説明

エポキシ樹脂の製造法

【課題】易加水分解性塩素、加水分解性塩素の低減されたエポキシ樹脂の工業的に非常に価値のある製造法を提供すること。
【解決手段】1)フェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンを、非プロトン性極性溶媒の存在下に、反応系中に固形のアルカリ金属水酸化物を分割添加し反応させ、得られたエポキシ樹脂を含有する溶液から、減圧下、140℃以下の温度で、エピハロヒドリンおよび非プロトン性極性溶媒を同時に除去し、2)次いで、有機溶媒を加え、得られたエポキシ樹脂を有機溶媒に溶解し、系中に存在する有機溶媒不溶物を除去し、3)有機溶媒不溶物を除去した後、系中にアルカリ金属水酸化物を添加し、50〜90℃でエポキシ樹脂を処理することを特徴とする、エポキシ樹脂の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い信頼性が要求される電気・電子部品の分野、特に電子部品の封止剤、積層板等の材料として有用な易加水分解性塩素及び加水分解性塩素の低いエポキシ樹脂の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、耐熱性、電気特性、力学特性等に優れているため、各種の電気、電子部品用に使用されている。特に、トランジスター、IC、LSI、VLSI等の半導体素子の封止材料としては、大部分エポキシ樹脂が使用されている。近年半導体素子の高集積化に伴う配線の微細化により、配線の腐食がより起こり易くなり、その原因となる腐食性イオン、とりわけ加水分解性塩素量を低減したエポキシ樹脂が望まれている。このため、加水分解性塩素を低減するための方法が多く提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1、特許文献2にフェノール類とエピクロルヒドリンをアルカリ金属水酸化物および非プロトン性極性溶媒の存在下で反応させる方法が提案されている。しかし、特許文献1、特許文献2に開示されたいずれの方法も、アルカリ金属水酸化物として、その水溶液を使用しており、特許文献1においては系内から水を除去せずに、フェノール類とエピクロルヒドリンとが反応しているため、加水分解性塩素の低減は充分ではない。一方、特許文献2においては減圧下、エピクロルヒドリンと水との共沸により系内から水を除去し、系内の水の量を調整しながら、フェノール類とエピクロルヒドリンと反応している。このため、反応中、圧力を調整するための煩雑さが伴い、さらに凝縮器、トラップに低温を要する等経済的経費がかさむ不利がある。また、特許文献3には、フェノールとサリチルアルデヒドの縮合物とエピクロルヒドリンとをアルカリ金属水酸化物および非プロトン性極性溶媒の存在下でエポキシ化を行い、続いて得られた粗製エポキシ樹脂を有機溶媒中でアルカリ性物質で処理する製造方法が提案されている。しかし、特許文献3でも、特許文献2と同様にエポキシ化は減圧下、エピクロルヒドリンと水の共沸により、系内の水を除去しながらエポキシ化反応を行っている。更に、非プロトン性極性溶媒を水洗により除去しているため、非プロトン性極性溶媒を再使用する場合、困難が伴う。また、特許文献4には、エピクロロヒドリンとフェノール性水酸基を有する化合物を非プロトン性極性溶媒及びアルカリの存在下エポキシ化反応を行い、未反応のエピクロロヒドリンと非プロトン性極性溶媒を減圧下、140℃以下の温度で回収し、続いて、有機溶媒中、副生アルカリ塩の存在下で、アルカリ処理する方法が提案されている。しかしながら特許文献4では、副生アルカリ塩の存在下で、アルカリ処理を行うため、易加水分解性塩素がやや多い欠点があった。加水分解性塩素量が同じでも、易加水分解性塩素が多いと、硬化時の初期トラブルの原因及び穏和な条件での信頼性に問題が生じる可能性がある。このため、加水分解性塩素量が低く、加水分解性塩素中の易加水分解性塩素の占める割合が低いエポキシ樹脂が望まれている。
【0004】
【特許文献1】東独153882
【特許文献2】特開平6−7309号公報
【特許文献3】特開平1−252624号公報
【特許文献4】特開平5−155978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、易加水分解性塩素を低減し、なおかつ工業的に価値が大きい加水分解性塩素の低いエポキシ樹脂の製造法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前述の目的を達成するために検討した結果、フェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンを、固形のアルカリ金属水酸化物と非プロトン性極性溶媒の存在下で反応させ、反応後、未反応のエピハロヒドリンと非プロトン性極性溶媒を特定の条件で一気に除去し、有機溶媒に残留樹脂を溶解させ、有機溶媒不溶物を除去した後、アルカリ金属水酸化物で50〜90℃の温度で処理することにより、易加水分解性塩素が低減され、かつ塩素含有量の少ないエポキシ樹脂が得られ、工業的価値も大きい方法であることを見い出し本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は
