説明

エマルション燃料の製造装置及び製造方法

【課題】改質水供給系と、改質油供給系と、エマルション生成系とを備えた構成において、安定したエマルション燃料を自動で製造可能なエマルション燃料の製造装置を提供すること。
【解決手段】 エマルション燃料の製造装置。改質水供給系と改質油供給系と、エマルション生成系を備えている。該エマルション生成系には、改質水供給系と改質油供給系から改質水および改質油を所定比で供給する。エマルション生成系が、前段・後段静止型混合機26、42、一次エマルションタンク25及び二次エマルションタンク46を備えている。前段静止型混合機26の排出側に、一次エマルションタンク25及び二次エマルションタンク46が接続されている。一次・二次エマルションタンク25、46と後段静止型混合機42との間に循環ポンプ40を備えた一次・二次循環路が、切替え可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重油、軽油、灯油、ガソリン等の燃料油や、廃鉱物油、廃植物油(廃食油)、廃プラ・廃タイヤの再生油の油改質を行い、混合する水の水改質を行った後、該改質油に界面活性剤を添加混合し、上記改質水を混合して乳化(エマルション化)させ、ボイラー、乾燥炉、煮釜、ストーブ、各種エンジン、発電機等の燃料に供するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、環境問題やエネルギー問題、及び石油資源枯渇問題の見地から、燃焼効率の向上、熱損失の減少、CO並びにNO濃度の低減、排気ガス中のススや煤塵の低減、機械油や植物油の廃油の再利用、廃プラ・廃タイヤの再生油の再利用としてのエマルション燃料の製造装置(乳化機)が求められている。
【0003】
例えば、本発明の特許性に影響を与えるものではないが、特許文献1〜3等が存在する。
【0004】
特許文献1は、本発明と同様のスタティックミキサー(静止型混合機)を用いて水と油を乳化混合させる技術であるが、本発明と異なり、界面活性剤は水と予備混合させると共に、静止型混合機の乳化循環路を備えるものではなく、別異である。
【0005】
特許文献2は、攪拌槽と素焼体の間に乳化循環路を備えるものであるが、抗火石の素焼体と接触させるためであり、一次エマルションタンクと二次エマルションタンクとを備えるものではなく、別異である。
【0006】
特許文献3は、乳化機で連続的に製造したエマルション燃料を一旦エマルション燃料循環タンクに入れ、その循環タンクを用いて形成したエマルション燃料循環ラインで前記エマルション燃料を循環しながら、その一部を取り出して燃料として連続的に使用するようにした、エマルション燃料の製造方法および装置が提案されている。
【0007】
しかし、あくまでエマルション燃料循環ラインは、エマルション燃料を燃焼装置に安定供給するためのエマルション安定化を一次目的とするものであり、エマルション燃料の更なる微細化を予定するものではない。即ち、特許文献3の請求項1は、燃焼装置を必須の発明特定事項としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−329438号公報
【特許文献2】特開2008−63355号公報
【特許文献3】特開2008−214546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記にかんがみて、改質水供給系と、改質油供給系と、エマルション生成系とを備えた新規な構成のエマルション燃料の製造装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をした結果、下記構成のエマルション燃料の製造装置に想到し得た。
【0011】
エマルション燃料を製造するための装置であって、
改質水供給系と、改質油供給系と、エマルション生成系とを備え、
前記エマルション生成系が、前段・後段静止型混合機、一次エマルションタンク、及び二次エマルションタンクを備え、
前記改質水供給系は、改質水の排出側が前記前段静止型混合機と接続され、また、
前記改質油供給系は、改質油の排出側に、該改質油に界面活性剤を添加混合する攪拌混合槽を備え、該攪拌混合槽の排出側が前記前段静止型混合機と接続され、
該前段静止型混合機の排出側に、一次エマルションタンク及び二次エマルションタンクが接続され、
