外にも水溶性高分子や、水溶性無機電解質である金属鉱産塩あるいは有機酸塩を使用することも出来る。助剤として使用可能な水溶性高分子としては、例えば、澱粉、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビヤガム、トラガントガム、プリテイシュガム、クリスタルガム、セネガールガム、PVA、メチールセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレングリコール、等のノニオン系の高分子を使用することができ、また、水溶性無機電解質としては、アルカリ金属塩、例えば塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等のアルカリ金属の鉱酸塩;アルカリ土類金属塩、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム等の鉱酸塩;塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸チタニル等の他の水溶性金属塩を使用することができる。
【0041】
析出条件としては、一般に0〜100℃、好ましくは10〜40℃の温度で、1〜50時間、好ましくは3〜20時間程度の放置が適している。一般に、温度が低い程、析出粒子の粒径が大きくなり、温度が高い程析出粒子の粒径が小さくなるので、温度を制御することにより、粒状物の粒径を制御可能である。該定形粒子の粒径は電子顕微鏡で測定して、0.1〜20μm、好ましくは0.3〜15μm、さらに好ましくは0.5〜10μmの数平均粒径を有するものである。また、ゾル形成時に、ケイ酸アルカリ以外にアルミナゾルやアルミニウムイオン等の他金属源を共存させることにより、複合酸化物粒子を得ることも出来る。更には上記以外の従来公知の方法により入手可能な無機酸化物粒子、例えば酸処理ゼオライト、イオン交換焼成ゼオライト、各種ケイ酸塩、粘土等の粒子を使用することが出来る。
【0042】
シェルを形成する非晶質シリカ微粒子は、シリカゾルをそのまま使用することも出来るが、取り扱いの利便上、シリカゲルの湿式粉砕物を用いるのが好ましい。シリカゾルあるいはシリカゲルは、通常従来公知の方法であるケイ酸アルカリ水溶液と酸水溶液との反応物が用いられる。ゾル形成時に、複合酸化物微粒子を得ることを目的として、ケイ酸アルカリ以外にアルミナゾルやアルミニウムイオン等の他金属源を共存させることも出来る。
湿式粉砕により、2次粒子の粒径が4μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2.5μm以下の微細ヒドロゲルスラリーを準備し、非晶質シリカ系複合粒子の製造に用いられる。
上記の定形粒子と微粒子のスラリーを噴霧造粒することにより、本発明のエチレン重合用触媒の担体として好適な無機酸化物担体を製造する。噴霧造粒に供するスラリーとしては、該定形粒子と微粒子がSiO2基準のシリカ重量比が好ましくは20:80〜80:20、更に好ましくは30:70〜70:30で混合されたスラリーが用いられる。
【0043】
無機酸化物担体の粒子構造は、噴霧造粒時のノズル径、噴霧速度、原料濃度、原料組成等、従来公知の噴霧造粒条件を適宜選択することによって調整することが可能であり、無機酸化物の粒子表層と内部の濃度の大小は、該定形粒子と該微粒子の混合量比、スラリー濃度比によって制御が可能であり、該微粒子の含有量を大きくすると表層部の厚みを厚くなり、小さくすると厚みは薄くなり、該定形粒子の粒子サイズを大きくすると表層部の厚みは薄くなり、小さくすると厚みは厚くなる傾向にある。
【0044】
また、無機酸化物担体の比表面積、細孔容積、平均細孔径等の粒子内構造である細孔性状は、原料として使用する該定形粒子及び該微粒子の細孔性状を変化させることによって各々独立に制御することが可能である。該定形粒子及び該微粒子の細孔性状については従来公知の様々な方法が知られている。こうして得られた無機酸化物担体はそのまま使用しても良いし、従来公知の分級操作により好ましい粒径に調整したものを使用することも可能である。 また、上述のような無機酸化物担体を製造する方法の別の方法の一つとして、適切に選択された界面活性剤の共存下において生成せしめたヒドロゲルを利用する方法も考えられ、これについては例えば特開2004−143026号公報等に詳細に記載されている。
【0045】
本発明の無機酸化物担体は、クロム元素を担持するために次項で説明するクロム化合物で処理する工程に処する前に、加熱処理を行っておくことが、製造するエチレン系重合体の機械的物性をより良いものとするために好ましい。これは、該加熱処理により、生成するエチレン系重合体に主成分よりも高分子量のポリマー成分が付与されるためである。
加熱処理は、通常窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下あるいは気流下、100〜900℃、好ましくは150〜700℃、更に好ましくは200℃〜650℃の温度で実施される。
【0046】
(b)クロム化合物
本発明で上記の無機酸化物担体(a)にクロム元素を担持するために使用されるクロム化合物としては、担持後に非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム元素が6価となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、酸化クロム、クロムのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、クロム酸塩、重クロム酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、クロム−1,3−ジケト化合物、クロム酸エステル等が挙げられる。具体的には三酸化クロム、三塩化クロム、塩化クロミル、クロム酸カリウム、クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、トリス(2−エチルヘキサノエート)クロム、クロムアセチルアセトネート、ビス(tert−ブチル)クロメート等が挙げられる。なかでも三酸化クロム、酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートが好ましい。酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートのような有機基を有するクロム化合物を用いた場合でも、後に述べる非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分は燃焼し、最終的には三酸化クロムを用いた場合と同様に無機酸化物担体表面の水酸基と反応し、少なくとも一部のクロム元素は6価となってクロム酸エステルの構造で固定化されることが知られている(V.J.Ruddickら著,J.Phys.Chem.,Volume100,11062頁,1996年; S.M.Augustineら著,J.Catal.,Volume 161,641頁,1996年)。
【0047】
(c)担持
無機酸化物担体へのクロム化合物の担持は、含浸、溶媒留去、昇華等の公知の方法によって行うことができ、使用するクロム化合物の種類によって適当な方法を用いればよい。担持するクロム化合物の量は、クロム元素として担体に対して0.2〜2.0重量%、好ましくは0.3〜1.7重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0048】
本発明では、無機酸化物担体にクロム化合物が担持されたクロム触媒に、さらにフッ素化合物を含有させることがある。
フッ素化合物の含有方法(フッ素化)は、溶媒中でフッ素化合物溶液を含浸させた後、
溶媒を留去する方法、あるいは溶媒を用いずにフッ素化合物を昇華させる方法など、公知の方法によって行うことができ、使用するクロム化合物の種類によって、適宜好適な方法を用いればよい。無機酸化物担体にクロム化合物を担持してからフッ素化合物を含有させてもよいし、フッ素化合物を含有させてからクロム化合物を担持してもよいが、クロム化合物を担持してからフッ素化合物を含有させる方が好ましい。
フッ素化合物の含有量は、フッ素元素の含有量として、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜8重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
【0049】
フッ素化合物としては、フッ化水素HF、フッ化アンモニウムNH4F、ケイフッ化アンモニウム(NH4)2SiF6、ホウフッ化アンモニウムNH4BF4、一水素二フッ
化アンモニウム(NH4)HF2、ヘキサフルオロリン酸アンモニウムNH4PF6、テ
トラフルオロホウ酸HBF4のようなフッ素含有塩類が用いられ、なかでも、ケイフッ化アンモニウム、一水素二フッ化アンモニウムが好ましい。
これらを、水又はアルコールなどの有機溶媒に溶解させた後、クロム触媒に含浸させるのが均一性の観点から好ましいが、固体のままクロム触媒と混合するだけでもよい。溶解して含浸させる場合は、表面張力による細孔体積の縮小(shrinkage)を抑えるために、アルコールなどの有機溶媒を用いるのがより好ましい。また、溶媒を用いた場合は、風乾、真空乾燥、スプレードライなど、既知の方法によって、溶媒を飛ばして乾燥させる。あるいは、賦活工程の間にフッ素化合物を投入する方法でもよい。ただし、この場合、フッ素化合物の固体をガス中で流動化させるので、均一性の観点からできるだけ微細な粒子状のフッ素化合物固体を用いることが好ましい。
【0050】
(d)賦活
クロム化合物の担持後に焼成して活性化処理を行う。焼成活性化は、水分を実質的に含まない非還元性雰囲気、例えば酸素又は空気下で行なうことができる。この際、不活性ガスを共存させてもよい。好ましくは、モレキュラーシーブス等を流通させ十分に乾燥した空気を用い、流動状態下で行う。焼成活性化は通常400〜900℃、好ましくは430〜800℃、より好ましくは450〜650℃、さらに好ましくは490〜600℃の温度にて30分〜48時間、好ましくは1時間〜24時間、さらに好ましくは2時間〜12時間行う。この焼成活性化により無機酸化物担体に担持されたクロム化合物のクロム元素が少なくとも一部は6価に酸化されて担体上に化学的に固定される。焼成活性化を400℃未満で行うと重合活性が低下し、また分子量分布が広くなって耐久性は向上するものの耐衝撃性が低下する。焼成活性化を、800℃を越える温度で行うと、分子量分布が狭くなって耐衝撃性は向上するものの耐久性が低下し、さらに900℃を超える温度で行うと、シンタリングが起こり、活性が低下する。
【0051】
このようにして、本発明で使用するエチレン重合用触媒が得られるが、本発明のエチレン系重合体の製造方法に際しては、クロム化合物担持前又はクロム化合物担持後の焼成活性化前にチタンテトライソプロポキシドのようなチタンアルコキシド類、ジルコニウムテトラブトキシドのようなジルコニウムアルコキシド類、アルミニウムトリブトキシドのようなアルミニウムアルコキシド類、トリアルキルアルミニウムのような有機アルミニウム類、メチルアルモキサンのようなアルモキサン類、ジアルキルマグネシウムのような有機マグネシウム類などに代表される金属アルコキシド類もしくは有機金属化合物やケイフッ化アンモニウムのようなフッ素含有塩類等を添加してエチレン重合活性、α−オレフィンとの共重合性や得られるエチレン系重合体の分子量、分子量分布を調節する公知の方法を併用してもよい。これらの添加は、2種類以上を用いることももちろん可能である。
【0052】
これらの金属アルコキシド類もしくは有機金属化合物は非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分は燃焼し、チタニア、ジルコニア、アルミナ又はマグネシアのような金属酸化物に酸化されて触媒中に含まれる。またフッ素含有塩類の場合は無機酸化物担体がフッ素化される。
これらの方法は、C.E.Marsden著,Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,Volume 21,193頁,1994年; T.Pullukatら著,J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.,Volume 18,2857頁,1980年; M.P.McDanielら著,J.Catal.,Volume 82,118頁,1983年等の文献に記載されている。
【0053】
本発明においては、焼成活性化したクロム触媒に不活性炭化水素溶媒中で有機アルミニウム化合物(好ましくは、トリアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムアルコキシド及び/又はアルモキサン化合物)、有機マグネシウム化合物(好ましくは、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム等のジアルキルマグネシウム)、有機亜鉛化合物(好ましくは、ジエチル亜鉛、メチルエチル亜鉛等のジアルキル亜鉛)を担持し、さらに溶媒を除去・乾燥して、有機アルミニウム化合物担持クロム触媒、有機マグネシウム化合物担持クロム触媒、有機亜鉛化合物担持クロム触媒として用いることもできる。これら有機金属処理は2種類以上を用いることももちろん可能である。
次に、上記有機金属処理で使用される有機金属がアルミニウムである場合について、以下に具体的に例示する。
【0054】
トリアルキルアルミニウムは、下記一般式(A)
R’1R’2R’3Al (A)
(式中、R’1、R’2、R’3は、炭素原子数1〜18のアルキル基であり、同一であ
っても異なっていてもよい。)で示される化合物である。
トリアルキルアルミニウムの具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等が挙げられ、なかでもトリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムが好ましい。
【0055】
本発明においては、焼成活性化したクロム触媒に不活性炭化水素溶媒中でアルキルアルミニウムアルコキシド化合物を担持し、さらに、溶媒を除去・乾燥して、得られたアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を、重合触媒として用いることもできる。
【0056】
アルキルアルミニウムアルコキシド化合物としては、アルキルアルミニウムジアルコキシド及びジアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられ、好ましくはジアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられる。
ジアルキルアルミニウムアルコキシドの具体例としては、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジn−ブチルアルミニウムメトキシド、ジi−ブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジn−ブチルアルミニウムエトキシド、ジi−ブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムn−プロポキシド、ジエチルアルミニウムn−プロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−プロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムn−プロポキシド、ジメチルアルミニウムi−プロポキシド、ジエチルアルミニウムi−プロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムi−プロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−プロポキシド、ジメチルアルミニウムn−ブトキシド、ジエチルアルミニウムn−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジメチルアルミニウムi−ブトキシド、ジエチルアルミニウムi−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムi−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−ブトキシド、ジメチルアルミニウムt−ブトキシド、ジエチルアルミニウムt−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムt−ブトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド等が挙げられる。これらの中でも、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムn−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムエトキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジエチルアルミニウムi−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムエトキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−ブトキシドが好適である。
【0057】
アルキルアルミニウムアルコキシド化合物の担持量は、クロム原子に対するアルキルアルミニウムアルコキシド化合物のモル比が0.01〜100、好ましくは0.1〜20、更に好ましくは0.3〜2.0である。
【0058】
(e)エチレン重合用触媒の解析
上記(a)〜(d)の手順により得られる本発明のエチレン重合用触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在するという従来に無い特徴的な粒子構造を保有している。この特徴的な粒子構造は、得られた該触媒をある断面でカットして、その断面についての該無機酸化物を主に構成する金属元素含量、好ましくはケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウムの原子含量、より好ましくはケイ素元素含量を、電子線プローブマイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer;以下、単に「EPMA」と略称することもある。)により、測定することにより顕在化することが可能である。なお、EPMAは、以下のような原理を持った装置である。
【0059】
細く収束し加速させた電子線を試料表面にあて、そこから出てくる特性X線を、X線分光器で測定する。特性X線は、各元素の原子核を取り巻く内殻電子の遷移によって発生するX線で、元素に固有な幾つかの波長(エネルギー)としてあらわれる。よって特性X線の波長から元素の種類が、その強度から元素の含有量がわかる。
なお、本発明の触媒粒子において、無機酸化物が触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に多く集中して存在する領域は、触媒粒子の断面であって、その長径が30μm以上の断面(粒子の平均粒径が30μmより小さい場合は、該平均粒径以上の長径を有する断面)を見た場合に、触媒粒子の表面から内部に向かって、1μm以上、好ましくは2μm以上、更に好ましくは5μm以上、長径の2/5以下、好ましくは長径の1/3以下、更に好ましくは長径の1/4以下である。この範囲に無機酸化物が多く集中することにより、本発明の著しい効果を発揮することができる。
【0060】
触媒粒子において、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に多く集中して存在する無機酸化物の量の割合は、上記で規定した断面を見た場合、単位面積当たりの無機酸化物量として、触媒粒子内部に対する触媒粒子表面の割合が1.001倍以上、好ましくは1.05倍以上、より好ましくは1.1倍以上、さらに好ましくは1.15倍以上、特に好ましくは1.2倍以上であり、かつ、20倍以下、好ましくは10倍以下、より好ましくは4倍以下、さらに好ましくは3倍以下、特に好ましくは2倍以下である。
無機酸化物量の触媒粒子内部に対する触媒粒子表面の割合が1.001倍未満の場合、重合活性や触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状や溶融流動性が悪化したりするので好ましくない。また、無機酸化物量の触媒粒子内部に対する触媒粒子表面の割合が20倍より大きい場合、触媒粒子強度が不足して、触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状が悪化したりするので好ましくない。
本発明の触媒粒子において、上記で規定した触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に多く集中して存在する領域は、上記で規定した断面を見た場合、その外周部の70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上を占める。該領域は、厳密に完全なリング状に分布していることが最も好ましいことはいうまでもない。
【0061】
ここで、触媒粒子内部および触媒粒子表面の単位面積当たりの無機酸化物量を上記EPMA測定法から導出する方法として、ケイ素元素を対象とする場合の一例を以下に具体的に説明しておく。
