説明

エリシペロスリクス・ルシオパシエ抗原及びワクチン組成物

【課題】本発明は丹毒の予防又は抑制のための新規のワクチンの提供を目的とする。
【解決手段】本発明はエリシペロスリクス・ルシオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae) の抗原組成物及びかかる抗原組成物を含むワクチン製剤に関する。本発明の抗原は動物の丹毒に対する長期防御を供するうえで有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエリシペロスリクス・ルシオパシエ(丹毒:Erysipelas) 感染症の予防又は抑制のための抗原組成物及びワクチン製剤、並びにかかる抗原組成物及びワクチン製剤の作製及び利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
丹毒は世界中に分布し、そしてヨーロッパ、アジア、オーストラリア並びに北米及び南米全体にわたって経済的に重要な問題となっている。3ケ月〜3才のブタが最も丹毒にかかり易い。冒されたブタは往々にして膨潤且つ剛化した関節を有し、そして効率的に体重増加しない。更に、その屠殺体は往々にして加工工場で検査員により排除又は廃棄される。
【0003】
約10年前、完全に殺菌した培養物からE.ルシオパシエワクチンを作る慣習は必要でないことが示された。無菌濾液も同様にビルレント負荷に対してブタ及びマウスの双方を保護するのに機能する。日本及び米国科学者によるその後発表された研究はこの発見を確証し、そしてE.ルシオパシエが培養培地の中に、全てのE.ルシオパシエ株に対してブタを免疫する万能免疫原である抗原を遊離することを示した(Sawada and Takahashi, 1987, Am, J. Vet. Res. 48 : 239-242; Groschupら、1991, Epidemiol. Infect. 107 : 637-649) 。Groschupらは培養物中の64〜66kDa のタンパク質がマウスをビルレントE.ルシオパシエの負荷に対して保護することを示した。かかるタンパク質がブタをも保護することが示されたため、USDAはこのタンパク質のアッセイにおいて利用するためのこのタンパク質に対するモノクローナル抗体(mAb)をワクチンメーカーに提供している。
【0004】
ブタの丹毒を予防するのに有効なワクチンは非常に所望されるが、多くの伝統的な丹毒ワクチンのいずれも離乳したブタに対しては許容される保護を供しない。この問題は免疫力の持続の欠如にある。豚産業は、離乳時に与えたときにブタを屠殺令、即ち、生後約6ケ月までこの致命的な壊滅的病気に対して保護するワクチンを必要とする。USDAは新規のワクチンのライセンスについての基準としてこの要件を指定している。
【発明の開示】
【0005】
本発明はE.ルシオパシエの抗原組成物及びかかる抗原組成物の製法に関する。本発明は更にE.ルシオパシエの抗原組成物及びアジュバントを含むワクチン製剤に関する。本発明は更に動物、好ましくは哺乳類又は鳥類を種痘するために本発明の抗原組成物を利用する方法に関する。特に、本発明はブタ、子ヒツジ、イヌ、ウマ、ウシ又はヒトを本発明の抗原で種痘する方法に関する。
【0006】
一の態様において、E.ルシオパシエ培養物の流体画分由来の安定化抗原を述べる。一の観点において、安定化剤をE.ルシオパシエ培養物の上清液又は濾液、好ましくは濃縮上清液又は濾液に加える。安定化剤は抗原を吸着することができる。安定化剤の限定でない例は水酸化アルミニウムゲル、リン酸アルミニウムゲル、リン酸カルシウムゲル、水酸化亜鉛/水酸化カルシウムゲル及びみょうばんである。好適な観点において、水酸化アルミニウムゲルを濃縮上清液に、水酸化アルミニウムゲルの最終濃度が約10容量%(即ち、例えば9容量の上清液と1容量の水酸化アルミニウムゲルとを混合することにより得られる10容量%濃度)〜約40容量%、より好ましくは約30容量%となるように加える。
【0007】
別の観点において、当該濃縮E.ルシオパシエ培養上清液又は濾液及び安定化剤を含んで成る抗原製剤は、その抗原をワクチン製剤として利用するために処方するとき、約10倍〜約30倍、好ましくは約20倍希釈し、かくして当該ワクチン製剤中の安定化剤の濃度を約5容量%未満にまで下げる。
【0008】
別の態様において、E.ルシオパシエを培養し、そして処理してE.ルシオパシエ抗原を含んで成る上清液又は濾液を得る。一の観点において、E.ルシオパシエ培養物を例えばホルマリン又はベータープロピオラクトンの添加により不活性化させる。更なる観点において、E.ルシオパシエ培養液を例えば遠心分離により細菌から分離させる。別の更なる観点において、この上清液を例えば分子濾過により約10倍に濃縮する。
【0009】
本発明の別の態様において、保存剤、例えばメルチオレートを、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)と共に又はそれ抜きで当該抗原に加える。本発明の更なる態様において、本発明の抗原をアジュバント、例えばレシチン、油及び1又は複数種の界面活性剤を含んで成るアジュバントに加える。本発明の更なる態様において、本発明の抗原、及びワクチンを動物の種痘に利用する方法を述べる。
【0010】
本発明は丹毒を予防又は抑制する組成物及び方法に関する。一の態様において、本発明はE.ルシオパシエの抗原及びかかる抗原の製法に関する。本発明は更に本発明の抗原を含むワクチン製剤に関する。本発明は更に動物、好ましくは哺乳類又は鳥類を種痘するためにE.ルシオパシエの抗原を利用する方法に関する。最も好適な観点において、この哺乳類はブタ、子ヒツジ、イヌ、ウマ、ウシ又はヒトから成る群から選ばれる。
【0011】
本発明はE.ルシオパシエ培養物から得た抗原に関する。E.ルシオパシエの任意の株、例えば米国特許第5,625,038号に記載の株が本発明の抗原の起源でありうる。当該抗原の単離されうる培養物は様々な方法で提供されうる。例えば、この培養物は純粋又は実質的に純粋であってよい。より好ましくは、本発明の抗原はE.ルシオパシエ培養物の上清液又は濾液から得られる。最も好適な態様において、本発明の抗原はE.ルシオパシエの純粋又は実質的に純粋な液体培養物の上清液又は濾液から得られる。
