説明

エミッタを固定する装置および方法

本発明は、エミッタをハウジングに固定する装置であって、第一の方向(11、B)において摺動可能である第一の要素である操作要素(10)と、前記第一の方向(11、B)に対して傾斜している第二の方向である固定方向(21)において摺動可能である第二の要素である作動要素(20)とを含むことによって、前記第一と、第二の要素(10,20)が少なくとも1個のカム機構を介して相互に接続されているエミッタをハウジングに固定する装置に関する。更に、本装置は第二の方向(21)において摺動可能である第三の要素である固定要素(30)を含み、それによって前記第二と、第三の要素(20,30)が少なくとも1個の第四の要素である弾性要素(40)によって相互に接続されることによって前記第三の要素(30)が、前記エミッタ(1)に固定力を発生させる固定位置と前記固定力が解除される開放位置との間で前記第一の方向(11、B)における前記第一の要素(10)の移動に応答して動くようにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エミッタをハウジングに固定する装置と、エミッタをハウジングに固定する方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際特許第00/34958号は従来の概ね円形の電子ビームエミッタを開示している。エミッタは一般的に、出口窓を備えた閉鎖真空室と、該真空室内の電子供給源とを含む。前記特許の開示における電子供給源はフィラメントである。前記フィラメントを通して電流を導くことによって、該フィラメントは約2000℃まで加熱され、大量の電子を放出する。次いで、これらの電子は前記フィラメントと出口窓との間の電圧差によって真空中で該フィラメントから出口窓まで加速される。電子が出口窓を通して前記室を出る際の該電子のエネルギは例えばエミッタを通って動いているウエッブ上のコーティングを硬化させ、その面を殺菌するために使用することができる。
【0003】
しかしながら、所望する電子ビームを達成するために諸々の種類の技術を使用した諸々の種類のエミッタが多数存在している。例えば、米国特許第5,962,995号および同第5,637,953号を参照されたい。
【0004】
更に、米国特許第5,194,742号は、電子およびその他の粒子のビーム加速器を遮蔽する方法と装置とを開示している。開示された技術はウエッブがそこを通して案内されるトンネル状の遮蔽体と、該遮蔽体の壁に固定されたエミッタとに関わるものである。この技術の詳しい特徴は前記遮蔽体の一部がトンネルを通してウエッブを導きやすくするために、電子ビームおよびウエッブの進行方向の双方に対して横断方向に運動可能であることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的はハウジングにエミッタをしっかりと固定するための手段を提供することである。しっかりした固定を検討する上で重要な点は特に、機械の操作者あるいは保守技術員による扱いが安全で、かつ容易であり、固定力が制御可能であり、エミッタあるいはハウジングを損傷する危険性が低いことなどである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、本発明によれば、本明細書の序として記載した装置であって、第一の方向に摺動可能である第一の要素である操作要素と、第二の方向に摺動可能である第二の要素である作動要素とを含み、固定方向が前記第一の方向に対して傾斜していることによって前記第一の方向において前記第一の要素が移動すると前記第二の要素を前記第二の方向に移動させるように前記第一と第二の要素が少なくとも1個のカム機構を介して相互に接続されている装置によって達成された。このようなカム機構を使用することによって、固定方向に対して基本的に横断方向に一方の側あるいは他方の側からエミッタの固定が容易に操作することができる。カム機構を使用することによってエミッタを横断方向に挿入しうるように固定装置を設計し易くすることができる。側方からの挿入および操作性は機械の操作者に対してその設計を容易かつ安全にする。更に、カム機構によって第一の要素から第二の要素への運動および力の伝達に関する変換比(gear ratio)を設計に簡単な方法で提供することを可能とする。カム機構は前記要素のストロークの諸々の部分の間でこの変換比を容易に変更できる。この比は操作者から必要とされる力に影響するため固定装置の操作性を検討する場合の一要素である。
