説明

エネルギー管理装置、エネルギー管理システム、プログラム

【課題】蓄電した電力の利用を通して需要家に需要電力に対する関心を持たせる。
【解決手段】電力取得部111は負荷の需要電力を取得する。アシスト制御部112は、負荷への電力の供給を許可する時間帯において、需要電力が切替閾値を超えると、アシスト条件が成立したと判断する。アシスト制御部112は、アシスト条件が成立したと判断すると、報知制御部114を通して操作表示装置50に対して、蓄電装置40から電力を供給するアシスト動作を起動するか否かを問い合わせる選択報知を提示させる。選択報知に対して操作表示装置50からアシスト動作の起動を要求する応答があれば、アシスト動作を開始する。アシスト条件は、条件設定部116により記憶部12に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷での電力の需要が増加したときに、蓄電池から負荷に電力を供給させることにより、電源から負荷に供給される電力のピークを抑制させるエネルギー管理装置、このエネルギー管理装置を用いて構成されるエネルギー管理システム、このエネルギー管理装置を実現するプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気事業者は需要家に電力を供給するにあたり、需要家ごとに契約に応じた電気料金を設定している。たとえば、需要家における単位時間(たとえば、30分)ごとの電力量について月間の最大値を最大需要電力とし、最大需要電力に応じて電気料金の単価を決定する契約がある。また、電気事業者によっては、需要家ごとに契約電力が設定され、需要家で使用する電力が契約電力を超えると遮断器(アンペアブレーカ)を遮断する契約も行われている。
【0003】
一方、近年、省エネルギー化や需要電力のピーク抑制などへの社会的要求が高まってきている。とくに、電力の需要が増加する時間帯において電気事業者から購入する電力(受電する電力)を低減させることは、高出力の発電所の削減を可能にするから、環境負荷の低減につながる有望な手だてと言える。
【0004】
需要電力の増加に伴う電気料金の単価の増加や遮断器の遮断を防止し、また、上述のような社会的要求を満足させるために、蓄電池を活用することが提案されている。つまり、需要家において蓄電池を利用し、需要電力が増加したときに蓄電池から電力を供給することによって、受電する電力を低減させる技術が提案されている。負荷の要求する需要電力が増加したときに、蓄電池から電力を供給する技術は、「ピークアシスト」として知られている。
【0005】
たとえば、特許文献1には、電力需要家に設置された電力貯蔵システムの充電と放電との制御により、受電電力を調節する技術が記載されている。特許文献1では、契約電力を引き下げるピークカット、あるいは単価の高い昼間電力の使用量を低減させるピークシフトを目的として受電電力の調節が行われている。したがって、特許文献1に記載された技術では、受電電力の調節はコントローラに設定されたパターンに従って自動的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−109621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載されたピークアシストの技術は、負荷での需要電力が増加たときに、蓄電池の電力(残量)に余裕があるかぎりいつでも電力を供給している。これは、需要家において、ピークカットやピークシフトに主眼をおいているからである。
【0008】
一方、環境負荷の低減を図る観点では、需要電力が増加したときにいつでも蓄電池から電力を供給するというのではなく、需要家での需要電力のピーク自身を抑制することが望ましいと言える。すなわち、需要家に需要電力のピークを抑制させるように意識付けを行ってピークアシストの回数を低減させることが有効である。需要電力のピークを抑制すれば、蓄電池から電力を供給できる時間が延長され、また、蓄電池の充放電の回数が低減されることによって蓄電池の寿命も延長されることになる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、ピークアシストが行われたか否かを需要家が認識するための構成がないから、何時どの負荷を用いると、需要電力がピークになるのかを需要家に認識させることができないという問題がある。また、特許文献1に記載された構成では、ピークアシストを行う条件が固定されている。そのため、ピークアシストを行う条件を需要家にとって適正になるように設定することができない。換言すれば、需要家に需要電力のピークに対する関心を持たせることができないという問題がある。
【0010】
本発明は、蓄電した電力を利用することを通して需要電力に対する関心を需要家に持たせるエネルギー管理装置を提供することを目的とし、さらに、このエネルギ管理装置を用いたエネルギー管理システムと、このエネルギ管理装置を実現するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るエネルギー管理装置は、負荷の需要電力を取得する電力取得部と、需要電力について規定したアシスト条件の成立時に電源とは別に設けた蓄電装置から負荷に電力を供給するアシスト動作の起動と停止とを選択するアシスト制御部と、アシスト条件が成立したことを報知装置に提示させる報知制御部と、操作装置からの入力を取得する入力取得部と、入力取得部を通してアシスト条件が設定される条件設定部とを備えることを特徴とする。
【0012】
このエネルギー管理装置において、アシスト条件は、蓄電装置から負荷への電力の供給を許可する時間帯と、蓄電装置から負荷への電力の供給を開始する需要電力に対する切替閾値とを少なくとも含むことが好ましい。
【0013】
このエネルギー管理装置において、報知制御部は、アシスト条件が成立したことをアシスト動作の起動の要否を問い合わせる選択報知の形式で報知装置に提示させ、入力取得部は、選択報知に対してアシスト動作の起動の要否を操作装置から取得し、アシスト制御部は、入力取得部がアシスト動作の起動を要求する応答を操作装置から取得した場合に、アシスト動作を起動することがさらに好ましい。
【0014】
このエネルギー管理装置において、アシスト条件が成立したときの履歴を記憶する履歴記憶部が付加され、条件設定部は、履歴記憶部に記憶された履歴において蓄電装置から負荷に電力を供給した期間が含まれるように時間帯を自動的に調節する時間補正部を備えることがさらに好ましい。
【0015】
このエネルギー管理装置において、アシスト条件が成立したときの履歴を記憶する履歴記憶部が付加され、条件設定部は、履歴記憶部に記憶された履歴を用いることにより所定期間において蓄電装置から負荷に電力を供給する回数が規定の回数値に近づくように切替閾値を自動的に調節する閾値調節部を備えることがさらに好ましい。
【0016】
このエネルギー管理装置において、アシスト条件が成立したときの履歴を記憶する履歴記憶部と、蓄電装置から電力の残量を取得する残量取得部とが付加され、アシスト条件は、アシスト動作の起動に必要な蓄電装置の残量に関する基準値を含んでおり、条件設定部は、履歴記憶部に記憶された履歴を用いることにより所定期間において蓄電装置の残量の最小値を既定値に近づけるように基準値を自動的に調節する基準値調節部を備えることが好ましい。