該一次・二次エマルションタンクと後段静止型混合機との間に循環ポンプを備えた一次・二次循環路が、切替え可能に形成されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエマルション燃料の製造装置及び製造方法は、改質した油(原料油)と水に界面活性剤を添加し、撹拌混合して油中に水を分散させた高品質のエマルション燃料をコンパクトな装置で製造できる。
【0013】
水及び油を共に改質をかけることにより、不純物の分解除去、触媒作用によるキシレン分子の解体、且つ、クラスター(原子集団)の分解も行い、低粘度化が進み、前段静止型混合機で調製したエマルション燃料を、さらに、一次・二次エマルションタンクと後段静止型混合機との間に、それぞれ一次・二次循環路を形成して、二段乳化することによって、油中の水滴粒子が直径1ミクロン以下(ナノオーダ)になり、油と水が一定期間(一ヶ月以上)分離せず、安定した乳化状態が維持できる燃料が供給できるものである。なお、分離した状態になっても、軽く攪拌するだけで、元のエマルション燃料の状態になる。
【0014】
こうして製造したエマルション燃料は、燃焼すれば、燃焼粒子の微小爆発による燃焼効率が向上するため、供給空気量を抑制することができ、熱損失が低減され、燃料の消費量も削減でき、窒素酸化物(NO)も低減でき、環境問題に寄与するとともに、大幅に経費の削減もできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のエマルション燃料の製造装置における改質水供給系の一例を示すフロー図である。
【図2】同じく改質油供給系の一例を示すフロー図である。
【図3】同じくエマルション生成系の一例を示すフロー図である。
【図4】本発明のエマルション燃料の製造装置に使用する定量槽の断面図である。
【図5】本発明の改質油供給系で使用可能な油改質装置の概略断面図である。
【図6】本発明のエマルション生成系で使用可能な静止型混合機の混合要素体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態のエマルション製造装置を、図例(主として図1〜3)に基づいて説明する。
【0017】
エマルション製造装置は、下記改質水供給系(A)と改質油供給系(B)とエマルション生成系(C)とを備えている。
【0018】
(A)改質水供給系(図1):
改質水供給系は、被処理水受槽2と水改質装置4と改質水タンク6とを備えている。被処理水受槽2と水改質装置4の間は、水送りポンプ3を備えた配管5で接続されている。水改質装置4と改質水タンク6との間は配管5Aで接続されている。さらに、改質水タンク6と後述の前段静止型混合機26との間は、水供給ポンプ29と水流量計30とを備えた配管27で接続されている。
【0019】
上記水改質装置4は、例えば、上下に有孔板が設置された(図示省略)円筒や多角筒からなる処理塔の、上・下有孔板間に、濾材が充填された濾過タイプを使用する。
【0020】
濾材としては、例えば、濾過砂、サンゴ石、アンスラサイト、セラミック、活性炭、イオン交換樹脂、カートリッジフィルター等を好適に使用できる。
【0021】
水改質装置4は、各種濾材が積層された複層濾過塔でもよいが、洗浄のことを考えれば、各濾材毎の、単独濾過塔が望ましい。
【0022】
また、通水方向は、上向流、下向流、水平流いずれでもよいが、通水速度LV(Liner Velocity)は、0.5〜3m/hが望ましい。
【0023】
改質水タンク6内には、レベルセンサ7が設置されており、レベルセンサ7からの下限・上限信号にて水送りポンプ3が稼動・停止するようになっている。
【0024】
(B)改質油供給系(図2):
改質油供給系は、被処理油受槽9と油改質装置11と改質油タンク13と、界面活性剤槽21と改質油前処理槽15とを備えている。
【0025】
被処理油受槽9と油改質装置11との間は油送りポンプ10を備えた配管12で接続されている。油改質装置11と改質油タンク13との間は配管12Aで接続されている。改質油タンク13と改質油前処理槽15との間は油供給ポンプ17と油流量計19を備えた配管18で接続されている。また、界面活性剤槽21と改質油前処理槽15との間は活性剤ポンプ22と流量計24とを備えた配管23で接続されている。さらに、改質油前処理槽15と後述の前段静止型混合機26との間は、前処理油供給ポンプ31と流量計32を備えた配管28で接続されている。
【0026】
油改質装置11は、例えば、水改質装置4と同様、濾材が充填された濾過タイプを使用する。濾材としては、粒状セラミック濾材や、粒状ゼオライト触媒等を好適に使用できる。