1)フェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンを、非プロトン性極性溶媒の存在下に、反応系中に固形のアルカリ金属水酸化物を分割添加し反応させ、得られたエポキシ樹脂を含有する溶液から、減圧下、140℃以下の温度で、エピハロヒドリンおよび非プロトン性極性溶媒を同時に除去し、2)次いで、有機溶媒を加え、得られたエポキシ樹脂を有機溶媒に溶解し、系中に存在する有機溶媒不溶物を除去し、3)有機溶媒不溶物を除去した後、系中にアルカリ金属水酸化物を添加し、50〜90℃でエポキシ樹脂を処理することを特徴とする、エポキシ樹脂の製造法、
2.フェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンとの反応を0〜80℃の温度で行う上記1.に記載のエポキシ樹脂の製造法、
3.フェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンを反応させる際、アルカリ金属水酸化物として固形の水酸化ナトリウム及び/または水酸化カリウムを、フェノール性水酸基を有する化合物のフェノール性水酸基1当量に対して0.9〜1.1モル使用する上記1.または2.に記載のエポキシ樹脂の製造法、
4.エピハロヒドリンがエピクロルヒドリンであり、フェノール性水酸基を有する化合物のフェノール性水酸基1当量に対してエピクロルヒドリンを2〜10モル使用する上記1.、2.、及び3.のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の製造法、
5.非プロトン性極性溶媒がジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる1種以上であり、非プロトン性極性溶媒をフェノール性水酸基を有する化合物100重量部に対し30〜300重量部使用する上記1.、2.、3.及び4.のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の製造法、6.フェノール性水酸基を有する化合物がフェノール類及び/またはナフトール類とアルデヒド類の縮合物、フェノール類及び/またはナフトール類とジシクロペンタジエンとの反応物、フェノール類及び/またはナフトール類とビフェニル系縮合剤との縮合物、ビスフェノール類及びビフェノール類から選ばれる1種以上である上記1.、2.、3.、4.及び5.のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の製造法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造法によれば,易加水分解性塩素、加水分解性塩素が大幅に低減しさらに、エポキシ当量も理論値に近い値の物が得られる。又、高価な非プロトン性極性溶媒の再使用が容易で、工業的にも有益な製造法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において得られるエポキシ樹脂は、易加水分解性塩素の含有量が低いエポキシ樹脂である。ここで、易加水分解性塩素とは樹脂をトルエンに溶解させ、0.1規定のKOH−メタノールを加え、室温で30分間処理により脱離する塩素量である。易加水分解性塩素は、非常に穏和な条件でエポキシ樹脂より脱離可能な塩素である。以下、本発明で規定している加水分解性塩素は易加水分解性塩素及び更に厳しい条件で脱離する塩素の和である。
【0010】
本発明に使用されるフェノール性水酸基を有する化合物は、特に限定されず、エポキシ化可能なものであれば使用できる。具体例としては、フェノール類及び/またはナフトール類とアルデヒド類との縮合物、フェノール類及び/またはナフトール類とキシリレングリコールとの縮合物、フェノール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物、フェノール類及び/またはナフトール類とジシクロペンタジエンの反応物、フェノール類及び/またはナフトール類とビフェニル系縮合剤との縮合物、ビスフェノール類、ビフェノール類等が挙げられる。これらは、公知の方法により得ることが出来る。これらフェノール性水酸基を有する化合物のうちフェノール類及び/またはナフトール類とアルデヒド化合物の縮合物、フェノール類及び/またはナフトール類とジシクロペンタジエンとの反応物、フェノール類及び/またはナフトール類とビフェニル系縮合剤との縮合物、ビスフェノール類、ビフェノール類が好ましい。
【0011】
上記の、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ノニルフェノール、ブチルメチルフェノール、トリメチルフェノールカテコール、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、ハイドロキノン、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールK、ビスフェノールS、ビフェノール、テトラメチルビフェノール等が例示される。
