説明

エネルギー恒常性および細胞小器官代謝の調節に関与するMnkキナーゼ相同性タンパク質

【課題】本発明は、体重調節および熱産生、例えば、限定するものではないが、肥満症のような代謝疾患に関連する疾患および障害、同様に、摂食障害、悪質液、糖尿病、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症、および睡眠時無呼吸のような関連障害、および糖尿病、神経変性疾患、および癌、例えば生殖器官などの癌のような活性酸素防御に関連する障害の診断、試験、予防、および治療におけるこれらの配列の使用法に関するものである。
【解決手段】本発明は、エネルギー恒常性、中性脂肪の代謝を調節し、そして(または)膜安定性および(または)細胞小器官の機能(作用)に寄与するMnk相同性タンパク質、および本発明において開示したタンパク質を同定およびコードするポリヌクレオチドを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)遺伝子ファミリーの核酸配列およびそれによってコードされたアミノ酸配列の使用法、および体重調節および熱産生、例えば、限定するものではないが、肥満症のような代謝疾患に関連する疾患および障害、同様に、摂食障害、悪質液、糖尿病、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症、および睡眠時無呼吸のような関連障害、および活性酸素防御、糖尿病、神経変性疾患、および癌、例えば生殖器官の癌のような障害に関連する疾患および障害の診断、試験、予防、および治療におけるこれらの配列またはMnk核酸またはポリペプチドのエフェクター、特にMnkキナーゼ阻害剤および活性化剤の使用法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
摂取熱量に対するエネルギー消費量がアンバランスというエネルギー不均衡に関連するヒトおよび動物代謝の疾患、例えば肥満症および激しい体重の減少がいくつか存在している。肥満症は世界に最も蔓延している代謝障害の1つである。この肥満症は、西側諸国にとってますます問題となっているヒトの疾病であり、その本質は依然としてほとんど理解されていない。肥満とは、理想的な体重の20%以上を超える体重として定義され、頻繁に著しい健康機能障害を結果としてもたらす。肥満は、心血管疾病、高血圧、糖尿病、高脂血症のリスクの増大および高い死亡率に関連する。肥満症に悩む個人は、病気にかかる深刻なリスクを抱えている上に、多くの場合、社会的に孤立している。
【0003】
肥満症は、遺伝的要因、代謝要因、生化学的要因、心理学的要因、および行動的要因によって影響される。このような事情から、肥満症は、持続的でポジティブな臨床結果を達成するために、さまざまな分野で取り組まなくてはならない複合障害である。肥満症は単一の障害として考慮されるべきではなく、(潜在的な)複数の原因を有する異種性の状態群であると考慮されるべきであり、また、空腹時の血漿インスリンの上昇および経口グルコース摂取に対する過度なインスリン反応も特徴とする(Koltermann、J.Clin.Invest 65、1980、1272−1284)。2型糖尿病における肥満症の明らかな介入は確認することができる(Kopelman、Nature 404、2000、635−643)。
【0004】
食物摂取および体重のバランスを調節する分子因子は完全に理解されていない。たとえ、レプチン、VCPI、VCPLまたはペルオキシソーム増殖活性の受容体ガンマ活性化補助因子のような、体重/重量を調節する恒常性システムに影響を及ぼすはずのいくつかの候補遺伝子が記述されているとしても、肥満調節または体重/重量調節に影響を及ぼす特有の分子機構および(または)分子は知られていない。加えて、マウスにおいて肥満症を結果としてもたらすいくつかの単一遺伝子の突然変異が記載されており、肥満症の病因における遺伝的な因子を意味づけている(FriedmanおよびLeibel、1990、Cell 69:217−220)。肥満したマウスにおいては、単一遺伝子の突然変異(肥満)は、糖尿病を伴う深刻な肥満症を結果としてもたらす(Friedmanらの、1991、Genomics 11:1054−1062)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Koltermann、J.Clin.Invest 65、1980、1272−1284
【非特許文献2】Kopelman、Nature 404、2000、635−643
【非特許文献3】FriedmanおよびLeibel、1990、Cell 69:217−220
【非特許文献4】Friedmanらの、1991、Genomics 11:1054−1062
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の点から、本発明の根底にある技術的問題は、熱産生体重調節および(または)エネルギー恒常性回路に影響を及ぼす(病理学的な)代謝条件の調節のための手段と方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当該技術的問題に対する解決は、請求項において特徴づけられた実施例を提供することによって達成することができる。
【0008】
従って、本発明は、体重調節における新規機能をともなう遺伝子、エネルギー恒常性、代謝、および肥満症に関連するものである。本発明は、体重調節および熱産生、例えば、限定するものではないが、肥満症のような代謝疾患、同様に、摂食障害、悪質液、糖尿病、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症、生殖器官の癌、および睡眠時無呼吸のような関連障害に関連する疾患および障害、および、糖尿病、神経変性疾患、および癌のような活性酸素防御に関連する障害の調節に関与する特定の遺伝子を提供する。とりわけ、本発明ではヒトMnk遺伝子、特にヒトMnk2遺伝子変異体を上述した条件に関与するものとして記載する。
【0009】
用語「GenBankアクセッション番号」とは、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のGenBankデータベースエントリに関するものである(BensonらのNucleic Acids Res.28,2000,15−18)。
【0010】
タンパク質キナーゼは、多くの細胞機能調節に関与する重要な分子である。キイロショウジョウバエLK6セリン/トレオニンキナーゼ遺伝子は、微小管に関連することができる短命なキナーゼとして記載されている(J.Cell Sci.1997 110(2):209−219)。ショウジョウバエの複眼の発生・発育における遺伝的な分析により、RASシグナル伝達経路の調節における役割が示唆された(Genetics 2000 156(3):1219−1230)。本発明に記載したように、ヒト相同体に最も近いショウジョウバエLK6キナーゼは、MAPキナーゼ結合キナーゼ2(Mnk2、例えば変異体Mnk2aおよびMnk2b)およびMAPキナーゼ結合キナーゼ1(Mnk1)である。すべての3タンパク質は大部分が細胞質に局在している。Mnkは、pk42 MAPキナーゼErk1およびErk2およびp38 MAPキナーゼによってリン酸化される。このリン酸化は、成長因子、ホルボールエステルおよびRasおよびMosのような発癌遺伝子に反応してトリガされる他に、ストレスシグナル伝達分子およびサイトカインによってもトリガされる。Mnkタンパク質のリン酸化は、そのキナーゼ活性を原核開始因子4Eの方向に向かって刺激する(EMBO J.16:1909−1920(1997)、Mol Cell Biol 19:1871−1880(1999)、Mol Cell Biol 21:743−754(2001))。原核開始因子4E(elF4E)のリン酸化は、タンパク質翻訳の調節を結果としてもたらす(Mol Cell Biol 22:5500−5511(2001))。
【0011】
Mnkタンパク質によるタンパク質翻訳の刺激作用のモードを述べる異なる仮説が存在する。大部分の刊行物には、MAPキナーゼ結合キナーゼの活性化時点でのcap−依存のタンパク質翻訳に関するポジティブな刺激効果が記載されている。従って、Mnkタンパク質の活性化は、タンパク質翻訳の間接的な刺激作用または調節、例えば細胞質ホスホリパーゼ2α(BBA1488:124−138、2000)に対する作用につながる。
【0012】
Mnkの阻害剤(CGP57380およびCGP052088と呼ばれる)は従来の技術に記載されている(Knaufらの2001、Mol.Cell.Biol.21:5500、Tschoppらの2000、Mol Cell Biol Res Comm 3:205およびSlentz−Keslerらの2000、Genomics 69:63)。CGP052088は、Mnk1の生体外キナーゼ活性の阻害のための70 nMのIC50を備えたスタウロスポリン誘導体である。CGP57380は、Mnk2(Mnk2aまたはMnk2b)またはMnk1の選択的な低分子量、非細胞障害性の阻害剤である。CGP57380の細胞培養の細胞への添加は、Mnk2(Mnk2aまたはMnk2b)またはMnk1と形質移入し、リン酸化されたeIF4Eの強い低下を結果としてもたらした。
【0013】
これまでには、Mnkキナーゼが体重の調節および熱産生に関与すること、よって肥満症のような代謝疾患、同様に、摂食障害、悪質液、糖尿病、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症、および睡眠時無呼吸のような関連障害、および糖尿病、神経変性疾患、および癌、例えば生殖器官の癌のような活性酸素防御に関連する障害と関与し得ることは記載されていない。本適用例において、Mnkキナーゼの正しい遺伝子投与量がエネルギー恒常性の維持にとって必須であることを実証する。遺伝子スクリーニングを用いて、Mnkキナーゼ相同性遺伝子の突然変異が主要なエネルギー保管物質である中性脂肪含有量の著しい増加による肥満症の原因となることを同定した。さらには、本発明は、脱共役タンパク質(UCPs)の活性に影響を及ぼし、その結果、改変ミトコンドリア活性につながるMnkキナーゼにおける突然変異に関連するものである。また、本発明はMnk−特異阻害剤CGP57380およびその誘導体を用いた代謝障害治療に関連するものでもある。
【0014】
本発明において、Mnkのキイロショウジョウバエ相同体の正しい遺伝子投与量が、ハエの成体におけるエネルギー恒常性の維持、およびミトコンドリアの脱共役タンパク質の活性にとって必須であることを実証する。遺伝子スクリーニングを用いて、Mnk相同性遺伝子の突然変異が主要なエネルギー保管物質である中性脂肪含有量の著しい増加によるキイロショウジョウバエの肥満症の原因となることを同定した。脱共役タンパク質の活性を調節する因子を同定することを目的にデザインされた第2スクリーニングにおいて、発明者らはこのMnk相同性遺伝子の突然変異が脱共役タンパク質の活性の低減の原因となることを発見した。従って、本発明は、Mnkのショウジョウバエ相同体が細胞小器官、望ましくはミトコンドリア膜の安定性および(または)機能(作用)に寄与することの知見に基づくものでもある。LK6キナーゼにおける突然変異が脱共役タンパク質(UCP)の活性に影響し、ミトコンドリア活性の変化につながることを見出した。
【0015】
さらに、発明者らは、Mnk2遺伝子のマウス相同体が絶食、および遺伝的に誘導された肥満症によって調節されることを明らかにする。さらには、Mnk2のmRNAを生体外脂肪細胞分化中に強く上方制御する(実施例を参照)。本発明は、Mnk2転写物が大部分のマウス組織において発現されること、その中で最も高い発現レベルを示すのは白色(WAT)および茶色脂肪組織(BAT)であることを明らかにする。白色脂肪組織における発現は、絶食マウスおよびob/obマウスにおいては約60%減少する。
【0016】
アクチン−mMnk2DN遺伝子組換えマウスの分析により、mMnk2DN導入遺伝子の異所性発現(実施例を参照)が体重の明らかな増加につながることが明らかにされた。それは、高脂肪食の場合のみならず食餌制限の場合にも見出されるので、その効果は食餌依存性であるように思われる。従って、発明者らはMnk2が体重の調節において重要な役割を果たしていることを結論する。
【0017】
加えて、発明者らは、両者のヒトMnk2スプライス変異体の相対発現レベルが分析したすべての組織に対して同一であることを見出した。両Mnk2変異体は共に、代謝障害、すなわち脂肪および筋肉組織に関連性のあるヒト組織において最も高い発現レベルを示す。さらには、両Mnk2変異体は共に、ヒト脂肪細胞の分化中に上方制御される。従って、発明者らはMnk2 (またはその変異体)が成熟ヒト脂肪細胞の代謝における機能(作用)を有することを結論する。
【0018】
また、発明者らは、細胞を過剰発現するMnk2における細胞の中性脂肪レベルが対照細胞のレベルと比較して、4〜12日目の脂質生成において著しく低くなることを見出した。さらには、細胞を過剰発現するMnk2は、外来性グルコースから取り出した脂質の合成における効果が弱かった。その結果、脂質合成を刺激したインスリンのレベルは対照細胞と比較して、脂質生成の12日目で著しく低下した。また、発明者らは、外来性脂肪酸の輸送が細胞を過剰発現するMnk2の血漿膜の全域にわたること、従ってこれらの代謝産物のエステル化は対照細胞と比較して脂質生成の12日目で相当に低いことを見出した。
【0019】
Mnkキナーゼファミリーのタンパク質に対して相同性を持つタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、上記のように疾患および障害を調査研究するために好適である。Mnkキナーゼに関連する分子の発見は、上記のように疾患および障害の診断、治療、および予後において有用である新規組成物を提供することによって当分野における要望に応えることができる。
【0020】
本タンパク質、ヌクレオチド配列、および方法について以下に説明するが、説明した特定の装置、プロトコル、細胞株、ベクターおよび試薬に本発明が限定されるものではなく、改変し得ることは当然のことながら共通認識とする。また、本詳細書で使用する専門用語は特定の実施例を説明する目的で用いたものに過ぎず、特許請求の範囲にのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも当然のことながら共通認識とする。本明細書中で用いる全ての専門用語および科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有するものとする。本明細書中に記載する方法および材料に類似または等価な方法および材料は、本発明の実践または検査で用いることができるが、好適な方法、装置、および材料をここに記載した。本明細書で言及する全ての刊行物は、本発明に関連し得る刊行物中で報告されている細胞株、ベクターおよび方法論について説明および開示する目的で、ここに引用することをもって本明細書の一部となす。本明細書のいかなる開示内容も、本発明がこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0021】
本発明は、Mnk相同性タンパク質がエネルギー恒常性および脂肪代謝、特に中性脂肪、および本発明において開示したタンパク質を同定およびコードするポリヌクレオチドの代謝と保管を調節することを開示する。また、本発明は、Mnk相同性タンパク質が直接的にまたは間接的に膜安定性および(または)機能(作用)細胞小器官、特にミトコンドリア、および、本発明において開示したタンパク質を同定およびコードするポリヌクレオチドに関与することも開示する。本発明はまた、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを産生するための、ベクター、宿主細胞、抗体、および組換え方法に関連するものである。また、本発明は、体重調節および熱産生、例えば、限定するものではないが、肥満症のような代謝疾患に関連する疾患および障害、同様に、摂食障害、悪質液、糖尿病、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症、および睡眠時無呼吸のような関連障害、および糖尿病、神経変性疾患、および癌、例えば生殖器官の癌のような活性酸素防御に関連する障害の診断、試験、予防、および治療におけるこれらの配列の使用法に関するものである。
【0022】
よって、Mnk相同性タンパク質および核酸分子コーディングは、昆虫または脊椎動物各種、例えば、哺乳動物または鳥から入手可能である。特に好適なのは、ヒトMnk相同性ポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードする核酸、特にポリペプチドおよびヒトMnk2タンパク質(図3Dおよび3Eに示したようにスプライス変異型Mnk2a、Genbankアクセッション番号AF237775、または図3Fおよび3Gに示したようにスプライス変異型Mnk2b、GenBankアクセッション番号AF237776またはNM_017572.1、Genbankアクセッション番号AF237775は提出者の要求により除去された旧番号Genbankアクセッション番号XM_030637に同一である;図3BにおけるClustal W複数配列アライメントを参照、また、図3D−Gにおける配列を参照)またはヒトMnk1タンパク質(図3Hおよび3Iに示したようにGenbankアクセッション番号AB000409.1およびNM_003684.2);Genbankアクセッション番号AB000409は提出者要求により除去された旧番号Genbankアクセッション番号XM_001600に同一である;図3CにおけるClustal W複数配列アライメントを参照)をコードする核酸である。
【0023】
本発明は、特に、エネルギー恒常性および中性脂肪の代謝の調節に寄与し、および(または)細胞小器官の膜安定性および(または)機能(作用)に寄与するポリペプチドをコードする核酸分子に関するものであり、当該核酸分子には下記が含まれるものである。
(a)Genbankアクセッション番号AF237775、NM_017572.1、AB000409.1、またはNM_003684.2のヌクレオチド配列、および(または)その補体、
(b)1 x SSCおよび0.1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む溶液中で、50℃にて(a)の核酸分子、特に図3に示したようにアミノ酸配列をコードする核酸に対してハイブリダイズするヌクレオチド配列、
(c)遺伝暗号の変性内における(a)または(b)の配列に対応する配列、
(d)図3に示したように、少なくとも85%、望ましくは少なくとも90%、より望ましくは少なくとも95%、より望ましくは少なくとも98%および99,6%までアミノ酸配列に同一のポリペプチドをコードする配列、
(e)突然変異によって(a)〜(d)の核酸分子と異なる配列であり、当該突然変異がコード化されたポリペプチドにおいて改変、削除、複製または早期停止を引き起こす配列または
(f)少なくとも15塩基、望ましくは少なくとも20塩基、より望ましくは少なくとも25塩基および最も望ましくは少なくとも50塩基の長さを有する(a)〜(e)のヌクレオチド配列の任意の部分的配列。
【0024】
本発明は、Mnk相同性タンパク質(本明細書中ではMnkと呼ばれる)、特にMnk2 (Mnk2aまたはMnk2b)またはMnk1、およびこれらをコードするポリヌクレオチドが中性脂肪保管の調節に関与し、それゆえエネルギー恒常性にも関与するという知見に基づく。また、本発明は、Mnk相同性タンパク質が直接的にまたは間接的に膜安定性および(または)機能(作用)細胞小器官、特にミトコンドリア、および、本発明において開示したタンパク質を同定およびコードするポリヌクレオチドに関与することも開示する。本発明では、体重調節および熱産生、例えば、限定するものではないが、肥満症のような代謝疾患に関連する疾患および障害、同様に、摂食障害、悪質液、糖尿病、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症、および睡眠時無呼吸のような関連障害、および糖尿病、神経変性疾患、および癌、例えば生殖器官の癌のような活性酸素防御に関連する障害の診断、試験、予防、または治療のための核酸分子またはポリペプチドを認識するヌクレオチド、タンパク質またはそのエフェクター、例えば抗体、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、RNAi分子、ペプチド、低分子量の有機分子およびその他の受容体から成る組成物の使用法が記載されている。
【0025】
従って、本発明は、体重調節における新規機能をともなう遺伝子、エネルギー恒常性、代謝、および肥満症に関連するものである。エネルギー恒常性、代謝、および肥満症において新規機能をともなう遺伝子を発見するため、モデル生物体キイロショウジョウバエ(Meigen)を用いて機能的な遺伝子スクリーニングを実施した。キイロショウジョウバエは、生物学において最も集中的に研究された生物体の1つであり、ヒトを始めとした高等真核生物に共通する多くの発生過程および細胞過程の調査のためのモデルシステムとして役に立つ(例えば、Adamsらの、Science 287:2185−2195(2000)を参照)。キイロショウジョウバエのモデル生物体としての成功の大部分は、生物学的プロセスに関与するフォーワード遺伝子スクリーニングの威力に起因する。(Johnston Nat Rev Genet 3:176−188(2002);Rorth、Proc Natl Acad Sci U S A 93:12418−12422(1996)を参照)。スクリーニングのための1つのリソースは、専売のキイロショウジョウバエEPラインの在庫コレクションであった。このコレクションのPベクターは、UAS部位へのGal4の結合時に、隣接するゲノムショウジョウバエ配列に転写できる基底プロモーターに融合したGal4−UAS結合部位を有する。これによって、EPラインのコレクションの内在性側面遺伝子配列の過剰発現が可能となる。加えて、UAS部位の活性化なしでは、EP因子の遺伝子への統合は、遺伝子活性の低下を引き起こす可能性があるので、機能喪失の表現型を評価することにより、その機能を確定することができる。
【0026】
中性脂肪は、細胞において最も効果的なエネルギーの保管場所であり、肥満した患者において著しく増加されるものである。本発明において、発明者らは遺伝子スクリーニングを用いて、Lk6相同性遺伝子の突然変異が中性脂肪レベルの著しい変化によって反映される体重の変化の原因となることを同定した。エネルギー恒常性において機能を有する遺伝子を分離するため、数千のEPラインの中性脂肪含有量を長期にわたる食餌期間後に検査した。さらなる分析のための肯定的な候補として、中性脂肪含有量が顕著に変化したラインを選択した。本発明において、6日間の給餌後の同一遺伝子型を有するハエのプールの中性脂肪含有量を、例えば、中性脂肪測定法のような方法を使用して分析したが、これは本発明の範囲を限定するものではなく、その結果を以下に実施例の項において記載した。遺伝子機能の損失による中性脂肪含有量の変化は、中性脂肪としてエネルギー保管の量を制御する投与量依存型の様式において、エネルギー恒常性における遺伝子活性を示唆する。