【0012】
E.ルシオパシエは当業界公知の様々な方法で培養してよい。細菌の培養について論ずる米国特許第5,625,038;5,616,328;5,225,194;4,981,685号を参照のこと。例えば、E.ルシオパシエは後述の実施例に記載の通りに培養してよい。E.ルシオパシエは Sawada and Takahashi, 1987, Am, J. Vet. Res. 48 : 239-242及びGroschupら、1991, Epidemiol. Infect. 107 : 637-649に記載の通りに培養してもよい。原核細胞の培養及び処理についての一般的なバックグランドは引用することでその内容を本明細書に組入れるManiatis, ら、1982, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubel, ら1989, Current Protocols in Molecular Biology, Greene publishing Associates and Wiley Interscience, NY; Sambrook ら1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d. ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載されている。
【0013】
好適な態様において、この培養物はホルマリン(約0.5容量%の最終濃度)により不活性化する。別の好適な態様において、本発明の抗原はE.ルシオパシエ培養物の上清液又は濾液から得る。好適な態様において、培養上清液又は濾液を約10倍に濃縮し、そして水酸化アルミニウム(好ましくはREHYDRAGEL(商標))をこの濃縮上清液又は濾液に約30容量%の最終濃度となるように加え、この抗原を安定化する。別の好適な態様において、当該抗原及びアジュバントを含んで成るワクチン製剤を処方し、ここでこのアジュバントは例えばこのワクチン製剤の約25容量%を占める。別の好適な態様において、チメロサール(約0.01容量%の最終濃度)とEDTA(約0.07容量%の最終濃度)を保存剤としてこの抗原に添加する。本明細書で「No. 1アジュバント」と称する好適なアジュバントは約2容量%のレシチン、約18容量%の鉱物油及び約8容量%の界面活性剤(例えば約5.6容量%のTween 80と約2.4容量%のSpan 80)を含んで成り、残りの容量は食塩水溶液(例えばDulbecco PBS)で占められる。このアジュバントは引用することで本明細書に組入れる1999年1月29日出願の米国特許出願に記載されている。
【0014】
E.ルシオパシエの不活性化
本発明の抗原はE.ルシオパシエから得られ、それは当業界公知の手段で、例えば液体培養物で供与されうる。本発明の好適な態様において、抗原の単離されるE.ルシオパシエ培養物は不活性化せしめてからワクチン製剤の中に抗原として利用する。最も好適な態様において、E.ルシオパシエ培養物は不活性化せしめてから細菌より液体画分を分離する。E.ルシオパシエ培養物の不活性化は様々な目的のため、例えば殺菌のため、又はプロテアーゼの不活性化のため、又は抗原の保存のために実施する。
【0015】
本発明の抗原を含む培養物は当業界公知の様々な手段で不活性化させることができる。例えば、この培養物を不活性化剤、即ち、E.ルシオパシエを殺菌できる試薬に曝露してよい。本発明の実施において有用な不活性化剤は動物の免疫応答を誘導し、この動物を丹毒から保護することを可能にする。当業界に公知の不活性化剤、例えばホルマリン(ホルムアルデヒド)、ベータープロピオラクトン又はこれらの試薬と似た性質を有するその他の化学品を使用してよい。細菌の不活性化のために適当な化学品は、例えば細菌を特定の化学品と接触させ、その結果その細菌が殺菌され、且つその抗原が保護抗体を生産する能力について未だ有効であるかを例えばその処理細菌で種痘したマウスを介して決定することにより、当業者により決定できる。細菌の不活性化については米国特許第5,225,194号も参照のこと。
【0016】
E.ルシオパシエ培養流体の分離及び濃縮
好適な態様において、本発明の抗原はE.ルシオパシエ培養物の流体画分から得られる。E.ルシオパシエを培養し、そしてその細菌を例えば液体培養液の遠心分離又は濾過により培養液から分離させてよい。本発明の抗原の単離のために有用なE.ルシオパシエの培養物は当業界に公知の任意の方法で提供されうる。例えば、E.ルシオパシエを培養液又は培地の中で増殖させ、細菌を急速増殖、即ち対数増殖期にすることができうる。好適な態様において、本発明の抗原の調製のために利用する培養物は、その培養物の処理を開始する際、対数増殖期、より好ましくは後期対数増殖期にあるものとする。
【0017】
好適な態様において、E.ルシオパシエ培養物を処理して全ての又は実質的に全ての細菌をそれらが増殖した培養液又は培地から分離する。例えば、約90%の細菌、より好ましくは約95%の細菌、より好ましくは約98%の細菌をその培養液又は培地から除いてよい。E.ルシオパシエは培養液又は培地から当業界公知の任意の手段で分離させることができる。例えば、E.ルシオパシエを遠心分離にかけて細菌を培養液又は培地から分離させることができうる。E.ルシオパシエ菌を沈降させることのできる当業界公知の任意の遠心分離が細胞を培養液又は培地から分離するのに適当である。例えば、連続フロー遠心分離が利用されうる。細菌をどのようにして培養培地から除くかのバックグランドはManiatis, ら1982, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubel, ら1989, Current Protocols in Molecular Biology, Greene publishing Associates and Wiley Interscience, NY; Sambrook ら1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d. ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載されている。
