説明

エチレン/α−オレフィンゴムをベースとするグラフトポリマーおよびその製造方法

本発明はエチレン/α−オレフィンゴムをベースとするグラフトポリマーおよびその製造方法およびこれらのグラフトポリマーを含有する改良された耐候性を有するゴム変性熱可塑性成形材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレン/α−オレフィンゴムをベースとするグラフトポリマーおよびその製造方法および前記グラフトポリマーを含有する改良された耐候性を有するゴム改質熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
エチレン/α−オレフィンゴムまたはエチレン/α−オレフィン−ジエンゴム上のビニル芳香族モノマーおよびビニルニトリルのグラフト重合により得られるグラフトポリマーは原則的に公知であり、一般的にAESタイプのグラフトポリマーと呼ばれる。AESタイプのグラフトポリマーは例えば英国特許(GB−A)第2059427号、ドイツ特許(DE−A1)第3036921号、欧州特許(EP−A2)第0286071号、欧州特許(EP−A2)第0096527号、WO86/06733号、欧州特許第0054148号および米国特許第3876727号に記載されている。
【0003】
これらのグラフトポリマーは、ABSタイプのグラフトポリマーに比べて改良された耐候性により特徴付けられる。
【0004】
しかし技術水準から公知のAESタイプのグラフトポリマーは表面特性および機械的およびポリマー物理的特性の少なくとも1つのカテゴリーにおいて欠点を有する。
【0005】
従って、すでに述べたように、表面特性および機械的およびポリマー物理的特性の釣り合いのとれた比を有するエチレン/α−オレフィンゴムをベースとするグラフトポリマーを提供するという課題が存在した。
【0006】
更にAESタイプのグラフトポリマーを含有する混合物が耐候性であることが知られているが、これに対して低い温度範囲での機械的特性が不十分である。これらの混合物は0℃未満の温度で脆くなり、不十分な靱性を示す。従ってこれらの成形材料の使用は低い温度では制限される。特に低い温度範囲でのAES混合物のノッチ付衝撃強さがアクリル酸/ブタジエン/スチレン(ABS)混合物に比べて乏しい。
【0007】
欧州特許(EP−A)第0502367号はAESグラフトポリマーおよびコポリマーの製造に関し、前記コポリマーはビニルタイプ芳香族モノマー60〜76質量%および脂肪族コポリマー40〜24質量%を含有する。ビニル芳香族化合物および/または核置換ビニル芳香族化合物およびビニルシアニドおよび/または(メタ)アクリル酸(C1〜C8)アルキルエステルをグラフトする。これらの熱可塑性コポリマーは表面光沢、耐候性および滑り特性に関する所望の良好な特性と並んで特に良好な耐衝撃性を示すと言われている。
【0008】
特開昭50−109247号はパラフィン油0,1〜10質量%を含有するAESとのポリカーボネート混合物を記載する。特開昭58−098354号はAESおよびビニルポリマーのための可塑剤0.5〜20質量%を有するポリカーボネート混合物を記載する。混合物の軟質相で意図的に濃縮する特定の添加剤の使用がポリカーボネート/AES混合物において低温特性の著しい改良を生じることは知られていない。
【0009】
従って本発明の課題は、AES混合物が改良された特性、特に改良されたノッチ付耐衝撃性を有し、同時に低い温度範囲で耐候性が維持されるようにAES混合物を変性することである。
【0010】
意想外にも、前記課題は、本発明によるAESグラフトポリマーおよび本発明によるAESグラフトポリマーを含有する成形材料により解決されることが見出された。
【0011】
従って本発明は
a)重合されたビニル芳香族モノマーおよびエチレン系不飽和ニトリルモノマーの連続相、および
b)ビニル芳香族モノマーおよびエチレン系不飽和ニトリルモノマーでグラフトされたエチレン/α−オレフィンゴムの分散相
を含有するグラフトポリマーであり、連続相a)が130000g/モルより多く、有利に145000g/モルより多く、特に160000g/モルより多く、275000g/モル、特に250000g/モルまでの質量平均分子量Mwを有し、分散相b)が0.90μm未満、有利に0.80μm未満の質量平均粒度Dw、少なくとも0.25および多くとも0.65、有利に少なくとも0.30および多くとも0.60のグラフトの程度(溶剤としてアセトン中でのゲル価測定により測定した)、0.1未満、有利に0.05未満の、アセトン中で測定したゲル価に対するテトラヒドロフラン(THF)中で測定したゲル価の比、および−50℃未満のゴム相または軟質相のガラス転移温度(温度の関数として複素剪断弾性率の測定により決定されたT)を有するグラフトされたゴム相であることを特徴とするグラフトポリマーを提供する。