【0027】
中性脂肪含有量分析の結果を図1に示した。EP(3)3333およびEP(3)3576統合に対するハエのホモ接合性を中性脂肪測定法で分析した。ホモ接合性生存ラインEP(3)3333およびEP(3)3576の中性脂肪含有量の平均増加はおよそ140%である(図1)。以上の点から、その染色体遺伝子座86F7(推定、EP(3)3333ハエおよびEP(3)3576ハエのEPベクターが結合している染色体部位)における非常に可能性が高い遺伝子活性の損失は、エネルギー保管中性脂肪代謝における変化の原因であり、以上の点から、両方の事例において、肥満したハエモデルを表している。遺伝子機能の損失による中性脂肪含有量の増加は、中性脂肪としてエネルギー保管の量を制御する投与量依存型の様式において、エネルギー恒常性における遺伝子活性を示唆する。
【0028】
本発明のMnkタンパク質をコード化をする核酸をプラスミド救出技術を使用して同定した。EP(3)3333およびEP(3)3576統合に対して直接的に3′局在するゲノムDNA配列を分離した。それらの分離したゲノム配列を用いて、Berkeley ショウジョウバエゲノムプロジェクト(GadFly;FlyBase(1999)Nucleic Acids Research 27:85−88も参照)のような公共データベースをスクリーニングし、それによってMnk相同性遺伝子の5′エキソンの5′領域におけるEP(3)3333の統合側、および代替5′エキソンの5′領域におけるEP(3)3576を確認した(図2)。図2はこの遺伝子座の分子構造を示す。ゲノムDNA配列をアセンブリによって、EP(3)3333およびEP(3)3576の統合部位を含んだ中間の黒色点線として表した。数字は、ゲノムDNA座標(染色体3L上の7544500位置から始まる)を表す。2つの「cDNA」ライン上の灰色バーは、予測遺伝子(GadFly&Magpie)を表し、「Pエレメント」ライン上の灰色記号はEP−ベクター統合部位を表す。遺伝子CG17342の予測エキソンは、濃灰色のバーとして、およびEP(3)32517および予測イントロンは薄灰色のバーとしてそれぞれ示した。
【0029】
Lk6(ショウジョウバエにおけるMnk相同性遺伝子)は、GadFly配列分析プログラムによって予測される遺伝子に対してコード化する(GadFlyアクセッション番号CG17342)。本発明においてMnkと呼ばれる図3に示した遺伝子のために、肥満症および代謝疾患の調節を記載した機能的データは従来の技術には存在しない。
【0030】
また、ポリペプチドが細胞小器官の膜安定性および(または)機能(作用)に寄与する核酸分子をコードし、UCPを修飾できることがわかっているショウジョウバエのタンパク質を表現することは好適である。補足実施例も参照。補足実施例において実証したように、本明細書に記載のポリペプチド(およびコード化核酸分子)は、キイロショウジョウバエ遺伝子dUCPyの過剰発現が原因で生じたショウジョウバエにおける特定の眼の表現型を修飾、例えば増強することができた。ショウジョウバエの複眼におけるdUCPy(ヒトUCPsに対する相同性を有する)の過剰発現は、遺伝的「修飾因子スクリーニング」の「読み取り」として使用できる、明確に視認できる眼障害を引き起こした。
【0031】
当該「修飾因子スクリーニング」においては、その眼中発現を修飾するために、数千の異なる遺伝子を変異誘発さしめる。変異誘発した遺伝子の1つがdUCPyと相互に影響し、その活性を修飾する場合には、眼障害の増強または抑制が発生するであろう。そのようなハエは識別が容易なので、選択して相互作用する遺伝子を単離することができる。補足実施例に示すように、dUCPy活性によって誘発された眼障害を強化する遺伝子を推定した。この遺伝子は、上記のように、ヒトMnkタンパク質に対して高い相同性を有するショウジョウバエのLK6遺伝子と呼ばれる。本明細書に記載したMnk−ポリペプチド(および遺伝子)における突然変異は、修飾および改変されたミトコンドリア活性を備え得る表現型および(または)生理学的変化につながることが構想される。これは、次には、特に、エネルギー代謝の改変、変異熱産生および(または)エネルギー恒常性の改変につながる可能性がある。補足実施例に示すように、dUCPy活性によって誘発された眼障害を強化する遺伝子を推定した。
【0032】
よって、Mnk相同性タンパク質および核酸分子コーディングは、昆虫または脊椎動物各種、例えば、哺乳動物または鳥から入手可能である。特に好適なのは、ヒトLk6/Mnk相同体、特にMnk2変異体(Mnk2aまたはMnk2b)またはMnk1をコードする核酸である。本発明は、Mnk、特にMnk2変異体(Mnk2aまたはMnk2b)またはMnk1のアミノ酸配列から成るポリペプチドを説明する。異なる種(ヒトおよびショウジョウバエ)のMnkタンパク質間の比較(Clustal X 1.8)を行って、図3Aに示した。相同性に基づいて、本発明のMnkタンパク質および各相同性タンパク質またはペプチドは少なくともある程度の活性を共有する。
【0033】
特定の実施例によれば、本発明には、GenBankアクセッション番号AF237775、NM_017572.1、AB000409.1、またはNM_003684.2の核酸配列から成るポリヌクレオチドが包含される。当業者にとっては当然のことながら、遺伝暗号の縮重の結果、Mnkをコードする多数のヌクレオチド配列(一部は既知であり天然の遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小の相同性を有する)を産生することが可能である。したがって本発明では、可能コドン選択に基づいた組み合わせの選択によって作製し得るような、ありとあらゆる可能性のあるヌクレオチド配列変異体が考慮されている。この組み合わせは、天然のMnkのヌクレオチド配列に適用されるような標準トリプレット遺伝暗号に従って作製されるものであり、このような変異は全て特異的に開示されているものと考慮される。Mnkおよびその変異体をコードするヌクレオチド配列は、望ましくは好適に選択されたストリンジェントな条件下で天然のMnkのヌクレオチド配列に対してハイブリダイズ可能ではあるが、Mnkをコードするヌクレオチド配列、または実質上異なるコドンの使用法を有する誘導体を産出することは有益であり得る。宿主が特定のコドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核宿主または原核宿主に発生するペプチドの発現率を増加するようにコドンを選択することが可能である。コードされたアミノ酸配列を変更することなく、Mnkおよびその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質上変更する別の理由には、天然の配列から産出される転写物より望ましい、例えば半減期が長いなどの特性を有するRNA転写物の産出がある。本発明には、Mnkおよびその誘導体をコードする、DNA配列またはその部分を全て合成化学によって産出することも包含される。その産生後には、本発明の出願時に当分野で周知の試薬を用いて、この合成配列を任意の入手可能な多数の発現ベクターおよび細胞系中に挿入することが可能である。さらに、合成化学を用いて、Mnkまたはその任意の部分をコードする配列の中に突然変異を導入することも可能である。
【0034】
さらに本発明に包含されるのは、種々のストリンジェントな条件下で、請求項に記載のヌクレオチド配列、特にGenBankアクセッション番号AF237775、NM_017572.1、AB000409.1、またはNM_003684.2で示される配列にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列である。ハイブリダイゼーション条件は、Wahl、G.M.およびS.L.Berger(1987:Methods Enzymol.152:399−407)およびKimmel、A.R.(1987;Methods Enzymol.152:507−511)で教示されたように、核酸結合複合体またはプローブの溶解温度(Tm)に基づいており、定義されたストリンジェントでの使用が可能である。望ましくは、ストリンジェントな条件下のハイブリダイゼーションとは、1時間 1 x SSCおよび0.1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を用いて50℃にて、望ましくは55℃にて、より望ましくは62℃にて、および最も望ましくは68℃にて、特に1時間 0.2 x SSCおよび0.1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)中で50℃にて、望ましくは55℃にて、より望ましくは62℃にて、および最も望ましくは68℃にて洗浄後、ポジティブなハイブリダイゼーションシグナルが認められることを意味する。本発明に包含されているMnkをコードする変異核酸配列には、異なるヌクレオチドの欠損、挿入、または代替が含まれており、同一物または機能に同等なMnkをコードするポリペプチドを結果としてもたらす。
【0035】
コードされたタンパク質には、サイレント変化を産生し、機能的に等価なMnkを結果としてもたらすアミノ酸残基の欠損、挿入、または置換も含まれ得る。計画的アミノ酸代替は、Mnkの生物学的活性が保持される限りにおいて、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および(または)両親媒性特性の類似性に基づいて行うことができる。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ;正に帯電したアミノ酸にはリジンおよびアルギニンが含まれ;そして類似の親水性値を持つ非荷電極性ヘッドグループを有するアミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、およびバリン;グリシンおよびアラニン;アスバラギンおよびグルタミン;セリンおよびトレオニン;フェニルアラニンおよびチロシンが含まれ得る。
【0036】
また本発明の範囲内には、Mnkをコードする遺伝子の対立遺伝子も含まれている。本明細書で使用されているように、「対立遺伝子」または「対立遺伝子配列」は遺伝子の代替形態であり、核酸配列において少なくとも1つの突然変異から生じ得る。対立遺伝子は、構造または機能が変異し得るかどうかわからない変異mRNAsまたはポリペプチドを結果としてもたらし得る。任意の遺伝子は、無、単一、または多くの対立遺伝子形態を持つことが可能である。対立遺伝子を誘発する一般の突然変異性変化は通常、ヌクレオチドの自然欠損、付加、または置換に帰する。これらの各変化は、単独、またはその他の変化と共に、所定の配列内で1回以上生じ得る。当分野で公知であり、一般に入手可能なDNA シーケンシングのための方法を用いて、本発明の任意の実施例を実行することが可能である。その方法では、例えば、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE DNAポリメラーゼ(オハイオ州クリーブランド市のUS Biochemical社)、Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer社)、熱安定性T7ポリメラーゼ(イリノイ州シカゴ市のAmersham社)、またはELONGASE 増幅システム(メリーランド州ゲーサーズバーグのGIBCO/BRL社)のような組換えポリメラーゼおよび校正エキソヌクレアーゼの組み合わせなどの、酵素を用い得る。望ましくは、そのプロセスを、Hamilton MICROLAB 2200(ネバダ州リノ市のHamilton社)、Peltier thermal cycler (PTC200;マサチューセッツ州ウォータタウンのMJ Research社)およびABI 377 DNA配列決定装置(Perkin Elmer社)などの機械を用いて自動化する。Mnkをコードする核酸配列は、部分的ヌクレオチド配列を利用したり、当分野で周知の種々の方法を使用することによって伸長させ、プロモーターおよび調節要素等の上流配列を検出することができる。例えば、使用し得る方法の1つである「制限部位PCR法」は、ユニバーサルプライマーを用いて既知の遺伝子座に対して近傍する未知の配列を読み出す方法である(Sarkar、G.(1993)PCR Methods Applic.2:318−322)。また、逆PCR法は、既知の領域に基づいた分岐プライマーを用いて配列を増幅または伸長するために使用することも可能である(Triglia、T.らのNucleic Acids Res.16:8186)。使用可能な別の方法としては、キャプチャPCR法があり、これにはヒトおよび酵母菌人工染色体DNAにおける既知の配列に近傍するDNA断片のPCR増幅が含まれる(Lagerstrom、M.らのPCR Methods Applic.1:111〜119)。未知の配列を読み出すために使用可能な別の方法としては、Parker、J.D.らの方法が挙げられる(1991;Nucleic Acids Res.19:3055−3060)。加えて、PCR法、ネステッドプライマー、およびPROMOTERFINDERライブラリを用いて、ゲノムDNAの中に入ることが可能である(Clontech社,Palo Alto,Calif.)。このプロセスは、ライブラリをスクリーニングすることを回避し、イントロン接合部およびエキソン接合部を見つけるのに有用である。
【0037】
完全長cDNAをスクリーニングする際には、より大きなcDNAを含むようにサイズ選択されたライブラリを使用することが望ましい。また、遺伝子の5′領域を含んだ、より多くの配列を含むランダムプライムライブラリも望ましい。ランダムプライムライブラリの使用は、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを産しない状況において特に望ましい。ゲノムライブラリは、5′および3′非転写調節領域への配列の伸長に対して有用であり得る。市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シーケンシング産生物またはPCR産生物のサイズを分析すること、またはそのヌクレオチド配列を確認することが可能である。具体的には、キャピラリー シーケンシングは、電気泳動分離のための流動性ポリマー、レーザー駆動の4つの異なる蛍光色素(各ヌクレオチドあたり1個)、および電荷結合素子(CCD)カメラによる発光波長の検出を用いることが可能である。出力および光の強度は、適切なソフトウェア(例えばPerkin Elmer社のGENOTYPERおよびSEQUENCE NAVIGATOR)を使用して電気信号に変換することができ、試料の取り込みからコンピュータ分析までの全プロセス、および電子データ表示は、コンピュータ制御が可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定の試料に限られた量が存在する可能性のあるDNA小片のシーケンシング(配列決定)に特に望ましい。
【0038】
本発明の他の実施例によれば、Mnkをコードするポリヌクレオチド配列、または融合タンパク質またはその機能的等価物またはその断片は、適切な宿主細胞内でMnkの発現をさせるような組換えDN分子内で使用することが可能である。遺伝暗号固有の縮重により、実質的に同じ、あるいは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列を産出することができ、これらの配列はMnkをクローン化および発現するために利用することが可能である。当事者にとっては当然なことだが、非天然コドンを有するMnkがコードするヌクレオチド配列を産出することは有益であろう。例えば、特定の真核宿主または原核宿主によって好適とされるコドンは、タンパク質の発現率を高めるため、または、例えば天然配列から作成された転写物の半減期よりも長い半減期などの好ましい特性を有する組換えRNA転写を産生するために選択することが可能である。本発明のヌクレオチド配列は、種々の目的でMnkのコードする配列を変えるために、当分野で公知の方法を使用して組換えることができ、この目的には、遺伝子産物のクローニング、処理、および(または)発現等が含まれるが、これらに限定されるものではない。遺伝子断片および合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーションおよびPCR再アセンブリによるDNAシャフリングを用い、ヌクレオチド配列を遺伝子操作することが可能である。例えば、部位特異的変異誘導を用いて、新規制限部位を挿入、グリコシル化のパターンを改変、コドン優先の変更、スプライス変異体の産生、または突然変異の導入、等々を行い得る。
【0039】
本発明の他の実施例によれば、天然の核酸配列、修飾核酸配列またはMnkをコードする組換え核酸配列を異種配列に連結反応させ、融合タンパク質をコードすることができる。例えば、Mnk活性の阻害剤に対してペプチドライブラリをスクリーニングするためには、市販の抗体によって識別可能なキメラ Mnkタンパク質を作成することが有用であり得る。また、Mnkが異種部分から切断および精製され得るようにするため、融合タンパク質が、Mnkのコードする配列と異種タンパク質配列との間にある切断部位を含むように遺伝子操作することが可能である。他の実施例によれば、当分野で周知の化学的方法を用いて、Mnkをコードする配列の全部または一部を合成することが可能である(Caruthers et al.(1980)Nucl.Acids Res.Symp.Ser.7:215−223,Horn et al.(1980)Nucl.Acids Res.Symp.Ser.7:225−232を参照)。あるいは、化学的な方法を用いて、Mnkのアミノ酸配列またはその一部分を合成するためにタンパク質自体を産出することが可能である。例えば、種々の固相技術を使用してペプチド合成を行うことができ(Robergeらの(1995)Science 269:202−204)、例えばABI 431ペプチドシンセサイザ(Perkin Elmer社)を使用して自動合成を達成することが可能である。新規に合成したペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィー(例えば、Creighton,T.(1983)Proteins,Structures and Molecular Principles,WH Freeman and Co.,New York,N.Y.)によって実質上精製することが可能である。合成ペプチドの組成物は、アミノ酸分析またはシーケンシングによって確認することが可能である(例えば、Edman degradation procedure;前出のCreighton)。加えて、Mnkのアミノ酸配列またはその任意の一部は、直接合成中に変異させることができ、および(または)変異型ポリペプチドを産生するために、化学的方法を使用して、他のタンパク質またはその任意の一部から得た配列と結合させることが可能である。
【0040】
生物学的に活性なMnkを発現するために、Mnkをコードするヌクレオチド配列または機能的な等価物を好適な発現ベクターに挿入することができ、その発現ベクターとは、挿入されたコーディング配列の転写および翻訳に必要な要素を含むベクターを指す。当業者に公知の方法を用いて、Mnkをコードする配列、好適な転写及び翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法には、生体外の組換えDNA技術、合成技術、および生体内の遺伝的な組換えが含まれる。その技術は、Sambrook,J.らの(1989)Molecular Cloning、Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.、およびAusubel,F.M.らの(1989)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,N.Y.に記載されている。
【0041】
調節エレメントには、例えばプロモーター、開始コドン、終止コドン、mRNA安定性調節エレメント、およびポリアデニル化信号が含まれる。ポリヌクレオチドの発現は、(i)サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター/エンハンサー領域のような構成型プロモーター、(ii)インシュリンプロモーター(Soriaらの2000,Diabetes 49:157を参照)、SOX2遺伝子プロモーター(Liらの1998,Curr.Biol.8:971−4を参照)、Msi−1プロモーター(Sakakiバーaらの1997,J.Neuroscience 17:8300−8312を参照)、α−噴門ミオシン重鎖プロモーターまたはヒト心房性ナトリウム利尿因子プロモーター(Klugらの1996,J.clin.Invest 98:216−24;Wuらの1989,J.Biol.Chem.264:6472−79)のような組織特定のプロモーター、または(iii)テトラサイクリン誘導型システムのような誘導型プロモーターよって保証される。また、発現ベクターには、ネオマイシン、ハイグロマイシンまたはピューロマイシン耐性遺伝子のような、抗生物質耐性を授与する選択薬剤またはマーカー遺伝子を含むことができる。これらの方法には、生体外組換えDNA技術、合成技術、および生体内遺伝子組換え技術が含まれる。その技術は、Sambrook,J.らの(1989)Molecular Cloning、Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.およびAusubel,F.M.らの(1989)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,N.Y.に記載されている。本発明のさらに他の実施例によれば、天然の核酸配列、修飾核酸配列または本発明のタンパク質および相同性タンパク質をコードする組換え核酸配列を異種配列に連結反応させ、融合タンパク質をコードすることが可能である。
【0042】
種々の発現ベクターと宿主系を利用して、タンパク質または融合タンパク質をコードする配列を保持および発現することが可能である。これらには、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴のウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMVまたはタバコモザイクウイルスTMV)または細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系、または動物細胞系などの微生物等が含まれているが、これらに限定されるものではない。
【0043】