【0018】
別の観点において、E.ルシオパシエは、細菌を保持するが、本発明の抗原は保持できないフィルターで培養液又は培地を濾過することにより除くことができうる。培養液又は培地中の抗原から細菌を分離するのに適当な数多くのフィルターが当業界において公知である。例えば、細菌を流体画分から分離するのに有用なフィルターは約0.1ミクロン〜約0.5ミクロン、より好ましくは約0.2ミクロンの平均孔直径を有する。
【0019】
上記のE.ルシオパシエの培養物から得られる流体画分は濃縮してよい。一の態様において、この流体画分は約3〜30倍、例えば約3倍、又は約6倍、又は約10倍、又は約15倍、又は約20倍、又は約30倍に濃縮してよい。この流体画分は当業界において公知の任意の手段で濃縮してよい。好適な態様において、この流体画分は中空ファイバー濾過を利用して濃縮してよい。一の観点において、中空ファイバー濾過は約5,000キロダルトン〜約50,000キロダルトン、より好ましくは約10,000キロダルトン〜約30,000キロダルトンの分子量カットオフ値で実施する。細菌培養物の流体画分の濃縮を論ずる米国特許第5,225,194号を更に参照のこと。
【0020】
この流体画分は凍結乾燥により濃縮してもよい。別の観点において、この流体画分は流体画分中のタンパク質及びポリペプチドの沈殿、しかる後のその沈殿物の再懸濁により濃縮してよい。タンパク質は当業界において公知の任意の方法、例えばポリエチレングリコール、エタノール又は硫酸アンモニウムによる沈殿を介して流体画分から沈殿しうる。沈殿の後、その沈渣をワクチン製剤の調製のために適当な任意の溶液、例えば食塩水溶液に再懸濁してよい。
【0021】
E.ルシオパシエ抗原の安定化
E.ルシオパシエ培養物の流体画分から得られる抗原は動物の丹毒を予防又は抑制するのに有効な免疫原である。しかしながら、細菌の除去の後のかかる抗原の安定性はかかる抗原をワクチン製剤に用いるときに深刻な問題となる。本発明はこの問題を解決し、そして一部、E.ルシオパシエ培養物の流体画分の抗原が安定化剤の添加により安定化されうることの発見に基づくものである。
【0022】
当業界において公知の任意の安定化剤が本発明の抗原の安定化に利用できうる。好適な態様において、安定化剤はE.ルシオパシエ培養流体画分の抗原を吸着することができる。適当な安定化剤はE.ルシオパシエ培養物の流体画分の抗原能力を維持せしめることができ、又は細菌の除去の後のその抗原能力の低下を遅らせることができる。かかる試薬の安定化効果は実験により決定できる。例えば、不活性化E.ルシオパシエ培養物の流体画分のサンプル2つを、一方は安定化剤としてのその用途を試験する化学品入りで、そして他方はそれ抜きで37℃で所定の期間、例えば約14〜約28日間インキュベーションしてよい。次いでこれらのサンプルを標準のマウス効能試験(9CFR 113.119(c))に従い、アジュバント、例えばNo. 1アジュバントを利用してマウスの種痘で試験する。未処理ワクチンの与えられたグループ又は種痘を施していないコントロール動物より、かかる化学品で処理されたワクチンの与えられたグループにおいて保護された動物の割合が高くなることは、化学処理ワクチン中の抗原が安定化されたことを示唆する。
【0023】
上記の実験は貯蔵のために通常利用されるよりも高い温度(37℃)での加速安定試験を例示する。通常、抗原製剤は低温、例えば約2℃〜約8℃で保存する。37℃で28日の安定は通常の低温保存でのより長い期間、即ち、数年の期間にわたる安定性を示唆する。一の態様において、この抗原は本発明に従い低温で約5年まで、より特別には低温で約3年まで安定である。別の態様において、この抗原は本発明に従って低温で少なくとも1年安定である。
【0024】
抗原を吸着することのできる当業界において公知の様々な抗原、例えば水酸化アルミニウムゲル、リン酸アルミニウムゲル、リン酸カルシウムゲル、水酸化亜鉛/水酸化カルシウムゲル及びみょうばん(例えばカリみょうばん)が安定化剤として有用である。好適な態様において、水酸化アルミニウムゲル、例えばREHYDRAGEL(商標)が安定化剤として使用される(金属ゲル及びその用途について論じる米国特許第5,616,328及び5,232,690号を参照のこと)。
【0025】
一の態様において、金属水酸化物ゲル、例えば水酸化アルミニウムゲル(例えばREHYDRAGEL)を抗原製剤の中に約10〜約40容量%、例えば約10容量%、又は約20容量%、又は約30容量%、又は約40容量%の最終濃度となるように加える。好適な態様において、この水酸化アルミニウムゲル(例えばREHYDRAGEL)を抗原製剤の中に約30容量%の最終濃度となるように加える。
【0026】
当該安定化剤を含む抗原製剤はワクチン製剤を処方するため、例えばアジュバント及び希釈剤、例えば食塩水を加え、抗原製剤及び安定化剤が希釈されるようにすることで、利用してよい。かかる希釈は動物における当該ワクチン製剤の所望されない副作用を回避又は実質的に回避するために有用でありうる。例えば、金属水酸化物ゲル、例えば水酸化アルミニウムゲル(例えばREHYDRAGEL)をワクチン製剤に加えることにより約5倍、又は約10倍、又は約15倍、又は約20倍、又は約25倍、又は約30倍に希釈する。好適な態様において、水酸化アルミニウムゲル(例えばREHYDRAGEL)を約30容量%の最終濃度で含む抗原製剤を、このワクチン製剤に添加することを介することにより約20倍希釈し、約1.5容量%の最終水酸化アルミニウムゲル濃度にする。
【0027】
E.ルシオパシエの抗原を含んで成るワクチン製剤
