エレクトレットコンデンサマイクロホン
【課題】小型化、薄型化を実現しつつ、十分な背室容量を備えるECMを提供する。
【解決手段】エレクトレットコンデンサマイクロホンは、カプセルと、振動板が張り付けられている振動板リングと、振動板と対向する面にエレクトレット誘電体膜が被着されている背極板と、背極板と振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、インピーダンス変換器と、筒部と、この筒部の一端面であって背極板と対抗する面に筒部の端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、後面板の、背極板と対向する面にインピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、背極板とフレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、カプセルの開口面側の端部は、フレキシブルプリント回路基板の鍔部に加締付けられている。
【解決手段】エレクトレットコンデンサマイクロホンは、カプセルと、振動板が張り付けられている振動板リングと、振動板と対向する面にエレクトレット誘電体膜が被着されている背極板と、背極板と振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、インピーダンス変換器と、筒部と、この筒部の一端面であって背極板と対抗する面に筒部の端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、後面板の、背極板と対向する面にインピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、背極板とフレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、カプセルの開口面側の端部は、フレキシブルプリント回路基板の鍔部に加締付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば携帯電話やビデオカメラ等に搭載されて利用されるエレクトレットコンデンサマイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のエレクトレットコンデンサマイクロホン(Electret Condenser Microphone、以下「ECM」という)8の構成を示す。カプセル81は金属材料で形成される。円筒部811と、円筒部811の一端面を塞ぐ前面板812とが一体に形成されている。前面板812には複数の音孔813が形成されている。この音孔813を通じて音がカプセル81内に導入される。
【0003】
振動板リング86は導電性材料で形成され、前面板812の内面に一方の面が接触し、他方の面に振動板861が張り付けられている。振動板861は導電性の膜で形成され、音圧に応じて振動する。
【0004】
絶縁スペーサ85は絶縁材料でリング状に形成され、その厚さにより背極板84と振動板861との間隙を保持する。
【0005】
背極板84は金属材料で形成されている。背極板84の振動板861と対向する面に図示しないエレクトレット誘電体膜が被着形成されている。
【0006】
ゲートリング83は金属材料で円筒状に形成されている。その一端面は背極板84で塞がれ、他端面はプリント基板82で塞がれている。ゲートリング83と背極板84とプリント基板82とにより背室831が形成されている。
【0007】
背極板84には複数の背極孔841が形成されている。背極孔841が、振動板861と背極板84との間の空隙部分を背室831に連通させる。このような構造により、振動板861は自由に振動することができる。
【0008】
プリント基板82は、ガラスエポキシ基板である。プリント基板82の背室831側の面には、背極板84に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器が実装されている。インピーダンス変換器は、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、以下「FET」という)87と二つのコンデンサ88とによって構成されている。プリント基板82上の配線とゲートリング83とを介してFET87のゲートに背極板84が電気的に接続され、振動板リング86を介して共通電位点(カプセル81)に振動板861が電気的に接続される。
【0009】
カプセル81は、振動板リング86、絶縁スペーサ85、背極板84、ゲートリング83及びプリント基板82を積層してその内部に格納し、開口面側の端部814がプリント基板82の周縁に加締付けられている。
【0010】
例えば、特許文献1及び2に記載されているECMが従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−95097号公報
【特許文献2】特開2004−349927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
搭載される機器の小型化が進められているため、ECMの小型化、薄型化(低背化)が求められている。
【0013】
例えば、特許文献1に記載されているECM9は、以下のような構成により、その小型化等を実現している。図2は、ECM9が小型化等を実現するための概略を示す。但し、説明を分かりやすくするため、第一プリント基板921と第二プリント基板922とカプセル91とFET97のみが記載されている。ECM9のプリント基板は、従来のプリント基板の1/2の厚さのプリント基板(第一プリント基板921と第二プリント基板922)を重ねることによって構成されている。第一プリント基板921は、FET97と電気的に接続するプリント配線が形成されている。第二プリント基板922にはFET97を貫通させる透孔923が形成され、第二プリント基板922は第一プリント基板921に積層される。このような構成により、ECM9はその高さを第二プリント基板922の厚さt2分(つまり、従来のプリント基板の厚さの1/2分)下げることができ小型化等を実現している。
【0014】
さらに、第一プリント基板921の周縁形状が、第二プリント基板922の周縁形状より小さく形成されている。カプセル91の開口面側の端部914は、第二プリント基板922の周縁に加締付けられている。加締付けられる部分の厚さt3は、第一プリント基板921と第二プリント基板922との段差t1に吸収される。なお、段差t1は、第一プリント基板921の厚さである。このような構成により、ECM9はその高さを加締付けられる部分の厚さt3分下げることができ小型化等を実現している。
【0015】
しかしながら、ECM9は、第二プリント基板922の厚さt2分、ECM8より背室容量が小さくなる。背室容量が小さくなると、ECMの感度やS/N比が悪くなる、といった問題が生じうる。
【0016】
本発明は、小型化、薄型化を実現しつつ、十分な背室容量を備えるECMを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の第一の態様に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンは、金属材料からなり、筒部とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板と含むカプセルと、前面板の内面に一方の面が接触し、他方の面に振動板が張り付けられている振動板リングと、金属材料からなり、振動板と対向する面にエレクトレット誘電体膜が被着されている背極板と、環状に形成され、背極板と振動板との間に介在し、背極板と振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、背極板に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器と、筒部と、この筒部の一端面であって背極板と対抗する面に筒部の端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、後面板の、背極板と対向する面にインピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、筒状に形成され、金属材料からなり、背極板とフレキシブルプリント回路基板との間に介在して、背極板とフレキシブルプリント回路基板との間にインピーダンス変換器を格納する空間を保持し、背極板とフレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、カプセルは、振動板リングと絶縁スペーサと背極板とゲートリングとフレキシブルプリント回路基板とを積層して格納し、カプセルの開口面側の端部は、フレキシブルプリント回路基板の鍔部に加締付けられている。