「調節要素」または「調節配列」は、転写および翻訳を行なうために宿主細胞タンパク質と相互作用するベクター、例えばエンハンサー、プロモーター、5"および3"非翻訳領域の非翻訳領域である。このような要素の強度および特異性は様々である。利用されるベクターシステムおよび宿主にもよるが、構成型プロモーターおよび誘導型プロモーターを含んだ任意数の適切な転写要素および翻訳要素を利用することが可能である。例えば、細菌系においてクローニングを行なう場合、BLUESCRIPTファージミドのハイブリッドlacZプロモーターような誘導型プロモーター(カリフォルニア州ラ・ホヤのStratagtagene社)またはPSPORT1プラスミド(Gibco BRL社)などを使用することが可能である。バキュロウイルスのポリヘドリンプロモーターは昆虫細胞において使用することが可能である。植物細胞のゲノム(例えば、熱ショックであるRUBISCO;および保管タンパク質遺伝子など)または植物ウィルス(例えば、ウィルスのプロモーターおよびリーダー配列)に由来するプロモーターおよびエンハンサーは、ベクターにクローニングすることが可能である。哺乳動物の細胞系では、哺乳動物の遺伝子または哺乳動物のウィルスからのプロモーターが望ましいとされる。Mnkをコードする複数のコピーの配列を含む細胞株を作成する必要がある場合には、SV40またはEBVに基づいたベクターを適切な選択可能マーカーと共に使用することが可能である。
【0044】
細菌系では、多数の発現ベクターがMnkの使用目的に応じて選択することが可能である。例えば、多量のMnkが抗体の誘発のために必要な場合には、容易に精製される、融合タンパク質の高レベル発現を誘導するベクターを使用することが可能である。そのようなベクターには、多機能大腸菌クローニング、Mnkをコードする配列が、ハイブリッドタンパク質が産生されるようにアミノ末端 Metおよびその結果生じた7つのβ−ガラクトシダーゼの残基に対する配列を有するベクターフレームに結合することが可能であるBLUESCRIPTファージミド(Stratagene社)のような発現ベクター、pIN ベクター(Van Heeke,G.およびS.M.Schuster(1989)J.Biol.Chem.264:5503−5509)、その他が含まれているが、それらに限定されるものではない。また、GEXシリーズ(Amersham Biosciencies社、Uppsala、スウェーデン)のベクターを用いて、外来ポリペプチドをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)を有する融合タンパク質として発現することも可能である。一般に、そのような融合タンパク質は可溶であり、グルタチオンアガロースビーズに対する吸着、それに続く遊離グルタチオンの存在下における溶出によって産生した溶解細胞から容易に精製することができる。そのようなシステムで作られたタンパク質は、所定のクローンポリペプチドがGST部分から意のままに開放することができるように、ヘパリン、トロンビン、またはXA因子プロテアーゼ切断部位を含むようにデザインすることが可能である。酵母菌、サッカロミセスセレビジエにおいて、α因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHなどの構成型プロモーターまたは誘導型プロモーターを含むいくつかのベクターを使用することが可能である。論評に関しては、前出のAusubelら、およびGrantらの(1987)Methods Enzymol 153:516−544を参照。
【0045】
植物発現ベクターを使用する事例によれば、Mnkをコードする配列の発現をプロモーターの任意の1つによって駆動することが可能である。例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモーターのようなウィルスプロモーターを単独またはTMVからのオメガリーダー配列(Takamatsu,N.(1987)EMBO J.6:307−311)と共に使用することが可能である。あるいは、RUBISCOの小サブユニットのような植物プロモーターまたは熱ショックプロモーターを使用することが可能である(Coruzzi,G.らの(1984)EMBO J.3:1671−1680、Broglie,R.らの(1984)Science 224:838−843、およびWinter,J.らの(1991)Results Probl. Cell Differ.17:85−105)。これらの作成物は、直接DNA形質転換または病原体媒介性の形質移入によって、植物細胞内に導入することができる。そのような技術は、一般に入手できるいくつかの論評に記載されている(例えば、『マグローヒル科学技術年鑑』(McGraw Hill Yearbook of Science and Technology)(1992)McGraw Hill New York NYのHobbs,S.またはMurry,L.E.を参照。ページ番号191−196)。
【0046】
また、昆虫システムを用いてMnkを発現することも可能である。例えば、昆虫系の1つでは、オートグラファ カリフォルニア ニュークレアの多面性ウィルス(AcNPV)がベクターとして使用され、ハスモンヨウ近似種(Spodoptera frugiperda)細胞またはウワバ(Trichoplusia)の幼虫における外来遺伝子を発現している。Mnkをコードする配列は、ポリヘドリン遺伝子等のウィルスの不必須領域へクローニングされ、ポリヘドリンプロモーターの制御下に置かれることが可能である。Mnkの首尾良い挿入は、ポリヘドリン遺伝子を不活性にし、外殻タンパク質に欠ける組換えウィルスを産出する。さらに、組換えウィルスを用いて、Mnkが発現され得るTrichoplusiaの幼虫のS.frugiperda細胞を感染することが可能である(Engelhard,E.K.らの(1994)Proc.Nat.Acad.Sci.91:3224−3227)。
【0047】
哺乳動物の宿主細胞においては、いくつかのウィルスベースの発現系を利用することが可能である。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後発プロモーター及び3連リーダー配列からなるアデノウイルス転写物/翻訳複合体にMnkをコードする配列を結合し得る。ウィルスゲノムの非必須E1またはE3領域における挿入を用いて、感染した宿主細胞においてMnkを発現する能力のある生ウィルスを得ることが可能である(Logan、J.およびShenk、T.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.81:3655−3659)。加えて、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーのような転写エンハンサーを用いて、哺乳動物の宿主細胞における発現を高めることが可能である。
【0048】
特定の開始シグナルによって、Mnkをコードする配列のより効果的な翻訳を達成することが可能である。そのようなシグナルには、ATG 開始コドンおよび近傍する配列が含まれる。Mnkをコードする配列、その開始コドン、および上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写調節シグナルや翻訳調節シグナルは必要なくなるであろう。但し、コーディング配列のみ、またはその一部のみが挿入される事例においては、ATG 開始コドンを含んだ外来性翻訳調節シグナルが提供される必要がある。さらに、その開始コドンは、全挿入の翻訳を確実にするため、正しい読み取りフレーム中に存在する必要がある。外来性の翻訳要素および開始コドンは、天然および合成の両方を含めた様々な起源の産物であり得る。発現の効率は、文献 (Scharf、D.らの(1994)Results Probl.Cell Differ.20:125−162)に記載されたように、使用される特定の細胞系に対して適切なエンハンサーを包括することによって高めることが可能である。
【0049】
加えて、宿主細胞株は、挿入した配列の発現を調節する能力、または発現したタンパク質を所望の形態で処理する能力に対して選択することも可能である。このようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が含まれるが、それらに限定されるものではない。タンパク質の「プレプロ」形を切断する翻訳後の処理を用いて、正しい挿入、折りたたみ、および(または)機能を促進することが可能である。CHO、HeLa、MDCK、HEK293、およびWI38などの翻訳後の活性のための固有の細胞装置および特徴のある機構を有する種々の宿主細胞は、外来タンパク質の正しい修飾および処理を確実にするように選択することが可能である。
【0050】
長期にわたる、組換えタンパク質の高歩留産生のためには、安定した発現が望ましい。例えば、安定してMnkを発現する細胞株は、複製発現因子および(または)内在性発現因子のウィルス起源を含み、選択可能マーカー遺伝子を同一ベクター上または別個のベクター上に含み得る発現ベクターを使用して、形質転換することが可能である。ベクターの導入後、細胞は選択培地に移行せしめる前に強化培地において1〜2日間増殖せしめることが可能である。選択可能マーカーの目的は、選択への抵抗性を与えることであり、その存在によって導入された配列を首尾良く発現する細胞の成長および回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖することが可能である。任意数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収することが可能である。この選択系には、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler,M.らの(1980)Cell 22:817−23)、およびtk−細胞またはaprt−細胞にそれぞれ用いることができるアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy,I.らの(1980)Cell 22:817−23)遺伝子が含まれるが、これらに限定されるものではない。また、代謝拮抗物質、抗生物質または除草剤の耐性は、その選択基準として用いることができ、例としてはメトトレキセートに耐性を与えるdhfr(Wigler,M.らの(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.77:3567−70)、アミノグリコシッドネオマイシンおよびG−418に耐性を与えるnpt(Colbere−Garapin,F.らの(1981)J.Mol.Biol.150:1−14)、およびクロルスルフロン(chlorsulfuron)とホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(phosphinotricin acetyltransferase)にそれぞれ耐性を与えるalsまたはpat(前出のMurry)などが挙げられる。追加の選択可能遺伝子、例えば、細胞がトリプトファンの代替としてインドールを利用することを可能にするtrpB、または細胞がヒスチジンの代替としてヒスチノルを利用することを可能にするhisDなどは(Hartman、S.C.およびR.C.Mulligan(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:8047−51)に記載されている。最近、可視マーカーは好評を博しており、アントシアニン、β−グルクロニダーゼおよびその基質GUS、ルシフェラーゼおよびその基質ルシフェリンなどのマーカーは、形質転換体を同定するためだけではなく、特定のベクター系に依存する一過性または安定したタンパク質発現を定量化するために広範に使用されている(Rhodes、C.A.らの(1995)Methods Mol.Biol.55:121−131)。
【0051】
生体内では、基質に対するMnk無修飾ポリペプチドの酵素性キナーゼ活性を適当な刺激によって促進することができ、Mnkのリン酸化をトリガーすることができる。これは、シグナル伝達分子または環境的な影響のような細胞外のまたは細胞内の刺激によって天然の状況において誘導することが可能である。活性化されたMnkを含むシステムは、それが細胞または無細胞の環境の生物体、組織、培養であれ、外因的にこの刺激を適用することによって、または種々の技術でこの刺激を模倣することによって作成することが可能であり、さらにその一部を以下に記載した。活性化Mnkを含んだシステムは、(i)体重調節および熱産生、例えば、限定するものではないが、肥満症のような代謝疾患に関連する疾患および障害、同様に、摂食障害、悪質液、糖尿病、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症、および睡眠時無呼吸のような関連障害、および糖尿病、神経変性疾患、および癌、例えば生殖器官の癌のような活性酸素防御に関連する障害の診断、試験、予防、および治療の目的のため、(ii)本発明の遺伝子またはそれらのコード化されたポリペプチに影響を及ぼす治療薬候補、医薬品または薬物を同定または確証する目的のため、(iii)本発明の遺伝子によってコードした活性化ポリペプチドを含んだ細胞可溶化液を作成する目的のため、(iv)本発明の遺伝子によってコードしたこのソース活性化ポリペプチドから分離する目的のため産生することが可能である。
【0052】
本発明の一実施例によれば、上記の当該目的のため、天然刺激非依存性の活性化Mnkを、例えば、限定するものではないが、(i)天然の刺激を模倣する薬剤;(ii)MAPキナーゼ経路、ホルボールエステル、アニソマイシンの活性化剤、MAPキナーゼキナーゼキナーゼ、MAPキナーゼキナーゼ、およびMAPキナーゼの構成型活性対立遺伝子のような下流の天然の刺激に作用する薬剤、または記述したとおりのMnk自体または作成したMnkでもよい;(iii)構成型活性形態を作り出すためのMnk配列内での単一または複数のアミノ酸の置換、欠損または挿入の導入;(iv)Mnkの分離した断片の使用によって産生することが可能である。加えて、このシステムに対して活性化する組成物を同時転移することによって、異所性システム、真核または原核、生体内または生体外において酵素的に活性なMnkを作成することが可能である。これらは、例えば、限定するものではないが、MAPキナーゼERK1またはERK2またはp38 MAPKイソ型と共に、MAPキナーゼキナーゼMek1またはMkk6の構成型活性対立遺伝子のようなMAPキナーゼ経路の組成物であり得る。例えば、1.0mMアデノシン三リン酸、および50mM N−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン−N′−(2−エタンスルホン酸)/水酸化カリウムpH 7.4、5mMの塩化マグネシウム、0.5mMのジチオスレイトールのような好適な緩衝剤条件の存在下で分離したERK2キナーゼと共に、アミノ酸置換S218DおよびS222Eを含んだMek1の変異体ポリペプチドを用いて、溶液中の分離したMnkタンパク質を活性化することが可能である(図14を参照)。
【0053】
マーカー遺伝子発現の有無は、所定の遺伝子の有無も示唆するが、その存在および発現は確認する必要がある。例えば、Mnkをコードする配列がマーカー遺伝子配列内に挿入された場合、Mnkをコードする配列を含む組換え細胞は、マーカー遺伝子機能の欠落により同定することが可能である。または、1つのプロモーターの制御下でマーカー遺伝子がMnkをコードする配列と一列に配置することも可能である。マーカー遺伝子の発現は通常、誘発または選択に応答してタンデム遺伝子の発現も示す。あるいは、Mnkをコードする核酸配列を含み、Mnkを発現する宿主細胞は、当業者に公知の種々の方法を用いて同定することが可能である。これらの手順には、DNA−DNA、またはDNA−RNAハイブリダイゼーション、および核酸またはタンパク質の検出および(または)定量化のための膜系、溶液ベース、またはチップベースのテクノロジを含むタンパク質の生物学的試験法または免疫学的測定法が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0054】
Mnkをコードするポリヌクレオチド配列の存在は、Mnkをコードするポリヌクレオチドのプライマー、プローブ、または部分または断片を用いて、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリッド形成法、または増幅によって検出することが可能である。核酸の増幅基調アッセイには、オリゴヌクレオチドの使用、またはMnkをコードするDNAまたはRNAを含んだ形質転換体を検出するためにMnkをコードする配列に基づいたオリゴマーが含まれる。本詳細書で使用された「オリゴヌクレオチド」または「オリゴマー」は、最低約10ヌクレオチド、および約60ほどのヌクレオチド、望ましくは約15〜30ヌクレオチド、およびより望ましくは約20〜25ヌクレオチドの核酸配列を言及し、プローブまたはアンプリマーとして使用されることが可能である。
【0055】
タンパク質に固有のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらかを用いるMnkの発現を検出および計測のためのさまざまなプロトコルは当分野で周知である。実施例には、酵素免疫測定(吸着)法(ELISA)、放射免疫測定(RIA)、および蛍光細胞分析分離装置(FACS)が含まれる。Mnk上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を利用する、2部位モノクローナルベースの免疫学的測定法は好適ではあるが、競合結合アッセイを用いることが可能である。これらを含めた他の測定法は、Hampton、R.らの(ミネソタ州セントポール市、1990;Serological Methods,Laboratory Manual,APS Press)およびMaddox、D.E.らの(1983;J.Exp.Med.158:1211−1216)の諸所に記載されている。
【0056】
多岐にわたる標識技術および抱合技術が当業者に知られており、種々の核酸およびアミノ酸測定法において使用することが可能である。標識ハイブリダイゼーションを産生するための手段、またはMnkをコードするポリヌクレオチドに関連する配列検出するためのPCRプローブには、標識ヌクレオチドを使用するオリゴ標識、ダコン翻訳、末端標識またはPCR増幅が含まれる。
【0057】
あるいは、Mnkをコードする配列またはその任意の部分を、mRNAプローブを産出するためのベクターにクローニングすることも可能である。このようなベクターは、当分野で周知であり、市販もされており、T7、T3、またはSP6および標識ヌクレオチドのような適切なRNAポリメラーゼを追加することによって、生体外RNAプローブの合成に使用することが可能である。このような手順は、市販されている種々のキット(ミシガン州カラマズーのPharmacia&Upjohn社)、Promega社(ウィスコンシン州マディソン)、およびU.S.Biochemical Corp社(オハイオ州クリーブランド)を用いて実行することが可能である。
【0058】
また、使用可能な好適レポーター分子または標識には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、または発色剤のほかに、基質、補助因子、阻害剤、磁力粒子なども含まれる。
【0059】
Mnkをコードするヌクレオチド配列で形質転換した宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養する。組換え細胞によって産生されたタンパク質は、使用される配列および(または)ベクターによるが、分泌または細胞内に含有せしめることが可能である。Mnkをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過するMnkの分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。その他の組換え構造を用いて、Mnkをコードする配列を水溶性タンパク質の精製を促進するポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に結合することが可能である。そのような精製促進ドメインには、固定化金属上の精製を可能にするヒスチダイントライトファン分子のような金属キレートペプチド、固定化免疫グロブリン上の精製を可能にするタンパク質Aドメインおよびフラグ伸長・親和性精製システム(ワシントン州シアトル市のImmunex Corp.)において利用されるドメインが含まれるが、これらに限定されるものではない。XA因子または精製ドメインとMnk間のエンテロキナーゼ(腸活素)(Invitrogen社,San Diego,Callif.)等に対して特異的な切断可能リンカー配列の抱合は、精製を促進するために使用することが可能である。そのような単一発現ベクターは、Mnkを含む融合タンパク質の発現、チオレドキシンまたはエンテロキナーゼ(腸活素)切断部位に先行する、6ヒスチダイン残基をコードする核酸を提供する。エンテロキナーゼ(腸活素)切断部位は、融合タンパク質からMnkを精製する手段を提供する一方、ヒスチジン残基は、IMIAC(Porath、J.らの(1992、Prot.Exp.Purif.3:263−281)に記載された固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー)上での精製を促進する。融合タンパク質を含むベクターの論考は、Kroll,D.J.らの(1993;DNA Cell Biol.12:441−453)で提供されている。組換え産出に加えて、Mnkの断片は、固相技術(Merrifield J.(1963)J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154)を用いてペプチド合成を誘導することによって産生することができる。タンパク質合成は、手動または自動の何れの技術によっても実行することが可能である。自動合成は、例えばApplied Biosystems 431ペプチドシンセサイザ(Perkin Elmer社)を用いて達成することが可能である。Mnkの種々の断片は、完全長分子を産生するために化学的方法を使用して、個別に化学的な合成および結合を行なうことが可能である。
【0060】
診断および治療
本発明において開示したデータは、ことを明らかにする。核酸および本発明のタンパク質およびそのエフェクター分子が、例えば、限定するものではないが、肥満症、糖尿病、摂食障害、消耗症候群(悪質液)、すい臓の機能障害、動脈硬化症、冠動脈疾患(CAD)のような代謝障害、および上記のようなその他の疾患および障害に関連する診断目的および治療目的において有用である。従って、本発明のMnkタンパク質の診断用途および治療用途は、例えば、これらに限定されるものではないが、次の通りである:(i)タンパク質治療、(ii)小分子薬剤標的、(iii)抗体標的(治療、診断、薬剤ターゲッティング/細胞毒性抗体)、(iv)診断および(または)予後マーカー、(v)遺伝子療法(遺伝子送達と遺伝子除去)、(vi)研究ツール、および(vii)生体外および生体内における組織再生(これらの組織に由来する組織型および細胞型を構成する全ての組織型および細胞型の再生)。
【0061】
本発明の核酸およびタンパク質は、上述した種々の疾患と障害および(または)その他の病理学および障害に関与する診断用途および治療目的において有用である。例えば、限定するものではないが、遺伝子療法、および本発明のMnkタンパク質および特にそのヒト相同体において有用であり得る、本発明のMnkタンパク質をコードするcDNAsおよび特にそのヒト相同体は、それを必要とする被験体に投与された場合に有用であり得る。例証として、本発明の組成物は、例えば、限定するものではないが、肥満症、糖尿病、摂食障害、消耗症候群(悪質液)、すい臓の機能障害、動脈硬化症、冠動脈疾患(CAD)のような代謝障害、およびその他の疾患および障害、特に上記のような疾患および障害に苦しむ患者の治療に有効性を有する。