【0017】
このエネルギー管理装置において、報知制御部は、規定した時刻から始まる1日のうちでアシスト条件が最初に満たされたことがアシスト制御部から通知されると報知装置に選択報知を提示させることがさらに好ましい。
【0018】
このエネルギー管理装置において、報知制御部は、選択報知に対して操作装置からアシスト動作の起動を不要とする応答が得られた場合は、1日のうちでアシスト条件が次に満たされたことがアシスト制御部から通知されたときにも報知装置に選択報知を提示させることがさらに好ましい。
【0019】
このエネルギー管理装置において、アシスト制御部は、選択報知に対して操作装置からアシスト動作の起動を要求する応答が得られた回数の累積値が規定回数に達すると、報知装置への選択報知を行わずに、アシスト動作を行っていることを報知制御部を通して報知装置に提示させることがさらに好ましい。
【0020】
このエネルギー管理装置において、通信用のインターフェースを備え、条件設定部は、インターフェースを通してアシスト条件が設定されることが好ましい。
【0021】
このエネルギー管理装置において、電力取得部は、所定の時間間隔で電力をサンプリングし、複数回のサンプリングで得られた電力の代表値を需要電力とすることが好ましい。
【0022】
本発明に係るエネルギー管理システムは、電力系統から負荷に電力を供給する給電路を通して負荷への電力供給を行うアシスト動作が可能である蓄電装置と、負荷の需要電力を計測する計測装置と、計測装置が計測した需要電力に応じてアシスト動作の起動と停止とを制御するエネルギー管理装置と、エネルギー管理装置から指示された報知を行う報知装置と、エネルギー管理装置に指示を与える操作装置とを備え、エネルギー管理装置は、計測装置から需要電力を取得する電力取得部と、需要電力について規定したアシスト条件の成立時にアシスト動作の起動と停止とを選択するアシスト制御部と、アシスト条件が成立したことを報知装置に提示させる報知制御部と、操作装置からの入力を取得する入力取得部と、入力取得部を通してアシスト条件が設定される条件設定部とを備えることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、負荷の需要電力を取得する電力取得部と、需要電力について規定したアシスト条件の成立時に電源とは別に設けた蓄電装置から負荷に電力を供給するアシスト動作の起動と停止とを選択するアシスト制御部と、アシスト条件が成立したことを報知装置に提示させる報知制御部と、操作装置からの入力を取得する入力取得部と、入力取得部を通してアシスト条件が設定される条件設定部とを備えるエネルギー管理装置として動作させるためのものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の構成によれば、蓄電した電力を利用することを通して需要電力に対する関心を需要家に持たせることが可能になる上に、蓄電した電力を負荷で利用する条件としてのアシスト条件を需要家が設定できるから、アシスト条件の設定作業を通して需要家に電力の適正な利用を意識させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上の接続例を示す構成図である。
【図3】同上に用いる分電盤の例を示すブロック図である。
【図4】同上に用いる蓄電装置を示すブロック図である。
【図5】同上に用いる操作表示装置を示すブロック図である。
【図6】同上に用いる操作表示装置の表示例を示す図である。
【図7】同上に用いる操作表示装置の表示例を示す図である。
【図8】同上に用いる操作表示装置の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態は、住宅内の配電網を想定して説明するが、オフィスや店舗のような住宅以外の用途であっても同様の技術を採用することが可能である。配電網には、図2に示すように、商用電源の電力系統から受電する分電盤20が設けられる。分電盤20は、図3に示すように、主幹ブレーカ21および複数台の分岐ブレーカ22を内蔵する。主幹ブレーカ21が接続されている主幹回路23は、分岐ブレーカ22を通して複数系統の分岐回路24に分岐され、各分岐回路24に負荷が接続される。分岐ブレーカ22と負荷との間には必要に応じてコンセントが設けられる。
【0027】
分電盤20には計測装置30が接続される。計測装置30は、主幹ブレーカ21の電源側において主幹回路23を通過して負荷に供給される電流(言い換えると、負荷に供給される電力)を計測する電流センサ31を備える。計測装置30は、電流センサ31の出力から主幹回路23を通過する電流を検出する電流検出部32と、電流検出部32が検出した電流値を用いて需要電力を算出する演算部33と、通信用のインターフェースである通信部34とを備える。
【0028】
演算部33は、プログラムに従って動作するマイコンなどを用いて構成され、主幹回路23を通過する電流を一定の時間間隔(10秒、1分、30分などから選択される)でサンプリングし、サンプリングした電流を用いて電力を求める。ここに、本実施形態では、主幹回路23の電圧は一定とみなしているが、計測装置30において電流だけではなく電圧も併せて計測してもよい。この構成により、計測装置30は、宅内全体の負荷による需要電力を計測することになる。図示例では、計測装置30は分電盤20とは別に設けられているが、計測装置30は分電盤20に内蔵されていてもよい。
【0029】
主幹ブレーカ21の電源側において、主幹回路23には蓄電装置40が接続される。蓄電装置40は、図4に示すように、リチウムイオン電池のような蓄電池を内蔵した電池ブロック41と、電池ブロック41への充電を行う充電回路42と、電池ブロック41からの放電を行う放電回路43とを備える。充電回路42は主幹回路23の交流を直流に変換して電池ブロック41に充電するAC/DC変換器を備え、放電回路43は電池ブロック41の直流を交流に変換して主幹回路23に供給するDC/AC変換器を備える。なお、蓄電装置40は、放電時に電源系統への逆潮流を行わないように用いられる。
【0030】
蓄電装置40は、電池ブロック41に設けた蓄電池の残量(放電可能な電池の容量)を監視する機能と、充電回路42と放電回路43との動作を制御する機能とを有した制御部44と、通信用のインターフェースである通信部45とを備える。さらに、蓄電装置40は、後述する切替閾値が設定される閾値設定部46を備える。制御部44はプログラムに従って動作するマイコンが用いられ、閾値設定部46はマイコンに内蔵されたメモリあるいはマイコンとは別に設けたメモリが用いられる。
【0031】
蓄電装置40に設けた制御部44は、充電回路42と放電回路43とを択一的に動作させる。すなわち、制御部44は、充電回路42が動作する状態、放電回路43が動作する状態、充電回路42と放電回路43とがともに停止する状態との3状態を選択する。制御部44は、通信部45を通して外部から指示されるか、閾値設定部46に設定された切替閾値を用いることにより、上述した3状態を選択する。
【0032】
