説明

エマルジョン燃料およびその製造方法

【課題】エマルジョン燃料を燃焼させる燃焼装置に、専用の排ガス対応の処理装置を付加しなくても、燃焼させた際の排ガスのNOx濃度やSOx濃度を減少させることのできるエマルジョン燃料を提供すること。
【解決手段】液体化石燃料である燃料油と水に物理的処理が施された機能水とに、消石灰と尿素とを加えて一体として乳化し、超微粒子状態に混合して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)の排出を抑制した低公害燃料として用いる安定性の高いエマルジョン燃料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラー等の各種燃焼装置では、燃焼効率の向上と同時に大気汚染を防止するために、排気ガスに含まれるNOx濃度やSOx濃度や煤塵濃度を減少させることが要求されている。
【0003】
純燃料油に水を混合してエマルジョン化(乳化)したエマルジョン燃料は、石油系燃料の使用量を減少させると共に、NOxや煤煙スラッグ等を減少させることができる燃料として従来から知られている。すなわち、エマルジョン燃料は、高温の燃焼室内に噴霧されたとき、燃料液滴中の水は瞬時に沸騰して、燃料液滴を微粒化(ミクロ爆発)する。これによって高速で高効率の燃焼を実現し、COや煤の生成を抑制できる。また、水の蒸発によって火炎温度が低下するので、排気ガス中のNOxの低減効果もあるので低公害燃料として用いることができる。
【0004】
従来、エマルジョン燃料は、スタティックミキサーや高圧ホモジナイザ等のインライン型の混合装置を用いて燃料を混合して製造していた。
【0005】
このようにして製造された従来のエマルジョン燃料としては、種々のものが知られている。例えば、有機物を熱分解させて生成した炭素素材を粉化処理し、所定割合の水を混合させた液状炭素燃料が知られている(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、燃料1に対し水2〜5を加えてエマルジョン化した加水燃料も知られている(例えば、特許文献2)。
【0007】
さらに、有機性物質の熱分解により生成した炭化物と液体状可燃成分とを混合したエマルジョン燃料(例えば、特許文献3)も知られている。
【0008】
次に、従来、排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を、尿素の加水分解水を利用して分解、除去する方法が開示されている(例えば、特許文献4)。
【0009】
また、排ガスを、消石灰スラリーと接触させて、SOxを除去する技術が開示されている(例えば、特許文献5)。
【0010】
なお、エマルジョン燃料を評価するために、エマルジョン燃料の燃焼の際の、発熱量、NOx濃度やSOx濃度や煤塵濃度等を高精度に測定する測定装置についても技術開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−130663号公報
【特許文献2】特開2002−89832号公報
【特許文献3】特開2005−272636号公報
【特許文献4】特開2004−313917号公報
【特許文献5】特開平8−323152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、エマルジョン燃料はガス化燃焼による完全燃焼が可能であり、その結果、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)濃度やSOx(イオウ酸化物)濃度を減少させることができるため、大気汚染の防止に有効な燃料として期待されている。
【0013】
しかしながら、NOxを除去するために尿素を用いる方法、SOxを除去するために消石灰スラリーを用いる方法のいずれも、燃焼装置に専用の排ガス対応の処理装置を付加する必要があり、装置全体が大型化するとともに装置のコストアップが避けがたい。
【0014】
本発明はこれらの事情にもとづいてなされたもので、エマルジョン燃料を燃焼させる燃焼装置に、専用の排ガス対応の処理装置を付加しなくても、燃焼させた際の排ガスのNOx濃度やSOx濃度を減少させることのできるエマルジョン燃料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施例に係るエマルジョン燃料は、液体化石燃料である燃料油と物理的処理が施された水に消石灰と尿素とを加えた機能水とを混合して乳化することにより、超微粒子状態のエマルジョン燃料としたものである。
【0016】