【0012】
エチレン系不飽和ニトリルモノマーと一緒にラジカル重合し、これにより成形材料の連続相(マトリックス相)a)を形成する適当なビニル芳香族モノマーはスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼンおよび/またはアルキル基に有利に2〜6個の炭素原子を有する他のアルキルスチレンを含む。更に核置換クロロスチレンを前記スチレンとの混合物で使用することができる。
【0013】
特に有利なビニル芳香族モノマーはスチレン、α−メチルスチレンおよび/またはp−メチルスチレンである。スチレン、α−メチルスチレンおよびこれらの混合物が特に有利である。
【0014】
適当なエチレン系不飽和ニトリルモノマーは例えばおよび有利にアクリロニトリルおよびメタクリロニトリルおよびこれらの混合物であり、アクリロニトリルが特に有利である。
【0015】
本発明による熱可塑性成形材料中のビニル芳香族モノマーとエチレン系不飽和ニトリルモノマーの割合はマトリックス相a)に関して60〜90質量%と40〜10質量%である。
【0016】
更にモノマーの全量の30質量%まで、有利に20質量%までの量でアクリル酸モノマーまたはマレイン酸誘導体、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、フマル酸およびイタコン酸のエステル、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、N−置換マレイミド、有利にN−シクロヘキシルマレイミド、またはN−フェニルマレイミド、N−アルキルフェニルマレイミド、更にアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸またはこれらのアミドを使用することができる。
【0017】
分散相b)のグラフト基材として適したエチレン/α−オレフィンゴムはエチレン、α−オレフィンおよび場合により非共役ジエンを重合した形で含有する。
【0018】
適当なα−オレフィンはプロペン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびこれらの混合物である。有利なα−オレフィンはプロペン、1−ヘキセンおよび1−オクテンである。
【0019】
ゴムのグラフト性を改良するために使用される非共役ジエンとして、例えばノルボルネン、例えばアルケニルノルボルネンおよびアルキリデンノルボルネン、環状ジエン、例えばジシクロペンタジエン、および脂肪族ジエン、例えばヘキサジエン、またはオクタジエンを使用することができる。有利なジエンはエチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンおよび1.6−オクタジエンである。
【0020】
エチレンとα−オレフィンの比は30:70〜70:30であり、ただしゴムは完全に非晶質であるか大部分非晶質である。結晶質ゴムが明らかに悪い結果を生じることが示された。非共役ジエンの含量は0〜15質量%、有利に0〜10質量%である。
【0021】
適当なゴムは125℃で3〜50,有利に3〜30のムーニー粘度ML(1+4)(前処理しない、DIN53523号、ASTMD1646)を有する。
【0022】
適当なエチレン/α−オレフィンゴムは線状または分枝状構造を有することができる。線状および分枝状エチレン/α−オレフィンゴムの混合物を使用することも可能である。
【0023】
本発明による熱可塑性成形材料のゴム含量は成形材料に関して10〜70質量%、有利に15〜50質量%、特に有利に17〜35質量%、きわめて有利に18〜23質量%である。
【0024】
本発明によるグラフトポリマーは20°の測定角度で65より大きい、有利に70より大きい光沢および60°の測定角度で85より大きい、有利に90より大きい光沢、20KJ/mより大きい,有利に25kJ/mより大きい、特に30kJ/mより大きいッチ付耐衝撃性(ak−Izod)および14g/10′(220℃/10kg)、有利に12g/10′(220℃/10kg)、特に10g/10′(220℃/10kg)のメルトインデックスを有する。本発明のグラフトポリマーはエチレン/α−オレフィンゴムの二重結合の少ない含有量によりABSグラフトポリマーに比べて改良された耐候性を有する。
【0025】
本発明によるゴム変性熱可塑性グラフトコポリマーは有利に連続法で、エチレン/α−オレフィンゴムの存在で、溶剤の存在でビニル芳香族モノマーおよびエチレン系不飽和ニトリルモノマーのラジカル重合により、原則的に知られた塊状重合または溶液重合法により製造する。
【0026】
溶剤中のラジカル重合のために適した溶剤は芳香族炭化水素、例えばトルエン、エチルベンゼンおよびキシレンおよびこれらの混合物である。トルエンおよびキシレンおよびこれらの混合物が有利であり、トルエンが特に有利である。