本発明の抗原は動物を免疫するためにワクチン製剤に使用できうる。一の態様において、このワクチン製剤は本発明の抗原及びアジュバントを含む。好適な態様において、本発明のワクチン製剤のために有用なアジュバントはレシチン、油及び界面活性剤を含んで成る。好適なアジュバントの配合されたワクチン製剤は約0.25〜12.5容量%、より好ましくは約0.5〜約5容量%、そして最も好ましくは約0.5〜1.25容量%のレシチン、約1〜23容量%、より好ましくは約3.5〜10容量%、そして最も好ましくは約4.5容量%の油、及び約1.5〜約6容量%、より好ましくは約1.5〜4容量%、そして最も好ましくは約2容量%の両親媒性界面活性剤を含む。好ましくは、このアジュバントは2種類の両親媒性界面活性剤、例えばTween及びSpan系界面活性剤を有し、その一方は当該ワクチン製剤の水性相に主として存在し(例えばTween 80)、そして他方は油相に存在する(例えばSpan 80)。好ましくは、Tween 80及びSpan 80を界面活性剤として用いるとき、Tween 80の濃度はSpan 80の濃度の約1.5〜約3倍、好ましくは約2倍とする。好適なアジュバントは水性担体溶液、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)(例えばDulbecco PBS)を含む。ワクチン製剤のためのアジュバントに適当なレシチン及び油はDRAKEOL(商標)5Lt鉱油中のレシチンの混合物である。レシチンはGentral Soya, Fort Wayne, Indiana から入手できうる。Tween及びSpan系界面活性剤はVan Waters and Rogers, Omaha, Nebraskaから入手できうる。
【0028】
別の態様において、当業界において公知のアジュバント、例えば、アジュバントについて論じている米国特許第5,846,527;5,417,971;5,232,690号に記載の油エマルション、水酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド、水酸化亜鉛カルシウム、アブリジン、水酸化アルミニウム、油及びサポニンを本発明のワクチン製剤に利用してよい。
【0029】
好適なワクチン製剤はそのアジュバント組成物の容量を約10〜50容量%、より好ましくは約15〜35容量%、より好ましくは約20〜30容量%、そして最も好ましくは約25容量%にすることで処方する。
【0030】
ワクチン製剤はそのまま、又は医薬もしくは治療製剤の形態で被検体に投与してよい。当該抗原を含んで成る医薬製剤は、慣用の混合、溶解、粉砕、糖衣化、磨砕、乳化、封入、封鎖又は凍結乾燥工程により製造できうる。医薬製剤は、医薬的に利用できる製剤へと本発明の抗原を加工するのを助長する1又は複数の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又は助剤を利用して慣用の手段で配合されうる。
【0031】
全身用製剤には、注射、例えば皮下、皮内、筋肉内又は腹腔内注射による投与のためにデザインされたものが挙げられる。
【0032】
注射のため、当該抗原は水性溶液、好ましくは生理学的に適合するバッファー、例えばハンク溶液、リンゲル溶液、リン酸緩衝食塩水、又は任意のその他の生理食塩水の中に配合してよい。この溶液は処方剤、例えば懸濁、安定化及び/又は分散剤を含みうる。他方、このタンパク質は適当なビヒクル、例えば無菌パイロジェンフリー水で使用前に構築するための粉末形態であってよい。
【0033】
上記の製剤に加えて、当該抗原はデポット製剤として処方してもよい。かかる長期作用性製剤は移植(例えば皮下式又は筋肉内式)、又は筋肉内注射により投与してよい。かくして、例えば、当該抗原を適当なポリマー又は親水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂に配合するか、又は微溶性誘導体、例えば微溶性塩として処方してよい。
【0034】
他方、その他の医薬デリバリーシステムを採用できうる。リポソーム及びエマルションは抗原を搬送するのに利用されうるデリバリービヒクルの周知の例である。一定の有機溶媒、例えばジメチルスルホキシドを利用してよいが、通常多大な毒性が伴ってしまう。他に、この抗原は持放システム、例えば治療又は種痘用試薬を含む固体ポリマーの半透過性マトリックスを利用して導入されうる。様々な持放材料が確立されており、そして当業者に周知である。持放式カプセルはその化学的性質に依存して、抗原を数週間から100日以上にわたり放出しうる。試薬の化学的性質及び生物学的安定性に依存して、抗原の安定化のための更なる戦略が採用できうる。
【0035】
投与のための抗原の有効な量の決定は、特に本明細書の開示を参照することで当業者の通常の能力により行われる。
【0036】
有効用量はまずin vitroアッセイで概算できる。例えば、当業界周知の技術を利用し、動物モデルで剤型を処方し、免疫応答の誘導を達成することができる。当業者は本明細書に記載の結果に基づき全ての動物種に対する投与を容易に最適化できる。例えば、ワクチンとして用いるなら、本発明の抗原は約2〜36週間にわたって約1〜約3回投与されうる。ブースター投与をその後定期的に付与してよい。その他のプロトコールが個々の動物に適しうる。適当な用量とは、上記の通りに投与したとき、動物をE.ルシオパシエ感染から少なくとも4〜12ケ月保護するのに十分な免疫応答を免疫動物において生起できる抗原の量とする。
【0037】
剤型中の抗原の量は不活性化時の培養物の光学密度(E625 )で、不透明度単位として特定する。不活性化時に光学密度が4.0なら、例えばこの培養物から調製した1mlの培養上清液又は濾液は4不透明度単位を含み、0.5mlでは2不透明度単位を含む、等々であり、それは不透明性の起源である細菌が除かれようと関係ない。もし、例えば1ml当り5不透明度単位を含む上清液流体を分子濾過により12倍濃縮すると、その濃縮流体は1ml当り60不透明度単位の値を有するであろう。一般に、ワクチン剤型中の抗原の量は約1〜約12不透明度単位、好ましくは約2〜約4不透明度単位の範囲でありうる。適当な剤型容量は注射のルート及び宿主の大きさにより変わり、典型的には0.1〜約5mlである。好ましくは、宿主がブタのとき、ブタは生後2週間以上のものとする。