また、本発明の実施例に係るエマルジョン燃料においては、前記燃料油はC重油であり、また、前記機能水は7,500乃至8,500Gの遠心力が付与された加圧水であることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の実施例に係るエマルジョン燃料においては、前記燃料油と前記機能水との混合比は、重量比で60%対40%であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の実施例に係るエマルジョン燃料においては、前記燃料油と前記機能水の構成粒子の平均粒径は1μm〜50μmの範囲であることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の実施例に係るエマルジョン燃料の製造方法は、7500G〜8500Gの加速度を付与した遠心分離機により水を分離して得られる機能水を生成する工程と、この機能水に液体化石燃料である燃料油とともに消石灰および尿素を加えて攪拌する工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の実施例に係るエマルジョン燃料の製造方法においては、前記燃料油と前記機能水との混合比は、重量比で60%対40%であることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の実施例に係るエマルジョン燃料の製造方法においては、前記燃料油と前記機能水の構成粒子の平均粒径は1μm〜50μmの範囲であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、燃焼装置に専用の排ガス対応の処理装置を付加しなくても、燃焼排ガス中のNOx濃度あるいはSOx濃度を減少させることのできるエマルジョン燃料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のエマルジョン燃料製造装置の概略構成図。
【図2】本発明のエマルジョン燃料と、石炭、石油、天然ガスについての、環境負荷とコスト負荷に関する数値を、測定・算出した結果の比較表。
【図3】本発明のエマルジョン燃料を評価するための発熱量および排気ガス測定装置の実施例を示す概略構成図。
【図4】本発明のエマルジョン燃料を評価するための発熱量および排気ガス測定装置の燃焼系統の動作を説明する模式説明図。
【図5】本発明のエマルジョン燃料を評価するための発熱量および排気ガスの測定装置の測定系統の動作を説明する模式説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のエマルジョン燃料についての実施するための最良の形態を説明する。
【0025】
本発明の実施例に係るエマルジョン燃料は、液体化石燃料である燃料油と消石灰および尿素を加えた機能水とを、超微粒子状態(ナノレベル)で混合することにより製造される。このようにして製造されたエマルジョン燃料においては、機能水又は燃料油からなる構成粒子の平均粒径が1μm〜50μmである。
【0026】
機能水とは、一般的には、水に加速度、圧力、電場、磁場、遠赤外線、超音波等の物理的処理を施して何らかの機能をもたせた水をいう。本発明の実施例においては、井戸水を7500G〜8500Gの加速度を付与した遠心分離機により分離して得られる加圧水(以下ではZ液という)を用いている。なお、上記エマルジョン製造装置を用いて加圧水を生成する方法については、本出願人の出願に係る特願2007−16369に詳細に説明されている。
【0027】
燃料油としては、C重油を用いている。C重油は発熱量が大きく、ガス化燃焼した際にA重油よりも発熱量が大きくなる。なお、発熱量を多少犠牲にすれば、他にも燃料油として、石油、灯油、軽質油等の石油系燃料油を単独または混合して用いることができる。
【0028】
なお、燃料油(C重油)とZ液との割合は、例えば、重量比で、燃料油60%に対してZ液40%である。
【0029】
消石灰は、排ガス中の硫黄酸化物(SOx)を吸収する吸収剤として機能し、吸収した硫黄酸化物を石膏にして処理する。
【0030】
尿素は、尿素が加水分解されることで生成されるアンモニアを用いて、NOxを還元する。
【0031】
本発明の実施例に係るエマルジョン燃料は、長時間保存しても安定性は高い。すなわち、従来のエマルジョン燃料では、時間と共に燃料油と水とが分離する傾向が強く、また、分離しなくても時間と共に粘度が高くなる性質があり、燃焼装置へ輸送する際のパイプやノズルを詰まらせる現象が発生していた。これに対して、本発明の実施例に係るエマルジョン燃料では、長時間放置しても燃料油と水とが分離しにくく上記のような現象は生じない。