【0012】
又、ナフトール類としては、1−ナフトール、2−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシジメチルナフタレン、トリヒドロキシナフタレン等が例示される。これら、フェノール類、ナフトール類は1種あるいは2種以上使用しても差し支えない。
【0013】
更に、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルベンズアルデヒド、ブロムベンズアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が例示される。
【0014】
ビフェニル系縮合剤の具体例としては、ビス(メチロール)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ビス(エトキシメチル)ビフェニル、ビス(クロロメチル)ビフェニル等が例示される。
【0015】
ビスフェノール類の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールK、ビスフェノールS等が例示される。ビフェノール類としては、ビフェノール、テトラメチルビフェノール等が例示される。
【0016】
この様な、フェノール性水酸基を有する化合物をエポキシ化するために用いるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等が例示される。エピハロヒドリンは、フェノール性水酸基を有する化合物のフェノール性水酸基1当量に対して2〜10モル使用するのが好ましい。より好ましくは、3〜6モル使用する。エピハロヒドリンの量が少なすぎるとエポキシ当量が高くなったり、ゲルが発生しやすくなる。又、多すぎると体積効率が悪くなる等工業的に不利となる。
【0017】
非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1、3−ジメチル−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらは、フェノール性水酸基を有する化合物100重量部に対し30〜300重量部使用するのが好ましい。非プロトン性極性溶媒の使用量が少ないと加水分解性塩素の低減の効果が顕著でない。多くても、低減効果が顕著でなく、容積効率の低下をきたし不利である。
【0018】
フェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンを反応させる際に用いる固形のアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらは1種のみまたは組み合わせて用いることが出来、分割または連続的に系内に添加される。通常、フェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンを反応させる際にアルカリ金属水酸化物の水溶液が用いられるが、この場合、アルカリ金属水酸化物の水溶液から持ち込まれる水が多くなり、中間体であるハロヒドリンエーテルの閉環を充分行わせるために、反応中、系内から水を、減圧下、エピハロヒドリンとの共沸により除去する必要があり、操作が煩雑になり工業的に不利である。固形のアルカリ金属水酸化物は、フェノール性水酸基を有する化合物のフェノール性水酸基1当量に対して0.9〜1.1モル使用するのが好ましい。アルカリ水酸化金属物の量が少ないと、エポキシ化が充分進まず、加水分解性塩素の増加をもたらす。多いと、エポキシ当量の増加、ゲルの発生等が起こり好ましくない。
【0019】
フェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンを反応させる際の温度は0〜80℃が好ましく、常圧で反応を実施できる。加水分解性塩素を低減するためには、温度が低い方がこのましいが反応時間が長くなる。実用的には20〜70℃で反応を行うのが好ましい。反応時間は、3〜7時間行えば充分である。
【0020】
反応終了後、エポキシ樹脂を含有する溶液から、減圧下に140℃以下、好ましくは135℃以下の温度でエピハロヒドリン及び非プロトン性極性溶媒を同時に蒸留等により除去することにより、粗製エポキシ樹脂と副生アルカリ塩等が残留物として得られる。
【0021】
この様にして得られた粗製エポキシ樹脂と副生アルカリ塩等を含む残留物にメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の有機溶媒を加え、粗製エポキシ樹脂を溶解する。この溶液から、有機溶媒不溶物を濾過、水洗、遠心分離等で除去する。副生アルカリ塩等有機溶媒不溶物が残存したままアルカリ金属水酸化物で粗製エポキシ樹脂を処理すると、副生アルカリ塩等有機溶媒不溶物の影響で、強い条件で測定する加水分解性塩素、例えば、エポキシ樹脂をジオキサンに溶解し、1N−KOH/エタノール溶液を加え、30分間煮沸還流で測定されるような加水分解性塩素は低減するが、穏和な条件で測定される易加水分解性塩素の低減は充分でない。