EPMA法においては、測定対象元素の含有量が直接測定されるのではなく、該元素のX線強度が測定されて、試料中のケイ素のX線強度に関するマッピング画像が得られる。その際に、このX線強度に関するマッピング画像を、ケイ素濃度に関するマッピング画像に変換するためには、測定されたX線強度を該元素濃度に換算する必要がある。X線強度の元素濃度への換算は、対象試料の組成に近い組成を持つ複数の標準試料を用いてX線強度と該濃度との関係を予め検量線として求めるいわゆる検量線法で行う。
【0062】
本発明において、このようにして得られる触媒粒子断面におけるケイ素濃度分布に関するカラーマッピング画像を粒子形状およびケイ素濃度情報に関する画像処理を行い、上述の触媒粒子内部および触媒粒子表面の内部構造を、更に最外周部領域、外周下層部領域、および、中央部領域に分けて、各3領域の平均ケイ素濃度を各々x、y、z(単位;重量%)として、触媒粒子構造の特徴を解析、設計を行った結果、エチレン重合用触媒としての更なる性能向上に至った。
【0063】
すなわち、本発明のオレフィン重合用触媒は、その触媒粒子の断面における最外周部領域と該触媒粒子の中央部領域のケイ素濃度(各々x、z;単位 重量%)の比(x/z)が下記の[式1]を満たすことが好ましい。
1.05≦x/z≦4.00 [式1]
ここで、触媒粒子の最外周部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向の幅4μmに渡って形成される領域をいい、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。より好ましくは、1.10≦x/z≦3.00である。x/zが1.05未満の場合、重合活性や触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状や溶融流動性が悪化したりするので好ましくない。また、x/zが4.00より大きい場合、触媒粒子強度が不足して、触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状が悪化したりするので好ましくない。
【0064】
また、本発明のオレフィン重合用触媒は、その触媒粒子の断面における外周下層部領域と該触媒粒子の中央部領域のケイ素濃度(各々y、z;単位 重量%)の比(y/z)が下記の[式2]を満たすことも好ましい。
1.05≦y/z ≦4.00 [式2]
ここで、触媒粒子の外周下層部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向への距離5μm〜8μmの間の幅4μmに渡って形成される領域をいい、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。より好ましくは、1.10≦y/z≦3.00である。y/zが1.05未満の場合、重合活性や触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状や溶融流動性が悪化したりするので好ましくない。また、y/zが4.00より大きい場合、触媒粒子強度が不足して、触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状が悪化したりするので好ましくない。
【0065】
更に、本発明のオレフィン重合用触媒は、上記x、y、zを、各領域内においてケイ素濃度1.5重量%刻みで識別されるエリアの面積分率の平均値、すなわち、最外周部領域の平均ケイ素濃度xを、低ケイ素濃度エリアからスタートして面積分率が累計10%、50%、90%となるケイ素濃度として各々「10%ケイ素濃度x10;単位 重量%」、「50%ケイ素濃度x50」、「90%ケイ素濃度x90」と定義し、同様に、外周下層部領域の平均ケイ素濃度yを、各々「10%ケイ素濃度y10」、「50%ケイ素濃度y50」、「90%ケイ素濃度y90」と定義し、中央部領域の平均ケイ素濃度zを、各々「10%ケイ素濃度z10」、「50%ケイ素濃度z50」、「90%ケイ素濃度z90」と定義したとき、触媒粒子の外周部と中央部のケイ素濃度比を詳細に表現した下記の[式1a]〜[式1c]、[式2a]〜[式2c]の少なくともいずれか1つ以上を満たす場合が、より好ましい。
1.20≦x10/z10≦4.00 [式1a]
1.05≦x50/z50≦4.00 [式1b]
1.05≦x90/z90≦4.00 [式1c]
1.05≦y10/z10≦4.00 [式2a]
1.02≦y50/z50≦4.00 [式2b]
1.02≦y90/z90≦4.00 [式2c]
さらに、下記の[式1a’]〜[式1c’]、[式2a’]〜[式2c’]の少なくともいずれか1つ以上を満たす場合が、更に好ましい。
1.30≦x10/z10≦3.00 [式1a’]
1.10≦x50/z50≦2.00 [式1b’]
1.10≦x90/z90≦2.00 [式1c’]
1.10≦y10/z10≦2.00 [式2a’]
1.05≦y50/z50≦2.00 [式2b’]
1.08≦y90/z90≦2.00 [式2c’]
さらに、下記の[式1a”]〜[式1c”]、[式2a”]〜[式2c”]の少なくともいずれか1つ以上を満たす場合が、更により好ましい。
1.50≦x10/z10≦2.00 [式1a”]
1.24≦x50/z50≦1.50 [式1b”]
1.15≦x90/z90≦1.50 [式1c”]
1.15≦y10/z10≦1.60 [式2a”]
1.10≦y50/z50≦1.50 [式2b”]
1.10≦y90/z90≦1.50 [式2c”]
上記触媒粒子の外周部と中央部のケイ素濃度比が好ましい範囲より小さいと、重合活性や触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状や溶融流動性が悪化したりするので好ましくない。また、該ケイ素濃度比が好ましい範囲より大きいと、触媒粒子強度が不足して、触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状が悪化したりするので好ましくない。
【0066】
本発明のエチレン重合用触媒は、上述のように、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在するという従来に無い特徴的な粒子構造を保有することにより、特段大きな比表面積を保有していないにもかかわらず、担持されたクロム原子がエチレン等のモノマーと効率的に接触することが可能となり、更には重合の進行に伴い生成するエチレン系重合体に活性点が遮蔽されてしまうことがないので、極めて高い重合活性を維持することが可能となったものである。HLMFRの大きなエチレン系重合体を得たり、共重合性を改善するために、細孔容積を大きくしたり、平均細孔径を大きくすることは従来から知られていたものの、重合活性が低下してしまう欠点があったが、本発明のエチレン重合用触媒を使用すると重合活性を犠牲にすることなく、HLMFRや共重合性を向上させることがはじめて可能となったのである。
また、本発明の触媒を用いると、担体が適度な強度を有するため、重合の初期段階においては、触媒粒子は比較的割れにくく効率的に重合が進行し、さらに重合が進行した段階においては、触媒粒子の適度な割れが発生して、細か過ぎる重合体微粉粒子の発生が抑制される。
【0067】
[II]本発明のエチレン系重合体の製造方法
本発明のエチレン系重合体の製造方法は、上記[I]で得られたエチレン重合用触媒を使用して実施され、具体的には、上記[I]で得られたエチレン重合用触媒を使用してエチレンを単独重合させるか、あるいは、エチレンとα−オレフィンを共重合させることによって実施される。
α−オレフィンとしては、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜12、更に好ましくは3〜8のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等を使用することができる。また、改質を目的とする場合のジエンとの共重合も可能である。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。なお、重合の際のコモノマー含有率は、任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%である。
【0068】
上記のエチレン重合用触媒を用いて、エチレン系重合体の製造を行うに際しては、スラリー重合、溶液重合のような液相重合法あるいは気相重合法など、いずれの方法を採用することができるが、特にスラリー重合法が好ましく、パイプループ型反応器を用いるスラリー重合法、オートクレーブ型反応器を用いるスラリー重合法、いずれも用いることができる。なかでもパイプループ型反応器を用いるスラリー重合法が好ましい(パイプループ型反応器とこれを用いるスラリー重合の詳細は、松浦一雄・三上尚孝編著、「ポリエチレン技術読本」、148頁、2001年、工業調査会に記載されている)。
【0069】
液相重合法は、通常炭化水素溶媒中で行う。炭化水素溶媒としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素の単独又は混合物が用いられる。気相重合法は、不活性ガス共存下にて、流動床、攪拌床等の通常知られる重合法を採用でき、場合により重合熱除去の媒体を共存させる、いわゆるコンデンシングモードを採用することもできる。
液相重合法における重合温度は、一般的には0〜300℃であり、実用的には20〜200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは70〜150℃、特に好ましくは70〜110℃である。反応器中の触媒濃度及びエチレン濃度は重合を進行させるのに十分な任意の濃度でよい。
例えば、触媒濃度は、液相重合の場合反応器内容物の重量を基準にして約0.0001〜約5重量%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、液相重合の場合反応器内容物の重量を基準にして約1%〜約10%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、気相重合の場合、全圧として0.1〜10MPaの範囲とすることができる。また、水素を共存させて重合を行うことも可能であり、耐久性、耐衝撃性、剛性のバランスに優れたエチレン系重合体を製造するためには、水素とエチレンを特定の比率とした条件下で重合させるのがよい。水素は、一般的には分子量を調節するためのいわゆる連鎖移動剤としての働きを有するとされているが、水素とエチレンを特定の比率とした条件下で重合させることにより、耐久性を向上させ、且つ耐衝撃性及び剛性のバランスを向上させることができる。水素の共存によりかかる効果が得られる理由の詳細は不明であるが、特定の分子量域に適度な長さ又は数の長鎖分岐を導入する働きを有するため、あるいはエチレンとα−オレフィンとの共重合による短鎖分岐の分布を変える働きを有するためと考えられる。
【0070】