【0007】
本発明の好適実施例が特許請求の範囲の従属項に記載されている。
【0008】
本発明の好適実施例によると、本装置は更に第二の方向に摺動可能である第三の要素である固定要素を含むことによって、第二と第三の要素が前記第二の方向において弾性である少なくとも1個の第四要素である弾性要素を介して相互に接続され、それによって前記エミッタに固定力を発生させる固定位置と、固定力が解除される開放位置との間での前記第一の方向における前記第一の要素の移動に応答して前記第三の要素が運動するようにされている。弾性要素を用いて前記第二と第三の要素とを相互に接続することによって、第三の要素に対する第二の要素の移動に関連して固定力が制御されて増大する。前記要素間で直接的な接触のみを使用しているとすれば、力と移動との間の追従性が最も弱い要素の変形によって決まり、すなわち固定力はちょっとした変形においても即、過度に上昇する。弾性要素は弾圧されうるので、それによって力と移動との間の追従性を更に低める。正確な弾性要素を使用することによって、エミッタに加えられる力は、例えば本装置がたとえ間違って扱われることによって種々の要素の間の移動が比較的制御が悪くても、満足しうる確実性をもって予め決めることができる。カム機構を組み合わせること、および弾性要素を介して相互接続することによってエミッタを固定するのに特に適した設計とする。カム機構は、純粋にカムを所望する方法で形成することにより、運動を固定の初期段階では速く、その最後の最後の段階では遅くすることを可能とする。遅い運動、すなわち第一の要素のある運動に関連した第二の要素の小さい運動が、第二の要素を所望する位置において容易に停止させる。更に、運動のこの部分内で弾性要素を利用することによって、エミッタに対する固定力は第二の要素の最終調整とは概ね独立したものとすることが可能で、それによって正確な固定力を達成するのを極めて容易にする。このように、第一の要素をたとえ全体的な調整不良をしていたとしても許容限度内で固定力を提供する。
【0009】
本発明はまた、エミッタをハウジングに固定する装置であって、固定方向に摺動可能である固定要素と、固定方向に摺動可能である作動要素とを含むことによって、前記固定要素と作動要素とが前記固定方向に弾性である少なくとも1個の弾性要素を介して相互に接続され、前記固定要素が、前記エミッタに固定力を発生させる固定位置と、前記固定力が解除される開放位置との間での前記作動要素の移動に応答して運動するようにされているエミッタをハウジングに固定する装置に関する。弾性要素を用いて固定要素と作動要素とを相互に接続することによって、固定要素に相対する作動要素の移動に関連して制御された状態で力が増大する。もしも前記要素間の直接的な接触のみを使用するとすれば、力と移動との間の追従性は最も弱い要素の変形によって決まる、すなわち力は小さい変形においても即、過度に増大する。弾性要素は弾圧されうるので、これによって力と移動との間の相互追従性を更に低下させる。正当な弾性要素を使用することによって、例えば本装置の誤った扱いのために、たとえ諸々の要素間の移動が相対的に制御が劣悪であったとしてもエミッタに加えられた力は満足しうる確実性で決めることができる。
【0010】
好ましくは、本装置は前記固定方向に対して傾斜している操作方向において摺動しうる操作要素を更に含むことによって、前記操作方向に前記操作要素が移動すると前記固定方向に前記作動要素を移動させるように前記操作要素と作動要素とが少なくとも1個のカム機構を介して相互に接続されている。このようなカム機構を使用することによって、前記固定方向を基本的に横断する一方の側あるいは他方の側からエミッタの固定が容易に操作できる。カム機構を使用することによってまた、エミッタが横断方向に挿入しうるように固定装置を設計し易くしうる。側方からの挿入および操作性は機械の操作者に対して設計を容易かつ安全としうる。更に、カム機構は第一の要素から第二の要素への運動および力の伝達に関わる変換比を簡単な方法で提供することができるようにする。カム機構は前記要素のストロークの諸々の部分の間に前記変換比を容易に変更できるようにする。この変換比は機械操作者が必要とする力に影響を与えるので、固定装置の扱いやすさを検討する場合の一要素である。カム機構を組み合わせること、および弾性要素を介した相互接続によってエミッタの固定に対して本装置の設計を特に適したものとする。カム機構は、純粋にカムを所望の形で形成することにより、運動が固定の初期段階では速く、最後の最後の段階では遅くなるようにすることを可能とする。前述のように、操作縦要素のある運動に対する作動要素の遅い運動、すなわち小さい運動は所望位置で作動要素を止めやすくしうる。更に、運動のこの部分内で弾性要素を利用すると、エミッタに対する固定力は作動要素の最終調整とは概ね独立しうるので、それによって正確な固定力を達成するのを極めて容易にする。その結果、たとえ操作要素がかなり全体的に調整不良であっても許容囲内で固定力を提供する。