【0022】
副生アルカリ塩等有機溶媒不溶物を除去した溶液に、アルカリ金属水酸化物を加え、好ましくは50〜90℃で、1〜3時間処理する。処理温度が50℃未満の場合、その処理効果が小さく、加水分解性塩素、易加水分解性塩素の低減が充分でない。一方、温度が90℃を越えると、加水分解性塩素は低減するが、エポキシ当量の上昇が起こり好ましくない。この際用いるアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、固形または水溶液の状態で添加することが出来る。その使用量はエポキシ化に用いたフェノール性水酸化物のフェノール性水酸基1当量に対して0.01〜0.2モルが好ましい。
【0023】
このようにアルカリ金属水酸化物で処理して得た溶液を分離した水相が中性になるまで水洗を繰り返す。続いて、有機溶媒を減圧下で除去することにより、易加水分解性塩素及び加水分解性塩素のきわめて少ないエポキシ樹脂が得られる。
【0024】
従来提案されているエポキシ樹脂の製造法においては、使用されるアルカリ金属水酸化物が水溶液の形で使用される。又、アルカリ金属水酸化物の存在下で、フェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンとの反応はエピクロルヒドリンと水との共沸を利用して、水を系外へ除去しながら行われる。更に、加水分解性塩素の低いエポキシ樹脂を得るためには、反応温度を低くする必要があり、このため共沸温度を下げるために、減圧下でおこなわれる。
【0025】
一方、本発明においては、常圧で、系の沸点以下の温度で、系外への水の除去を必要としないで行うことが出来る。このため、合成プロセスも圧力等の煩雑な調整も必要とせず、更にエネルギー的にも有利となる。これは、固形のアルカリ金属水酸化物、非プロトン性極性溶媒の存在下で、フェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンを反応させることにより達成されたものである。反応終了後、減圧下、140℃以下、更に望ましくは135℃以下で非プロトン性極性溶媒と過剰のエピハロヒドリンを蒸留等により、同時に除去、回収する。従来、非プロトン性極性溶媒は水洗により除去されていたが、本発明では、蒸留等により回収できるため、再使用が容易となる。
【0026】
続いて、残った粗製エポキシ樹脂をメチルイソブチルケトン、トルエン等の有機溶媒に溶解し、副生アルカリ塩等、有機溶媒に不溶成分を濾過、遠心分離、水洗により除去する。副生アルカリ塩等有機溶媒に不溶成分の除去は、、次のアルカリ金属水酸化物で粗製エポキシ樹脂を処理するエポキシ樹脂の精製工程で、易加水分解性塩素の低減のために重要である。副生アルカリ塩等有機溶媒に不溶成分を含んだまま、精製反応を行うと、易加水分解性塩素の低減が充分でない。また、非プロトン性極性溶媒とアルカリ金属水酸化物の存在下でフェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンとを反応させる工程を経ないと、副生アルカリ塩等を除去した後、アルカリ金属水酸化物で処理しても、加水分解性塩素の低減されたエポキシ樹脂を得ることはかなり難しい。
【0027】
これらの一連の操作を行うことにより、易加水分解性塩素、加水分解性塩素が著しく低減されたエポキシ樹脂が得られる。さらに、本発明は工業的に非常に価値のあるエポキシ樹脂の製造法である。こうして得られたエポキシ樹脂は、通常用いられる硬化剤及び必要により効果促進剤、充填材等と混合されエポキシ樹脂組成物とし、硬化させることにより半導体の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジスト等に使用することができる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
【0029】
合成例1
温度計、撹拌器、冷却管を備えたフラスコに、フェノール235g(2.5モル)、サリチルアルデヒド49g(0.4モル)及びパラトルエンスルホン酸1gを仕込み、窒素を吹き込みながら80℃で3時間、更に100℃で2時間反応させた。冷却後、メチルイソブチルケトン300mlを加え、洗浄水が中性になるまで水洗した。有機相から減圧下に未反応原料及び溶媒を除去し、樹脂(A)を得た。
【0030】
合成例2
温度計、滴下ロート、冷却管、分溜管、撹拌器を備えたフラスコに、ビス(メチロール)ビフェニル107g(0.5モル)、フェノール113g(1.2モル)、パラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、120℃まで加熱し、分溜管を用いて、生成する水を抜き出した後、更に5時間反応させ、冷却後、メチルイソブチルケトン500mlを加え、洗浄水が中性になるまで水洗した。有機相から、減圧下に未反応物及び溶媒を除去し、樹脂(B)を得た。
【0031】