重合方法としては、反応器を一つ用いてエチレン系重合体を製造する単段重合だけでなく、生産量を向上させるため、又は分子量分布やコモノマー組成分布を広げるため、少なくとも二つの反応器を連結させて多段重合を行うこともできる。多段重合の場合、二つの反応器を連結させ、第一段の反応器で重合して得られた反応混合物を続いて第二段の反応器に連続して供給する二段重合が好ましい。第一段の反応器より第二段の反応器への移送は連結管を通して、第二段反応器からの重合反応混合物の連続的排出により行われる。
【0071】
第一段反応器及び第二段反応器で同一の重合条件で製造してもよいし、あるいは第一段反応器及び第二段反応器で同一のHLMFR、密度のポリエチレン系樹脂を製造してもよいが、分子量分布を広げる場合には、両反応器で製造するポリエチレン系樹脂の分子量に差をつけるのが好ましい。第一段反応器で高分子量成分、第二段反応器で低分子量成分を、又は第一段反応器で低分子量成分、第二段反応器で高分子量成分をそれぞれ製造するいずれの製造方法でもよいが、第一段反応器で高分子量成分、第二段反応器で低分子量成分を製造する方法の方が、第一段から第二段への移行にあたり中間の水素のフラッシュタンクを必要としないため生産性の面でより好ましい。
【0072】
第一段においては、エチレン単独又は必要に応じてα−オレフィンとの共重合を、水素濃度のエチレン濃度に対する重量比(Hc/ETc)、重合温度又は両者により分子量を調節しながら、またα−オレフィン濃度のエチレン濃度に対する重量比で密度を調節しながら重合反応を行う。
第二段においては、第一段から流れ込む反応混合物中の水素及び同じく流れ込むα−オレフィンがあるが、必要に応じてそれぞれ新たな水素、α−オレフィンを加えることができる。従って、第二段においても、水素濃度のエチレン濃度に対する重量比(Hc/ETc)、重合温度又は両者により分子量を調節しながら、またα−オレフィン濃度のエチレン濃度に対する重量比により密度を調節しながら重合反応を行うことができる。触媒や有機アルミニウム化合物のような有機金属化合物についても、第一段から流れ込む触媒により二段目で引き続き重合反応を行うだけでなく、第二段で新たに触媒、有機アルミニウム化合物のような有機金属化合物又はその両者を供給してもよい。
【0073】
二段重合によって製造する場合の高分子量成分と低分子量成分の比率としては、高分子量成分が10〜90重量部、低分子量成分が90〜10重量部、好ましくは高分子量成分が20〜80重量部、低分子量成分が80〜20重量部、さらに好ましくは高分子量成分が30〜70重量部、低分子量成分が70〜30重量部である。また、高分子量成分のHLMFRは、0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜50g/10分、低分子量成分のHLMFRは、10〜1000g/10分、好ましくは10〜500g/10分である。
【0074】
[III]本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子
本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、上記[II]のエチレン系重合体の製造方法によって製造される。該エチレン系重合体はエチレン単独重合体の場合もあるし、コモノマーとしてプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどのα−オレフィンを1種類以上含むエチレン・α−オレフィン共重合体の場合もあり、この時得られるエチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含量は15mol%以下、好ましくは10mol%以下が望ましい。α―オレフィンとしては好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、さらに好ましくは1−ヘキセンが好適に用いられる。また上述のように少量のジエン類やスチレン類等の改質用モノマーを含有することもできる。
【0075】
本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、HLMFRが0.1〜1000g/10分、好ましくは0.5〜500g/10分、密度が0.900〜0.980g/cm3、好ましくは0.920〜0.970g/cm3である。該エチレン系重合体は、ESCRと耐衝撃性が高くバランスに優れるので、特にブロー成形製品、なかんずく大型ブロー成形製品で大きな効果を発揮する。ブロー成形製品用のエチレン系重合体のHLMFRは、1〜100g/10分、特に大型ブロー成形製品用のエチレン系重合体は、1〜15g/10分である。ブロー成形製品用のエチレン系重合体の密度は、0.935〜0.960g/cm3、特に大型ブロー成形製品用のエチレン系重合体の密度は、0.940〜0.955g/cm3である。得られたエチレン系重合体は、混練することも好ましい。混練は単軸又は二軸の押出機又は連続式混練機を用いて行うことができる。また得られるエチレン系共重合体は、常法によりブロー成形することができる。また、本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、いわゆる伸長粘度のストレインハードニングパラメーターλmaxが1.05〜1.50であることもより良い成形性を保有するためには好ましい。
【0076】
HLMFRが0.1g/10分未満であると、パリソン(ブロー成形において、成形器の口金から押し出されたパイプ状の溶融ポリマー;金型内で空気圧により膨張させる以前の状態)の押出成形時に押出量が不足し、成形不安定な状態となり実用的でないし、また、1000g/10分を越えてもパリソンの形成が溶融粘度及び溶融張力の不足のため不安定となり実用的でない。HLMFRは、重合温度や水素濃度の制御などの方法で調整することができる。例えば、重合温度を高くする、又は水素濃度を高くすることによりHLMFRを高くすることができる。ここでHLMFRは、JIS K−7210に準拠し、温度190℃、荷重21.60kgの条件で測定したものである。
密度が0.900g/cm3未満であると、中空プラスチック成形品の剛性が不足し、0.980g/cm3を越えると中空プラスチック成形品の耐久性が不足する。密度は、α−オレフィンの種類や含有量の制御などの方法で調整することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂中のα−オレフィン含有量を低くする(重合時のα−オレフィン添加量を低くする)、又は同じ含有量であれば、炭素数の小さいα−オレフィンを用いることにより、密度を高くすることができる。密度は、JIS K−7112に準拠し、ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/分の速度で降温し厚み2mmtのシートを成形し、このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、密度勾配管に入れ測定したものである。
【0077】
本発明のポリエチレン系樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が好ましくは25以上、さらに好ましくは27以上のものである。上限は特に限定されないが、50までが一般的である。
【0078】
ところで、分子量分布(Mw/Mn)は、下記のGPC測定を行ない、数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)を求めて分子量分布(Mw/Mn)を算出し求められる。
[ゲル透過クロマトグラフ(GPC)測定条件]
装 置:Waters社製150Cモデル、
カラム:昭和電工社製Shodex−HT806M、
溶 媒:1,2,4−トリクロロベンゼン、
温 度:135℃、
単分散ポリスチレンフラクションを用いてユニバーサル評定。
【0079】
MwのMnに対する比率(Mw/Mn)で示される分子量分布(Mw/Mnが大きいほど分子量分布が広い)については、「サイズ排除クロマトグラフィー(高分子の高速液体クロマトグラフィー)」(森定雄著,共立出版,96頁)に記載された分子量と検出器感度の式に、n−アルカン及びMw/Mn≦1.2の分別直鎖ポリエチレン系樹脂のデータを当てはめて、次式で示される分子量Mの感度を求めた後、サンプル実測値の補正を行なった。
分子量Mの感度=a+b/M
(式中、a、bは定数で、a=1.032、b=189.2)
【0080】
分子量分布は、触媒の賦活温度、重合温度の制御などの手法、特に賦活温度の制御で調整することができる。即ち、賦活温度を高くすれば分子量分布が狭くなり、逆に賦活温度を低くすれば分子量分布は広くなる。また、その効果は賦活温度の場合より小さいが、重合温度の制御によっても調整することができる。即ち、重合温度を高くすれば分子量分布はやや狭くなり、逆に重合温度を低くすれば分子量分布はやや広くなる。
得られたエチレン系重合体は、次いで混練することも好ましい。単軸又は二軸の押出機又は連続式混練機を用いて行われる。上記の方法により製造されたエチレン系重合体は、1種類でも複数種類を混合して使用してもよく、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とすることができるが、本発明で製造されるエチレン系重合体粒子は、そのきわめて良好な粉体粒子性状を活用することにより、ペレット化を経ることなく、直接各種成形機に供給して成形を行って所望の成形品とすることも可能であり、ペレット化の工程を省略することが可能であるので省エネルギー化の観点で非常に好ましい。
【0081】
ここで、本発明で製造されるエチレン系重合体粒子とは、上述のエチレン重合用触媒を使用してエチレン系重合体の製造を重合反応槽内で行った直後の重合粒子形態を保持したままの状態をいい、更に詳述すると、重合反応終了後に溶媒等を乾燥留去させる程度に必要な150℃程度の温度、好ましくは130℃程度の温度、更に好ましくは110℃程度の温度より高温で処理されることの無い状態のエチレン系重合体粒子のことをいい、その粒子嵩密度が0.32〜0.60g/cm3、好ましくは0.35〜0.55g/cm3、更に好ましくは0.38〜0.50g/cm3であって、また、篩法で測定された平均粒径が100μm〜5mm、好ましくは200μm〜3mm、更に好ましくは300μm〜2mmであり、目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の1.0重量%以下、好ましくは0.7重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下であることが好ましい。下限は0重量%であることはいうまでもない。粒子嵩密度が0.32g/cm3より小さいと、同一体積当たりの製品重量が少なくなるので、成形等の処理効率が悪くなり、逆に粒子嵩密度が0.60g/cm3より大きいと、重合槽や乾燥機等での攪拌による分散が悪くなるので好ましくない。また、篩法で測定された平均粒径が100μmより小さいと気流輸送時の拡散による汚染が問題となったり、静電気による器壁への付着が酷くなり、5mmより大きいと各種添加剤との混合に支障をきたすので好ましくない。目開き40μmの篩を通過する粒子が全体の1.0重量%より多くなると、気流輸送時の微粉拡散による汚染が問題となったり、静電気による器壁への付着が酷くなるので好ましくない。