上述した構成により、蓄電装置40は、主幹回路23から受電して電池ブロック41に蓄電し、また電池ブロック41から放電して主幹回路23に電力を供給する。すなわち、蓄電装置40を設け、適宜のタイミングで蓄電と放電とを行うことによって、電力系統から受電する時間帯ごとの電力を調節することが可能になる。
【0033】
このような蓄電装置40の主な用途は、電力系統から受電する電力の平準化を図ることである。たとえば、需要電力が少ない時間帯に蓄電装置40への蓄電を行い、需要電力が大きい時間帯に蓄電装置40からの放電を行うことにより、需要電力の変動に対して電力系統から受電する電力の変動が抑制される。すなわち、放電回路43が動作する状態が選択されると、負荷に対して、商用電源の電力系統からだけではなく、蓄電装置40からも電力が供給されるから、需要電力に占める商用電源からの受電電力を減少させることになる。
【0034】
契約電力のような制限値があらかじめ設定されている場合には、需要電力が制限値を超える前に蓄電装置40からの放電を行うことによって、受電する電力のピークを抑制するピークアシストが可能になる。以下では、蓄電装置40から負荷に電力供給を行うことを、蓄電装置40における「アシスト動作」と呼ぶ。アシスト動作は、需要電力が切替閾値を超えている期間において行われる。そのため、蓄電装置40は、アシスト動作の期間において、需要電力と切替閾値との差分に相当する電力を負荷に供給する。
【0035】
蓄電装置40の蓄電と放電との制御は、エネルギー管理装置10が行う。エネルギー管理装置10には、操作装置と報知装置との機能を兼ね備えた操作表示装置50が接続される。また、図示例のエネルギー管理装置10は、宅内に敷設された通信ネットワークあるいは広域網のような通信ネットワークを介してサーバ60と接続するためのインターフェースとして通信部17を備える。
【0036】
本実施形態の操作表示装置50はタッチパネルを想定している。したがって、操作表示装置50は、図5に示すように、プログラムに従って動作するマイコンを用いた処理部51と、液晶表示器からなる表示装置(報知装置)52と、表示装置52の画面に重ねて配置される操作装置(入力装置)53とを備える。また、操作表示装置50は、エネルギー管理装置10と通信するためのインターフェースである通信部54と、表示装置52の画面に表示される画面データを格納した画面データ記憶部55とを備える。画面データ記憶部55は、複数種類の画面データを種類ごとに記憶する画面格納エリア551〜553を備える。
【0037】
操作表示装置50は、タッチパネルでなくてもよく、表示装置52と機械接点を備えるスイッチ(たとえば、キーパッド)との組合せであってもよい。また、表示装置52と操作装置53とは個別に設けてもよい。さらに、報知装置は、視覚的に報知する表示装置52のほか、聴覚的に報知する構成でもよい。
【0038】
エネルギー管理装置10は、図1に示すように、プログラムを実行するプロセッサを主構成要素とした管理処理部11と、管理処理部11が利用するアシスト条件(後述する)などのデータを記憶する半導体メモリからなる記憶部12とを備える。また、管理処理部11には、計測装置30と通信するための通信部13、蓄電装置40と通信するための通信部14、操作表示装置50と通信するための通信部15が付設される。さらに、エネルギー管理装置10は、現在日時を計時する時計部16を備える。時計部16はリアルタイムクロックが用いられる。
【0039】
管理処理部11は、通信部13を通して計測装置30から負荷の需要電力を取得する電力取得部111と、通信部14を通して蓄電装置40の充電回路42および放電回路43の動作を指示するアシスト制御部112とを備える。また、管理処理部11は、通信部14を通して蓄電装置40から電池ブロック41の電力の残量を取得する残量取得部113も備える。アシスト制御部112は、アシスト条件の成立と不成立とを判断する機能を備える。
【0040】
管理処理部11は、操作表示装置50に情報を提示させる報知制御部114と、操作表示装置50からの入力を取得する入力取得部115とをさらに備える。アシスト条件は、管理処理部11に設けた条件設定部116を通して記憶部12に設定される。さらに、管理処理部11は、蓄電装置40に充電のタイミングおよび充電量を指示する充電指示部117を備える。充電指示部117が指示する充電量は、充電量推算部118が推算する。充電指示部117および充電量推算部118の動作は後述する。
【0041】
アシスト条件は、アシスト動作を起動するための条件であって、蓄電装置40から負荷への電力の供給を許可する時間帯と、蓄電装置40から負荷への電力の供給を開始する需要電力に対する切替閾値とを少なくとも含む。また、蓄電装置40の残量(実際には、電池ブロック41の残量)に対する基準値をアシスト条件に含んでいてもよい。記憶部12は、アシスト条件を種類ごとに記憶する条件格納エリア121〜123を備える。条件設定部116は、記憶部12の条件格納エリア121〜123ごとにアシスト条件を設定する。また、記憶部12には、エネルギー管理装置10の動作を選択するパラメータを格納する動作選択エリア124,125も設けられている。
【0042】
アシスト動作は、すべてのアシスト条件が成立したときに起動が可能になる。つまり、アシスト条件が時間帯と切替閾値とによって設定されている場合は、需要電力が切替閾値を超えたときの時刻がアシスト条件の時間帯に含まれているときに、アシスト動作の起動が可能になる。また、アシスト条件が時間帯と切替閾値と残量に対する基準値とにより設定されている場合は、需要電力が切替閾値を超えたときの時刻がアシスト条件の時間帯に含まれ、かつ蓄電装置40の残量が基準値以上であるときに、アシスト動作が起動可能になる。一方、アシスト動作が起動された後、需要電力が切替閾値を下回ると、アシスト動作は停止される。
【0043】
アシスト制御部112は、通信部14を通してアシスト動作の起動と停止とを蓄電装置40に指示する機能を備える。また、アシスト制御部112は、アシスト動作を起動するためのアシスト条件が満たされときに、報知制御部114を通してアシスト条件の成立を操作表示装置50に提示させる機能を備える。言い換えると、本実施形態におけるアシスト制御部112は、アシスト条件の成立と不成立とを判断する機能を備えている。アシスト制御部112は、電力取得部111が取得した需要電力、残量取得部113が取得した電池ブロック41の残量、時計部16が計時する現在日時、記憶部12に設定されたアシスト条件などを用いて、アシスト条件の成立と不成立とを判断する。
【0044】
アシスト制御部112は、操作表示装置50の操作によりアシスト動作の要否が選択される動作モード(「半自動モード」という)と、アシスト条件が成立すると自動的にアシスト動作が起動される動作モード(「自動モード」という)とが選択可能になっている。また、アシスト制御部112は、アシスト動作を行わない動作モード(「停止モード」という)も選択可能であるが、停止モードは蓄電装置40が機能しない動作であるから、本実施形態では停止モードについてはとくに説明しない。
【0045】