【実施例】
【0038】
以下に紹介する種痘研究は、No. 1アジュバントを有する本明細書に記載のワクチンを子ブタに2回投与養生法で生後約3〜6週のブタに与えると、2回目の種痘の20週間後にビルレント負荷に対する有意な保護が供されることが実証された。No. 1アジュバントを伴う抗原も、血清ELISAにより示される通り、種痘の2週間後に実質的な抗体応答も誘導するが、負荷時では、これらの力価は減少しており、従って個体の力価は保護とは密に相関していなかった。サポニンアジュバント中の同じように投与した同抗原は低めのELISA力価を誘導し、そして2回目の種痘の20週後においてブタをビルレント負荷から保護するには不適当であることが証明された。
【0039】
当該負荷モデルは10匹のコントロールブタが負荷の後に丹毒の臨床的徴候を示したという点で極めて有効であった(表2)。3匹のブタが高温基準を満たし、そして他の5匹はE.ルシオパシエ株陽性であった。残りの2匹のコントロールブタは上記の基準のいずれも満たさなかった。しかしながら、それらは数日間元気がなく、そしてこの病気の特徴である転移性の皮膚損傷を有しており、従って人道的に殺した。対照的に、No. 1アジュバントを含むワクチンで種痘したグループでは、20匹のブタのうち15匹が完全に保護されていた(表3)。
【0040】
No. 1アジュバントを伴う本発明のE.ルシオパシエ抗原を含む実験用ワクチンは、2回投与養生法で生後約3〜6週の子ブタに与えると、2回目の種痘の20週間後のビルレント負荷による臨床的丹毒の発症に対して有意な保護を供した。後述の表3を参照のこと。更に、サポニンアジュバントを伴う類似の実験用ワクチンは、同じ養生法に従って子ブタに与えたとき、2回目の種痘の20週間後でのビルレント負荷による臨床的丹毒の発症に対する保護を供しなかった。最後に、本発明の抗原を含む種痘は、使用するアジュバントに関係なく、2回目の種痘の2週間後にピークとなる実体的な血清応答を誘導した。
【0041】
本発明を下記の限定でない実施例により更に説明する。
【0042】
実施例1.E.ルシオパシエ培養物
E.ルシオパシエ株CN 3342を脱イオン水中の2.75%の濃度の Difco Proteose Peptone, Difco Yeast Extract (0.55%), Tween 80 (0.2%), K2HPO4 (0.217%) 及び KH2PO4 (0.061%) を含む培地の中で培養する。この培地のpHを5NのNaOHで7.2に調整する。この培地を最低122℃で30〜90分スチーム滅菌する。オートクレーブ処理の後、無菌50%デキストロース溶液を3%w/wの最終濃度となるように加える。
【0043】
有効な種(working seed)培養物は冷凍保存物(マイナス70℃)からマスター種標本の冷凍試験管を取り出し、急速融解し、そしてその内容物を培地フラスコに無菌的に移すことにより調製する。このフラスコを37℃で12〜36時間振盪しながらインキュベーションし、そしてグラム染色により純度を検定する。純粋であると認められたら、その培養物を無菌グリセリン(10%)と混合し、1mlの量づつで冷凍試験管に分注し、そして冷凍保存する。
【0044】
生産培地(production medium)を含む種容器に0.01〜2%のマスター又は有効種を接種する。10〜100リットルの生産培地を含む種発酵槽を用いる場合、種フラスコ由来の1〜5%の培養物で接種を行う。200〜10,000リットルの生産培地を含む生産発酵槽では種発酵槽由来の0.5〜5%培養物を接種する。
【0045】
生産培養物は37±2℃の設定値で撹拌しながらインキュベーションする。インキュベーション時間は4〜24時間で変えてよい。そのインキュベーション時間の間この培養物に10Nの無菌水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを7.2±0.1 に維持する。増殖期の間、デキストロースの定期的な添加を行う。
【0046】
回収の前に、この培養物を純度、形態及びグラム反応について顕微鏡観察する。増殖は培養物の625nmでの光学密度の測定により追跡する。培養物は625nmで4.0以上の光学密度を有するときに回収する。
【0047】
実施例2.E.ルシオパシエワクチンの調製
ホルマリン溶液を0.5%(v/v)の最終濃度となるように培養物に添加し、この培養物を不活性化させた。この培養物を無菌タンクに移し、そして37±2℃のインキュベーターに最低24時間(そして最大60時間)定常撹拌下に置いた。培養物は直ちに処理するのではなく、2〜8℃で7日まで保存した。不活性化培養物を連続フロー遠心分離を介して浄化した。その流体画分を更なる処理のために保持し、そして細菌を捨てた。
【0048】
実験において、10×の濃縮を、0.1容量%の最終濃度のベータープロピオラクトン(「BPL」)又は0.2容量%の最終濃度のホルマリンのいずれかで不活性化した(37℃で24時間以上)E.ルシオパシエ培養物の濾液で行った。E.ルシオパシエの培養濾液中に認められる64〜66kDのタンパク質 (Groschupら、1991, Epidemiol. Infect. 107 : 637-649及び米国特許第5,625,038号)に特異的な酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を実施して、64〜66kDa タンパク質の存在に基づき不活性化及び安定化の効果を決定した。培養物のホルマリン不活性化がタンパク質のELISAアッセイ値を低下させるという先の発見と一致して、BPL濃縮物はホルマリン濃縮物の約4倍のアッセイ値を有した。37℃で14日間インキュベーションした後、BPL濃縮物はホルマリン濃縮物についての約40%と比べ、その値の約80%を失った。しかしながら、双方の場合において、安定化剤としての30容量%のREHYDRAGELの事前添加は、以降に示す通り、損失をほとんど防ぎ、そして事実上ホルマリン製剤の場合その全てを保持せしめた。ブタでの小試験は、ホルマリン不活性化培養物の流体画分がBPLで不活性化した培養物のそれより、ビルレントE.ルシオパシエによる負荷に対するブタの保護において有効であることを示した。