【0082】
本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子には、必要に応じて、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、パール顔料、偏光パール顔料、架橋剤、発泡剤、中和剤、熱安定剤、結晶核剤、無機又は有機充填剤、難燃剤等の公知の添加剤を配合することができる。
添加剤として、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上適宜併用することができる。充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等が使用可能である。いずれの場合でも、上記ポリエチレン系樹脂に、必要に応じ各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。
【0083】
[IV]中空プラスチック成形品の製造、及び製品或いは用途
本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、特に限定されず、従来からの公知の多層中空成形機を用いて押出ブロー成形法により成形することができる。例えば、複数の押出機で各層の構成樹脂を加熱溶融させた後、多層のダイにより溶融パリソンを押出し、次いでこのパリソンを金型で挟み、パリソンの内部に空気を吹き込むことにより、多層の中空プラスチック成形品が製造される。
さらに、本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子には、必要に応じて目的を損なわない範囲で、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、有機あるいは無機系顔料、充填剤、無機フィラー、紫外線防止剤、分散剤、耐候剤、架橋剤、発泡剤、難燃剤などの公知の添加剤を添加することができる。
また、本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、具体的には、製品としては、燃料タンク等のタンク、灯油缶、ドラム缶、薬品用容器、農薬用容器、溶剤用容器、各種プラスチックボトル等の製品、特に自動車用燃料タンクとして供され、或いは本発明の中空プラスチック成形品の用途としては、燃料タンク等のタンク、灯油缶、ドラム缶、薬品用容器、農薬用容器、溶剤用容器、各種プラスチックボトル等が挙げられ、特に自動車用燃料タンクとして用いられるのが最も好ましい。
【実施例】
【0084】
以下においては、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明し、本発明の卓越性と本発明の構成における優位性を実証するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において使用した測定方法は、以下の通りである。
【0085】
(1)物性測定のためのポリマー前処理
オートクレーブ重合で得られたポリエチレン系樹脂の物性評価東洋精機製作所社製プラストグラフ(ラボプラストミルME25;ローラー形状はR608型)を用い、添加剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガノックスB225(リン系安定剤のIRGAFOS 168とフェノール系酸化防止剤のIRGANOX 1010の1/1ブレンド物)を0.2重量%添加し、窒素雰囲気下、回転数毎分40回転にて、180℃で7分間混練した。
【0086】
(a)ハイロードメルトフローレート(HLMFR):
JIS K−7210(2004年版)の附属書A表1−条件Gに従い、試験温度190℃、公称荷重21.60kgにおける測定値をHLMFRとして示した。
(b)密度:
JIS K−7112(2004年版)に従い測定した。
【0087】
(c)分子量分布(Mw/Mn):
生成エチレン系重合体について下記の条件でゲル透過クロマトグラフ(GPC)を行ない、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求めて分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
[ゲル透過クロマトグラフ測定条件]
装 置:Waters 150Cモデル、
カラム:昭和電工社製Shodex−HT806M、
溶 媒:1,2,4−トリクロロベンゼン、
温 度:135℃、
単分散ポリスチレンフラクションを用いてユニバーサル評定。
MwのMnに対する比率(Mw/Mn)で示される分子量分布(Mw/Mnが大きいほど分子量分布が広い)については、「サイズ排除クロマトグラフィー(高分子の高速液体クロマトグラフィー)」(森定雄著,共立出版,96頁)に記載された分子量と検出器感度の式にn−アルカン及びMw/Mn≦1.2の分別直鎖ポリエチレンのデータを当てはめて、次式で示される分子量Mの感度を求めた後、サンプル実測値の補正を行なった。
分子量Mの感度=a+b/M
(式中、a、bは定数で、a=1.032、b=189.2)
【0088】
(2)触媒構造の分析
(a)電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)による触媒分析:
賦活後のクロム触媒の試料を樹脂包埋後研磨し、Au蒸着後、島津製作所社製EPMA−1600でマッピング分析を行った。EPMAによるマッピングのX線強度は、測定対象元素(Si−Kα線)のX線プロファイルを測定し、ピーク波長を求め、この波長でX線強度を測定した。カラー画像は強度を16段階に色分けし、表示される。
【0089】
マッピング条件
加速電圧:15kV
ビーム電流:50nA
ビーム径:1μm
分光結晶:PET(Pentaerythritol)
測定時間:50msecまた100msec
測定面積:512μm×512μmまたは256μm×256μm
以上のようにして、EPMAによって触媒分析を行った結果を図1〜7に示す。
【0090】
得られたケイ素X線強度を、ケイ素濃度分布画像に変換するための上述検量線は、次のように作成した。
すなわち、標準試料としてポアがなく密度一定で均一なソーダ石灰シリカガラス(Na2O・K2O−CaO・MgO−Al2O3−SiO2系)に着色のためにクロムを添加した市販の色ガラスを用いた。色ガラス中のケイ素とクロムの均一性については、EPMAで分析し偏在のないことを確認した。色ガラス2点(標準試料)の測定は、EPMAマッピング分析と同様の前処理、測定条件で、各20箇所測定を行い、その平均値をX線強度とした。ケイ素含有量0重量%は測定対象元素のX線プロファイルを測定しバックグラウンド波長を求め、前述同様の測定条件で平均X線強度を求め使用した。また、濃度は色ガラス2点の化学分析を行い、含有量を決定した。このX線強度と濃度から検量線を作成し、マッピング分析データを濃度データに変換し、濃度範囲を1.5重量%刻みで16段階に色分けしカラー画像化した。
【0091】
[標準試料]
市販の色ガラス(Si;32.2重量%、Cr;0.11重量%)
市販の色ガラス(Si;31.5重量%、Cr;0.24重量%)
[化学分析方法]
ケイ素:試料をアルカリ溶融し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)にて測定により求めた。
クロム:試料を酸分解し、ICP−AESにて測定により求めた。
【0092】
こうして得られたケイ素濃度分布画像を画像処理する手法は、以下の(i)〜(v)の順の通りである。
(i)EPMA画像(1μm/画素)(ケイ素濃度1.5重量%刻み16段階で色分けしたカラー画像)を入力した。
(ii)ケイ素濃度3.0重量%以下を粒子外として認識させ、粒子を1画素縮小させた。
(iii)粒子内部をユークリッド法による距離変換処理をした。
(iv)外周から4μm領域を「粒子最外周部領域」、5〜8μm領域を「粒子外周下層部領域」、それより内部を「粒子中央部領域」とした。
(v)「粒子最外周部領域」、「粒子外周下層部領域」、「粒子中央部領域」のそれぞれの領域での16階調のEPMA像の面積割合を求めた。なお、これら画像処理は、(株)日本ローパー製Image Pro Plusを用いた。
【0093】
上記の各領域内における面積分率の累計%ケイ素濃度は、1.5重量%刻みの増分で区分けされた各区間(すなわち、0〜1.5重量%区間、1.5〜3.0重量%区間、3.0〜4.5重量%区間、・・・、18.0〜19.5重量%区間、19.5〜21.0重量%区間、21.0重量%以上区間)の平均ケイ素濃度を各区間中間濃度(すなわち、0.75重量%、2.25%、3.75重量%、・・・、18.75重量%、20.25重量%、21.75重量%)と定義し、該区間の面積分率をX−Y軸に累計プロットした場合の10%累計点、50%累計点、90%累計点の濃度を、各々「10%ケイ素濃度;単位 重量%」、「50%ケイ素濃度」、「90%ケイ素濃度」として算出した。
【0094】
(b)レーザー回折散乱法による触媒粒子の粒径分布の測定:
装置名 MICROTRAC MT3000II型(日機装)、屈折率:粒子1.81、分散媒1.33(0.2重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液)、超音波照射40W・120秒の条件にて測定した。
【0095】
(c)細孔構造の分析:
<比表面積、細孔容積>
各試料は加熱、減圧下で十分な前処理を行った後、カンタークローム社製・オートソーブ3B型を用いて、液体窒素温度下で窒素の吸着等温線測定を行った。得られた吸着等温線の相対圧0.95での吸着量から細孔容積を、BET多点法解析を実施して比表面積を算出した。更に、細孔構造を円筒と仮定することで、式(1)に従い平均細孔径を算出した。この式でDaveは平均細孔径を、Vtotalは細孔容積を、SBETはBET多点法による比表面積を示す。
Dave=4Vtotal/SBET 式(1)
更にBJH法解析によりメソ孔分布を求め、指定範囲の細孔容量を算出した。
【0096】
(3)エチレン系重合体粒子の分析
(a)かさ密度:
金属シリンダー法により測定を行った。
(b)篩粒径測定:
内径75mmの標準篩7個(目開き44μm、88μm、177μm、350μm、710μm、1410μm、2830μm)に製品粒子6.0gを入れ、10分間振とうして測定される篩下50%積算値をもって平均粒径とした。
【0097】
[実施例1]