【0011】
本発明の好適実施例によると、カム機構は、第一の要素である操作要素と第二の要素である作動要素との一方においてカム面を形成する、プロフィルをつけた細長いくぼみを含み、前記第一と第二の要素との他方において前記くぼみ内で動くようにされているカムフォロワを含む。くぼみおよびフォロワとしてのカム機構を形成することによって、前記第二の要素の往復運動を達成し易くする。前記くぼみの一方の側は第一の運動方向におけるカム面を形成し、他方の側は他方の運動方向におけるカム面を形成する。
【0012】
好ましくは、カム機構は前記第一の要素である操作要素におけるカム面を形成するプロフィル付きの細長いくぼみと、前記第二の要素である作動要素における前記くぼみ内で動くようにされているフォロワとを含む。前記要素が摺動する方向とエミッタに作用する要素とを組み合わせて検討する場合、第一の要素は空間の欠如による詳しい検討しなくとも第一と第二の運動方向によって画成される平面において広がりを持ちうるので、第一の要素にくぼみを形成するのが都合がよい。更に、その結果、フォロワは単にピンなどとして形成すればよいので、空間の欠如による検討の必要がある第二の要素がフォロワを含むことが好ましい。
【0013】
好適実施例によると、カム面はフォロワを備えた要素が摺動可能である方向に対して端部分が垂直である。このようにカム面を形成することにより、第一の要素である操作要素の運動の最後の部分が第二の要素である作動要素を全く運動させない。すなわち、第一の要素の最終位置にかなり全体的な調整不良があったとしても第二の要素の位置に何ら差異をもたらすことなく、その結果運動のこの部分の間も固定力は何ら影響されない。
【0014】
第二の要素である作動要素の移動と固定力との間の正当な追従性を確保するために、弾性要素は、本装置が固定位置にあるとき、第二の要素である作動要素と第三の要素である固定要素との間の距離より短い最小の弾性長さを有している。前述した第二と第三の要素との間の関係距離は弾性要素が位置される距離、すなわち弾性要素が動く距離であることに注目すべきである。
【0015】
本装置は第二の要素である作動要素と第三の要素である固定要素との間に少なくとも2個の弾性要素を含むことが好ましい。2個以上の弾性要素を設けることによって、本装置は整合不良を更に良好に対処することができる。もしもエミッタ、ハウジングおよび(または)固定装置が相互に対して整合されるとすれば、弾性要素は前記整合不良を種々弾性要素の変形の差異として許容するが、変形と固定力との間に制御された追従性があるため固定力はエミッタの種々部分に対しても依然として制御されている。
【0016】
第一の要素である操作要素と第二の要素である作動要素とが少なくとも2個のカム機構を介して相互に接続されることが好ましい。このような形態によって第一の要素に対する第二の要素の整合不良の危険性を最小化し、これがエミッタの純粋の並進運動と正確な固定とを確保し易くする。
【0017】
前述の目的はまた、本発明によれば、エミッタをハウジングに固定する方法であって、エミッタにそれがハウジングに固定されるべき場所を提供する段階と、前記エミッタに固定力を発生させる固定位置と前記固定力が解除される開放位置との間で固定方向に摺動可能な固定要素を提供する段階と、前記固定方向に沿って摺動可能な作動要素を提供する段階と、前記固定要素と前記作動要素とを相互に接続する弾性要素であって、前記固定方向に沿って弾性である弾性要素を提供する段階と、前記作動要素を摺動させ、それによって前記エミッタがハウジングと当接するまで前記弾性要素と固定要素とを摺動させる段階と、前記作動要素を摺動させ、それによって前記弾性要素が前記固定要素を前記エミッタに対して押圧し、それによってエミッタがハウジングに対して押圧されるように前記弾性要素を圧縮させる段階とを含む方法によって達成される。
【0018】