【0027】
重合は有利にラジカル開始剤により開始する。ラジカル重合のための適当な開始剤はラジカルに分解するグラフト活性ペルオキシド、例えばペルオキシカーボネート、ペルオキシジカーボネート、ジアシルペルオキシド、ペルケタールまたはジアルキルペルオキシドおよび/またはアゾ化合物またはこれらの混合物である。例はアゾジイソ酪酸ジニトリル、アゾジイソ酪酸アルキルエステル、t−ブチルペルネオデカノエートおよびt−ブチルペル(2−エチルヘキシル)カーボネートである。これらの開始剤はモノマーに関して0.005〜1質量%の量で使用する。
【0028】
本発明の方法は有利に連続的に実施する。連続的実施態様においてゴム、溶剤、モノマーおよび場合により添加剤からなるゴム溶液、モノマーおよび溶剤を、有利に連続的に導入され、完全に混合され、撹拌されたタンク反応器中で、第1工程で、相変換後に30%より大きい定常的モノマー変換率を有して重合させ、1つ以上の他の連続的に運転する撹拌容器中で完全に混合して、ラジカル開始重合をカスケードで少なくとも1つの他の工程でモノマー変換率70〜99%まで連続させることができる。上流に接続された反応器からの重合シロップのほかに、モノマー、溶剤、ラジカル開始剤およびほかの添加剤、例えば安定剤をそれぞれ上流に接続された反応器に供給することができる。連続的重合のために2つの撹拌タンク容器を有利に使用する。
【0029】
残留モノマーおよび溶剤を通常の技術により(例えば熱交換機蒸発機、フラッシュ蒸発機、押出蒸発機、薄膜または薄層蒸発機、スクリュー蒸発機、混合装置およびストリッピング装置を有する撹拌多相蒸発機)除去することができ、これに関して発泡剤および共留剤、例えば蒸気または窒素の使用も可能であり、すなわちゴム溶液を製造するために工程におよび/または重合反応器に循環することができる。熱交換機蒸発機を有利に使用する。
【0030】
重合の間におよびポリマー分離の前または間に添加剤、例えば安定剤、老化防止剤、充填剤および潤滑剤を添加することができる。十分に高い分子量および十分に低いメルトインデックスを達成するために、メルカプタンおよびオレフィン、例えばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、シクロヘキセン、テルピノレンおよびα−メチルスチレンダイマーのような通常の分子量調節剤の使用を避けることが必要であり、重要である。ゴム相の架橋を避けて、THFで測定したゲル価とアセトンで測定したゲル価の本発明の比を0.1未満、有利に0.05未満に維持するために、反応条件を選択することが必要である。例えば通常のペルオキシド架橋剤または硫黄含有架橋剤を添加してはならない。
【0031】
供給したゴム溶液の良好な混合および分散を達成するために、シロップを連続的に循環して混合および剪断装置を介して第1反応器に搬送することができる。これらのループ反応器は技術水準から知られており、ゴムの粒度の調節に有効である。粒度分布の拡大を生じる逆混合を避けるために、2つの分離容器の間に剪断装置を配置することが可能である。ゴム相の良好な混合および分散を達成する他の可能な方法は特に高い剪断率を行使できる撹拌装置を使用することである。
【0032】
平均残留時間は1〜10時間、有利に2〜8時間である。重合温度は50℃〜180℃、有利に100℃〜160℃である。第1反応器の反応温度は有利に100℃〜130℃、特に有利に110℃〜130℃である。第2反応器の反応温度は有利に120℃〜160℃、特に130℃〜160℃である。
【0033】
本発明のグラフトポリマーは押出、射出成形、カレンダー加工、中空吹き込み成形、加圧および焼結により成形部品に加工することができる。従って本発明は少なくとも1種の本発明によるグラフトポリマーを含有する成形材料を提供する。
【0034】
本発明によるグラフトポリマーはポリカーボネート、ポリアミド、ポリアルキレンテレフタレートおよびビニル芳香族モノマーおよびエチレン系不飽和ニトリルモノマーを含有するコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを有する成形材料の形で使用することができる。
【0035】