(1)クロム触媒前駆体の調製及び使用したシリカゲルの細孔分布測定
攪拌装置付き1Lフラスコにシリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST191201)50gとイオン交換水200mLを加え、回転数50rpmで攪拌しながら、オイルバスにて50℃に加温した。ここへ、別途調製した酢酸クロム(III)(和光純薬製)2.2gをイオン交換水70mLに溶解した水溶液全量を添加し、回転数を150rpmに上げて4時間攪拌を継続することによりクロム化合物をシリカゲルによく含浸させた。次に、オイルバス温度を155℃として水を全量留去した後、更に120℃で一晩乾燥して、緑白色を呈した流動性のよいクロム触媒前駆体粒子を得た。反応に提供したシリカゲルの細孔分析結果を表1、2に示す。
【0098】
(2)クロム触媒前駆体の賦活及びクロム触媒の分析
上記(1)で得たクロム触媒前駆体粒子15gを、多孔板目皿付き、管径3cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速6cm/sにて賦活温度550℃で12時間焼成活性化を行った。こうして6価のクロム原子を含有することを示すオレンジ色のクロム触媒を得た。こうして得られた触媒をEPMA分析により触媒断面におけるケイ素元素含量を測定した結果を図1Aに示す。図1Aより、得られた触媒の触媒表面のケイ素元素検出量が触媒内部に存在するケイ素元素より多いことが明らかであり、すなわち、該触媒内部よりも該触媒表面にシリカ粒子が多く集中して存在するクロム触媒であった。得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図1Aに示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を図1Bおよび表3に示す。
【0099】
(3)エチレン・1−ヘキセン共重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに上記(2)で得られたクロム触媒70mg及びイソブタン0.7Lを仕込み、内温を100℃まで昇温した。ここに更に1−ヘキセン5.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保持することにより重合を開始した。重合を開始してからエチレン消費速度が40g/hを超えるまでに有した時間を誘導期と定義すると、この時の誘導期は10分であった。誘導期を過ぎて更に42分間重合を継続した後、内容ガスを系外に放出することにより重合を終了した。こうして流動性のよいポリエチレン粒子211gを得た。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4300g/g/hであった。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図8に示す。
【0100】
[実施例2]
実施例1(2)で賦活温度を450℃とした以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0101】
[実施例3]
実施例1(2)で賦活温度を450℃とし、実施例1(3)で重合温度を103℃とした以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0102】
[実施例4]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを事前に窒素気流下200℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0103】
[実施例5]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを事前に窒素気流下200℃1時間、更に400℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0104】
[実施例6]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図9に示す。
【0105】
[実施例7]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを事前に窒素気流下200℃1時間、更に800℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0106】
[実施例8]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST210601)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図2に示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
【0107】
[実施例9]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST210601)を事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0108】
[実施例10]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST210602)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図3に示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
【0109】
[実施例11]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST210602)を事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。さらに、EPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
【0110】
[比較例1]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(富士シリシア化学社製;商品名
CARiACT P−6)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図4に示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図10に示す。
【0111】
[比較例2]
比較例1のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間で予備乾燥した後、更に600℃にて6時間焼成処理を行ったものを用いた以外は、比較例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図11に示す。
【0112】
[比較例3]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(富士シリシア化学社製;商品名
CARiACT P−8)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図12に示す。
【0113】
[比較例4]
比較例3で賦活温度を450℃とし、重合温度を103℃とした以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0114】
[比較例5]
比較例3のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0115】
[比較例6]
比較例3のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間
、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図13に示す。
【0116】
[比較例7]
比較例6で賦活温度を630℃とした以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0117】
[比較例8]
比較例3のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間
、更に800℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0118】
[比較例9]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(富士シリシア化学社製;商品名
CARiACT P−10)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0119】
[比較例10]
比較例9のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間
、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例9と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図14に示す。
【0120】
[比較例11]
(1)シリカ粒子の合成
ケイ酸ナトリウムと硫酸の反応で生成したシリカヒドロゲル分散液を乾燥後、湿式粉砕して得た平均粒径約3μmのシリカ微粒子分散液(固形分濃度15重量%)に、ケイ酸ナトリウムと硫酸を加え、この複合分散液を噴霧造粒することにより、球状のシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子の粒径分布と細孔構造分析結果を表1、2に示した。
(2)クロム触媒の製造とエチレン・1−ヘキセン共重合
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、上記(1)で得られたシリカ粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図15に示す。
【0121】
[比較例12]
比較例11(2)で賦活温度を450℃とし、重合温度を103℃とした以外は、比較例11と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
【0122】
[比較例13]
比較例11(2)のシリカ粒子の代わりに、該シリカ粒子を事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例11と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図5Aに示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を図5Bおよび表3に示す。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図16に示す。