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明の第二の態様に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンは、金属材料からなり、筒部とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板と含み、この前面板の内面にエレクトレット誘電体膜が被着されているカプセルと、前面板の内面と対向する面に振動板が張り付けられている振動板リングと、環状に形成され、前面板の内面と振動板との間に介在し、前面板の内面と振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、振動板に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器と、筒部と、この筒部の一端面であって前面板の内面と対抗する面に端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、後面板の、振動板と対向する面にインピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、筒状に形成され、金属材料からなり、振動板とフレキシブルプリント回路基板との間に介在して、振動板とフレキシブルプリント回路基板との間にインピーダンス変換器を格納する空間を保持し、振動板とフレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、カプセルは、絶縁スペーサと振動板リングとゲートリングとフレキシブルプリント回路基板とを積層して格納し、カプセルの開口面側の端部は、フレキシブルプリント回路基板の鍔部に加締付けられている。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明の第三の態様に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンは、金属材料からなり、筒部とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板と含むカプセルと、環状に形成され、前面板の内面に一方の面が接触する導電ワッシャと、金属材料からなり、導電ワッシャに一方の面が接触し、他方の面にエレクトレット誘電体膜が被着されている背極板と、背極板と対抗する面に振動板が張り付けられている振動板リングと、環状に形成され、背極板と振動板との間に介在し、背極板と振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、振動板に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器と、筒部と、この筒部の一端面であって前面板の内面と対抗する面に端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、後面板の、振動板と対向する面にインピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、筒状に形成され、金属材料からなり、振動板とフレキシブルプリント回路基板との間に介在して、振動板とフレキシブルプリント回路基板との間にインピーダンス変換器を格納する空間を保持し、振動板とフレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、カプセルは、導電ワッシャと背極板と絶縁スペーサと振動板リングとゲートリングとフレキシブルプリント回路基板とを積層して格納し、カプセルの開口面側の端部は、フレキシブルプリント回路基板の鍔部に加締付けられている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るECMは、フレキシブルプリント回路基板(以下「FPC基板」という)が、折り曲げ加工によって、筒部と鍔部と後面板とを含む形状に形成され、後面板上にインピーダンス変換器が配置され、カプセルの端部が鍔部に加締付けられるため、小型化、薄型化を実現しつつ、十分な背室容量を備えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のECMの構成図。
【図2】特許文献1に記載されているECMの概略を示す図。
【図3】図3Aは第一実施形態に係るECMの平面図、図3Bは第一実施形態に係るECMの側面図、図3Cは第一実施形態に係るECMの底面図。
【図4】図4Aは第一実施形態に係るECMの平面側からみた斜視図、図4Bは第一実施形態に係るECMの底面側からみた斜視図。
【図5】図5Aは第一実施形態に係るECMの平面側からみた分解斜視図、図5Bは第一実施形態に係るECMの底面側からみた分解斜視図。
【図6】第一実施形態に係るECMの断面図。
【図7】図7Aはインピーダンス変換器が配されているFPC基板の平面図、図7Bはインピーダンス変換器が取り外されているFPC基板の平面図、図7Cはインピーダンス変換器及びレジスト層124が取り外されているFPC基板の平面図。
【図8】FPC基板の断面図。
【図9】図9Aは第一実施形態のECMの一例を示す構成図、図9Bは第一実施形態のECMの他の例を示す構成図。
【図10】図10Aは特許文献1に記載されているECMの一例を示す構成図、図10Bは特許文献1に記載されているECMの他の例を示す構成図。
【図11】第一実施形態の電気回路構造を説明するための接続図。
【図12】変形例に係るECMの分解斜視図。
【図13】第二実施形態に係るECMの分解斜視図。
【図14】第二実施形態に係るECMの断面図。
【図15】第二実施形態の電気回路構造を説明するための接続図。
【図16】第三実施形態に係るECMの分解斜視図。
【図17】第三実施形態に係るECMの断面図。
【図18】第三実施形態の電気回路構造を説明するための接続図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、同じ機能を持つ構成部には同一の符号を記し、重複説明を省略する。
【0023】
<第一実施形態>
図3Aは第一実施形態に係るECM10の平面図を、図3BはECM10の正面図を、図3CはECM10の底面図を示す。図4Aは平面側からみたECM10の斜視図を、図4Bは底面側からみたECM10の斜視図を示す。図5Aは平面側からみたECM10の分解斜視図を、図5Bは底面側からみたECM10の分解斜視図を示す。
【0024】
ECM10はバックエレクトレット型のコンデンサマイクロホンである。図5A及び図5Bに示すようにECM10は、カプセル11とFPC基板12とカップ状ゲートリング13と絶縁スペーサ15と振動板リング16とを含む。
【0025】
カプセル11は、金属材料からなり、筒部111とこの筒部111の一端面を塞ぐ前面板112と含む。前面板112には複数の音孔113が形成されている。
【0026】
振動板リング16の一方の面が前面板112の内面に接触する。他方の面には振動板161が張り付けられている。
【0027】
絶縁スペーサ15は、絶縁材料からなり、リング状に形成される。
【0028】
カップ状ゲートリング13は、金属材料からなり、背極板部131とゲートリング部132とを含む。背極板部131とゲートリング部132とは一体に形成されている。
【0029】
背極板部131とゲートリング部132の外周面には、図示しないエレクトレット誘電体膜が被着されている。よって、背極板部131の振動板161と対向する面には、エレクトレット誘電体膜が被着されている。
【0030】
絶縁スペーサ15は、背極板部131と振動板161との間に介在し、その厚さにより背極板部131と振動板161との間隙を保持する。
【0031】
FPC基板12の背極板部131と対向する面には、インピーダンス変換器が配されている。
【0032】
インピーダンス変換器は、背極板部131に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出す。インピーダンス変換器は例えばFET17と2つのコンデンサ18とからなる。コンデンサ18は高周波ノイズ対策用であり、その個数は必ずしも2つである必要はない。またコンデンサに代えて抵抗を用いてもよい。つまり、高周波ノイズ対策用に適宜コンデンサまたは抵抗を少なくとも一つ用いればよい。
【0033】
ゲートリング部132は、円筒状に形成される。図6に示すように、ゲートリング部132は、背極板部131とFPC基板12との間に介在して、その軸方向の長さにより、背極板部131とFPC基板12との間にインピーダンス変換器を格納する空間を保持する。言い換えると、背極板部131とFPC基板12とゲートリング部132とは、背室133を形成する。なお図6は図3AのVI−VI断面図である。
【0034】
背極板部131はゲートリング部132を介してFPC基板12上の配線と電気的に接続する。背極板部131には複数の背極孔134が形成されている。背極孔134が、振動板161と背極板部131との間の空隙部分を背室133に連通させる。このような構造により、振動板161は自由に振動することができる。振動板161は振動板リング16を介して共通電位点(カプセル11)と電気的に接続する。
【0035】
図6に示すようにカプセル11は、振動板リング16と絶縁スペーサ15とカップ状ゲートリング13とFPC基板12とを積層してその内部空間(筒部111と前面板112とによって形成される内部空間)に格納する。カプセル11の開口面側の端部114は、FPC基板12の後述する鍔部122に加締付けられている。
【0036】
<FPC基板12>
FPC基板12についてより詳細に説明する。図7Aはインピーダンス変換器(FET17と2つのコンデンサ18)が配されているFPC基板12の平面図を、図7Bはインピーダンス変換器が取り外されているFPC基板12の平面図を、図7Cはインピーダンス変換器及びレジスト層124(図6参照)が取り外されているFPC基板12の平面図を示す。図8は図7CのIIX−IIX断面を示す斜視図である。
【0037】
FPC基板12は、フィルム状の絶縁体(ベースフィルム120)の上に接着層が形成され、さらにその上に導体箔(ゲートパターン125、第一プリント配線126、第二プリント配線127、コモン電極128及び信号電極129)が形成され(図7(C)、図3(c)、図8参照)、端子部やはんだ付け部以外には絶縁体(レジスト層124)が被せられている構造である(図7(B)参照)。例えば、ベースフィルム120及びレジスト層124はポリイミドフィルムからなり、導体箔は銅からなる。
【0038】
図8に示すようにFPC基板12は、筒部121と鍔部122と後面板123とを含み、筒部121と鍔部122と後面板123とが一体に形成されている。鍔部122は、筒部121の一端面であって背極板部131と対抗する面に筒部121の端部から放射方向に突出している。後面板123は、筒部121の他端面を塞ぐ。後面板123の、背極板部131と対向する面にインピーダンス変換器が配されている(図5A参照)。言い換えると、筒部121は、後面板123の周縁から背室133側に立設されている。鍔部122は、後面板123よりも背極板部131側に配され、筒部121の端部から放射方向に形成されている。
【0039】
FPC基板12は、折り曲げ加工により上述の筒部121と鍔部122と後面板123とを備えるように形成される。折り曲げ後に、後面板123の背極板部131と対向する面にインピーダンス変換器が配される。