【0049】
当該流体を遠心分離後の中空ファイバー濾過(見かけ上×10,000キロダルトンの分子量カットオフ値)により6×〜20×(通常は約10×)に濃縮した。この流体を濃縮の後に水酸化アルミニウムゲルを添加することにより安定にした。
【0050】
免疫原を安定化するため、水酸化アルミニウムゲルを撹拌しながら濃縮流体に最終的に30容量%(30容量のゲル、対、70容量の濃縮物)となるようにゆっくりと加えた。ワクチン中でのこの濃縮物の20倍希釈の後、Alゲル含有量はわずか約1.5%にすぎず、注射部位に陰性反応を及ぼすには足りなかった。10倍濃縮したE.ルシオパシエ培養流体画分中の全ての保護タンパク質を吸着させるのに必要なAlゲルの量を決定する滴定は、95%超が32容量%のREHYDRAGEL(Reheis, Berkley Heights, New Jersey)に吸着されることを示した。チメロサール(即ち、MERTHIOLATE(商標))(Dimportex, Spain; Flavine Inc., Klosters, New Jerseyを介して輸入) を保存剤としてこの製品に、約0.01容量%の最終濃度となるように加えた。チメロサールの濃度は当該抗原組成物及び本発明の抗原を含むワクチン製剤中で約0.01w/vに保った。EDTA(Sigma, St. Louis, Missouri) を約0.07%(w/v)の最終濃度となるように加えた。
【0051】
使用するアジュバントはNo. 1アジュバントとした。1000mlのNo. 1アジュバントを200mlのフィルター除菌レシチン−油溶液(DRAKEOL(商標)鉱油中の10%のレシチン)、オートクレーブ処理Tween 80(56ml)及びSpan 80(24ml)、並びにリン酸緩衝食塩水(Dulbecco PBS)(720ml)から作った。このレシチン−油溶液及びSpan 80を合わせ、そして無菌タンクの中で室温で少なくとも1時間、乳化が完了するまで混合した。食塩水及びTween 80を合わせ、そして無菌タンクの中で室温で少なくとも1時間混合した。油混合物をRoss乳化機を利用して水性混合物と乳化させた。乳化は全てのアジュバントが食塩水の中に添加されるまで再循環により続いた。このエマルションをGoulinプレスに室温で2回かけた。このアジュバントを2〜8℃で保存した。
【0052】
5Lのワクチンを、1Lのアジュバントを3Lの水性相に加えることにより作った。この水性相は、2ml用量のワクチン当り3.2不透明度単位の最終抗原含有量にするのに十分な安定化濃縮物と、その容量を5Lにするのに十分な食塩水とを含んで成る。不透明度単位は回収時の光学密度(E625 )×濃縮係数と定義する。
【0053】
実施例3.ブタのE.ルシオパシエ種痘及び負荷
E.ルシオパシエ株CN 3342の8番目の継代培養物(MS+8)をワクチンの製造に用いた。不活性化時での培養物の光学密度(OD)から計算して、1用量レベルの安定化、浄化E.ルシオパシエ抗原(3.2不透明度単位〔OU〕)を利用した。1OUは1OD (625nmで決定) を有する1mlの流体に相当する。No. 1アジュバント又はサポニン(0.05w/v;Berghansen Chemical Company, Cincinnati, Ohio から入手)をアジュバントとして用いた。詳しくは、E.ルシオパシエ株CN 3342の培養物を5.28のODになるまで増殖させた。この培養物を0.5%のホルマリンで24時間不活性化させた。不活性化の後、この細菌を遠心分離により除去した。その流体画分を10,000kDa の見かけ上分子量カットオフ値を有する限外濾過ユニットを利用して濃縮した。その流体画分を約13.4倍濃縮した。その抗原を、この濃縮材料にREHYDRAGEL(30容量%)を加えることにより安定化させた。吸着した濃縮物をワクチン配合まで4℃で保存した。ワクチンはアジュバントとしてNo. 1アジュバント又は0.05%のサポニンで処方した。安定化抗原を食塩水(150mMの塩化ナトリウム及び4mMのリン酸塩) に希釈し、最終濃度とした。エチレンジアミン四酢酸(EDTA、0.07%)及びチロメサール(0.01%)を最終ワクチン製剤に加えた。リン酸緩衝食塩水を偽薬として利用した。表1は処理グループ、ワクチン処理、並びに種痘及び負荷を施した子ブタの数をまとめる。
【0054】
【表1】

満足たる負荷が高い体温(少なくとも2日連続での40.9℃(105.6°F)以上)、死体解剖時での培養物、及び/又はE.ルシオパシエによる感染症の特徴的な臨床徴候により、コントロール動物において明示された。この病気の特徴と考えられる臨床徴候には突然死、元気のなさ、腹部及び耳の充血、転移性皮膚損傷、及び剛性又は関節巻き込み(joint involvement)が挙げられる。臨床的徴候は有するが、体温基準に満たないブタは殺し、そして血液、脾臓及び肝臓を培養してE.ルシオパシエの単離を試みた。
【0055】
Fisherの抽出試験を、種々のワクチンで保護される動物のパーセンテージに差があるかを調べるために利用した(p<0.05)。色々の投与グループをコントロールと比較するため、及び各々のグループを他の全ての投与グループの平均値と比較するため、事前対比を構築した。付与するワクチンのタイプ及び子ブタの各グループの血清学的応答との関係をロジスチック回帰を利用して、生後2ケ月、3ケ月、4ケ月、5ケ月のブタ、並びに負荷前(prechallenge)血液について行った。負荷時期でのワクチン誘導力価と疾患状態(保護/非保護)との関係をロジスチック回帰を利用して評価した。5%の有意差レベルを真の関係の宣言のために用いた。
【0056】
E.ルシオパシエに対して低い(#800)ELISA血清力価を有する20匹の妊娠雌ブタ/若い雌ブタをRiddell Farms, Albert City, IAから獲得し、そしてUniversity of Nebraska Department of Veterinary and Biological Sciences の隔離室の中で飼育した。