アシスト制御部112の動作モードは、記憶部12の動作選択エリア124に格納された情報により選択される。自動モードが選択されている場合、アシスト制御部112は、報知制御部114を通して操作表示装置50にアシスト動作の開始を提示し、蓄電装置40に放電を指示する。半自動モードが選択されている場合、アシスト制御部112は、報知制御部114を通して操作表示装置50に選択報知を行い、操作表示装置50から報知制御部114への応答に応じて、蓄電装置40の放電の要否を決定する。ここに、「選択報知」は、アシスト動作の起動の要否を需要家に問い合わせる報知を意味する。
【0046】
図2に示す構成のエネルギー管理システムを用いるには、まず記憶部12の各条件格納エリア121〜123にアシスト条件を設定する必要がある。また、エネルギー管理装置10の動作を選択するパラメータを動作選択エリア124,125に設定することが必要である。そのため、エネルギー管理装置10は、アシスト条件を設定する動作モード(「設定モード」という)が選択可能になっている。設定モードは、電源投入時、操作表示装置50からの指示時などに選択される。
【0047】
設定モードが選択されると、操作表示装置50に、図6のような内容の画面が表示される。図示例では、時間帯(図中の「ピークアシスト時間帯」)、切替閾値(図中の「ピークアシスト閾値」)、電池ブロック41の残量の基準値(図中の「ピークアシスト用電池残量」)がアシスト条件として設定可能になっている。図示する画面には、アシスト条件ごとに入力用のフィールドF1〜F4が設けられている。フィールドF1、F2に入力された情報は条件格納エリア121に記憶され、フィールドF3に入力された情報は条件格納エリア122に記憶され、フィールドF4に入力された情報は条件格納エリア123に記憶される。
【0048】
また、図6に示す画面においは、エネルギー管理装置10の動作(図中の「ピークアシスト実行モード」)として、自動モード、半自動モード、停止モードが選択可能になっている。図中の「1:自動」が自動モード、「2:半自動」が半自動モード、「3:しない」が停止モードの選択肢であり、画面には選択肢の番号をパラメータとして入力するフィールドF5が設けられている。フィールドF5に入力されたパラメータは、動作選択エリア124に記憶される。したがって、エネルギー管理装置10の動作モードは、動作選択エリア124に設定されたパラメータに応じて、自動モード、半自動モード、停止モードから選択されることになる。
【0049】
さらに、図6に示す画面では、エネルギー管理装置10の動作として、サーバ60を通してアシスト条件を遠方から設定することの可否(図中では、「ピークアシスト実行の遠隔設定」)が選択可能になっている。図中の「1:許容」が許可、「2:許容しない」が禁止の選択肢であり、画面には選択肢の番号をパラメータとして入力するフィールドF6が設けられている。フィールドF6に入力されたパラメータは、動作選択エリア125に記憶される。つまり、エネルギー管理装置10は、動作選択エリア125に設定されたパラメータに応じて、サーバ60を通してアシスト条件を遠方から変更することの諾否が選択されることになる。
【0050】
設定モードが選択されたときに、画面格納エリア551から読み出された図6のような画面が操作表示装置50に表示され、各フィールドF1〜F6に必要な情報が入力されると、エネルギー管理装置10は以下のように動作する。
【0051】
なお、エネルギー管理装置10は、アシスト条件のデフォルト値が記憶部12に記憶されていることが好ましい。記憶部12にアシスト条件のデフォルト値が設定されている場合、条件格納エリア121〜123に条件設定部116からのアシスト条件が設定されていなければデフォルト値のアシスト条件を採用する。一方、条件設定部116により条件格納エリア121〜123にアシスト条件が設定された場合、条件設定部116により設定されたアシスト条件がデフォルト値に優先して用いられる。なお、記憶部12にアシスト条件のデフォルト値が設定されていることは必須ではない。
【0052】
上述した構成の使用例を説明する。以下では、エネルギー管理装置10を利用する需要家の一つのモデルを提示する。このモデルは、エネルギー管理装置10を利用することにより、一般的な需要家から社会貢献を意識する需要家への成長を想定している。このモデルには、初期の導入段階、アシスト条件が変化する成長段階、アシスト条件が収束する成熟段階、外部からの要求によりアシスト条件を調節する社会基盤整備段階の4段階のプロセスがある。
【0053】
導入段階では、エネルギー管理装置10の動作モードが、デフォルトで半自動モードに設定されている。また、アシスト条件は、アシスト動作が起動されやすくなるように設定される。すなわち、時間帯は広く設定され、切替閾値は低く設定され、残量の基準値は低く設定される。たとえば、時間帯は7〜22時、切替閾値は3kW、残量の基準値は1kWhなどに設定される。このようなアシスト条件は、エネルギー管理装置10の取扱説明書などに従って条件設定部116を用いて需要家が設定すればよいが、デフォルト値として設定されていれば、需要家は手間なく上述のアシスト条件を利用することができる。
【0054】
エネルギー管理装置10は、起動されると、アシスト条件としての切替閾値を蓄電装置40に送信し、蓄電装置40の閾値設定部46に切替閾値が設定される。また、アシスト条件である残量の基準値も蓄電装置40に送信し、蓄電装置40に残量も記憶させることが好ましい。蓄電装置40は、電池ブロック41の残量が蓄電装置40に設定された基準値未満であれば蓄電を開始する。
【0055】
計測装置30は、分電盤20に設けた電流センサ31により主幹回路23を通過する電流を一定の時間間隔でサンプリングし、サンプリングした電流値をエネルギー管理装置10および蓄電装置40に定期的に送信する。
【0056】
エネルギー管理装置10は、計測装置30から受信した電流値(単位時間当たりの電力量)が切替閾値より大きく、かつ当該電流値を取得した時刻がアシスト条件として設定された時間帯内であるとき、図7のような画面を操作表示装置50に表示させる。つまり、報知制御部114は、演算部33が算出した需要電力がアシスト条件を満たしたときに、画面格納エリア552に格納された画面を読み出し、アシスト動作の起動の要否を選択報知として操作表示装置50に提示させる。この画面は、アシスト動作を開始するか否かを問い合わせる画面であって、需要家に対してアシスト動作の要否を選択させる釦B1,B2を備えている。
【0057】
ここで、需要電力がアシスト条件を満たしたか否かの判断を1回のサンプリングで求めた需要電力で行うと、アシスト条件の成立と不成立とが頻繁に入れ替わるから、蓄電装置40は放電と放電停止とを高速で切り替えることが必要になる。また、蓄電装置40の出力を、需要電力の瞬時の変化に追従させるには、蓄電装置40に設けたDC/AC変換器(放電回路43)を、負荷の起動時などに生じる突入電力に対応できるように構成しなければならず、大容量の放電回路43が必要になる。すなわち、高価な蓄電装置40を要するという問題が生じる。
【0058】
したがって、需要電力についてアシスト条件の成立と不成立とを判断する際には、需要電力の移動平均を用いることが好ましい。たとえば、電力取得部111において、5〜10回程度のサンプリングで求めた需要電力の平均値を需要電力の代表値として求め、この平均値を需要電力として、アシスト条件の成立と不成立とを判断することが好ましい。適宜の周期でサンプリングした需要電力の移動平均を需要電力の代表値に用いてアシスト条件の成立と不成立とを判断すると、突入電流の影響を受けないから、大容量のDC/AC変換器が不要であり、結果的にコスト増を抑制することになる。