【0062】
本発明のMnkタンパク質をコードする核酸、またはその断片は、核酸またはタンパク質の存在または量が算定されるべき診断適用例においてもさらに有用であり得る。これらの材料はさらに、治療法または診断法における使用のため、本発明の新物質に対して免疫特異的に結合する抗体の作成において有用である。
【0063】
例えば一実施態様においては、アンタゴニストとして直接的に、またはMnkを発現する細胞や組織に薬剤をもたらすターゲッティングまたは輸送機構として間接的に、Mnkに特異な抗体を用いることが可能である。その抗体は当分野で周知の方法を用いて作成することが可能である。このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖、Fab断片、およびFab発現ライブラリによって産生された断片が含まれるが、これらに限定されるものではない。中和抗体(すなわち、二量体の形成を阻害する抗体)は特に治療用に望ましい。
【0064】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒトなどを含む種々の宿主は、Mnkの任意の断片またはオリゴペプチドであって免疫抗原性の特性を有するものを注入することによって免疫化することができる。宿主の種によるが、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることが可能である。そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、およびリゾレシチン、プルオニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳濁液、キーホールリンペットヘモシニアン、およびジニトロフェノールのような表面活性物質などが含まれるが、それらに限定されるものではない。ヒトに使用されるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)およびコリネバクテリウムパルヴムが特に望ましい。Mnkに対する抗体を誘導するために用いるペプチド、断片またはオリゴペプチドは、少なくとも約5のアミノ酸からなり、より望ましくは少なくとも約10のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するものが望ましい。これらが、天然タンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であること、および小さな天然分子の全アミノ酸配列を含み得ることが望ましい。Mnkアミノ酸の短い伸長部は、キメラ分子に対して産生されたキーホールリンペットヘモシニアンおよび抗体等の、別のタンパク質の伸長部と融合することができる。
【0065】
Mnkに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。これらには、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBVハイブリドーマ技術(Kohler、G.らの(1975) Nature 256:495−497;Kozbor、D.らの(1985)J.Immunol.Methods 81:31−42;Cote、R.J.らのProc.Natl.Acad.Sci.80:2026−2030;Cole、S.P.らの(1984)Mol.Cell Biol.62:109−120)が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0066】
加えて、「キメラ抗体」を産出するために開発された技術、好適な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得るためにマウス抗体遺伝子のヒト抗体遺伝子に対するスプライシングを使用することが可能である(Morrison,S.L.らの(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851−6855;Neuberger,M.S.et al(1984)Nature 312:604−608;Takeda,S.らの(1985)Nature 314:452−454)。別法では、当分野で周知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、Mnk特異性一本鎖抗体を作成する。関連特異性を有するが、固有イディオタイプ成分の一部でもある抗体は、ランダムな組み合わせの免疫グロブリンライブラリからのチェーンシャフリングによって作成することが可能である(Burton、D.R.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.88:11120−3)。抗体はまた、リンパ球集団における生体内産生の誘導によって産生することが可能であり、または組換え免疫グロブリンライブラリまたは文献に開示されているような高特異結合試薬パネルのスクリーニングによっても産生することが可能である(Orlandi、R.らの(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.86:3833−3837;Winter、G.らの(1991)Nature 349:293−299)。
【0067】
Mnkに対する特異的な結合部位を含む抗体断片も得ることができる。例えば、そのような断片には、抗体分子のペプシン消化によって産生できる蛋白分解性断片、例えばF(ab′)2断片、およびF(ab′)2のスルフィド架橋を還元することによって作成できるFab断片が含まれるが、それらに限定されるものではない。あるいは、組換え(型)の断片を作成することも可能である。例えば、Fab発現ライブラリを作製して、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を可能にすることができる(Huse、W.D.らの(1989)Science 254:1275−1281)。
【0068】
種々の免疫学的測定法をスクリーニングに対して用い、所望の特異性を有する抗体を同定することが可能である。既存の特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを使用する競合結合および免疫放射定量測定法のための幾多のプロトコルは、当分野では周知である。通常このようなイムノアッセイには、Mnkとその特異性抗体との間の複合体調整の計測が含まれる。2つの非干渉性Mnkエピトープに反応するモノクローナル抗体を利用する2部位モノクローナルベースの免疫学的測定法が望ましいが、競合結合アッセイを用いることも可能である(前出のMaddox)。
【0069】
本発明の別の実施例によれば、Mnkポリヌクレオチドまたはその任意の断片、または核酸エフェクター分子、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイムまたはRNAi分子を治療目的のために使用することが可能である。一実施態様において、組み合わせ核酸ライブラリの使用を含んだ手順のスクリーニングおよび選択によって、アプタマー、すなわち、Mnkタンパク質に対して結合し、その活性を調節する能力のある核酸分子を作成することが可能である。
【0070】
さらなる実施態様によれば、Mnkをコードするポリヌクレオチドに対するアンチセンス分子を、mRNAの転写を阻止することが望ましいような状況において使用することが可能である。具体的には、Mnkをコードするポリヌクレオチドに補遺的な配列を利用して細胞を形質転換することができる。このように、アンチセンス分子を用いてMnk活性を調節すること、または遺伝子機能を調節することができる。今このような技術は当分野では周知であり、センスまたはアンチセンスのオリゴマーまたは大きな断片を、Mnkをコードする配列のコード領域または制御領域に沿ったさまざまな位置から設計することが可能である。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスまたはワクチニア ウィルス、または種々の細菌プラスミドに由来する発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、組織または細胞集団に送達することが可能である。当業者に公知の方法を用いて、Mnkをコードする遺伝子のポリヌクレオチドに補遺的なアンチセンス分子を発現する組換えベクターを構築することが可能である。これらの技術は、Sambrookら(前出)およびAusubelら(前出)の両方の文献に記載されている。Mnkをコードする遺伝子は、ハイレベルのポリヌクレオチドを発現する発現ベクターまたはMnkをコードするその断片を用いて、細胞または組織を形質転換することによって、オフにすることがでる。そのような作成物を用いて、翻訳不可能なセンス配列またはアンチセンス配列を細胞に導入することが可能である。DNAへの組み込みが不在の場合でさえ、そのようなベクターは、RNA分子が内在性ヌクレアーゼ(核酸分解酵素)によって使用不可能になるまで継続してRNA分子を転写することが可能である。一過性の発現は、非複製ベクターによって1ヶ月以上持続することが可能であり、さらに適切な複製要素がそのベクター系の一部である場合には、より長く持続することが可能である。
【0071】
上述したとおり、遺伝子発現の修飾は、アンチセンス分子、例えば、DNA、RNA、またはPNAのような核酸アナログを、Mnkすなわち、プロモーター、エンハンサー、およびイントロンをコードする遺伝子の制御領域に対してデザインすることによって得ることができる。転写開始部位(例えば始動部位から−10〜+10の間)由来のオリゴヌクレオチドが望ましい。同様に、「三重らせん」塩基対の形成方法を用いて抑制が可能となる。三重らせん対合が有用であるのは、三重らせん対合は、ポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合に対して二重らせんが充分に開くような能力を阻害するためである。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩は文献に記載がある(Gee,J.E.らの(1994)In;Huber,B.E.and B.I.Carr,Molecular and Immunologic Approaches,Futura Publishing Co.,Mt.Kisco,N.Y.)。また、アンチセンスは、転写物のリボソームに対する結合を防止することによって、mRNAの翻訳を阻止する目的でデザインすることも可能である。
【0072】
また、酵素性RNA分子であるリボソームを用いて、RNAの特異的切断を触媒することも可能である。リボザイム作用の機構は、内ヌクレオチド結合分解性の切断に先立つ、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異性ハイブリダイゼーションに関与する。使用することが可能な実施例には、Mnkをコードする配列の内ヌクレオチド結合分解性の切断を特異的且つ効果的に触媒する組換え型のハンマーヘッド型リボザイム分子が含まれる。任意の潜在的RNA標的内の特異性リボザイム切断部位は、GUA、GUU、およびGUC配列を含めたリボザイム切断部位に対する標的分子を走査することによって最初に同定する。ひとたび同定すると、標的遺伝子の領域に対応し、切断部位を含む15〜20リボヌクレオチド間の短いRNA配列は、オリゴヌクレオチドを機能不全にするような二次構造の特色に対して評価することが可能となる。候補標的の適合性もまた、リボヌクレアーゼ保護測定法を使用して、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのアクセス容易性をテストすることにより、評価することが可能である。
【0073】
エフェクター分子、例えば本発明のアンチセンスおよびリボザイムは、核酸分子合成のために当分野で知られている任意の方法を用いて調製することが可能である。これらの方法には、固相フォスフォアミダイト化合合成のようなオリゴヌクレオチドを化学的に合成する技術が含まれる。あるいは、MnkをコードするDNA配列の生体外および生体内における転写によってRN分子を作成することもできる。このようなDNA配列は、T7またはSP6のような好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて、種々のベクターに組み込むことが可能である。あるいは、RNAを構成的または誘導的に合成するこれらのcDNA構成物アンチセンスは、細胞株、細胞、または組織内に導入することができる。RN分子を修飾して、細胞内の安定性および半減期を向上することが可能である。可能な修飾には、分子の5′末端および(または)3′末端でのフランキング配列の追加、またはホスホロチオネートの使用、または分子の背骨連鎖内のホスホジエステラーゼ連鎖ではなく2′O−メチルが含まれるが、それらに限定されるものではない。この概念は、PNAの産出に固有のものであり、例えばイノシン、クエオシン、ワイブトシンのほかに、アセチル系、メチル系、チオ系、および内在性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されない、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、およびウリジンに類似の修飾態様なども含めた非従来型塩基の抱合によって、これら全ての分子に適用することができる。
【0074】
Mnkタンパク質の活性は、例えば、前出のTschoppら(2000)によって記載されたような生体外キナーゼアッセイ、または以下に記載したようなその他任意の好適なアッセイ方式によってアッセイできる。このアッセイにおけるMnkの阻害剤としては、前出のTschoppら(2000)、または前出Knaufら(2001)によって記載されたように、CGP57380またはCGP052088のようなスタウロスポリン誘導体を使用することができる。ネガティブコントロールとしては、Mnkに対して不活性であるが、CGP052088と類似の細胞障害性を示す化合物CGP52428、またはその他任意のMnkに対する活性を例外としてキナーゼ阻害活性を備えた化学的実体を使用することができる。その上に、CGP57380の誘導体は、Mnkに対する活性のためにアッセイでき、上述したように代謝疾患の治療、予防、および診断のための物質である。CGP57380の誘導体は、例えば、従来の化学的、物理的および生化学的手段を通した修飾によって作成でき、組み合わせライブラリを産生するするために使用することが可能である。アシル化、アルキル化、エステル化、アミジン化(amidification)などは、構造上の類似体を産出するために、有向またはランダムな化学的修飾の対象となり得る。
【0075】
さらに、本発明は、上述したように、代謝疾患の治療、予防または診断のためのMnkキナーゼ阻害剤または活性化剤の使用法に関するものである。望ましくは、限定するものではないが、Mnkキナーゼ阻害剤はスタウロスポリン誘導体またはピラゾール誘導体とする。ピラゾール誘導体の実施例はEP−A−0 819 129において記載してあり、引用することを以って本明細書の一部となす。CGP57380は最大で30μMまでは細胞障害性を示さないので、望ましくはこの物質を用いてキナーゼ活性、望ましくはMnk2を阻害することが可能であり、上述したように代謝疾患の治療、予防、および診断のための物質として使用することが可能である。
【0076】
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が提供されており、生体内、生体外およびex vivoの使用に対して同程度に適している。生体内外交通治療では、ベクターは、患者から採取した幹細胞内に導入し、同一患者に自家移植で戻すためにクローン増殖することが可能である。形質移入およびリポソーム注入による送達は、当分野で周知である方法を用いて達成することが可能である。上記の治療方法はいずれも、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、および最も望ましくはヒトなどの哺乳動物を含めた、好適な被験体に適用することが可能である。
【0077】
本発明の追加実施例は、医薬用に許容できるキャリアと共に、上述の任意の治療効果のための医薬品組成物の投与に関するものである。このような医薬品組成物は、Mnk、Mnkに対する抗体、および擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、またはMnkの阻害剤から構成され得る。本組成物は単独で投与することができるが、少なくとも1つの安定化化合物などの他剤と共に投与することもでき、その場合には、限定するものではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロースおよび水などを含めた、任意の消毒した、生物学的に適合な医薬品キャリアを用いて投与することが可能である。本組成物は単独で患者に投与することができるが、他剤、薬剤またはホルモンと共に投与することも可能である。本発明で使用した医薬品組成物は、幾つもの経路によって投与することが可能であり、その経路には経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下または直腸などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
その活性成分に加えて、これらの医薬品組成物は、医薬用に使用することができる活性化合物の製剤への処理を促進する賦形剤および助剤を備えている好適な医薬用に許容できるキャリアを包含し得る。および投与に関する技術の詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(ペンシルベニア州イーストンのMaack Publishing Co.)の最新版を参照。経口投与用の医薬品組成物は、当分野で公知の医薬用に許容できるキャリアを使用して、経口投与に好適な投与量で製剤することができる。このようなキャリアを用いると、患者による摂取のために、医薬品組成物を錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁液、その他に製剤することが可能となる。
【0079】
本発明の医薬品組成物は、当分野で周知の様式、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、取り込み、または凍結乾燥プロセスなどの手段によって製造することが可能である。本医薬品成分は、塩として供給することが可能であり、多くの酸と共に形成することができ、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、琥珀酸などが含まれるが、これらに限定されるものではない。医薬品組成物を調製した後には、適切な容器に充填して治療の対象となる適応症状を標識する。Mnkの投与に対する標識には、投与の量、頻度、および方法が明記される。
【0080】
本発明に好適な医薬品組成物には、活性成分が所望の目的を達成するために有効な量で含有されているような成分が含まれる。有効投与量の定量は、当業者の能力の範囲内で行うものとする。任意の化合物の場合には、細胞培養アッセイ、例えば前脂肪細胞の細胞株の細胞培養アッセイおいて、または通常マウス、ウサギ、イヌまたはブタなどの動物モデルにおいてのいずれかで、初めに治療に有効な投与量を推定することができる。また、動物モデルを好適な濃度範囲および投与経路を決定するために使用することも可能である。次にはこのような情報を用いて、ヒトに対する有益な投与量および投与経路を決定することができる。治療的に効果的な投薬量は、例えばMnk、その断片、特定の状態を治療するためのMnkの抗体の活性処方成分の量に関連する。治療有効度および毒性は、細胞培養または実験用動物における標準的な調剤手順によって決定することが可能であり、その例としては、ED50(集団の50%において治療に有効な量)およびLD50(集団の50%に対する致死量)などが挙げられる。治療効果と毒性効果の間の投与量の比は、治療指数であり、LD50/ED50比率として表すことができる。高い治療指数を示す医薬品組成物が望ましい。細胞培養アッセイおよび動物実験から得たデータは、ヒト用のさまざまな投与量の製剤に使用する。そのような組成物に含まれる投与量は、毒性を殆ど持たないED50を含む循環濃度の範囲内にあることが望ましい。投与量は、投与量の使用元、患者の感受性、および投与の経路によって、この範囲内で変わる。正確な投与量は、治療を必要とする被験者に関する要因を考慮して、現場の医師が決定することになる。投与量および投与法は、十分なレベルの活性部を提供するため、または所望の効果を維持するように調節する。配慮される要因には、疾患の重症度、被験者の身体全体の健康状態、被験者の年齢、体重、および性別、食習慣、投与の時間と頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性、および治療に対する耐性と反応が含まれる。長時間効果のある医薬品組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス率にもよるが、3〜4日毎、1週間毎、または2週間毎に1回の間隔で投与することが可能である。通常の投与量は、投与経路にもよるが、約0.1〜100,000マイクログラムと異なり、合計投与量は約1グラムまでとする。特定の投与量および送達の方法に関する指針は文献に記載されており、当分野の実務者はそれを利用することができる。当業者であれば、タンパク質または阻害剤とは異なったヌクレオチドの製剤を利用するであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達も、特定の細胞、状態、位置などに対して特異的なものとなる。
【0081】
別の実施例によれば、Mnkを特異的に結合する抗体は、Mnkの過剰発現または低発現と関連を有することによって特徴付けられる状態または疾患の診断、またはMnk、アゴニストまたは阻害剤で治療を受けている患者を監視するためのアッセイに用いられる。診断目的に有用な抗体は、上記の治療で記載した方法と同様の様式で調製することが可能である。Mnkの診断アッセイには、抗体および標識を利用してヒトの体液、または細胞や組織の抽出物にあるMnkを検出する方法が含まれる。その抗体は、修飾の有無に拘わらず使用することが可能であり、共有結合または非共有結合のいずれかでレポーター分子と結合することによって標識化することが可能である。当分野で周知の種々のレポーター分子を使用することが可能であり、そのいくつかのレポーター分子を上記した。
【0082】
ELISA、RIA、およびFACSを始めとしたMnkを測定するための種々のプロトコルは当分野では周知であり、改変または異常レベルのMnkの発現を診断する基準を提供する。Mnk発現の正常値または標準値は、複合体の形成に適した条件下で、正常な哺乳動物から、望ましくはヒトから採取した体液または細胞をMnkに対する抗体と結合させて確定する。標準複合体形成量は、種々の方法によって定量化できるが、測光的な手段を用いることが望ましい。対照サンプルおよび疾患サンプル、例えば生検組織において発現したMnkの量を標準値と比較する。標準値と被験体の値の偏差は、疾患の診断のためのパラメータを樹立する。また、Mnk発現の分析は、当技術分野で周知であり、以下に実施例の項において詳細に記載したアッセイ形式におけるMnk活性の定量によって実施することができる。