【0040】
<作用・効果>
図9A、図9BはそれぞれECM10の構成図を示す。但し、各図において筒部121、ゲートリング部132及び筒部111の長さが異なり、説明を分かりやすくするためにカプセル11とカップ状ゲートリング13とFPC基板12とFET17のみが記載されている。
【0041】
図10A、図10Bはそれぞれ特許文献1に記載されているECM9の構成図を示す。但し、特許文献1に記載されているECM9は、フロントエレクトレット型のコンデンサマイクロホンであるが、分かりやすく比較するために、バックエレクトレット型のコンデンサマイクロホンに特許文献1の技術を適用している。説明を分かりやすくするために、各図にはカプセル91とカップ状ゲートリング93と第一プリント基板921と第二プリント基板922とFET97のみが記載されている。
【0042】
(薄型化、小型化について)
図9Aに示すように鍔部122と後面板123との間には、段差u2が形成される。筒部121上にインピーダンス変換器を配置することで、インピーダンス変換器の下部を筒部121と後面板123とによって形成される空間X内に収容している。加締付けられる部分の厚さt3は、この段差u2に吸収される。このような構成により、ECM10はその高さを加締付けられる部分の厚さt3分、下げることができ、小型化等を実現している。なお、段差を設けるために、特許文献1では基板を積層構造とする必要があったが、本実施形態では単層構造によって実現することができる。従って、本実施形態のECM10を製造する際には、基板間を電気的に接続するためのプリント配線の作製、基板同士の接着、透孔作製等の工程が不要であり、効率が良い。
【0043】
図1のプリント基板82及び図10Aの第一プリント基板921、第二プリント基板922は、ガラスエポキシ基板等の剛体基板からなる。一般的にフレキシブル基板の厚さは、剛体基板の厚さより薄く加工することが可能である。よって、基板の厚さが薄くなった分、ECM10はその高さを下げることができ、小型化等を実現している。
【0044】
(配置面積、背室容量について)
図9Aに示すように筒部121と後面板123によって形成される空間Xは、背室133の一部となる。一方、図10Aに示すようにECM9には空間Xに対応する空間が存在しない。そのため、ECM10の背室容量は、ECM9の背室容量よりも空間X分だけ大きくなる。言い換えると、ECM10は、小型化等を実現しつつ、図1のECM8の背室容量と同程度の背室容量を形成することができる。
【0045】
さらに、FPC基板12は、自由な折り曲げ加工が可能であり、折り曲げ加工によって、前述の筒部121と鍔部122と後面板123とを含む形状に形成されている。そのため、後面板123上にインピーダンス変換器を配置するための面積(以下「配置面積」という)を最大限に大きくすることができる。それにより空間Xを最大限に大きくすることができる。
【0046】
一方、剛体基板の場合には、自由な折り曲げ加工ができない。仮に、第一プリント基板921上の配置面積を大きくするために、図10Bのように第二プリント基板922がリング状に形成されたとしても、第一プリント基板921上に貼り合わせに要する面積を確保する必要あるため、その分だけFPC基板12上の配置面積よりも小さくなる。
【0047】
FPC基板12上の配置面積はYを直径とする円の面積であり(図9A参照)、第一プリント基板921上の配置面積はY1を直径とする円の面積である(図10B参照)。よって、FPC基板12と第二プリント基板922の外径が同じであれば、FPC基板12上の配置面積のほうが大きくなる。また、空間Xの大きさは(Yを直径とする円の面積×筒部121の長さL2)であり、空間X1の大きさは(Y1を直径とする円の面積×第二プリント基板922の厚さt2)である。よって、ECM10とECM9の外寸が同じであれば、ECM10の背室容量のほうが大きくなる。
【0048】
配置面積が大きくなると、インピーダンス変換器等の配置の自由度が挙がるという効果がある。背室容量が大きくなると、ECMの感度及びS/N比が良くなるといった効果を期待できる。
【0049】
(段差の大きさの自由度について)
FPC基板12は、自由な折り曲げ加工が可能なので、加締付けられる部分の厚さt3や所望の空間Xの大きさ、実装面の形状、他の部品等に応じて筒部121の長さを自由に変更することができ、段差u2の大きさを自由に変更することができる。一方、ECM9は、段差t1の大きさを変更するために第一プリント基板921の厚さを変更する必要があり、自由度は低いと考えられる。
【0050】
例えば、図9Bに示すように筒部121の軸方向の長さを大きくし、ゲートリング部132及び筒部111の長さを小さくした場合、ECM10を小型化することができる。カプセル11の端部114の下方と実装基板の間に空間sを形成することができる。空間sに実装基板のレジスト層や他の部品等が位置してもよい。なお、空間Xが大きくなるため、図9AのECM10と同程度の背室容量が形成される。
【0051】
一方、ECM9の場合、空間sを形成するためには、第一プリント基板921の厚さを大きくしなければならないので、ECM9は厚くなり、大きくなる。
【0052】
<回路図>
図11は、ECM10の回路図を示す。ゲートパターン125と第一プリント配線126と第二プリント配線127は図7(c)に示すように配置され、コモン電極128と信号電極129は図3(c)に示すように配置される。第一プリント配線126と信号電極129とはFPC基板12に設けられた図示しないスルーホールを介して電気的に接続している。同様に第二プリント配線127とコモン電極128とは電気的に接続している。
【0053】
振動板リング16と絶縁スペーサ15とカップ状ゲートリング13とFPC基板12とがカプセル11に積層して格納され、カプセル11の開口面側の端部114が鍔部122のコモン電極128に加締付けられることにより、カプセル11と前面板112と振動板リング16とを介して振動板161がコモン電極128に接続され、また、背極板部131とゲートリング部132とゲートパターン125とを介してエレクトレット誘電体膜131aがFET17のゲート電極に接続される。
【0054】
図11に示す電気回路から明らかなように、振動板161が音によって振動することにより、エレクトレット誘電体膜131aに帯電した静電気によって電気信号が発生し、この電気信号がFET17でインピーダンス変換されてコモン電極128と信号電極129を通じて外部に出力される。
【0055】
なお、仮に図6のFCP基板12が衝撃等により背極板部131の方向に隆起しFET17の上面が背極板部131の底面に接触しても、上述の回路図から明らかなように、得られる電気信号に影響を与えることはない。よって、エレクトレットコンデンサマイクロホンの性能上も何ら影響を受けない。
【0056】
<変形例>
第一実施形態では、背極板部131とゲートリング部132とは一体に形成されているが、背極板231とゲートリング232として別々に形成されてもよい(図12参照)。この場合、背極板231は、金属材料からなり、振動板161と対向する面に図示しないエレクトレット誘電体膜が被着されている。ゲートリング232は、金属材料からなり、円筒状に形成されている。ゲートリング232は、背極板231とFPC基板12との間に介在して、背極板231とFPC基板12との間にインピーダンス変換器を格納する空間を保持する。ゲートリング232は、背極板231とFPC基板12上の配線とを電気的に接続する。また、第一実施形態では、背極板部131と絶縁スペーサ15とは別々に形成されているが、特許文献2に記載されているように、インサート成形により一体に形成されてもよい。つまり、ゲートリングと背極板と絶縁スペーサはそれぞれ、別々に形成されてもよいし、一体に形成されてもよい。
【0057】
FPC基板12に補強板を重ねる構成としてもよい。例えば後面板123の実装面側に補強板が重ねて貼られる構成とする。このような構成とすることでFPC基板12の自由な折り曲げ加工を可能としつつ、その剛性を向上させることができる。
【0058】
FPC基板12は、折り曲げ加工前に、後面板123の背極板部131と対向する面にインピーダンス変換器が配され、配置後に、折り曲げ加工により上述の筒部121と鍔部122と後面板123とを備えるように形成されてもよい。
【0059】
鍔部122の実装面側の面に接着剤が塗布される構成としてもよい。端部114による加締に加えて、この接着剤による接着により、FPC基板12をカプセル11に対して、さらに強固に固定することができる。但し、製造時に接着剤を硬化させるための工程が必要になる。
【0060】
必ずしも段差u2は、加締付けられる部分の厚さt3を全て吸収する必要はなく、その一部を吸収する構成としてもよい。吸収分だけECM10は薄型化、小型化を実現することができる。
【0061】
FPC基板12の折り曲げ形状は、本実施形態に限定されるものではなく、段差u2を設けて、端部114を加締付けることができる形状であればよい。例えば鍔部122の内径が後面板123の外径よりも大きく形成され、筒部121がテーパ形状に形成されてもよい。また例えば鍔部122は、筒部121の端部から連続して平板リング状に放射方向に突出しているが(図5A参照)、不連続であっても端部114を加締付けることができる形状であればよい。
【0062】
<第二実施形態:フロントエレクトレット型>
以下、第一実施形態と異なる部分のみ説明する。図13は平面側からみたECM20の分解斜視図を、図14はECM20の断面図を示す。
【0063】
ECM20はフロントエレクトレット型のコンデンサマイクロホンである。図13に示すようにECM20は、カプセル21とFPC基板12と絶縁スペーサ15と振動板リング16とゲートリング232とを含む。本実施形態では、背極板部131や背極板231を設けず、カプセル21の前面板112を背極板の代わりに利用する。
【0064】