【0032】
次に、上述のエマルジョン燃料の製造方法について説明する。図1は、燃料にC重油と水に、消石灰と尿素とを加えたエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料製造装置の概略構成図である。
【0033】
エマルジョン燃料製造装置4は、約8,000G程度が付与された加圧水(機能水)を収納する機能水用タンクT1とC重油を収納する重油用タンクT2とが設けられている。これらのタンクT1とタンクT2の下部出口は、それぞれバルブVa、Vbおよび管路5a、5bを介して混合・攪拌機6に供給される。
【0034】
混合・攪拌機6としては、例えば、ラインミキサ、矢羽タービン翼、フルマージン型翼、高せん断型タービンミキサ、ホモジライザ等の高せん断速度の撹拌装置を有している。
【0035】
また、両タンクT1、T2にはそれぞれ、加熱用のヒータH1、H2と温度計7が設置され、重油用タンクT2には攪拌用のプロペラ8が設けられている。
【0036】
混合・攪拌機6の下部出口は、管路6aを介してヒータH3を有する保温用の保温タンクT3に接続されている。
【0037】
このような構成のエマルジョン燃料製造装置では、機能水用タンクT1に、予め、遠心分離機(不図示)で、汲み上げた井戸水を7,500G〜8,500Gの加速度を付与して遠心分離して生成した加圧水を注入する。さらに、機能水用タンクT1に消石灰と尿素とを加える。
【0038】
一方、重油用タンクT2には、C重油を注入する。C重油は所定の流動性を維持するために所定の温度でプロペラ8により攪拌している。
【0039】
機能水用タンクT1に接続されているバルブVaと、重油用タンクT2に接続されているバルブVbを開いて、重量比で燃料油60%に対して消石灰と尿素とが加えられたZ液40%の割合で、混合・攪拌機6に注入する。
【0040】
混合・攪拌機6では、注入された燃料油に対して消石灰と尿素とが加えられたZ液が攪拌翼等で所定時間攪拌され、十分に分散されて微細化される。この結果、平均粒径が1μm〜50μmのエマルジョン燃料が生成される。
【0041】
生成されたエマルジョン燃料は、管路6aを介して保温タンクT3に注入されて、保温タンクT3の内部に貯留される。
【0042】
このように生成されたエマルジョン燃料は、燃焼装置で燃焼させる際に、従来のエマルジョン燃料のように、燃焼装置に専用の処理装置を付加しなくても、下記のように燃焼させた際の排ガスのNOx濃度やSOx濃度を減少させることができる。
【0043】
次に、上述のエマルジョン燃料と、石炭、石油、天然ガスとの燃焼特性の比較について説明する。図2は、生成されたエマルジョン燃料と、石炭、石油、天然ガスについての、環境負荷とコスト負荷に関する数値を後述する燃焼装置を用いて測定した結果を示す比較表である。
【0044】
すなわち、各燃料に対する環境負荷の項目として、炭酸ガス(CO)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)および煤塵(PM)を、そして、コスト負荷として発熱量当たりの単価について、それぞれ石炭を100として比較した。この測定結果から次のような結論が得られる。
【0045】
炭酸ガス(CO)・・・・エマルジョン燃料が最小である。
硫黄酸化物(SOx)・・・エマルジョン燃料は、天然ガスについで少ない。
窒素酸化物(NOx)・・・エマルジョン燃料は、天然ガスよりも少なく最小である。
煤塵(PM)・・・・・・・エマルジョン燃料は、天然ガスについで少ない。
発熱量当たりの単価・・・エマルジョン燃料が最も安価である。
【0046】
以上の比較結果から、上述した本発明の実施例に係るエマルジョン燃料は、価格面も含めて総合的に判断すると、各種ボイラー等の産業用の燃料として、最も良好な燃料ということもできる。
【0047】
また、上述のエマルジョン燃料は、燃焼効率も高く、エンジン用、燃焼炉用、焼却炉用、ボイラー用、発電用等の全てに使用できる。省エネ効果として、例えば30〜40%程度を増大できるという結果を得ている。
【0048】
また、上述のエマルジョン燃料は、長期に亘って保存しておいても、常温ではもちろんのこと、温度変化によっても燃料油と機能水とが分離することがなかった。このため、寒冷地、熱帯地を問わず、長期に有効利用することが可能で、従来の燃料と比べて実用的効果が非常に高い。
【0049】
次に、上述のエマルジョン燃料等の燃料を適切に評価するために、燃料の発熱量および排気ガス中の環境負荷物質成分の測定をおこなうための測定装置について図面を参照して説明する。