【0083】
本発明の別の実施例によれば、Mnkに特定のポリヌクレオチドを診断のために用いることも可能である。使用可能なポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、アンチセンスRNAおよびDNA分子、およびPNAが含まれる。ポリヌクレオチドを用いて、検体におけるMnkの発現が疾患と相関し得るような該検体における遺伝子発現を検出および定量することが可能である。診断アッセイを用いて、Mnkの不在、存在および過剰発現を区別すること、および治療介入中にMnkレベルの調節を監視することが可能である。
【0084】
一実施形態によれば、Mnkまたは近縁の分子をコードするゲノム配列を始めとするポリヌクレオチド配列を検出する能力を持つPCRプローブを用いたハイブリダイゼーションを用いて、Mnkをコードする核酸配列を同定することが可能である。プローブの特異性は、それが高度に特異的な領域、例えば5′調節領域における独特のヌクレオチド、またはあまり特異的ではない領域、例えば特に3′コーディング領域のいずれから作られたに拘わらず、またそのハイブリダイゼーションまたは増幅(最大、高、中、または低)のストリンジェントの度合に拘わらず、そのプローブがMnk、対立遺伝子、または関連配列をコードする天然の配列のみを同定するかどうかを確定する。また、プローブは、関連する配列の検出に用いることもでき、望ましくは少なくとも50%のMnkをコードする任意の配列からのヌクレオチドが含まれているべきである。対象発明のハイブリダイゼーションプローブは、DNAまたはRNAであっても良く、AF237775、NM_017572.1、NM_003684.2、またはAB000409.1のヌクレオチド配列、またはプロモーター、エンハンサーエレメント、および天然Mnkのイントロンを始めとしたゲノム配列に由来し得る。MnkをコードするDNAに対する特異的ハイブリダイゼーションプローブを作製する方法には、Mnk誘導体をコードする核酸配列を、mRNAプローブを作製するためのベクターにクローニングする方法が含まれる。当業者に知られ、市販されている、このようなベクターを用いて、好適なRNAポリメラーゼおよび好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、生体内でRNAプローブを合成することが可能である。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーター集団、例えば32Pまたは35Sのような放射性核種、またはアビジン結合系やビオチン結合系などを介してプローブに結合したアルカリホスファターゼのような酵素標識によって標識することが可能である。
【0085】
Mnkをコードするポリヌクレオチド配列は、条件の診断、またはMnkの発現に関係する疾患のために使用することができる。そのような状態または疾患の実施例には、糖尿病を含む膵臓の疾患および障害が含まれるが、それらに限定されるものではない。また、Mnkをコードするポリヌクレオチド配列を用いて、糖尿病を始めとする膵臓の疾患および障害に対する治療を受けている患者の進歩状況を監視することも可能である。Mnkをコードするポリヌクレオチド配列は、変異Mnkの発現を検出するために患者の生検から採取した体液または組織を利用して、サザン法、ノーザン法、ドットブロット法またはその他の膜ベースの技術、およびPCR法、またはディップスティック法、ピンELISA法またはチップアッセイにおいて使用することが可能である。このような定量方法または定性方法は当分野で公知である。
【0086】
特定の実施形態では、Mnkをコードするヌクレオチド配列は、肥満症、糖尿病、摂食障害、消耗症候群(悪質液)、すい臓の機能障害、動脈硬化症、冠動脈疾患(CAD)、ROS産生に関連する障害、および神経変性疾患を始めとした、種々の代謝疾患および障害の活性化または誘発検出するアッセイにおいて有用であり得る。Mnkをコードするヌクレオチド配列は、標準法で標識化されることが可能であり、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者から採取した体液または組織のサンプルに添加することが可能である。好適なインキュベーション期間の後、そのサンプルを洗浄し、そのシグナルを定量化し、標準値と比較する。対照試料に比較した試料において、Mnkをコードするヌクレオチド配列の改変レベルの存在は、関連疾病の存在を示す。また、このような測定法を用いて、動物研究、臨床試験、または個々の患者の治療の監視において、特定の治療上の療法の有効性を評価することも可能である。
【0087】
Mnkの発現に関連する疾患の診断基準を提供するため、発現に対する正常概要または標準概要を確定する。これは、ハイブリダイゼーションまたは増幅に好適な条件下で、動物またはヒトの正常な被験者から抽出した体液または細胞を、Mnkをコードする配列またはその断片と結合させることによって達成し得る。標準ハイブリダイゼーションの定量化は、正常な被験体から得た値を、既知量の実質的に精製されたポリヌクレオチドを使用する実験から得た値に対して比較することによって行なうことが可能である。正常試料から得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得た試料から得た値と比較することが可能である。標準値と被験体値との間の偏差を用いて疾患の存在を確定する。ひとたび疾患の存在を確定し、治療プロトコルを開始すると、ハイブリダイゼーションアッセイを定期的に繰り返し、患者の発現レベルが正常な患者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを評価することが可能である。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日〜数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示すことが可能である。
【0088】
肥満症、糖尿病、摂食障害、消耗症候群(悪質液)、すい臓の機能障害、動脈硬化症、冠動脈疾患(CAD)を始めとした代謝疾患および障害、ROS産生に関連する障害、および神経変性疾患に関して、個体からの生検組織におけるかなり多量の転写物の存在は、疾病発生の素因を示す可能性があり、また、実際の臨床的症状の出現に先行して疾病を検出する手段を提供する可能性もある。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防手段または積極的な早期治療を施し、膵臓の疾病および障害の発達またはさらなる進行を防止することが可能となる。Mnkをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドの診断上の追加用途には、PCRの利用が含まれる得る。このようなオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素的に作成するか、または組換えソースから産出することが可能である。オリゴマーは、望ましくは2つのヌクレオチド配列から成り、その1つはセンス方向(5′.fwdarw.3′)を有し、他の1つはアンチセンス方向(3′.rarw.5′)を有し、特定の遺伝子または状況を同定するために、最適化された条件下で用いられる。オリゴマーのネスト化したセット、または縮重オリゴマーの集積である、2つの同一のオリゴマーを、あまりストリンジェントでない条件下で用いて、緊密に関連したDNA配列またはRNA配列の検出あるいは(または)定量化を行なうことが可能である。
【0089】
Mnkの発現を定量するために用いことができる方法には、放射標識またはビオチンヌクレオチド、調節核酸の相互増幅、および実験結果が補間された標準曲線等が含まれる(Melby,P.C.らの(1993)J.Immunol.Methods,159:235−244;Duplaa,C.らの(1993)Anal.Biochem.212:229−236)。複数試料の定量化速度は、目的のオリゴマーが種々の希釈液中に存在し、そして分光光度法または非色応答が迅速な定量に関与するような状態にあるELSA形態のアッセイを実行することによって加速することが可能である。
【0090】
また、本発明の別の実施例によれば、核酸Mnk配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするために有用であるハイブリダイゼーションプローブ作成することも可能である。その配列は、特定の染色体にマッピングするか、または公知の方法を用いて染色体の特定領域にマッピングすることが可能である。このような技術には、FISH、FACS、または酵母人工染色体、細菌人工染色体、細菌P1構築または単一染色体cDNAライブラリのような人工染色構造があり、Price,C.M.(1993)Blood Rev.7:127−134,およびTrask,B.J.(1991)Trends Genet.7:149−154.FISH(Vermaらによって記述されているとおり、(1988)Human Chromosomes:A Manual of Basic Techniques,Pergamon Press,New York,N.Y.)などの文献で論評されているように、他の物理的な染色体のマッピング技術および遺伝マップデータと相関することが可能である。遺伝マップデータの例は、1994 Genome Issue of Science(265:1981f)に見出すことができる。物理的染色体マップ上のMnkをコードする遺伝子の位置と、特定の疾患または特定の疾患に対する素因との間にある相関性は、遺伝子の疾病に関連するDNAの領域を画定するのに役立ち得る。
【0091】
本発明のヌクレオチド配列を用いて、健常者、保有者、または感染者の三者間における遺伝子配列の相違を検出することが可能である。確定した染色体マーカーを用いた染色体標本および結合分析などの物理的マッピング技術の原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝マップを拡張することが可能である。マウスのような別の哺乳動物種の染色体上への遺伝子の配置は、多くの場合、特定のヒト染色体の数またはアームが未知の場合でさえも、関連するマーカーを明らかにすることが可能である。新配列は、物理的マッピングによって、染色体アーム、またはその部分に指定することができる。これは、位置クローニングまたはその他の遺伝子発見技術を用いて疾病遺伝子を探索する研究者にとって貴重な情報を提供する。一旦疾患または症候群が、例えばAT〜11q22−23(Gatti,R.A.らの(1988) Nature 336:577−580)などの特定ゲノム領域への遺伝的結合によって大まかに位置決めがされると、その領域に対してマッピングする全ての配列は、さらなる究明用の関連遺伝子または調節遺伝子に相当することになる。本発明のヌクレオチド配列を用いて、転座、反転などに起因する、健常者、保有者、感染者の三者間における染色体位置の相違を検出することが可能である。
【0092】
本発明の別の実施例によれば、、本発明のタンパク質、それらの触媒作用断片または免疫抗原断片またはそのオリゴペプチド、生体外モデル、遺伝子操作を受けた細胞または動物を用いて、あらゆる薬剤スクリーニング技術を利用して化合物のライブラリをスクリーニングすることができる。1つ以上の本発明のタンパク質の作用に結合し、その作用を調節するか、または模倣するエフェクター、例えば受容体、酵素、タンパク質、ペプチド、リガンドまたは基質を同定することはできるであろう。このようなスクリーニングで用いたタンパク質またはその断片は、溶液中に遊離していても、固体支持物に付着していても、細胞表面上にあっても、または細胞内にあっても構わない。また、本発明のタンパク質とテストされる薬剤間の結合複合物の形成を測定することも可能である。また、薬剤が直接的または間接的に本発明のタンパク質の活性に影響を及ぼすこともできる。標的機構には、例えば、キナーゼ活性、特にタンパク質またはペプチドのリン酸化が含まれ、最も望ましくは、限定するものではないが、セリンおよびトレオニン残基が含まれる。別の標的機構には、リン酸化、脱リン酸、アセチル化、アルキル化、ユビキチン結合、蛋白分解性処理の細胞内局在性または劣化のような翻訳後の修飾によるMnk機能(作用)の調節が含まれ得る。さらに別の標的機構には、例えば、限定するものではないが、ホスホリパーゼA、エストロゲン受容体、キナーゼ因子または翻訳因子のようなタンパク質結合パートナーを備えたMnkの相互作用が含まれ得る。特に興味深いのは、哺乳動物の細胞に対して低毒性を有する薬剤のスクリーニングアッセイである。本明細書中で使用した用語「薬剤」は、1つ以上の本発明のタンパク質の生理機能を改変または模倣する能力を有する任意の分子、例えばタンパク質または医薬品である。候補薬剤は、典型的には有機分子であり、望ましくは50〜約2,500ドルトンの分子量を有する小有機化合物であるが、幾多の化学的クラスを包含する。候補薬剤には、タンパク質、特に水素結合との構造上の相互作用に必要な機能グループが含まれ、および典型的には少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、望ましくは少なくとも2つの機能化学グループが含まれる。候補薬剤には多くの場合、炭素環式構造または複素環式構造、および(または)1つ以上の上記機能グループと置換された芳香族構造またはポリ芳香族構造が包含される。
【0093】
候補薬剤は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、プリミジン(pyrimidies)、核酸および誘導体、構造上の類似体またはその組み合わせを含んだ生体分子間に見出される。候補薬剤は、合成化合物または天然化合物のライブラリを含んださまざまなソースから取得する。例えば、任意に抽出されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を始めとして、さまざまな有機化合物および生体分子のランダム合成および直接合成のための多くの手段が利用可能である。或いは、細菌、真菌、植物、および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリは入手可能であるか、または容易に産生することができる。その上、従来の化学的、物理的、および生化学的な手段を通して、天然または合成的に産生したライブラリおよび化合物は容易に修飾でき、それらを用いて組み合わせライブラリを産生することが可能である。アシル化、アルキル化、エステル化、アミジン化(amidification)などのような公知の薬剤は、構造上の類似体を産出するために、有向またはランダムな化学的修飾の対象となり得る。スクリーニングアッセイが結合アッセイである場合、1つ以上の分子が標識に結合することが可能であり、その標識は直接的または間接的に検出可能な信号を提供する。
【0094】
使用可能な別の薬剤スクリーニング技術は、公開 PCT出願番号WO84/03564に記載されているように、目的タンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物の高処理能力スクリーニングを提供する。この方法においては、本発明のタンパク質に対して適用されたように、多数の異なる小さな試験用化合物、例えばアプタマー、ペプチド、低分子量化合物などをプラスチックピンまたは他表面などの固体基質上で提供または合成する。試験用化合物は、タンパク質またはその断片と反応させ、洗浄した。次に、結合したタンパク質を、当分野で周知の方法で検出した。精製したタンパク質は、前記した薬剤スクリーニング技術で使用するプレート上で直接被覆することもできる。あるいは、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物上に固定することもできる。別の実施例によれば、タンパク質と結合可能な中和抗体がタンパク質と結合するため試験用化合物と特に競合し、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。この方法では抗体を用いて、タンパク質と1つ以上の抗原決定因子を共有する全てのペプチドの存在を検出することができる。
【0095】
また、候補薬剤は、さらに以下に記載したように修飾を含むかまたは含まないタンパク質またはペプチド、または他のキナーゼ基質が、本発明のタンパク質またはタンパク質断片によってリン酸化されるキナーゼアッセイにおいて見出すことが可能である。治療薬候補は、本発明のタンパク質の酵素性活性を増加または減少する能力によって同定することが可能である。キナーゼ活性は、リン酸化に起因する基質の化学的、物理的または免疫学的な特質の変化によって検出することが可能である。
【0096】
一実施例としては、放射性同位体的に標識したリン酸基を適切なドナー分子から本発明のポリペプチドによって触媒したキナーゼ基質への転移が挙げられるであろう。基質のリン酸化に継いで、当技術分野で周知の技術を用いて基質オートラジオグラフィーを検出することが可能である。
【0097】
さらに別の実施例によれば、そのリン酸化に起因する基質の質量変化は、質量分析技術によって検出することが可能である。
【0098】
また、基質のリン酸化状態と非リン酸化状態とを区別する試薬を有する基質のリン酸化状態を検出することもできる。そのような試薬は、基質のリン酸化形態とび非リン酸化形態に対して異なる親和性を有することによって、またはリン酸基に対して特定の親和性を有することによって作用することが可能である。そのような試薬は、限定するものではないが、抗体または抗体誘導体、組換え(型)の抗体様構造、タンパク質、核酸、分子を含んだ複合型の金属イオン、アニオン交換クロマトグラフィーマトリックス、親和性クロマトグラフィーマトリックスまたはその他任意の基質に対してリン酸化依存選択性を有する分子であり得る。
【0099】
そのような試薬は、酵素性反応中またはその後に固形担体上に固定したキナーゼ基質を検出するために利用することができる。試薬が抗体である場合、その基質に対する結合は、HarlowおよびLane、1998、Antibodies、CSH Lab Press、NY.において記載されているように、種々の技術によって検出することができる。試薬分子が抗体でない場合には、その結合はその化学的、物理的または免疫学的な特質が内生的にその結合に関連することによって、またはその結合に対して人工的に操作することによって検出することが可能である。
【0100】
さらに別の実施例によれば、キナーゼ基質は、基質のリン酸化状態の分析に好適な信号を作成するために、結合または検出を促進する目的で設計された特色または内因性の特色を有することが可能である。これらの特色は、限定するものではないが、ビオチン分子またはその誘導体、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ部分、6以上の連続したヒスチジン残基の1部分、アミノ酸配列またはエピトープ(抗原決定基)タグとしての機能(作用)に対するハプテン、蛍光色素、酵素または酵素断片であり得る。キナーゼ基質は、これらまたは他の特色に対して、立体障害を回避するために分子のスペーサアームを用いて連鎖することが可能である。
【0101】
一実施例によれば、キナーゼ基質は蛍光色素を用いて標識することが可能である。溶液中における標識基質に対する試薬の結合の後に、文献(例えば、Deshpande、S.らの(1999)Prog.Biomed.Optics(SPIE)3603:261;Parker、G.J.らの(2000)J.Biomol.Screen.5:77−88;Wu、P.らの(1997)Anal.Biochem.249:29−36を参照)において記載されているように蛍光偏光の技術を行うことが可能である。。この実施例の変形例によれば、蛍光性トレーサー分子は、分析物がキナーゼ活性を検出するために、当業者であれば間接蛍光偏光として公知の技術によって基質と競合することが可能である。
【0102】
本発明のタンパク質をコードする核酸を用いて遺伝子組換え細胞株および動物を作成することができる。これらの遺伝子組換え動物は、本発明生体外のタンパク質の機能および調節の研究において有用である。遺伝子組換え動物、特に哺乳動物の遺伝子組換え動物は、ヒトに共通する多くの発生プロセスおよび細胞プロセスの調査のためのモデルシステムとして役立つことができる。遺伝子組換え動物は、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の正常な遺伝子座が突然変異される場合、胚幹細胞における相同性組換を通して作製することができる。別法として、タンパク質をコードする核酸作成物を卵母細胞に注入し、ゲノムにランダムに統合する。また、本発明の遺伝子またはその変異体を、通常には発現されないか、または異常発生するような場所に発現することも可能であろう。さらには、アンチセンス分子を発現する特定の作成物のような本発明の遺伝子の変異体、または本発明のタンパク質の発現を阻止または変質する優性阻害突然変異の発現はゲノムにランダムに統合し得る。lac Zまたはルシフェラーゼのような検出可能なマーカーを、本発明の遺伝子の発現の上方制御が表現型における容易に検出可能な変化を結果としてもたらす本発明の遺伝子の遺伝子座に導入することが可能である。安定した統合のベクターには、プラスミド、レトロウィルスおよびその他の動物ウィルス、酵母菌人工染色体(YACs)などが含まれる。相同性組換えDNA構成物には、所望の遺伝的な修飾を有する本発明の遺伝子の一部が少なくとも含まれており、標的遺伝子座に対する相同性領域が含まれる。好都合なことには、ポジティブ選択およびネガティブ選択用のマーカーが含まれている。ランダム統合のためのDNA作成物には、組換えを仲介するための相同性の領域が含まれる必要はない。ランダム統合のためのDNA作成物は、本発明のタンパク質、調節元素(プロモーター)、イントロンおよびポリアデニル化信号をコードする核酸から成る。相同性組換えを通して標的遺伝子修飾を有する細胞を作成する方法は本分野で周知である。胚幹(ES)細胞に関しては、ES細胞株を用いるか、または胚細胞を宿主、例えばマウス、ラット、モルモットなどから新たに取得することが可能である。そのような細胞は適切な線維芽細胞−支持細胞層上で増殖し、そして白血病抑制因子(LIF)の存在下で増殖する。ES細胞または胚細胞を形質移入してから、遺伝子組換え動物を産生するために用いることができる。形質移入後、ES細胞を適切な培地の支持細胞層にプレーティングする。その構成物を含んでいる細胞は、選択培地を用いることによって選択することが可能である。コロニーを十分な時間をかけて増殖した後、コロニーを摘出し、相同性組換えの発生率を分析する。陽性反応を示すコロニーは、胚操作および桑実胚凝集に用いることが可能である。つまり、桑実胚を4〜6週間目の過排卵メスから取得し、透明帯を除去し、桑実胚を組織培養皿の小さなくぼみに置く。ES細胞をトリプシン処理し、修飾細胞を桑実胚の近くのそのくぼみに置く。次の日に、凝集体を偽妊娠のメスの子宮角に移す。次に、メスに出産させる。キメラの子孫は、外殻の変化によって容易に検出することができ、引き続いて突然変異の次世代への伝達のためにスクリーニングする(F1−世代)。F1−世代の子孫を修飾遺伝子の存在に対してスクリーニングし、修飾を有するオスおよびメスを交尾させ、ホモ接合性の子孫を産生する。その遺伝子改変が成長の過程で死亡率の原因となる場合には、組織または器官は、同種間移植または類遺伝子性移植、または生体外培養用として維持することができる。遺伝子組換え動物は、実験動物、家畜など、例えば、マウス、ラット、モルモット、ヒツジ、ウシ、ブタ、のような任意の非ヒト哺乳動物でよい。遺伝子組換え動物は、機能的研究、薬物[スクリーニング、およびその他の用途において使用され、本発明の生体内のタンパク質の機能および調節の試験おいて有用である。