カプセル21は、金属材料からなり、筒部111とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板112と含む。前面板112の内面には図示しないエレクトレット誘電体膜が被着されている。よって、前面板112の振動板161と対向する面には、エレクトレット誘電体膜が被着されている。
【0065】
振動板リング16には、前面板112の内面と対向する面に振動板161が張り付けられている。他方の面はゲートリング232と接触する。
【0066】
絶縁スペーサ15は、前面板112の内面と振動板161との間に介在し、前面板112の内面と振動板との間隙を保持する。
【0067】
FPC基板12は、筒部121と、筒部121の一端面であって前面板112の内面と対抗する面に端部から放射方向に突出する鍔部122と、筒部111の他端面を塞ぐ後面板123とが一体に形成される。FPC基板12の後面板123の、振動板161と対向する面にはインピーダンス変換器が配されている。インピーダンス変換器は、振動板161に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出す。
【0068】
ゲートリング232は、筒状に形成され、金属材料からなり、振動板161とFPC基板12との間に介在して、その軸方向の長さにより、振動板161とFPC基板12との間にインピーダンス変換器を格納する空間を保持する。言い換えると、振動板161とFPC基板12とゲートリング232とは、図14に示すように背室233を形成する。振動板161は、振動板リング16とゲートリング232とを介してFPC基板12上の配線(ゲートパターン125)と電気的に接続する。
【0069】
カプセル21は、絶縁スペーサ15と振動板リング16とゲートリング232とFPC基板12とを積層して格納する。カプセル21の開口面側の端部114は、FPC基板12の鍔部122に加締付けられている。
【0070】
<回路図>
図15は、ECM20の回路図を示す。カプセル21の開口面側の端部114が鍔部122のコモン電極128に加締付けられることにより、カプセル21と前面板112とを介してエレクトレット誘電体膜112aがコモン電極128に接続され、また、振動板リング16とゲートリング232とゲートパターン125とを介して振動板161がFET17のゲート電極に接続される。
【0071】
図15に示す電気回路から明らかなように、振動板161が音によって振動することにより、エレクトレット誘電体膜131aに帯電した静電気によって振動板161に電気信号が発生し、この電気信号がFET17でインピーダンス変換されてコモン電極128と信号電極129を通じて外部に出力される。
【0072】
このような構成とすることで、フロントエレクトレット型コンデンサマイクロホンの場合にも、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
<第三実施形態:リバースエレクトレット型>
以下、第二実施形態と異なる部分のみ説明する。図16は平面側からみたECM30の分解斜視図を、図17はECM30の断面図を示す。
【0074】
ECM30はリバースエレクトレット型のコンデンサマイクロホンである。図16に示すようにECM30は、カプセル11とFPC基板12と導電ワッシャ39と背極板231と絶縁スペーサ15と振動板リング16とゲートリング232とを含む。本実施形態では、エレクトレット誘電体膜と振動板との位置関係は第二実施形態と同様のまま、背極板231を用いる。
【0075】
導電ワッシャ39は、環状に形成され、前面板112の内面に一方の面が接触する。
【0076】
背極板231は、金属材料からなり、導電ワッシャ39に一方の面が接触し、他方の面に図示しないエレクトレット誘電体膜が被着されている。よって、背極板231の、振動板161と対向する面には、エレクトレット誘電体膜が被着されている。背極板231の他方の面は絶縁スペーサ15と接触する。
【0077】
振動板リング16の、背極板231と対抗する面には、振動板161が張り付けられている。
【0078】
絶縁スペーサ15は、背極板231と振動板161との間に介在し、背極板231と振動板161との間隙を保持する。
【0079】
カプセル11は、導電ワッシャ39と背極板231と絶縁スペーサ15と振動板リング16とゲートリング232とFPC基板12とを積層して格納する。カプセル11の開口面側の端部は、FPC基板12の鍔部122に加締付けられている。
【0080】
<回路図>
図18は、ECM30の回路図を示す。カプセル11の開口面側の端部114が鍔部122のコモン電極128に加締付けられることにより、カプセル11と前面板112と
導電ワッシャ39と背極板231とを介してエレクトレット誘電体膜231aがコモン電極128に接続され、また、振動板リング16とゲートリング232とゲートパターン125とを介して振動板161がFET17のゲート電極に接続される。
【0081】
図18に示す電気回路から明らかなように、振動板161が音によって振動することにより、エレクトレット誘電体膜131aに帯電した静電気によって振動板161に電気信号が発生し、この電気信号がFET17でインピーダンス変換されてコモン電極128と信号電極129を通じて外部に出力される。
【0082】
このような構成とすることで、リバースエレクトレット型コンデンサマイクロホンの場合にも、第二実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
<その他の変形例>
本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではない。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば携帯電話やビデオカメラ等に搭載されて利用されるエレクトレットコンデンサマイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のエレクトレットコンデンサマイクロホン(Electret Condenser Microphone、以下「ECM」という)8の構成を示す。カプセル81は金属材料で形成される。円筒部811と、円筒部811の一端面を塞ぐ前面板812とが一体に形成されている。前面板812には複数の音孔813が形成されている。この音孔813を通じて音がカプセル81内に導入される。
【0003】
振動板リング86は導電性材料で形成され、前面板812の内面に一方の面が接触し、他方の面に振動板861が張り付けられている。振動板861は導電性の膜で形成され、音圧に応じて振動する。
【0004】
絶縁スペーサ85は絶縁材料でリング状に形成され、その厚さにより背極板84と振動板861との間隙を保持する。
【0005】
背極板84は金属材料で形成されている。背極板84の振動板861と対向する面に図示しないエレクトレット誘電体膜が被着形成されている。
【0006】
ゲートリング83は金属材料で円筒状に形成されている。その一端面は背極板84で塞がれ、他端面はプリント基板82で塞がれている。ゲートリング83と背極板84とプリント基板82とにより背室831が形成されている。
【0007】
背極板84には複数の背極孔841が形成されている。背極孔841が、振動板861と背極板84との間の空隙部分を背室831に連通させる。このような構造により、振動板861は自由に振動することができる。
【0008】
プリント基板82は、ガラスエポキシ基板である。プリント基板82の背室831側の面には、背極板84に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器が実装されている。インピーダンス変換器は、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、以下「FET」という)87と二つのコンデンサ88とによって構成されている。プリント基板82上の配線とゲートリング83とを介してFET87のゲートに背極板84が電気的に接続され、振動板リング86を介して共通電位点(カプセル81)に振動板861が電気的に接続される。
【0009】
カプセル81は、振動板リング86、絶縁スペーサ85、背極板84、ゲートリング83及びプリント基板82を積層してその内部に格納し、開口面側の端部814がプリント基板82の周縁に加締付けられている。
【0010】
例えば、特許文献1及び2に記載されているECMが従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−95097号公報
【特許文献2】特開2004−349927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
搭載される機器の小型化が進められているため、ECMの小型化、薄型化(低背化)が求められている。
【0013】
例えば、特許文献1に記載されているECM9は、以下のような構成により、その小型化等を実現している。図2は、ECM9が小型化等を実現するための概略を示す。但し、説明を分かりやすくするため、第一プリント基板921と第二プリント基板922とカプセル91とFET97のみが記載されている。ECM9のプリント基板は、従来のプリント基板の1/2の厚さのプリント基板(第一プリント基板921と第二プリント基板922)を重ねることによって構成されている。第一プリント基板921は、FET97と電気的に接続するプリント配線が形成されている。第二プリント基板922にはFET97を貫通させる透孔923が形成され、第二プリント基板922は第一プリント基板921に積層される。このような構成により、ECM9はその高さを第二プリント基板922の厚さt2分(つまり、従来のプリント基板の厚さの1/2分)下げることができ小型化等を実現している。
【0014】
さらに、第一プリント基板921の周縁形状が、第二プリント基板922の周縁形状より小さく形成されている。カプセル91の開口面側の端部914は、第二プリント基板922の周縁に加締付けられている。加締付けられる部分の厚さt3は、第一プリント基板921と第二プリント基板922との段差t1に吸収される。なお、段差t1は、第一プリント基板921の厚さである。このような構成により、ECM9はその高さを加締付けられる部分の厚さt3分下げることができ小型化等を実現している。