実施例1〜9
合成例1、2で得られた樹脂(A)、(B)及び下記の樹脂(C)〜(H)をそれぞれ表1に示す量使用し、ジメチルスルホキシド(表1中DMSO)、エピクロルヒドリン(表1中ECH)を温度計、撹拌器、冷却管を備えたフラスコに表1に示す量仕込み、窒素を吹き込みながら溶解した。
【0032】
溶解後、表1に示す反応温度(反応温度T1 )に保ち、固形の水酸化ナトリウムを表1示す量を10回に分け、100分で添加した、水酸化ナトリウム添加終了後、更に表1に示す反応温度(反応温度T2 )に上げ、2時間保持し、反応を終了させた。反応終了後、フラスコを表1に示す温度に加熱し、表1に示す圧力に達するまで、過剰のエピクロルヒドリン、ジメチルスルホキシドを同時に回収した。
【0033】
回収後、メチルイソブチルケトンを400gを加え、樹脂分を溶解した。溶解後、温水100gを加え、副生塩等のメチルイソブチルケトンに不溶解物を水相と共に水洗分離した。
【0034】
有機相に20%水酸化ナトリウム水溶液20gを添加し、70℃で2時間反応した。反応後、水相が中性を示すまで、水洗を繰り返した。水洗後、減圧下でメチルイソブチルケトンを留去してエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂について、下記の方法に従って易加水分解生塩素、加水分解性塩素、エポキシ当量を求めた。その結果を表1に示す。
【0035】
(易加水分解性塩素)約0.5gのエポキシ樹脂を精秤し、トルエン20mlを加え、樹脂を溶解する。0.1N−KOHメタノール溶液2mlを加え、室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌する。その後、100mlのアセトンを加え、更に硝酸1mlを加え、0.001−N硝酸銀イソプロピルアルコールで滴定し定量した。
【0036】
(加水分解性塩素)約0.5gのエポキシ樹脂を100mlの共栓付フラスコに精秤し、ジオキサン30mlを加え、樹脂を溶解する。溶解後、1N−KOHエタノール溶液5mlを加え、30分間煮沸還流する。その後、この溶液を完全に200mlのビーカーに移し、80wt%のアセトン水溶液100mlを加え、更に、濃硝酸2mlを加え硝酸銀水溶液にて電位差滴定を行い定量した。
【0037】
(エポキシ当量)JIS K7236に準拠して、測定した。
【0038】
樹脂(A)、(B)以外の使用したフェノール性水酸基を持つ化合物樹脂(C):オルトクレゾールノボラック(水酸基当量120g/eq.、日本化薬(株)製)
樹脂(D):クレゾール・ナフトール・ホルムアルデヒド共縮合物(カヤハードNHN、水酸基当量140g/eq.、日本化薬(株)製)
樹脂(E):フェノール・ジシクロペンタジエン反応物(DPP−600M、水酸基当量170g/eq.、日本石油化学(株)製)
樹脂(F):ビスフェノールA(水酸基当量114g/eq.、本州化学工業(株)製)
樹脂(G):ビスフェノールF(水酸基当量100g/eq.、本州化学工業(株)製)
樹脂(H):テトラメチルビフェノール(水酸基当量121g/eq.、本州化学工業(株)製)
【0039】
比較例1
実施例3と同様のオルトクレゾールノボラック樹脂120gを用い、表1に示す量のジメチルスルホキシド、エピクロルヒドリン及び固形の水酸化ナトリウムを用いて、メチルイソブチルケトンに粗製エポキシ樹脂を溶解した後、溶媒に不溶解物を除去せずに、20%水酸化ナトリウム水溶液で処理した以外は,実施例1と同様の操作を実施し、エポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の物性を表1に示す。
【0040】
比較例2
実施例3と同様のオルトクレゾールノボラック樹脂120gを用い、温度計、撹拌器、滴下ロート、生成水分離装置を備えた、装置に仕込み、エピクロルヒドリン509gを添加し、窒素を吹き込みながら、樹脂を溶解した。溶解後、反応温度50℃、圧力50〜100mmHgの条件下で、48%水酸化ナトリウム水溶液85gを100分かけて滴下した。このあいだ、水酸化ナトリウム水溶液から持ち込まれる水及び反応により生成する水をエピクロルヒドリンと共沸により連続的に反応系外へ除去し、エピクロルヒドリンは系内に戻し、系内の水分を1〜2%に調整した。滴下終了後、70℃で系外に水を除去しながら、2時間更に反応させた。
【0041】
続いて、容器を表1に示す温度に加熱し、表1の圧力に達するまで、過剰のエピクロルヒドリンを回収した。メチルイソブチルケトン500ml加え、残存樹脂を溶解した。温水100mlをこの溶液に加え、溶剤不溶解物を、水洗分離し、有機相に20%水酸化ナトリウム水溶液20gを加え、70℃で2時間反応した。反応終了後、洗浄水が中性を示すまで、洗浄を繰り返した。ついで、有機相からメチルイソブチルケトンを減圧下除去し、エポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の物性を表1に示す。
【0042】
比較例3