【0103】
また、最終的に、本発明は少なくとも下記の1つから成るキットに関するものである。
(a) Mnk2(Mnk2aまたはMnk2b)またはMnk1核酸分子またはその断片;
(b) (a)の核酸を含むベクター;
(c) (a)の核酸または(b)のベクターを含む宿主細胞;
(d) (a)の核酸によってコードされたポリペプチド;
(e) (a)の核酸によってコードされた融合ポリペプチド;
(f) (a)の核酸または(d)または(e)のポリペプチドに対する抗体、アプタマーまたは別の受容体および
(g) (a)の核酸の抗センスオリゴヌクレオチド。
【0104】
本キットは、診断用または治療用に使用することが可能であり、または上記に述べたようにアプリケーションをスクリーニングするため使用すること
が可能である。さらに、キットには、取扱説明書が含まれることが可能である。
【0105】
各図は下記を示す:
図1は、Pベクター(EP対照群と比較して)のホモ接合性生存結合に起因する、EP(3)3333およびEP(3)3576ハエの中性脂肪含有量の増加を示す。ここに示したのは、中性脂肪の突然変異体のタンパク質含有量に対する比率をパーセント(%)で表したものである)。
【0106】
図2は変異型LK6遺伝子座の分子構造を示す。黒色の点線は、EP(3)3333およびEP(3)3576の統合部位を含むcDNAの位置(染色体3R上の位置7544500から7559500まで)を示す。転写されたDNA配列(EST)および予想エキソンは下部の2行目にバーとして示した。遺伝子CG17342(GadFly、Lk6)の予測エキソンは濃灰色のバーとして、およびイントロンは薄灰色のバーとしてそれぞれ示した。Lk6は、GadFly配列分析プログラムにより、GadFlyアクセッション番号CG17342として予測される遺伝子に対してコードする。
【0107】
図3はMnkタンパク質の比較を示す。
【0108】
図3Aは、異なる種、ヒトMnk2(Genbankアクセッション番号AF237775と同一)を参照するhXP_030637、ヒトMnk1(Genbankアクセッション番号AB000409.1と同一)を参照するhXP_001600、およびGadFlyアクセッション番号CG17342を備えたショウジョウバエLk6遺伝子でコードしたタンパク質を参照するAAB18789からのMnkタンパク質の比較(CLUSTAL X 1.8)を示す。
【0109】
アライメントにおけるギャップは、「−」として表す。
【0110】
図3Bは、ヒトMnk2タンパク質の比較(CLUSTAL W 1.82)を示す。Genbankアクセッション番号XM_030637.3は、Genbankアクセッション番号AF237775と同一であり、およびGenbankアクセッション番号NM_017572.1は異なるヒトMnk2タンパク質の変異型を示す。
【0111】
図3Cは、ヒトMnk1タンパク質の比較(CLUSTAL W 1.82)を示す。Genbankアクセッション番号XM_001600.2はGenbankアクセッション番号AB000409.1と同一であり、およびGenbankアクセッション番号NM_003684.2はMnk1タンパク質の異なる変異型を示す。
【0112】
図3D.ヒトMAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)2a(配列識別番号1;GenBankアクセッション番号AF237775、GenBankアクセッション番号XM_030637と同一)の核酸配列
図3E.ヒトMAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)2a(配列識別番号2;GenBankアクセッション番号AF237775、GenBankアクセッション番号XM_030637と同一)のアミノ酸配列
図3F.ヒトMAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)2b(配列識別番号3;GenBankアクセッション番号AF237776またはNM_017572)の核酸配列
図3G.ヒトMAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)2b(配列識別番号4;GenBankアクセッション番号AF237776またはNM_017572)のアミノ酸配列
図3H.ヒトMAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)1(配列識別番号5;GenBankアクセッション番号AB000409またはNM_003684またはXM_001600)の核酸配列
図3I.ヒトMAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)1(配列識別番号6;GenBankアクセッション番号AB000409またはNM_003684またはXM_001600)のアミノ酸配列
図4は、脱共役タンパク質活性を調節する因子を発見するために使用した、脱共役タンパク質(dUCPy)の過剰発現によって誘導した眼表現型を示す。写真の左部に示したハエによれば、dUCPyは通常のレベルで発現される。写真の右部に示したハエによれば、dUCPyは過剰発現され、および眼は低下される。
【0113】
図5はMnk2遺伝子発現を示す。
【0114】
図5Aは野生型マウス組織におけるMnk2のリアルタイムPCR分析を示す。
【0115】
図5Bは絶食および肥満した(ob/ob)マウスにおけるマウスMnk2遺伝子の発現を示す。
【0116】
図5Cは絶食および肥満したマウスにおけるマウスMnk2遺伝子の発現を示す。
【0117】
図5Dは、哺乳動物の線維芽細胞(3T3−L1)細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のMnk2発現のリアルタイムPCR法間接比較を示す。
【0118】
図5Eは、哺乳動物の線維芽細胞3T3−F442A細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のMnk2発現のリアルタイムPCR法間接比較を示す。
【0119】
図5Fは、哺乳動物の線維芽細胞TA1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のMnk2発現のリアルタイムPCR法間接比較を示す。
【0120】
図6はマウスMnk1遺伝子の発現を示す。
【0121】
図6Aは、野生型マウス組織におけるMnk1のリアルタイムPCR分析を示す。
【0122】
図6Bは、異なるマウスモデルにおけるMnk1発現のリアルタイムPCR法間接比較を示す。
【0123】
図6Cは、哺乳動物の線維芽細胞3T3−L1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のMnk1発現のリアルタイムPCR法間接比較を示す。
【0124】
図6Dは、哺乳動物の線維芽細胞3T3−F442A細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のMnk1発現のリアルタイムPCR法間接比較を示す。
【0125】
図6Eは、哺乳動物の線維芽細胞TA1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のMnk1発現のリアルタイムPCR法間接比較を示す。
【0126】
図7はUCPy配列を示す。
【0127】
図7Aは、ショウジョウバエUCPyタンパク質(配列認識番号7)をコードする核酸配列を示す。オープン・リーディング・フレームには下線を引いた。
【0128】
図7Bは、ショウジョウバエUCPyタンパク質(配列認識番号8)をコードするアミノ酸配列を示す。
【0129】
図 8:中性脂肪の保管、合成および輸送の定量のための生体外測定法
図8Aは、対照細胞に比較してMnk2を過剰発現する細胞における細胞中性脂肪レベル(μg/mgタンパク質)の低下を示す。全試料は繰り返して分析した(s1;試料1、s2;試料2)。Y軸は細胞中性脂肪レベル(μg/mgタンパク質)を示し、そしてX軸は細胞分化の日数を示す。
【0130】
図8Bは、対照細胞に比較してMnk2を過剰発現する細胞におけるインスリン刺激脂質合成(dpm/mgタンパク質)の低下を示す。全試料は繰り返して分析した(s1;試料1、s2;試料2)。CB(サイトカラシンB):3T3L1における背景合成を図解する。「O」は、ベースラインまたは非刺激グルコース輸送を表現し、従って細胞における基礎脂質合成を表現し、一方、Ins(インスリン)は刺激されたグルコース輸送および結果としてのグルコースの3T3L1細胞における脂質への合成を示す。Y軸はタンパク質1mgにつき毎分の分解(dpm/mgタンパク質)を示し、そしてX軸は前記タンパク質を表示する。
【0131】
図8Cは、対照細胞に比較してMnk2を過剰発現する細胞の血漿膜の全域で遊離脂肪酸の能動輸送(AT)における低下を示す。全試料は繰り返して分析した(同一のシェーディングの2つのバーによって図解したように)。PD(受動拡散):ベースラインまたは膜の全域で外来性脂肪酸の非エネルギー依存性輸送を図解した。AT(能動輸送):膜の全域で脂肪酸のエネルギー依存性輸送を表現するY軸はタンパク質1mgにつき毎分の分解(dpm/mgタンパク質)を示し、そしてX軸は前記タンパク質を表示する。
【0132】
図9は異なるヒト組織におけるヒトMnk2の発現を示す。
【0133】
図9Aは異なるヒト組織におけるヒトMnk2AおよびMnk2Bの発現を示す
図9Bは脂肪細胞分化中のヒトMnk2AおよびヒトMnk2Bの発現を示す。
【0134】
図10は、アクチン−mMnk2DN遺伝子組換えマウスにおける異所性マウスMnk2 (mMnk2DN)の導入遺伝子の発現を示す。
ここに示したのは、オスのアクチン−mMnk2DN遺伝子組換えマウスおよびオスの野生型同腹仔から分離された異なる組織のtaqman分析である。データは、対応する野生型(wt)組織に相対したRNA誘発倍率として表現される。各バーの上部の番号は、対応するwt組織に相対した誘発倍率を示す。ここに示したのは代表的な実験である。
【0135】
図11は、アクチン−mMnk2DN遺伝子組換えマウスにおける異所性のマウスMnk2(mMnk2DN)の発現が体重の増加につながるたことを明らかにする。
ここに示したのは、10週間にわたる高脂肪食後のオスのbアクチン−mMnk2DN遺伝子組換えマウス(濃灰色グラフ)およびオスのwt同腹仔(薄灰色グラフ)の成長曲線である。データは期間中の平均体重+/−標準誤差として表現した。ここに示したのは、群当たりのマウスをそれぞれN=8、N=10とした、代表的な実験である。
【0136】
図12は、マウスMnk2遺伝子のエキソン/イントロン境界を示す。
マ0ウスMnk2遺伝子のエキソン/イントロン境界はこの図において図解する。cエキソン番号、DNA(GenBankアクセッション番号BC010256)上のエキソンの位置、およびイントロン長も示す。イントロン配列は小文字で示し、そしてエキソン配列は大太文字で示す。
【0137】
図13は相同性組換えによるマウスMnk2遺伝子の標的削除を図解する。
上部のラインはマウスMnk2の野生型遺伝子座を示し、中間部にあるグラフィックスはターゲッティングベクターを示し、そして図の底部にあるグラフィックスは標的遺伝子座を図解する。エキソンは黒色ボックスとして示す。制限部位、翻訳開始部位、および終止コドンも示してある。PGK−NEOカセットおよびTKカセットは灰色ボックスとして示す。マウスMnk2遺伝子の4.4kbのゲノム領域は、PGK NEOカセットによって置換する。除去された領域も表示した。サザンブロット分析に使用した外側フランキングプローブは黒色バーで示す。EcoR1消化DNA上のこのプローブで検出したゲノム断片は矢印として示す。詳細は実施例を参照。
【0138】
図14は、精製されたMnk2aがキナーゼErk2および二重点変異体Mek1 S218D S222Eの製剤(調製)を用いて生体外で活性化できることを明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、Pベクター(EP対照群と比較して)のホモ接合性生存結合に起因する、EP(3)3333およびEP(3)3576ハエの中性脂肪含有量の増加を示している。
【図2】図2は変異型LK6遺伝子座の分子構造を示している。
【図3A】図3Aは、異なる種、ヒトMnk2(Genbankアクセッション番号AF237775と同一)を参照するhXP_030637、ヒトMnk1(Genbankアクセッション番号AB000409.1と同一)を参照するhXP_001600、およびGadFlyアクセッション番号CG17342を備えたショウジョウバエLk6遺伝子でコードしたタンパク質を参照するAAB18789からのMnkタンパク質の比較(CLUSTAL X 1.8)を示している。
【図3B】図3Bは、ヒトMnk2タンパク質の比較(CLUSTAL W 1.82)を示す。Genbankアクセッション番号XM_030637.3は、Genbankアクセッション番号AF237775と同一であり、およびGenbankアクセッション番号NM_017572.1は異なるヒトMnk2タンパク質の変異型を示している。
【図3C】図3Cは、ヒトMnk1タンパク質の比較(CLUSTAL W 1.82)を示す。Genbankアクセッション番号XM_001600.2はGenbankアクセッション番号AB000409.1と同一であり、およびGenbankアクセッション番号NM_003684.2はMnk1タンパク質の異なる変異型を示している。
【図3D】図3Dは、ヒトMAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)2a(配列識別番号1;GenBankアクセッション番号AF237775、GenBankアクセッション番号XM_030637と同一)の核酸配列を示している。
【図3E】図3Eは、ヒトMAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)2a(配列識別番号2;GenBankアクセッション番号AF237775、GenBankアクセッション番号XM_030637と同一)のアミノ酸配列を示している。
【図3F】図3Fは、ヒトMAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)2b(配列識別番号3; GenBankアクセッション番号AF237776またはNM_017572)の核酸配列を示している。
【図3G】図3Gは、ヒトMAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)2b(配列識別番号4;GenBankアクセッション番号AF237776またはNM_017572)のアミノ酸配列を示している。
【図3H】図3Hは、ヒトMAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)1(配列識別番号5;GenBankアクセッション番号AB000409またはNM_003684またはXM_001600)の核酸配列を示している。
【図3I】図3Iは、ヒトMAPキナーゼ結合キナーゼ(Mnk)1(配列識別番号6;GenBankアクセッション番号AB000409またはNM_003684またはXM_001600)のアミノ酸配列を示している。
【図4】図4は、脱共役タンパク質活性を調節する因子を発見するために使用した、脱共役タンパク質(dUCPy)の過剰発現によって誘導した眼表現型を示している。
【図5A】図5Aは野生型マウス組織におけるMnk2のリアルタイムPCR分析を示している。
【図5B】図5Bは絶食および肥満した(ob/ob)マウスにおけるマウスMnk2遺伝子の発現を示している。
【図5C】図5Cは絶食および肥満したマウスにおけるマウスMnk2遺伝子の発現を示している。
【図5D】図5Dは、哺乳動物の線維芽細胞(3T3−L1)細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のMnk2発現のリアルタイムPCR法間接比較を示している。
【図5E】図5Eは、哺乳動物の線維芽細胞3T3−F442A細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のMnk2発現のリアルタイムPCR法間接比較を示している。
【図5F】図5Fは、哺乳動物の線維芽細胞TA1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のMnk2発現のリアルタイムPCR法間接比較を示している。
【図6A】図6Aは、野生型マウス組織におけるMnk1のリアルタイムPCR分析を示している。
【図6B】図6Bは、異なるマウスモデルにおけるMnk1発現のリアルタイムPCR法間接比較を示している。
【図6C】図6Cは、哺乳動物の線維芽細胞3T3−L1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のMnk1発現のリアルタイムPCR法間接比較を示している。
【図6D】図6Dは、哺乳動物の線維芽細胞3T3−F442A細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のMnk1発現のリアルタイムPCR法間接比較を示している。
【図6E】図6Eは、哺乳動物の線維芽細胞TA1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のMnk1発現のリアルタイムPCR法間接比較を示している。
【図7A】図7Aは、ショウジョウバエUCPyタンパク質(配列認識番号7)をコードする核酸配列を示している。
【図7B】図7Bは、ショウジョウバエUCPyタンパク質(配列認識番号8)をコードするアミノ酸配列を示している。
【図8A】図8Aは、対照細胞に比較してMnk2を過剰発現する細胞における細胞中性脂肪レベル(μg/mgタンパク質)の低下を示している。
【図8B】図8Bは、対照細胞に比較してMnk2を過剰発現する細胞におけるインスリン刺激脂質合成(dpm/mgタンパク質)の低下を示している。
【図8C】図8Cは、対照細胞に比較してMnk2を過剰発現する細胞の血漿膜の全域で遊離脂肪酸の能動輸送(AT)における低下を示している。
【図9A】図9Aは異なるヒト組織におけるヒトMnk2AおよびMnk2Bの発現を示している。
【図9B】図9Bは脂肪細胞分化中のヒトMnk2AおよびヒトMnk2Bの発現を示している。
【図10】図10は、アクチン−mMnk2DN遺伝子組換えマウスにおける異所性マウスMnk2(mMnk2DN)の導入遺伝子の発現を示している。
【図11】図11は、アクチン−mMnk2DN遺伝子組換えマウスにおける異所性のマウスMnk2(mMnk2DN)の発現が体重の増加につながるたことを示している。
【図12】図12は、マウスMnk2遺伝子のエキソン/イントロン境界を示している。
【図13】図13は相同性組換えによるマウスMnk2遺伝子の標的削除を示している。
【図14】図14は、精製されたMnk2aがキナーゼErk2および二重点変異体Mek1 S218D S222Eの製剤(調製)を用いて生体外で活性化できることを示している。
【実施例】
【0140】
この実施例は、本発明を図解するものである。
【0141】
実施例1:変異型ハエの中性脂肪含有量の測定(図1)
特殊な発現系(EP−element、Rorth P、Proc Natl Acad Sci USA 1996、93(22):12418−22)を含んだキイロショウジョウバエの中性脂肪含有量の変化を測定した。変異体ハエはハエ変異在庫コレクションから取得する。ハエは、当業者であれば公知の標準条件下で増殖し、そして実験の過程で、追加摂食としてベーカーの酵母菌(サッカロミセスセレビジエ)を与える。特異的に、ホモ接合性オスのEP(3)3333およびEP(3)3576ハエを対照ハエに比較して検討した(図1)。中性脂肪含有量の定量のため、ハエを、5分間、90℃にて水溶性の緩衝液中において水浴を使用してインキュベートした後に熱抽出を行なった。さらなる5分間、90℃にてインキュベーションし、マイルドな遠心分離を行なった後、Sigma 中性脂肪(INT 336−10または−20)アッセイを使用し、製造者のプロトコルに従って光学的な濃度における変化を測定することによって、ハエ抽出物の中性脂肪含有量を決定した。参照として、BIO−RAD DCタンパク質測定法を使用し、製造者のプロトコルに従って、同一抽出のタンパク質含有量を測定した。その測定法を何度か繰返した。EPコレクションの中性脂肪平均レベルを100%として図1に示した。EP(3)3333およびEP(3)3576ホモ接合性ハエは、対照と比較して常に高い中性脂肪含有量を示す(およそ140 %増)。つまり、遺伝子座86F7(推定)における遺伝子活性の変化は、EP(3)3333およびEP(3)3576ハエのEP−ベクターがLk6遺伝子座にホモ接合性生存結合している場合、エネルギー保管中性脂肪代謝における変化の原因であり、以上の点から両方の事例において、肥満したハエモデルを表している。
【0142】
実施例2:エネルギー保管中性脂肪の代謝における変化に関与するショウジョウバエ遺伝子の同定(図2)
EPベクターの統合に対して直接的に近接して局在するゲノムDNA配列を分離した(本明細書中ではEP(3)3333およびEP(3)3576)。それらの分離したゲノム配列を用いて、Berkeleyショウジョウバエ ゲノムプロジェクト(GadFly)のような公共データベースをスクリーニングし、それによってEP(3)3333ベクターおよびEP(3)3576ベクターのホモ接合性生存統合部位を確認した。図2はこの遺伝子座の分子構造を示す。図2において、ゲノムDNA配列は、EP(3)3333およびEP(3)3576の統合部位が含まれている黒色の点線としてアッセンブリによって表してある(染色体3R上の位置7544500から7559500まで)。転写されたDNA配列(発現した配列タグ、EST)および予想エキソンは下部の2行目にバーとして示す。遺伝子CG17342(GadFly、Lk6、Mnkに対して相同性を持つ)の予測エキソンは濃灰色バーとして示し、およびイントロンは図の中間部に細い灰色ラインとして示した。プラスミド救出方法を用いて、ゲノムDNA配列を直接的に局在化した3′のEP(3)3333およびEP(3)3576統合部位を分離した。プラスミド救出DNAを用いて、公共DNA配列データベースをスクリーニングし、それによってEP(3)3333およびEP(3)3576統合部位をの同定し、中性脂肪含有量の増加を引き起こした。EP(3)3333は遺伝子CG17342の5プライムエキソンの5′領域において、およびEP(3)3576は代替5′エキソンの5′領域において、それぞれ統合する。Mnkは、GadFly配列分析プログラムによってCG17342として予測される遺伝子に対してコード化する。以上の点から、CG17342の発現は、EP(3)3333およびEP(3)3576のホモ接合性生存統合によって影響され、エネルギー保管中性脂肪の増大および脱共役タンパク質活性の変化につながる。