【0015】
しかしながら、ECM9は、第二プリント基板922の厚さt2分、ECM8より背室容量が小さくなる。背室容量が小さくなると、ECMの感度やS/N比が悪くなる、といった問題が生じうる。
【0016】
本発明は、小型化、薄型化を実現しつつ、十分な背室容量を備えるECMを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の第一の態様に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンは、金属材料からなり、筒部とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板と含むカプセルと、前面板の内面に一方の面が接触し、他方の面に振動板が張り付けられている振動板リングと、金属材料からなり、振動板と対向する面にエレクトレット誘電体膜が被着されている背極板と、環状に形成され、背極板と振動板との間に介在し、背極板と振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、背極板に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器と、筒部と、この筒部の一端面であって背極板と対抗する面に筒部の端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、後面板の、背極板と対向する面にインピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、筒状に形成され、金属材料からなり、背極板とフレキシブルプリント回路基板との間に介在して、背極板とフレキシブルプリント回路基板との間にインピーダンス変換器を格納する空間を保持し、背極板とフレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、カプセルは、振動板リングと絶縁スペーサと背極板とゲートリングとフレキシブルプリント回路基板とを積層して格納し、カプセルの開口面側の端部は、フレキシブルプリント回路基板の鍔部に加締付けられている。
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明の第二の態様に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンは、金属材料からなり、筒部とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板と含み、この前面板の内面にエレクトレット誘電体膜が被着されているカプセルと、前面板の内面と対向する面に振動板が張り付けられている振動板リングと、環状に形成され、前面板の内面と振動板との間に介在し、前面板の内面と振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、振動板に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器と、筒部と、この筒部の一端面であって前面板の内面と対抗する面に端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、後面板の、振動板と対向する面にインピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、筒状に形成され、金属材料からなり、振動板とフレキシブルプリント回路基板との間に介在して、振動板とフレキシブルプリント回路基板との間にインピーダンス変換器を格納する空間を保持し、振動板とフレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、カプセルは、絶縁スペーサと振動板リングとゲートリングとフレキシブルプリント回路基板とを積層して格納し、カプセルの開口面側の端部は、フレキシブルプリント回路基板の鍔部に加締付けられている。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明の第三の態様に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンは、金属材料からなり、筒部とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板と含むカプセルと、環状に形成され、前面板の内面に一方の面が接触する導電ワッシャと、金属材料からなり、導電ワッシャに一方の面が接触し、他方の面にエレクトレット誘電体膜が被着されている背極板と、背極板と対抗する面に振動板が張り付けられている振動板リングと、環状に形成され、背極板と振動板との間に介在し、背極板と振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、振動板に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器と、筒部と、この筒部の一端面であって前面板の内面と対抗する面に端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、後面板の、振動板と対向する面にインピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、筒状に形成され、金属材料からなり、振動板とフレキシブルプリント回路基板との間に介在して、振動板とフレキシブルプリント回路基板との間にインピーダンス変換器を格納する空間を保持し、振動板とフレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、カプセルは、導電ワッシャと背極板と絶縁スペーサと振動板リングとゲートリングとフレキシブルプリント回路基板とを積層して格納し、カプセルの開口面側の端部は、フレキシブルプリント回路基板の鍔部に加締付けられている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るECMは、フレキシブルプリント回路基板(以下「FPC基板」という)が、折り曲げ加工によって、筒部と鍔部と後面板とを含む形状に形成され、後面板上にインピーダンス変換器が配置され、カプセルの端部が鍔部に加締付けられるため、小型化、薄型化を実現しつつ、十分な背室容量を備えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のECMの構成図。
【図2】特許文献1に記載されているECMの概略を示す図。
【図3】図3Aは第一実施形態に係るECMの平面図、図3Bは第一実施形態に係るECMの側面図、図3Cは第一実施形態に係るECMの底面図。
【図4】図4Aは第一実施形態に係るECMの平面側からみた斜視図、図4Bは第一実施形態に係るECMの底面側からみた斜視図。
【図5】図5Aは第一実施形態に係るECMの平面側からみた分解斜視図、図5Bは第一実施形態に係るECMの底面側からみた分解斜視図。
【図6】第一実施形態に係るECMの断面図。
【図7】図7Aはインピーダンス変換器が配されているFPC基板の平面図、図7Bはインピーダンス変換器が取り外されているFPC基板の平面図、図7Cはインピーダンス変換器及びレジスト層124が取り外されているFPC基板の平面図。
【図8】FPC基板の断面図。
【図9】図9Aは第一実施形態のECMの一例を示す構成図、図9Bは第一実施形態のECMの他の例を示す構成図。
【図10】図10Aは特許文献1に記載されているECMの一例を示す構成図、図10Bは特許文献1に記載されているECMの他の例を示す構成図。
【図11】第一実施形態の電気回路構造を説明するための接続図。
【図12】変形例に係るECMの分解斜視図。
【図13】第二実施形態に係るECMの分解斜視図。
【図14】第二実施形態に係るECMの断面図。
【図15】第二実施形態の電気回路構造を説明するための接続図。
【図16】第三実施形態に係るECMの分解斜視図。
【図17】第三実施形態に係るECMの断面図。
【図18】第三実施形態の電気回路構造を説明するための接続図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、同じ機能を持つ構成部には同一の符号を記し、重複説明を省略する。
【0023】
<第一実施形態>
図3Aは第一実施形態に係るECM10の平面図を、図3BはECM10の正面図を、図3CはECM10の底面図を示す。図4Aは平面側からみたECM10の斜視図を、図4Bは底面側からみたECM10の斜視図を示す。図5Aは平面側からみたECM10の分解斜視図を、図5Bは底面側からみたECM10の分解斜視図を示す。
【0024】
ECM10はバックエレクトレット型のコンデンサマイクロホンである。図5A及び図5Bに示すようにECM10は、カプセル11とFPC基板12とカップ状ゲートリング13と絶縁スペーサ15と振動板リング16とを含む。
【0025】
カプセル11は、金属材料からなり、筒部111とこの筒部111の一端面を塞ぐ前面板112と含む。前面板112には複数の音孔113が形成されている。
【0026】
振動板リング16の一方の面が前面板112の内面に接触する。他方の面には振動板161が張り付けられている。
【0027】
絶縁スペーサ15は、絶縁材料からなり、リング状に形成される。
【0028】
カップ状ゲートリング13は、金属材料からなり、背極板部131とゲートリング部132とを含む。背極板部131とゲートリング部132とは一体に形成されている。
【0029】
背極板部131とゲートリング部132の外周面には、図示しないエレクトレット誘電体膜が被着されている。よって、背極板部131の振動板161と対向する面には、エレクトレット誘電体膜が被着されている。
【0030】
絶縁スペーサ15は、背極板部131と振動板161との間に介在し、その厚さにより背極板部131と振動板161との間隙を保持する。
【0031】
FPC基板12の背極板部131と対向する面には、インピーダンス変換器が配されている。
【0032】