【0027】
油改質装置11は、本発明者の一人が先に提案した下記構成のものであってもよい(特開2008‐189695号公報、要約等)。参考のため、当該公報の図1を本願の図5として引用する。なお、下記及び図5で引用する図符号は、本実施例におけるものとは無関係である。
【0028】
「改質処理ゾーン22を備えた油改質容器と、該改質容器12内の温度を設定温度に維持するジャケット14等の加熱手段とを備えた油改質装置。改質処理ゾーン22は、被処理油入口18から処理済油出口20に向かって、ろ過/遠赤外線ゾーン24、触媒ゾーン26及び磁界ゾーン28を備えている。触媒ゾーン26は、芳香族成分乃至重質成分の分解触媒(ゼオライト触媒)で構成する。」
上記改質油タンク13内にはレベルセンサ14が設置され、レベルセンサ14からの下限・上限信号にて、油送りポンプ10を稼動・停止させて改質油の貯留量を調整可能とされている。
【0029】
また、改質油前処理槽15内には、界面活性剤と改質油を混合させるための撹拌機16が設置されている。
【0030】
(C)エマルション生成系(図3):
前段・後段静止型混合機26、42、一次エマルションタンク25及び二次エマルションタンク46を備えている。
【0031】
このとき、前段静止型混合機より後段静止型混合機の乳化(エマルション化)能力が大であることが望ましい。前段静止型混合機は、予備エマルション化(予備混合)、後段静止型混合機はエマルション一次・二次微細化(本混合)を担うためである。
【0032】
前段静止型混合機26と一次エマルションタンク25との間は、配管33で接続されている。一次エマルションタンク25の出口と後段静止型混合機42の入口とは、バルブ36および循環ポンプ40を備えた往き配管41で接続されるとともに、後段静止型混合機42の出口と一次エマルションタンク25の戻り口とは戻り配管43で接続されて、一次循環路が形成されている。
【0033】
また、二次エマルションタンク46の出口と後段静止型混合機42の入口とは、バルブ38を備えた往き配管44及び前述の循環ポンプ40を備えた往き配管41で接続され、また、後段静止型混合機42の出口と二次エマルションタンク46の戻り口とは戻り配管45で接続されて、二次循環路が形成されている。
【0034】
一次エマルションタンク25内にはレベルセンサ34が設置されている。そして、該レベルセンサ34の上限・下限信号により、バルブ36、37、38、39が、適宜、開閉したり、循環ポンプ40が停止・稼動したりするようになっている。
【0035】
なお、二次エマルションタンク46は、製品出荷ポンプ48によりエマルション燃料を出荷可能となっている。
【0036】
前段・後段静止型混合機26、42は、循環配管内に分割板や変位板を組み込んだ静止型混合機(ライン形ミキサー:スタティックミキサー)でも良いが、特許第3609344号に記載の下記構成の静止型混合機も使用可能である(請求項1)。当該公報の図1を本願の図6として引用する。なお、下記及び図6で引用する図符号は、本実施例におけるものとは無関係である。
【0037】
「一次混合要素部2と二次混合要素部3との二層構造体からなり、その一方の板部に一次出入口5を形成し、該一次出入口5の周りの二層構造境界面において、これに連通する混合室8を円周状に配列して形成すると共に、これら円周状の混合室群8を同心的に配列し、これら混合室群8、13の半径方向の位置関係にある各混合室の間でせん断力を与える段差を介して夫々二つの混合室が相互に連通するよう構成して成る混合要素体1で形成されてなる静止型混合機。」
当該構成の静止型混合機は、特許第3609344号の特許権者であるマトリックスジーティー社から、「マトリックス・グローバルミキサー」の商品名で上市されているものでもよいが、ノリタケカンパニーリミテド社から「スタティックミキサーN60」シリーズの商品名で上市されているものでも充分使用可能である。
【0038】
次に、上記構成のエマルション燃料の製造装置を用いてのエマルション燃料の製造方法について説明する。
【0039】
被処理水1は、被処理水受槽2に貯留し、水送りポンプ3を稼動させて水改質装置4を通過させる。すると、水改質装置4で被処理水は濾過層(濾材)を通過することにより、濾材からクラスター分解、表面張力低下化、溶解力増大、浸透力増大等の作用を受けて改質水となる。該改質水は改質水タンク6に貯留される。改質水タンク6のレベルセンサ7の上限信号により水送りポンプ3は停止する。なお、被処理水は、通常、市水(水道水)、井水、地下水を使用するが工業用水であってもよい。