実施例3と同様のオルトクレゾールノボラック樹脂を120g用い、メチルイソブチルケトンに溶解後、20%の水酸化ナトリウム水溶液で粗製エポキシ樹脂を処理しなかった以外は、実施例1と同様の方法で行いエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の物性を表1に示す。
【0043】
比較例4
実施例3と同様のオルトクレゾールノボラック樹脂を120g用い、エピクロルヒドリンとジメチルスルホキシドを回収する時の条件を表1に示す条件(回収温度155℃、回収圧力10mmHg)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行いエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の物性を表1に示す。
【0044】
比較例5
実施例3と同様のオルトクレゾールノボラック樹脂を120g用い、メチルイソブチルケトンに不溶解物を除去した後、20%水酸化ナトリウムで処理するときの温度を100℃に変えた以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の物性を表1に示す。
【0045】
比較例6
実施例3と同様のオルトクレゾールノボラック樹脂を120g用い、メチルイソブチルケトンに不溶解物を除去した後、20%水酸化ナトリウムで処理するときの温度を30℃に変えた以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の物性を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)フェノール性水酸基を有する化合物をエピハロヒドリン、非プロトン性極性溶媒の存在下に、反応系中に固形のアルカリ金属水酸化物を分割添加し反応させ、得られたエポキシ樹脂を含有する溶液から、減圧下、140℃以下の温度で、エピハロヒドリンおよび非プロトン性極性溶媒を同時に除去し、2)次いで、有機溶媒を加え、得られたエポキシ樹脂を有機溶媒に溶解し、系中に存在する有機溶媒不溶物を除去し、3)有機溶媒不溶物を除去した後、系中にアルカリ金属水酸化物を添加し、50〜90℃でエポキシ樹脂を処理することを特徴とする、エポキシ樹脂の製造法。
【請求項2】
非プロトン性極性溶媒をフェノール性水酸基を有する化合物100重量部に対し30〜300重量部使用する請求項1に記載のエポキシ樹脂の製造法。
【請求項3】
フェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンとの反応を0〜80℃の温度で行う請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂の製造法。
【請求項4】
フェノール性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンを反応させる際、アルカリ金属水酸化物として固形の水酸化ナトリウム及び/または水酸化カリウムをフェノール性水酸基を有する化合物のフェノール性水酸基1当量に対して0.9〜1.1モル使用する請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂の製造法。
【請求項5】
エピハロヒドリンがエピクロルヒドリンであり、フェノール性水酸基を有する化合物のフェノール性水酸基1当量に対してエピクロルヒドリンを2〜10モル使用する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の製造法。
【請求項6】
非プロトン性極性溶媒がジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる1種以上であり、非プロトン性極性溶媒をフェノール性水酸基を有する化合物100重量部に対し30〜300重量部使用する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の製造法。
【請求項7】
フェノール性水酸基を有する化合物がフェノール類及び/またはナフトール類とアルデヒド類の縮合物、フェノール類及び/またはナフトール類とジシクロペンタジエンとの反応物、フェノール類及び/またはナフトール類とビフェニル系縮合剤との縮合物、ビスフェノール類及びビフェノール類から選ばれる1種以上である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の製造法。

【公開番号】特開2011−214017(P2011−214017A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169928(P2011−169928)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【分割の表示】特願2007−166323(P2007−166323)の分割
【原出願日】平成9年10月6日(1997.10.6)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】