【0050】
図3は、エマルジョン燃料の発熱量および排気ガスの測定装置の一例を示す概略構成図である。
【0051】
図3に示したように、燃料の発熱量および排気ガスの測定装置60は、測定対象のエマルジョン燃料等の燃料を十分に燃焼させた状態の燃焼筒10が、燃焼系統20および測定系統30のいずれか一方に選択的に接続されるように構成されている。
【0052】
燃焼筒10は、直径が管軸方向で変化する筒状体であり、入り口側にはバーナー1が装着され、出口側は開放され燃焼排気ガスの排出口11になっている。筒状の燃焼筒10は、バーナー1が装着されている部位から徐々に直径が増加し中央部12で最大になり、排出口11に向かって徐々に縮小し、排出口11で最小になる。燃焼筒10はバーナー1を装着した状態で全体が矢印A方向に往復移動が可能なように、燃焼筒10の下部に、例えば、ラック13aとピニオン13bとの組み合わせによる往復移動機構13が設けられている。
【0053】
燃焼筒10に装着されているバーナー1には燃焼筒10の側に開口を向けて、燃料噴射ノズル2と空気供給ノズル(不図示)と予熱用点火ノズル(不図示)とが列設されている。燃料噴射ノズル2は渦流式噴射ノズルを用いている。渦流式噴射ノズルは、例えば、ノズル筒の直径方向の対向位置において、それぞれ接線方向に高圧ガスを流入させることによりノズル筒内で旋回流(または、回転流)が形成される。この渦流式噴射ノズルを用いた燃料噴射ノズル2からの燃料の噴射により、燃焼筒10の内部に燃焼時に燃料の火炎による旋回流(例えば、反時計回り方向)が形成される。
【0054】
また、バーナー1の燃焼筒10に対しての装着位置や、バーナー1に対する燃料噴射ノズル2の突出量についてはそれぞれ調整可能な構造になっている。
【0055】
また、燃焼筒10には、後述する測定容器31から排出した排熱流が循環して送り込まれてくる伸縮自在な戻り排熱管32が接続されている。なお、戻り排熱管32から還流されてくる戻りの排熱流は、燃焼筒10の対象位置に形成されている取り込み口10a、10bから取り込まれると、燃焼筒10の取り込み口10a、10bに設けられているガイド板(不図示)に導かれて旋回流が形成される。この形成された旋回流と燃料噴射ノズル2によって形成される火炎の旋回流とは、旋回方向が一致しているので燃焼時の燃焼筒10の内部の火炎は合流した強力な旋回流となる。
【0056】
バーナー1には、燃料供給管路3が接続されている。この燃料供給管路3には定量ポンプPと燃料供給バルブV4とを介して燃料供給部4が接続されている。したがって、燃料供給管路3から供給される燃料は、定量ポンプPにより定量ずつバーナー1に供給される。
【0057】
なお、燃焼筒10には特に図示はしないが、室内の温度を測定する温度センサが設けられており、温度センサによって燃焼筒10の燃焼状態が検知でき、燃焼がガス化燃焼状態になったか否かも判断することができる。
【0058】
次に、燃焼系統20について説明する。燃焼系統20は、回動排気管21と、一端がこの回動排気管21と管継ぎ手22を介して接続され、他端に燃焼・測定切替バルブV2が接続された固定排気管23とにより構成されている。回動排気管21は、平行な両端部とこれらの両端部に直交する中央部からなる、全体としてZ字型に曲折された管体である。この回動排気管21の一端には、燃焼筒10の排出口11に対向配置される径大な開口部24が設けられている。回動排気管21の他端は、固定排気管23の一端に回転可能に嵌合されている。これにより、回動排気管21は、その中央部と開口部24が固定排気管23の周囲に回動可能に設けられている。
【0059】
回動排気管21の径大な開口部24は、燃焼筒10が回動排気管21方向に移動した場合、その排出口11が開口部24内に挿入可能に形成されている。
【0060】
また、回動排気管21の開口部24の外側にはロープ係止部25が設けられ、このロープ係止部25にロープ26の一端が係止されている。ロープ26の他端側は、固定排気管23の近傍に固定された巻き取りプーリ27に係止されており、巻き取りプーリ27はモータMの回転によってロープ26を巻き取り、あるいは巻戻しする。ロープ26の巻き取り動作によって、回動排気管21は固定排気管23に接続された管継ぎ手22を支点として回動し、燃焼筒10の排気口との対向位置から上方に移動して、燃焼筒10が測定容器31に結合される位置まで往復移動する際の妨げにならない位置に退避する。
【0061】
燃焼・測定切替バルブV2は、燃焼筒10が燃焼生成の動作の際は開放し、燃焼筒10が測定動作の際は閉止するように作動する。
【0062】
次に、測定系統30について説明する。測定系統30は、測定容器31とこの測定容器31に接続されている各種管路と、各種測定手段により形成されている。
【0063】
測定容器31は内部に200Lの水を貯水する密閉された貯水室33と、その中央部に貫通して設けられた燃焼室34により構成されている。燃焼室34は、入り口側の嵌合部35および出口側の排出部36の直径よりも中央部の直径が拡大された筒状に形成されている。燃焼室34の入り口側の嵌合部35には、燃焼筒10の排出口11が着脱自在に嵌合し、嵌合した状態で、燃焼筒10と合体して、全体で一体化した燃焼筒を形成する。
【0064】
測定容器31の嵌合部35の外側の対向した位置には、光電素子37と光源38が検知センサとして配置されている。この検知センサは、燃焼筒10の測定容器31への嵌合及び離脱状態が検知される。検知された信号は、後述する発熱量検出部39と排気ガス検出部51に入力される。
【0065】
また、測定容器31の上部には注入バルブV21を介して接続された注入管41と、圧力制御弁42が設けられている。圧力制御弁42は貯水室33の水が加熱されて蒸気を発生した際に作動し、貯水室33の内部の圧力を制御すると共に、連動するリミットスイッチ(不図示)が作動して発熱量検出部39に蒸気が発生した信号を印加する。測定容器31の下部には排水バルブV22を介して排水管43が接続されている。また、貯水室33の各部には温度センサ44が設けられている。なお、特に図示はしないが貯水室33には水位を測定する水位計が設置されている。
【0066】
燃焼室34の排出部36には分岐管45が接続されている。分岐管45の一方は第1流量調整バルブV23を介して主排気管46に接続されている。また、分岐管45の他方は第2流量調整バルブV24を介して戻し用分岐管53に接続されている。
【0067】
主排気管46は、また、管路の途中で燃焼・測定切替バルブV2を介して排気ガス測定部47に接続されている。主排気管46は、高温の排気流を排気ガス測定部47の上端部48に導き、ここから大気中に排気する。上端部48には排気ガス検出部51が設置されている。なお、排気ガス中に粒子状浮遊物質等が混在している場合は落下して、排気ガス測定部47の下端に設けられた集塵部49に収納される。
【0068】
戻し用分岐管53の一方は第3流量調整バルブV25を介してブロアーBに接続されている。また、他方は第4流量調整バルブV26を介して戻り排熱管32に接続されている。
【0069】
次に、上述の構成の発熱量および排気ガスの測定装置の動作について、燃焼生成系統の動作と測定系統の動作に分けて説明する。
【0070】
<燃焼系統の動作>
図4は、発熱量および排気ガスの測定装置の燃焼系統の動作を説明する概略構成図である。なお、図4において、図3と同一個所には同一符号を付して、その個々の説明を省略する。
【0071】
すなわち、燃焼系統の動作は、バーナー1が装着された燃焼筒10の排出口11が、燃焼系統20の回動排気管21の開口部24に挿入された状態で動作する。この場合、燃焼・測定切替バルブV2は開の状態になっている。
【0072】
まず、バーナー1の空気供給ノズルから空気が送り込まれた状態で、予熱用点火ノズルから供給されるプロパンガス等の予熱ガスに点火され、燃焼筒10内で燃焼し、燃焼筒10の内部を予熱する。この予熱により、燃焼筒10の内部が所定温度まで加熱されると、燃焼筒10に設けられている温度センサが所定温度を検知する。この検知結果により、燃料供給バルブV4が開かれると共に、燃料供給部4に接続された定量ポンプPが作動し、定量ずつの燃料がバーナー1に送り込まれる。同時に燃料噴射ノズル2が作動して送り込まれてきた燃料を旋回流として燃焼筒10の内部に送り込み燃焼筒10の内部で着火して火炎の旋回流を形成する。この着火により予熱ノズルは噴射を停止し、燃焼筒10の内部では燃料の燃焼により火炎の旋回流が形成されてガス化燃焼状態になる。
【0073】
例えば、エマルジョン燃料の場合は、高温の燃焼筒10の内部に噴霧されたとき、燃料液滴中の水は瞬時に沸騰して、燃料液滴を微粒化(ミクロ爆発)する。これによって高速で高効率の燃焼を実現し、COや煤の生成を抑制できる。
【0074】
しかも、燃焼筒10は中央部12の直径が拡大されているので、燃料噴射ノズル2から噴射された火炎の旋回流は、中央部12で拡大された火炎の旋回流を形成する。この火炎の旋回流は、直進流に比べて燃焼筒10の内部に長時間滞留して高効率に燃焼する。それにより、ほぼ完全燃焼の状態になる。
【0075】