本発明による成形材料は特に芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを含有することができる。これらは文献から知られており、文献から公知の方法により製造できる。芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関しては、例えばSchnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates、Interscience Publishers、1964およびドイツ特許(DE−A)第1495626号、ドイツ特許(DE−A)第2232877号、ドイツ特許(DE−A)第2703376号、ドイツ特許(DE−A)第2714544号、ドイツ特許(DE−A)第3000610号、ドイツ特許(DE−A)第3832396号を参照。芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関しては、例えばドイツ特許(DE−A)第3077934号またはWO00/26275号を参照。
【0036】
芳香族ポリカーボネートの製造はジフェノールと炭酸ハロゲニド、有利にホスゲンおよび/または芳香族ジカルボン酸ジハロゲニド、有利にベンゼンジカルボン酸ジハロゲニドの反応により、相界面接合法により、場合により連鎖停止剤、例えばモノフェノールを使用しておよび場合により三官能性または三官能性より高い漂白剤、例えばトリフェノールまたはテトラフェノールを使用して実施することができる。
【0037】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの製造に適したジフェノールは、有利に一般式(I)
【0038】
【化1】

で示されるものであり、
式中、
Aは単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、C〜C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、C〜C12−アリーレンを表し、前記アリーレンに場合によりヘテロ原子を有する他の芳香環が縮合されていてもよく、または一般式(II)または(III)
【0039】
【化2】

の基を表し、
BはそれぞれC〜C12−アルキル、有利にメチル、ハロゲン、有利に塩素および/または臭素を表し、
xはそれぞれ互いに独立に0,1または2であり、
pは1または0であり、
およびRは個々にそれぞれXに関して選択されていてもよく、互いに独立に水素またはC〜C−アルキル、有利に水素、メチルまたはエチルを表し、
は炭素を表し、
mは4〜7、有利に4または5の整数であり、ただし少なくとも1個の原子X上で、RおよびRは同時にアルキルである。
【0040】
有利なジフェノールはヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)C〜C−アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)C〜C−シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、およびα、α−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンおよびこれらの核臭素置換および/または核塩素置換誘導体である。
【0041】
特に有利なジフェノールは4,4′−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールa、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよびこれらの二臭素置換および四臭素置換または塩素置換誘導体、例えば2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、または2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを含む。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に有利である。
【0042】
ジフェノールは単独にまたは任意の互いの混合物として使用できる。ジフェノールは文献から知られており、文献に公知の方法により得ることができる。
【0043】
熱可塑性、芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートを製造するために適当な連鎖停止剤は、例えばフェノール、p−クロロフェノール、p−t−ブチルフェノール、または2,4,6−トリブロモフェノールおよび長鎖アルキルフェノール、例えばドイツ特許第2842005号による4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノールまたはモノアルキルフェノールを含む。連鎖停止剤の量は一般にそれぞれ使用されるジフェノールのモル総量に関して0.5〜10モル%である。
【0044】
熱可塑性、芳香族ポリカーボネートは10000〜200000、有利に15000〜80000の遠心分離または光走査測定により測定した質量平均分子量(Mw)を有する。種々の分子量を有するポリカーボネートの混合物を使用することができる。
【0045】