【0057】
ELISA血清力価は下記の通りにして完全細胞直接抗原結合ELISAで決定した。抗原コートプレートの調製及びかかるプレートを利用するELISAの記載した米国特許第4,918,163号を参照のこと。第一に、E.ルシオパシエを実施例1に記載の通りに増殖させ、そして対数増殖期培養物から回収した。640nmでの光学密度を記録し、そして種々の光学密度を有する溶液から細菌のカウント数を介して樹立した表を利用して細胞数/mlに換算した。生きた細菌をPBS(Dulbecco PBS, Sigma, St. Louis, Missouri) に約1.1×109 細胞/mlの密度にまで希釈した。このPBSに希釈した生きた細菌をELISA用のプレートに結合させた。プレートの準備のため、PBS中の100μlの0.1容量%のグルタルアルデヒド(Sigma, St. Louis, Missouri) を各ウェルに加え、これらのウェルにカバーをし、そしてそのプレートを37℃で1時間インキュベーションした。PBS中のグルタルアルデヒドを各ウェルから取り出し、そしてそれらのウェルを吸収タオルで乾かした。PBS中の約1.1×109 細胞/mlの密度の生きた細菌100μlを各ウェルに加えた。これらのプレートを2000pmで5分、22℃で遠心分離した。次いで200μlのPBS(PVA/PBS)中の1%のポリビニルアルコール(Aldrich, Milwaukee, Wisconsin)を各ウェルに加え、これらのウェルにカバーをし、そしてこれらのプレートを4℃で一夜放置した。プレートのウェルの内容物を殺菌溶液に移し、そしてウェルをPBSで洗浄した。これらのウェルをガーゼでカバーし、そして室温で乾かした(約1時間)。
【0058】
ELISA手順を下記の通りにして結合細菌完全細胞病原を有するプレートを利用して実施した。第一に、陽性コントロールを含むブタ血清を1%のPVA/PBSに希釈した。未知の血清全てを1:50に希釈し、そして陽性コントロールを1:200で利用した。200μlづつの各サンプルをA列の行のウェルに加えた。100μlの1%のPVA/PBSを残りのウェルに加えた。各サンプルに基づく2倍系列希釈を列B〜Hにかけて行った。ウェルにカバーをし、そして37℃で1時間インキュベーションした。次いで、ウェルをPBSTで3回洗浄した。1%のPVA/PBS中に調製した100μlの1:2000の希釈率のヤギ抗ブタIgG(HとL)ペルオキシダーゼコンジュゲート(Kirkegaard and Perry, Gaitherburg, Maryland)を各ウェルに加えた。これらのウェルに再びカバーをし、そして37℃で1時間インキュベーションした。これらのウェルをPBSTで3回洗浄した。100μlのABTS基質(Kirkegaard and Perry, Gaitherburg, Maryland より入手した2,2′−アジノ−ジ−(3−エチルベンズチアゾリンスルホン酸))を各ウェルに加え、そしてこれらのプレートを室温で10分インキュベーションした。これらのプレートをマイクロプレートシェーカー上で10秒振盪し、次いでプレートリーダーブラックを利用して405〜490nmにて各ウェルの吸収を測定した。各未知の血清の終点力価は、その吸収が1:3200の希釈率の陽性コントロールの吸収より大きい血清希釈率とした。
【0059】
雌ブタを分娩の0〜10日前に採血して、そのE.ルシオパシエ抗体力価を決定した。子ブタを雌ブタの血清力価及び分娩日を基準にランダムに分けた。これらの雌ブタ/若い雌ブタ由来の58匹の子ブタから採血し、そして2種類の実験用E.ルシオパシエワクチンのいずれか一方又は偽薬で生後約3週間目に種痘を施した(表1に記載のグループ)。生後約4週で子ブタは離乳した。生後約6週で子ブタから採血し、そして同じワクチンで再種痘した。生後約2,3,4及び5ケ月で全てのブタから採血した。生後約5.5ケ月目に、やせたブタ全てを研究から外した。生後約6ケ月で(2回目の種痘の20週間後)、ブタから採血し、そして40匹のブタにNational Veterinary Services Laboratory より投与された培養物から増殖させたE.ルシオパシエのビルレント培養物2ml(237マウスLD50、1.74×109 コロニー形成単位/ml)で筋肉内負荷を施した。動物を負荷の2日前、負荷の日、及び負荷の7日後に臨床疾患の徴候及び直腸温度について追跡した。高温直腸温度の基準(40.9℃)を満たす任意のコントロール動物を研究から外し、そして注射ペニシリンで処置した。病気の臨床徴候を有するが、高温直腸温度基準を満たさない任意のコントロール動物を人道的に殺し、死体解剖にかけ、そして全血、脾臓及び肝臓のサンプルをE.ルシオパシエについて培養した。任意の死亡したコントロール動物を死体解剖にかけ、そして脾臓及び肝臓をE.ルシオパシエについて培養した。高温直腸温度の基準(40.9℃)及び/又は病気の臨床徴候を満たす任意の種痘を施した動物を研究から外し、そして注射ペニシリンで処置した。負荷の後に死亡した任意の種痘を施した動物を死体解剖にかけ、そして脾臓及び肝臓のサンプルをE.ルシオパシエについて培養した。E.ルシオパシエに対する抗体力価を上記のELISAにより決定し、そして抗体力価と臨床保護との相関を行った。
【0060】
ELISA力価は雌ブタから得た単一の血液サンプル由来の血清及び子ブタからの7回の採血時期由来の血液サンプル全てについて決定した。好気性細菌培養(48時間、37℃、血液アガー)を死亡した又は致死注射により殺したブタから得た血液並びに/又は脾臓及び肝臓のサンプルに対して実施した。
【0061】
結果
コントロールブタのE.ルシオパシエ負荷の結果を表2にまとめる。10匹のブタ全てが丹毒について陽性であった。
【0062】
【表2】

【0063】
No. 1アジュバントを伴うワクチン(T02)を付与したブタのE.ルシオパシエ負荷のブタの結果を表3にまとめる。20匹のブタのうち15匹(75%)が完全に保護された。
【0064】
【表3】

【0065】