【0123】
[比較例14]
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(ダブリュー・アール・グレース社製;商品名 C−952)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図17に示す。
【0124】
[比較例15]
比較例14のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例14と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図6に示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図18に示す。
【0125】
[比較例16]
市販のクロム触媒前駆体(グレース社製HA30W)を、実施例1(2)(3)と同様にして、賦活及びエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。同一賦活温度及び重合温度の実施例の重合活性、HLMFR、共重合性を上回ることはなく、実施例のクロム触媒に比べて、劣っていた。更に、触媒粒子及びエチレン重合体粒子に粗粉や微粉が多く、重合体粒子のかさ密度も低かった。得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図7に示すが、得られた触媒のケイ素原子検出量は触媒内においてほぼ一定しており、すなわち、シリカに関して非常に均一性の高いクロム触媒であった。これは実施例のクロム触媒とは異なる傾向であった。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図19に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
(実施例と比較例の結果の対照による考察)
上記表1、2より明らかなように、本発明の要件を満たす実施例1〜11では、調製されたクロム触媒はいずれも優れた重合活性と触媒粒子性状を示した。そしてそのクロム触媒を用いて製造されたエチレン系重合体とエチレン系重合体粒子は、パウダー粒子性状、溶融流動性の点で優れた特性を示した。
また、上記表3より明らかなように、実施例1(実施例1〜7は全て同じ担体から製造した触媒の例)、実施例8、実施例10、および実施例11のクロム触媒は、いずれも、粒子の外周部領域と中央部領域の平均ケイ素濃度の比が全て1より大きいことから、これらの触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在する触媒であると判定できるが、一方、比較例1(比較例1〜10は全て同種の担体から製造した触媒の例)、比較例15(比較例14、15は同じ担体から製造した触媒の例)、および比較例16のクロム触媒はいずれも、粒子の外周部領域と中央部領域の平均ケイ素濃度の比が1を下回る傾向が大きいことから、これらの触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在していない触媒であり、また、比較例13(比較例11〜13は同じ担体から製造した触媒の例)のクロム触媒は、粒子の外周部領域と中央部領域の平均ケイ素濃度の比が1を上回る傾向が弱いことから、この触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在する傾向が実施例の触媒よりも小さいと判定できる。
本発明の要件を満たす実施例1〜11では、調製されたクロム触媒はいずれも優れた1−ヘキセン共重合性を示した。すなわち、図20に示すように、実施例(図中の添字1〜11)の触媒で生成したエチレン・1−ヘキセン共重合体は、比較例(図中の添字c1〜c16)のエチレン・1−ヘキセン共重合体に比べ、HLMFR見合いの密度(D)が小さかった。なお、実施例2、実施例3、実施例5、実施例6、実施例7の値は密度が高い傾向を有するように見えるが、賦活温度が低温であったり、重合温度が低かったり、事前高温乾燥した無機酸化物担体を使用しているためであり、対応する比較例の値と比較するとやはり共重合性が優れていた。
【0130】
一方、比較例1、比較例2で使用したシリカは、実施例のシリカより遥かに大きい比表面積を有するので、高い重合活性が期待されたが、同一賦活温度及び重合温度の実施例(例えば実施例1、4、5、6)の重合活性を上回ることはなく、また、HLMFRが非常に低いという欠点を有していた。また、特段に低密度のポリエチレンが得られてはおらず、1−ヘキセン共重合性に優れていることもなかった。更に、エチレン重合体粒子に微粉が多かった。
そして、比較例1で得られたクロム触媒は、図4と表3より、得られた触媒の触媒表面のケイ素元素検出量よりも触媒内部に存在するケイ素原子の方が多い傾向にあることが明らかであり、すなわち、該触媒表面よりも該触媒内部にシリカ粒子が多く集中して存在するクロム触媒であった。これは実施例のクロム触媒とは逆の傾向であった。
【0131】
また、比較例3、比較例5、比較例6で使用したシリカは、実施例8のシリカとほぼ同じ細孔容積と比表面積を有しているが、同一乾燥温度、賦活温度、重合温度の実施例(例えば実施例8)の重合活性を上回ることはなく、また、HLMFRが低いという欠点を有していた。また、特段に低密度のポリエチレンが得られてはおらず、1−ヘキセン共重合性に優れていることもなかった。更に、シリカには微粉が少なかったにもかかわらず、エチレン重合体粒子に微粉が多かった。
なお、該比較例のシリカ種で実施例と同程度の高HLMFRの重合体を得るには、実施例2と比較例4の比較でわかるように重合温度を3℃以上高くするか、実施例9と比較例7の比較でわかるように賦活温度を80℃程度高くする必要があるので、実施例の触媒が高HLMFRを得るのに経済的である。
【0132】
また、該比較例9、10で使用したシリカは、実施例10、実施例11のシリカとほぼ同じ細孔容積、平均細孔径、比表面積を有しているが、同一乾燥温度、賦活温度及び重合温度の実施例の重合活性、HLMFR、共重合性を上回ることはなく、実施例のクロム触媒に比べて、劣っていた。
また、比較例11、比較例12、比較例13で使用したシリカは、同一乾燥温度、賦活温度及び重合温度の実施例(例えば実施例1、3、6)に匹敵する重合活性を有していたが、HLMFRが低いという欠点を有していた。また、特段に低密度のポリエチレンが得られてはおらず、1−ヘキセン共重合性に優れていることもなかった。更に、触媒粒子及びエチレン重合体粒子に微粉がやや多く、重合体粒子のかさ密度も低かった。
そして、比較例13で得られたクロム触媒は、図5と表3より、ケイ素元素検出量が多い領域と少ない領域を有していたが、それらの分布が実施例の触媒に見られたように明らかに表面や内部に偏在している訳ではなく、粒子内にほぼ均一に分散して存在するクロム触媒であった。これは実施例のクロム触媒とは異なる傾向であった。
【0133】
また、比較例14、比較例15で使用したシリカは、実施例10、実施例11のシリカと同程度の細孔容積、平均細孔径、比表面積を有しているが、同一乾燥温度の実施例の重合活性、HLMFR、共重合性を上回ることはなく、実施例のクロム触媒に比べて、劣っていた。更に、触媒粒子及びエチレン重合体粒子に粗粉や微粉が多かった。
そして、比較例15で得られたクロム触媒は、図6と表3より、得られた触媒のケイ素元素検出量は触媒内においてほぼ一定か内部にやや多く検出されており、すなわち、シリカに関して非常に均一性の高いクロム触媒であった。これは実施例のクロム触媒とは異なる傾向であった。
以上から、本発明における構成の要件の合理性と有意性、及び本発明の従来技術に対する優越性が明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0134】
以上から明らかなように、本発明のエチレン重合用触媒は、重合活性と触媒粒子性状に優れているため、これを用いることにより、エチレン系重合体を経済的かつ安定的に製造することができる。また、本発明のエチレン重合用触媒は、水素等の連鎖移動剤を用いることなく高MFRのエチレン系重合体を製造可能とし、ヘキセン等のα−オレフィンコモノマーとの優れた共重合性により少量のコモノマーで効率的にエチレン・α−オレフィン共重合体を製造可能とするので、この点においても経済性に優れている。更に、本発明の方法で製造されるエチレン系重合体粒子は、微粉が少なく球形の極めて優れた粒子性状を有するため、重合パウダー粒子の乾燥、保管サイロへの空送、各種添加剤との混合等が容易であり、また、ペレット化工程を経ることなく直接成形機へ供給することも可能であるため、重合反応工程はもちろんのこと、その後の工業生産工程上において経済的効果を発揮する。
したがって、このようなエチレン系重合体粒子を安定にかつ効率的に製造する本発明のエチレン重合用触媒の工業的価値は極めて大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とするエチレン重合用触媒。
【請求項2】
前記無機酸化物担体(a)は、担体内部よりも担体表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とする請求項1に記載のエチレン重合用触媒。
【請求項3】
電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて、触媒粒子の断面におけるケイ素元素含量を測定した際に、触媒粒子表面のケイ素元素検出量が該触媒粒子内部に存在するケイ素元素より多いことを特徴とする請求項1又は2に記載のエチレン重合用触媒。
【請求項4】
触媒粒子の最外周部領域における平均ケイ素濃度(x)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(x/z)が、下記の[式1]を満たすことを特徴とする請求項3に記載のエチレン重合用触媒。
1.05≦x/z≦4.00 [式1]
(但し、x、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の最外周部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向の幅4μmに渡って形成される領域をいい、一方、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
【請求項5】
触媒粒子の外周下層部領域における平均ケイ素濃度(y)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(y/z)が、下記の[式2]を満たすことを特徴とする請求項3又は4に記載のエチレン重合用触媒。
1.05≦y/z≦4.00 [式2]