熱可塑性、芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートは公知方法で、特に有利に使用されるジフェノールの総量に関して0.05〜2.0モル%の三官能性または三官能性より高い官能性化合物、例えば3個およびこれより多くのフェノール基を有する化合物を配合することにより枝分かれしていてもよい。枝分かれ剤として例えば三官能性またはこれより高い官能性のカルボン酸クロリド、例えばトリメシン酸トリクロリド、シアヌール酸トリクロリドまたは三官能性またはこれより高い官能性のフェノール、例えばフロログルシンを使用されるジフェノールに関して0.01〜1.0モル%の量で使用することができる。フェノール枝分かれ剤はジフェノールと一緒に導入することができるが、酸クロリド枝分かれ剤は酸ジクロリドと一緒に添加することができる。
【0046】
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートの両方が適している。有利なポリカーボネートはビスフェノールAホモポリカーボネートのほかに、ジフェノールのモル総量に関して15モル%までの他の有利なまたは特に有利な前記ジフェノール、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを含む。
【0047】
芳香族ポリエステルカーボネートを製造するための芳香族ジカルボン酸ジハロゲニドは有利にイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸のジ酸ジクロリドである。
【0048】
イソフタル酸およびテレフタル酸の1:20〜20:1の比のジ酸ジクロリドの混合物が特に有利である。
【0049】
ポリエステルカーボネートの製造に炭酸ハロゲニド、有利にホスゲンを付加的に二官能性酸誘導体として一緒に使用する。
【0050】
芳香族ポリエステルカーボネートは配合された芳香族ヒドロキシカルボン酸を含有することができる。
【0051】
カーボネート構造単位の割合は熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中で任意に変動することができる。カーボネート基の割合は有利にエステル基およびカーボネート基の全部の合計に関して有利に100モル%まで、特に80モル%まで、特に有利に50モル%までである。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル部分およびカーボネート部分はブロックの形でまたはランダムに分配されて重縮合物中に存在することができる。
【0052】
芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートの相対溶液粘度は25℃で塩化メチレン溶液100ml中のポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート0.5gの溶液中で測定して1.18〜1.4、有利に1.20〜1.32の範囲内である。
【0053】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは単独でまたは任意の混合物で使用することができる。
【0054】
本発明による成形材料は更に例えばWO00/29476号に記載されるポリアルキレンテレフタレートを含有することができる。ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートまたはこれらの混合物が有利である。
【0055】
本発明による成形材料は更にゴム不含コポリマーを含有することができる。ゴム不含コポリマーとしてスチレンおよびアクリロニトリルの95:5〜50:50の質量比のコポリマーを使用し、この関係でスチレンおよび/またはアクリロニトリルは全部または一部がα−メチルスチレン、メチルメタクリレートまたはN−フェニルマレイミドに交換されていてもよい。
【0056】
アクリロニトリル割合が30質量%未満であるコポリマーが特に有利である。
【0057】
コポリマーは有利に平均分子量Mw20000〜200000および固有粘度20〜110ml/g(25℃で、ジメチルホルムアミド中で測定した)を有する。
【0058】
これらの樹脂の製造の詳細は例えばドイツ特許第2420358号およびドイツ特許第2724360号に記載されている。塊状重合または溶液重合により製造されるビニル樹脂が特に適していることが示された。コポリマーは単独にまたは任意の混合物で添加することができる。
【0059】
有利な実施態様において、本発明による成形材料は、それぞれグラフトポリマーおよびポリカーボネートの総量に関して、本発明によるグラフトポリマー10〜80質量%、有利に20〜70質量%、特に25〜60質量%およびポリカーボネート20〜90質量%、有利に30〜80質量%、特に40〜75質量%を含有する。
