説明

エネルギー管理システム、およびエネルギー分析システム

【課題】 プラントのプロセス毎の原単位を導出する等のエネルギー分析を行なうことができ、効果的な省エネルギー施策を見つけ出すことが可能なエネルギー管理システム、およびエネルギー分析システムを提供する。
【解決手段】 プラントのプロセス毎に、電力量計1と流量計2を設け、これらの計測値はコントローラ20を経由して監視制御システム10に伝送される。監視制御システム10では、これらの電力量データおよび流量データから、プロセス毎のエネルギー原単位を求めて、表示部に表示し、プリンタから報告書として出力する。これにより、プラントのプロセス毎の原単位を導出する等のエネルギー分析を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道プラント等のプラントの監視制御システムにおいてエネルギー管理を行なうエネルギー管理システム、およびプラントに対してエネルギー分析を行なうエネルギー分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
省エネ法が改正され、上下水道事業体も図6の第一種、第二種に分類されるプラントではエネルギー使用量について報告する義務を負うようになった。
【0003】
また、年間1%の省エネルギーの義務を負うようになったため、プラント内のどのプロセスでエネルギーが非効率に使用されているかを分析したいというニーズが高まってきた。省エネルギー分析ではプロセス毎の原単位(下記の式(1))を導出することが重要である。
【0004】
原単位=使用電力量*α/処理水量・・・・式(1)
(ここでαは夜間電力使用量を割り引くため経済産業省が定める計算式によって算出される係数)
ところが、従来の上下水道プラントの監視制御システムにおいては、図7に示すように、初沈73、曝気槽74、終沈75、濃縮機76、脱水機77、…の各プロセスからなるプラントの中でも特に電力を消費する設備、例えば曝気槽74や脱水機77等の電力量しか計測しておらず、計測されているとしても、監視制御装置70にはデータが取り込まれず、現場操作盤80にしかデータが伝送されない場合があった。
【0005】
すなわち、従来の上下水道プラントの監視制御システムにおいては、例えば国など外部への報告はプラント全体について行なえばよいため、発電設備71や受電設備72などからプラント全体の電力量は計測されているが、プロセス毎に原単位を求める必要はなく、プロセス毎の電力量の計測は行われていないのが現状である。
【0006】
従って、従来の上下水道プラントの監視制御システムにおいては、プロセス毎の電力量が分からず、プロセス毎に原単位を求めることができない。
【0007】
なお、公共用水のデータを解析、シミュレーションし、センサーを設置していない場所のセンシングを仮想的に行なうことは、例えば、特許文献1に記載されているが、その方法は、具体的には示されてはいない。
【特許文献1】特開2000−107744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来の上下水道プラントの監視制御システムでは、プロセス毎の原単位を導出する等のエネルギー分析を行なうことができず、効果的な省エネルギー施策を見つけ出すことができないという問題があった。
【0009】
本発明は、従来のこのような点に鑑みて為されたもので、プラントのプロセス毎の原単位を導出する等のエネルギー分析を行なうことができ、効果的な省エネルギー施策を見つけ出すことが可能なエネルギー管理システム、およびエネルギー分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為に、本発明に係るエネルギー管理システムは、プラントのプロセス毎にそれぞれ設けられ、電力量を計測する電力量計測手段および流量を計測する流量計測手段と、電力量計測手段で計測された電力量と流量計測手段で計測された流量からプロセス毎の原単位を算出する原単位算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るエネルギー管理システムは、プラントの所定箇所の流量を計測する流量計測手段と、この流量計測手段により計測された流量を用いてプラントの各プロセスへの流入流量を算出する流量算出手段と、プラントのプロセス毎の稼働率に関するデータを得る手段と、この手段により得られたプロセス毎の稼働率に関するデータとプロセス毎の定格電力合計値とから、プロセス毎の電力量を算出する電力量算出手段と、この電力量算出手段で算出されたプロセス毎の電力量と、流量算出手段で算出された各プロセスへの流入流量からプロセス毎の原単位を算出する原単位算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るエネルギー分析システムは、各プラントからネットワークを経由して送信されたプロセス毎の原単位の算出に必要な計測データあるいは機器の状態を示すデータを受信するための受信手段と、この受信手段により受信された計測データあるいは機器の状態を示すデータを用いて、各プラントのプロセス毎の原単位を算出する原単位算出手段と、この手段により算出された各プラントのプロセス毎の原単位を、ネットワークを経由して各プラントに送信するための送信手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プラントのプロセス毎の原単位を導出する等のエネルギー分析を行なうことができ、効果的な省エネルギー施策を見つけ出すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る上下水道プラントの監視制御システムにおけるエネルギー管理システムを、図1を参照して説明する。
【0016】
この第1の実施形態では、図1に示すように、従来技術と比較して、各プロセス毎に電力量計と流量計とを設け、各プロセスの電力量と流量を監視制御システムに取り込む点が特徴である。
【0017】
すなわち、図1に示すように、従来と同様に発電設備11、受電設備12にそれぞれ電力量計1を設けるとともに、プロセス毎、すなわち、初沈13、曝気槽14、終沈15、濃縮機16、脱水機17、…にそれぞれ電力量計1と流量計2とを設けている。
【0018】
そして、この第1の実施形態の監視制御システムでは、従来の監視制御システム機能(例えば、故障の発報やプロセス値の表示)にエネルギー管理機能を追加して、プロセス(例えば、初沈や終沈、水処理や汚泥処理等)毎の原単位をリアルタイムで演算し、監視制御システム10の表示部に表示し、プリンタから出力できる点に特徴がある。
【0019】
すなわち、初沈13、曝気槽14、終沈15、濃縮機16、脱水機17、…にそれぞれ設けられた電力量計1と流量計2の計測値は、コントローラ20を経由して監視制御システム10に伝送され、監視制御システム10に設けられたデータベースに保存され、保存された電力量データおよび流量データから、上述の式(1)により、プロセス毎の原単位が、演算手段によりリアルタイムで例えば1分周期で演算される。そして、演算結果は、監視制御システム10に設けられた表示部に、リアルタイムで例えば1分周期で表示されるとともに、例えば毎日報告書としてプリンタから出力される。
【0020】
また、本実施形態の監視制御システムでは電力量から、契約料金や夜間電力料金を考慮して、電力コストを演算し、上述の原単位とともに、表示したり、プリンタから報告書として出力したりすることもできる。
【0021】
以上説明したように、この第1の実施形態では、上下水道プラントの各プロセス毎に電力量計と流量計とを設け、各プロセス毎に確実にエネルギー原単位を求めて、リアルタイムで表示して確認できるとともに、報告書を作成できるという効果が生ずる。
【0022】
(第2の実施形態)
上述の第1の実施形態では上下水道プラントの各プロセスに流量計、電力量計を設置し、各プロセスのエネルギー原単位を算出する方法について示したが、この第2の実施形態では、上下水道プラントの各プロセスに流量計、電力量計が設置されていない場合の各プロセスのエネルギー原単位(=各プロセスの使用電力量*α/各プロセスの処理流量)の算出方法について示す。
【0023】
すなわち、この第2の実施形態では、流量の物質収支、プロセス毎の機器の定格電力、プロセスの稼働率(総数に対する稼動数あるいは1日の稼動時間)から各プロセスのエネルギー原単位を概算する。以下にその方法を示す。
【0024】
まず、各プロセスの流量の算出方法について説明する。下水処理のプロセスは図2のように多くのプロセス、すなわち沈砂池21、最初沈殿池22、曝気槽23、最終沈殿池24、…等で構成される。上述のように全てのプロセスで処理流量が計測されてはいないが、所定の箇所(例えばポンプの箇所等)に設けられた流量計により、前のプロセスの流入流量やポンプでの引抜き汚泥流量などがわかっている場合、流量の物質収支から後のプロセスの処理流量は計算で求めることができる。例えば曝気槽23の場合、以下の式で求められる。
【0025】
Q4=Q1−Q2+Q3
ここでQ1は最初沈殿池22への流入流量、Q2は生汚泥引抜き量、Q3は返送汚泥流量、Q4は曝気槽23への流入流量すなわち曝気槽23での処理流量である。同様にして、図2に示すような下水処理の各プロセスの処理流量は全て前のプロセスの流入流量やポンプでの引抜き汚泥流量などから算出することができる。
【0026】
次に、各プロセスの電力量の算出方法について説明する。各プロセスの電力量は以下の式によって算出する。
【0027】
W=Y×N
ここでWは各プロセスの電力量、Yは各プロセスの電気設備の定格電力合計値、Nは各プロセスの稼働率(総数に対する稼動数あるいは1日の稼動時間)である。
【0028】