【0143】
実施例3:ヒト脱共役タンパク質(UCP)に対して相同性を有するイロショウジョウバエ遺伝子のクローニング(図7)
ヒトUCP2およびUCP3遺伝子に対して相同性を持つ配列は、公的に利用できる全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のデータベースのプログラムBLASTを用いて同定した(Altschulらの、1997、Nucleic Acids Res.25:3389−3402を参照)。相同性検索により、UCP相同性を有するショウジョウバエ遺伝子ファミリーの配列断片が産出された。それらは明らかに、隣接する関連ミトコンドリアのタンパク質(オキシグルタミン酸担体)と異なる。
【0144】
この遺伝子の1つの配列断片(本明細書ではdUCPyと呼ぶ)を使用して、PCR法プライマーペアを作成し(上位 5′−CTAAACAAACAATTCCAAACATAG(配列識別番号9)、下位5プライム−AAAAGACATAGAAAATACGATAGT(配列識別番号10)、そして標準PCR法条件を使用して、PCR反応をショウジョウバエcDNA上に実施した。増幅生成物を放射的に標識化し、成体のショウジョウバエハエ(ストラタジーン社)から調製したcDNAライブラリをスクリーニングするために使用した。完全長cDNAクローンを分離し、配列し(図7)、さらに先の実験に使用した。dUCPyのヌクレオチド配列は図7A(配列識別番号7)に示し、推定したオープン・リーディングは図7B(配列識別番号8)に示す。
【0145】
実施例4:dUCPy cDNAのショウジョウバエ発現ベクターへのクローニング
ショウジョウバエ細胞におけるdUCPyの発現効果をテストするために、制限部位NotIおよびKpnIを使用して、dUCPy cDNAを発現ベクターpUASTにクローニングした(Brand A&Perrimon N,Development 1993,118:401−415)結果として生じた発現構成物を、ショウジョウバエ胚の生殖細胞系列およびショウジョウバエの菌株に注入して、安定した構成物の統合を作成した。発現ベクターpUASTは、ショウジョウバエ細胞には通常存在しない酵母菌転写因子Gal4によって活性化されるので、dUCPyは、これらの遺伝子組換え動物には未だ発現されていない。pUAST−dUCPyハエが、組織特定の様式でGal4を発現する第2のショウジョウバエ菌株と交雑する場合、この交配による子孫ハエは、組織を発現するGal4においてdUCPyを発現する。
【0146】
その本体の全細胞においてGal4を発現する菌株とのpUAST−dUCPyハエの交雑種は(アクチンプロモーターの制御下にて)生存可能な子孫を示さなかった。これは、全細胞におけるdUCPyの過剰発現が致死的であることを意味する。この発見は、dUCPyの過剰発現が細胞エネルギーの産出の崩壊を引き起こすという仮定と一致している。
【0147】
眼(「無眼」遺伝子の眼特異性プロモーターの制御下にあるGal4)のような非重要器官におけるdUCPyの発現は結果として、可視に損傷した眼を有するハエを生じる。この容易に可視の眼表現型は、UCP活性を修飾できる遺伝子産物の遺伝的スクリーニングの基盤である。
【0148】
実施例5:dUCPy修飾因子スクリーニング(図4)
眼にGal4発現を有する菌株のゲノム部分とpUAST−dUCPy構成物を保有する菌株とを、ゲノム組換え(再結合)を用いて1つの染色体上に混合した。結果として生じたハエ菌株は、dUCPy発現によって永久に損傷した眼を有する。この菌株のハエを、変異誘発したハエ菌株の大きな収集のハエと交雑種せしめた。この変異体収集において、特別発現システム(EPエレメント、前出のRorth、1996を参照)を異なるゲノム座位でランダムに統合する。酵母菌転写因子Gal4は、EPエレメントに結合し、そしてEPエレメントの統合部位を閉じる内在性遺伝子の転写を活性化することができる。遺伝子の活性化は以上の点から、dUCPyを過剰発現する同一細胞(眼)において発生する。変異体収集は、EPエレメントの異なる統合部位を有する数千の菌株を含むので、遺伝子の発現がdUCPy活性と相互作用するかどうかを確認するために、多数の遺伝子をテストすることが可能である。遺伝子が、UCP活性エンハンサーとして作用する場合には、眼欠陥は悪化され、抑制因子として作用する場合には、その欠陥は回復される(図4を参照)。
【0149】
このスクリーニングを用いて、促進活性を備えた遺伝子を発見し、これがショウジョウバエにおけるLK6キナーゼであることが判明した。
【0150】
実施例6:ショウジョウバエのLk6のクローニング(図3A)
EPエレメントを救出する眼欠陥に近傍するゲノムDNAを逆PCR法によってクローニングし、配列した。この配列を、ショウジョウバエ遺伝子の公共データベースにおいて「BLAST」検索に用いた。ショウジョウバエ タンパク質のアミノ酸配列を図3Aに示す(dmAAB18789と呼ばれる)。
【0151】
実施例7: 哺乳動物のLK6相同性タンパク質の同定(図3)
配列に対して相同性を持つショウジョウバエのLk6は、公的に利用できる全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の非重複タンパク質データベースのプログラムBLASTP 2.2.3を用いて同定した(Altschulらの、1997、Nucleic Acids Res.25:3389−3402を参照)。
【0152】
よって、Mnk相同性タンパク質および核酸分子コーディングは、昆虫または脊椎動物各種、例えば、哺乳動物または鳥から入手可能である。特に好適なのは、ヒトMnk相同性ポリペプチドおよび核酸、特にヒトMnk2タンパク質(Genbankアクセッション番号AF237775およびNM_017572.1;Genbankアクセッション番号AF237775は提出者の要求で除去された旧番号Genbankアクセッション番号XM_030637と同一;図3BのClustal W複数配列アライメントを参照)をコードするポリペプチドおよび核酸、またはヒトMnk1タンパク質(Genbankアクセッション番号AB000409.1およびNM_003684.2;Genbankアクセッション番号AB000409.1は提出者の要求で除去された旧番号Genbankアクセッション番号XM_001600と同一;図3CのClustal W複数配列アライメントを参照)をコードする核酸。
【0153】
図3Aは、異なる種、ヒトMnk2(Genbankアクセッション番号AF237775と同一)を参照するhXP_030637、ヒトMnk1(Genbankアクセッション番号AB000409.1と同一)を参照するhXP_001600、およびGadFlyアクセッション番号CG17342を備えたショウジョウバエ遺伝子でコードしたタンパク質を参照するdmAB18789からのMnkタンパク質のアライメントを示す。
【0154】
本発明のマウス相同性ポリペプチドは、GenBankアクセッション番号NP_067437.1(マウス相同体MAPキナーゼ結合セリン/トレオニンキナーゼ2用;Mnk2;cDNA GenBankアクセッション番号BC010256)およびGenBankアクセッション番号NP_067436.1(マウス相同体MAPキナーゼ結合セリン/トレオニンキナーゼ1用;Mnk1)として同定した。
【0155】
実施例8:哺乳動物(マウス)の組織におけるポリペプチドの発現(図5および図6)
本発明において開示した哺乳動物の組織におけるポリペプチドの発現を分析するため、いくつかのマウス菌株(望ましくは、標準モデル系における肥満症および糖尿病の研究であるマウス菌株C57Bl/6J、C57Bl/6 ob/obおよびC57Bl/KS db/db)は、Harlan Winkelmann (33178 Borchen、Germany)から購入し、一定の温度下に維持し(望ましくは22℃)、湿度40パーセントおよび明/暗サイクルは望ましくは14/10時間とした。マウスには標準食を与えた(例えば、ssniff Spezialitaten有限責任会社、製品番号ssniff M−Z V1126−000)。絶食実験(「絶食野生型マウス」)に関しては、野生型マウスを食物を与えずに水のみを適時に与えるだけで48時間飢えさしめた(例えば、SchnetzlerらのJ Clin Invest 1993 Jul;92(1):272−80、MizunoらのProc Natl Acad Sci U S A 1996 Apr 16;93(8):3434−8を参照)。動物は6〜8週間目に達した時点で屠殺した。動物組織は、当業者であれば公知の標準手順に従って分離し、液体窒素で簡易冷凍し、必要となるまで−80℃にて保管した。
【0156】
本発明において開示した生体外分化におけるタンパク質の役割の分析のため、異なる哺乳動物細胞の培養細胞、前脂肪細胞の脂肪細胞への変換、哺乳動物の線維芽細胞(3T3−L1)細胞(例えば、Green&Kehinde、Cell 1:113−116、1974)をAmerican Tissue Culture Collection(米国バージニア州ハナサスのATCC、;ATCC−CL 173)から入手した。3T3−L1細胞は線維芽細胞として維持し、従来の技術に記述されたように脂肪細胞へ分化した(例えばQiu.らのJ.Biol.Chem.276:11988−95、2001;SliekerらのBBRC 251:225−9、1998)。手短に言えば、細胞はDMEM/10%FCS(Invitrogen社、Karlsruhe、ドイツ)において50,000細胞/ウェルおよび6ウェル プラスチック皿の二通りにプレーティングし、5%の二酸化炭素、37℃の加湿環境において培養した。集密日(0日目:d0と定義した)細胞は、DMEM/HamF12(3:1;Invitrogen社)、フェチュイン(300μg/ml;Sigma社、Munich、ドイツ)、トランスフェリン(2μg/ml;Sigma社)、パントテン酸(17μM;Sigma社)、ビオチン(1μM;Sigma社)、およびEGF(0.8nM;Hoffmann−La Roche社、Basel、スイス)を含んだ無血清(SF)培地に移した。分化は、デキサメサゾン(DEX;1μM;Sigma社)、3−メチル−イソブチル−1−メチルキサンチン(MIX;0.5mM;Sigma社)、およびウシインスリン(5μg/ml;Invitrogen社)を添加することによって誘導した。集密日(d4)後の4日間は、分化が完了するまで、細胞をウシインスリン(5μg/ml)を含んだSF培地中に保持した。分化手順の異なる時点、第0日目(密集日)を始めに、第2日目(ホルモン追加;例えば、デキサメタゾンおよび3−イソブチル−1−メチルキサンチンの追加)、および10日間を最大とする分化中で、好適な細胞のアリコットを2日毎に採取した。
【0157】
別法として、哺乳動物の線維芽細胞3T3−F442A細胞(例えば、Green&Kehinde,Cell 7:105−113,1976)は、ハーバード大学医学部,細胞生物学科(米国マサチューセッツ州ボストン)から取得した。3T3−F442A細胞は、線維芽細胞として維持し、前述のように脂肪細胞へ分化した(Djian、P.らの、J.Cell.Physiol.、124:554−556、1985)。分化手順のいくつかの時点、第0日目(密集日およびホルモン、例えばインシュリン追加)を始めに、10日間を最大とする分化中で、好適な細胞のアリコットを2日毎に採取した。3T3−F442A細胞は、ホルモン(インシュリン)追加後に既に密集段階の生体外で分化を始めている。
【0158】
本発明のタンパク質のTaqMan分析を行なった(図5および図6)。RNAをTrizol試薬(例えば、ドイツ、KarlsruheのInvitrogen社製)を使用して、マウス組織または細胞の培養細胞から分離し、さらに、RNeasyキット(例えば、ドイツ、Qiagen社製)と共に、DNase−treatmentを使用し、製造者の指示に従って当業者であれば公知の方法で精製した。全RNAを逆転写(望ましくはドイツ、KarlsruheのInvitrogen社製のSuperscript II RNaseH−逆転写酵素を用いる)し、望ましくはTaqman 2xPCR Master Mix(ドイツ、WeiterstadtのApplied Biosystems社;このミックスには、製造者によれば、例えばAmpliTaq ゴールドDNAポリメラーゼ、AmpErase UNG、dUTP を有するdNTP、Rox passive referenceおよび最適化された緩衝液成分などが含まれている)を使用してTaqman分析をGeneAmp 5700配列検出システム(ドイツ、WeiterstadtのApplied Biosystems社製)上で行った。
【0159】
Mnk2またはMnk1の発現の分析のため、次のプライマー/プローブ対を用いてtaqman分析を実施した:
マウスMnk1フォーワードプライマー(配列識別番号11)5′−GCT GAG GGC CTC TGC TCC−3′;
マウスMnk1逆プライマー(配列識別番号12)5′−TCG CCT TCG AGC CAG G−3′;
マウスMnk1 Taqmanプローブ(配列識別番号13)(5/6−FAM)TGA AGC TGT CCC CTC CAT CCA AAT CTC (5/6−TAMRA)
Taqman−1856F Mnk2フォーワードプライマー(配列識別番号14):5′−TGCACTTGATTGACCCCGA−3′
Taqman−1923R Mnk2逆プライマー(配列識別番号15):5′−TTTCTGATTGTCAACCCTCCAA−3′
Taqman−1877T Mnk2 Taqmanプローブ(配列識別番号16):(5/6−FAM)−CCCCATCATCCACCTGCAGTGTCC−(5/6−TAMRA)
Taqman分析は、Mnk2がより興味深いハエLk6遺伝子の相同体であることが明らかになった。その成果を図5および図6に示す。むしろ偏在的に発現するMnk1と比較して、Mnk2は茶色および白色脂肪組織において最も高い発現レベルを示す(それぞれ図5Aおよび6A)。白色脂肪組織におけるMnk2の発現は代謝制御下で行われる:絶食マウスおよび肥満した(ob/ob)マウスにおいては、発現は野生型マウスのレベルの40%に低下する(図5C;図5Bも参照)。加えて、Mnk2の発現は3T3−L1(図5D)の生体外分化中に強く誘導され、同様に、2つの追加モデル系の発現は、前脂肪細胞の脂肪細胞への生体外分化、3T3−F442A細胞株およびTA1細胞株に対して強く誘導される(それぞれ図5Eおよび図5F)。これとは反対に、Mnk1の相対発現レベルはこれらの細胞株の分化中に変化しない(それぞれ図6Dおよび6E)。
【0160】
実施例9:哺乳動物(ヒト)の組織におけるポリペプチドの発現(図9)
ヒト初代脂肪細胞をHaunerらの1989(J Clin Invest84(5):1663−70)によって記載されたように成熟脂肪細胞分化した。簡潔に、細胞をDMEMと栄養素混合F12、1%のPenStrep、17μMのビオチン、33μMのパントテン酸(Pantothenat)、10%の熱不活化されていない胎児の子ウシ血清で育てた。分化の0日目には、培地をDMEM/栄養素混合F12、1%のPen/Strep、17μMのビオチン、33μMのパントテン酸(Pantothenat)、0,01mg/mlのトランスフェリン、ヒドロコルチゾン、20nMのヒトインスリン、0,2nMのT3、25nMのデキサメサゾン、250μMのIBMX、3μMのロシグリタゾンに変えた。分化の4日目には、培地をDMEM/栄養素混合F12 1%のPen/Strep、17μMのビオチン、33μMのパントテン酸(Pantothenat)、0,01mg/mlのトランスフェリン、100nMのヒドロコルチゾン、20nMのトインスリン、0,2nMのT3に変えた。分化手順のいくつかの時点、第0日目(密集日)および第4日目(ホルモン追加)を始めに、14日間を最大とする分化中には、好適な細胞のアリコットを2日毎に採取した。RNAをTrizol試薬(例えば、ドイツ、KarlsruheのInvitrogen社製)を使用して、ヒト細胞の培養細胞から分離し、さらにRNeasyキット(例えば、ドイツ、Qiagen社製)と共にDNase−treatmentを使用し、製造者の指示に従って当業者であれば公知の方法で精製した。
【0161】
異なる分化段階でヒト脂肪細胞から分離したRNAに加えて、異なるヒト組織から分離されたRNAをInvitrogen社、Karlsruhe、ドイツから取得した:(i)成体骨格筋からの全RNA(Invitrogen社の注文番号735030);(ii)成体肺からの全RNA(Invitrogen社の注文番号735020);(iii)成体肝臓からの全RNA(Invitrogen社の注文番号735018);(iv)成体胎盤からの全RNA(Invitrogen社の注文番号735026);(v)成体睾丸からの全RNA(Invitrogen社の注文番号64101−1);(vi)ヒト通常の脂肪組織からの全RNA(Invitrogen社の注文番号D6005−01);(vii)通常すい臓からの全RNAヒト(Invitrogen社の注文番号DG6101);(viii)ヒト通常脳からの全RNA(Invitrogen社の注文番号D6030−01)。RNAをDNaseを用いて、製造者(例えば、ドイツのQiagen社)の指示および当業者であれば公知の方法に従って処理した。
【0162】
全RNAを逆転写(望ましくはドイツ・Karlsruhe、Invitrogen社のSuperscript II RNaseH−逆転写酵素)し、Taqman分析を望ましくはTaqman 2xPCR Master Mix′(ページ66、31行目:ドイツ・Weiterstadt、Biosystems社;実施例8を参照)を用いて行った。
【0163】
Taqman分析は、望ましくは下記のプライマー/プローブペアを用いて実施する:
ヒトMnk2a増幅用:
ヒトMnk2aフォーワードプライマー(配列識別番号17):5′−cca tct ccc cct ctg tac ata gg−3′;ヒトMnk2a逆プライマー(配列識別番号18):5′−ccg gct ggc gat agc tta a −3′;Taqmanプローブ(配列識別番号19):(5/6−FAM)cac ccg tcc ccc aat caa atc taa agg(5/6−TAMRA)
ヒトMnk2b増幅用:
ヒトMnk2bフォーワードプライマー(配列識別番号20):5′−TTA CTG TGA ATG AGT GAA GAT CCT GG −3′;ヒトMnk2b逆プライマー(配列識別番号21):5′−ATG GCC GTT CAC CGT CC −3′;Taqmanプローブ(配列識別番号22):(5/6−FAM)CCA GGC CAG CTC CCA TCG CTG(5/6−TAMRA)
図9Aに示したように、ヒト組織におけるMnk2aおよびMnk2bタンパク質の発現のリアルタイムPCR法(Taqman)分析は、両タンパク質が脂肪組織、筋肉、肺、睾丸、および胎盤における高レベルの発現で分析したすべての組織において発現されることを明らかにした。
【0164】
両者のヒトMnk2スプライス変異体の相対発現レベルは分析したすべての組織に対して同一である。両者は共に、代謝障害、すなわち脂肪および筋肉組織に関連性のある組織において最も高い発現レベルを示す。
【0165】
図9Bに示したように、ヒト脂肪細胞分化中にMnk2aおよびMnk2bは共に上方制御される。これは、成熟脂肪細胞の代謝における両タンパク質の機能(作用)を示唆する。
【0166】
実施例10:中性脂肪の保管、合成および輸送を定量のための測定法(図8)
前脂肪細胞のレトロウイルス性の感染
パッケージング細胞を、リン酸カルシウム法を用いて、マウスMnk2導入遺伝子および選択マーカーを保有するレトロウイルス性のプラスミドpLPCXで形質移入した。対照細胞を導入遺伝子を保有しないpLPCXで感染せしめた。簡潔に、指数関数的に成長するパッケージング細胞を、形質移入の1日前に、2mlのDMEM+10%FCSにおいて、6−ウェルあたり350,000細胞の密度で播種した。形質移入の10分前に、クロロキンを表面を覆う培地に直接添加した(25μM最終濃度)。250μlの形質移入のための混合物は、5μgのプラスミド−DNA(候補:ヘルパーウイルス、比率1:1)および250mMの塩化カルシウム(CaCl2)から成り、15mlのプラスチック管において調製した。同一容量の2 x HBS (280μMのNaCl、50μMのHEPES、1.5mMのNa2HPO4、pH 7.06)を加えた後、気泡を混合物に15秒間注入した。形質移入混合物を滴下式でパッケージング細胞に添加および分布した後に、細胞を37℃にて、5%のCO2で6時間インキュベートした。細胞はPBSで洗浄した後、培地を6−ウェル当たり2mlのDMEM+10%のCSと交換した。形質移入の1日後、細胞を再び洗浄し、6−ウェル当たり1mlのDMEM+10%のCS、32℃にて、5%のCO2において2日間(ウイルスコレクション)インキュベートした。さらに、その上澄みを0.45μmのセルロース アセテート フィルタを通してフィルターし、そしてポリブレン(最終濃度8μg/ml)を添加した。半密集状態における哺乳動物の線維芽細胞(3T3−L1)細胞を調製したウイルスを含んだ培地で覆った。感染した細胞を2μg/mlのピューロマイシンを用いて1週間選択した。その選択後、ウエスタンブロットおよび免疫蛍光を用いて細胞における導入遺伝子の発現を確認した。過剰発現細胞を分化のために播種した。
【0167】
3T3−L1細胞は線維芽細胞として保ち、従来の技術および実施例8において記載されたように脂肪細胞に分化した。本発明で開示したタンパク質の役割を分析するため、中性脂肪の保管、合成および輸送を定量するための生体外測定法を実施した。
【0168】
代謝産物の分析のための細胞可溶化液の調製
集密日(D0)以来、細胞培地は48時間毎に変えた。細胞および培地は次のように培地交換に8時間先行して収穫した。培地を収集し、PBSにおいて2回洗浄した600μlのHB−緩衝剤(0.5%ポリオキシエチレン10 tridecylethan、1mMのDTA、0.01MのNaH2PO4、pH7.4)における溶解に先行して、細胞を2回洗浄した。70℃にて5分間の不活性化後、細胞可溶化液をBio 101系溶解マトリックスB(0.1mmシリカ ビーズ;Q−Biogene社、Carlsbad、USA)上で、2 x 45秒間、4.5(Fastprep FP120、Bio 101 Thermosavant社、Holbrock、USA)の速度で攪拌することによって調製した。溶解細胞の上澄みを、3000rpmにて2分間の遠心分離後に収集し、後の分析のため、−80℃にてアリコットに保管した。
【0169】
脂質生成中の細胞の中性脂肪レベルにおける変化(図8A)