【0060】
ゴム不含コポリマーを使用する場合に、その量はグラフトポリマー、ポリカーボネートおよびゴム不含コポリマーの総量に関して50質量%まで、有利に30質量%まで、特に有利に20質量%までである。
【0061】
本発明による成形材料は、更に混合物のための公知の添加剤および芳香族ポリカーボネート、例えば少なくとも1個の通常の添加剤、例えば潤滑剤および離型剤、例えばペンタエリスリトールテトラステアレート、成核剤、難燃剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤および補強剤および染料および顔料および導電性添加剤、例えばポリアニリンまたはナノチューブを含有することができる。
【0062】
本発明の範囲内で燐含有難燃剤は特に有利にモノマーおよびオリゴマーの燐酸およびホスホン酸エステル、ホスホネートアミンおよびホスファジンからなる群から選択され、この関係で難燃剤としてこれらの群の1種以上から選択される数種の成分の混合物を使用することができる。更にここに具体的に示された化合物と異なるハロゲン不含燐化合物を単独にまたは他のハロゲン不含の燐化合物との任意の組み合わせで使用することができる。
【0063】
充填されおよび/または補強された成形材料は充填剤および/または補強剤を充填されおよび/または補強された成形材料に関して60質量%まで、有利に5〜40質量%まで含有することができる。有利な補強剤はガラス繊維である。補強作用を有することができる有利な充填剤はガラス球、雲母、シリケート、石英、タルク、二酸化チタンおよびウォラストナイトを有することができる。
【0064】
本発明による成形材料は成形材料に対して他の場合により共同作用する難燃剤を35質量%まで含有することができる。他の難燃剤として、有機ハロゲン化化合物、例えばデカブロモビスフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール、無機ハロゲン化化合物、例えば臭化アンモニウムおよび窒素化合物、例えばメラミンを例として記載することができる。
【0065】
本発明による成形材料は、公知の方法で成分を混合し、成分を高温で、有利に200℃〜350℃で、通常の装置、例えば内部混合機、押出機または二軸スクリュー押出機で溶融配合または溶融押出により製造することができる。個々の成分は連続してまたは同時に混合することができる。本発明による成形品は押出または射出成形により製造することができる。
【0066】
本発明による成形品は例えば外部の用途、例えば窓部品、エアコン装置、水タンク、自動車外装部品、庭の備品、家庭の用途の家の部品、例えばジュースしぼり機、コーヒーメーカー、ミキサー、事務所の機器用部品、例えばモニター、プリンター、コピー機または建物および建築分野のカバープレート、および自動車部品に使用することができる。本発明の成形品はきわめて良好な電気特性を有するので、電気工学および電子分野に使用することができる。本発明による成形材料は更に予め製造したシートまたはフィルムから熱成形による成形品の製造に適している。
【0067】
以下のような他の適用が可能である。
データ処理装置、電気通信機器、例えば電話およびテレファックス機器、コンピューター、プリンター、スキャナー、プロッター、モニター、キーボード、タイプライター、録音装置等として、
電気装置、出力供給装置、充電装置、コンピューターおよび消費電子機器用の小さいトランス、低電圧トランスとして、
庭用機器、庭用備品、芝刈り機の覆い、庭の水まき機器用ホースおよび容器、温室、葉の吸い取り装置、シュレッダー、カッター/チョッパー、噴霧器等として、
家具の分野に、ベンチ、作業台、家具の積層体、丸くなった机の表面、事務所用家具、テーブル、椅子、シート、キャビネット、棚用材料、ドア用器具、窓用器具、ベッド、引き出し等に、
スポーツ/レクリエーション機器、おもちゃの自動車、座席の表面、ペダル、スポーツ器具、自転車、卓球板、ホームトレーナー、ゴルフキャディー、スノーボード、靴/ブーツの外部部品、キャンピング用具、ビーチ用籐椅子等として、
建設および建築分野の内部/外部の使用、家の外壁、ストリップ形状材料、配管、ケーブル、巻き物部品、郵便ポスト、ランプ覆い、屋根瓦、舗装用タイル、床用タイル、間仕切り、ケーブルの管、スカート用板、ソケット等のために、
自動車/トラックの分野に、側壁、屋根のライニング、シートフレーム、シート、ベンチ、テーブル、荷台、ホイールキャップ、リアースポイラー、泥よけ、リアーフラップ、ボンネット、側面部品等に適用できる。
【0068】
実施例
測定方法