各プロセスの電気設備の定格電力合計値は図3のようなプロセス毎の電気設備の情報から確認できる。すなわち、各プロセスにおけるそれぞれの電気設備の台数に定格電力(一台当たり)を掛けたものを合計して求めることができる。
【0029】
また、各プロセスの稼働率(総数に対する稼動数あるいは1日の稼動時間)を求める方法としては、以下の2つの方法がある。
【0030】
(1)各プロセスの主機の運転状況から、プロセスの稼働率(総数に対する稼動数あるいは1日の稼動時間)を想定する方法。
【0031】
(2)各プロセスの定格容量から、プロセスの稼働率(総数に対する稼動数あるいは1日の稼動時間)を想定する方法。
【0032】
上記2つの方法について説明する。
【0033】
まず(1)の各プロセスの主機の運転・停止から、プロセスの稼働率(総数に対する稼動数あるいは1日の稼動時間)を想定する方法が適用できるのは、図4に示すように、初沈(最初沈殿池)43、曝気槽44、終沈(最終沈殿池)45、濃縮機46、脱水機47等の各プロセスの主な機器の運転状態3を示す運転・停止信号や弁の開閉状態4を示す開閉信号が、コントローラ50を経由して監視制御システム40に伝送され、監視制御システム40で、これらの信号が収集される場合である。
【0034】
この方法ではプロセス毎に主機を設定する。例えば、図3および図4に示したプロセスでは最初沈殿池43の主機は汚泥かき寄せ機メイン、曝気槽44の主機は送風機、最終沈殿池45の主機は汚泥かき寄せ機メインなどである。設定する主機には、監視制御システム40で運転・停止信号が収集されている電気設備(運転・停止信号が収集されている電気設備が複数種類ある場合は、総数の系列に対する稼動中の系列の割合を最も的確に表す電気設備)を選択する。この方法では主機が系列毎に設置されている場合はプロセスの稼動数から稼働率(稼動数/総数)を算出でき、また少なくともプロセスの運転時間から稼働率(運転時間/24時間)を知ることができる。
【0035】
次に、(2)の各プロセスの定格容量から、プロセスの稼働率(総数に対する稼動数あるいは1日の稼動時間)を想定する方法について説明する。
【0036】
この方法ではプロセス毎の定格容量を設定する。例えば、最初沈殿池43の水面積負荷d(=一日当りまたは一分当たりの処理水量/最初沈殿池の面積)を定格容量として設定した場合、池の稼働率(総数に対する稼動数あるいは1日の稼動時間)Nは以下の式で算出される。
【0037】
N=Q1/d/S
ここでSは最初沈殿池43の面積である。なお、Q1が一日当りの流量の場合は、dは一日当り処理水量/最初沈殿池の面積とし、Q1が一分当りの流量の場合は、dは一分当り処理水量/最初沈殿池の面積とする。
【0038】
同様にして、図3および図4に示すような下水処理の各プロセスの稼働率(総数に対する稼動数あるいは1日の稼動時間)は全て処理流量と定格容量から算出することができる。
【0039】
以上説明したように、この第2の実施形態では、流量計や電力計を設置していないプロセスについても、流量、電力量を算出し、プロセス毎のエネルギー原単位を求めることができる。
【0040】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を、図5を参照して説明する。
【0041】
この第3の実施形態の構成は、図5に示すように、第1の実施形態または第2の実施形態と比較して、各プラントの監視制御システム内で行なっていたエネルギー分析を、ネットワークを利用して、エネルギー分析センターで行なう点が異なっている。
【0042】
すなわち、この実施形態においては、各プラント51、52、…、5nにおいて計測される計測データあるいは機器の状態を示すデータ、例えば第1の実施形態において電力量計と流量計で計測されるデータや、第2の実施形態において計測される流量データあるいは主な機器の運転・停止信号や弁の開閉信号を各プラント51、52、…、5nのデータ収集装置6でそれぞれ収集し、公衆回線等のネットワーク60を経由してエネルギー分析センター(エネルギー分析システム)61にリアルタイムで送信する。
【0043】
エネルギー分析センター(エネルギー分析システム)61では、各プラント51、52、…、5nからネットワーク60を経由して送信された計測データあるいは機器の状態を示すデータを受信してデータベース7に保存する。そして、データベース7に保存されたデータから、計算機8により、各プラント51、52、…、5nのプロセス毎のエネルギー原単位および電力コストを演算する。これらの演算結果は公衆回線等のネットワーク60を経由して各プラント51、52、…、5nにそれぞれリアルタイムで送信する。各プラント51、52、…、5nの監視制御装置5においては、エネルギー分析センター(エネルギー分析システム)61から送られてきた演算結果のデータを、リアルタイムで、表示部に表示したり、報告書としてプリンタから出力したりすることができる。