(但し、y、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の外周下層部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向への距離5μm〜8μmの間の幅4μmに渡って形成される領域をいい、一方、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
【請求項6】
前記無機酸化物の主成分は、シリカであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
【請求項7】
前記無機酸化物担体(a)は、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を反応させてシリカゾルとし、固形物を分離、乾燥して得られたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
【請求項8】
前記無機酸化物担体(a)の細孔分布は、細孔径50nm以下の細孔容積が0.30〜1.6ml/gであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
【請求項9】
前記無機酸化物担体(a)の細孔分布は、細孔径2.0乃至6.0nmの細孔容積が0.005ml/g以上0.10ml/g未満であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
【請求項10】
前記無機酸化物担体(a)は、BET比表面積が100m2/g以上600m2/g未満であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
【請求項11】
前記無機酸化物担体(a)の粒径分布は、粒子径が250μm以上の粒子が全体の0.3重量%以下、粒子径が10μm以下の粒子が全体の4.0重量%以下、平均粒径の1/10倍の粒径以下の粒子が全体の1.0重量%以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合又はエチレンとα−オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法。
【請求項13】
前記α−オレフィンは、炭素数が3〜8であることを特徴とする請求項12に記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法により製造されるエチレン系重合体であって、温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜100g/10分、密度が0.935〜0.960g/cm3であることを特徴とするエチレン系重合体。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の方法により製造されるエチレン系重合体であって、温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜15g/10分、密度が0.940〜0.955g/cm3であることを特徴とするエチレン系重合体。
【請求項16】
請求項12又は13に記載の方法により製造されることを特徴とするエチレン系重合体粒子。
【請求項17】
請求項14又は請求項15に記載の特性を有することを特徴とする請求項16に記載のエチレン系重合体粒子。
【請求項18】
重合反応終了後の状態における嵩密度が0.35〜0.55g/cm3であり、かつ、篩法で測定された平均粒径が100μm〜5mmであり、目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の1.0重量%以下であることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載のエチレン系重合体粒子。
【請求項19】
重合反応終了後の状態における嵩密度が0.38〜0.55g/cm3であることを特徴とする請求項18に記載のエチレン系重合体粒子。
【請求項20】
重合反応終了後の状態における目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の0.7重量%以下であることを特徴とする請求項18又は19に記載のエチレン系重合体粒子。
【請求項1】
無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とするエチレン重合用触媒。
【請求項2】
前記無機酸化物担体(a)は、担体内部よりも担体表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とする請求項1に記載のエチレン重合用触媒。
【請求項3】
電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて、触媒粒子の断面におけるケイ素元素含量を測定した際に、触媒粒子表面のケイ素元素検出量が該触媒粒子内部に存在するケイ素元素より多いことを特徴とする請求項1又は2に記載のエチレン重合用触媒。
【請求項4】
触媒粒子の最外周部領域における平均ケイ素濃度(x)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(x/z)が、下記の[式1]を満たすことを特徴とする請求項3に記載のエチレン重合用触媒。
1.05≦x/z≦4.00 [式1]
(但し、x、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の最外周部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向の幅4μmに渡って形成される領域をいい、一方、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
【請求項5】
触媒粒子の外周下層部領域における平均ケイ素濃度(y)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(y/z)が、下記の[式2]を満たすことを特徴とする請求項3又は4に記載のエチレン重合用触媒。
1.05≦y/z≦4.00 [式2]
(但し、y、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の外周下層部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向への距離5μm〜8μmの間の幅4μmに渡って形成される領域をいい、一方、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
【請求項6】
前記無機酸化物の主成分は、シリカであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
【請求項7】
前記無機酸化物担体(a)は、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を反応させてシリカゾルとし、固形物を分離、乾燥して得られたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
【請求項8】
前記無機酸化物担体(a)の細孔分布は、細孔径50nm以下の細孔容積が0.30〜1.6ml/gであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
【請求項9】
前記無機酸化物担体(a)の細孔分布は、細孔径2.0乃至6.0nmの細孔容積が0.005ml/g以上0.10ml/g未満であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
【請求項10】
前記無機酸化物担体(a)は、BET比表面積が100m2/g以上600m2/g未満であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
【請求項11】
前記無機酸化物担体(a)の粒径分布は、粒子径が250μm以上の粒子が全体の0.3重量%以下、粒子径が10μm以下の粒子が全体の4.0重量%以下、平均粒径の1/10倍の粒径以下の粒子が全体の1.0重量%以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合又はエチレンとα−オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法。
【請求項13】
前記α−オレフィンは、炭素数が3〜8であることを特徴とする請求項12に記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法により製造されるエチレン系重合体であって、温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜100g/10分、密度が0.935〜0.960g/cm3であることを特徴とするエチレン系重合体。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の方法により製造されるエチレン系重合体であって、温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜15g/10分、密度が0.940〜0.955g/cm3であることを特徴とするエチレン系重合体。
【請求項16】
請求項12又は13に記載の方法により製造されることを特徴とするエチレン系重合体粒子。
【請求項17】
請求項14又は請求項15に記載の特性を有することを特徴とする請求項16に記載のエチレン系重合体粒子。
【請求項18】
重合反応終了後の状態における嵩密度が0.35〜0.55g/cm3であり、かつ、篩法で測定された平均粒径が100μm〜5mmであり、目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の1.0重量%以下であることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載のエチレン系重合体粒子。
【請求項19】
重合反応終了後の状態における嵩密度が0.38〜0.55g/cm3であることを特徴とする請求項18に記載のエチレン系重合体粒子。
【請求項20】
重合反応終了後の状態における目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の0.7重量%以下であることを特徴とする請求項18又は19に記載のエチレン系重合体粒子。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−190437(P2011−190437A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28541(P2011−28541)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]