燃焼の際の排気ガスは、燃焼筒10の排出口11が挿入されている回動排気管21の開口部24からその内部に導かれる。この排気ガスは、さらに、回動排気管21に連通している固定排気管23と燃焼・測定切替バルブV2を経由して主排気管46に導かれる。
【0076】
主排気管46では、各調整バルブV23〜V26がそれぞれ燃料に応じた開度に調整されると共にブロワーBが動作している。したがって、主排気管46に導かれた排気流の一部は図5で示す上方に向かい先端部48から外部に排気される。残りの排気流は下方に向かいブロワーBにより戻り排熱管32を経由してバーナー1に200℃程度の戻り排熱流として還流される。還流された戻り排熱流は、バーナー1に取り込まれると、バーナー1の取り込み口のガイド板に導かれて旋回流が形成される。したがって、この旋回流は、燃焼筒10の内部で燃料噴射ノズル2から噴射された燃料の火炎の旋回流と合流して、強力な火炎の旋回流を形成し、燃焼筒10の内部での燃料の滞留時間を長くしてより燃焼効率を高めている。
【0077】
<測定系統の動作>
図5は、発熱量および排気ガスの測定装置における測定系統の動作を説明する概略構成図である。なお、図5において、図3と同一個所には同一符号を付して、その個々の説明を省略する。
【0078】
上述の燃焼系統の動作により、燃焼筒10の温度センサが所定温度に燃焼筒10の内部が到達したと検知すると、燃焼筒10の内部ではガス化燃焼によるほぼ完全燃焼が行われている状態となる。
【0079】
この状態に対しての発熱量および排気ガスの測定をおこなうには、まず、この状態で、燃焼筒10の往復移動機構13であるピニオン13bを動作させてラック13aを移動させ、燃焼筒10の排出口11を回動排気管21の開口部24から離脱させる。離脱後に、モータMを回転させて巻き取りプーリ27を回転させ、ロープ26を巻き取って回動排気管21を、管継ぎ手22を支点として回動させ、燃焼筒10の排出口11との対向位置から上方に移動する。それにより、燃焼筒10が測定容器31に対して往復移動する際の妨げにならない位置に退避する。その際、燃焼・測定切替バルブV2は閉止する。
【0080】
次に、燃焼筒10の往復移動機構を動作させて、燃焼筒10を測定容器31に向かって移動させる。燃焼筒10の排気口を測定容器31の嵌合部35に嵌合させることにより、測定容器31の燃焼室34は、燃焼筒10の排気口が嵌合部35に嵌合された状態で、燃焼筒10と合体して一体になり、全体で一体の燃焼筒を形成する。
【0081】
この場合、測定容器31の燃焼室34は、中央部でその直径が拡大された構造であるので、燃焼室34でも火炎の旋回流が長時間滞留する。それにより、貯水室33の内部に満たされている水は沸騰するまで効率よく加熱される。加熱により貯水室33内の水が沸騰すると貯水室33の内部の圧力が高まり圧力制御弁42が上昇する。この上昇動作に連動してリミットスイッチ(不図示)が動作して発熱量検出部39のタイマ(不図示)を停止させる。
【0082】
したがって、貯水室33内の水200リットルの水を初期温度から沸騰温度(100℃)まで上昇させるために要した熱量(=燃焼による発熱量)を得るための時間を測定することができる。また、その結果から、燃料ごとの燃焼筒での燃焼による単位時間当たりの発熱量も算出することができる。
【0083】
加熱時間により水が得た熱量Qは、
Q(cal)=m(g)×T(℃)
m;加熱される水の質量、T;上昇温度
式で算出される。この熱量Qはすなわち、[水が得た熱量]=[燃焼筒での発熱量]である。
【0084】
この場合、燃焼筒10と貯水室33が予め一体に形成されている固定型のボイラの場合は、貯水室に貯水されている水は、燃焼筒の予熱の際の影響で加熱部に近いところが高温になる。そのため、貯水室に貯水されている水の初期状態は、温度勾配が生じていて温度が均一ではない。したがって、水の初期状態の温度を正確に特定しにくい。これに対して、本実施例の場合は、燃焼筒10の予熱は貯水室33と離間した位置でおこなわれる。そのため、燃焼筒10の予熱による影響を排除することができる。したがって、測定開始時の貯水室33の内部の水の温度は均一であり、それに対する沸騰温度との温度差を高精度に算出することが可能である。
【0085】
もちろん、異なる燃料についての発熱量の比較は、それぞれの燃料について、沸騰するまでの時間を測定することにより比較することができる。
【0086】
一方、排気ガスの測定は、主たる対象がNOx(窒素酸化物)濃度とSOx(イオウ酸化物)濃度である。測定は、燃焼筒10が測定容器31と一体になって燃焼している状態で、測定容器31の排出部36から排出されて主排気管46を上昇した排気ガスを対象に排気ガス検出部51で測定する。
【0087】