【0059】
ここにおいて、電力取得部111は、需要電力の代表値として移動平均を用いるほか、代表値としては、複数個のサンプリング値の最頻値、複数個のサンプリング値から異常値を除いた平均値などを用いることも可能である。
【0060】
図7に示す画面に対して、アシスト動作を行う釦B1(「YES]釦)を選択した場合は、エネルギー管理装置10は蓄電装置40に対してアシスト動作の起動を指示する。蓄電装置40は、この指示を受けると放電回路43を動作させて放電を開始し、アシスト動作の開始と併せて電池ブロック41の残量をエネルギー管理装置10に通知する。
【0061】
エネルギー管理装置10は、蓄電装置40からアシスト動作の開始が通知されると、操作表示装置50に図8に示す画面を表示させる。この画面には、アシスト動作を開始したこと、電池ブロック41の残量、アシスト動作を終了する時刻が示される。また、図8に示す画面は、アシスト動作の継続の要否を選択する釦B3,B4も備える。この画面において釦B4(「NO」釦)を選択しなければ、エネルギー管理装置10は、アシスト動作を継続させる。
【0062】
図7、図8に示す画面において、アシスト動作を禁止する釦B2,B4(「NO」釦)を選択した場合は、アシスト動作が行われないから、需要電力を減らさなければ電力系統から受電する電力が増加することになる。アシスト動作は、本来、電力系統から受電する電力を平準化させるために行っているから、アシスト動作を行う条件が成立しているときに、受電する電力が増加することは好ましくない。したがって、需要家がアシスト動作を禁止する選択を行った場合には、需要電力が低減されるように需要家自身に負荷の動作を調節させることによって、需要電力の抑制を需要家に意識させることが可能になる。
【0063】
アシスト動作の起動の要否が選択報知として操作表示装置50に提示され、この提示に対して操作表示装置50が操作されると、操作の結果は入力取得部115に取得される。入力取得部115がアシスト動作の起動を要求する結果を操作表示装置50から取得した場合、アシスト制御部112はアシスト動作を起動する。
【0064】
上述のようにしてアシスト動作が起動され、アシスト動作を行っている間にアシスト条件で設定された時間帯が終了すると、エネルギー管理装置10は、アシスト動作の終了を蓄電装置40に通知する。すなわち、蓄電装置40の放電回路43を停止させる。
【0065】
なお、本実施形態では、図7に示す画面においてアシスト動作の開始が指示されると、エネルギー管理装置10が蓄電装置40にアシスト動作の終了を通知するまでは、需要電力が切替閾値を超えるたびに、アシスト動作が自動的に繰り返される。すなわち、アシスト動作が一旦開始されると、図8に示す画面において釦B4を選択するか、アシスト条件として設定された時間帯が終了するまでは、アシスト動作が自動的に繰り返される。
【0066】
ここに、アシスト条件の時間帯は1日の範囲内で設定され、翌日にアシスト動作を開始する条件が成立したときには、あらためて図7に示す画面が操作表示装置50に表示される。上述した動作では、アシスト動作を開始する条件が成立すると、図7に示す画面を表示することにより、アシスト動作の要否を需要家に選択させているが、アシスト動作の開始条件が成立したことの通知のみを行うようにしてもよい。この場合、需要家は、アシスト動作の要否を選択することはできず、需要電力を低減させるように負荷の動作を調節しなければ、アシスト動作が自動的に行われることになる。
【0067】
導入段階から成長段階への移行は、需要家自身が行う。エネルギー管理装置10は、導入段階において、アシスト動作の開始条件の成立を操作表示装置50によって通知するから、需要家は、アシスト条件が成立するときの負荷の動作状態を認識するようになる。
【0068】
導入段階では、アシスト動作が起動されやすいようにアシスト条件を設定しているのに対して、成長段階では、需要家の経験に基づいて導入段階よりもアシスト動作が起動されにくくなるようにアシスト条件が変更される。すなわち、需要家が条件設定部116を操作することにより、アシスト条件が変更される。成長段階では、設定したアシスト条件が適切か否かを判断するために、エネルギー管理装置10は、半自動モードを継続する。
【0069】
上述したように成長段階において需要家がアシスト条件の設定を繰り返すと、アシスト条件は需要家にとって適切な範囲に収束すると考えられる。アシスト条件が収束すれば、需要家はエネルギー管理装置10からアシスト動作の開始が通知されるたびにアシスト動作を起動することが習慣化される。逆に言えば、毎日同じことが繰り返されるだけになるから、需要家にとっては、アシスト動作の要否を選択することが煩わしくなる。このような段階が成熟段階であり、成熟段階に達すると、需要家は、エネルギー管理装置10の動作モードを半自動モードから自動モードに変更する。
【0070】
自動モードでは、記憶部12に設定されたアシスト条件が成立すると、自動的にアシスト動作が開始されるようになる。すなわち、操作表示装置50には図7のようにアシスト動作の要否を選択する画面が表示されることがなく、アシスト条件が成立すると自動的にアシスト動作が行われる。
【0071】
上述した成熟段階は、需要家において需要電力が適正と考えている状態であって、需要電力を低減させて社会全体(送電網全体)での供給電力を低減させるという意味では、十分な貢献をしていない状態である。成熟段階では、需要家はアシスト動作が適正に行われていると考えているから、需要電力の一層の低減を行うという意識がなく、需要家に対して需要電力を一層低減させるように誘導することができない。また、電気事業者にとっては、送電網からの供給電力が不足する場合に、需要電力のピーク時にアシスト動作を積極的に行わせることによって供給電力の平準化を図りたい場合がある。
【0072】
そこで、第4の段階として、アシスト動作が収束した後の社会基盤整備段階を設定している。社会基盤整備段階では、図6に示した画面におけるフィールドF6に、サーバ60を通してアシスト条件を設定することを許可する選択肢を入力することにより、需要家以外の第三者によって遠方からアシスト条件を設定することが可能になる。すなわち、サーバ60に付設した入力装置、あるいはサーバ60と通信する入力装置を用いてアシスト条件を外部から設定することが可能になる。
【0073】
このように、アシスト条件を遠方から設定可能にしておけば、成熟段階に達した需要家について、需要電力のさらなる低減を促すようにアシスト条件を変更することが可能になる。また、電気事業者にとっては、供給電力が不足すると予想される場合に、需要家に対してアシスト条件を変更する許可を求め、供給電力に見合うようにアシスト条件を遠方から変更することによって、供給電力の不足による大規模停電を防止することになる。
【0074】
上述したように、導入段階では、アシスト動作が起動されやすくなるようにアシスト条件を設定し半自動モードで動作させるから、需要家は電力の使用とアシスト動作との関連を認識し、電力使用に関する意識付けがなされる。また、電気事業者が供給する電力量の余剰の程度に応じて需要家がアシスト動作を行う時間帯を調節すれば、需要家は電気事業者が供給する電力量の変化を把握することになる。