細胞可溶化液および培地のタンパク質および中性脂肪含有量の総量を、製造者の指示従って、Bio−Rad DCタンパク質測定法試薬(Bio−Rad社、Munich、ドイツ)および修飾酵素性中性脂肪キット(GPO−Trinder;Sigma社)を用いて、6−ウェルプレートにおいて同時に分析し、簡潔に、試薬の最終容量を次のように96−ウェル形式に調節した:10μlの試料を200μlの試薬Aを用いて5分間37℃でインキュベートした。グリセローム(初期の吸光度:540nm)の定量後、50μl試薬Bを添加し、継いで、別のインキュベーションを5分間、37℃にて行った(最終吸光度:540nm)。グリセローム濃度および中性脂肪濃度を、標準曲線を各測定に含むためにグリセローム標準セット(Sigma社)を用いて計算した。
【0170】
図8Aに示したように、発明者らは、細胞過剰発現するMnk2における細胞の中性脂肪レベルが対照細胞のレベルと比較して、4〜12日目の脂質生成において著しく低くなることを見出した(図8A)。これらの結果は、Mnk2が脂質代謝に関与する調節経路または酵素を標的とすることを示すものであり、発明者らは以下に記載した脂質合成およびFFA輸送測定法においてより詳細に分析した。
【0171】
脂質生成中の脂質の合成(図8B)
脂質生成の末端段階中(第12日目)では、脂質を代謝する能力に関して細胞を分析した。脂質合成のため、Jensenらの(2000)、JBC 275、40148の方法に対する修飾プロトコルを樹立した。細胞は、0.1%のFCSで補充したKrebs−Ringer−Bicarbonate−Hepes緩衝剤(KRBH;134nMのNaCl、3.5mMのKCl、1.2mMのKH2 PO4、0.5mMのMgSO4、1.5mMのCaCl2、5mMのNaHCO3、10mMのHepes、pH7.4)における2.5時間、37℃にての血清飢餓に先行して、PBSで3回洗浄した。インスリン刺激脂質合成に関しては、細胞を1μMのウシインスリン(Sigma社;キャリア:0.005 NのHCl)で45分間、37℃にてインキュベートした。基礎脂質合成は、キャリアのみを用いて決定した。14C(U)−D−グルコース(NEN Life Sciences社)(1μCi/ウェル/mlの最終活性における)を5mMのグルコースの存在下で30分間37℃にて添加した。背景放射能の算出対しては、25μMのサイトカラシンB(Sigma社)を使用した。すべての測定法は、二通りのウェルにおいて実施した。反応を終結するため、細胞を氷のように冷たいPBSで3回洗浄し、1ml 0.1NのNaOHにおいて溶解した。各ウェルのタンパク質濃度は、標準Biuret方法(タンパク質測定法試薬;Bio−Rad社)を用いて評価した。全脂質は、Insta−Fluorシンチレーション反応混液(Packard Bioscience社)において一晩抽出後に水溶性の位相から分離し、継いで、シンチレーションカウンティングを行った。
【0172】
結果は明確に、細胞を過剰発現するMnk2が外来性グルコースからの脂質合成において効果の弱いことを明らかにした。その結果、脂質合成を刺激したインスリンのレベルは対照細胞と比較して、脂質生成の12日目で著しく低下した(図8B)。以上の点から、上記実験において観察された低脂質レベルは、結果 大部分 可能性もあるから取り出したa低い脂質合成率からの結果で、増大した脂質貯蔵の代謝回転の結果ではない可能性が極めて高い。
【0173】
脂質生成中の全域にわたる遊離脂肪酸の輸送および代謝(図8C)
脂質生成(D12)の末端段階中、細胞の長鎖脂肪酸を血漿膜全域に輸送する能力を分析した。脂肪酸の細胞輸送のため、Abumradらの(1991)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1991:88;6008−12)の方法に対する修飾プロトコルを樹立した。要約すれば、血清飢餓に先行して、細胞をPBSで3回洗浄した。これに継いで、0.1%のFCSで補充したKRBH緩衝剤において、2.5時間、37℃にてインキュベートした。外来性遊離脂肪酸の取り込みは、非放射性のオレイン酸および5mMのグルコース存在下で、1μCi/ウェル/mlの最終活性において血清アルブミンに対して複合型の(3H)オレイン酸(NEN Life Sciences社)を含んだ同位体の培地の追加により、30分間、室温(RT)にて開始した。血漿膜全域で能動輸送(AT)の不在下における、受動拡散(PD)の算出するため、グルコース遊離培地(Sigma社)における20mMのフロレチンを30分間、室温(RT)にて添加した。すべての測定法は、二通りのウェルにおいて実施した。能動輸送を終結するため、グルコース遊離培地における20mMのフロレチンを細胞に添加した。細胞を1ml 0.1NのNaOHに溶解し、そして標準Biuret方法(タンパク質測定法試薬;Bio−Rad社)を用いて各ウェルのタンパク質濃度を評価した。エステル型の脂肪酸は、Insta−Fluorシンチレーション反応混液(Packard Bioscience社)において一晩抽出を用いて遊離脂肪酸から分離し、継いで、シンチレーションカウンティングを行った。
【0174】
発明者らは、外来性脂肪酸の輸送が細胞を過剰発現するMnk2の血漿膜を横切ること、従ってこれらの代謝産物のエステル化は対照細胞と比較して、脂質生成の12日目で相当に低いことを見出した(図8C)。まとめると、Mnk2の過剰発現は、発明者らが3T3−L1細胞中で実施したすべての3測定法において中性脂肪代謝上に効果のあることを示し、Mnk2は代謝障害を治療するための有望で興味深い薬物標的とみなされる。
【0175】
実施例11:Mnk2遺伝子組換え動物の作成および分析(β−アクチン−mMnk2DN)
遺伝子組換え動物の作成
当業者であれば公知のような標準プロトコルを用いて、、マウスMnk2のcDNAをマウス茶色脂肪組織(BAT)から分離し次のプライマーペアを用いて、cDNAをRT−PCRによって増幅した:
Mnk2フォーワードプライマー(配列識別番号23):5′ AAG TTG GCC TTC GCG TTA GAC 3′
Mnk2逆プライマー(配列識別番号24):5′ CGA TAT GTA CAA GGA GCT AG 3′。
【0176】
結果として得られたMnk2のcDNAを標準プロトコルに従ってpBluescript KS+(Stratagene社)へクローニングし、pKS+−mMnk2′と呼ばれるプラスミドを結果としてもたらした。pKS+−mMnk2 cのcDNAを、製造者の指示に従って、部位の定方向突然変異誘発(Stratagene社)を用いて変異した。Mnk2上部オリゴ (配列識別番号25):5′ CTC CCC CAT CTC CGC ACC AGA GCT GCT CGC CCC GTG TGG GTC AG 3′およびMnk2底部オリゴ(配列識別番号26):5′ CTG ACC CAC ACG GGG CGA GCT CTG GTG CGG AGA TGG GGG AG 3′を用いて二点変異をcDNAに導入し、Mnk2 cDNAの位置T197とT202でA197とA202へのアミノ酸交換を結果としてもたらした。
【0177】
結果として得られた変異型cDNA(mMnk2DNと呼ばれる)を、遺伝子組換え発現ベクターpTG−β−アクチン−X−hgh−bgh−ポリAのEcoRV クローニング部位へクローン化した。β−アクチン−Mnk2DN導入遺伝子を、受精したマウス胚(望ましくは菌株C57/BL6/CBA F1(Harlan Winkelmann))の雄性前核へ微量注入した。注入した胚は偽妊娠の仮親マウスへ移した。遺伝子組換えの初代を、フォーワードプライマー(配列識別番号27):5′ GCT GCT GGT CCG AGA TGC C 3′および逆プライマー(配列識別番号28):5′ GGG TCA TGC GCG ATC CCC 3′を用いて、PCR分析によって検出した。β−アクチン−Mnk2DN作成物を含んだ2つの非依存性遺伝子組換えマウスラインを樹立し、C57/BL6の背景に保持した。簡潔に、分析用のF1マウスを作成するために、初代動物をC57/BL6マウスと戻し交配した。遺伝子組換えマウスをC57/Bl6背景上へ連続的に繁殖せしめた。
【0178】
異なるマウス組織における作成物の発現(図10)
標準技術で、β−アクチン−Mnk2DN導入遺伝子発現をTaqman分析によって、フォーワードプライマー(配列識別番号29):5′ CAG CGT GGT AGT ACA GGA CGT G 3′、逆プライマー(配列識別番号30):5′ TCC CTG TGG GCG ATG C 3′およびプライマー(配列識別番号31):5′ CAG TGC CCT GGA CTT CCT GCA TAA CAA 3′用いて検証した。Taqman分析は、マウス組織の代表的パネルを用いて実施した。
【0179】
bアクチン−Mnk2DN導入遺伝子の発現を次の組織において観察した:WAT、筋肉、肝臓、腎臓、胸腺、心臓、肺、および脾臓。導入遺伝子の発現レベルは、分析した組織によるが、野生型マウスにおけるMnk2の発現と比べて2.8〜16.9倍増加した。Mnk2導入遺伝子の発現は、BAT組織においては検出されなかった(図10を参照)。
【0180】
遺伝子組換えマウスの体重の分析(図11)
離乳後、オスのβ−アクチン−mMnk2DN遺伝子組換えマウスおよびそれらの野生型(wt)同腹仔対照を4〜5動物(N=4、最大でN=5)群に分け、食餌制限(望ましくはAltromin C1057 mod control、4.5%の粗脂肪または高脂肪食(望ましくはAltromin C1057mod.高脂肪、23.5%粗脂肪)をした。12〜16週間の期間にわたって、動物の全体重を毎週測定した。
各食餌で、β−アクチン−mMnk2DN遺伝子組換えマウスの平均体重は、それぞれの食餌で野生型同腹仔に比較して明らかに増加した。両食餌で、平均体重の著しい相違が最初に観察されたのは、出世後第4週目終わり頃であった。高脂肪食での10週間後、β−アクチン−mMnk2DN遺伝子組換えマウスの平均体重はwt同腹仔に比較して8.8g(=wt同腹仔の平均体重と比べて23%の増加)増加した(図11)。食餌制限をしたwtマウスおよびβ−アクチン−mMnk2DN遺伝子組換えマウスの平均体重においても類似の相違が観察された(データ図示せず)。従って、これらの結果は、mMnk2DN導入遺伝子の異所性発現が体重の増加につながることを明らかに示す。本効果は、食餌制限と同様に高脂肪食の場合でも見られるように、与えると食餌とは無関係のように思われる。
【0181】
実施例11:mMnk2−/−マウスの作成および分析(図12および図13)
mMnk2のcDNA(GenBankアクセッション番号BC010256;位置61−665)の605ベースペア プローブを、フォーワードプライマー(配列識別番号32):5′ ACA TCA GCC CAC AGT GTG A 3′および逆プライマー(配列識別番号33):5′ TCT CCA TTG AGT TTG ATA CCA 3′を用いてPCR法によって、マウス白色脂肪組織(WAT)のcDNAから増幅した。このプローブは、129SVJゲノムファージライブラリをスクリーニングするために使用した(Stratagene社から取得した)。3つの非依存性クローンを分離し、そしてpBluescript KS+のNotIクローニング部位へサブクローニングした(Stratagene社)。これらのゲノムクローンを制限マッピングおよびシーケンシングのために用い、マウスMnk2のゲノム遺伝子座を特徴づけた(図12)。PGK−ネオマイシン カセットをマウスMnk2の遺伝子座に挿入し、4,4kbのゲノムDNAを置換し、それによってmMnk2の全翻訳領域を除去した。簡潔に、8kb SpeI−NotI断片をPGK−ネオマイシン カセットのpBluescript KS+上流のXbaI部位にクローニングし、それをpBluescriptのSmaI部位に挿入した。1kbのゲノム断片を、次のプライマーペア(非プライミング ヌクレオチド/付属的な制限部位は小文字表示):Mnk2−SAフォーワードプライマー(配列識別番号34):EcoRI 5′ cgg aat CCA CTA GCT CCT TGT ACA TAT 3′;Mnk2−SA逆プライマー(配列識別番号35):ClaI 5′ cca tcg atG GAA CTC GTA TTG CAT AGT AG 3′を用いて、PCR法によって増幅した。結果として得られた断片をpBluescript KS+のEcoRI/ClaI部位に挿入した。ネガティブ選択マーカーとしてチミジンキナーゼ カセットをターゲッティング作成物のClaI/XhoI部位にクローニングした。(図13)作成物をNotI消化によって直線化し、そしてマウス胚幹(ES)細胞に電気穿孔した。ES細胞クローンを、G418およびガンシクロビル(Gancyclovir)治療(望ましくは350μgのG418/mlおよび2μmのガンシクロビル)によって選択した。600のネオマイシン耐性コロニーの中から2つの非依存性の相同性組み換えES細胞クローンをPCR法によって同定した。その結果は、3′フランキングプローブ(位置2495−3065mMnk2のcDNA)を用いて、EcoRI消化ゲノムDNAのサザンブロット分析によって確認した。単一の統合イベントを、ネオマイシンプローブを用いて、BamHI消化DNAのサザンブロット分析によって確認した。ES細胞クローンをNMRIマウスから取り出した8−細胞−段階胚で凝集し、そして発生発達する胚盤胞をキメラを作成するため偽妊娠のマウスに移した。キメラをC57/BL6マウスと繁殖させ、そして次のプライマー: Mnk2−ESプライマー(配列識別番号36):5′ AGA CTA GGG AGG AGG GTG GAG GA 3′;Mnk2−KOプライマー(配列識別番号37):5′ GGT GGA TGT GGA ATG TGT GCG A 3′;Mnk2−WT 5′ GGG GTGTAG GGG TCT GTT AGG 3′を用いて、子孫の遺伝子型をPCR法によって同定した。ヘテロ接合性マウスを、さらに交雑させるためおよび分析jを行うために使用した。
【0182】
実施例11:小分子のスクリーニング
Mnk−関連の代謝障害の予防、治療または診断のために好適である化合物は、Mnkポリペプチド、Mnkポリペプチド断片またはその誘導体に関連する機能(作用)を測定するために、キナーゼアッセイ、結合アッセイまたは他の任意の好適な測定法を介して同定することが可能である。このキナーゼアッセイは、組換え(型)のヒトMnk2(Mnk2aまたはMnk2b)またはMnk1タンパク質およびelF4E標的配列から成る標識ペプチド、標識組換え(型)elF4E標的配列または基質としての標識組換え(型)elF4Eタンパク質を利用したものであってもよい。測定法は、放射性のキナーゼアッセイまたはSer209にてelF4Eリン酸化を認識する能力のある抗ホスホセリン抗体を利用した測定法であってもよい。
【0183】
例えば、キナーゼMnk2a(GenBankアクセッション番号AF237775;図3Dおよび3Eも参照)、Erk2(GenBankアクセッション番号M84489)およびアミノ酸置換Ser218AspおよびSer222Glu(S218D S222E)を含んだMek1の二重点変異体(GenBankアクセッション番号Q02750)を大腸菌において発現し、引き続いて当業者であれば公知の方法を用いて精製した。望ましくは、50μlのキナーゼ反応において、200nMのErk2プラス20nMのMek1 S218D S222E(図14における標識レーン1〜4)または50nMのErk2プラス2.5nMのMek1 S218D S222E (図14における標識レーン5〜8)を用いて、2.0μMのMnk2aを、1.0mMのATP、50mMのHepes/KOH、5mMの塩化マグネシウムおよび0.5mMのDTTの存在下で30℃にてインキュベートした。所定の時点(0、10、20および40分間、図14を参照)で、試料を反応から取り出し、50mMのEDTAを含んだSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)試料緩衝剤中に希釈し、そしてSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分離した。SDS−PAGE分離反応試料をニトロセルロース上にブロットし、そしてMnk活性化にとって必須であるホスホ−エピトープ(eptipe)に対する抗体でプローブした(anti−Phospho−Mnk Thr197/202;Cell Signaling Technology,Inc.,Beverly,MA)。抗ホスホ−Mnk抗体を、他で記載されているように、ペルオキシダーゼ共役抗ウサギ抗体(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)で検出した。(HarlowおよびLane,1998,Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY)。
【0184】
反応が進むにつれて、Mnk2aの活性化は抗ホスホ−Mnk抗体とのMnks免疫反応性により可視化することができる(図14の上部パネルを参照)。加えて、Mnk2aをゲルのクーマシー染色によって可視化した。矢印は、その移動性が増加するリン酸化のために遅延されるクーマシー染色されたMnk2aを示す(図14の下部パネルを参照)。
【0185】
Mnk2aの活性化にとって必須であるホスホ−エピトープの作成、およびこのプロセスの高度な効率(ほぼ完全な電気泳動移動性の変化によって示されたように)は、酵素的に活性なMnk2aを産生するためのこのアプローチ適合性を実証する。
【0186】
測定法の確証に関しては、CGP57380またはCGP025088のような現在わかっているMnk阻害剤を使用することが可能である。(Knaufらの、2001、Mol.Cell.Biol.21:5500、Tschoppらの、2000、Mol Cell Biol Res Comm 3:205およびSlentz−Keslerらの、2000、Genomics 69:63を参照、)。ネガティブコントロールとしては、CGP052088を使用することが可能である。
【0187】
あるいは、スクリーニングには細胞ベースのスクリーニング系、例えばMnkタンパク質を過剰発現する真核または原核細胞の使用を包むことが可能である。さらには、Mnk2および(または)Mnk1を過剰発現または低発現する能力のある遺伝子組換え動物を使用することも可能である。
【0188】
本明細書において開示した全ての刊行物および特許を言及することをもって本明細書の一部となす。
【0189】
本発明の方法およびシステムの種々の修正および改変は当業者に当然のことであり、本発明の範囲および精神から逸脱しない限り行い得るものとする。本発明について説明するにあたり特定の好適実施例に関連して説明を行ったが、本発明の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことは当然のことながら共通認識とする。実際に、分子生物学または関連分野の専門家には明らかな、本明細書に記載されている本発明の実施方法の様々な改変は、特許請求の範囲内にあるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mnk2の機能的等価物であり、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるMnk2相同性ポリペプチド又はMnk2の機能的等価物であるその断片の酵素活性を増加または減少させる物質のスクリーニング方法であって、以下の工程
(a)下記の混合物をインキュベートする工程および
(aa)酵素的に活性なMnk2の機能的等価物であり、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるMnk2相同性ポリペプチド又はMnk2の機能的等価物であるその断片
(ab)蛍光体でラベルされているキナーゼ基質;および
(ac)候補物質
(ad)適切な反応バッファー
(b)キナーゼ基質のいかなるリン酸化を検出する工程、その際、上記候補物質が溶液中で上記蛍光体ラベルされたキナーゼ基質と結合し、その際、蛍光性の偏りが、上記Mnk2の機能的等価物であり、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるMnk2相同性ポリペプチド又はMnk2の機能的等価物であるその断片の酵素活性における増加または減少を検証するのに用いられる、
を含む、Mnk2の機能的等価物であり、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるMnk2相同性ポリペプチド又はMnk2の機能的等価物であるその断片の酵素活性を増加または減少させる物質のスクリーニング方法。
【請求項2】
上記キナーゼ基質が、基質上に固定化される請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記キナーゼ基質が、立体障害をさけるために分子スペーサー腕によって上記特徴と関連する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
候補物質のために、キナーゼ基質と競争する蛍光性のトレーサー分子をさらに含み、
その際、間接的な蛍光性の偏りが、上記Mnk2の機能的等価物であり、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるMnk2相同性ポリペプチド又はMnk2の機能的等価物であるその断片の酵素活性における増加または減少を検証するために使用される請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A−1】
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【図3A−2】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H−1】
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【図3H−2】
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【図3I】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−119398(P2010−119398A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56183(P2010−56183)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【分割の表示】特願2003−539705(P2003−539705)の分割
【原出願日】平成14年10月29日(2002.10.29)
【出願人】(510053400)ベーリンガー インゲルハイム インテルナツィオナール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim International GmbH
【住所又は居所原語表記】Binger Strasse 173, D−55216 Ingelheim am Rhein, Germany
【Fターム(参考)】