【0040】
被処理油(原料油)8は、被処理油受槽9に貯留し、油送りポンプ10を稼動させて油改質装置11を通過させる。すると、油改質装置11で被処理油は濾過(濾材)を通過することにより、改質水と同様、微細エマルションの製造に適した低粘度の改質油となる。該改質油は、改質油タンク13に貯留される。改質油タンク13のレベルセンサ14の上限信号により油送りポンプ10は停止する。なお、被処理油(原料油)8は、通常、重油、軽油、灯油、ガソリン等の燃料油とするが、廃鉱物油、廃植物油(廃食油)、廃プラ・廃ゴム等からの再生油であってもよい。改質油は、前述の特開2008‐189695号公報に記載の油改質装置で改質処理をしたものを用いることが望ましい。前段で濾過改質されるとともに、濾過/赤外線ゾーン、分解/触媒ゾーン、磁界ゾーンで改質されて、微細エマルション化に適した改質油を得ることができる。
【0041】
続いて、油供給ポンプ17を稼動させて、改質油前処理槽15への改質油供給を開始すると同時に、改質油前処理槽15の撹拌機16も稼動させる。
【0042】
そして、改質油前処理槽15へ改質油を油流量計19で計量して定量供給した後、攪拌機16を稼動させながら、活性剤ポンプ22を稼動させて界面活性剤20を活性剤流量計24で計量して改質油前処理槽15へ、改質油に対して界面活性剤が後述の所定比となるように定量供給する。
【0043】
次の工程は、改質水及び混合改質油を、配管27、28を経て前段静止型混合機26へ、所定混合比となるように定量供給をし、該前段静止型混合機26でエマルション化処理をしてプレエマルション35とした後、一次エマルションタンク25へ供給する。
【0044】
即ち、被処理水1が水改質装置4で改質されて改質水タンク6へ流入した改質水1Aは、改質水ポンプ29で前段静止型混合機26へ、流量計30で計量して定量供給する。
【0045】
同時に、被処理油8が油改質装置11で改質されて改質油タンク13へ流入した改質油8Aは界面活性剤20と、前述の如く、改質油前処理槽15内において所定比で攪拌機16を用いて攪拌混合した後、前処理油供給ポンプ31にて配管28を経て前段静止型混合機26へ、流量計32にて定量供給する。撹拌機16は、供給(送液)完了すれば停止する。一定量をまとめて攪拌するためである。
【0046】
前段静止型混合機26へは、改質水1A及び前処理油8Bが同時供給され、混合され、配管33にて一次エマルションタンク25へ導入(送液)される。
【0047】
一次エマルションタンク25内のレベルセンサ34は、前段静止型混合機26にてエマルション処理された、プレエマルション35の流入を感知すれば、バルブ36・37を開、バルブ38・39を閉にする。そして、循環ポンプ40を稼動させ、往き配管41を経て、後段静止型混合機42へ通液混合させて、戻り配管43を経て、即ち、一次循環路を用いて循環混合させる。
【0048】
ポンプ29、31、流量計30、32にて、同時定量供給が完了すれば、ポンプ29、31は停止し、一次エマルションタンク25へのプレエマルション35の送液は終了する。
【0049】
その後、しばらく循環ポンプ40にて、一次循環路を用いた一次循環混合により一次微細化させて一次微細化エマルションとする。
【0050】
次に、バルブ37を閉、バルブ39を開にして(バルブ38は閉)、循環ポンプ40を稼動させ、配管41、後段静止型混合機42および配管45を経て一次微細化エマルションを二次エマルションタンク46へ供給(送液)する。
【0051】
一次エマルションタンク25内のレベルセンサ34の下限信号により、バルブ36を閉、バルブ38を開にする。この状態で、二次エマルションタンク46に貯留された一次微細化エマルションを、循環ポンプ40を稼動させて二次エマルションタンク46と後段静止型混合機42との間を、即ち、二次循環路を用いて循環混合させ、エマルションの二次微細化を行なう。こうして、二次微細化によりナノオーダ(1μm以下)の油中水滴(W/O)型の製品エマルション燃料(二次微細化エマルション)47を製造するものである。
【0052】
製造したエマルション燃料(製品)47は、製品出荷ポンプ48にて出荷をする。
【0053】