【0075】
需要家は導入段階において、需要家による負荷の使用状態や電気事業者から供給される電力量の余剰の程度を認識するから、導入段階の経験に基づいて成長段階において適切なアシスト条件が設定される。成長段階では半自動モードが継続しており、アシスト条件が成立すると操作表示装置50による報知が行われる。
【0076】
半自動モードにおいてアシスト動作の起動が習慣化され成熟段階に達すると、以後は、自動モードにおいてアシスト動作が起動されるようになる。さらに、成熟段階に達している状態で需要家が許可すれば、社会基盤整備段階に移行し、サーバ60を通して遠方からアシスト条件を変更することが可能になる。需要家は、アシスト動作が起動される状況を過去に体験しているから、電気事業者からの要求によって遠方からアシスト条件が変更されたとしても、アシスト条件の変更を受け入れやすく、その結果として、電力事情に対応した社会貢献を行うことになる。
【0077】
ところで、アシスト動作におけるアシスト条件は、原則として1日を単位として設定されている。1日は午前0時から始まる必要はなく、適宜に規定した時刻から1日を始めることができる。この場合、規定した時刻から24時間が1日の範囲になる。1日を開始する時刻は、たとえば、就寝から起床までの間の時間帯において設定される。
【0078】
いま、エネルギー管理装置10が半自動モードで動作している場合であって(つまり、導入段階または成長段階)、アシスト動作の起動は1日単位で指示されるものとする。つまり、報知制御部114は、1日の期間内で最初にアシスト条件が成立したときに、操作表示装置50に選択報知を提示する。アシスト条件は1日に複数回成立することがあるが、1日の開始から最初にアシスト条件が成立したときに選択報知が行われる。選択報知は、需要家がアシスト動作の起動の要否を選択可能に報知することを意味している。
【0079】
選択報知が行われたときに、需要家がアシスト動作の起動を要求すると、報知制御部114は、その後、1日が終了するまでにアシスト条件が成立しても選択報知を行わない。ただし、アシスト条件の成立に関する報知は、アシスト条件の成立毎に報知することが好ましい。選択報知に対して需要家が選択した結果は、1日の期間で有効になり、アシスト動作の起動を要求した場合は、1日の期間においてアシスト条件の成立毎にアシスト動作が起動される。
【0080】
一方、1日の開始から最初にアシスト条件が成立し、報知制御部114が操作表示装置50に選択報知を提示したときに、アシスト動作の起動が不要である旨の応答が得られた場合、報知制御部114は、1日の期間内で次にアシスト条件が成立したときに、選択報知を再び提示することが好ましい。この動作では、1日の期間内においてアシスト動作が起動されないかぎり、アシスト条件が成立するたびに選択報知が提示される。
【0081】
なお、1日の開始から最初にアシスト条件が成立し操作表示装置50に選択報知が提示されたときに、需要家がアシスト動作の起動を不要とする選択を行った場合に、以後は1日の期間内において選択報知を行わないようにしてもよい。すなわち、1日の開始から最初にアシスト条件が成立した時点でのみ選択報知を行い、その時点において需要家がアシスト動作の起動の要否に関してどちらを選択したかにかかわらず、以後は1日の期間内において選択報知を行わないことになる。言い換えると、1日の開始から最初にアシスト条件が成立したときにのみアシスト動作の起動の要否が選択可能になるようにしてもよい。この場合、選択報知に対して、需要家がアシスト動作の起動を不要とした場合、以後は1日の期間内においてアシスト動作を行わない。
【0082】
ここに、導入段階および成長段階であって半自動モードが選択されている状態では、操作表示装置50に選択報知が行われても、需要家が操作表示装置50を操作しないことが考えられる。この場合、蓄電装置40における電池ブロック41の残量がアシスト条件を満たしている場合には、アシスト動作を自動的に行うことが好ましい。すなわち、エネルギー管理装置10は、アシスト動作を優先的に行うことが好ましい。
【0083】
また、エネルギー管理装置10は、他のアシスト条件が成立しても、電池ブロック41の残量がアシスト条件を満足しない場合は、選択報知を行わないことが好ましい。この場合、需要電力が切替閾値を超えていることを、電池ブロック41の残量が不足していることと併せて操作表示装置50により報知することが好ましい。
【0084】
上述のように、需要電力が切替閾値を超えても電池ブロック41の残量が不足しているときに報知のみ行う動作によって、選択操作に応答しない需要家にアシスト動作を意識させることが可能になる。すなわち、電池ブロック41の残量が不足していれば、アシスト動作を必要とするときにアシスト動作が行われず、電力不足によって負荷が使用できなくなったり需要電力が契約電力を超えて電気料金が大幅に増加したりする。このことにより、需要家は、需要電力を意識するようになり、結果的に、負荷の無駄な使用を控えたり、負荷を使用する時間帯を変更するなど、負荷の適正な使用を心がけるように意識付けがなされることが期待できる。
【0085】
成長段階から成熟段階への移行は、上述の例では、操作表示装置50を需要家が操作することにより行っているが、成長段階における操作回数に基づいて自動的に行うようにしてもよい。この場合、操作回数を記憶させるために、記憶部12に操作回数格納エリア126を設ける。操作回数格納エリア126は、操作表示装置50に選択報知に対してアシスト動作の起動を要求する応答が得られた操作回数を記憶する。
【0086】
操作回数格納エリア126に格納する操作回数は、操作回数の単純な累積値でよいが、操作回数を累積する日数には上限を設けておくことが好ましい。つまり、上限の日数までに操作回数の累積値が規定回数(たとえば、10回)に達しない場合、累積している操作のうちの最初の操作を除外した累積値を用いることが好ましい。操作回数の累積値は連続して操作された操作回数としてもよい。この場合、操作回数と日数とが一致する。いずれの場合も、操作回数の累積値が規定回数に達すると、アシスト制御部112は、半自動モードから自動モードに自動的に移行する。なお、アシスト動作の起動を要求する操作は、1日に2回以上行われないことを前提にしている。
【0087】
操作回数の累積値に基づいて、半自動モードから自動モードへの移行を自動的に行うから、成長段階から成熟段階への移行を需要家が手動で行う場合に比較して、客観的な評価を用いて適切なタイミングで移行を行うことが可能になる。
【0088】
ところで、上述した動作では、エネルギー管理装置10において設定モードが選択可能であって、設定モードにおいて操作表示装置50を用いて需要家がアシスト条件を入力している。これに対して、条件設定部116において、アシスト条件が自動的に設定されるようにしてもよい。ただし、すべてのアシスト条件を自動的に設定することは必要ではなく、アシスト条件のうちの一部を自動的に設定することができればよい。
【0089】