固定要素と作動要素とを相互に接続する弾性要素を提供することによって、作動要素が摺動している間の力は固定要素に関連した作動要素の移動に対して制御された状態で増大する。前記要素間の直接的な接触のみを使用するとすれば、力と移動との間の追従性は最も弱い要素の変形によって決まる、すなわち力は小さい変形においても即過度に大きくなる。弾性要素は弾圧されうるので、それによって力と移動との間の追従性を更に低下させる。正確な弾性要素を使用することによって、エミッタに加えられる力は、たとえ種々の要素間の移動が、例えば本装置の誤った扱いのために比較的制御が劣悪であったとしても、満足しうる確実性で規定することができる。
【0019】
好適実施例によれば、作動要素は固定要素の固定位置に対応する端位置に到達するまで前記固定方向に沿って摺動することによって弾性要素のみが部分的に圧縮される。これによって作動要素の運動と達成された固定力との間の正確な追従性を確保し、そのため固定力は作動要素の移動の間過度に増大することはない。
【0020】
本発明を、本発明の現在好適な実施例を例示する添付の概略図を参照して以下詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
固定装置は一般的に、ときには操作要素とも称される第一の要素10と、ときには作動要素と称される第二の要素20と、ときには固定要素と称される第三の要素30と、ときには弾性要素と称される第四の要素40とを含む。
【0022】
固定装置は電子ビームエミッタ1をハウジング2に固定するようにされている。本実施例において開示されているハウジング2はウエッブが2個の対向するエミッタ1(1個のみを示している)の間を通りうるようにされている。ハウジングにはウエッブ入口開口2aとウエッブ出口開口2bとが設けられている。ハウジングにはまた、2個の対向する開口2c,2dも設けられており、そこを通してエミッタ1からの電子が、該エミッタ1の間でハウジング2を通過しているウエッブを殺菌するためにハウジング2へ入ることができる。
【0023】
以下の説明はハウジングにある開口の一つにエミッタを固定するようにされた固定装置に集中する。ハウジングにある他の開口に別のエミッタを固定するために類似の固定装置を採用することも考えられることは勿論である。この固定装置は真正の鏡面対称構造(ハウジングの中心平面に対して鏡面対称)か、あるいは鏡面対称の装置と、同一であるが移動させた装置との組み合わせとしうる。この種の設計変更は特に機能要件に対して製造上の有利さによって変る。
【0024】
エミッタ1には電子がそこを通してエミッタから出て行く電子ビーム出口窓1bが設けられている。エミッタ1には更にそれによってエミッタ1がハウジング2に固定されるフランジ1cが設けられている。フランジ1cは出口窓1bを囲み、また繊細な出口窓1bに対する保護手段としても作用する。図2から5までに示されているように、出口窓1bの前面はフランジ1cの前面に対してエミッタ1の本体に向かって若干引っ込んでいる。
【0025】
第一の要素10はハウジング2に装着されたガイドバー11に沿って第一の方向に摺動可能である。前記バー11は、ウエッブがエミッタ1を通過する際の該ウエッブの平面に対して平行の平面におけるエミッタ1を通過するときのウエッブの移動方向Aに対して全体的に横断方向に延在している。開示した設計においては、ハウジング2の内壁、ハウジング2における開口2c,2dおよびエミッタの窓1bは全て平行の平面を延在している。これらの平面はウエッブがエミッタ1を通過する際ウエッブに対して平行となるように選択される。図面に示すように、開示した設計ではエミッタ1の頂部に1個のガイドバー11を、エミッタ1の底部に1個のガイドバー11を含んでいる。各ガイドバー11に第一の要素10が摺動可能に配置されている。第一の実施例において、2個の第一の要素10が相互に対して平行に動くように相互に接続されており、それによってそれらは単一のモータあるいはクランクによって操作しうる。第二の実施例においては、2個の第一の要素10が個別に摺動可能とされ、それによって操作者は、例えば頂部の要素を固定する前に底部の要素を少なくとも部分的に締めることができる。
【0026】
図2に示すように、エミッタ1には繊細な出口窓1bを被覆するカバープレート3が設けられている。カバープレート3は、エミッタ1が位置決めされるが、まだハウジング2に固定されていない状態でフランジ1cを滑って離着脱しうる。
【0027】