【0044】
これらの構成により、プラント毎に必要であったエネルギー分析を、エネルギー分析センター(エネルギー分析システム)で一括して行なうことができるという効果が生ずる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第2の実施形態における各プロセスの流量算出方法を説明するためのプロセスフローを示す図。
【図3】本発明の第2の実施形態における各プロセスの定格電力合計値算出方法を説明するための表図。
【図4】本発明の第2の実施形態における各プロセスの機器の状態を示す信号から稼働率を算出する方法を説明するためのブロック図。
【図5】本発明の第3の実施形態の構成を示すブロック図。
【図6】第一種、第二種に分類されるプラントの定義を示す表図。
【図7】従来例の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0046】
1…電力量計
2…流量計
10、40…監視制御システム
11、41…発電設備
12、42…受電設備
13、22、43…最初沈殿池(初沈)
14、23、44…曝気槽
15、24、45…最終沈殿池(終沈)
16、46…濃縮機
17、47…脱水機
20、50…コントローラ
3…主な機器の運転状態
4…弁の開閉状態
5…監視制御装置
6…データ収集装置
7…データベース
8…計算機
51、52、…、5n…プラント
60…ネットワーク
61…エネルギー分析センター(エネルギー分析システム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントのプロセス毎にそれぞれ設けられ、電力量を計測する電力量計測手段および流量を計測する流量計測手段と、前記電力量計測手段で計測された電力量と前記流量計測手段で計測された流量からプロセス毎の原単位を算出する原単位算出手段とを備えたことを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項2】
プラントの所定箇所の流量を計測する流量計測手段と、この流量計測手段により計測された流量を用いてプラントの各プロセスへの流入流量を算出する流量算出手段と、プラントのプロセス毎の稼働率に関するデータを得る手段と、この手段により得られたプロセス毎の稼働率に関するデータとプロセス毎の定格電力合計値とから、プロセス毎の電力量を算出する電力量算出手段と、この電力量算出手段で算出されたプロセス毎の電力量と、前記流量算出手段で算出された各プロセスへの流入流量からプロセス毎の原単位を算出する原単位算出手段とを備えたことを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエネルギー管理システムにおいて、前記原単位算出手段で算出されたプロセス毎の原単位、および前記電力量計測手段または前記電力量算出手段で得られた電力量から算出されたプロセス毎の電力コストのうちの、少なくともプロセス毎の原単位を表示する表示手段を備えたことを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のエネルギー管理システムにおいて、前記原単位算出手段で算出されたプロセス毎の原単位、および前記電力量計測手段または前記電力量算出手段で得られた電力量から算出されたプロセス毎の電力コストのうちの、少なくともプロセス毎の原単位を、報告書として出力する報告書作成手段を備えたことを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のエネルギー管理システムにおいて、前記原単位算出手段を、各プラントとネットワークで接続された外部の箇所に設け、各プラントのプロセス毎の原単位の算出を一括して行なうようにしたことを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項6】
各プラントからネットワークを経由して送信されたプロセス毎の原単位の算出に必要な計測データあるいは機器の状態を示すデータを受信するための受信手段と、この受信手段により受信された前記計測データあるいは機器の状態を示すデータを用いて、各プラントのプロセス毎の原単位を算出する原単位算出手段と、この手段により算出された各プラントのプロセス毎の原単位を、ネットワークを経由して各プラントに送信するための送信手段とを備えたことを特徴とするエネルギー分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−316416(P2006−316416A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137110(P2005−137110)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】