インピーダンス変換器は、背極板部131に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出す。インピーダンス変換器は例えばFET17と2つのコンデンサ18とからなる。コンデンサ18は高周波ノイズ対策用であり、その個数は必ずしも2つである必要はない。またコンデンサに代えて抵抗を用いてもよい。つまり、高周波ノイズ対策用に適宜コンデンサまたは抵抗を少なくとも一つ用いればよい。
【0033】
ゲートリング部132は、円筒状に形成される。図6に示すように、ゲートリング部132は、背極板部131とFPC基板12との間に介在して、その軸方向の長さにより、背極板部131とFPC基板12との間にインピーダンス変換器を格納する空間を保持する。言い換えると、背極板部131とFPC基板12とゲートリング部132とは、背室133を形成する。なお図6は図3AのVI−VI断面図である。
【0034】
背極板部131はゲートリング部132を介してFPC基板12上の配線と電気的に接続する。背極板部131には複数の背極孔134が形成されている。背極孔134が、振動板161と背極板部131との間の空隙部分を背室133に連通させる。このような構造により、振動板161は自由に振動することができる。振動板161は振動板リング16を介して共通電位点(カプセル11)と電気的に接続する。
【0035】
図6に示すようにカプセル11は、振動板リング16と絶縁スペーサ15とカップ状ゲートリング13とFPC基板12とを積層してその内部空間(筒部111と前面板112とによって形成される内部空間)に格納する。カプセル11の開口面側の端部114は、FPC基板12の後述する鍔部122に加締付けられている。
【0036】
<FPC基板12>
FPC基板12についてより詳細に説明する。図7Aはインピーダンス変換器(FET17と2つのコンデンサ18)が配されているFPC基板12の平面図を、図7Bはインピーダンス変換器が取り外されているFPC基板12の平面図を、図7Cはインピーダンス変換器及びレジスト層124(図6参照)が取り外されているFPC基板12の平面図を示す。図8は図7CのIIX−IIX断面を示す斜視図である。
【0037】
FPC基板12は、フィルム状の絶縁体(ベースフィルム120)の上に接着層が形成され、さらにその上に導体箔(ゲートパターン125、第一プリント配線126、第二プリント配線127、コモン電極128及び信号電極129)が形成され(図7(C)、図3(c)、図8参照)、端子部やはんだ付け部以外には絶縁体(レジスト層124)が被せられている構造である(図7(B)参照)。例えば、ベースフィルム120及びレジスト層124はポリイミドフィルムからなり、導体箔は銅からなる。
【0038】
図8に示すようにFPC基板12は、筒部121と鍔部122と後面板123とを含み、筒部121と鍔部122と後面板123とが一体に形成されている。鍔部122は、筒部121の一端面であって背極板部131と対抗する面に筒部121の端部から放射方向に突出している。後面板123は、筒部121の他端面を塞ぐ。後面板123の、背極板部131と対向する面にインピーダンス変換器が配されている(図5A参照)。言い換えると、筒部121は、後面板123の周縁から背室133側に立設されている。鍔部122は、後面板123よりも背極板部131側に配され、筒部121の端部から放射方向に形成されている。
【0039】
FPC基板12は、折り曲げ加工により上述の筒部121と鍔部122と後面板123とを備えるように形成される。折り曲げ後に、後面板123の背極板部131と対向する面にインピーダンス変換器が配される。
【0040】
<作用・効果>
図9A、図9BはそれぞれECM10の構成図を示す。但し、各図において筒部121、ゲートリング部132及び筒部111の長さが異なり、説明を分かりやすくするためにカプセル11とカップ状ゲートリング13とFPC基板12とFET17のみが記載されている。
【0041】
図10A、図10Bはそれぞれ特許文献1に記載されているECM9の構成図を示す。但し、特許文献1に記載されているECM9は、フロントエレクトレット型のコンデンサマイクロホンであるが、分かりやすく比較するために、バックエレクトレット型のコンデンサマイクロホンに特許文献1の技術を適用している。説明を分かりやすくするために、各図にはカプセル91とカップ状ゲートリング93と第一プリント基板921と第二プリント基板922とFET97のみが記載されている。
【0042】
(薄型化、小型化について)
図9Aに示すように鍔部122と後面板123との間には、段差u2が形成される。筒部121上にインピーダンス変換器を配置することで、インピーダンス変換器の下部を筒部121と後面板123とによって形成される空間X内に収容している。加締付けられる部分の厚さt3は、この段差u2に吸収される。このような構成により、ECM10はその高さを加締付けられる部分の厚さt3分、下げることができ、小型化等を実現している。なお、段差を設けるために、特許文献1では基板を積層構造とする必要があったが、本実施形態では単層構造によって実現することができる。従って、本実施形態のECM10を製造する際には、基板間を電気的に接続するためのプリント配線の作製、基板同士の接着、透孔作製等の工程が不要であり、効率が良い。
【0043】
図1のプリント基板82及び図10Aの第一プリント基板921、第二プリント基板922は、ガラスエポキシ基板等の剛体基板からなる。一般的にフレキシブル基板の厚さは、剛体基板の厚さより薄く加工することが可能である。よって、基板の厚さが薄くなった分、ECM10はその高さを下げることができ、小型化等を実現している。
【0044】
(配置面積、背室容量について)
図9Aに示すように筒部121と後面板123によって形成される空間Xは、背室133の一部となる。一方、図10Aに示すようにECM9には空間Xに対応する空間が存在しない。そのため、ECM10の背室容量は、ECM9の背室容量よりも空間X分だけ大きくなる。言い換えると、ECM10は、小型化等を実現しつつ、図1のECM8の背室容量と同程度の背室容量を形成することができる。
【0045】
さらに、FPC基板12は、自由な折り曲げ加工が可能であり、折り曲げ加工によって、前述の筒部121と鍔部122と後面板123とを含む形状に形成されている。そのため、後面板123上にインピーダンス変換器を配置するための面積(以下「配置面積」という)を最大限に大きくすることができる。それにより空間Xを最大限に大きくすることができる。
【0046】
一方、剛体基板の場合には、自由な折り曲げ加工ができない。仮に、第一プリント基板921上の配置面積を大きくするために、図10Bのように第二プリント基板922がリング状に形成されたとしても、第一プリント基板921上に貼り合わせに要する面積を確保する必要あるため、その分だけFPC基板12上の配置面積よりも小さくなる。
【0047】
FPC基板12上の配置面積はYを直径とする円の面積であり(図9A参照)、第一プリント基板921上の配置面積はY1を直径とする円の面積である(図10B参照)。よって、FPC基板12と第二プリント基板922の外径が同じであれば、FPC基板12上の配置面積のほうが大きくなる。また、空間Xの大きさは(Yを直径とする円の面積×筒部121の長さL2)であり、空間X1の大きさは(Y1を直径とする円の面積×第二プリント基板922の厚さt2)である。よって、ECM10とECM9の外寸が同じであれば、ECM10の背室容量のほうが大きくなる。
【0048】
配置面積が大きくなると、インピーダンス変換器等の配置の自由度が挙がるという効果がある。背室容量が大きくなると、ECMの感度及びS/N比が良くなるといった効果を期待できる。
【0049】
(段差の大きさの自由度について)
FPC基板12は、自由な折り曲げ加工が可能なので、加締付けられる部分の厚さt3や所望の空間Xの大きさ、実装面の形状、他の部品等に応じて筒部121の長さを自由に変更することができ、段差u2の大きさを自由に変更することができる。一方、ECM9は、段差t1の大きさを変更するために第一プリント基板921の厚さを変更する必要があり、自由度は低いと考えられる。
【0050】
例えば、図9Bに示すように筒部121の軸方向の長さを大きくし、ゲートリング部132及び筒部111の長さを小さくした場合、ECM10を小型化することができる。カプセル11の端部114の下方と実装基板の間に空間sを形成することができる。空間sに実装基板のレジスト層や他の部品等が位置してもよい。なお、空間Xが大きくなるため、図9AのECM10と同程度の背室容量が形成される。
【0051】
一方、ECM9の場合、空間sを形成するためには、第一プリント基板921の厚さを大きくしなければならないので、ECM9は厚くなり、大きくなる。
【0052】
<回路図>
図11は、ECM10の回路図を示す。ゲートパターン125と第一プリント配線126と第二プリント配線127は図7(c)に示すように配置され、コモン電極128と信号電極129は図3(c)に示すように配置される。第一プリント配線126と信号電極129とはFPC基板12に設けられた図示しないスルーホールを介して電気的に接続している。同様に第二プリント配線127とコモン電極128とは電気的に接続している。
【0053】
振動板リング16と絶縁スペーサ15とカップ状ゲートリング13とFPC基板12とがカプセル11に積層して格納され、カプセル11の開口面側の端部114が鍔部122のコモン電極128に加締付けられることにより、カプセル11と前面板112と振動板リング16とを介して振動板161がコモン電極128に接続され、また、背極板部131とゲートリング部132とゲートパターン125とを介してエレクトレット誘電体膜131aがFET17のゲート電極に接続される。
【0054】
図11に示す電気回路から明らかなように、振動板161が音によって振動することにより、エレクトレット誘電体膜131aに帯電した静電気によって電気信号が発生し、この電気信号がFET17でインピーダンス変換されてコモン電極128と信号電極129を通じて外部に出力される。
【0055】