第二の要素20が、固定方向とも称される第二の方向においてガイドバー21に沿って摺動することができる。この第二の方向は第一の方向に対して垂直である。それはエミッタの出口窓1bの平面に対しても垂直である。更に、種々平面の平行性についての前述の説明に関連して、前記第二の方向はまたハウジングにおける開口2c,2dに対しても垂直である。ガイドバー21もまたハウジング2に装着されている。更に、第一の要素10の場合と同様、エミッタ1の頂部において1個の第二の要素が、エミッタ1の底部において1個の第二の要素20が固定装置に設けられている。更に、2個の第一の要素の場合と同様、2個の第二の要素20も平行に運動するように相互に接続されるか、あるいは相互に対して独立して運動するようにしうる。もしも2個の第一の要素10が相互に接続されているとすれば、2個の第二の要素20はその結果、たとえそれらが相互に接続されていないとしても少なくとも概ね平行には運動する。
【0028】
第一の要素10と第二の要素20とは、前記第一の方向11における前記第一の要素10の運動が前記第二の方向21において前記第二の要素20を移動させるように2個のカム機構50を介して相互に接続されている。各カム機構50は第一の要素10における細長くてプロフィル付きのスロット51と、フォロワとしての前記第二の要素20におけるピン52とを含む。図1に示すように、第一と第二の要素10,20の各組み合わせは2個のカム機構50によって相互に接続されている。
【0029】
第一の要素10がガイドバー11に沿って図1において矢印Bで印をつけた方向に運動すると、第二の要素20のピン52がハウジング2に向かって押圧される。第二の要素20は第一の要素10と同じ方向には運動することができない。前記第一と第二の要素10,20間の相互運動の間ピン52は第一の要素10のくぼみ51内に留まるように強制される。くぼみ51は2個の相互に接続された要素10,20のガイドバー11,21によって画成される平面において傾斜している。端部51bが第一の要素10に沿った直線に沿って形成されており、すなわち前記第二の要素20のガイドバー21に対して垂直である線に沿って真っ直ぐとされている。
【0030】
前述のように、本装置は更に、第二の方向に摺動可能である第三の要素である固定要素30を含む。第三の要素30は第四の要素である弾性要素40を形成する少なくとも1個のばねを介して第二の要素20に接続されている。開示された設計においては、ばね40は第二と第三の要素、20,30間の距離が減少するにつれて弾力的に圧縮されうる従来のらせん形ばねである。
【0031】
図2に示すように、エミッタはそのフランジ1cがハウジングの開口2cの周りの縁部と固定装置の固定要素30との間に位置するように位置されるようにされている。次いで、カバープレート3が図3に示すように外される。
【0032】
その後、操作要素10がくぼみ51の長さの約半分に対応する短い距離だけ図1における矢印Bに沿って動かされる。この運動の間、エミッタ1は固定要素30によってフランジ1cに背後から加えられる力によってハウジング2に対して当接するまで摺動する。エミッタ1は全体的に平坦な底部を有し、ハウジングに装着されたキャリヤに装着のロールあるいはホイール上で転ぶ。これはハウジングに装着された何らかのガイドバーなどに対する摺動であってもよいことは勿論である。
【0033】
操作要素10が更に第一の方向Bに沿って動くと、作動要素20が図5に示すように更にハウジング2に対して動かされる。エミッタ1がハウジング2と当接するように摺動した後、第二の要素20がこのように更に動くことによってばね40が対応する距離だけ圧縮されるようにする。このように、エミッタ1のフランジ1cに固定要素30によって加えられる固定力はばね40の変形の距離に対応するばね40からの力によって決まる。
【0034】
図2から5までに示すように、エミッタ1にはまた、出口窓1bの周りを延在するシール1dが設けられている。前記シールは開示した設計においては出口窓1b全周でフランジ1cにおけるくぼみに着座した所謂O−リングである。このシール1dはハウジング2とエミッタ1のフランジ1cとの間の緊密な接続を確保する。
【0035】
本明細書で説明した実施例の修正であって、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に依然として含まれる多数の修正が存在することが考えられる。
【0036】