なお、流量計19、24、30、32にて改質水、改質油及び界面活性剤の定量供給を行ったが、図4の如く、一定量の混合割合に応じた定量槽53で改質水/改質油/界面活性剤混合物を調製しておき、供給ポンプ56を介して前段静止型混合機26に供給(送液)してもよい。
【0054】
本実施形態のエマルション製造設備の、仕様(容量)、出力条件の一例を下記する。
【0055】
被処理水受槽2----- 100L
被処理油受槽9 ----- 100L
改質水タンク6----- 60L
改質油タンク13----- 60L
改質油前処理槽15----- 60L
一次エマルションタンク25 ----- 150L
前段静止型混合機26----「スタティックミキサー11/2-N60-331-1」ノリタケカンパニーリミテド社製
後段静止型混合機42------「スタティックミキサー2-N60-331-1」ノリタケカンパニーリミテド社製
二次エマルションタンク46----- 200L
ポンプ3、10、17、29、31
----- 20A×5L/分×30mH×0.2kw
活性剤ポンプ22 ----- 6A×10〜800cc×20mH×0.07kw
循環ポンプ40----- 15A×10L/分×100〜300mH×22kw
以上の仕様のエマルション製造装置でエマルション燃料を、100〜500L/h製造出来ることを確認している。
【0056】
水と油の割合は、20:80、30:70、40:60、50:50のものが製造でき、界面活性剤の量は、油対比0.5〜5%必要となる。
【0057】
界面活性剤の種類は、イオン性(カチオン性、アニオン性、両性)のものと、非イオン性(ノニオン性)のものがあり、また低分子系と高分子系があり、それは、被処理水、被処理油に応じて、適合するものを適宜選定する。
【0058】
上記の100〜500L/hの製造能力を備えた装置で、大きさは、幅1.2m×長さ2.4m×高さ1.8mとなる。
【0059】
大型製造装置の場合は、上記槽容量を大きくすると共に、ポンプ能力の大きいものを使用し、静止型混合機のエレメントユニット数を増やしてやれば対応可能である。
【実施例1】
【0060】
上記仕様のエマルション燃料製造装置を用いて、重油(A重油:被処理油)70%、水(水道水:被処理水)30%、界面活性剤(ノニオン系)0.4%の処方でエマルション燃料を下記条件で調製した。
【0061】
1.ポンプ3:運転時間6分、送液量30L
2.ポンプ10:運転時間10分、送液量70L
3.ポンプ17:運転時間10分、送液量70L
4.ポンプ22:運転時間10分、送液量300cc
5.攪拌機16:運転時間12分
6.ポンプ29:運転時間10分、送液量30L
7.ポンプ31:運転時間10分、送液量70.3L
(ポンプ29、31、同時運転)
8.前段静止型混合機26:流速8m/分
9.循環ポンプ40:一次エマルションタンク循環運転時間15分、
10.後段静止型混合機42:流速7.6m/分
11.循環ポンプ40:二次エマルションタンク送液運転時間10分、送液量100L
12.循環ポンプ40:二次エマルションタンク循環運転時間20分、送液総量200L
調製したエマルション燃料の特性は、下記の如くであった。
【0062】
水粒径:426nm、粘度:1.7×10−3Pa・s、動粘度:2.0×10−6/sであった。
【実施例2】
【0063】
上記仕様のエマルション燃料製造装置を用いて、軽油(被処理油)50%、水(水道水:被処理水)50%、界面活性材(ノニオン系)1.5%添加の処方でエマルション燃料を下記条件で調製した。
【0064】
1.ポンプ3:運転時間10分、送液量50L
2.ポンプ10:運転時間10分、送液量50L
3.ポンプ17:運転時間10分、送液量50L
4.ポンプ22:運転時間10分、送液量750cc
5.攪拌機16:運転時間15分
6.ポンプ29:運転時間10分、送液量50L
7.ポンプ31:運転時間10分、送液量50.75L
(ポンプ29、31、同時運転)
9.循環ポンプ40:一次エマルションタンク循環運転時間15分、
10.後段静止型混合機42:流速7.6m/分
11.循環ポンプ40:二次エマルションタンク送液運転時間10分、送液量100L
12.循環ポンプ40:二次エマルションタンク循環運転時間20分、送液総量200L
当該エマルション燃料を用いて、ジーゼルエンジンを稼動させたところ、軽油100%と略同等の出力が得られたことを確認している。
【符号の説明】
【0065】
4----- 水改質装置
11----- 油改質装置
15----- 改質油前処理槽