200℃での蒸発により固体を測定することにより変換率の計算を行った。最終生成物中のゴム含量を天秤から決定した。ゲル含量を分散媒としてアセトン中で決定した。溶解部分の分子量を標準としてポリスチレンに対して溶剤としてTHFまたは塩化メチレンを使用してゲル浸透クロマトグラフィーにより決定した。ゴム粒子の粒度および分布を帯域遠心分離により測定した。質量平均(Dw)、表面積平均(Da)および数平均(Dn)は記載されている。ノッチ付衝撃強度(aIzod)は23℃でISO180/1Aによりおよびメルトインデックス(MFI220℃/10kg)はDIN53735号により測定した。相構造は、RDAII装置 Rheometricsを使用して、−150〜200℃の温度範囲で、約1Hzの周波数で、試験体上で温度の関数としての複素剪断弾性率(剪断弾性率G*(T)の動的/機械的測定)を測定することにより試験した。軟質相およびマトリックスのガラス転移温度(T)を決定した。更に補正剪断弾性率を23℃で決定した(G′corr(RT))。測定値は射出成形試験体でバルク温度240℃および工具温度70℃で決定した。光沢はDIN67530号により20℃および60℃で60×75×1mmの試験体でBYK Gardner測定装置を使用して測定した。
【0069】
例1〜5
本発明によるグラフトポリマーの製造
螺旋形攪拌機を有する二列に接続された反応器中で連続的溶液重合によりグラフトポリマーを製造した。1軸押出機中で約100ミリバールの真空下でポリマー溶液を連続的に蒸発した。第1反応器に、ゴム溶液、モノマーおよび開始剤溶液を供給し、第2反応器に開始剤溶液を供給した。必要により安定剤溶液を第2反応器から蒸発装置への移行ラインに供給した。
【0070】
例1および2において、ゴムとして、ムーニー粘度ML(1+4)125℃、28、エチリデンノルボルネン含量8%およびエチレン含量48%を有する非晶質EPDM(BunaEP G3850、Bayer社)を使用した。
【0071】
例3および4において、ゴムとして、ムーニー粘度ML(1+4)121℃、26およびエチレン含量45%を有する大部分非晶質のエチレン/1−オクテン(Engage8842、DuPont Dow Elastomers)を使用した。
【0072】
例5において、第2反応器に安定剤を供給した。蒸発を2つの下流に接続された熱交換機からなる熱交換機セットにより連続的に実施した。第1蒸発工程の真空は200ミリバールであり、第2蒸発工程の真空は5ミリバールであった。
【0073】
比較例1〜3
比較例1aにおいて、ゴムとして、ムーニー粘度ML(1+4)125℃、20、ENB含量4.2%およびエチレン含量70%を有する部分結晶質EPDM(EPDM2と同定)を使用した。
【0074】
比較例2および3において、ゴムとして、BunaEP G3850を使用した。
【0075】
組成物の組成、重合の結果および成形材料の特性を以下の表1〜3に示す。すべての量の表示は部で示し、処理量は部/時間で示す。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
配合物の製造例
試験を実施するための基礎材料として以下の組成のPC/AES配合物を製造した。
【0081】
容積3リットルの内部混合機中で成分を混合した。260℃で、Arburg270Eタイプの射出成形機中で成形品を製造した。
【0082】
本発明による配合物6〜10および比較例6〜8の配合物は以下の組成により製造した。
ポリカーボネート(Macrolon(登録商標)2600)58質量部
スチレン/アクリロニトリル(SANM60)0質量部および3質量部(例6)
本発明によるAES混合物42質量部および41質量部(例6)
例えば離型剤、酸化防止剤のような通常の添加剤0.9質量部。
【0083】
比較例4(ゴム含量9%)および比較例5(ゴム含量8%)は以下の組成により製造した。
ポリカーボネート(Macrolon(登録商標)2600)58質量部
スチレン/アクリロニトリル(SANM60)30.5質量部および29.1質量部
AES混合物(Blendex(登録商標)WX270)11.5質量部および12.9質量部
例えば離型剤、酸化防止剤のような通常の添加剤0.9質量部。
【0084】
ノッチ付衝撃強度は23℃で得られた材料から製造した成形品で試験し、靱性/脆さ転移(急激な降下)、溶融体積量および弾性率はすべて低温で測定した。
【0085】
ノッチ付耐衝撃強度aの測定はISO180/1Aにより実施した。臨界温度、すなわち靱性破壊挙動の代わりの脆性破壊挙動が生じる温度より低い温度を相当して測定した。弾性率の測定はISO527により1mm/分で実施した。溶融体積流量(MVR)はISO1133により260℃および荷重5kgで測定した。
【0086】
配合物の試験結果を表4に示す。これらの結果は臨界温度(靱性/脆性転移)の顕著な降下を示すが、ノッチ付衝撃強度のような機械的特性は不利な影響を受けない。これは、市販されたAESグラフトポリマーにもとづく2つの比較例から明らかである技術水準に比較して本発明の成形材料の改良された効率の明らかな尺度である。