ばねは例えば、第三の要素を第二の距離からの最大距離であって、何ら力が加えられていない場合ばねの呼称長さよりも短い最大距離の範囲内に保持する停止機構などを使用した予備圧縮によって弾圧するようにしうる。このように、ばねは比較的弱いものでよく、すなわち低いばね係数を、従って力/圧縮の低い追従性を有しうるが、依然として高度の固定力を発生させることができる。すなわち、弾圧されたばねを使用することにより、固定力は第二の要素のストロークとは殆ど独立して所望のレベルにセットすることができる。また、異なるばね係数を有する2個以上の部分を有する、例えば最終の固定力よりも著しく低い初期固定力を発生させるばねを使用することも可能である。このことは例えば、異なるばね係数を有する2個の直列に接続したばねによって達成することが可能であり、そのため最も弱いばねが先ず初期固定力を提供し、ついでより強いばねがその後固定力を支配するように消勢する。このことはらせん形ばねを使用する段階が無くても何とか可能である。非弾圧ばねは、ばねが圧縮されるにつれて連続的に増大する固定力を自動的に発生させる。弾性ゴム部材などを採用しうることも当然である。ゴム部材は通常全ての方向において弾力があり、特に固定方向において弾力的である。
【0037】
カム機構は、例えば開示したようなピンの代わりにくぼみ内で転ぶローラを備えるように設計しうることにも注目すべきである。更に、ピンの面および(または)くぼみには、例えばテフロン(登録商標)などのようなプラスチック材料の表面コーティングあるいは層を付与するなどして低摩擦の当接面を設けうることも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】固定装置の斜視図である。
【図2】エミッタを位置させているがまだカバープレートをつけている状態での開放位置における固定装置を示す断面図である。
【図3】カバープレートをエミッタから外した状態の図2に示す位置での固定装置を示す断面図である。
【図4】エミッタがハウジングと当接している位置における固定装置を示す断面図である。
【図5】エミッタがハウジングに固定されている位置における固定装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 電子ビームエミッタ
1b 出口窓
1c フランジ
1d シール
2 ハウジング
2a 入口開口
2b 出口開口
10 第一の要素
11 ガイドバー
20 第二の要素
21 ガイドバー
30 第三の要素
40 第四の弾性要素(ばね)
50 カム機構
51 くぼみ(スロット)
51b 端部
52 ピン(フォロワ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングにエミッタを固定する装置であって、第一の方向(11、B)において摺動可能である第一の要素である操作要素(10)と、前記第一の方向(11、B)に対して傾斜している第二の方向である固定方向(21)において摺動可能である第二の要素である作動要素(20)とを含むことによって前記第一と第二の要素(10,20)とが、前記第一の要素(10)が前記第一の方向(11、B)において移動すると前記第二の要素(20)を前記第二の方向(21)において移動させるように少なくとも1個のカム機構(50)を介して相互に接続されていることを特徴とするハウジングにエミッタを固定する装置。
【請求項2】
第二の方向(21)に摺動可能である第三の要素である固定要素(30)を更に含み、それによって前記第二と第三の要素(20,30)が前記第二の方向(21)において弾性である少なくとも1個の第四の要素である弾性要素(40)を介して相互に接続されることによって、前記第三の要素(30)は前記エミッタ(1)に固定力を発生させる固定位置と前記固定力が解除される開放位置との間で前記第一の方向(11、B)における前記第一の要素(10)の移動に応答して動くようにされていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ハウジングにエミッタを固定する装置において、固定方向(21)において摺動可能である固定要素(30)と、前記固定方向(21)において摺動可能である作動要素(20)とを含み、それによって前記固定および作動要素(30,20)が前記固定方向(21)において弾性である少なくとも1個の弾性要素(40)を介して相互に接続されることによって、前記固定要素(30)は前記エミッタ(1)に固定力を発生させる固定位置と前記固定力が解除される開放位置との間での前記作動要素(20)の移動に応答して動くようにされていることを特徴とするハウジングにエミッタを固定する装置。