25----- 一次エマルションタンク
26----- 前段静止型混合機
42----- 後段静止型混合機
46----- 二次エマルションタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルション燃料を製造するための装置であって、
改質水供給系と改質油供給系とエマルション生成系とを備え、
前記エマルション生成系が、前段・後段静止型混合機、一次エマルションタンク及び二次エマルションタンクを備え、
前記改質水供給系は、改質水の排出側が前記前段静止型混合機と接続され、また、
前記改質油供給系は、改質油の排出側に、該改質油に界面活性剤を添加混合する改質油前処理槽を備え、該改質油前処理槽の排出側が前記前段静止型混合機と接続され、
該前段静止型混合機の排出側に、一次エマルションタンク及び二次エマルションタンクが接続され、
該一次・二次エマルションタンクと後段静止型混合機との間に循環ポンプを備えた一次・二次循環路が、切替え可能に形成されている、
ことを特徴とするエマルション燃料の製造装置。
【請求項2】
前記前段静止型混合機より後段静止型混合機の乳化(エマルション化)能力が大であることを特徴とする請求項1記載のエマルション燃料の製造装置。
【請求項3】
前記改質水供給系における水改質装置が、濾過砂、サンゴ石、アンスラサイト、セラミック、活性炭、イオン交換樹脂及びカートリッジフィルターから選択される1種又は2種以上からなる濾材が充填された1基又は複数基の濾過塔で構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のエマルション燃料の製造装置。
【請求項4】
前記改質油供給系が油改質装置を備え、該油改質装置が、被処理油入口および処理済油(改質油)出口を有し、該被処理油入口及び処理済油(改質油)出口の間に改質処理ゾーンを備えた油改質容器と、該改質容器内の温度を設定温度に維持する加熱手段とを備え、前記改質処理ゾーンは、前記被処理油入口から処理済油(改質油)出口に向かって、ろ過/遠赤外線ゾーン、触媒ゾーン及び磁界ゾーンを備え、前記触媒ゾーンは、芳香族成分乃至重質成分の分解触媒で構成されている、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載のエマルション燃料製造設備。
【請求項5】
前記前段・後段静止型混合機が、一次混合要素部と二次混合要素部との二層構造体から成り、その一方の板部に一次出入口を形成し、該一次出入口の周りの二層構造境界面において、これに連通する混合室を円周状に配列して形成すると共に、これら円周状の混合室群を同心的に配列し、これら混合室群の半径方向の位置関係にある各混合室の間でせん断力を与える段差を介して夫々二つの混合室が相互に連通するよう構成してなる混合要素体で形成されてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のエマルション燃料の製造装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか一記載のエマルション燃料の製造装置を用いてのエマルション燃料の製造方法であって、
前記改質水供給系で、被処理水を改質処理をして調製した改質水と、前記改質油供給系で、被処理油を改質処理をして調製した改質油に界面活性剤を添加して攪拌混合して調製した予備混合改質油とを、所定比で同時に前記前段静止型混合機に供給して、プレエマルションを調製して前記一次エマルションタンクに貯留し、さらに、
該一次エマルションタンクに貯留したプレエマルションを、前記一次循環路を用いて一次安定化(微細化)処理後、さらに、該一次安定化処理したプレエマルションを前記一次エマルションタンクから前記二次エマルションタンクに送液して、前記二次循環路を用いて二次安定化(微細化)処理をしてエマルション燃料(製品)を得ることを特徴とするエマルション燃料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−195643(P2011−195643A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61554(P2010−61554)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(510075387)活水プラント株式会社 (7)
【Fターム(参考)】