【0087】
【表5】

【0088】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)重合されたビニル芳香族モノマーおよびエチレン系不飽和ニトリルモノマーの連続相、および
b)ビニル芳香族モノマーおよびエチレン系不飽和ニトリルモノマーでグラフトされたエチレン/α−オレフィンゴムの分散相
を含有するグラフトポリマーにおいて、連続相a)が130000g/モルより多く、275000g/モルまでの質量平均分子量Mwを有し、分散相b)が0.90μm未満の質量平均粒度Dw、少なくとも0.25および多くとも0.65のグラフトの程度(溶剤としてアセトン中でのゲル価測定により測定した)、0.1未満の、アセトン中で測定したゲル価に対するテトラヒドロフラン(THF)中で測定したゲル価の比、および−50℃未満のゴム相または軟質相のガラス転移温度(温度の関数として複素剪断弾性率の測定により決定されたT)を有するグラフトされたゴム相であることを特徴とするグラフトポリマー。
【請求項2】
ビニル芳香族モノマーがスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、アルキル基に2〜6個の炭素原子を有する他のアルキルスチレンおよび核置換クロロスチレンから選択される少なくとも1種のモノマーである請求項1記載のグラフトポリマー。
【請求項3】
エチレン系不飽和ニトリルモノマーがアクリロニトリルおよびメタクリロニトリルおよびこれらの混合物から選択される請求項1記載のグラフトポリマー。
【請求項4】
エチレン/α−オレフィンゴムが重合された形でプロペン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびこれらの混合物から選択されるエチレンおよびα−オレフィンを含有する請求項1記載のグラフトポリマー。
【請求項5】
エチレン/α−オレフィンゴムが重合された形でプロペン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびこれらの混合物から選択されるエチレン、α−オレフィンおよび更に少なくとも1種の非共役ジエンを含有する請求項1記載のグラフトポリマー。
【請求項6】
モノマー、溶剤、およびエチレン/α−オレフィンゴム、溶剤、モノマーおよび場合により添加剤からなるゴム溶液を、連続的に導入され、完全に混合され、撹拌されたタンク反応器中で、第1工程で、相変換後に30%より大きい定常的モノマー変換率でラジカル重合させ、1つ以上の他の連続的に運転する撹拌容器中で完全に混合して、重合を、カスケードで少なくとも1つの他の工程でモノマー変換率70〜99%まで連続させる請求項1記載の成形材料を製造する方法において、分子量調節剤を添加しないことを特徴とする、成形材料を製造する方法。
【請求項7】
残留時間が1〜10時間であり、第1反応器の反応温度が100〜130℃である請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項1記載の少なくとも1種のグラフトポリマーを含有する成形材料。
【請求項9】
請求項1記載の少なくとも1種のグラフトポリマーおよびポリカーボネート、ポリアミド、ポリアルキレンテレフタレート、ビニル芳香族モノマーおよびエチレン系不飽和ニトリルモノマーを含有するコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含有する成形材料。
【請求項10】
それぞれグラフトポリマーおよびポリカーボネートの全量に関して、少なくとも1種の請求項1記載のグラフトポリマー10〜80質量%およびポリカーボネート20〜90質量%を含有する成形材料。
【請求項11】
成形部品を製造するための請求項1記載の成形材料または請求項8記載の組成物の使用。
【請求項12】
請求項1記載の成形材料または請求項8記載の組成物から得られる成形部品。

【公表番号】特表2006−510764(P2006−510764A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561239(P2004−561239)
【出願日】平成15年12月6日(2003.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013835
【国際公開番号】WO2004/056891
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(504419760)ランクセス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (58)
【Fターム(参考)】