サポニンアジュバントを伴うワクチン(T03)を付与したブタのE.ルシオパシエ負荷の結果を表4にまとめる。一匹のブタしか保護されなかった。
【表4】

【0066】
子ブタグループの幾何学的平均ELISA力価(「GMT」)を表5に示す。
【0067】
【表5】

【0068】
子ブタは1回目の種痘時では非常に低いE.ルシオパシエに特異的な抗体力価を有した。これらの力価は50〜200未満の範囲にあった。コントロールの子ブタでは、GMTは研究の間若干上昇し、ELISAが老齢のブタにあまり特異的でないことを示唆した。
【0069】
アジュバントとしてNo. 1アジュバント又はサポニンのいずれかを伴うワクチンは2回目の種痘の2週間後(生後約2ケ月)にピークとなる統計学的に有意な(p=0.0001)血清応答を誘導した。双方のグループの力価は経時的に降下し続け(生後約5ケ月まで)、No. 1アジュバント中の抗原を受容した子ブタのGMTは全時点においてサポニンアジュバント中の抗原を受容した子ブタのGMTより明らかに高かった。負荷時において、No. 1アジュバント中の抗原を受容したブタのGMTはコントロールのGMTの2倍より若干高く、一方サポニンアジュバント中の抗原を受容したブタのGMTはコントロールの2倍より若干低かった。負荷後の臨床疾患からの保護は個々のELISA力価と相関しなかった(p>0.05)。しかしながら、興味深い観察はNo. 1アジュバント中の抗原を付与したブタにおける2回目の種痘の2週間後に観察されたピーク力価にあった。No. 1アジュバント中の抗原で種痘を施した20匹の子ブタのうち、8匹が2800以上のピーク力価を有し(8/8が負荷から保護)、8匹が6400のピーク力価を有し(6/8が負荷から保護)、そして4匹が3200のピークを有し(1/4が負荷から保護)、6400以上の力価が長期保護の指標であることを示唆した。
【0070】
まとめると、10匹の無種痘コントロールが感染した。No. 1アジュバントを有するワクチンを与えたブタのグループでは、20匹のうち15匹が保護された。アジュバントとしてのサポニンを有するワクチンを与えたブタのグループでは、10匹のうち1匹しか保護されなかった。
【0071】
実施例4.Alゲルによる抗原の安定化
前述の通りAlゲルによる抗原の処理を含んで、ワクチンを実施例1〜3に記載の通りに調製した。ワクチンをブタで効能について試験した。ブタを筋肉内(IM)で与える2回の2ml投与により種痘し、1回目の投与は約3週目にて(離乳)、そして2回目の投与はその3週後に施した。コントロールは偽薬としてリン酸緩衝食塩水を受容した。免疫力に対して、生後約9週目においてビルレントE.ルシオパシエの1M注射の負荷をかけた。表6に示すように、種痘による保護は9週目に100%となった。このワクチンはブタを種痘する時には既に12ケ月経たものであった。この結果は保護抗原が有効に安定化されたことを確証する。
【0072】
【表6】

【0073】
備考:20番のブタは排除した。それは非常に気の荒い動物であり、その体温を計ることができないほどに凶暴に暴れた。負荷の後もこのブタは完全に健康であり続けた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリシペロスリクス・ルシオパシエ(豚丹毒菌:Erysipelothrix rhusiopathie)培養物由来の流体画分並びに金属水酸化物、金属リン酸塩、リン酸アルミニウムゲル、リン酸カルシウムゲル、水酸化亜鉛/水酸化カルシウムゲル及びみょうばんから成る群から選ばれる安定化剤を含んで成り、ここで前記エリシペロスリクス・ルシオパシエ培養物が不活性化されたものである、抗原組成物。
【請求項2】
前記安定化剤を10容量%〜40容量%の量で含んで成る、請求項1記載の抗原組成物。
【請求項3】
前記エリシペロスリクス・ルシオパシエ培養物がホルマリン又はベータープロピオラクタンで不活性化されている、請求項2記載の抗原組成物。
【請求項4】
前記流体画分が3〜30倍濃縮されている、請求項1又は2記載の抗原組成物。
【請求項5】
請求項1又は2記載の抗原組成物及びアジュバント組成物を含んで成るワクチン製剤であって、ここで当該抗原組成物が当該ワクチン製剤内で10〜30倍希釈されている、ワクチン製剤。
【請求項6】
前記アジュバント組成物が0.25〜12.5容量%のレシチン、1〜23容量%の油、及び1.5〜6容量%の両親媒性界面活性剤を前記ワクチン製剤内に含んで成る、請求項5記載のワクチン製剤。
【請求項7】
エリシペロスリクス・ルシオパシエ培養物由来の流体画分に金属水酸化物、金属リン酸塩、リン酸アルミニウムゲル、リン酸カルシウムゲル、水酸化亜鉛/水酸化カルシウムゲル及びみょうばんから成る群から選ばれる安定化剤を添加することを含んで成る抗原組成物の作製方法であって、ここで前記エリシペロスリクス・ルシオパシエ培養物が不活性化されたものである、方法。
【請求項8】
前記安定化剤を前記抗原組成物内の当該安定化剤の最終濃度が10〜40容量%となるように添加する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
有効な量の請求項1又は2記載の抗原組成物をヒトを除く動物に投与することを含んで成る、動物の種痘方法。
【請求項10】
前記動物がブタである、請求項9記載の動物の種痘方法。
【請求項11】
有効な量の請求項6記載のワクチン製剤をヒトを除く動物に投与することを含んで成る、動物の種痘方法。

【公開番号】特開2007−119499(P2007−119499A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33458(P2007−33458)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【分割の表示】特願2002−336512(P2002−336512)の分割
【原出願日】平成12年1月24日(2000.1.24)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】