なお、仮に図6のFCP基板12が衝撃等により背極板部131の方向に隆起しFET17の上面が背極板部131の底面に接触しても、上述の回路図から明らかなように、得られる電気信号に影響を与えることはない。よって、エレクトレットコンデンサマイクロホンの性能上も何ら影響を受けない。
【0056】
<変形例>
第一実施形態では、背極板部131とゲートリング部132とは一体に形成されているが、背極板231とゲートリング232として別々に形成されてもよい(図12参照)。この場合、背極板231は、金属材料からなり、振動板161と対向する面に図示しないエレクトレット誘電体膜が被着されている。ゲートリング232は、金属材料からなり、円筒状に形成されている。ゲートリング232は、背極板231とFPC基板12との間に介在して、背極板231とFPC基板12との間にインピーダンス変換器を格納する空間を保持する。ゲートリング232は、背極板231とFPC基板12上の配線とを電気的に接続する。また、第一実施形態では、背極板部131と絶縁スペーサ15とは別々に形成されているが、特許文献2に記載されているように、インサート成形により一体に形成されてもよい。つまり、ゲートリングと背極板と絶縁スペーサはそれぞれ、別々に形成されてもよいし、一体に形成されてもよい。
【0057】
FPC基板12に補強板を重ねる構成としてもよい。例えば後面板123の実装面側に補強板が重ねて貼られる構成とする。このような構成とすることでFPC基板12の自由な折り曲げ加工を可能としつつ、その剛性を向上させることができる。
【0058】
FPC基板12は、折り曲げ加工前に、後面板123の背極板部131と対向する面にインピーダンス変換器が配され、配置後に、折り曲げ加工により上述の筒部121と鍔部122と後面板123とを備えるように形成されてもよい。
【0059】
鍔部122の実装面側の面に接着剤が塗布される構成としてもよい。端部114による加締に加えて、この接着剤による接着により、FPC基板12をカプセル11に対して、さらに強固に固定することができる。但し、製造時に接着剤を硬化させるための工程が必要になる。
【0060】
必ずしも段差u2は、加締付けられる部分の厚さt3を全て吸収する必要はなく、その一部を吸収する構成としてもよい。吸収分だけECM10は薄型化、小型化を実現することができる。
【0061】
FPC基板12の折り曲げ形状は、本実施形態に限定されるものではなく、段差u2を設けて、端部114を加締付けることができる形状であればよい。例えば鍔部122の内径が後面板123の外径よりも大きく形成され、筒部121がテーパ形状に形成されてもよい。また例えば鍔部122は、筒部121の端部から連続して平板リング状に放射方向に突出しているが(図5A参照)、不連続であっても端部114を加締付けることができる形状であればよい。
【0062】
<第二実施形態:フロントエレクトレット型>
以下、第一実施形態と異なる部分のみ説明する。図13は平面側からみたECM20の分解斜視図を、図14はECM20の断面図を示す。
【0063】
ECM20はフロントエレクトレット型のコンデンサマイクロホンである。図13に示すようにECM20は、カプセル21とFPC基板12と絶縁スペーサ15と振動板リング16とゲートリング232とを含む。本実施形態では、背極板部131や背極板231を設けず、カプセル21の前面板112を背極板の代わりに利用する。
【0064】
カプセル21は、金属材料からなり、筒部111とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板112と含む。前面板112の内面には図示しないエレクトレット誘電体膜が被着されている。よって、前面板112の振動板161と対向する面には、エレクトレット誘電体膜が被着されている。
【0065】
振動板リング16には、前面板112の内面と対向する面に振動板161が張り付けられている。他方の面はゲートリング232と接触する。
【0066】
絶縁スペーサ15は、前面板112の内面と振動板161との間に介在し、前面板112の内面と振動板との間隙を保持する。
【0067】
FPC基板12は、筒部121と、筒部121の一端面であって前面板112の内面と対抗する面に端部から放射方向に突出する鍔部122と、筒部111の他端面を塞ぐ後面板123とが一体に形成される。FPC基板12の後面板123の、振動板161と対向する面にはインピーダンス変換器が配されている。インピーダンス変換器は、振動板161に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出す。
【0068】
ゲートリング232は、筒状に形成され、金属材料からなり、振動板161とFPC基板12との間に介在して、その軸方向の長さにより、振動板161とFPC基板12との間にインピーダンス変換器を格納する空間を保持する。言い換えると、振動板161とFPC基板12とゲートリング232とは、図14に示すように背室233を形成する。振動板161は、振動板リング16とゲートリング232とを介してFPC基板12上の配線(ゲートパターン125)と電気的に接続する。
【0069】
カプセル21は、絶縁スペーサ15と振動板リング16とゲートリング232とFPC基板12とを積層して格納する。カプセル21の開口面側の端部114は、FPC基板12の鍔部122に加締付けられている。
【0070】
<回路図>
図15は、ECM20の回路図を示す。カプセル21の開口面側の端部114が鍔部122のコモン電極128に加締付けられることにより、カプセル21と前面板112とを介してエレクトレット誘電体膜112aがコモン電極128に接続され、また、振動板リング16とゲートリング232とゲートパターン125とを介して振動板161がFET17のゲート電極に接続される。
【0071】
図15に示す電気回路から明らかなように、振動板161が音によって振動することにより、エレクトレット誘電体膜131aに帯電した静電気によって振動板161に電気信号が発生し、この電気信号がFET17でインピーダンス変換されてコモン電極128と信号電極129を通じて外部に出力される。
【0072】
このような構成とすることで、フロントエレクトレット型コンデンサマイクロホンの場合にも、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
<第三実施形態:リバースエレクトレット型>
以下、第二実施形態と異なる部分のみ説明する。図16は平面側からみたECM30の分解斜視図を、図17はECM30の断面図を示す。
【0074】
ECM30はリバースエレクトレット型のコンデンサマイクロホンである。図16に示すようにECM30は、カプセル11とFPC基板12と導電ワッシャ39と背極板231と絶縁スペーサ15と振動板リング16とゲートリング232とを含む。本実施形態では、エレクトレット誘電体膜と振動板との位置関係は第二実施形態と同様のまま、背極板231を用いる。
【0075】
導電ワッシャ39は、環状に形成され、前面板112の内面に一方の面が接触する。
【0076】
背極板231は、金属材料からなり、導電ワッシャ39に一方の面が接触し、他方の面に図示しないエレクトレット誘電体膜が被着されている。よって、背極板231の、振動板161と対向する面には、エレクトレット誘電体膜が被着されている。背極板231の他方の面は絶縁スペーサ15と接触する。
【0077】
振動板リング16の、背極板231と対抗する面には、振動板161が張り付けられている。
【0078】
絶縁スペーサ15は、背極板231と振動板161との間に介在し、背極板231と振動板161との間隙を保持する。
【0079】
カプセル11は、導電ワッシャ39と背極板231と絶縁スペーサ15と振動板リング16とゲートリング232とFPC基板12とを積層して格納する。カプセル11の開口面側の端部は、FPC基板12の鍔部122に加締付けられている。
【0080】
<回路図>
図18は、ECM30の回路図を示す。カプセル11の開口面側の端部114が鍔部122のコモン電極128に加締付けられることにより、カプセル11と前面板112と
導電ワッシャ39と背極板231とを介してエレクトレット誘電体膜231aがコモン電極128に接続され、また、振動板リング16とゲートリング232とゲートパターン125とを介して振動板161がFET17のゲート電極に接続される。
【0081】
図18に示す電気回路から明らかなように、振動板161が音によって振動することにより、エレクトレット誘電体膜131aに帯電した静電気によって振動板161に電気信号が発生し、この電気信号がFET17でインピーダンス変換されてコモン電極128と信号電極129を通じて外部に出力される。
【0082】
このような構成とすることで、リバースエレクトレット型コンデンサマイクロホンの場合にも、第二実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
<その他の変形例>
本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではない。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなり、筒部とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板と含むカプセルと、
前記前面板の内面に一方の面が接触し、他方の面に振動板が張り付けられている振動板リングと、
金属材料からなり、前記振動板と対向する面にエレクトレット誘電体膜が被着されている背極板と、
環状に形成され、前記背極板と前記振動板との間に介在し、前記背極板と前記振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、
前記背極板に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器と、
筒部と、この筒部の一端面であって前記背極板と対抗する面に筒部の端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、前記後面板の、前記背極板と対向する面に前記インピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、