すなわち、排気ガス検出部51は、主排気管46の末端である先端部48の近傍にサンプリングプローブ52を配置し、サンプリングプローブ52の端部にNOxセンサ(不図示)とSOxセンサ(不図示)とを接続して、NOx濃度とSOx濃度とを計測している。
【0088】
サンプリングプローブ52は、主排気管46の排気ガス流に対して平行な方向に向くように直角に曲げられた中空バイプ型の吸引ノズルで、例えば硬質ガラス、石英、ステンレス鋼などの耐食性、耐熱性に優れた材料で作製されている。
【0089】
NOxセンサは、特に限定はされないが公知のものを用いる。例えば、化学発光式ガス分析計であっても、ジルコニア式のものであってもよい。
【0090】
また、SOxセンサも、公知の化学発光式ガス分析計を用いて計測することができる。
【0091】
例えば、測定ガス中の窒素酸化物を化学発光方式で測定するには、NOxを含んだ試料ガスとオゾン(O3)とを反応槽に導き、一酸化窒素(NO)とO3との反応により発生する発光を光電子増倍管で検出することにより測定する。
【0092】
また、試料ガス中のNOx濃度とSOx濃度とを同時に測定し、精度よく定量するためには、赤外線吸収法や紫外線吸収法を使用するか、あるいは、NOxとSOxとで測定原理の異なる検出器を用いて別個に検出することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
上述の動作により、燃焼中の燃料の発熱量の算出とNOx濃度とSOx濃度との測定を併せておこなうことができる。
【0094】
なお、本発明は上記の実施形態のそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…バーナー、2…燃料噴射ノズル、3…燃料供給管路、4…燃料供給部、5a、5b…管路、6…混合・攪拌機、7…温度計、8…プロペラ、10…燃焼筒、11…排出口、12…中央部、13…往復移動機構、13a…ラック、13b…ピニオン、20…燃焼生成排気系統、21…回動排気管、22…管継ぎ手、23…固定排気管、24…開口部、25…ロープ係止部、26…ロープ、27…巻き取りプーリ、30…測定系統、31…測定容器、32…戻り排熱管、33…貯水室、34…燃焼室、35…嵌合部、36…排出部、37…光電素子、38…光源、39…発熱量検出部、41…注入管、42…圧力制御弁、43…配水管、44…温度センサ、45…分岐管、46…主排気管、47…戻し用分岐管、48…先端部、51…排気ガス検出部、52…サンプリングプローブ、60…発熱量および排気ガスの測定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体化石燃料である燃料油と水に物理的処理が施された機能水とに消石灰と尿素とを加え、一体に乳化されて超微粒子状態に生成されたエマルジョン燃料。
【請求項2】
前記燃料油はC重油であり、また、前記機能水は7,500乃至8,500Gの遠心力が付与された加圧水であることを特徴とする請求項1記載のエマルジョン燃料。
【請求項3】
前記燃料油と前記機能水との混合比は、重量比で60%対40%であることを特徴とする請求項1記載のエマルジョン燃料。
【請求項4】
前記燃料油と前記機能水の構成粒子の平均粒径は1μm〜50μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載のエマルジョン燃料。
【請求項5】
7500G〜8500Gの加速度を付与した遠心分離機により水を分離して得られる機能水を生成する工程と、この機能水に液体化石燃料である燃料油とともに消石灰および尿素を加えて攪拌する工程と、を備えたことを特徴とするエマルジョン燃料の製造方法。
【請求項6】
前記燃料油と前記機能水との混合比は、重量比で60%対40%であることを特徴とする請求項5記載のエマルジョン燃料の製造方法。
【請求項7】
前記燃料油と前記機能水の構成粒子の平均粒径は1μm〜50μmの範囲であることを特徴とする請求項6記載のエマルジョン燃料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−77418(P2010−77418A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195915(P2009−195915)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(503465487)株式会社ブイエスディー (7)
【出願人】(507028941)株式会社フジミプラント (5)
【Fターム(参考)】