【請求項4】
前記固定方向(21)に対して傾斜している操作方向(11、B)において摺動可能である操作要素(10)を更に含むことによって、前記操作方向(11、B)における前記操作要素(10)の移動が前記固定方向(21)において前記作動要素(20)を移動させるように前記操作要素(10)と前記作動要素(20)とが少なくとも1個のカム機構(50)を介して相互に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記カム機構(50)が第一の要素である操作要素(10)および第二の要素である作動要素(20)の一方においてカム面を形成しているプロフィル付きの細長いくぼみ(51)と、前記第一および第二の要素(10,20)の他方におけるフォロワ(52)であって前記くぼみ(51)内で走行するようにされているフォロワ(52)とを含むことを特徴とする請求項1または4項に記載の装置。
【請求項6】
前記カム機構(50)が前記第一の要素である操作要素(10)においてカム面を形成しているプロフィル付きの細長いくぼみ(51)と前記第二の要素である作動要素(20)におけるフォロワ(52)とを含み、前記フォロワ(52)が前記くぼみ(51)内で走行するようにされていることを特徴とする請求項1または4項に記載の装置。
【請求項7】
前記カム面(51)が、前記フォロワ(52)を備えた前記要素(20)が摺動可能である方向に対して垂直である端部分(51b)を有していることを特徴とする請求項5または6項に記載の装置。
【請求項8】
本装置が固定位置にあるとき、前記弾性要素(40)が前記第二の要素である作動要素(20)と第三の要素である固定要素(30)との間の距離より短い最小弾性長さを有していることを特徴とする請求項2から4項までの1項以上に記載の装置。
【請求項9】
前記第二の要素である作動要素(20)と、前記第三の要素である固定要素(30)との間で少なくとも2個の弾性要素(40)を含むことを特徴とする請求項2から8項までの1項以上に記載の装置。
【請求項10】
前記第一の要素である操作要素(10)と前記第二の要素である作動要素(20)とが少なくとも2個のカム機構(50)を介して相互に接続されていることを特徴とする請求項1から9項までの1項以上に記載の装置。
【請求項11】
ハウジングにエミッタを固定する方法において、
前記エミッタ(1)がハウジング(2)に対して固定されるべき箇所に前記エミッタ(1)を提供する段階と、
前記エミッタ(1)に固定力を発生させる固定位置と前記固定力を解除する開放位置との間で固定方向(21)に摺動可能な固定要素(30)を提供する段階と、
前記固定方向(21)に沿って摺動可能な作動要素(20)を提供する段階と、
前記固定要素(30)と前記作動要素(20)とを相互接続する弾性要素(40)であって、前記固定方向(21)に沿って弾性である弾性要素(40)を提供する段階と、
前記作動要素(20)を摺動させることによって前記エミッタ(1)が前記ハウジング(2)と当接するまで前記弾性要素(40)と前記固定要素(30)とを摺動させる段階と、
前記作動要素(20)を摺動させることによって、前記弾性要素(30)が前記固定要素(30)を前記エミッタ(1)に対して押圧し、前記エミッタの方が前記ハウジング(2)に対して押圧されるように前記弾性要素(40)を圧縮させる段階とを含むことを特徴とするエミッタをハウジングに固定する方法。
【請求項12】
前記作動要素(20)が前記固定要素(30)の固定位置に対応する端位置に到達するまで前記固定方向(21)に沿って摺動し、前記弾性要素(40)はそれによって単に部分的に圧縮されることを特徴とする請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−528984(P2007−528984A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508579(P2006−508579)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000893
【国際公開番号】WO2004/111469
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(591007424)テトラ ラバル ホールデイングス エ フイナンス ソシエテ アノニム (190)