筒状に形成され、金属材料からなり、前記背極板と前記フレキシブルプリント回路基板との間に介在して、前記背極板と前記フレキシブルプリント回路基板との間に前記インピーダンス変換器を格納する空間を保持し、前記背極板と前記フレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、
前記カプセルは、前記振動板リングと前記絶縁スペーサと前記背極板と前記ゲートリングと前記フレキシブルプリント回路基板とを積層して格納し、前記カプセルの開口面側の端部は、前記フレキシブルプリント回路基板の前記鍔部に加締付けられている、
エレクトレットコンデンサマイクロホン。
【請求項2】
金属材料からなり、筒部とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板と含み、この前面板の内面にエレクトレット誘電体膜が被着されているカプセルと、
前記前面板の内面と対向する面に振動板が張り付けられている振動板リングと、
環状に形成され、前記前面板の内面と前記振動板との間に介在し、前記前面板の内面と前記振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、
前記振動板に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器と、
筒部と、この筒部の一端面であって前記前面板の内面と対抗する面に端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、前記後面板の、前記振動板と対向する面に前記インピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、
筒状に形成され、金属材料からなり、前記振動板と前記フレキシブルプリント回路基板との間に介在して、前記振動板と前記フレキシブルプリント回路基板との間に前記インピーダンス変換器を格納する空間を保持し、前記振動板と前記フレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、
前記カプセルは、前記絶縁スペーサと前記振動板リングと前記ゲートリングと前記フレキシブルプリント回路基板とを積層して格納し、前記カプセルの開口面側の端部は、前記フレキシブルプリント回路基板の前記鍔部に加締付けられている、
エレクトレットコンデンサマイクロホン。
【請求項3】
金属材料からなり、筒部とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板と含むカプセルと、
環状に形成され、前記前面板の内面に一方の面が接触する導電ワッシャと、
金属材料からなり、前記導電ワッシャに一方の面が接触し、他方の面にエレクトレット誘電体膜が被着されている背極板と、
前記背極板と対抗する面に振動板が張り付けられている振動板リングと、
環状に形成され、前記背極板と前記振動板との間に介在し、前記背極板と前記振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、
前記振動板に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器と、
筒部と、この筒部の一端面であって前記前面板の内面と対抗する面に端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、前記後面板の、前記振動板と対向する面に前記インピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、
筒状に形成され、金属材料からなり、前記振動板と前記フレキシブルプリント回路基板との間に介在して、前記振動板と前記フレキシブルプリント回路基板との間に前記インピーダンス変換器を格納する空間を保持し、前記振動板と前記フレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、
前記カプセルは、前記導電ワッシャと前記背極板と前記絶縁スペーサと前記振動板リングと前記ゲートリングと前記フレキシブルプリント回路基板とを積層して格納し、前記カプセルの開口面側の端部は、前記フレキシブルプリント回路基板の前記鍔部に加締付けられている、
エレクトレットコンデンサマイクロホン。
【請求項1】
金属材料からなり、筒部とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板と含むカプセルと、
前記前面板の内面に一方の面が接触し、他方の面に振動板が張り付けられている振動板リングと、
金属材料からなり、前記振動板と対向する面にエレクトレット誘電体膜が被着されている背極板と、
環状に形成され、前記背極板と前記振動板との間に介在し、前記背極板と前記振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、
前記背極板に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器と、
筒部と、この筒部の一端面であって前記背極板と対抗する面に筒部の端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、前記後面板の、前記背極板と対向する面に前記インピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、
筒状に形成され、金属材料からなり、前記背極板と前記フレキシブルプリント回路基板との間に介在して、前記背極板と前記フレキシブルプリント回路基板との間に前記インピーダンス変換器を格納する空間を保持し、前記背極板と前記フレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、
前記カプセルは、前記振動板リングと前記絶縁スペーサと前記背極板と前記ゲートリングと前記フレキシブルプリント回路基板とを積層して格納し、前記カプセルの開口面側の端部は、前記フレキシブルプリント回路基板の前記鍔部に加締付けられている、
エレクトレットコンデンサマイクロホン。
【請求項2】
金属材料からなり、筒部とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板と含み、この前面板の内面にエレクトレット誘電体膜が被着されているカプセルと、
前記前面板の内面と対向する面に振動板が張り付けられている振動板リングと、
環状に形成され、前記前面板の内面と前記振動板との間に介在し、前記前面板の内面と前記振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、
前記振動板に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器と、
筒部と、この筒部の一端面であって前記前面板の内面と対抗する面に端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、前記後面板の、前記振動板と対向する面に前記インピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、
筒状に形成され、金属材料からなり、前記振動板と前記フレキシブルプリント回路基板との間に介在して、前記振動板と前記フレキシブルプリント回路基板との間に前記インピーダンス変換器を格納する空間を保持し、前記振動板と前記フレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、
前記カプセルは、前記絶縁スペーサと前記振動板リングと前記ゲートリングと前記フレキシブルプリント回路基板とを積層して格納し、前記カプセルの開口面側の端部は、前記フレキシブルプリント回路基板の前記鍔部に加締付けられている、
エレクトレットコンデンサマイクロホン。
【請求項3】
金属材料からなり、筒部とこの筒部の一端面を塞ぐ前面板と含むカプセルと、
環状に形成され、前記前面板の内面に一方の面が接触する導電ワッシャと、
金属材料からなり、前記導電ワッシャに一方の面が接触し、他方の面にエレクトレット誘電体膜が被着されている背極板と、
前記背極板と対抗する面に振動板が張り付けられている振動板リングと、
環状に形成され、前記背極板と前記振動板との間に介在し、前記背極板と前記振動板との間隙を保持する絶縁スペーサと、
前記振動板に発生する電気信号をインピーダンス変換して取り出すインピーダンス変換器と、
筒部と、この筒部の一端面であって前記前面板の内面と対抗する面に端部から放射方向に突出する鍔部と、この筒部の他端面を塞ぐ後面板とが一体に形成され、前記後面板の、前記振動板と対向する面に前記インピーダンス変換器が配されているフレキシブルプリント回路基板と、
筒状に形成され、金属材料からなり、前記振動板と前記フレキシブルプリント回路基板との間に介在して、前記振動板と前記フレキシブルプリント回路基板との間に前記インピーダンス変換器を格納する空間を保持し、前記振動板と前記フレキシブルプリント回路基板上の配線とを電気的に接続するゲートリングと、を含み、
前記カプセルは、前記導電ワッシャと前記背極板と前記絶縁スペーサと前記振動板リングと前記ゲートリングと前記フレキシブルプリント回路基板とを積層して格納し、前記カプセルの開口面側の端部は、前記フレキシブルプリント回路基板の前記鍔部に加締付けられている、
エレクトレットコンデンサマイクロホン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−90142(P2013−90142A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228948(P2011−228948)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】
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