アシスト条件を自動的に決定するには、基本的には、過去における需要電力とアシスト条件との関係を用いる。したがって、エネルギー管理装置10は、需要電力がアシスト条件である切替閾値を超えたときの履歴、蓄電装置40から負荷に電力を供給したか否かの履歴などを記憶するために、記憶部12に履歴記憶部127を備える。履歴記憶部127は、需要電力が切替閾値を超えるたびに、アシスト動作の起動の有無、需要電力が切替閾値を超えていた期間の開始と終了との時刻、アシスト動作により供給した電力量、蓄電装置40の残量などを記憶する。また、履歴記憶部127は、半自動モードにおいて、1日にアシスト動作を行った回数を日毎に記憶することが好ましい。要するに、履歴記憶部127はアシスト条件が満たされたときの履歴を記憶する。
【0090】
アシスト条件のうちの時間帯を自動的に設定する場合、条件設定部116に設けた時間補正部1161が用いられる。時間補正部1161は、履歴記憶部127に記憶された履歴を用いて、需要電力が切替閾値を超えた期間が含まれるように時間帯を自動的に調節する。つまり、あらかじめ設定した時間帯の範囲外で、需要電力が切替閾値を超えている期間があれば、その期間を含むようにアシスト条件においてアシスト動作を起動する時間帯を補正する。
【0091】
ところで、図6に示す画面から明らかなように、本実施形態では、アシスト条件の時間帯は1時間を単位として設定される。したがって、履歴記憶部127は、1時間ごとに需要電力が切替閾値を超えたか否かを1日単位で記録できるように構成される。つまり、時間帯を自動的に調節する際は、履歴記憶部127の1時間毎の履歴から需要電力が切替閾値を超えていた時間帯を抽出し、抽出したすべての時間帯が含まれるように、1日においてアシスト動作を行う時間帯を決定するのである。
【0092】
なお、需要電力が切替閾値を超える時間帯が日を跨いでいる場合は時間帯の連続性を優先する。この場合、アシスト条件に関して2日に跨るように時間帯を設定する。また、1日を始める時刻を変更し、アシスト条件の時間帯が1日の範囲内に収まるようにして、アシスト条件の時間帯を設定してもよい。
【0093】
上述のように需要電力が切替閾値を超えたときの実績を用いて、アシスト動作を行う時間帯が自動的に補正される。そのため、需要家においてアシスト動作を行う時間帯を誤って設定したとしても、アシスト条件の時間帯が適正な時間帯になるように自動的に調節され、時間帯に関して手入力による調整が不要になる。
【0094】
また、アシスト条件のうち切替閾値を自動的に設定する場合、条件設定部116に設けた閾値調節部1162が用いられる。閾値調節部1162は、履歴記憶部127に記憶された履歴を用いて、1日にアシスト動作が行われる回数が規定の回数値になるように切替閾値を推算する。すなわち、閾値調節部1162は、需要電力の変化と蓄電装置40に蓄電可能な電力量とを考慮し、1日に蓄電可能な電力量を需要電力に対して適正に分配するように切替閾値を推算する。さらに、閾値調節部1162は、推算して求めた切替閾値を条件格納エリア122に格納することにより、切替閾値を自動的に調節する。回数値は、アシスト動作を行う回数から規定するほか、需要家に対する報知の回数から規定するようにしてもよい。要するに、需要家に煩わしさを与えない程度の頻度で報知が行われるように回数値を規定してもよい。
【0095】
閾値調節部1162は、履歴記憶部127に格納された過去の需要電力を用いて、規定された回数値に近づけるように条件格納エリア122に切替閾値を設定するから、切替閾値が適切に設定される。つまり、切替閾値が低いとアシスト動作が起動される頻度が高くなり、切替閾値が高いとアシスト動作がほとんど起動されないが、規定された回数値に近付くように切替閾値を設定することにより、アシスト動作が適正な回数で起動されることになる。たとえば、アシスト動作を起動する回数を1日当たり10回で指定すれば、1日当たり10回に近いアシスト動作が行われるように切替閾値が調節される。
【0096】
アシスト条件には、上述のように、蓄電装置40の残量の基準値を含んでいてもよい。すなわち、需要電力が切替閾値を超えた時刻がアシスト条件の時間帯に含まれていても、蓄電装置40の残量が基準値以下であればアシスト動作は起動されない。したがって、残量の基準値は適正に設定する必要がある。
【0097】
蓄電装置40における残量の基準値は、記憶部12に設けた条件格納エリア123に記憶されている。条件格納エリア123に記憶された基準値が低いほどアシスト動作が起動される確率が高まり、基準値が低いほどアシスト動作が起動される確率が低減される。アシスト動作が起動される確率が低減すれば、蓄電装置40の電力のうち、アシスト動作以外の用途に割り当てる電力の比率を増加させることが可能になる。ここで、アシスト動作ではない用途には、電気料金が安い夜間に蓄電した電力を電気料金が高い昼間に放電することにより電気料金の低減を図ることを目的とする用途などがある。
【0098】
条件格納エリア123に設定する残量の基準値は、操作表示装置50を用いて需要家が手動で変更することが可能であるが、残量の基準値の変更を自動化してもよい。基準値の変更を自動化するには、履歴記憶部127に記憶されている蓄電装置40の残量の推移を用いる。履歴記憶部127は、蓄電装置40の残量を1時間ごとに記憶し、残量の推移を1日単位で管理する。
【0099】
残量の基準値が比較的大きく設定されている場合に、アシスト動作が起動される確率が低減するから、アシスト動作により放電される電力量は比較的少なく、結果的に蓄電装置40の残量の最小値は比較的大きくなる。そこで、履歴記憶部127に記憶されている残量から最小値を求め、最小値が規定値(たとえば、後述する下限値に一定値を加算して得られる値)以上である場合に、残量の基準値を自動的に一定量だけ引き下げるようにしてもよい。残量の基準値の調節は、条件設定部116に設けた基準値調節部1163により行われる。要するに、基準値調節部1163は、蓄電装置40の残量が規定値以上であってかつ規定値に近づくように残量の基準値を自動的に調節する。
【0100】
たとえば、条件格納エリア123に設定された蓄電装置40の残量の基準値が3kWhであって、履歴記憶部127に記憶されている残量の最小値が2kWhである場合を想定する。ここで、残量の下限値に一定値を加算した規定値が0.5kWhであるとすれば、基準値調節部1163は、これらの残量の関係を用いて、残量の基準値を2kWh引き下げて1kWhとし、条件格納エリア123の記憶内容を1kWhに更新する。このような処理により、蓄電装置40の残量の基準値を自動的に調節することが可能になる。
【0101】
ところで、アシスト動作を適正に行うために、蓄電装置40の残量(実際には、電池ブロック41の残量)には下限値が規定されている。つまり、蓄電装置40の残量は下限値以上に保たれていなければならない。蓄電装置40の残量を下限値以上に保つには、蓄電装置40の残量を監視するとともに、蓄電装置40の充電量を適正に指示することが必要になる。
【0102】
そのため、管理処理部11には、履歴記憶部127に記憶された履歴を用いて翌日のアシスト動作に必要な電力量を予測する充電量推算部118が設けられている。充電量推算部118は、予測した電力量と、残量取得部113が取得した蓄電装置40の残量とを用いることにより、翌日のアシスト動作で必要になる蓄電装置40の充電量を推算する。このとき、充電量推算部118は、翌日のアシスト動作の後に蓄電装置40の残量が下限値以上になるように充電量を求める。
【0103】
充電量推算部118が推算した充電量は、充電指示部117に通知され、充電指示部117は、蓄電装置40に対して充電のタイミングおよび充電量を指示する。すなわち、蓄電装置40は、アシスト動作後も残量が下限値以上になるように、充電指示部117から指示された充電量で蓄電される。
【符号の説明】
【0104】
10 エネルギー管理装置
11 管理処理部
12 記憶部
13 通信部
14 通信部
15 通信部
16 時計部
17 通信部(インターフェース)
30 計測装置
40 蓄電装置
50 操作表示装置(報知装置、操作装置)
111 電力取得部
112 アシスト制御部
113 残量取得部
114 報知制御部
115 入力取得部
116 条件設定部
127 履歴記憶部
1161 時間補正部
1162 閾値調節部
1163 基準値調節部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷の需要電力を取得する電力取得部と、前記需要電力について規定したアシスト条件の成立時に電源とは別に設けた蓄電装置から前記負荷に電力を供給するアシスト動作の起動と停止とを選択するアシスト制御部と、前記アシスト条件が成立したことを報知装置に提示させる報知制御部と、操作装置からの入力を取得する入力取得部と、前記入力取得部を通して前記アシスト条件が設定される条件設定部とを備えることを特徴とするエネルギー管理装置。
【請求項2】
前記アシスト条件は、前記蓄電装置から前記負荷への電力の供給を許可する時間帯と、前記蓄電装置から前記負荷への電力の供給を開始する前記需要電力に対する切替閾値とを少なくとも含むことを特徴とする請求項1記載のエネルギー管理装置。
【請求項3】
前記報知制御部は、前記アシスト条件が成立したことを前記アシスト動作の起動の要否を問い合わせる選択報知の形式で前記報知装置に提示させ、前記入力取得部は、前記選択報知に対して前記アシスト動作の起動の要否を前記操作装置から取得し、前記アシスト制御部は、前記入力取得部が前記アシスト動作の起動を要求する応答を前記操作装置から取得した場合に、前記アシスト動作を起動することを特徴とする請求項2記載のエネルギー管理装置。
【請求項4】
前記アシスト条件が成立したときの履歴を記憶する履歴記憶部が付加され、前記条件設定部は、前記履歴記憶部に記憶された履歴において前記蓄電装置から前記負荷に電力を供給した期間が含まれるように前記時間帯を自動的に調節する時間補正部を備えることを特徴とする請求項2又は3記載のエネルギー管理装置。
【請求項5】
前記アシスト条件が成立したときの履歴を記憶する履歴記憶部が付加され、前記条件設定部は、前記履歴記憶部に記憶された履歴を用いることにより所定期間において前記蓄電装置から前記負荷に電力を供給する回数が規定の回数値に近づくように前記切替閾値を自動的に調節する閾値調節部を備えることを特徴とする請求項2又は3記載のエネルギー管理装置。
【請求項6】
前記アシスト条件が成立したときの履歴を記憶する履歴記憶部と、前記蓄電装置から電力の残量を取得する残量取得部とが付加され、前記アシスト条件は、前記アシスト動作の起動に必要な前記蓄電装置の残量に関する基準値を含んでおり、前記条件設定部は、前記履歴記憶部に記憶された履歴を用いることにより所定期間において前記蓄電装置の残量の最小値を既定値に近づけるように前記基準値を自動的に調節する基準値調節部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエネルギー管理装置。
【請求項7】
前記報知制御部は、規定した時刻から始まる1日のうちで前記アシスト条件が最初に満たされたことが前記アシスト制御部から通知されると前記報知装置に前記選択報知を提示させることを特徴とする請求項3記載のエネルギー管理装置。
【請求項8】
前記報知制御部は、前記選択報知に対して前記操作装置から前記アシスト動作の起動を不要とする応答が得られた場合は、前記1日のうちで前記アシスト条件が次に満たされたことが前記アシスト制御部から通知されたときにも前記報知装置に前記選択報知を提示させることを特徴とする請求項7記載のエネルギー管理装置。
【請求項9】
前記アシスト制御部は、前記選択報知に対して前記操作装置から前記アシスト動作の起動を要求する応答が得られた回数の累積値が規定回数に達すると、前記報知装置への前記選択報知を行わずに、前記アシスト動作を行っていることを前記報知制御部を通して前記報知装置に提示させることを特徴とする請求項3、7、8のいずれか1項に記載のエネルギー管理装置。
【請求項10】
通信用のインターフェースを備え、前記条件設定部は、前記インターフェースを通して前記アシスト条件が設定されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のエネルギー管理装置。
【請求項11】
前記電力取得部は、所定の時間間隔で電力をサンプリングし、複数回のサンプリングで得られた電力の代表値を前記需要電力とすることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のエネルギー管理装置。
【請求項12】
電力系統から負荷に電力を供給する給電路を通して前記負荷への電力供給を行うアシスト動作が可能である蓄電装置と、前記負荷の需要電力を計測する計測装置と、前記計測装置が計測した前記需要電力に応じて前記アシスト動作の起動と停止とを制御するエネルギー管理装置と、前記エネルギー管理装置から指示された報知を行う報知装置と、前記エネルギー管理装置に指示を与える操作装置とを備え、前記エネルギー管理装置は、前記計測装置から前記需要電力を取得する電力取得部と、前記需要電力について規定したアシスト条件の成立時に前記アシスト動作の起動と停止とを選択するアシスト制御部と、前記アシスト条件が成立したことを前記報知装置に提示させる報知制御部と、前記操作装置からの入力を取得する入力取得部と、前記入力取得部を通して前記アシスト条件が設定される条件設定部とを備えることを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項13】
コンピュータを、
負荷の需要電力を取得する電力取得部と、前記需要電力について規定したアシスト条件の成立時に電源とは別に設けた蓄電装置から前記負荷に電力を供給するアシスト動作の起動と停止とを選択するアシスト制御部と、前記アシスト条件が成立したことを報知装置に提示させる報知制御部と、操作装置からの入力を取得する入力取得部と、前記入力取得部を通して前記アシスト条件が設定される条件設定部とを備えるエネルギー管理装置として動作させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−42586(P2013−42586A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176849(P2011−176849)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】